説明

殺菌装置

【課題】対象部位の細菌の増殖状況を予測し、この予測値に基づいて殺菌し、細菌の増殖を抑制する。
【解決手段】対象部位の細菌の増殖状態を予測する増殖予測手段12と、この増殖予測手段12の予測結果に基づいて殺菌手段10を制御することにより、対象部位を殺菌してから次の殺菌のタイミング及び殺菌強度を適切に設定ことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素イオンを含んだ水を電気分解して電解水を生成し、この電解水により厨房設備、台所、便器、洗面、風呂、洗濯機等の水まわりの細菌を増殖を抑える殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より細菌の増殖を抑えるため便器へ定期的に殺菌水を供給する殺菌装置はあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された従来の殺菌装置を示すものである。図5に示すように、便器1に対して電解槽2で生成した殺菌水を適量供給する制御手段3と、予定時間経過又は予定時刻になると制御手段3を作動させるタイマー制御手段4と、予定時間経過又は予定時刻に殺菌水の供給状況を記憶する記憶手段5とを設けたため、殺菌水の供給が行われなかった場合、記憶内容に基づき何等かの対応を行うようにしている。これにより便器1内での細菌の繁殖を抑え、臭いや汚れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−88640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の殺菌装置では、予定時刻に殺菌水を便器に供給するようにしているが、便器での細菌の繁殖は、細菌を取巻く環境に左右される。例えば気温や水温により便器温度が季節により大きく変わったり、また便器の先浄水の量により便器に付着する尿などの細菌の栄養物質の量や便器の濡れ状態が異なってくるなど、変化は一定しない。したがって、これら環境が変化しても細菌の繁殖を抑えようとすると、最も繁殖しやすい条件に合わせた殺菌水の供給条件となってしまい、殺菌水の塩素濃度を必要以上に高めたり、また殺菌水の供給頻度を多くする必要があった。このため、ランニングコストが高くなるだけでなく、殺菌水による排水の汚染も問題となってしまうなどの課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、増殖予測手段により対象部位の細菌の増殖状態を予測できるので、対象部位を殺菌してから次の殺菌のタイミング及び殺菌強度を適切に設定できる殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の殺菌装置は、対象部位に殺菌処置をおこなう殺菌手段と、前記対象部位の細菌の増殖状態を予測する増殖予測手段と、前記増殖予測手段の予測結果に基づいて前記殺菌手段を制御する制御手段とを有し、前記殺菌手段は、少なくとも一対の電極を有し、塩素イオンを含んだ水を電気分解して電解水を生成する電解槽と、前記対象部位に電解水を供給する供給手段とより成るものである。
【0008】
これによって、殺菌対象部位の細菌の増殖状態を予測できるので、対象部位を殺菌してから次の殺菌のタイミングや殺菌強度を適切に設定することができる。
【0009】
そして、この設定に基づいて塩素イオンを含んだ水を電気分解することによって、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン含んだ電解水が生成される。この電解水を対象部位に供給する
ことにより細菌の増殖を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の殺菌装置は、対象部位に次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン含んだ電解水が供給され細菌の増殖を抑制することができ、さらに増殖予測手段により対象部位の細菌の増殖状態を予測し対象部位を殺菌してから次の殺菌のタイミング及び殺菌強度を適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1を示す殺菌装置の模式図
