説明

殺虫剤修飾XPSプレフォームの製造方法

(a)ポリマー溶融物が形成されるまでポリスチレン(PS)を加熱し、
(b)該ポリマー溶融物中に発泡剤を導入して発泡可能な溶融物を形成し、
(c)該発泡可能な溶融物を発泡成形してXPSプレフォームを形成する工程からなる(ただし、工程(a)及び/又は(b)の少なくとも一方でフェニルピラゾール類とクロロフェナピル、ヒドラメチルノンの群から選ばれる少なくとも一種の殺虫剤が導入される)殺虫剤修飾ポリスチレン押出発泡体(XPS)プレフォームの製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ポリスチレン発泡体(XPSプレフォーム)の、殺虫剤で修飾された発泡体プレフォームの製造方法と、該方法で得られる殺虫性XPSプレフォーム、その建築業での利用に関する。
【背景技術】
【0002】
建設業においては、ポリマー発泡体や発泡体プレフォームが、例えば地下用及び地上用の絶縁材料として使用されている。昆虫、特にシロアリは、このような発泡体にかなり大きな食害を与え、プレフォームの絶縁効果と機械的安定性が制限され、更なる害虫の前進が可能となる。多くの場合、このような絶縁材料がシロアリ好ましい環境を与える、法律によりプレフォームの殺虫剤での保護が求められている。
【0003】
JP−2000−001564には、ポリマー発泡体の保護のための(±)−5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(一般名:フィプロニル)の利用が記載されている。この目的のために、フィプロニルが0.001〜1重量%の濃度で使用されている。高分子マトリックスとしては、ポリスチレンやポリエチレン、ポリプロピレンが記載されている。フィプロニルは、発泡した発泡体粒子の表面に、あるいは発泡剤含有顆粒に塗布して添加される。JP2001−259271には、発泡剤含有EPS顆粒または発泡EPS顆粒にフィプロニルとバインダーを塗布する方法が述べられている。
【0004】
WO00/44224には、ピレスロイド系殺虫剤を分散状態で含む発泡性ポリマー組成物を押出またはプレスする殺虫剤修飾ポリマー発泡シートの製造が述べられている。この方法は、XPS(ポリスチレン押出発泡体)の製造に関する。用いられる活性物質は、その構造において本発明の活性物質とは大きく異なる。また、ここに記載の発泡体の昆虫に対する殺虫剤活性は満足ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点をなくし、より持続性の優れた殺虫剤活性を持つXPSプレフォームの経済的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の殺虫剤活性物質を、分解させることなくポリマー溶融物中に均一に導入できることが明らかとなった。
【0007】
したがって、本発明は、
(a)ポリマー溶融物が形成されるまでポリスチレン(PS)を加熱し、
(b)該ポリマー溶融物中に発泡剤を導入して発泡可能な溶融物を形成し、
(c)該発泡可能な溶融物を発泡成形してXPSプレフォームを形成する(ただし、工程(a)及び/又は(b)の少なくとも一方で、フェニルピラゾール類とクロロフェナピル、ヒドラメチルノンの群から選ばれる少なくとも一種の殺虫剤が導入される)工程からなる殺虫剤修飾ポリスチレン押出発泡体(XPS)プレフォームの製造方法に関する。
【0008】
本発明はまた、本発明の方法で得られるXPSプレフォーム、およびその建設材料としての、特に建設業における絶縁材料としての利用に関する。
【0009】
本発明の方法で製造されるXPSプレフォームにおいては、殺虫剤が特に安定で均一な状態で高分子マトリックスに導入される。この結果、活性物質の減量と、XPSプレフォームの製造加工使用中での同殺虫剤への暴露が減少する。また、本発明の方法により所要殺虫剤の量を減らすことができる。
【0010】
また、本発明の殺虫剤修飾XPSプレフォームは、標準的な製品(殺虫剤非含有)と比べて、機械的性質と絶縁特性においてなんら欠点を持っていない。
【0011】
本発明において、ポリスチレン(PS)は、スチレンホモポリマーと、スチレンと他のビニル−芳香族モノマーとの、また必要なら他のコモノマーとのコポリマーを含む包括的な用語として使用されている。PSは、例えば、標準ポリスチレン(汎用ポリスチレン、GPPS、通常透明)や、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、例えばポリブタジエンやポリイソプレンゴムなど)、スチレン/マレイン酸(無水物)ポリマー、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンポリマー(ABS)、スチレン/アクリロニトリルポリマー(SAN)、α−メチルスチレン/アクリロニトリルポリマー(AMSAN)、あるいはこれらの混合物(成分K1)を意味するものとする。好ましいPSは、標準的なポリスチレン、例えばスチレンモノマーのモル含量が少なくとも95%であるポリスチレンである。さらに好ましいPSは、α−メチルスチレン/アクリロニトリルポリマー(AMSAN)である。
【0012】
さらに、PSはまた、一種以上の上述のポリマー(成分C1)と、一種以上の熱可塑性ポリマー(成分C2)との、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエーテル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)またはポリエーテルスルフイド(PES)とのブレンドをも含んでいる。
【0013】
上述の成分C1のポリマーは、スチレンなどの一種以上のビニル芳香族モノマーと、必要なら他のジエンや、α,β−不飽和カルボン酸、これらカルボン酸のエステル(好ましくはアルキルエステル)またはアミド、アルケンのようなコモノマーとを重合することで得られる。好適な重合方法は熟練作業者には公知である。
【0014】
ビニル芳香族モノマーとして、一般式(I)の少なくとも一種の化合物を選択することが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R1とR2は、いずれも相互に独立して、水素、メチルまたはエチルであり、
