説明

比熱容量の測定

【課題】
【解決手段】熱量計で媒質の比熱容量 (c)を測定する方法であって、前記熱量計は反応器(1)と、攪拌器(3)と、内部熱均衡を供する第一のサーモスタットと、第二のサーモスタットと、外部熱均衡を供する手段と、中央制御部(35)とを備え、前記方法は近等温条件下の前記反応器(1)内に配置される媒質に対して変調エネルギープロファイルを適用するステップと、少なくとも下記の要素のうちの一つ、すなわち、媒質と、反応器(1)と、第一のサーモスタットと、第二のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する前記手段の結果的エネルギー変化を時間関数として監視するステップと、内部熱均衡と外部熱均衡とを互いに独立的に所定の時間間隔で測定するステップと、全体の熱伝達係数(UA)と媒質の比熱容量 (c)を同時且つ互いに独立的に内部熱均衡と外部熱均衡から、時間関数として算出するステップを備えることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱量計型反応器などの温度制御型反応器内部に配置された試料又は媒質の比熱容量cの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
熱容量 Cは熱物性である。媒質の熱容量は、構成体の異なる部分の熱容量も同様に、スケールアップ処理及び反応器設計に関して、また安全評価に関しても同じく既知であるはずである。媒質又は試料、例えば流体の熱容量は熱量法で少なからず計量されるもので、該熱量法では反応器内の媒質への温度勾配などの特等温度プロファイルの適用を含む。温度プロファイルは通常、反応器と相互作用する温度制御システムで生成され制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱量実験は実施するに容易であるが取得データの精度に関して幾つかの難点を抱えている。精度は校正手順と、例えば反応器及びその温度制御システムを介する計器雑音や熱損失に影響される。加えて、このような実験は非常に手間がかかりがちである。熱容量Cの測定精度は大きな温度差を利用することで上昇できるが、熱容量Cが温度に依存することから、正確なデータを得るには小さな温度差で十分であろう。
【0004】
共通であるが手間のかかる熱容量Cの測定手法として、差分走査型熱量計測法 (DSC:Differential Scanning Calorimetry)があり、試料と基準値との温度差は時間関数として測定され、他方温度プロファイルは試料と基準値とに適用される。この手法は各試料の個別的準備が必要である。加えて、試料は攪拌なしで小さなカップに載置することから、不均質性がこの試料に発生する。これら不均質性は実験結果に対し負の影響与え得る。
【0005】
US 6,071 ,008 Aにはより大きなスケールでの熱容量の絶対値測定の比較可能な手法が開示されており、この手法ではステンレス製チューブが温熱浴槽に配置され、その温度は電気的に制御される。
【0006】
EP 0 647 839 A1では、化学反応器における、強制温度発振の実行を伴う全域熱伝達係数の測定について開示している。反応器は従来の二重壁型反応器でサーモスタットを有し、該サーモスタットは温度制御ジャケット又は中空コイルなどの熱搬送体を備え、該搬送体は反応器と接触し、熱伝達媒質に満たされており且つ熱交換器などの過熱・冷却部と相互作用している。この手法はまた試料の不均質性、特に局部的な不均質性をもたらす傾向があり、結果に対し負の影響を与えることとなる。特に、サーモスタットの正確で時宜を得た制御では、幾分の共通熱搬送体では温度変化に対して反応の遅延がみられることから、困難性を呈することとなる。反応器を介する熱流は一般的には反応器内部温度と、特に熱搬送体のサーモスタット温度間の温度差を用いて決定される。
【0007】
従って、本発明は互いに独立的な熱容量と全熱係数の高速で正確な測定方法であって、従来技術の欠点を克服する方法を開発すること、更に本方法を実施する熱量計を開発することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
熱量計で媒質の比熱容量を測定する方法であって、前記熱量計は反応器と、攪拌器と、内部熱均衡を供する第一のサーモスタットと、第二のサーモスタットと、外部熱均衡を供する手段と、中央制御部とを備える。前記方法は近等温条件下の前記反応器内に配置される媒質に対して変調エネルギープロファイルを適用するステップと、媒質と、反応器と、第一のサーモスタットと、第二のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する前記手段の結果的エネルギー変化を時間関数として監視するステップとを備える。本方法は更に、少なくとも、内部熱均衡と外部熱均衡とを所定の時間間隔で測定するステップと、全体の熱伝達係数UAと媒質の比熱容量 cを同時且つ互いに独立的に内部熱均衡と外部熱均衡から、時間関数として算出するステップを備えることを特徴とする。
【0009】
用語“近等温”とは、変調エネルギープロファイルが適用されない限り、また変調エネルギープロファイルについての選定振幅が極めて小さい限りにおいて、媒質は等温条件に維持される実験事実、また変調が加えられる時にシステムは僅かに外乱を受けるのみであり、ほぼ等温的に振舞うという実験事実の謂いである。熱量計は少なくとも二つのサーモスタットを備え、好適には熱流と電力補償の原理の組み合わせに基づいて走査でき得る。この組み合わせは非常に利点性があり、内部熱均衡と外部熱均衡の独立的な決定を可能とする。反応器の内部熱均衡と外部熱均衡を供する手段に関連する外部熱均衡は、互いに独立的に決定できる。従って、全体の熱伝達係数UAをいかなる校正にも依存せずに媒質の比熱容量Cから直接的且つ間接的に測定できる。全体の熱伝達係数UA及び媒質の比熱容量Cもまた同様に、実験を通して継続的にまた化学的又は物理的反応の実施中であっても、測定できる。全体の熱伝達係数UA及び媒質の比熱容量Cは、所望するのであれば、継続的に若しくは所定の時間間隔で、全体の熱伝達係数UAの変化及び媒質の総熱容量Cp、mの変化の監視を許容するよう決定することができる。更に、治験下の媒質は、均質な混合媒質を供するべく、また測定結果の精度を高める媒質における均質な熱及び/又はエネルギー配分を供するべく、反応器内に配置される攪拌器で継続的に攪拌され得る。
【0010】
用語“媒質”は、いかなる種類の材料、純粋物質、また化学的反応を実施すべく、例えば、他の物質を加味する異なる及び/又は変化組成を持つ試料の反応混合又はタイプとして理解すべきである。
【0011】
変調エネルギープロファイルは、特に前記第一のサーモスタットがエネルギー変化に対して早い反応を示す時、また媒質に変調を直接伝達できる時に、第一又は内部サーモスタットに重畳されるエネルギー変調により生成できるものである。
【0012】
更なる実施の形態では、変調エネルギープロファイルは、外部熱均衡を供する手段としての第三又は中間サーモスタットの信号に重畳されるエネルギー変調により生成できる。前記第三のサーモスタット
は熱的に第二のサーモスタットと接続可能である。
【0013】
他の実施の形態では、外部熱均衡又はより詳細にはUAは反応器内に配置され、外部熱均衡を供する手段として動作する熱流束センサーアレイで決定できる。