【図2】本発明の実施の形態1、2を示す細菌増殖特性図
【図3】本発明の実施の形態1を示す殺菌装置のフローチャート
【図4】本発明の実施の形態2を示す殺菌装置のフローチャート
【図5】従来例を示す電解装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明の殺菌装置は、対象部位に殺菌処置をおこなう殺菌手段と、前記対象部位の細菌の増殖状態を予測する増殖予測手段と、前記増殖予測手段の予測結果に基づいて前記殺菌手段を制御する制御手段とを有し、前記殺菌手段は、少なくとも一対の電極を有し、塩素イオンを含んだ水を電気分解して電解水を生成する電解槽と、前記対象部位に電解水を供給する供給手段とから構成されている。
【0013】
これによって、殺菌対象部位の細菌の増殖状態を予測できるので、対象部位を殺菌してから次の殺菌のタイミングや殺菌強度を適切に設定することができる。
【0014】
そして、この設定に基づいて塩素イオンを含んだ水を電気分解することによって、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン含んだ電解水が所定量生成される。この電解水を対象部位に供給することにより効率的に細菌の増殖を抑制することができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明の殺菌装置の殺菌手段が、少なくとも一対の電極を有し、塩素イオンを含んだ水を滞留状態で電気分解して電解水を生成する電解槽と、対象部位に電解水を供給する供給手段とより成り、制御手段は、殺菌開始時間前に電気分解を終えるよう電気分解開始時間を設定する。
【0016】
そして、殺菌手段は水を滞留状態で電気分解する滞留電解を行なうので流水電解に比べ効率の高い電解が可能になる。また、滞留電解は電気分解が完了するまでに時間を要するため、制御手段により殺菌開始時間に間に合うように予め電解制御する。
【0017】
第3の発明は、特に第2の発明の殺菌装置の制御手段が、電極への電流、通電時間、塩素イオン濃度、電解水供給量、電解水給水時間、希釈水量の少なくとも一つを調整して殺菌強度を変更する。
【0018】
そして、対象部位に対して、電解水の濃度や、電解水の供給量・供給時間を調整することで、殺菌作用を変更することができる。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1を示す構成図である。図1において、殺菌手段10は、殺菌の対象部位11に殺菌処置を行なう。増殖予測手段12は、対象部位11に繁殖する細菌の増殖状態を予測する。そして制御手段13は、増殖予測手段12の予測結果に基づいて殺菌手段10を制御するものである。
【0020】
対象部位11は、一般家庭におけるトイレ・台所・風呂・洗面などの水回り設備の表面や配管・生ごみ入れ、業務用の厨房設備・トイレ・洗面所・公衆浴場・プール・下水設備などで、例えばトイレでは便器内外表面、排水トラップ部、水洗用タンクの水や内面、温水洗浄便座の温水タンク内や洗浄ノズル・便座面・便器との接触面、床面、手洗い用ボウル面などが対象となる。
【0021】
また、台所ではシンク内面、排水かご、排水トラップ、まな板・包丁などの調理具、ふきん・スポンジや生ごみ入れなどが対象になり、業務用の厨房設備では、肉や魚のどの食品や厨芥処理設備も対象部位となる。
【0022】
本実施の形態では台所の排水かごに限定して、ここに電解水を供給して細菌の増殖を抑え、臭いやぬめりを防止する殺菌装置とした。
【0023】
殺菌手段10は、塩素イオンを含んだ水を電気分解して電解水を生成する電解槽14と、対象部位11に電解水を供給する供給手段15と、電解槽14に塩素イオンを供給するための食塩水供給手段16より成っている。
【0024】
電解槽14は、陽極21と陰極22の一対の電極を対向して内設し、上部に出水口23、中央部に入水口24、下部に食塩水入口25がそれぞれ設けてある。
【0025】
供給手段15は、電解水の供給を制御する給水手段26と、電解水と水を任意の混合割合で混合する混合手段29とより成っている。
【0026】
給水手段26は水道と直結する給水路27に設けられ、電解槽14の入水口24に連通して、電解槽14内に給水供給可能に構成されている。なおこの給水手段26は電動の開閉弁で、定流量機能(図示せず)が設けてある。