3は、水素、あるいは
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどのC1−C10−アルキルであり、
好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキルであり、
kは0〜2の整数であり、
1とR2は、いずれの場合も好ましくは水素であり、またより好ましくはk=0である。
【0017】
スチレンが特に好ましい。他の好適な例としては、α−メチルスチレンや、p−メチルスチレン、エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ビニルスチレン、α−ビニルトルエン、1,2−ジフェニルエチレン、1,1−ジフェニルエチレンまたはこれらの混合物があげられる。
【0018】
好適なジエンコモノマーは、あらゆる重合性ジエンであり、特に1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、ピペリレンまたはこれらの混合物である。1,3−ブタジエン(短縮してブタジエン)、イソプレン、あるいはこれらの混合物が好ましい。
【0019】
α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体として好適な化合物は、一般式(II)の化合物である。
【0020】
【化2】

【0021】
式中の記号は以下の意味を持つ。
【0022】
5は、以下のものからなる群から選ばれる:
−メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1−C10−アルキル;
特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキル;
−または水素、
−水素とメチルが極めて好ましい。
【0023】
4は、以下のものからなる群から選ばれる:
−メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1−C10−アルキル;
特に好ましくは、メチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキル;
−水素が極めて好ましい;
6は、以下のものからなる群から選ばれる:
−水素(個の場合、化合物(II)はカルボン酸自体となる)、
−または、メチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1−C10−アルキル(この場合、化合物IIはカルボン酸エステルである);特に好ましくはメチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチ、tert−ブチル;2−エチルヘキシルなどのC1−C4−アルキル。
【0024】
好ましい式(II)の化合物は、アクリル酸とメタクリル酸である。さらに好ましいのは、アクリル酸のC1−C10−アルキルエステルであり、特にブチルエステル、好ましくはアクリル酸n−ブチル、およびメタクリル酸のC1−C10−アルキルエステル、特にメタクリル酸メチル(MMA)である。
【0025】
好適なカルボキサミドとしては、特に上述の化合物(II)のアミドが、具体的にはアクリルアミドやメタクリルアミドがあげられる。
【0026】
一般式(IIIa)と(IIIb)の化合物もモノマーとして好適である。なお、化合物(IIIa)は、構造的には、OH−置換のカルボキサミドである:
【0027】
【化3】

【0028】
式中の記号は、以下を意味する。
【0029】
8は、以下のものからなる群から選ばれる:
−メチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1−C10−アルキル;
特に好ましくはメチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキル;
−または水素;
−水素とメチルが極めて好ましい。
【0030】
7は、以下のものからなる群から選ばれる:
−メチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1−C10−アルキル;
特に好ましくはメチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキル;
−水素が極めて好ましい;
【0031】
9は、以下のものから選ばれる:
−メチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1−C10−アルキル;
特に好ましくは、メチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキル、
−水素が極めて好ましい。
【0032】
Xは、以下のものからなる群から選ばれる:
−水素、
−グリシジル
−第三級アミノ基、好ましくはNH(CH2b−N(CH32を有する基、
なお、bは2〜6の範囲の整数である。
−C原子数が1〜20のエノール化可能な基、好ましくは次式のアセトアセチル、
【0033】
【化4】

【0034】
式中、
10は、メチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどの非分岐状または分岐状のC1-10−アルキルから、特に好ましくはメチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのC1−C4−アルキルから選ばれる。
【0035】
極めて好ましくは、式(IIIa)または(IIIb)中のR8が、それぞれ水素とメチルから選ばれ、R7とR9はいずれの場合も水素である。
【0036】
式(Va)の化合物としては、メチロールアクリルアミドが特に好ましい。
【0037】
PSは、コモノマーとしてアルケンを用いて製造してもよい。特に好適なアルケンは、エチレン(エテン)とプロピレン(プロペン)である。
【0038】
他の成分C1の製造用に好適なコモノマーとしては、例えば、いずれの場合も1〜5重量%の、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ウレイド(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メク)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミドプロパンスルホン酸(技分かれしていてもよい)、あるいはビニルスルホン酸ナトリウムがあげられる。
