毛髪処理剤組成物を構成する剤の選択方法、毛髪処理剤組成物およびその製造方法
【課題】 毛髪処理剤組成物においては、アルカリ剤にアンモニアを用いることが多く、一般に使用時に強い不快臭を感じていた。
【解決手段】 毛髪処理剤を構成する(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤からなる毛髪処理剤組成物において、これらの各剤を、臭覚を刺激する所定成分、例えばアンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンなどの割合が、臭覚上の感知限界以下であるものから選択し、これらの剤を用いて構成した。このため、本発明の毛髪処理剤組成物は、使用時においても不快な臭覚を覚えることがなく、快適に使用することができる。また、製造も簡易である。
【解決手段】 毛髪処理剤を構成する(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤からなる毛髪処理剤組成物において、これらの各剤を、臭覚を刺激する所定成分、例えばアンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンなどの割合が、臭覚上の感知限界以下であるものから選択し、これらの剤を用いて構成した。このため、本発明の毛髪処理剤組成物は、使用時においても不快な臭覚を覚えることがなく、快適に使用することができる。また、製造も簡易である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪処理剤組成物に関し、詳しくは、毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人のケラチン質材料、例えば毛髪、体毛または皮膚の処理のために用いる化粧品組成物は、一般に組成物のpHを5〜13の値にするためのアルカリ剤を少なくとも1つ含有することが知られている。塩基性のpHを持つ組成物の場合、そのアルカリ剤の役割は当該組成物の型により異なる。酸化剤として水性過酸化水素を用いる組成物の場合には、水性過酸化水素を分解させるため塩基性pHにする必要がある。一般に毛髪を処理しようとする組成物の場合には、塩基性pHにすることにより毛髪のキューティクルを拡げることを可能にし、毛髪内部に処理剤が入ることを容易にする。これら2つの効果は、組成物が脱毛剤、毛髪の染色または漂白組成物、皮膚用の染色または脱色組成物あるいはパーマネントウェーブまたは直毛化のための毛髪の永久変形用組成物であるならば、化粧品組成物の多くの適用において個別あるいは同時に起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の技術における毛髪処理剤組成物、例えば染毛剤、毛髪脱色剤およびパーマネントウェーブ用剤組成物に一般的に使用されているアルカリ剤は、水性のアンモニアまたは炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩のような刺激臭を有する。このため、使用に際して、この種の毛髪処理剤組成物の使用者が、不快な思いをすることがあるという問題があった。例えば、水性のアンモニアは強い刺激臭で息苦しくなるような臭いをはなつ。パーマネントウェーブ、染色または漂白組成物使用者には、特に迷惑である。更に、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩においても、アンモニア程ではないが刺激臭がある。また、これらのアンモニウム塩では、比較的高い塩基性pHとするには、相当量必要とすることが多く、結局、組成物としての刺激臭を軽減することはできていない。
【0004】
基剤においても、現在一般的に採用されているものは、何らかの基剤臭を発していた。また、皮膚に対し高い刺激を有する基剤も存在した。従来、こうした刺激臭等については、毛髪処理剤組成物にとって避けられないものと考えられており、芳香を有する成分および着香剤を加えることで、刺激を緩和するといった対応が採られているに過ぎなかった。本発明は、こうした毛髪処理剤組成物における刺激臭等の問題を、根本から解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物において、これら複数の剤の各々が、臭覚を刺激する所定成分の割合を、臭覚上の感知限界以下とすることで、毛髪へのダメージも少ない無臭タイプの毛髪処理剤組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の毛髪処理剤組成物は、
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物であって、
前記複数の剤の各々は、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下であることを要旨としている。このため、本発明の毛髪処理剤組成物は、使用時においても不快な臭覚を覚えることがなく、快適に使用することができる。
【0007】
また、本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法は、
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物を製造する方法であって、
前記複数の剤の各々について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択し、
前記複数の剤を調製し、
該調製された剤を所定の容器に収容すること
を要旨としている。
かかる本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法によれば、単純な工程で、使用者に、臭覚上の不快な知覚を与えない毛髪処理剤組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態としての毛髪処理剤組成物を製造する工程を示す工程図である。
【図2】代表的な検知管の外観を示す説明図である。
【図3】実施の形態における評価基準2の手法での臭気の測定手法を示す説明図である。