熱量計とその構成及びその適合パラメータに基づいて、媒質は変調エネルギープロファイルに従わす事ができるものであって、これは第一のサーモスタットか、かりに適用可能であれば、第三のサーモスタットについて、変調電力プロファイルの形態、変調熱流プロファイルの形態、又は変調温度プロファイルの形態であってよい。変調エネルギーは、例えば、電気ヒータのような変調電気エネルギーから、例えば温度制御される媒質の変調熱流から、又は変調輻射エネルギーから発生できる。
【0014】
変調エネルギープロファイルが媒質に適用されるとき、これは熱量計の他の構成要素にも影響するもので、これにより媒質に加わる変調の応答として類似の変調が出現し始める。これら媒質及び/又はいずれかのサーモスタットに関連する結果的エネルギー変化は、少なくとも一つの温度センサーと少なくとも一つの電力計及び/又は少なくとも一つの熱流センサーにより、直接的及び/又は間接的に測定できる。好ましくは、各構成要素の結果的エネルギー変化は、一つの又は複数の上記装置又は装置の組み合わせにより別途測定される。熱容量の測定は熱量値か電力値に依存するもので、これらは温度値から容易に推定されるか又は熱流センサーで直接測定できる。
【0015】
反応器内の媒質の総熱容量の信頼でき且つ正確な測定には、結果的エネルギー変化の位相及び/又は振幅が監視されなければならない。好ましくは、すべての測定済みエネルギーの振幅と位相が監視される。
【0016】
変調エネルギープロファイルの変調は、例えば、周期性変調又は確率的変調とすることができる、また使用する熱量計に従って選定することもできる。媒質の熱容量は、他のデータ中で、変調の正確な形態についての知識に依存するもので、これは上記測定を実施するために用いられる数理法に組み込まれ得る。変調は小さな変化を誘起するもので、特に小さな温度変化をシステムに誘起する。上記変化は、測定信号の不可避性確率ノイズが与えられる媒質の比熱容量cについて極めて正確な測定を可能とするに十分な大きさとすべきであって、他方Cのような、反応率又は粘度率に関連して治験下の媒質の温度依存性は際立った変化を示さぬよう十分に小さくすべきである。
【0017】
変調は、例えば、周期性の正弦波変調又は直交変調とすることができる。同一の又は異なる振幅を有する単一パルス又は多重パルスを利用することも可能である。ランプ関数又はその他の確率性変調又は周期性変調であっても利用可能である。記載される全ての変調と当該技術で既知のその他の種類のものもまた熱計量システムに1以上の小さな一時的外乱を生じせしめ得る。本発明の方法により、比熱と全熱係数が入力変調についての情報と外乱した熱計量システムから取得されるデータに基づいて決定できる。
【0018】
好ましくは、第一のサーモスタットは補償ヒータを備え、前記第二のサーモスタット及び/又は第三のサーモスタットが供する熱及び/又は媒質が供する熱を補償すべく、制御される。外乱しないシステムについては、第一のサーモスタットは等温条件を維持すべく調整制御される。変調がシステムに加えられる時、特に媒質に加えられる時、第一のサーモスタットは近等温条件を維持すべく制御され得る。
【0019】
第一のサーモスタット、特に補償ヒータは媒質に直接接触して反応器内に配置することができる。その場合、特に第一のサーモスタットが短い応答時間を有する時、第一のサーモスタットが供するエネルギーを変調エネルギープロファイルに重ね合わせることは利点がある。
【0020】
好適な実施の形態によれば、変調エネルギープロファイルは電気補償ヒータで媒質に加えられる温度及び/又は熱変調から発生するものであって、該補償ヒータは媒質と直接に接触している。前記補償ヒータは発振過熱電力を媒質に加えることができる。外部熱均衡を供する手段に依存して、媒質の熱容量と全体の熱伝達係数は、第一のサーモスタットの加熱電力と冷却電力の測定値から独立的に算出できるものであり、また反応器及び/又は熱搬送体の温度、更に第三のサーモスタットの加熱電力と冷却電力、又は熱流束センサーアレイで測定される反応器壁を介して伝達される電力からも同じく算出できる。
【0021】
本発明は媒質の比熱容量の測定と全体の熱伝達係数の測定を可能とするものであって、これは実験中を通して継続的に且つ互いに独立的に高い精度で行われ、更なる装備及び/又はサンプリング手順も必要としない。
【0022】
媒質の比熱容量の測定と全体の熱伝達係数の決定に利用され得る熱量計であって、反応器と、内部熱均衡を供する第一のサーモスタットと、第二のサーモスタットと、外部熱均衡を供する手段と、前記反応器内に配置される攪拌器と、制御部とを備えるものである。前記第一のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する手段は媒質に変調エネルギープロファイルを供するように設計される。前記制御部は媒質、前記反応器、前記第一のサーモスタット、前記第二のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する手段の結果的エネルギー変化を時間関数として監視するアルゴリズムを有するプログラムを備えるものである。前記プログラムは内部熱均衡と外部熱均衡を互いに独立的に測定するよう設計される。前記プログラムは更に媒質の比熱容量と全体の熱伝達係数を同時に且つ独立的に時間関数として決定するよう設計される。
【0023】
前記第一のサーモスタットは補償ヒータと、前記反応器内に配置される第一の温度センサーと、第一の制御器とを備える。
外部熱均衡を供する手段は、熱的に前記第二の温度サーモスタットと接続される第三のサーモスタットを備え、前記第三のサーモスタットは第三の制御器と、加熱・冷却部と、熱的に前記反応器と接続する固体熱搬送体と、前記熱搬送体内の温度を測定する第二の温度センサーを備える。好ましくは、固体熱搬送体は固体金属ジャケット又は反応器を取り巻く固体コイルである。固体熱搬送体は直接、例えば、電気的に加熱若しくは冷却できる。第三のサーモスタットは変調エネルギープロファイルを媒質に提供できる。
【0024】
第三のサーモスタットの加熱・冷却部は第二のサーモスタット、例えば、熱交換器と相互作用する1以上のペルチェ素子として設計できる。
その他の実施の形態では、外部熱均衡を供する手段は少なくとも3個の熱流束センサーから成るセンサーアレイを備える。好ましくは、アレイは線状である。熱流束センサーは反応器壁と接触して、該反応器の内側に配置される。熱流束センサーアレイは反応器内に配置された前記媒質に部分的に浸されている。3個の特有な熱流束センサーの代わりに、線状又は2次元のセンサーアレイを使用することができる。US 7220050 B2には反応器内の流体レベル又は媒質レベルの決定のための類似する熱流束センサー配置法が開示されている。
【0025】
本発明はまた全熱係数と媒質の熱容量をデータから算出するよう設計されるコンピュータプログラムであって、該データは熱量計内に配置される媒質に本発明の方法を適用して取得されるもので、前記熱量計は内部熱均衡と外部熱均衡を互いに独立的に提供するよう適合されている。
【0026】
本発明の方法及び熱量計もまた媒質の比熱容量の測定に用いることができるものであって、以下の実施例と図面により詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】