【0039】
本発明で使用可能なポリスチレン(PS)は、熟練作業者には公知の方法で、例えばラジカル重合、アニオン重合またはカチオン重合により、直接あるいは溶液、分散液または乳化液として製造可能である。ラジカル重合が好ましい。
【0040】
本発明の方法で使用可能なポリスチレンは、一般的に、100000〜300000g/molの重量平均分子量と、1〜10cm3の範囲の、ISO113に準拠して求めたMVR溶融体積比(200℃/5kg)をもつ。好適なポリスチレンの例としては、BASF社のPS158K、168Nまたは148Gがあげられる。
【0041】
本発明の方法の工程(a)では、このポリスチレンを加熱してポリマー溶融物を得る。本発明の目的において、ポリマー溶融物の形成とは、広い意味でポリスチレンの可塑化を、例えば固体ポリスチレンの成形可能な状態あるいは流動可能な状態への変換を意味するものとする。このためには、ポリスチレンを、その融点またはガラス転移温度を超える温度に加熱する必要がある。好適な温度は、一般的には50〜250℃であり、好ましくは100〜220℃、特に好ましくは180〜220℃である。スチレンモノマーのモル含量が95%であるポリスチレンを使用する場合、ポリマー溶融物を得るためには、少なくとも180℃の温度に加熱する必要がある。
【0042】
ポリスチレンの加熱(本発明の方法の工程(a))は、既知の装置のいずれによって、例えば押出機、ミキサー(例えば混練機)によって行ってもよい。コンパウンド用押出機(主押出機)を用いることが好ましい。本発明の方法の工程(a)は連続的に行っても回分式に行ってもよいが、連続プロセスが好ましい。
【0043】
本発明の方法の工程(b)は、工程(a)で溶融させたポリスチレン中に発泡剤を導入して発泡可能な溶融物を形成することからなる。
【0044】
この発泡剤は、熟練作業者には既知のいずれか方法で溶融ポリスチレン中に導入可能である。好適な例としては、押出機またはミキサー(例えば混練機)があげられる。ある好ましい実施様態においては、加圧下で発泡剤が溶融ポリスチレンと混合される。なお、この圧力は、ポリマー溶融物材料の発泡が実質的に防止され、溶融ポリスチレンに発泡剤が均一に分布するのに十分なほど高い必要がある。好適な圧力は、50〜500bar(絶対)であり、好ましくは100〜200bar(絶対)、特に好ましくは120−170bar(絶対)である。本発明の方法の工程(b)の温度は、この高分子材料が溶融状態で存在するように選択する必要がある。したがって、本発明の方法の工程(b)は、一般的には、100〜280℃の温度で、好ましくは120〜260℃、特に好ましくは180〜220℃の温度で実施される。工程(b)は連続的に行っても回分式に行ってもよい。工程(b)は好ましくは連続的に行われる。
【0045】
発泡剤の添加は、コンパウンド用押出機(主押出機)中で行ってもよく、続く工程で行ってもよい。
【0046】
ある好ましい実施様態においては、この成型用ポリマー溶融物が、熟練作業者には既知のXPS押出機により、例えば直列に配置されたコンパウンド用押出機(主押出機)と冷却押出機(副押出機)で製造される。本プロセスは、連続的に実施しても回分式に実施してもよく、ポリスチレンは主押出機(工程(a))中で溶融し、形成発泡可能な溶融物の成型用の発泡剤の添加(工程(b))をこの主押出機中で行ってもよい。
【0047】
その後、発泡剤が加えられた溶融体は、副押出機中で発泡成形に好適な50〜180℃の温度に、好ましくは80〜130℃の温度に冷却される。
【0048】
好適な発泡剤には、無機発泡剤、有機発泡剤、化学反応発泡剤が含まれる。好適な無機発泡剤としては、二酸化炭素や、窒素、アルゴン、水、空気、ヘリウムがあげられる。好ましい発泡剤の一つは、二酸化炭素と水の混合物である。
【0049】
有機発泡剤としては、1〜9個の炭素原子を持つ脂肪族炭化水素、完全にまたは部分的にハロゲン化された1〜4個の炭素原子を持つ脂肪族炭化水素があげられる。脂肪族炭化水素としては、メタンや、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンがあげられる。
【0050】
完全にまたは部分的にハロゲン化された脂肪族炭化水素としては、フルオロカーボン化合物が、クロロカーボン化合物、クロロフルオロカーボン化合物があげられる。フルオロカーボン化合物の例としては、メチルフルオライドや、ペルフルオロメタン、エチルフルオライド、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペルフルオロエタン、2,2−ジフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパン、ペルフルオロプロパン、ジフルオロプロパン、ジフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロシクロペンタンがあげられる。本発明の方法での使用が好ましい部分ハロゲン化クロロカーボン化合物とクロロフルオロカーボン化合物としては、塩化メチルや、メチレンクロライド、エチルクロライド、1,1,1−クロロセン、クロロジフルオロメタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンがあげられる。完全ハロゲン化クロロフルオロ炭化水素化合物としては、トリクロロモノフルオロメタンや、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロヘプタフルオロプロパン、ジクロロヘキサフルオロプロパンがあげられる。
【0051】
化学反応可能な発泡剤としては、アゾジカルボン酸ジアミドや、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルホンヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジメチル−N.N’−ジニトロソテレフタラミド、トリヒドラジノトリアジンがあげられる。