【図4】実施例の毛髪処理剤組成物を構成する各剤について、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類について、その含有量を測定した結果を示す説明図である。
【図5】実施例の毛髪処理剤組成物を構成するその他の剤について、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類について、その含有量を測定した結果を示す説明図である。
【図6】実施例1ないし3および比較例1ないし3についての評価基準1および3による結果を示す説明図である。
【図7】実施例4,5および比較例4ないし6についての評価基準1および3による結果を示す説明図である。
【図8】実施例6ないし8および比較例7ないし9についての評価基準1および3による結果を示す説明図である。
【図9】実施例1ないし8について、評価基準2による結果を示す説明図である。
【図10】比較例1ないし9について、評価基準2による結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の毛髪処理剤組成物の実施の形態について詳述する。本発明の毛髪処理剤組成物を実施する場合には、複数の剤の各々は、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下であるよう調製される。このとき、複数の剤のいずれにも、芳香を有する成分および着香剤を配合しないものとすることができる。なお、着香剤としては、組成物に何らかの芳香を付与することを目的とするもので、天然香料および合成香料等の香料を挙げることができる。また、臭覚を刺激する所定成分としては、少なくとも、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンが含まれる。これらの成分は、使用者に不快な臭覚を感知させるからである。また、複数の剤としては、(A)アルカリ剤、(B)高精製度の基剤、(C)還元剤などを考えることができる。これらの複数の剤は、使用時に、(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の混合により、臭覚を刺激する不快臭を発することがないものとすれば、更に好ましい。
【0010】
上記複数の剤のうち、成分(A)のアルカリ剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールや2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等無機アルカリ化剤が挙げられる。なかでも、モノエタノールアミンが特に好ましい。
【0011】
成分(A)のアルカリ剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、全組成中に0.5〜20重量%が好ましく、特に好ましくは1〜15重量%である。この配合量が少なすぎると毛髪を膨潤させる効果に劣り、多すぎると還元剤および酸化剤等の作用の妨げになり、また、毛髪の損傷および皮膚への刺激が高くなるからである。
【0012】
これらの剤のうち(B)基剤としては、油剤、活性剤、増粘剤、溶剤、アルカリ剤、還元剤、毛髪保護剤、植物抽出物、安定化剤など、現在一般的に使用できる全ての基剤が挙げられる。このうち、上記の条件を満たす剤の具体例については、以下の「実施例」で詳述するが、逆に精製度が低く、何らかの基剤臭を有するものは、除かれる。例えば、オレイルアルコール、オレイン酸およびそれらより合成される油剤、活性剤等は、特有の臭いを有する基剤であって、本発明の基剤としては使用されない。
【0013】
成分(B)の基剤としては、特に限定されるものではなく、精製度が高く、厳選された素材であることが好ましく、特に好ましくは脱臭精製されていることである。
【0014】
(B)基剤としては、目的とする組成物の用途および剤型等により1種またはそれ以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、組成物の効果を損なわない範囲で加えることができ、特に限定されるものではない。
【0015】
成分(C)の還元剤としては、システインまたはその誘導体、チオリンゴ酸等のメルカプトカルボン酸、チオグリセロール等のメルカプトアルコール類、グリセロールモノチオグリコレート等のメルカプトカルボン酸エステル類、システアミン、システインアミド等のメルカプト化合物、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、アスコルビン酸又はその誘導体が挙げられる。
【0016】
成分(C)の還元剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、アスコルビン酸又はその誘導体が特に好ましい。
【0017】
還元剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、全組成中に0.1〜20重量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜15重量%である。この配合量が少なすぎると組成物の安定性および毛髪に対する処理効果に劣り、多すぎると毛髪の損傷および皮膚への刺激が高くなるからである。
【0018】
本発明の毛髪処理剤組成物には、活性薬剤を配合することも差し支えない。毛髪処理剤組成物に用いられた活性薬剤としては、酸化染料中間体、カプラー、直接染料より成る群から選択される染色化合物などが挙げられる。
【0019】
活性薬剤である酸化染料中間体としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類およびそれらの塩類が挙げられる。これらの中でもp−フェニレンジアミン、p−トルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−(2’−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェニルスルファミン酸、2,5−ジアミノピリジンおよびそれらの塩類が効果および染毛力の点から好ましい。
【0020】
酸化染料中間体は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
【0021】