図1Aは本発明の方法を実施可能な熱量計の横断面図であり、図1Bはその上面図である。上記熱量計は、熱電制御される金属ジャケット10の形態で提供される固体熱搬送体を有する第3のサーモスタットに加え、補償ヒータ8を有する第1のサーモスタットを利用することで、電力補償法及び熱流法を併用する。上記熱量計は等温条件下及び近等温条件下での実験用に設計されている。第2及び第3のサーモスタット用に同種の設計が成された熱量計がEP 1 184 649 A1に開示されている。
【0028】
図1Aに示す熱量計は取り外し可能な蓋2を有する反応器1を備える。反応器1内部には、反応器内の媒質(ここでは、不図示)を攪拌する攪拌器3が配置される。攪拌器3は磁気連結器5を介して攪拌器駆動装置6に連結される。媒質を導入し、更に反応物質を媒質に供給する、及び/又は更にセンサー又は内視鏡などの計測器を導入するにあたり、蓋2は幾つかの開口4を備える。
【0029】
本発明の方法を実施する際、熱量計は少なくとも第1の温度センサー7と補償ヒータ8を備えるものであって、該第1の温度センサーは反応器1内部の媒質温度Tを測定し、該補償ヒータ8は等温条件を維持し且つ/又は変調エネルギープロファイルを媒質に適用するものである。補償ヒータ8と第1の温度センサー7は、第1の制御ループ37を介して接続される温度制御器30と電力出力計31と共に、第一のサーモスタットを構成し、該第一のサーモスタットは内部サーモスタットとも称される。内部反応器温度Tは第一のサーミスタットにより制御及び/又は変調される。温度Tの制御が要求される補償ヒータ8の電気エネルギーは測定中に熱信号qcompとして記録される。
【0030】
開口4を介して、圧力センサー、内視鏡、温度センサー、熱流センサー及び/又は過圧力バルブなどの異なる装置が反応器に取り付け可能となりかつ/又は該異なる装置が反応器1に導入され得る。開口4のデザインは意図する用途により可変である。反応器1底部には、光学センサー13、例えば、赤外ATR(Attenuated Total Reflection)センサーを配置する。反応器1内部には媒質の最適完全混合用に祖流板9を配置する。
【0031】
反応器1を包囲する金属ジャケット10、例えば銅製ジャケット又は銅製ブロックは対称設計される。金属ジャケット10の温度はペルチェ素子11により制御されるもので、該ペルチェ素子11は熱伝導手法により金属ジャケット10と熱交換器12などの第2のサーモスタットに接続される。第3のサーモスタット若しくは中間サーモスタットは金属ジャケット10とペルチェ素子11を備える。好ましくは、少なくともひとつのペルチェ素子11は上記ジャケット10と熱交換器12の間の金属ジャケット10の各外面上に位置する。ペルチェ素子11は熱交換器12と共に加熱/冷却装置を構成するもので、該加熱/冷却装置は金属ジャケットの温度を制御する。
【0032】
金属ジャケット10の温度Tjは第二の温度センサーに監視されている。加えて、各ペルチェ素子11の内面の温度及び該ペルチェ素子11の外面の温度は分離する第三、第四の温度センサー14,15により測定される。好ましくは、各ペルチェ素子11には第三、第四の温度センサー14,15が設けられる。第三、第四の温度センサー14,15の配置は熱量計の上面図を示す図1Bに概略図示されている。
【0033】
熱交換器12若しくは第二のサーモスタットの温度は制御される必要はない。この制御が不必要であるのは、ペルチェ素子11が、熱交換器12の温度に関して正の及び/又は負の温度差に調節可能なためである。熱交換器12の唯一の必要条件としては、該熱交換器12は十分に大きな冷却能力を供するものでなければならない、また実験中の温度変動は概略2°C付近以下とすべき等が挙げられる。熱交換器12からの温度又は熱は、付加的な第四の温度センサー34若しくは熱流センサー34により測定される。
【0034】
金属ジャケット10の温度は、第三のサーモスタットに構築される第二の制御ループ38により制御される。この制御ループ38は少なくともひとつの温度センサー16と温度制御器32を備え、該温度センサー16は金属ジャケット10の温度を測定する。制御器32は電力出力計33に接続されると共に、ペルチェ素子11にも接続される。金属ジャケット10は、その不活性故に、熱伝達媒質が満たされた共通ジャケットより高い温度制御性を有する。
【0035】
熱量計はまた中央制御部35を備え、該中央制御部35は好適には全装置の制御、またデータ取得とその評価も同様に制御するよう設計される。制御部35は図1Aではコンピュータとして表記されており、図1Aでは熱量計と制御部35の異なる部品間の接続部36若しくは導管36は熱量計の2〜3の部品用に図示されているだけである。制御部35は内部ユニットとして構築可能であり、ここに示されるように、外部ユニットとしても構築できる。制御部35は演算手段と本発明の方法を実行するアルゴリズムを有するプログラムを備える。制御部は更にセンサーデータを取得し格納する手段と同様に、熱量計を制御する手段を備える。適当な制御部35は周知なものであることから、ここではその詳細な記述はしないものとする。等温条件及び近等温条件の維持、並びに不必要なエネルギー損失を避けるため、また変化する環境条件下での測定への影響を軽減するため、反応器1、蓋2、金属ジャケット10、ペルチェ素子11並びに熱交換器12は熱絶縁体17で包囲される。
【0036】
