説明

殺菌対象物封入用容器

【課題】食品や薬品などの殺菌対象物を殺菌対象物封入用容器内に封入した後、殺菌対象物が封入された殺菌対象物封入用容器が殺菌処理されたか否かを確実に確認できる方法がなかった。そこで、殺菌処理されたか否かを確実に確認できる殺菌対象物封入用容器を提供する。
【解決手段】殺菌対象物を封入するための殺菌対象物封入用容器45において、圧力感知部51及び光感知部52のうち少なくとも1つを備えたので、殺菌対象物を封入した殺菌対象物封入用容器に圧力波を作用させて殺菌対象物封入用容器を殺菌した場合、圧力感知部や光感知部が変色するので、殺菌対象物封入用容器が圧力波によって殺菌されたか否かを確実に確認できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や薬品などの殺菌対象物を封入するための殺菌対象物封入用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体貯留槽内の液体中に放電用電極と殺菌対象物とを挿入して液体中で放電させ、放電により生じた圧力波で殺菌対象物を殺菌する技術が知られている。例えば、食品や薬品などの殺菌対象物を殺菌対象物封入用容器内に封入した後、当該殺菌対象物が封入された殺菌対象物封入用容器を液体中に入れて、上記放電による殺菌処理を行っている(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−248866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術においては、食品や薬品などの殺菌対象物を殺菌対象物封入用容器内に封入した後、殺菌対象物が封入された殺菌対象物封入用容器が殺菌処理されたか否かを確実に確認できる方法がなかった。
本発明は、殺菌処理されたか否かを確実に確認できる殺菌対象物封入用容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、殺菌対象物を封入するための殺菌対象物封入用容器において、圧力感知部及び光感知部のうち少なくとも1つを備えたので、殺菌対象物を封入した殺菌対象物封入用容器に圧力波を作用させて殺菌対象物封入用容器を殺菌した場合、圧力感知部や光感知部が変色するので、殺菌対象物封入用容器が圧力波によって殺菌されたか否かを確実に確認できるようになる。
また、圧力感知部は、殺菌対象物封入用容器の殺菌対象物収容部の周縁部に塗られた不可逆性の感圧塗料により形成され、光感知部は、殺菌対象物収容部の周縁部に塗られた不可逆性の感光塗料により形成されたので、圧力感知部や光感知部を塗装により簡単に形成でき、しかも殺菌効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)は殺菌対象物封入用容器の正面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図(実施形態1)。
【図2】殺菌装置を示す図(実施形態1)。
【図3】図3(a)は殺菌対象物封入用容器の正面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図(実施形態2)。
【図4】殺菌装置を示す図(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1による殺菌対象物封入用容器は、例えば殺菌対象物としての血液製剤や薬品などを封入したバッグや瓶のような医療用容器、殺菌対象物としての食品を封入したバッグや瓶のような食品用容器である。
【0008】
図1に示すように、殺菌対象物封入用容器45は、殺菌対象物収容部50と、殺菌対象物収容部50の周縁部に設けられた圧力感知部51と、圧力感知部51とは別に殺菌対象物収容部50の周縁部に設けられた光感知部52とを備える。即ち、圧力感知部51及び光感知部52は、殺菌対象物収容部50の周縁部において殺菌対象物収容部50を取り囲むように設けられる。殺菌対象物収容部50は、例えば、合成樹脂により形成された断面扁平な袋体である。53は殺菌対象物封入用容器45内に封入された殺菌対象物である。例えば、圧力感知部51は、殺菌対象物収容部50の周縁部に塗られた不可逆性の感圧塗料により形成され、光感知部52は、殺菌対象物収容部50の周縁部に塗られた不可逆性の感光塗料により形成される。圧力感知部51と光感知部52とは目視によりその領域が区別可能なように形成される。不可逆性の感圧塗料とは、圧力を受けた場合に変色する塗料であって、変色した後は元の色に戻らない性質の感圧塗料である。不可逆性の感光塗料とは、光を受けた場合に変色する塗料であって、変色した後は元の色に戻らない性質の感光塗料である。つまり、これら不可逆性の感圧塗料や感光塗料は、変色が維持されることで圧力や光を受けた証拠を永久に残せる材料である。
