説明

毛幹の内部領域を化学修飾するための方法

毛幹の内部領域を化学修飾するための方法は以下の工程を含む。すなわち、全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程、及び、毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程である。前記方法は、向上した性能、有効性、及び/又は効率を与えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程とを含む、毛幹の内部領域を化学修飾するための方法に関する。この方法は、向上した性能、有効性、及び/又は効率を与えるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアスタイルの維持は、毛髪を少なくとも部分的にコーティングして、毛髪繊維の表面に作用するポリマー及び他の成分を含む、スタイリング製品を使用することによって行われてきた。この手法には幾つかの難点がある。時間の経過、高い環境湿度、過剰な運動などによってヘアスタイルが損なわれることにより、消費者は一日を通じてヘアスタイルを回復させる必要性を感じることがある。これには、更なるスタイリング製品を塗布する必要がしばしば生ずる。従来のスタイリング製品の効果は、コンディショニング剤も塗布された毛髪に塗布される場合にも損なわれる。更に、毛髪の表面に物質を塗布すると、毛髪の自然な感触及び外観が損なわれ、くすんだ外観及び/又はごわごわした、あるいは不快な感触となってしまう場合がある。
【0003】
ダメージヘア、張りのない髪、又は弱々しい髪を有する消費者、特にヘアドライヤーを使用する消費者にとって、毛髪のボリュームを増すことが求められている。これらの消費者は、豊かな髪、すなわち高いヘアボリュームを有することが自身にも感じられ、また他人にも伝わるようなヘアスタイル、トリートメント及び製品を求めている。髪の動き及び感触を高めることも、これらの消費者によって切望されている。したがって、高いボリュームと、良好な毛髪の感触/動きを同時に得ることができれば消費者にとって望ましい。
【0004】
毛幹の内部領域を化学修飾するための方法及び組成物は、当該技術分野では周知のものである。例えば、米国特許出願公開第2008/0210253A1号を参照されたい。当該方法は、特定のモノマーを含む第1の組成物を毛髪に塗布する工程と、反応開始剤を含む第2の組成物をその毛髪に塗布する工程とを含み得るものである。前記方法によれば、毛髪を何度も洗い、かつ/又は濡らした後に毛幹の剛性が増し、縮れ又は弱々しさといった水分及び/又は湿度の負の効果がより少なくなり得るものであり、更に前記方法によれば、スタイリング製品の塗布量が少なくて済み、かつ/又はより長時間にわたってスタイルを保持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0210253A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記方法は毛幹に対して満足な結果を与えるものであるが、更に向上した性能、有効性及び/又は効率につながる方法が常に求められている。向上した性能に関しては、向上した形状保持性及びスタイル耐久性に対する具体的なニーズが存在する。効率に関しては、毛幹内へのモノマーの浸透性を高め、かつ/又は、例えば毛幹の内部構造内のポリマー鎖の長さを大きくするなど、モノマーの重合性を高めることが求められている。また、例えば、同様の性能を得るのにより少ない活性成分/組成物で済むように、本方法の有効性を高めることも求められている。更に、重合の際の外的因子の影響を制限することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、毛幹の内部領域を化学修飾するための方法であって、
(a)全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、
(b)毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程と、を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書は、本発明を詳細に特定し、かつ個別に特許請求する請求項をもって結論となすものであるが、本発明は、添付図面を併せて考慮することで好ましい実施形態の以下の説明によりより深い理解が得られるものと考えられる。なお、図面中において同様の参照番号は同様の要素を示すものである。
【図1】本発明に基づく処理後の異なる毛髪のフサの付加率(%)(y)を示す棒グラフ。高い相対湿度(暗灰色の棒)とオーブン乾燥(明灰色の棒)とを比較したもの。
【図2】本発明に基づく処理後の異なる毛髪のフサのオメガループ力(Ω)を示す棒グラフ。高い相対湿度(暗灰色の棒)とオーブン乾燥(明灰色の棒)とを比較したものである。非処理のフサはハッチングで示した棒として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のすべての実施形態において、特に断らないかぎり、百分率はすべて、組成物全体の重量を基準としている。特に断らないかぎり、比はすべて重量比である。範囲はすべて、包括的かつ結合可能である。有効数字の数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。
【0010】
特に断らないかぎり、数量はいずれも、「約」という語によって修飾されているものと理解される。特に断らないかぎり、すべての測定は、25℃で周囲条件下において行われたものと理解される。ただし「周囲条件」とは、約1気圧の圧力下で約50%の相対湿度における条件のことを意味する。列挙される成分についてのこうした重量はすべて活性レベルに基づいたものであり、特に断らないかぎり、市販の物質に含有される可能性のある基剤又は副生成物は含まれない。
【0011】
本明細書において使用するところの「毛髪」とは、ヒトの頭部及び頭皮の毛髪を意味する。「毛幹」とは個々の毛髪のストランドを意味し、「毛髪」なる用語と互換可能に用い得る。
【0012】
本明細書において使用するところの「毛幹の内部領域」とは、角皮の内側部分を含む毛幹のあらゆる非表面部分を意味する。「非表面部分」とは、外部環境と直接接触しない毛髪の部分を意味するものとして理解することができる。
【0013】
本明細書において使用するところの「頭皮の近位」とは、伸ばした、すなわちほぼまっすぐとした毛幹の、毛髪の末端よりも距離的に頭皮に近い部分を意味する。したがって、毛髪の約50%は頭皮の近位とみなされ、毛髪の約50%は頭皮の遠位とみなされる。「頭皮の近位x cm」とは、一方の端点が頭皮上、又は頭皮に直接隣接する位置にあり、他方の端点が、伸ばした、すなわちほぼまっすぐとした毛髪の長さに沿って「x」cmとなる位置にあるような、毛髪に沿った距離「x」のことを意味する。
【0014】
本明細書において使用するところの「皮膚科学的に許容される基剤」とは、述べられる組成物又は成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などのない、ヒトの角質組織と接触して使用するうえで適したものであることを意味する。