活性薬剤であるカプラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、3,3’−イミノジフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−o−クレゾール、ジフェニルアミン、p−メチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、タンニン酸、没食子酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシアミノ)−2−メチルフェノールおよびそれらの塩類が挙げられ、その他、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されたものも適宜、用いることができる。
【0022】
カプラーは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。
【0023】
活性薬剤である直接染料としては、ニトロ染料、塩基性染料、タール系色素および天然色素などの公知のものが挙げられる。その中でも、ニトロ系染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料またはインジゴ染料が安定性および効果の面から好ましい。
【0024】
直接染料は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、0.001〜15重量%が好ましく、0.01〜10重量%が特に好ましい。
【0025】
次に、毛髪処理剤組成物の製造方法の実施の形態について説明する。本発明の製造方法では、複数の剤の各々について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択するが、このとき選択は、臭覚を刺激する所定成分として、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンのいずれも、臭覚上の感知限界以下であることを条件として行なえば良い。また、複数の剤を調製し、これを所定の容器に収容するが、かかる工程は次のように行なうことができる。即ち、薬剤の調製は、複数の剤を、油溶性成分である油相、水溶性成分である水相、高温下では不安定な成分である添加剤相に分類して、秤量する工程と、該油相、水相の成分を、それぞれ加温溶解する工程と、それぞれ所定温度以上となった水相を油相に加えて乳化混合する工程と、該乳化混合物を所定温度以下に冷却した後、前記添加剤相の成分を低温で、該乳化混合物に添加する工程とから行なえばよい。
【0026】
[実施例]
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものでない。なお、配合量は、重量%を示す。まず、実施例における毛髪処理剤組成物の製造方法について説明する。図1は、実施例における毛髪処理剤組成物の製造工程を示す工程図である。図示するように、実施例の組成物は、
工程S10:(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の3種類の剤から毛髪処理剤組成物を製造するものとし、これらの各剤について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択する工程、
工程S20:(A)(B)(C)の各剤を、油溶性成分である油相、水溶性成分である水相、高温下では不安定な成分である添加剤相に分類して、秤量する工程、
工程S30:油相、水相の成分を、それぞれ加温溶解する工程、
工程S40:それぞれ所定温度以上となった水相を油相に加えて乳化混合する工程、
工程S50:乳化混合物を所定温度以下に冷却した後、添加剤相の成分を低温で、乳化混合物に添加する工程、
工程S60:添加剤相の成分を加えた乳化混合物を、所定の容器に収納する工程
からなる製造工程により製造される。
【0027】
こうした工程で得られる毛髪処理剤組成物としては、毛髪染毛剤、毛髪脱色剤およびパーマ剤などがある。上記製造工程のうち、工程S10を除く各工程は、公知のものなので、説明を省略し、工程S10、即ち(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の3種類の剤について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択する工程に関して、更に詳しく説明する。こうした各剤に含まれる臭覚を刺激する所定成分としては、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類を取り上げる。これらの成分は、毛髪処理剤組成物に含まれる得る各剤が有する臭い、特に使用者に不快感を生じさせる臭いの成分として代表的なものである。これらの成分は、含有の割合がppmのオーダーでも、使用者に不快感を与えるので、その検出には、検知管を用いた。
【0028】
検知管とは、特定の成分にのみ反応してその色相をかえるような物質を内封したものであり、その代表的な形態を図2に示した。検知管150は、管の種類ごとに、検知し得る物質とその濃度範囲が決まっている。例えば、株式会社ガステック製、検知管・アンモニア3L、という検知管では、測定範囲は0.5〜78ppm、検知限界0.2ppm、変色は桃色から黄色、となっている。また、こうした検知管150には、ガスを吸引する吸引時間なども定められており、例えばアンモニア3Lでは、吸引回数は2回(100ミリリットル)であり、吸引から検知までの時間は60秒である。検知管は、この時間の経過後に、色が変わった領域を読み取ることにより、その物質の濃度を特定することができる。
【0029】
なお、測定対象を検知管150に取り込むには、図3に示したように、
(1)測定対象物1グラムを、サンプルSMPとして、直径30ミリ、深さ15ミリのシャーレ110にとり、その表面をできるだけ平坦に整え、
(2)このシャーレ110を、内容量3リットルのガラスねじ口デシケータ100内に設置し、密栓し、
(3)この状態で3時間放置して、デシケータ100内に検出対象が均一に分散した後、デシケータねじ口105に検知管式気体測定器120を接続し、そのハンドル130を操作して測定ガスを吸引する、