【0052】
あるさらに好ましい発泡剤混合物は、
0〜100重量%の二酸化炭素と、0〜50重量%の水、0〜75重量%のアルコール(例えばメタノールまたはエタノール)、ケトンまたはエーテルを含む。
【0053】
環境的な理由のため、可能なら無機発泡剤を使用することが望ましい。二つの特に好適な無機発泡剤が二酸化炭素と水である。
【0054】
用いる発泡剤の量は、用いるポリスチレンに対して0.5〜20重量%であり、好ましくは4〜12重量%、特に2〜8重量%である。
【0055】
他の好ましい実施様態においては、少なくとも一種の核剤が溶融高分子材料に添加される。使用可能な核剤は、タルク、金属酸化物、ケイ酸塩などの微粉砕された無機固体またはポリエチレンワックスであり、その量は高分子材料に対して一般的には0.1〜10重量%であり、好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは1〜1.5重量%である。核剤の平均粒子径は、通常0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは1〜60μmの範囲である。特に好ましい核剤はタルクであり、例えばルゼナックファーマ社のタルクである。この核剤は、熟練作業者には既知の方法でポリマー溶融物に添加可能である。添加は、工程(a)及び/又は(b)で実施可能である。
【0056】
必要なら、他の添加物を、例えば核剤や、可塑剤、難燃剤、カーボンブラックまたはグラファイトなどのIR吸収剤、アルミニウム粉末、二酸化チタン、可溶性及び不溶性の着色剤や顔料を、工程(a)及び/又は(b)で添加することができる。好ましい添加物はグラファイトとカーボンブラックである。
【0057】
一般的には、高分子材料に対してグラファイトを0.05〜25重量%で、特に好ましくは2〜8重量%の量で加えることが特に好ましい。グラファイトの好適な粒度は1〜50μmの範囲であり、好ましくは2〜10μmの範囲である。
【0058】
ある実施様態においては、本発明のXPSプレフォームを着色して非殺虫剤修飾XPSプレフォームから容易に区別できるようにし、製品の安全性を高めることができる。
【0059】
建設業等での火災防止に関する規制のため、一種以上の難燃剤を工程(a)及び/又は(b)で添加することが可能である。好適な難燃剤の例としては、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテルや、膨張性黒鉛、赤リン、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシドがあげられる。他の好適な難燃剤は、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、特に実質的にα−、β−、γ−異性体を含む工業グレードの製品であり、ジクミルパーオキサイドをシナージストとして添加することが好ましい。
【0060】
本発明の方法において、フェニルピラゾール、特にフィプロニル(IV)やアセトプロール、エチプロール(V)、式(VI)の化合物、クロロフェナピル(VII)、ヒドラメチルノン(VIII)の群から選ばれる少なくとも一種の殺虫剤が、用いられるポリマー溶融物に混合される。混合は、工程a)及び/又はb)で行うことができる。
【0061】
少なくとも一種の殺虫剤の添加は重要であるのではなく、従って、この少なくとも一種の殺虫剤は、純物質として、製剤として、あるいはマスターバッチの形で添加される。工程a)において、少なくとも一種の殺虫剤を含むPSを使用することもできる。
【0062】
なお、本発明の目的においては、純物質とは、純物質の全重量に対して活性物質含量が80重量%である、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、特に好ましくは少なくとも97重量%である物質を意味するものとする。
【0063】
製剤とは、熟練作業者には既知のあらゆる既存の殺虫剤製剤を意味するものとする。市販の製剤を用いることもできる。水性製剤の使用が好ましい。
【0064】
また、マスターバッチは、最終濃度より高い濃度で少なくとも一種の殺虫剤を含むPSを意味するものとする。最終濃度とは、少なくとも一種の殺虫剤のXPSプレフォーム中での濃度を意味するものとする。マスターバッチに好適な殺虫剤濃度は1〜90重量%である。好ましくは、マスターバッチは、マスターバッチの全重量に対して20重量%未満の、より好ましくは1〜15重量%、特に5〜10重量%の少なくとも一種の殺虫剤を含んでいる。
【0065】
マスターバッチの好適な製造方法は、例えば押出機中でポリマー溶融物に少なくとも一種の殺虫剤を加えること、あるいはPSを殺虫剤または殺虫剤混合物で塗装することである。
【0066】
マスターバッチと本発明の方法で用いられる市販のPSとの好適な混合比率は、10:1〜1:1000の範囲であり、特に好ましくは10:1〜1:100の範囲、特に10:1〜1:50の範囲である。
【0067】
この少なくとも一種の殺虫剤の混合は、好ましくは工程(a)で行われる。ある実施様態においては、少なくとも一種の殺虫剤が、工程(a)及び/又は(b)において純物質として添加される。
【0068】
他の実施様態においては、少なくとも一種の殺虫剤が、水性製剤の形で工程(a)及び/又は(b)で添加される。他の実施様態においては、この少なくとも一種の殺虫剤が、押出機中で最終濃度より高い濃度でポリマー溶融物に導入され(マスターバッチの製造)、この活性物質含有ポリマーが次いで、工程(a)及び/又は(b)においてポリマー溶融物に供給される。この供給は、例えば溶融直後にポリマーの主流中に混合して、あるいは添加物輸送のための第二の流れを主流中に混合して行われる。
【0069】
他の実施様態においては、このバッチの製造が、PSを殺虫剤または殺虫剤混合物で塗装することで行われる。このためには、PS粒子を使うことが好ましい。なお、この塗装プロセスは、熟練作業者には公知の既知の方法で行われる。また、殺虫剤あるいは殺虫剤混合物は、固体として、溶解状態及び/又は分散状態(例えば懸濁液または乳化液)で利用することができる。殺虫剤あるいは殺虫剤混合物は、塗装するPSに、既存のミキサーを用いて、例えば吹き付けあるいはドラム塗布により塗装される。適当なPSの溶液、分散液、乳化液または懸濁液中に浸漬あるいは湿潤させてもよい。必要なら、バインダーや帯電防止剤、疎水化剤、難燃剤、微粉砕シリカ、無機充填剤などの他の塗料添加物を、この殺虫剤あるいは殺虫剤混合物に加えてもよい。