【0015】
本明細書において使用するところの「誘導体」とは、これらに限定されるものではないが、特定の化合物のアミド誘導体、エーテル誘導体、エステル誘導体、アミノ誘導体、カルボキシル誘導体、アセチル誘導体、及び/又はアルコール誘導体を含む。
【0016】
本明細書において使用するところの「モノマー」とは、反応開始剤の存在下で重合可能な個別の重合していない状態の化学的部分を意味する。
【0017】
本明細書において使用するところの「エチレン性モノマー」とは、オレフィン性の炭素−炭素二重結合(C=C)を含み、反応開始剤の存在下で重合可能な化学種を意味する。
【0018】
本明細書において使用するところの「化学修飾する」、又はその文法的な等価表現は、モノマー及び/又は架橋剤及び/又はポリマーなどの化学的部分が、例えば、ケラチンタンパク質、別の毛髪成分、及び/又は別のモノマー若しくは架橋剤などの第2の化学的部分と安定的に結合することを意味する。
【0019】
本明細書において使用するところの「別々にパッケージングされた」とは、カラーロック組成物が第2の組成物と物理的に接触、又は混合することを防止する任意のパッケージングの形態を意味する。「別々にパッケージングされた」とは、個々の組成物が別々の容器にパッケージングされているか、あるいは組成物同士が物理的に接触しないように1個の容器にパッケージングされていることを意味し得る。
【0020】
本明細書において使用するところの「相対湿度」とは、空気中に存在する水蒸気の量を意味する。本明細書において「高い相対湿度」とは、周囲条件におけるよりも高い相対湿度、すなわち少なくとも70%のことを指す。本明細書において使用するところの「環境湿度」とは、本発明の方法が完了した後に消費者が曝露され得る相対湿度に関する。環境湿度の一例としては、天候状態によるものがある。本明細書において使用するところの「環境湿度耐性」とは、環境湿度の悪影響に効果的に耐える毛髪の性質に関する。
【0021】
本発明は、毛幹の内部領域を化学修飾するための方法であって、
(a)全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、
(b)毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程と、を含む方法に関する。
【0022】
本発明者らは、毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度(本明細書ではRHとも呼ぶ)に10〜90分間にわたって曝露することによって、性能の向上につながる、毛幹の内部領域を化学修飾する方法が与えられることを期せずして見出したものである。
【0023】
実際、高いRHを作用させることは、この技術に関する多くの効果を奏するものである。理論に束縛されずに言えば、毛幹の内部領域を化学修飾する間に高いRHに毛髪を曝露することにより、毛髪全体へのモノマーの拡散性が高められ、かつ/又は毛幹内へのモノマーの浸透性が高められるものと考えられる。より詳細には、トリートメント組成物の成分が溶液の状態に長時間維持され、より流動的となる。更に高いRHは、毛幹を膨潤させ、角皮をより開放させるものと考えられる。
【0024】
毛幹の内部領域を化学修飾する間の高いRHへの曝露により、酸素の影響など、重合反応の際の外的因子の影響も制限される。まず第1に、理論に束縛されずに言えば、酸素は重合に対して阻害的に作用すると考えられ、高濃度の酸素への曝露によってポリマーの鎖長が短くなるものと考えられる。鎖長が短くなると毛髪の構造に対する効果が薄くなり、短いポリマー鎖は、長い鎖長のものと比較して少ない回数の洗髪で毛髪から流れ去ってしまう。したがって、毛髪から酸素を除去することはすべて有益である。高いRHへの曝露の間、重合反応の近傍における酸素濃度は、高いRHの非存在下における場合と比較して低くなる。第2に、空気、すなわち酸素との接触がより大きくなる重合層の外側表面が、犠牲層として機能する可能性があり、この層ではポリマー鎖の長さが短くなる。しかしながら、この犠牲層は内部の重合反応を空気、したがって高濃度の酸素から遮断することが可能である。したがって、内部の重合反応は酸素から更に保護されるために、ポリマー鎖が長くなる。更に、この犠牲層は長いポリマー鎖が洗い流されることを防止し得る。
【0025】
より一般的には、高いRHへの曝露によって、モノマー、反応開始剤、架橋剤などの活性成分、及び/又は組成物の有効性が高められるために、同様の組成物の性能及び/又は同様の量を得るうえで、より少ない量の組成物及び/又はより低い割合の活性成分で済むものと考えられる。これに代えるか、あるいはこれに加えて、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって毛髪を曝露しない、毛幹の内部領域を化学修飾する方法と比較して、同様の活性成分の割合で向上した結果が得られる可能性がある。
【0026】
本発明により得られる効果の1つは、極めて効果的で耐久性があり、かつ最適化されたヘアスタイリングのための基礎が与えられることにある。詳細には、効果には、向上したスタイリング性、高い形状保持力、高いボリューム及び厚さ、長持ちするホールド力、環境湿度に対する耐性、高い光沢、低い縮れ、髪染めの洗い流しの早さ、及びスタイリングのタイプの柔軟性(例えば、カールした髪とストレートヘアとの間で互換性がある)などが挙げられる。更に、毛幹の内部構造が改善され、この改善状態がより長時間にわたって維持される。改善された内部構造の効果としては、より高い毛幹の剛性及び強度がある。更に、毛髪の表面構造にも利する点がある。より詳細には、角皮がより規則的なパターンを形成することで毛髪の光沢が増し得る。これらの効果は、先行技術において知られていたものと比較して優れたものである。
【0027】
本発明は、全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むヘアトリートメント組成物からなる。
【0028】
エチレン性モノマーは毛幹に浸透するのに適したサイズを有し、基剤中に可溶性又は分散性なものである。エチレン性モノマーは、約500g/モル未満、好ましくは約50g/モル〜約500g/モル、より好ましくは約75g/モル〜約400g/モル、更により好ましくは約100g/モル〜約400g/モルの分子量を有し得る。
【0029】
この技術のための化合物を選択する方法の1つは、1群のエチレン性モノマーから選択することであり、モノマーは、アクリレート、アクリルアミド、又はビニルのファミリーから選択することができる。モノマーは、水性基剤、及び測定に重量測定法を用い、5〜10重量%の程度まで毛髪に浸透することができる。モノマーは、反応開始剤の存在下、35℃で30分以内に約75%の完了状態にまで反応し得る。別の実施形態では、モノマーは、反応開始剤の存在下、35℃で30分以内に約90%〜約100%の完了状態にまで反応し得る。最終的に生成するポリマーは水溶性であるか、あるいは通常のシャンプーによって毛髪の表面から除去することができる。これらのモノマーは単独で使用するか、あるいは反応性及び溶解度を高めるために、他の活性成分とのコモノマーとして使用することができる。
【0030】