【0027】
混合手段29は、出水路28により出水口23と連通し、電解槽14からの電解水を供給可能に接続している。バイパス路30は、給水路27の給水手段26下流側の水を混合手段29へ連通するよう接続している。そして混合手段29は、出水路28の電解水とバイパス路30の水を任意の混合割合で混合させ、この混合水を電解水供給路31に吐出するよう配管されている。なお混合手段29は電動モータ(図示せず)により混合割合を可変する混合弁より成っている。
【0028】
直流電源34は、両電極21、22に電圧を印可して水を電解するための直流を供給する。
【0029】
食塩水供給手段16は、固形の状態で食塩36を充填した食塩タンク37と電解槽14の上流から分岐した給水管38を介して食塩水を供給する給水ポンプ39および給塩路40を有しており、飽和食塩水(食塩濃度26%)が電解槽14内で所定量供給される。
【0030】
増殖予測手段12は、対象部位11の細菌の生息環境を検知する環境検知手段41と、対象部位11の時間と生息環境に基づく細菌の増殖特性を予め記憶する増殖記憶手段42と、環境検知手段41の検知環境と増殖記憶手段42からの細菌増殖特性から所定細菌数に至る時間を求める時間設定手段43より成る。
【0031】
環境検知手段41は、対象部位11に設けた温度センサ44により温度を検知する温度検知手段45と、対象部位11に設けた水分センサ46により水分を検知する水分検知手段47と、対象部位11に設けた汚れ検知手段48から細菌の栄養物質量を検知する栄養
物質検知手段49から成る。
【0032】
そして栄養物質検知手段49は、汚れ検知手段48であるフォトセンサ(図示せず)により排水かご11の裏面の光の反射光により汚れ度合いを検出し、この汚濁度合いから推定手段(図示せず)により、細菌の栄養物質量を推定する。推定手段はフォトセンサが検出する汚れ度合いと排水かご11に付着する有機物量の相関関係を予め求め、この相関を用いて栄養物質量を推定する。
【0033】
増殖記憶手段42は、電解水により排水かご11を殺菌し、その時点からの細菌数と経過時間の増殖特性を予め測定し求め、これを記憶させる。この時の増殖特性は排水かご11の温度と水分と有機物量の三者を因子とし、使用範囲内で水準を設定して求めたものを用いている。具体的には電解水により排水かご11を殺菌し、細菌数が死滅あるいは非増殖状態の時点から所定細菌数(例えば表面100cm当たり10レベル)に細菌数が増殖するまでの時間を実験的に求め、それを記憶させる。温度条件は、10℃未満、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の4水準、水分条件は、水分率が1%未満、1〜5%、5%以上の3水準、有機物量としてフォトセンサが検出する汚れ度合いを小、中、大の3水準として、ぞれぞれの因子の水準を組み合わせた(4×3×3)36パターンの条件における代表的な増殖時間を記憶している。
【0034】
時間設定手段43は、温度検知手段45、水分検知手段47、栄養物質検知手段49のそれぞれから排水かご11の温度、水分、栄養物質量を検知し、この環境条件における細菌増殖特性を増殖記憶手段42より呼び出し、所定細菌数に至る所用時間を求める。ここでは、増殖記憶手段42に記憶された36パターンの増殖時間の中から、検出した温度、水分、栄養物質量に適合する一つを呼びだして、これを所用時間とする。
【0035】
50は時間設定手段43の設定した時間を使用者に知らせるための報知手段で、LCD、LED、ブザー、スピーカ等により構成している。本引用例ではLCDにより次回殺菌開始までの時間を表示するようにしている。
【0036】
一般に細菌の増殖特性は図2に示すように遅滞期、対数増殖期、静止期、死滅期に分類される。対象部位11における殺菌を行なう場合重要なのは、遅滞期から対数増殖期に移行する時間である。この遅滞期は細菌にかかるストレスや栄養条件に大きく影響され、図のaからdのように変化する。図におけるaは気温が高い場合でdは低い場合を示す。本実施の形態においては代表的な影響因子は温度、水分、排水かごに投入される栄養物質の種類や量、電解水の濃度や量、殺菌時間である。
【0037】