【0070】
ある実施様態においては、このようにして得られる塗装PSを市販の非塗装PSとともに、熟練作業者には既知の方法で、例えば押出機中で溶融し、本発明の方法で加工してXPSプレフォームを得る。なお、塗装PSの市販の非塗装PSへの添加は、本発明の方法の工程(a)で行うことが好ましい。塗装PSと市販の非塗装PSを前の工程で混合し、それを工程(a)に供給することもできる。ある好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の殺虫剤が、工程(a)において純物質として添加される。他の好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の殺虫剤が、工程(a)において製剤の形で添加される。
【0071】
特に好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の殺虫剤が、工程(a)において水性製剤の形で添加される。
【0072】
工程(a)及び/又は(b)において加えられる少なくとも一種の殺虫剤の量は任意であるが、本発明のXPSプレフォームが、XPSプレフォームに対する殺虫剤濃度が10〜1000ppm、特に好ましくは20〜1000ppm、特に50〜500ppmとなるように選択することが好ましい。好適な殺虫剤は、フェニルピラゾール類であり、特にフィプロニル((±)−5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−α,α,α,−トリフルオロ−p−トリル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール)や、ヒドラメチルノン、クロロフェナピルである。
【0073】
【化5】

【0074】
フィプロニルが特に好ましい。
【0075】
上記の化合物、特に式(II)と(III)と(V)と(VI)の化合物、またこれらの製造は既知であり、例えば、「殺虫剤マニュアル(The Pesticide Manual)」、14th Edition, British Crop Protection Council (2006)に記載されている。式(IV)のチアミドとその製造は、WO98/28279に記載されている。フィプロニルとヒドラメチルノンとクロロフェナピルが、BASF社(ドイツ)より販売されている。
【0076】
上述の殺虫剤に加えて、殺虫剤、殺生剤または防黴剤を(混合物として)添加してもよい。
【0077】
好適な混合対象は、例えば下記の殺虫剤である:
【0078】
I.1.オルガノ(チオ)ホスフェート類:アセフェート、アザメチホス、アジンホス−メチル、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、クロロフェンビンホス、ダイアジノン、ジクロルボス、ジクロトホス、ジメトアート、ジスルホトン、エチオン、フェニトロチオン、フェンチオン、イソフェンホス、イソキサチオン、マラチオン、メタミドホス、メチダチオン、メチル−パラチオン、メビンホス、モノクロトホス、オキシデメトン・メチル、パラオキソン、パラチオン、フェントアート、ホサソン、ホスメット、ホスファミドン、ホラート、ホキシム、ピリミホス−メチル、プロフェノホス、プロチオホス、スルプロホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、トリアゾホス、トリクロロホン;
I.2.カルバメート類:アラニカルブ、アルジカルブ、ベンジカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロポスキル、チオジカルブ、トリアザマート;
I.3.ピレスロイド類:アレスリン、ビフェントリン、シフルトリン、シハロトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、α−シペルメトリン、β−シペルメトリン、ζ−シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンヴァレレート、エスフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、イミプロトリン、λ−シハロトリン、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリンIとII、レスメトリン、シラフルオフェン、τ−フルバリネート、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、ジメフルトリン;
I.4.成長調節物質:a)キチン合成阻害剤:ベンゾイル尿素類:クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、フルシクロククスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノビフルムロン、スルフラミド、テフルベンズロン、トリフルムロン;ブプロフェジン、ジオフェノラン、ヘキシチアゾックス、エトキサゾール、クロフェンタジン;b)エクジソン拮抗薬:ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド、アザジラクチン;c)ジュベノイド類:ピリプロキシフェン、メトプレン、フェノキシカルブ;d)脂質生合成阻害剤:スピロジクロフェン、スピロメシフェン、スピロテトラマト;
I.5.ニコチン受容体作動薬/拮抗薬:アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム;
I.6.GABA拮抗薬:エンドスルファン、ピラフルプロール、ピリプロール;
I.7.大環状ラクトン殺虫剤:アバメクチン、エマメクチン、ミルベメクチン、レピメクチン、スピノサド;
I.8.サイトI電子伝達阻害剤:例えばフェナザキン、フェンピロキシメート・ピリミジフェン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド、フルフェネリム、ヒドラメチルノン、ジコフォル;