好適なエチレン性モノマーとしては、以下の化合物、すなわち、メサコン酸、2−ペンテン酸、チグリン酸、チグリン酸エステル、フラン−3−アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、マレアミド酸、3−アミノクロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸無水物、トリメチルシリルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、2−アセトアミドアクリル酸、ビニルスルホン酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ビニルプロピオネート、ビニルアニソール、ビニルクロトネート、メチル3−ヒドロキシ−2−メチレンブチラート、メタクリロイル−L−リシン、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、2−アクリルアミドジグリコール酸、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、N−イソプロピルメタクリルアミド、2−アミノエチルメタクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム塩、アルキルアセトアミドアクリレート、スルホアルキル(メタ)アクリレート、並びにこれらの塩、異性体、誘導体及び混合物が挙げられる。
【0031】
好ましくは、エチレン性モノマーは、スルホ(メタ)アクリレート、その塩、異性体、誘導体及び混合物である。本発明のスルホアルキル(メタ)アクリレート化合物は、重合していない形態であるものと理解され、スルホアルキル(メタ)アクリレートのポリマーは含まれない。より好ましくは、スルホアルキル(メタ)アクリレート化合物は、3−スルホプロピルアクリレート(CAS番号31098−20−1)である。スルホプロピルアクリレート化合物は、スルホプロピルアクリレートエステル、スルホアルキルプロペノエート、アクリル酸プロピルエステルスルホネート、プロペン酸スルホアルキルエステル、及び/又はスルホアルキルプロペン酸エステルとしても知られる場合もある。トリートメント組成物は、全組成物の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約15重量%、より好ましくは約5重量%〜約10重量%、更により好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、最も好ましくは約10重量%〜約20重量%のスルホプロピルアクリレート化合物を含み得る。
【0032】
エチレン性モノマーは、アルキルアセトアミドアクリレート化合物であってもよい。本明細書において使用するところの「アルキルアセトアミドアクリレート」とは、アルキルアセトアミドアクリレートの誘導体、塩及び/又は異性体を含むものと理解される。本発明のアルキルアセトアミドアクリレート化合物は、重合していない形態であるものと理解され、アルキルアセトアミドアクリレートのポリマーは含まれない。有用なアルキルアセトアミドアクリレート化合物の一例として、メチル−2−アセトアミドアクリレート(CAS番号35356−70−8)がある。トリートメント組成物は、全組成物の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約15重量%、より好ましくは約5重量%〜約10重量%、更により好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、最も好ましくは約10重量%〜約20重量%のメチル2−アセトアミドアクリレート化合物を含み得る。
【0033】
あるいは、エチレン性モノマーは、少なくともスルホ(メタ)アクリレートとアルキルアセトアミドアクリレートとの混合物である。
【0034】
トリートメント組成物は反応開始剤も含む。前記反応開始剤は、エチレン性モノマー及び/又は架橋剤と、ケラチン及び/又は別のモノマーとの結合を促進するうえで有用である。トリートメント組成物は、全組成物の約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは約0.01重量%〜約3重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の反応開始剤を含み得る。好適な反応開始剤のクラスの例としては、これらに限定されるものではないが、ペルオキシジサルフェート、過酸化物、過酸、過炭酸塩、リン酸塩、マンガン酸塩、ホウ酸塩、ビス−アルキルアミジン、亜硫酸塩、ペルオキシエステル、ビス−シアノカルボン酸、α−アミノ酢酸、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な反応開始剤の非限定的な例としては、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酢酸、硝酸アンモニウムセリウム(IV)、ヒドロキシメタンスルフィン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
トリートメント組成物は、少なくとも1種類の架橋剤を更に含んでもよい。また、本方法は、架橋剤を含む架橋剤組成物を提供し、塗布する工程を更に含んでもよい。前記架橋剤は、毛幹に浸透するのに適したサイズの分子量を有し、約500g/モル未満、好ましくは約100g/モル〜約500g/モル、より好ましくは約100g/モル〜約400g/モル、更により好ましくは約200g/モル〜約400g/モルの分子量を有する。好適な架橋剤の例としては、これらに限定されるものではないが、1,4−ビスアクリロイルピペラジン、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フォスフェート、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
架橋剤の重量比率に対するエチレン性モノマーの重量比率の比は、好ましくは約50:1〜約10:1、より好ましくは約40:1〜約10:1、更により好ましくは約20:1〜約10:1である。
【0037】
トリートメント組成物は、少なくとも1種類の無機又は有機触媒を更に含んでもよい。好ましくは、トリートメント組成物は、全組成物の約0.01重量%〜約1重量%の少なくとも1種類の無機又は有機触媒を含む。また、本方法は、少なくとも1種類の無機又は有機触媒を含む触媒組成物を提供し、塗布する工程を更に含んでもよい。好ましくは、触媒組成物は、全組成物の約0.01重量%〜約1重量%の少なくとも1種類の無機又は有機触媒を含む。好適な有機触媒の非限定的な例としては、2−ピロリジノエタノール、1−ピペリジン−エタノール、4−メチルモルホリン、2−モルホリノエタノール、テトラメチルエチレンジアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な無機触媒の非限定的な例としては、セリウム、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、及びこれらの混合物の塩及び/又は水和物が挙げられる。
【0038】