図1に示した殺菌対象物封入用容器45の殺菌対象物収容部50内には、フェレーシス等において用いられる血液製剤が収容される。殺菌対象物封入用容器45は、殺菌対象物収容部50内と連通する給排口部を備える。例えば、給排口部は、吸引口61と供給口62と予備口63;63とを備える。吸引口61は体の血液を取出す側と繋がれた吸引チューブ64と接続される。供給口62は体に血液を戻す側に繋がれた供給チューブ65と接続される。予備口63は、予備口63の開口を被う密封部66により密封される。67は密封部66を開封するための溝部である。予備口63を使用する場合は、溝部67を介して密封部66を破って予備口63と図外のチューブとを接続して使用する。
尚、例えば上記吸引口61及び供給口62のうちのいずれか一方を介して殺菌対象物収容部50内に血液製剤を入れた後に、吸引口61と吸引チューブ64の一端とを熱圧着で連結するとともに供給口62と供給チューブ65の一端とを熱圧着で連結し、さらに、吸引チューブ64の他端開口及び供給チューブ65の他端開口を封止した状態で、後述の殺菌装置1を用いて殺菌対象物収容部50内の血液製剤を殺菌する。
【0009】
殺菌対象物封入用容器45中の菌を殺菌する殺菌装置1は、図2に示すように、電極装置2と、電源装置3と、電極装置2と電源装置3とを電気的に接続するための接続体30とを備える。
【0010】
電極装置2は、間隔維持手段6Aによって間隔(放電ギャップ)gを隔てて配置された正負の電極4;5からなる放電電極部6を備える。
【0011】
電極4;5は、電極構成体4A;5Aの一端により形成される。電極構成体4A;5Aは、例えば線径2mm〜3mm程度の銅線のような導体線の周囲がビニル樹脂などの樹脂で被覆された線径4mm〜5mm程度のいわゆる被覆線により形成され、この場合、電極4;5は、被覆線の一端において露出する導体線の一端により形成されることになる。一端が正の電極4となる電極構成体4Aの他端には正極端子4aが設けられ、一端が負の電極5となる電極構成体5Aの他端には負極端子5aが設けられる。
【0012】
直線状態の電極構成体4A;5Aの一端(電極4;5)側を直線状態から直角に折り曲げることにより、互いに直角関係なL字状の一端部を形成する。折り曲げられた部分4B;5B(以下、電極部という)の一端(電極4;5)同士が間隔gを隔てて配置され、間隔維持手段6Aによって当該間隔gが保持された正負の電極4;5からなる放電電極部6が形成される。間隔維持手段6Aは絶縁体により形成され、例えば、電極部4B;5Bにそれぞれ挟み付けられて取り付けられる挟着体6d;6dを両端に備え、互いに対向するように設けられた一対の挟着体6d;6d間の間隔bが間隔維持材6eにより維持された構成である。間隔維持手段6Aは、接着剤などで電極部4B;5Bに取り付けられて電極4;5が間隔gを隔てて対向するように電極部4B;5B同士を連結する図外の棒状絶縁体により構成してもよい。
【0013】
電源装置3は、昇圧装置12、パルスパワー出力装置13を備える。
昇圧装置12は、電源電圧入力部14A、図外の変圧器を備えた昇圧回路15、出力部14を備える。
昇圧回路15は、電源電圧入力部14Aに接続された電源ケーブル14C経由で例えば三相交流200V電源電圧を入力して例えば直流20kV〜50kVの電圧を生成し、生成した直流20kV〜50kVの電圧を出力部14より出力する。出力部14は、正極端子14aと負極端子14bとを備える。
【0014】
パルスパワー出力装置13は、入力端子16、充電回路17、出力部としての電極接続部18を備える。入力端子16は、正極端子16aと負極端子16bとを備える。電極接続部18は、正極端子18aと負極端子18bとを備える。充電回路17は、正極線17a、負極線17b、コンデンサ20、スイッチ21;22を備える。正極線17aには、スイッチ21とスイッチ22とが直列に接続される。正極線17aの一端が入力端子16の正極端子16aに接続され、正極線17aの他端が電極接続部18の正極端子18aに接続される。負極線17bの一端が入力端子16の負極端子16bに接続され、負極線17bの他端が電極接続部18の負極端子18bに接続される。コンデンサ20は、正極線17aにおけるスイッチ21とスイッチ22との間の接続点と負極線17bとに接続される。即ち、コンデンサ20は、正極線17a及び負極線17bに並列接続される。スイッチ21は昇圧装置12から供給された電圧をコンデンサ20に充電させるためのスイッチ、スイッチ22はコンデンサ20に充電された電荷を放電させて電極接続部18経由で電極装置2に出力させるためのスイッチである。図示しないが、充電回路17は接地(アース)されている。