上記構成において次に本実施の形態の作用、動作について図1および図3のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
図3においてステップ60で運転を開始すると、ステップ61で環境条件入力を行なう。これは図1の環境検知手段41で検出する温度、水分、栄養物質量を検出するもので、それぞれ温度センサ44、水分センサ46、汚れ検知手段48(フォトセンサ)により排水かご11の環境状態を検出する。
【0039】
ステップ62は排水かご11の細菌が所定細菌数に至る所用時間を推定する増殖時間判定部で、ステップ61で求めた環境条件に適合する増殖時間を増殖記憶手段63より呼び出し求める。
【0040】
増殖記憶手段63は、図1の42で説明したように、温度条件の4水準、水分条件の3水準、汚れ度合いの3水準それぞれを組み合わせた36パターンの条件における代表的な
増殖時間を記憶している。そして、増殖時間判定部62で環境条件入力から得られた温度と水分と汚れ度合いから一つの増殖時間を呼び出す。
【0041】
ステップ64ではステップ62で求められた増殖時間Tzから電解開始時間Tdを次の式(1)により演算する。
【0042】
Td=Tz−Ta−Tb (1)
ただし、Taは電解に必要な時間
Tbは余裕時間で増殖時間Tzの推定誤差分
このように電解開始時間Tdは増殖時間TzからTaとTbを差し引き電解時間を早めることにより、確実に細菌の増殖を抑えることができる。
【0043】
ステップ65は殺菌が開始されるまでの残り時間(現在時間−Tz−Tb)を報知手段50に表示する。
【0044】
ステップ66はスタートしてからの経過時間がTdを超えたかを判定し、超えていればステップ67に進み電解を開始し、超えていなければステップ61に戻る。
【0045】
ステップ67では食塩供給運転を行なう。ここでは図1に示す給水ポンプ39が動作して給水管38を経て食塩タンク37内に水が供給され、内部の飽和食塩水が電解槽14内に供給されて電解槽14底部に溜まる。
【0046】
次にステップ68の電解運転では、直流電源34を作動させ、電極21、22間に電圧が印加され、電気分解が開始される。
【0047】
電気分解の開始直後は、電極21、22の大部分が水と接触しているため、水の電気分解が優先的に起こり、電極21、22間に水素と酸素ガスを発生する。これらのガスは水道水よりも軽いので、電解槽14の上部分に浮上する。このガスの移動により、電極21、22間に上方向への水の流れが発生する。そして、電解槽14底部に滞留している食塩水は、ガスの浮上により発生した水の流れにより電極21、22間に吸い上げられ、電解槽14内の水に拡散する。一般に塩素イオン濃度が高いほど次亜塩素酸などの塩素化合物(以下、次亜塩素酸と呼ぶ)の生成効率は高くなると言われており、下記の反応が起こりやすくなる。
【0048】
2Cl−+2e−→Cl2↑
Cl2+OH−→HClO+Cl−
Cl2+2OH−→ClO−+Cl−+H2O
また、電気分解で次亜塩素酸を生成する場合、供給する食塩水の量が次亜塩素酸の生成効率に大きく影響を与える。すなわち、電解槽14への食塩水の供給量が多くなれば、生成効率は高まり、電解槽14での次亜塩素酸の生成濃度は高くなり、食塩水の供給量が少ないと、次亜塩素酸の生成濃度は低くなるので、飽和食塩水を給水ポンプ39で定量送るようにしている。
【0049】
さらに、電極21、22間に直流電源34から一定電流で一定時間の通電を行えば、毎回ほぼ同濃度の次亜塩素酸が生成できる。すなわち、電解水である次亜塩素酸の生成濃度は食塩の供給量と電極21、22への通電量により決定される。
【0050】
電解運転が終了するとステップ69に移行する。ここでは給水手段26が開成され、電解槽14に水が供給され、電解槽14内の高濃度(例えば2000ppm)の電解水が出水路28より混合手段29に吐出される。一方バイパス路30からは水が混合手段29に
供給され、ここで混合され希釈された電解水が電解水供給路31から取水される。
【0051】
ステップ70は、電解槽14内の次亜塩素酸の濃度を予測して、電解水供給路31からの濃度が所定値になるように混合手段29を制御する。
【0052】
電解槽内の次亜塩素酸の濃度予測は、電解水濃度減衰特性を予め実験的に求めておき、その特性より予測する。式(2)は特性例を示す。
【0053】