トリートメント組成物は、少なくとも1種類の塩基を更に含んでもよい。また、本方法は、塩基を含む塩基組成物を提供し、塗布する工程を更に含んでもよい。前記塩基組成物は、本明細書で開示する他の組成物とは別にパッケージングすることができる。前記塩基組成物は、本明細書で開示する組成物の1つ又は任意の組み合わせのpHを調節するうえで有用である。塩基組成物は、7.0よりも高い、好ましくは約7.0〜約12.0、より好ましくは約8.0〜約12.0、更により好ましくは約9.0〜約11.0のpHを有し得る。これに加えるかあるいはこれに代えて、塩基組成物は、約1〜約40、好ましくは約10〜約30の予備アルカリ性(reserve alkalinity)を有する。好適な塩基の非限定的な例としては、これらに限定されるものではないが、アンモニウム塩、アミン、水酸化物、メタケイ酸塩、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な塩基の非限定的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、エタノールアミン、アミノメチルプロパノール、炭酸アンモニウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
トリートメント組成物は、少なくとも1種類の有機又は無機塩を更に含んでもよい。好ましくは、トリートメント組成物は全組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%の少なくとも1種類の有機又は無機塩を含む。また、本方法は、塩組成物を提供し、塗布する工程を更に含んでもよい。前記塩組成物は、全組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%の少なくとも1種類の有機又は無機塩を含む。有機塩の例としては、これらに限定されるものではないが、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、塩素酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物(これに限定されないが、塩化物を含む)、及び/又はスルホン酸塩から選択される少なくとも1種類のアニオンを、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、アンモニウム(テトラアルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムなど)、ホスホニウム、バリウム、リチウム、及び/又はマグネシウムから選択される少なくとも1種類のカチオンと反応させることにより形成される塩が挙げられる。好適な有機塩の非限定的な例としては、モノブチルリン酸ナトリウム及びジブチルリン酸ナトリウム、並びにモノエチルリン酸ナトリウム及びジエチルリン酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態では、塩は無機カチオンを含む。一実施形態では、無機カチオンは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、銀、ランタン、並びにこれらの錯体及び混合物からなる群から選択される多価カチオンである。より好ましくは、無機カチオンはストロンチウム又はアルミニウムである。
【0040】
トリートメント組成物は、少なくとも一種類のゲル化剤を更に含んでもよい。好ましくは、トリートメント組成物は全組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.2重量%〜約5.0重量%のゲル化剤を含む。また、本方法は、全組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.2重量%〜約5.0重量%のゲル化剤を含むゲル化組成物を提供し、塗布する工程を更に含んでもよい。前記ゲル化剤は、組成物に所望の粘性を与えるうえで有用である。必要に応じて用いられる好適なゲル化剤の非限定的な例としては、架橋カルボン酸ポリマー、非中和型架橋カルボン酸ポリマー、非中和型変性架橋カルボン酸ポリマー、架橋エチレン/無水マレイン酸コポリマー、非中和型架橋エチレン/無水マレイン酸コポリマー(例えば、モンサント社(Monsanto)より市販されるEMA 81)、非中和型架橋アリルエーテル/アクリレートコポリマー(例えば、アライド・コロイズ社(Allied Colloids)より市販されるSalcare(商標)SC90)、ポリアクリル酸ナトリウムの非中和型架橋コポリマー、鉱油、及びPEG−1トリデセス−6(例えば、アライド・コロイズ社(Allied Colloids)より市販されるSalcare(商標)SC91)、メチルビニルエーテル及び無水マレイン酸の非中和型架橋コポリマー(例えば、インターナショナル・スペシャルティ・プロダクツ社(International Specialty Products)より市販されるStabileze(商標)QM−PVM/MAコポリマー)、疎水変性非イオン性セルロースポリマー、疎水変性エトキシ化ウレタンポリマー(例えば、ユニオンカーバイド社(Union Carbide)より市販されるアルカリ膨張性ポリマーであるUcare(商標)Polyphobeシリーズ)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これに関連して、「非中和型」なる用語は、必要に応じて用いられるポリマー及びコポリマーゲル化剤物質が、中和されていない酸モノマーを含んでいることを意味する。好ましいゲル化剤としては、ヘアコンディショニング製品に使用するのに適した、水溶性の中和されていない架橋エチレン/無水マレイン酸コポリマー類、水溶性の中和されていない架橋カルボン酸ポリマー類、水溶性の疎水変性非イオン性セルロースポリマー類、及び界面活性剤/脂肪族アルコールゲル網状組織が含まれる。
【0041】
一実施形態では、トリートメント組成物は、そのまま使用可能なトリートメント組成物として提供することができる。本明細書において使用するところの「そのまま使用可能な」とは、スタイリスト/エンドユーザー/消費者にそのまま使用可能な形態で販売される組成物を意味する。すなわち、スタイリスト/エンドユーザー/消費者が更なる調製及び/又は混合を行うことなく前記組成物を直接毛髪に塗布することが可能である。代替的な一実施形態として、トリートメント組成物は、即時調製型のトリートメント組成物として提供することもできる。すなわち、トリートメント組成物を、毛髪への塗布の前、好ましくは毛髪への塗布の前10分以内、より好ましくは毛髪への塗布の前1分以内に、少なくとも2つの異なるプレミックス組成物を互いに混合することによって調製する。しかしながら、トリートメント組成物中に存在する反応性化学物質のため、トリートメント組成物は毛髪への塗布の前に調製されることが好ましい。
【0042】
トリートメント組成物が毛髪への塗布の前に調製される場合、本方法は、(本明細書において述べるような)エチレン性モノマーを含むモノマー組成物、及び(本明細書において述べるような)反応開始剤を含む反応開始剤組成物を提供し、両方の組成物を互いに混合する工程を更に含む。前記工程は、即時調製型トリートメント組成物を毛髪に塗布する工程に先立って行われる。トリートメント組成物は、モノマー組成物及び反応開始剤組成物以外に、塩組成物、ゲル化組成物、塩基組成物、触媒組成物、架橋剤組成物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの更なる組成物を混合することによって提供することもできる。