I.9.サイトII及びIII電子伝達阻害剤:アセキノシル、フルアシプリム、ロテノン;
I.10.酸化的リン酸化を阻害する化合物:シヘキサチン、ジアフェンチウロン、フェンブタチンオキシド、プロパルギット;
I.11.キチン生合成阻害剤:シロマジン;
I.12.複合機能オキシダーゼ阻害剤:ピペロニルブトキシド(PBO);
I.13.ナトリウムチャネルモジュレーター:インドキサカルブ、メタフルミゾン;
I.14.未知または不特定の作用メカニズムを持つ活性物質:アミドフルメト、ベンクロチアズ、ビフェナゼト、ホウ酸塩、カルタプ、クロラントラニリプロール、フロニカミド、ピリダリル、ピメトロジン、硫黄、チオシクラム、フルベンジアミド、シエノピラフェン、シフルメトフェン、フルピラゾフォス。
【0079】
1.1〜1.15の群の市販の化合物は、殺虫剤マニュアル(The Pesticide Manual)、14版、British Crop Protection Council (2006)に記載されている。
【0080】
レピメクチンは、アグロプロジェクト(Agro Project)、PJB Publications Ltd、November2004 に記載されている。ベンクロチアズ及びその製造はEP−A1454621に記載されている。メチダチオンとパラオキソン及びその製造は、農薬ハンドブック(Farm Chemicals Handbook)、Volume 88、Meister Publishing Company、2001 に記載されている。アセトプロールとその製造は、WO98/28277に記載されている。フルピラゾホスは、Pesticide Science, 54、1988、pages 237−243とUS4822779に記載されている。ピラフルプロールとその製造は、JP2002193709とWO01/00614に記載されている。ピリプロールとその製造は、WO98/45274とUS 6335357に記載されている。アミドフルメトとその製造は、US 6221890とJP21010907に記載されている。フルフェネリムとその製造は、WO03/007717とWO03/007718に記載されている。シフルメトフェンとその製造は、WO04/080180に記載されている。
【0081】
式(XIV)のアントラニラミド類とその製造は、WO01/70671;WO02/48137;WO03/24222、WO03/15518、WO04/67528;WO04/33468;WO05/118552に記載されている。
【0082】
他の可能な混合対象は、式(IX)のアミドラゾン類またはその鏡像体と塩である。
【0083】
【化6】

【0084】
式中の記号は次の意味をもつ:
Wは、ClまたはCF3である;
XとYは、相互に同一であるか異なり、ClまたはBrである;
11は、1〜3個のハロゲン原子で置換された(C1−C6)−アルキル、(C3−C6)−アルケニル、(C3−C6)−アルキニルまたは(C3−C6)−シクロアルキル、あるいは(C1−C4)−アルコキシで置換された(C2−C4)−アルキルである;
12とR13は(C1−C6)−アルキルであるか、結合する炭素原子とともに1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよい(C3−C6)−シクロアルキルを形成する;
14は、Hまたは(C1−C6)−アルキルである、
式(IX)中の記号は、好ましくは次の意味を持つ:
11は、好ましくは(C1−C4)−アルキル、特にメチルまたはエチルである;
12とR13は、好ましくはメチルであるか、これらが結合する炭素原子と共に一個または二個の結合塩素原子を有するシクロプロピル環を形成する;
14は、好ましくは(C1−C4)−アルキル、特にメチルである;
Wは好ましくはCF3である;
XとYは好ましくはClである。
【0085】
さらに好ましい式(IX)の化合物は、XとYがClであり、WがCF3で、R12とR13とR14がメチルで、R11がメチルまたはエチルであるもの、またXとYがClであり、WがCF3で、R12とR13がその結合する炭素原子とともに2,2−ジクロロシクロプロピル基を形成し、R14がメチルで、R11がメチルまたはエチルであるものである。これらの化合物とその製造は、例えばUS2007/0184983に記載されている。
【0086】
本発明で用いられる上記化合物の相互の混合物に加えて、好ましい混合対象として、ピレスロイド類(1.3)や、ネオニコチン受容体作動薬/拮抗薬(1.5)、ホウ酸塩類、カルバリル、クロルアントラニリプロール、クロルピリホス、ジフルベンズロン、フェニトロチオン、フロニカミド、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、インドキサカルブ、イソフェンホス、ノビフルムロン、メタフルミゾン、スピノサド、スルフラミドがあげられる。特に好ましいのは、アセタミプリドや、ビフェントリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、α−シペルメトリン、デルタメトリン、フェンバレレート、イミダクロプリド、λ−シハロトリン、ペルメトリン、チアクロプリド、チアメトキサムである。
【0087】
極めて好ましいのは、フィプロニルと一種以上の上述の混合対象との混合物、特にフィプロニルとα−シペルメトリン及び/又はピペロニルブトキシド(PBO)との混合物である。極めて好ましいのは、混合対象を用いずにフィプロニルを使用することである。
【0088】
本発明で用いる殺虫剤と適当なら他の混合対象との混合比率は、広い極限値間で変動するが、一般的には0.1:100〜100:0.1である。
【0089】
この殺虫剤あるいは殺虫剤混合物は、純物質として(例えば、工業グレードとして、あるいは純粋な活性物質として)用いることができる。市販製剤の使用も可能である。
【0090】
ポリマー溶融物に添加される殺虫剤または殺虫剤混合物の量は、得られるXPSプレフォームが10〜1000ppmの濃度を、特に好ましくは20〜1000ppm、極めて好ましくは50〜500ppmの濃度を持つように選ばれる。
【0091】
本発明の方法の工程(c)では、発泡可能な溶融物を発泡成形してXPSプレフォームを得る。