【0015】
接続体30は、接続ケーブル31と、接続ケーブル31の一端に設けられた入力側コネクタ32と、接続ケーブル31の他端に設けられた出力側コネクタ33とを備える。入力側コネクタ32は、電源装置3の電極接続部18の正極端子18a及び負極端子18bの各々に接続される正極端子32a及び負極端子32bを備える。出力側コネクタ33は、電極構成体4Aの正極端子4aに接続される正極端子33a及び電極構成体5Aの負極端子5aに接続される負極端子33bを備える。
【0016】
次に、殺菌対象物53を封入した殺菌対象物封入用容器45中の菌を殺菌装置1により殺菌する方法を説明する。上部開放の容器19内に水道水のような液体41を入れる。接続体30の入力側コネクタ32と電源装置3の電極接続部18とを電気的に接続するとともに、接続体30の出力側コネクタ33と電極構成体4A;5Aとを電気的に接続する。電極装置2の放電電極部6を容器19内の液体41中に入れ、電極装置2を図外の支持装置で支持する。殺菌対象物封入用容器45を支持装置46で吊るして液体41中の放電電極部6の近傍に位置させる。電源装置3のスイッチ21、スイッチ22をともに非導通の状態としておいて、電源ケーブル14Cを介して電源装置3を交流200V電源に電気的に接続することで、電源ケーブル14Cを経由して昇圧装置12に交流200V電源が供給され、交流200Vが昇圧回路15で例えば直流20kV〜50kVに昇圧される。そして、スイッチ21を導通すると、コンデンサ20に電荷が蓄積される。コンデンサ20に電荷が蓄積された後に、スイッチ22を導通する。これにより電極装置2の放電電極部6の電極4;5に電圧が印加されて電極4;5間で放電を生じ、当該放電により生じた圧力波が圧力波伝達媒体としての液体41を介して殺菌対象物封入用容器45内に伝達され、当該伝達された圧力波によって殺菌対象物封入用容器45内の細菌を死滅させることができる。
【0017】
上記放電の際には、圧力波と光とが発生するので、殺菌対象物封入用容器45の圧力感知部51が圧力波による圧力を感知して変色するとともに、殺菌対象物封入用容器45の光感知部52が光を感知して変色する。
【0018】
実施形態1によれば、殺菌対象物53を封入した殺菌対象物封入用容器45に放電による圧力波を作用させて殺菌対象物封入用容器45を殺菌した場合、圧力感知部51や光感知部52が変色するので、殺菌対象物封入用容器45の圧力感知部51や光感知部52が変色しているか否かを見ることによって、殺菌対象物封入用容器45が放電による圧力波によって殺菌されたか否かを確実に確認できるようになり、未殺菌のものの使用を防止できるため、安全性の向上が期待できる。また、殺菌対象物封入用容器45に殺菌済みであることを示す記録や印字が不要となるため、殺菌後の管理処理も簡単となる。
圧力感知部51及び光感知部52は、殺菌対象物収容部50の周縁部において殺菌対象物収容部50を取り囲むように設けられたので、放電電極部6を殺菌対象物封入用容器45の周囲のどこに設置してもよくなり、圧力感知部51及び光感知部52と放電電極部6との位置合わせが容易となって、殺菌作業を容易にでき、しかも、圧力感知部51及び光感知部52を殺菌対象物収容部50の中央部付近の外面に設けた場合と比べ、圧力波のエネルギーが殺菌対象物封入用容器45内の殺菌対象物に到達する前に当該圧力感知部51及び光感知部52によって減衰してしまうようなこともなくなる。つまり、圧力感知部51及び光感知部52を殺菌対象物収容部50の周縁部において殺菌対象物収容部50を取り囲むように設けることで、殺菌対象物封入用容器45内の殺菌対象物に対するエネルギー照射の邪魔とならないように構成し、殺菌効率化を図れるようにした。
また、圧力感知部51は、殺菌対象物収容部50の周縁部に塗られた不可逆性の感圧塗料により形成され、光感知部52は、殺菌対象物収容部50の周縁部に塗られた不可逆性の感光塗料により形成されたので、圧力感知部51及び光感知部52を塗装により簡単に形成できる。