【0043】
代替的な一実施形態では、毛幹の内部領域を化学修飾するための方法は、エチレン性モノマー及び皮膚科学的に許容される基剤を含むモノマー組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、反応開始剤及び皮膚科学的に許容される基剤を含む反応開始剤組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程とを含む。この実施形態では、モノマー組成物及び反応開始剤組成物を塗布する工程は、同時に行ってもよく、又は、先にモノマー組成物を、次いで反応開始剤組成物を塗布することにより、若しくは先に反応開始剤を、次いでモノマー組成物を塗布することにより、連続的に行ってもよい。
【0044】
本発明の組成物は、約60%〜約99.9%、好ましくは約70%〜約95%、好ましくは約80%〜約90%の皮膚科学的に許容される基剤を含み得る。本発明の組成物との使用に適した基剤としては、例えば、ヘアスプレー、ムース、トニック、ジェル、及びリーブオンコンディショナーにおいて使用されるものが挙げられる。基剤は、水;有機オイル;揮発性シリコーン、アミノ系若しくは非アミノ系シリコーンガム又はオイル、及びこれらの混合物などのシリコーン;鉱油;オリーブ油、ヒマシ油、ナタネ油、ココナッツ油、小麦胚芽油、スイートアーモンド油、アボカド油、マカダミア油、アプリコット油、ベニバナ油、ククイナッツ油、アマナズナ油、タマヌ油、レモン油、及びこれらの混合物などの植物油;蝋;並びに、C2〜C10のアルカン、アセトン、メチルエチルケトン、揮発性のC1〜C12の有機アルコール;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルなどのC1〜C20の酸とC1〜C8のアルコールとのエステル;ジメトキシエタン、ジエトキシエタン;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールなどのC10〜C30の脂肪アルコール;ラウリン酸及びステアリン酸などのC10〜C30の脂肪酸;ラウリルジエタノールアミドなどのC10〜C30の脂肪アミド;C10〜C30の脂肪アルキル安息香酸エステルなどのC10〜C30の脂肪アルキルエステル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物などの有機化合物を含み得る。一実施形態では、基剤は、水、脂肪アルコール、揮発性有機アルコール、及びこれらの混合物を含む。
【0045】
本発明は更に、毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程を含む。毛幹の内部領域を化学修飾する方法の間に高いRHに曝露することは、上記に述べたような多くの効果を有する。例えば、これにより、酸素の影響など、重合反応の間の外的因子の影響が制限される。更に、これにより、毛髪全体へのモノマーの拡散性が高められ、毛幹内へのモノマーの浸透性が増大する。更に、トリートメントの成分が溶液の状態に長時間維持され、より流動的となるものと考えられる。更に高いRHは、毛幹を膨潤させ、角皮をより開放させるものと考えられる。
【0046】
毛髪は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%の相対湿度に曝露する。
【0047】
毛髪は、少なくとも10分間〜90分間、好ましくは20分間〜60分間、より好ましくは30分間〜60分間にわたって相対湿度に曝露する。
【0048】
毛髪は、トリートメント組成物の塗布の1時間以内、好ましくはトリートメント組成物の塗布の30分以内、より好ましくはトリートメント組成物の塗布の20分以内に相対湿度に曝露する。
【0049】
毛髪は、好ましくは20℃〜50℃、より好ましくは35℃〜45℃の温度で相対湿度に曝露する。
【0050】
毛髪は、酸素に対する毛髪の曝露を低減させるため、かつ/又は毛髪からの水分の蒸発を低減させるために、毛髪を覆うための手段を用いて相対湿度に曝露する。毛髪は、シャワーキャップなどの器具によって覆うことができる。
【0051】
本方法の特に好ましい実施形態では、毛髪は、ある装置を毛髪の近く、好ましくは毛髪から0.5m未満、より好ましくは毛髪から1cm〜30cmの範囲で使用することによって相対湿度に曝露する。好ましくは、この装置は水蒸気付与装置であり、より好ましくは、水蒸気付与装置は電子的なフード形状の装置である。実際、本発明者らは、こうした装置の使用が、本発明に基づく方法の性能、有効性、及び/又は効率を高めるのに特に適していることを期せずして見出した。好適な装置としては、ウェラ社(Wella)(ダルムシュタット、ドイツ)により販売されるHairspa ION、ミュンスター社(Muster)により販売されるElectronic Master Ionic Action、セリオッティ社(Ceriotti)により販売されるBlitz Super Electronic Ozono、アルテム社(Artem)により販売されるBeautivap Digital Ozon及びOzono Energy、メディアライン社(MediaLine)により販売されるMega Ozono、ビー・エム・ピー社(bmp)により販売されるMod.370、アール・イー・エム社(REM)により販売されるSteam Machine、タカラ・ベルモント社(Takara Belmont)により販売されるMicro Mist(SD200NIW)及びBelmaster(BM−975)を挙げることができる。好適な装置については、欧州特許出願公開第1871194号に述べられている。
【0052】
本方法は、還元剤及び(本明細書において述べるような)皮膚科学的に許容される基剤を含む還元組成物を提供し、毛髪に塗布する工程を更に含んでもよい。前記工程は、トリートメント組成物を提供し、塗布する工程に先立って行われる。前記還元組成物は、毛幹に浸透してジスルフィド結合を還元するうえで有用な薬剤を含む。還元組成物は、全組成物の約1重量%〜約12重量%、好ましくは約4重量%〜約10重量%、より好ましくは約8重量%〜約10重量%の還元剤を含む。好適な還元剤の例としては、これらに限定されるものではないが、チオグリコール酸ナトリウム、無水チオ硫酸ナトリウム、粉末化メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ尿素、亜硫酸アンモニウム、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオ乳酸アンモニウム、モノチオグリコール酸グリセリル、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリセロール、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、ジチオグリコール酸ジアンモニウム、チオグリコール酸ストロンチウム、チオグリコール酸カルシウム、ホルモスルホキシル酸亜鉛、チオグリコール酸イソオクチル、D/L−システイン、チオグリコール酸モノエタノールアミン、ホスフィン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