X=D−E・t−F・Σw (2)
ただし
X:次亜塩素酸濃度予測値
D:電解直後の次亜塩素酸初期濃度
E:経過時間の係数
t:電解終了時からの経過時間
F:給水量の係数
Σw:電解終了時からの給水量の積算値
なお次亜塩素酸初期濃度Dである電解水生成濃度は、前述したように食塩の供給量sと電極21、22への通電量qにより決定される。したがって、式(3)より求まる。
【0054】
D=G・s・q (3)
ただし
G:食塩供給量と通電量の係数(非線型 食塩供給量sの関数)
そして電解水の供給が終了すれば、ステップ71で殺菌運転を継続するかを判定する。ここでは制御手段13で設定された運転スイッチ(図示せず)のオン/オフ状態により判定する。終了する場合は、ステップ72に進み機器を停止させる。継続の場合はステップ73で、タイマーをリセットし、増殖時間や次亜塩素酸濃度予測値などをクリアする。そしてステップ61へ戻る。
【0055】
以上のように本実施の形態によれば、排水かごにおける温度、水分、汚れ度合いに応じた細菌の増殖時間を求め、その増殖前に電解水により殺菌処理を行なうので、過剰な殺菌をすることがなく、手間をかけずに排水かごの細菌増殖が抑えられ、臭いやぬめりが発生しない。
【0056】
また、電解水の濃度変化を予測して所定濃度に希釈して使用するので一定濃度の電解水を大量に供給できる。
【0057】
本実施の形態において栄養物質検知手段は、汚れ検知手段により汚れ度合いを検出し、この汚濁度合いから推定手段により、細菌の栄養物質量を推定するようにしていた。これに代えて、次の構成でも同様に機能する。
【0058】
栄養物質検知手段は、対象部位11である排水かごに流れる水の有無より対象部位11の使用頻度を検知する頻度検知手段(図示せず)と、排水かごへ水が流れる時間から使用時間を検知する時間検知手段(図示せず)と、この頻度検知手段と時間検知手段の両者から栄養物質量を推定する推定手段(図示せず)から構成し、水の有無は水分検知手段47を用いる。一般家庭において台所仕事をする場合に食器や食材を洗ったりする場合に排水かごに制菌の栄養物質が流れ込むため、制菌の栄養物質量と流水の頻度および時間とに高い相関がある。推定手段はこの相関関係を数値化し栄養物質量を推定するようにしている。
【0059】
また、排水かごに流れ込む汚染物質を特定するため、野菜屑や肉魚や残飯などを指定す
るスイッチである汚染物質判定手段(図示せず)と、排水かごの汚染頻度を検知する頻度検知手段(図示せず)と、排水かごの汚染時間を検知する時間検知手段(図示せず)と、これら汚染物質判定手段と頻度検知手段と時間検知手段の情報から栄養物質量を推定する推定手段(図示せず)からなる構成にすると、汚染物質が特定できるのでより精度の高い細菌増殖の推定ができる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態1の電解装置と同一構造のものは同一符号を付与し、説明を省略する。
【0061】
実施の形態1との違いは、図4のステップ80の増殖記憶手段で、電解水により排水かごを殺菌し、その時点からの細菌数と経過時間の増殖特性を予め測定し求め、これを記憶させる。そして、この時の増殖特性は排水かごの温度と水分と有機物量の三者を因子とし、使用範囲内で水準を設定して求めたものを用いている点は実施の形態1と同じであるが、実施の形態1は電解水により排水かごを殺菌し、細菌数が死滅あるいは非増殖状態の時点から所定細菌数(例えば表面100cm当たり10レベル)に細菌数が増殖するまでの時間のみを実験的に求め、それを記憶させるのに対し、実施の形態2ではこれに加え、細菌が対数増殖期に入った時の増殖速度を記憶値に持っている点である。これは増殖時間と同じように温度条件は、10℃未満、10〜20℃、20〜30℃、30℃以上の4水準、水分条件は、水分率が1%未満、1〜5%、5%以上の3水準、有機物量としてフォトセンサが検出する汚れ度合いを小、中、大の3水準として、ぞれぞれの因子の水準を組み合わせた(4×3×3)36パターンの条件における代表的な増殖速度を記憶している。
【0062】
そしてステップ81では環境条件入力61から得られた温度と水分と汚れ度合いから一つの増殖速度を呼び出す。
【0063】