補償ヒータ8の出力信号に加え、第二の熱信号が上記熱量計で測定され得る。この第二の熱信号は、金属ジャケット10の温度を規制する上で必要となるペルチェ素子11の出力に関連している。金属ジャケット10の温度は等温的に制御されるか、変調中に近等温的に制御される。等温条件下では、二つの測定電気出力は以下のように記載できる。つまり、媒質温度を一定にするために必要となる補償ヒータ8の出力は、反応出力と内部反応器壁を介する熱流の和を含む。金属ジャケット10の温度を一定にするために必要となるペルチェ素子11の出力は、内部反応器壁を介する熱流に関連しており、且つ反応出力について独立的である。これは、二つの独立性熱均衡の測定にとって不可欠な事項である。
【0037】
図1Bに、図1Aの熱量計の上面図を示す。同様の参照番号は同様の要素を示している。図1Bでは、ジャケット10、ペルチェ素子11、熱交換器12及び異なる種々のセンサー14、15、16、34間の横方向の関係が示されており、且つ上記熱量計の好適な六角形状と異なる開口4の位置も示される。
【0038】
二つの熱流の実験的分離と、それ故にまた上記二つの熱均衡により、熱伝達係数と媒質の熱容量が相互に独立的に、下記に詳細する方法を用いて決定され得る。これが可能となるのは、反応器壁の熱伝達のが測定可能であり、熱均衡に加味出来得ることによる。熱量計の測定原理は、補償ヒータ8とペルチェ素子11による熱流測定に基づいている。
【0039】
金属ジャケット10と反応器1の内部の電気的加熱又は冷却素子によるそれぞれの直接加熱若しくは冷却により、対応する温度の調節が容易に達成され得る。装置の総容積は、例えば、概略250ml以下の容積を有する反応器に対し、0.5 m x 0.2 m x 0.2 m程度である。このような複数の熱量計であっても一つの通風室に容易に配置可能である。更に、熱交換器12は複数の熱量計が同時に機能するように相互作用可能な手法で設計でき、結果並列操作が可能となる。この種の並列操作により、複数の反応器が簡易な手法で直列に通常且つ適切なサイズの外部サーモスタットに接続される。この場合、不可欠となるのは反応器1の金属ジャケット10は互いに独立的に制御されることである。これが不可欠となるのは、各反応器1が自身の第三又は中間サーモスタットを備える場合である。
【0040】
上記図1A, 1Bに示す熱量計に加えて、二つの分離サーモスタットとの相互作用に適合しうるものであって、二つの熱均衡の分離を許容するその他の熱量計もまた、本発明の方法を用いることで媒質の熱容量と全熱係数の決定に利用できる。
【0041】
図2にその他の熱量計の構成を示す。熱量計は媒質39を配置した反応器201を備える。熱制御ジャケット40は反応器201を包囲している。ジャケット40には熱搬送体としての熱伝達流体41が満たされる。熱伝達流体41の温度Tjは熱交換器42で制御されており、該熱交換器42は適当な制御器43に接続されている。熱伝達流体41の温度Tjを監視、制御するため、熱伝達流体41の温度Tjは、熱交換器42の入り口TJιinと出口Tj.outに備えられる適切な温度センサーで測定された温度差から決定される。熱伝達流体41で満たされたジャケット40、熱交換器42及び制御器43により第二のサーモスタットが構成されている。
【0042】
熱量計は更に取り外し可能な蓋202を備えており、該蓋202は攪拌駆動装置206に接続された攪拌器203、反応器内の温度Tを測定する第一の温度センサー207、媒質39と接触する補償ヒータ208、及びコンデンサー44を導入するためのいくつかの開口204を有している。
【0043】
加えて、例えば、媒質39を導入するものであって、更に構成要素を付加するための、又は更なるセンサー類用の開口204が存在する。
補償ヒータ208と第一の温度センサー207は第一の制御ループ237に接続されており、該制御ループ237は電力計231と温度制御器232を備える。これらの構成要素は第一のサーモスタットを構成する。
【0044】
反応器201の内側壁には、熱流量センサーアレイ45が取り付けられる。アレイ45は外部熱均衡を供する手段を構成している。図2に更に詳細な差込構成を示す。アレイ45は少なくとも三個の熱流量センサー46、47、48の線形配置を構成している。アレイ45は部分的に媒質39に浸されており、少なくとも最上部の熱流量センサー46は媒質39とは接触せず、中間センサー47は部分的に浸されており、最下部センサー48は媒質39に浸されている。これらセンサー46〜48からの熱流データにより、全体の熱伝達係数UAの計算が可能となっている。アレイ45はここで示されるように線形アレイで構成可能であるが、幾つかのセンサー列を備えてもよい。アレイ45は少なくとも3つのセンサーを備えるべきであるが、3つ以上でもよく、又は連続センサー帯として設計することが出来る。全体の熱伝達係数UAの決定での精度の獲得には相当数のセンサーが関与している。
【0045】
少なくとも第一の制御ループ237、制御器43、攪拌器203とアレイ45で取得されるデータと情報は中央制御部235に供給されており、該中央制御部235はここでは外部ユニットとして表記されているが内部ユニットとしてもよい。中央制御部235は図1でより詳細に記載されている。
【0046】
熱量計の構成に依存して、サーモスタットの温度、熱流及び/又は電力は熱量計内部に配置される各センサーで監視される。
(全熱係数と総熱容量の測定)
媒質の総熱容量は、数理的手法と定義される変調エネルギープロファイルを熱量計に配置される媒質への適用とを組み合わせることで決定できるものであり、該熱量計は図1と2に示される熱量計のように二つの分離熱均衡を提供できるものであって、ここで変調エネルギープロファイルは第一及び/又は第三のサーモスタットにより適用することが出来る。
【0047】
図1の熱量計について、全熱係数UAは外部熱均衡において構築され、特に冷却電力qcoolにおいて構築される。
【0048】
【数1】