【0092】
このため、この溶融物が適当な装置で、例えばダイプレートで輸送される。このダイプレートは、少なくとも発泡剤含有ポリマー溶融物の温度にまで加熱される。ダイプレートの温度は、好ましくは50〜200℃である。ダイプレートの温度は、特に好ましくは100〜150℃である。
【0093】
この発泡剤含有ポリマー溶融物は、ダイプレートを経由して押し出される前に発泡可能な溶融物がおかれる領域より低圧である領域に、ダイプレートを経由して送られる。低圧は、大気圧より大きくても小さくてもよい。大気圧の領域への押出が好ましい。
【0094】
工程(c)は、発泡される高分子材料が溶融状態で存在する温度で行われ、一般的には50〜150℃の温度で、好ましくは100〜125℃の温度で行われる。工程(c)において、発泡剤含有ポリマー溶融物の低圧に維持された領域に輸送にあたり、発泡剤がガス状態にされる。体積の大幅な増加の結果、ポリマー溶融物が膨張し発泡する。
【0095】
本発明の方法で得られるXPSプレフォームの幾何的断面形状は、ダイプレートの選択により実質的に決められ、巾広い範囲で変動可能である。したがって、円や、三角、四角(正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形、ロゼンジ、丸みのある四角形、デルタ型、円状の輪郭の四角形)、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、n角形(n=11〜100)、惰円、円などの形状の一つをもつ出口開口部を有するダイプレートを用いることができる。他の好適な形としては、五画の星形や六画の星形、丸みを帯びた四角形、半月形、丸みを帯びた三角形、サイクロイドなどの複雑な形状や、上述の形状の組合せの結果できるすべての形状があげられる。
【0096】
本発明の方法で得られるXPSプレフォームは、好ましくは直角の断面をもつ。このXPSプレフォームの厚みは、ダイプレートのスリットの高さにより決まる。XPSプレフォームの幅は、ダイプレートスリットの幅により決まる。プレフォームの長さは、熟練作業者には既知の方法により、後工程で、例えば接合、融着、縫製、切断により決められる。シート状の形状を持つXPSプレフォーム(XPSシート)が特に好ましい。シート状とは、プレフォームの幅と長さに比べて厚み(高さ)の大きさが小さいことをいう。
【0097】
原則として、本発明のXPSプレフォームは、DIN−EN−826に準じて求めた圧縮強度として、0.3〜1.0N/mm2の範囲、好ましくは0.35〜0.7N/mm2の範囲の圧縮強度を持つ。発泡シートの密度は、25〜50kg/m3の範囲であとが好ましい。本発明のXPSシートは、少なくとも90%の気泡を有することが好ましく、特にその95〜100%が、DIN−ISO−4590で求めた独立気泡であることが好ましい。
【0098】
ポリマー溶融物中に殺虫剤が分布するため、本発明の殺虫剤修飾XPSプレフォームにおいては、殺虫剤が安定的に高分子マトリックスに導入される。これにより、活性物質の損失とXPSプレフォームの製造、加工、使用中の殺虫剤への暴露が低下する。また、本発明の方法により殺虫剤の所要量を低下させることができる。
【0099】
ある実施様態においては、この殺虫剤あるいは殺虫剤混合物が、本発明のXPSプレフォーム中で分子分散の状態で存在する。
【0100】
本発明によれば、分子分散の状態とは、活性物質が細かく高分子マトリックス中に分散し、X線回折法で結晶性の活性物質が認められないことを意味する。このような状態は、「固溶体」とも呼ばれる。
【0101】
X線回折法の場合、結晶の量の検出レベルがおよそ3重量%であるため、「結晶性物質の量が認められない」とは、結晶性物質の量が3重量%であることを意味する。分子分散の状態は、示差走査熱量分析(DSC)と呼ばれる方法で確認可能である。分子分散の場合、活性物質の融点付近に融解ピークが認められない。この方法の検出限界は1重量%である。
【0102】
固溶体であるため活性物質の放出が改善される。固溶体の重要な特性は、長期間の保存に安定であること、即ち活性物質が結晶化しないことである。また、固溶体の容量、即ち可能な限り多量の活性物質で安定な固溶体を形成する能力もまた重要である。
【0103】
本発明はまた、本発明のXPSプレフォームの用途に関する。
【0104】
本発明のXPSプレフォームは、有害生物による、例えばプレフォームにかなりの食害を与え、プレフォームの絶縁効果と機械安定性を低下させ、有害生物の進入を可能とする昆虫によるプレフォームの損傷を避けあるいは減らすために、建設業において地中又は地上で使用する絶縁材料として用いることが好ましい。本発明で製造されるプレフォームは、特にシロアリによる損傷を避けあるいは減らすのに好適である。
【0105】
以下、本発明を、実施例をもとに詳述するが、本発明はこれらにより制限を受けるものではない。
【0106】
防蟻性PS押出発泡体の製造:
【0107】
実施例:
1. PS顆粒の塗装
アレキサンダーベルク社の攪拌器中で、6985gのポリスチレン顆粒(ポリスチロール158k、BASF社)と15ml容量の500g/lのフィプロニルを含む濃厚懸濁液とを混合した。次いで、この混合物を室温で乾燥させた。
2.押出機での防蟻剤(フィプロニル)含有発泡体の製造
表1の成分を二軸押出機(ZSK25)中で混合した:
【0108】
【表1】

【0109】
なお、フィプロニル塗装PS顆粒は、一定量のフィプロニル源(実施例1の製品)に他成分をそれぞれの混合比率で混合したものである。押出温度は200℃未満である。この混合物は、22mm幅の溝形のダイ中で、7kg/hの速度で発泡させる。
【0110】
比較例:
3.PS顆粒の塗装
100gのデルタメトリン活性物質製剤(デシスマイクロ)(デルタメトリン62.5g a.i./kg、バイエルクロップサイエンス社)を100mlの水と混合した。この混合物を、6150gのポリスチレン(PS158k;BASF社)とともにアレキサンダーベルク社の攪拌器中に入れ、混合した。混合物は一夜乾燥させた。
【0111】
4.押出機中での防蟻剤(デルタメトリン)含有発泡体の製造
表2の成分を二軸押出機(ZSK25)中で混合する:
【0112】
【表2】

【0113】