本方法は、フィニッシング組成物を提供し、毛髪に塗布する工程を更に含んでもよい。前記工程は、高い相対湿度に毛髪を曝露した後に行われる。前記フィニッシング組成物は、酸化剤及び(本明細書において述べるような)皮膚科学的に許容される基剤を含む。酸化剤は過酸化水素(約0.1重量%〜約3重量%)を含んでよく、低いpHで緩衝することができ、ジスルフィド結合を再酸化して、毛髪のアルカリ度を中和するために使用される。
【0054】
本方法は、ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物を提供し、毛髪に塗布する工程を更に含んでもよい。これに加えるかあるいはこれに代えて、この工程は毛髪にスタイリング効果を与える器具を提供し、利用する工程を含んでもよい。前記工程は、高い相対湿度に毛髪を曝露した後に行われる。
【0055】
ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物は、ヘアケア及び/又はヘアスタイリング活性成分、及び(本明細書において述べるような)皮膚科学的に許容される基剤を含み得る。前記ヘアケア及び/又はヘアスタイリング活性成分は、整髪ポリマー、コンディショニング剤(特にカチオン性ポリマー)、クレンジング剤(特に界面活性剤)、増粘剤、グロッシング剤、光沢付与剤、染料又は着色剤、光沢又は着色粒子、シリコーン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物は、ワックス、ジェル、ヘアスプレー、ムース、コンディショニング組成物(特にリーブインコンディショニング組成物)、フィニッシングスプレー、グロッシング又は光沢付与製品、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0056】
器具は、ブロードライヤー、フラットアイロン、クシ、ブラシ、カーラー、カーリングトング、電気カーリング装置、ホイル、ハサミ、クリップ、ヘアバンド、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0057】
本発明に基づく方法が、少なくとも2つの組成物を毛髪に順次塗布する工程を含む場合、前記方法は、リンス組成物を用いて第1の組成物をすすぎ落とす中間工程を、第2の組成物を塗布する前に更に含んでもよい。すすぎ工程は10秒間〜15分間続いてよい。リンス組成物は水であってもよい。例えば、前記方法が、還元組成物及びトリートメント組成物を提供し、還元組成物、次いでトリートメント組成物を毛髪に塗布する工程を含む場合、前記方法は、この還元組成物をすすぎ落とす中間工程を更に含んでもよい。同様に、前記方法が、トリートメント組成物、並びにフィニッシング組成物及び/又はヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物を提供し、トリートメント組成物、次いでフィニッシング組成物及び/又はヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物を毛髪に塗布する工程を含む場合、前記方法は、このトリートメント組成物をすすぎ落とす中間工程を更に含んでもよい。
【0058】
同様に前記方法は、好ましくはタオルを使用して、毛髪を乾燥させる中間工程を含んでもよい。
【0059】
本明細書において述べる組成物はいずれも、本明細書で述べる不可欠な成分と物理的及び化学的に適合し、製品の安定性、美観、又は性能を過度に損ねるものでないかぎり、ヘアケア又はパーソナルケア製品における使用が知られている、あるいは効果的である1以上の任意成分を更に含んでもよい。このような任意成分の非限定的な例については、いずれもその全容を本明細書に援用するInternational Cosmetic Ingredient Dictionary,Ninth Edition,2002、及びCTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Tenth Edition,2004に開示されている。このような任意成分の幾つかの非限定的な例について下記に開示するが、これらには、可塑剤、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性)、中和剤、推進剤、ヘアコンディショニング剤(例えば、シリコーン液、脂肪エステル、脂肪アルコール、長鎖炭化水素、カチオン性界面活性剤など)、皮膚軟化剤、各種のラノリン化合物などの潤滑剤及び浸透剤、ビタミン、タンパク質、防腐剤、染料、毛染め料、脱色剤、還元剤及び他の着色剤、日焼け防止剤、増粘剤(例えば、キサンタンガムなどのポリマー増粘剤)、毛髪又は皮膚を治療するための生理活性化合物(例えば、フケ止め活性成分、育毛活性成分)、粘土などの非ポリマー増粘剤、及び芳香剤が含まれる。
【0060】
本発明は更に、特に、毛髪への塗布に先立って即時調製型の組成物を調製するために、少なくともモノマー組成物及び反応開始剤組成物が提供される場合に、本明細書において述べるような少なくとも2つの組成物を含むキットを更に含み得る。本明細書において使用するところの「キット」とは、本明細書で述べるようなモノマー組成物、及びこれとは別にパッケージングされた反応開始剤組成物を含むパッケージングユニットのことを意味する。キットは更に、塩組成物、ゲル化組成物、塩基組成物、触媒組成物、架橋剤組成物から選択される少なくとも1つの組成物を含んでもよい。キットは、毛髪を高い相対湿度に曝露するためのシャワーキャップを更に含んでもよい。モノマー組成物と反応開始剤組成物とは、キット内で別々の容器にパッケージングしてもよく、あるいは2つの組成物が混合することを防止することが可能な1個の容器にパッケージングしてもよい。このパッケージは、トリートメント組成物の1回の塗布に適したサイズ、すなわち単位用量のものであってよい。
【0061】
キットは、pH調整剤、還元組成物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの更なる組成物を更に含んでもよい。一実施形態では、pH調整剤はある予備アルカリ性(reserve alkalinity)を有し、ある容量の容器内にパッケージングされることにより、容器の内容物が第1及び/又は第2の組成物と混合される際に、得られる組成物の混合物のpHが7.0よりも高くなる。本明細書において使用するところの「予備アルカリ性(reserve alkalinity)」とは、ASTM D 1121に述べられる方法において使用される不凍液を本発明の塩基に置き換えて測定した、pHを調整するために使用される塩基の相対強度及び見かけの濃度のことを意味する。
【0062】