及び
【0049】
【数2】

これらは実験中を通して継続的に又は所定の間隔で決定する事が出来る。冷却電力qcoolは熱流センサーで測定するか、エネルギーから決定できるものであるが、この際エネルギーは第二のサーモスタットと第三のサーモスタット間で交換されるもであって、例えばEP 1 184 649 A1によれば、第三のサーモスタットのモデル化、特にペルチェ素子11についての温度、電流及び電圧のモデル化を介する。媒質の比熱は全体の熱伝達係数と独立的に、二つの熱均衡、すなわち内部熱均衡と外部熱均衡の結果を結合することで決定できる。
【0050】
比熱容量cは印加変調エネルギープロファイルデータと上記変調で誘起されるから決定できるもので、特に変調エネルギープロファイルの特徴、媒質の温度、3個のサーモスタットの熱プロファイル及び/又は温度プロファイルから決定できる。
【0051】
反応器内部の媒質温度Trと包囲ジャケットの温度Tjが相互に独立的に制御され得ることから、二つの独立熱均衡が決定できる。熱均衡とはエネルギー若しくは熱の流入と流出間の差の謂いである。媒質の熱容量の測定するにあたり斟酌される異種の項は下記の表に纏めてあるが、これら異種の項の定義のより詳細についてはA. Zogg, U. Fischer, K. Hungerbvhler, Ind. Chem. Res. 42 (2003), 767−776:を参照されたい。
【0052】
【表1】

反応器の熱均衡と称される内部熱均衡は、媒質qraccの累積電力と反応電力qR間の差を含むものであって、この差は補償ヒータによる電力流入量qcomp、攪拌量qstir及び照射量(dosing)qdosを加えたものと、蓋を介する電力流出量qlid及び反応器壁を介する電力流出量qflowを加えたものとの差に等しい。
【0053】
【数3】

同様な手法で、ジャケットの外部熱均衡又は累積熱均衡を決定することができる。
【0054】
【数4】

熱量計の完全な熱均衡とは内部熱均衡と外部熱均衡を結合させたものである。
【0055】
【数5】

変調エネルギープロファイルを媒質に適用するとき、これら項のそれぞれは定常状態
【0056】
【数6】

と変調項
【0057】
【数7】

との和として記載できる。
【0058】
【数8】

変調熱プロファイル又は変調エンルギープロファイルは小さなだけを示すことを想定すれば、反応電力qと電力損失qloss、及び攪拌器による電力qstirもまた定数と考えられうるものであって、これらは変調項に影響するものではない。熱量計の完全熱均衡
【数9】