なお、デルタメトリン塗装PS顆粒(実施例3の製品)がデルタメトリン源であり、その一定量を他の成分とそれぞれの混合比率で混合する。
【0114】
押出温度は200℃未満である。この混合物は、22mm幅の溝形のダイ中で、7kg/hの速度で発泡させる。
【0115】
XPS発泡体中の活性物質の測定:
含量は、GC/MSで分析した。このため、0.5gのXPSをアセトニトリルに溶解し、この溶液の一部(希釈したもの)を、GC/MS(MS−D−5973型検出器をもつアジレントGC:6890N)による定量分析にかける。結果を表3と表4に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
XPS発泡体の生物学的試験:
用いた生物学的試験法は、Su等の土壌防蟻剤の活性の測定用の生物学的試験法(1993)に準じたものである。栓切りを備えたせん孔機を用いて、ブロックから、円柱(およそ直径が2.5cmで長さが5.0cm)を切り出した。個々のポリスチレン円柱を、直径が2.5cmのテナイト(R)ポリエステルチューブに挿入した。このチューブを、タイゴン連結ホースを経由して、80匹の雌の働きシロアリと一匹の兵隊シロアリを含むもう一つのチューブに連結した。5.0cmのポリスチレン円柱を、二個の3cmの寒天セグメントの間においた。シロアリを含むチューブとポリスチレン円柱を含むチューブの両方で用いたシロアリ用の食餌と営巣材料は、ポンデローザマツの削り屑と紙片であった。7日間の試験期間中、二つのチューブは25℃に維持した。
【0119】
円柱の外表面からチューブの内壁面に沿って伸びるトンネルの距離を24時間にわたって記録した。円柱の外側の短い(<10mm)直線状のトンネルは、定規で測定した。長い曲がったトンネルは、トンネルに沿って一片のゴムバンドを乗せ、このゴムバンドの長さを測定して決定した。試験は7日後に終了した。終了にあたり、死亡率を測定すると共に、円柱内部のトンネルの距離を、0.5mmの絶縁電話線をトンネル内に通し、ワイヤを引き抜いた後、その長さを定規で測定して決定した。いずれか特定の日の円柱内側のトンネルの長さ決めるのに、特定の日の円柱の外表面のトンネルの全長とトンネルの長さの比率を計算し、円柱の内側のトンネルの全長をこの比率で分割した。
【0120】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマー溶融物が形成されるまでポリスチレン(PS)を加熱し、
(b)該ポリマー溶融物中に発泡剤を導入して発泡可能な溶融物を形成し、
(c)該発泡可能な溶融物を発泡成形してXPSプレフォームを形成する工程からなる(ただし、工程(a)及び/又は(b)の少なくとも一方で、フェニルピラゾール類、クロロフェナピル、及びヒドラメチルノンの群から選ばれる少なくとも一種の殺虫剤が、前記ポリマー溶融物中に導入される)殺虫剤修飾ポリスチレン押出発泡体(XPS)プレフォームの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも一種の殺虫剤が、工程(a)において前記ポリマー溶融物に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一種の殺虫剤が、ポリマー溶融物中に、純物質、製剤、またはマスターバッチの形で導入される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一種の殺虫剤がポリマー溶融物中に水性製剤の形で導入される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一種の殺虫剤がポリマー溶融物中にマスターバッチの形で導入される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マスターバッチの殺虫剤濃度が1〜15重量%である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マスターバッチが、工程(a)において、前記ポリマー溶融物と10:1〜1:100の比率で混合される請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記殺虫剤がフィプロニルである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一種の上述の殺虫剤に加えて、少なくとも一種の他の殺虫剤が混合されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記他の殺虫剤が、ピレスロイド類と、ネオニコチン受容体作動薬/拮抗薬、ホウ酸塩類、カルバリル、クロルアントラニリプローズ、クロルピリホス、ジフルベンズロン、フェニトロチオン、フロニカミド、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、インドキサカルブ、イソフェンホス、ノビフルムロン、メタフルミゾン、スピノサド、スルフラミドなる群から選ばれる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一種の殺虫剤の前記XPSプレフォーム中での濃度が10〜1000ppmである請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により得られるXPSプレフォーム。
【請求項13】
請求項12に記載のXPSプレフォームの絶縁材料としての利用。
【請求項14】
請求項12に記載のXPSプレフォームの建物のシロアリからの保護のための利用。
【請求項15】
請求項12に記載のXPSプレフォームを、保護すべき建物の基礎、外壁または屋根内に建造する建物のシロアリからの保護方法。

【公表番号】特表2012−506403(P2012−506403A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532615(P2011−532615)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063780
【国際公開番号】WO2010/046379
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】