キットは、ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物、シャンプー、コンディショナー、中和剤、着色剤、ジェル、ムース、ポマードなどのスタイリング補助剤、器具、エネルギー供給装置、トリートメントレジメンに従った使用説明書、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの更なる要素を含んでもよい。エネルギー供給装置の例としては、これらに限定されるものではないが、UV、可視光線及び赤外線などの光源、温度変化要素、ヘアドライヤー、アイロン及び加熱カーラーなどのヒーター、超音波装置などが挙げられる。
【0063】
キットは、ヘアトリートメントレジメンに従った使用説明書を更に含んでもよい。トリートメントレジメンは、本明細書で述べる1以上の使用法を含んでもよく、プロのスタイリストによるトリートメントを対象としたものでもよく、又は専門的な訓練を受けたスタイリストではない消費者によるトリートメントを対象としたものでもよい。使用説明書は、毛幹の内部領域を化学修飾するための方法であって、全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程とを含む方法を使用者が行うための案内となるものである。
【0064】
本発明には、本明細書で述べるような1以上の組成物、及びその組成物に関する情報を含む商品が更に含まれ得る。情報は、例えば組成物を含むキットなどのパッケージに直接的又は間接的に取り付けられた印刷物であってもよい。また、情報は、少なくとも1つの組成物の近くに直接的又は間接的に配置してもよい。また、情報は、アプリケーター及び/又は組成物に関連付けられた電子又は同報メッセージであってもよい。情報は、組成物の使用前の人の外観と、組成物の使用後の同じ人の外観とを比較した画像を含んでもよい。
【0065】
特定の好ましい一実施形態では、本発明は、毛幹の内部領域を化学修飾するための方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)必要に応じて還元組成物を提供し、毛髪に塗布した後、毛髪をすすぐ工程と、
(b)エチレン性モノマーを含む少なくとも1つのモノマー組成物、及び反応開始剤を含む反応開始剤組成物、並びに必要に応じて、塩組成物、ゲル化組成物、塩基組成物、触媒組成物、架橋剤組成物から選択される1つの更なる組成物を提供する工程と、
(c)工程(b)の各組成物を混合して、全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を得る工程と、
(d)工程(c)の10分以内に、毛髪に前記トリートメント組成物を塗布する工程と、
(e)毛髪を、トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、特に水蒸気付与装置を使用することによって、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程と、
(f)毛髪から前記トリートメント組成物をすすぐ工程と、
(g)酸化剤、及び/又はヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物を含むフィニッシング組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、を含む方法に関する。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明の範囲内の好ましい実施形態を更に説明し、実証するものである。本発明にはその範囲から逸脱することなく多くの変形形態が可能であることから、これらの実施例はあくまで例示を目的として与えられるものであり、本発明を制限するものとして解釈すべきではない。
【0067】
異なる色の毛髪のフサ(平板なもの、幅2.5cm及び長さ22cm)を下記の組成物で処理した後、後述するようにして高いRH又は対照条件に曝露した。すべてのフサについて、各フサに同量の組成物を加えた。
【0068】
最初に、各フサを表Iに詳細を示すような還元組成物により、10分間、50℃で処理した。還元組成物は、低濃度(低RC)又は高濃度(高RC)の還元剤を含むものを用いた。
【0069】
【表1】

1Hercules−Aqualon社のNatrosol 250 HHX。2Clariant社のGenapol C−100。3BASF社のCremophor EL。
【0070】
次いで各フサを水ですすぎ、タオル乾燥してから、表IIaのモノマー組成物、塩組成物(表IIb又はIIc)、及び反応開始剤組成物(表IId)を混合することによって得たトリートメント組成物で処理した。使用したモノマー組成物、塩組成物、及び反応開始剤組成物の相対的割合は、それぞれ32.5g(モノマー組成物)、31,8g(塩組成物)、及び0.65g(反応開始剤組成物)である。
【0071】
【表2】

4日本製紙株式会社のCellulose KC、5Amerchol社のCellosize HEC QP 4400、
6BASF社のRexat及び3Cremophor EL、2Clariant社のGenapol C−100
【0072】
【表3】

7 Aldrich社、8 Aldrich社
【0073】
【表4】

9 Aldrich社
【0074】
【表5】

10 Aldrich社
【0075】
高い相対湿度又は対照条件(オーブン乾燥)への曝露後、各フサを水ですすぎ、タオル乾燥してから表IIIの100gのフィニッシング組成物で処理した。
【0076】
【表6】

11Cognis社のLanette O、12BASF社のCremophor A 25、13Cognis社のDetex、14Evonik社のBella、15Budenheim社のDinol。
【0077】
「付加量」の測定
「付加」量、すなわち、処理後の毛髪の重量の変化率(%)を測定した。処理の前後で、各フサを化学天秤で秤量し、差をパーセント(%)で計算した。両方の秤量において、毛髪は乾燥状態とした。
【0078】
付加量のデータを図1に示す。付加率(%)を文字yで表されるy軸上に示す。表IVは、異なるフサに行った処理工程の要点を示したものである。
【0079】
「オメガループ」の測定
「付加量」の実験で使用したものと同じフサを、続いてオメガループ測定に使用した。この手順では、毛髪のフサを縦方向に「オメガループ」として知られるギリシャ文字のオメガ(Ω)の形状に形成する。毛髪を毛根及び毛先においてクランプ固定するが、毛髪のO字状の部分は固定しない。次いで、オメガループのO字状部分の上から圧縮力を加える。所定の距離だけ毛髪を圧縮するのに必要な力の量を測定する。
【0080】
オメガループのデータを図2に示す。文字Ωによって表されるY軸上に力をグラム(g)で示す。表IVは、異なるフサに行った処理工程の要点を示したものである。
【0081】

表IVは、フサA〜F及び非処理のフサに行った処理工程を示す。フサの各セットのデータを図1及び2に示す。
【0082】
【表7】

【0083】
本発明に基づく処理後、毛髪は、例えば毛髪のスタイリング時及び/又は毛髪のコンディショニング時に、高い形状保持性及び/又は耐久性、高いボリュームの外観、向上した光沢、向上したくし通り、湿度の影響に対する向上した耐性など(ただしこれらに限定されない)の1以上の効果を示し得る。更なる例としては、一日中持続するスタイルのホールド力、優れたカール明瞭性、高いボリューム及び/又は豊かさ、直毛をカールさせる性質、及び/又は巻き髪をまっすぐに伸ばす性質が挙げられる。