は以下のように表現できる。
【0059】
【数10】

図1に示す熱量計について、ジャケットとの温度による電力は通常0.02°C以下と極めて小さいために、ジャケット累積項
【0060】
【数11】

はまた無視出来得る。
未知の媒質の比熱cの決定について、反応壁の熱容量Cp,iは周知の校正関数によって決定できるものであるが、減算されなければならない。これは下記の媒質比熱cの公式に導かれる。ここで、mは反応器媒質の質量である。
【0061】
【数12】

媒質比熱cの上記決定法と組み合わせて図1に示す熱量計により、幾つかの実験が異なる変調エネルギープロファイルで実施される。
【0062】
図2に示す熱量計では、全熱係数UAは熱流センサーアレイで取得する熱流q1、 q2、 q3、反応器内の媒質温度Tおよび流体の熱搬送体の温度
【0063】
【数13】

から算出できるものであって、この時反応器の基底面積A、半径R及びセンサー高さcは周知のものである。これは以下のように表現できる。
【0064】
【数14】

【0065】
【数15】

及び
【0066】
【数16】

媒質の比熱容量cは印加変調エネルギープロファイルデータと上記変調で誘起されるから決定できるもので、特に変調エネルギープロファイルの特徴、媒質の温度、第一と第二のサーモスタットの熱プロファイル及び/又は温度プロファイルから決定できる。図2に示す熱量計での熱容量 cの測定は、第三のサーモスタットが存在しない点で差異があるが、図1で示す熱量計での測定と同じである。壁を介する熱量qflowは配置される熱流センサーにより直接測定出来得る。図2に示す熱量計は第三のサーモスタットを備えていないのでqcoolは適用不可である。
(実験)
特に図1に示す熱量計で幾つかの実験が実施された。これらの実験では、反応器温度とジャケット温度は、図1の制御ループ37、38のような二つの分離したPID (Proportional−Integral−Derivative) 制御器により制御される。変調エネルギープロファイルが、補償ヒータが供する温度変調として媒質に適用される。反応器の設等温度は発振により重複されるか、変調としてのステップ関数を持たせる。
【0067】
媒質の適用された変調エネルギープロファイルは結果的的な反応器温度T、ジャケット温度T、更にまた加熱電力qcompと冷却電力qcoolにも影響する。変調エネルギープロファイルが温度変調として提供される時、結果的的な温度信号と電力信号は同様又は類似の変調を示し且つそれに追随する。各信号の振幅・位相T、T、qcomp、qcoolは収集信号から適合要素、ここではコサイン関数を信号に適用することで算出できる。この種の数理的な信号の最適化は周知であり、それゆえその詳細は記載しない。
(実施例1)
第一の実験では、反応器には34mlの水が満たされる。ジャケット温度Tは17°Cに設定され、熱交換器の温度は15°Cに設定される。双方の温度は実験中一定に保たれた。攪拌器スピードは500 rpmであった。反応器温度Tは、補償ヒータが供する発振設等温度として、変調エネルギープロファイルが重畳(上書き)された。この変調は、結果、は下記に示す反応器温度Tの反応温度プロファイルとなるものであって、ここでtは秒で表記する時間定数である。
【0068】
【数17】

この変調温度プロファイルは、概ね2分発振期間と概略±0.5°Cの振幅に対応している。振幅は、補償ヒータの温度制御器に反応時間の遅延により僅かに変動し得る。図1に示す熱量計の場合、これは約±0.52°Cに等しい。
【0069】
反応の擬似すりため、また照射による電力を供給するため、追加水が実験開始から48分後に毎分0.125 mlの流量で、180分後に総容積50.5 mlに到達するまで付加された。
【0070】
実験中、総熱容量と比熱容量及び全熱係数が12分毎に算出されるが、この算出はまた異なる時間間隔で又は継続的に実施できる。反応温度Tと正弦波エネルギープロファイルと重ね合わせることでCの測定が可能となる。反応温度Tの発振振る舞いは、この振る舞いに追随する反応器温度と冷却電力のなかで観察できる。
【0071】
3つの各発振信号の振幅と位相を決定することで、すなわち、補償ヒータの熱又は温度、媒質の温度及び冷却電力を測定することで、媒質熱容量Cを算出できるものであって、その算出精度は従来の2重壁反応器によるものより高く、これは冷却電力の測定が一定に攪拌された媒質の均質性と第二及び第三のサーモスタットの斬新的な温度制御でより精度が高く行われるからである。
【0072】
ここで変調エネルギープロファイルとして適用される発振変調は一般的に次のように表現できる。
【0073】
【数18】

この発振変調は完全熱容量の数式で実行でき得る(等式7を参照)。
【0074】
【数19】

φ = 0 radで t = 0 sの時、等式13 は以下のように配列できる。
【0075】
【数20】

項Cは 媒質の総熱容量Cp m = m cと、また攪拌器とヒータの熱容量も同様に組み込んでおり、反応器の部分熱容量Cp,i. Cp,jは最適化関数を用いて校正され、該関数はCPliとT, T, qcool, qcompなどの熱均衡に貢献する一組の実験パラメータ間の最善補正を決定する。校正関数は算出された総Cと媒質のCp,mの差である。この校正関数は周知の熱容量の媒質を用いて容易に算出でき、また未知の熱容量の媒質に利用できる。
【0076】
未知の媒質の比熱cを決定するにあたり、上記校正関数で与えられたように、反応器壁の熱容量は減算されなければならない。これは下記の媒質比熱Cの数式に導かれ、ここでmは反応器媒質の質量である。
【0077】
【数21】