さらにステップ82の混合手段制御では、ステップ81で設定された増殖速度に応じて電解水の希釈濃度を決定制御する。具体的には細菌の増殖速度が早い場合(例えば菌数が30分以内で倍増する)は電解水の濃度を濃く(例えば次亜塩素酸濃度500ppm)し、増殖速度が遅い場合(例えば菌数が3時間以上で倍増する)は電解水の濃度を薄く(例えば50ppm)する。そして、増殖速度がその間(例えば菌数が30分から3時間で倍増する)であれば電解水濃度をその中間(例えば300ppm)とする。
【0064】
細菌にとって環境条件がよくなると増殖速度が上がってくる。この状態は一般に殺菌が効きにくい条件である。したがって、この実施の形態では活性の高い細菌には、より殺菌強度を高めた電解水用いることで、確実に殺菌し、活性の低い細菌には、殺菌強度の低い電解水を用いることで、排水や設備等への影響を低減させている。
【0065】
なお、本実施の形態では電解水を希釈して電解水の殺菌強度を変更しているが、電解の電力すなわち電極への電流値、通電時間を変更してもよいし、給水ポンプ39の操作量を変更して電解槽14への食塩水の供給量を調整してもよい。また電解水の供給量や供給時間を変更してもよい。
【0066】
上記実施の形態1および2における増殖予測手段は、増殖記憶手段で、電解水により排水かごを殺菌し、その時点からの細菌数と経過時間の増殖特性を予め測定し求め、これを記憶させるように構成している。この増殖特性を温度、水分、汚れ度合いの関数として数式化し、この数式を用いて細菌増殖を予測するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる殺菌装置は、殺菌対象部位に次亜塩素酸や次亜塩素酸イ
オン含んだ電解水が供給され、細菌の増殖を効率的に抑制することができるので、一般家庭における台所、便器、洗面、風呂、洗濯機等の水まわり設備や生ゴミ入れなどに応用できる。また、業務用の厨房設備・トイレ・洗面所・公衆浴場・プール・下水設備などにも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
10 殺菌手段
11 対象部位
12 増殖予測手段
13 制御手段
14 電解槽
21、22 電極
41 環境検知手段
42 増殖記憶手段
43 時間設定手段
45 温度検知手段
47 水分検知手段
49 栄養物質検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部位に殺菌処置をおこなう殺菌手段と、
前記対象部位の細菌の増殖状態を予測する増殖予測手段と、
前記増殖予測手段の予測結果に基づいて前記殺菌手段を制御する制御手段とを有し、
前記殺菌手段は、
少なくとも一対の電極を有し、塩素イオンを含んだ水を電気分解して電解水を生成する電解槽と、
前記対象部位に電解水を供給する供給手段とより成る殺菌装置。
【請求項2】
前記対象部位に殺菌処置をおこなう殺菌手段と、
前記対象部位の細菌の増殖状態を予測する増殖予測手段と、
前記増殖予測手段の予測結果に基づいて前記殺菌手段を制御する制御手段とを有し、
前記殺菌手段は、
少なくとも一対の電極を有し、塩素イオンを含んだ水を滞留状態で電気分解して電解水を生成する電解槽と、
前記対象部位に電解水を供給する供給手段とより成り、
前記制御手段は、
殺菌開始時間前に電気分解を終えるよう電気分解開始時間を設定する殺菌装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記電極への電流、通電時間、塩素イオン濃度、電解水供給量、電解水給水時間、希釈水量の少なくとも一つを調整して殺菌強度を変更する請求項1または2記載の殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−269157(P2010−269157A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161352(P2010−161352)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2000−179641(P2000−179641)の分割
【原出願日】平成12年6月15日(2000.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】