【0019】
実施形態2
図3に示すように、圧力感知部51及び光感知部52のうちの1つのみを備えた殺菌対象物封入用容器45としてもよい。
【0020】
実施形態3
血液製剤などの薬品を封入する殺菌対象物封入用容器45としては、実施形態1で説明した圧力感知部51及び光感知部52の両方を備えたもの(図1参照)を使用し、圧力感知部51又は光感知部52が変色しているか否かを確認することにより、未殺菌か否かを簡単に確認でき、安全性の向上が期待できる。この場合、特に、圧力感知部51及び光感知部52の双方に変色による証拠が残るので、二重のチェックができて、より安全性が向上する。
食品を封入する殺菌対象物封入用容器45としては、実施形態2で説明したように圧力感知部51及び光感知部52のうちの1つのみを備えたもの(図3参照)を使用してもよい。この場合でも、圧力感知部51又は光感知部52が変色しているか否かを確認することにより、未殺菌か否かを簡単に確認でき、安全性の向上が期待できる。
【0021】
実施形態4
図4に示すような電極装置2を用いてもよい。当該電極装置2は、例えば、+電極のような一方電極としての棒状の内部導体73と、内部導体73の外周囲を被覆する筒状の絶縁体74と、絶縁体74の外周囲に設けられた−電極のような他方電極としての外部導体75とにより構成される。即ち、当該電極装置2は、内部導体73と絶縁体74と外部導体75とが同軸状に配置された構成の同軸電極である。外部導体75は、内部導体73の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられた複数の浮遊電極76;76・・・を構成する。浮遊電極とは、電源側と電気的に絶縁された電極のことである。絶縁体74の先端74tより突出して露出する内部導体73の先端部73tとこの先端部73tに最も近い浮遊電極76の先端部76tとで放電を生じさせる先端側放電ギャップ77が形成され、互いに対向する浮遊電極76同士の端部76sと端部76sとで放電を生じさせる中間側放電ギャップ78が形成される。中間側放電ギャップ78は複数形成される。先端側放電ギャップ77、中間側放電ギャップ78が維持された内部導体73と複数の浮遊電極76とにより放電電極部6が形成される。動作及び効果は実施形態1と同じである。
【0022】
尚、圧力感知部51や光感知部52は、殺菌対象物収容部50の周縁部以外の場所に設けてもよい。
【0023】
また、上記では殺菌装置として放電により圧力波を発生させる装置を用いたが、圧力波を発生させる装置であれば超音波装置などの他の圧力波発生装置を用いてもかまわない。
【0024】
上記では、不可逆性の感圧塗料により形成された圧力感知部51や、不可逆性の感光塗料により形成された光感知部52を例示したが、圧力感知部51や光感知部52を塗料以外で構成してもよい。例えば、フッ素樹脂製の圧電素子と金属板とを貼り合わせた構造の圧力感知素子などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 殺菌装置、45 殺菌対象物封入用容器、51 圧力感知部、52 光感知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象物を封入するための殺菌対象物封入用容器において、圧力感知部及び光感知部のうち少なくとも1つを備えたことを特徴とする殺菌対象物封入用容器。
【請求項2】
圧力感知部は、殺菌対象物封入用容器の殺菌対象物収容部の周縁部に塗られた不可逆性の感圧塗料により形成され、光感知部は、殺菌対象物収容部の周縁部に塗られた不可逆性の感光塗料により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の殺菌対象物封入用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126579(P2011−126579A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287753(P2009−287753)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502210600)株式会社マリウス (7)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【Fターム(参考)】