アナログ的な実験がエタノールを媒質として用いて実施された。
これら二つの実験結果は図3、4、5に示される。図3は水(HO,◇)とエタノール(EtOH,●)それぞれに対しての総熱容量Cの変化を示す。総熱容量Cは等式14にしたがって算出された。
【0078】
図4の図表に水の総熱容量(●)と比熱容量(o)を示し、図5にエタノールの総熱容量(◇)と比熱容量(◆)をそれぞれ示すものであるが、それらは等式15に基づいて決定された。単線は二つの媒質についての総熱容量と比熱容量の理論値をそれぞれ表している。
(実施例2)
第二の実験では、まず反応器には25 mlの水が満たされ、反応器温度Tは25°Cに設定された。そしてステップ関数は補償ヒータqcompに変調エネルギープロファイルとして適用される。各ステップは0.8°Cの反応温度の上昇を伴い概ね10分継続する。
【0079】
ジャケット温度Tは20°Cに設定され、熱交換器の温度は10°Cに設定された。60分後、総容量50 mlが260分後に到達するまでに、毎分0.125 mlの流量で水を加えられた。攪拌スピードは500 rpmに設定された。
【0080】
総熱容量は20分毎に算出された。ステップ関数の場合、変調は下記のように表現され得る。
【0081】
【数22】

ここで、jは信号iの次数。 熱量計と実験に対し、次数jは1に等しい(j = 1)ことが実験的に決定されうるものであって、等式16は以下のように書き換えることができる。
【0082】
【数23】