【0084】
本明細書に開示される寸法及び値は、記載される数値そのものに厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、こうした各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛幹の内部領域を化学修飾するための方法であって、
(a)全組成物の0.1重量%〜20重量%のエチレン性モノマー、反応開始剤、及び皮膚科学的に許容される基剤を含むトリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程と、
(b)前記毛髪を、前記トリートメント組成物の塗布の1時間以内に、少なくとも70%の相対湿度に10〜90分間にわたって曝露する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記エチレン性モノマーが、500g/モル未満、好ましくは50g/モル〜500g/モル、より好ましくは75g/モル〜400g/モル、更により好ましくは100g/モル〜400g/モルの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エチレン性モノマーが、以下の化合物:メサコン酸、2−ペンテン酸、チグリン酸、チグリン酸エステル、フラン−3−アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、マレアミド酸、3−アミノクロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸無水物、トリメチルシリルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、2−アセトアミドアクリル酸、ビニルスルホン酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ビニルプロピオネート、ビニルアニソール、ビニルクロトネート、メチル3−ヒドロキシ−2−メチレンブチラート、メタクリロイル−L−リシン、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、2−アクリルアミドジグリコール酸、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、N−イソプロピルメタクリルアミド、2−アミノエチルメタクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム塩、アルキルアセトアミドアクリレート、スルホアルキル(メタ)アクリレート、並びにこれらの塩、異性体、誘導体及び混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エチレン性モノマーが、以下の化合物:スルホ(メタ)アクリレート、好ましくはスルホプロピルアクリレート、アルキルアセトアミドアクリレート、好ましくはメチル−2−アセトアミドアクリレート、及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応開始剤が、以下の化合物:ペルオキシ二硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酢酸、硝酸アンモニウムセリウム(IV)、ヒドロキシメタンスルフィン酸、及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記毛髪が、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の前記相対湿度に曝露される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記毛髪が、20℃〜50℃、より好ましくは35℃〜45℃の温度において前記相対湿度に曝露される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記毛髪が、20〜60分間、より好ましくは30〜60分間にわたって前記相対湿度に曝露される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記毛髪が、酸素に対する前記毛髪の曝露を低減させるため、かつ/又は前記毛髪からの水分の蒸発を低減させるために前記毛髪を覆うための手段を用いて前記相対湿度に曝露される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記毛髪が、ある装置を前記毛髪の近く、好ましくは前記毛髪から0.5m未満において使用することによって前記相対湿度に曝露される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記装置が水蒸気付与装置であり、好ましくは水蒸気付与装置が電子的なフード形状の装置である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
還元剤を含む還元組成物を提供し、塗布する工程を更に含み、前記還元工程が、前記の、トリートメント組成物を提供し、毛髪に塗布する工程の前に行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
酸化剤を含むフィニッシング組成物を提供し、塗布する工程を更に含み、前記フィニッシング工程が、前記毛髪の前記相対湿度への曝露後に行われる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物を提供し、塗布し、かつ/又は前記毛髪にスタイリング効果を与えるためのある器具を提供し、使用する工程を更に含み、前記工程が前記毛髪の前記相対湿度への曝露後に行われる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘアケア又はヘアスタイリング組成物が、整髪ポリマー、コンディショニング剤(特にカチオン性ポリマー)、クレンジング剤(特に界面活性剤)、増粘剤、グロッシング剤、光沢付与剤、染料又は着色剤、光沢又は着色粒子、シリコーン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるヘアケア又はヘアスタイリング活性成分を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記器具が、ブロードライヤー、フラットアイロン、クシ、ブラシ、カーラー、カーリングトング、電気カーリング装置、ホイル、ハサミ、クリップ、ヘアバンド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−503865(P2013−503865A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527906(P2012−527906)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046492
【国際公開番号】WO2011/031453
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】