ステップ関数がqcompに適用されることから、qcompの次数は0と等しい。そして、等式17は等式7に組み込まれ、下記のようになる。
【0083】
【数24】

【0084】
【数25】

であることから、qcomp,0はqcool,0と等しいと結論する事ができ、結果的に下記のようになる。
【0085】
【数26】

及び
【0086】
【数27】

共に
【0087】
【数28】

媒質と反応器壁の総熱容量は等式20に従って決定でき、そして媒質に対する総熱容量と比熱容量は等式8に従って決定できる。
【0088】
エタノールを媒質として、アナログ的実験が実施された。これら二つの実験結果を図6,7と8に示す。
図6は媒質としての水(◇)とエタノール(●)それぞれに対しの総熱容量Cを示す。総熱容量Cは等式20にしたがって算出された。
【0089】
図7の図表に水の総熱容量(●)と比熱容量(o)を示し、図8にエタノールの総熱容量(◇)と比熱容量(◆)をそれぞれ示すものであるが、それらは等式15に基づき反応器壁の先に校正された熱容量を減算することで得られた。反応器壁の熱容量は特定のパラメータであり、このパラメータは反応器の設計及び材料に依存し且つ通常は反応器の制作者によりすでに特定されているか又は実験的に決定される。単線は二つの媒質についての理論値を表している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1A】図1Aは第一のサーモスタット、第二のサーモスタット及び第三のサーモスタットを、外部熱均衡を供する手段として有する熱量計の横断面図、図1Bはその上面図。
【図1B】図1Aは第一のサーモスタット、第二のサーモスタット及び第三のサーモスタットを、外部熱均衡を供する手段として有する熱量計の横断面図、図1Bはその上面図。
【図2】図2は第一のサーモスタット、第二のサーモスタット及び外部熱均衡を供する手段としての熱流束センサーアレイを有する熱量計の概略図であって、このアレイの拡大図を示す差込み図も示す。
【図3】図3は、図1の熱量計での実験から決定される水(●)用とエタノール(◇)用の媒質と反応器壁との総熱容量に対応する総熱容量Cを示すものであって、発振変調エネルギープロファイルが媒質に適用される。
【図4】図4は水の総熱容量(●)と比熱容量(o)を示す図表で、これらは図3に示す値から決定され、単線は理論値を示す。
【図5】図5はエタノールの総熱容量(◇)と比熱容量(◆)を示す図表で、これらは図3に示す値から決定され、単線は理論値を示す。
【図6】図6は、図1の熱量計での実験から決定される水(●)用とエタノール(◇)用の媒質と反応器壁との総熱容量に対応する総熱容量Cを示すものであって、段階的変調エネルギープロファイルが媒質に適用される。
【図7】図7は水の総熱容量(●)と比熱容量(o)を示す図表で、これらは図6に示す値から決定され、単線は理論値を示す。
【図8】図8はエタノールの総熱容量(◇)と比熱容量(◆)を示す図表で、これらは図6に示す値から決定され、単線は理論値を示す。
【符号の説明】
【0091】
1、 201 反応器
2、 202 蓋
3、 203 攪拌器
4、 204 開口
5 磁気カップラー
6、 206 攪拌器駆動装置
7、 207 第一の温度センサー (T
8、 208 補償ヒータ
9 阻流板
10 金属ジャッケト
11 ペルチェ素子
12 熱交換器
13 光学センサー
14 ペルチェ素子の内面部の第三の温度センサー
15 ペルチェ素子の外面部の第四の温度センサー
16 第二の温度センサー (Tj)
17 熱絶縁体
30 温度制御器
31、 231 電力計
32、 232 温度制御器
33 電力計
34 第四の温度センサー合う意は熱流センサー
35, 235 制御部
36 導管
37 第一の制御ループ
38 第二の制御ループ
39 媒質
40 ジャケット
41 熱伝達流体
42 熱交換器
43 制御器
44 コンデンサー
45 熱流センサーアレイ
46 熱流センサー
47 熱流センサー
48 熱流センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱量計で媒質の比熱容量 (c)を測定する方法であって、前記熱量計は反応器(1)と、攪拌器(3)と、内部熱均衡を供する第一のサーモスタットと、第二のサーモスタットと、外部熱均衡を供する手段と、中央制御部(35)とを備え、前記方法は、
近等温条件下の前記反応器(1)内に配置される媒質に対して変調エネルギープロファイルを適用するステップと、
媒質と、反応器(1)と、第一のサーモスタットと、第二のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する前記手段とのうちの少なくとも一つからの結果的エネルギーの変化を時間関数として監視するステップと、
内部熱均衡と外部熱均衡とを互いに独立的に所定の時間間隔で測定するステップと、
全体の熱伝達係数(UA)と媒質の比熱容量 (c)とを、内部熱均衡と外部熱均衡から同時且つ互いに独立的に時間関数として算出するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、変調エネルギープロファイルは外部熱均衡を供する手段としての第三のサーモスタットにより生成され、前記第三のサーモスタットは前記第二のサーモスタットと熱的に接触することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、外部熱均衡は、外部熱均衡を供する手段としての反応器(201)内に配置される熱流センサーのアレイ(45)で測定されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法において、変調エネルギープロファイルが、変調電力プロファイル、変調熱流プロファイル、又は変調温度プロファイルとして適用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の方法において、結果的エネルギーは、少なくとも一つの温度センサー(7、14、15、16)、少なくとも一つの電力計及び/又は少なくとも一つの熱流センサーを用いて、直接的及び/又は間接的に測定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の方法において、媒質、反応器(1)、第一のサーモスタット、第二のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する手段の結果的エネルギー変化の位相及び/又は振幅を監視することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか記載の方法において、変調エネルギープロファイルは周期的変調又は確率的変調として適用されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、変調は、正弦波変調、矩形変調(rectangular modulation)、単一パルス、多重パルス及び/又はランプ波(ramp)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか記載の方法において、前記第一のサーモスタットは、前記第二のサーモスタット及び/又は第三のサーモスタットにより供される熱と、近等温条件を維持するために媒質により供される熱との少なくとも一方を補償するように制御されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか記載の方法において、前記第一のサーモスタット(A)により供されるエネルギーは、変調エネルギープロファイルと重複されることを特徴とする方法。
【請求項11】
媒質の比熱容量の測定に使用され得る熱量計であって、反応器(1)と、内部熱均衡を供する第一のサーモスタットと、第二のサーモスタットと、前記反応器(1)内に配置される攪拌器(3)と、制御部と、外部熱均衡を供する手段とを備え、
前記第一のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する手段は媒質に変調エネルギープロファイルを供するように設計され、
前記制御部は、媒質、前記反応器(1)、前記第一のサーモスタット、前記第二のサーモスタット及び/又は外部熱均衡を供する手段の結果的エネルギー変化を測定するアルゴリズムを有するプログラムを備え、且つ該測定は前記熱量計内に配置される少なくとも一つのセンサーにより時間関数として取得されるデータに基づいて行われ、
前記プログラムは内部熱均衡と外部熱均衡を測定するよう設計され、前記プログラムは更に媒質の比熱容量と全体の熱伝達係数とを時間関数として同時に且つ独立的に決定するよう設計されていることを特徴とする熱量計。
【請求項12】
請求項11記載の熱量計において、前記第一のサーモスタット(A)は、補償ヒータ(8)と、前記反応器(1)内に配置される第一の温度センサー(7)と、第一の温度制御器(30)とを備えることを特徴とする熱量計。
【請求項13】
請求項11又は12記載の熱量計において、外部熱均衡を供する手段は、熱的に前記第二の温度サーモスタットと接続される第三のサーモスタットを備え、前記第三のサーモスタットは第三の温度制御器(32)と、加熱・冷却部(11)と、熱的に前記反応器(1)とせつぞくする固体熱搬送体(10)と、前記熱搬送体(10)内の温度を測定する第二の温度センサー(16)を備えることを特徴とする熱量計。
【請求項14】
請求項13記載の熱量計において、前記第三のサーモスタットは変調エネルギープロファイルを前記媒質に供するように設計されることを特徴とする熱量計。
【請求項15】
請求項11又は12記載の熱量計において、外部熱均衡を供する手段は少なくとも3個の熱流センサーの配置を含み、前記配置は前記反応器の内部壁に接触するようになされ且つ前記反応器内に配置された前記媒質に部分的に浸されていることを特徴とする熱量計。
【請求項16】
請求項11乃至15のいずれかに記載の熱量計において、前記第二のサーモスタットは前記反応器と熱交換器とを取り巻くジャケット内に配置される流体熱搬送体を備えることを特徴とする熱量計。
【請求項17】
全熱係数と媒質の比熱容量をデータから算出するよう設計されるコンピュータプログラムであって、該データは熱量計の反応器内に配置される媒質に請求項1乃至10のいずれかに記載の方法を適用して取得されるもので、前記熱量計は少なくとも内部熱均衡と外部熱均衡とを独立的に提供し得ることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−500582(P2010−500582A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524110(P2009−524110)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007143
【国際公開番号】WO2008/019813
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(503148188)
【Fターム(参考)】