という手法で行なう。
【0030】
工程S10では、各剤について、アンモニア、アミン類、硫化水素およびメチルメルカプタンの濃度を専用の検知管を用いて測定することで、選択を行なう。測定対象の臭気と検知管の型式とは次の通りである。
・アンモニア:ガステック社製、3Lアンモニア検知管
測定範囲、0.5〜78ppm
検知限度、0.2ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・アミン類 :ガステック社製、180Lアミン類検知管
測定範囲、0.5〜10ppm
検知限度、0.1ppm
吸引回数1回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・硫化水素:ガステック社製、4LT硫化水素検知管
測定範囲、0.1〜4ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・メチルメルカプタン:ガステック社製、70Lメルカプタン類検知管
測定範囲、0.1〜8.0ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数4回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間90秒
かかる条件で、測定対象である各剤の臭気の濃度をppm単位で計測した。なお、アミン類については、必要に応じて、ガステック社製、180アミン類検知管(測定範囲、5〜100ppm)も用いた。この検知管は、同社製、180Lアミン類検知管と、その他の測定条件は同一である。
【0031】
図4および図5は、これら各剤について、検知管を用いて、臭覚を刺激する成分のうち、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類について、その含有量をテストした結果を示す説明図である。図示した剤は、「50%チオグリコール酸アンモニウム液」「試薬特級25%アンモニア水」を除けば、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンについて、その濃度は、いずれも臭覚の検知限界以下であった。そこで、少なくともこれら2つの剤は、(A)(B)(C)の各剤については選択しない。なお、図中左端の欄には、各成分が、(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の3種類の剤のいずれに該当するかを示した。
【0032】
以上説明した工程を経て、(A)(B)(C)の各剤が選択され、図1に示した全工程を経ることにより、毛髪処理剤組成物が製造される。そこで、次に、かかる工程で得られた組成物の実施例について説明するが、実施例の各剤の説明に先立ち、本実施例で用いた各評価方法について説明する。
【0033】
<評価基準1>
[臭気]専門パネラ(10名)により、毛髪染毛剤、毛髪脱色剤およびパーマ剤に関し、使用前(第1剤、第2剤および/又は第1剤、第2剤混合時)、使用中および使用後の各パネラが感じる臭気を下記基準により評価した。
◎・・・全く臭気を感じない
○・・・ほとんど臭気を感じない
△・・・わずかに刺激臭あるいは基剤臭を感じる
×・・・強い刺激臭あるいは基剤臭を感じる
【0034】
<評価基準2>
検知管による測定:検知管による測定は、原理的には、各剤についておこなった上記の測定と同様である(再掲)。
(1)測定対象物1グラムを、サンプルSMPとして、直径30ミリ、深さ15ミリのシャーレ110にとり、その表面をできるだけ平坦に整える。
(2)このシャーレ110を、内容量3リットルのガラスねじ口デシケータ100内に設置し、密栓しする。
(3)この状態で3時間放置して、デシケータ100内に検出対象が均一に分散した後、デシケータねじ口105に検知管式気体測定器120を接続し、そのハンドル130を操作して測定ガスを吸引し、アンモニア、アミン類、硫化水素およびメチルメルカプタンの濃度を専用の検知管を用いて測定する。
【0035】
測定対象の臭気と検知管の型式とは次の通りである(再掲)。
・アンモニア:ガステック社製、3Lアンモニア検知管
測定範囲、0.5〜78ppm
検知限度、0.2ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・アミン類 :ガステック社製、180Lアミン類検知管
測定範囲、0.5〜10ppm
検知限度、0.1ppm
吸引回数1回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・硫化水素:ガステック社製、4LT硫化水素検知管
測定範囲、0.1〜4ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・メチルメルカプタン:ガステック社製、70Lメルカプタン類検知管
測定範囲、0.1〜8.0ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数4回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間90秒
かかる条件で、測定対象の臭気の濃度をppm単位で計測した。
【0036】
<評価基準3>
[毛髪の傷み]染毛剤、脱色剤およびパーマネントウェーブ処理をしたそれぞれ毛束から毛髪をそれぞれ30本採取し、毛先から5cmおよび6cmの両端部分を1cm幅のガラス繊維入りテープで止めて、毛先から5cm部分と6cm部分とで破断が生じるようにしておき、マイクロメーターで毛髪の直径を測定し、レオメーターを用いて破断重量を測定し、下記の式(1)により、毛髪の引っ張り強度を求めた。
【0037】
【数1】
【0038】
<実施例1〜3、比較例1〜3>
実施例1ないし3および比較例1ないし3の第1剤および第2剤の組成と、評価基準1による臭気についての評価と、評価基準3による髪の傷みについての評価とを、図6に示した。図6において、各成分は、図1に示した工程に従って、毛髪染毛剤組成物第1剤および第2剤の試料として調製された。
【0039】
なお、実施例中、「非イオン系可溶化剤」とあるのは、日光ケミカルズ株式会社製「BCシリーズ」として購入可能なポリオキシエチレンセチルエーテルを用いた。代替品としては、同社「BSシリーズ」のポリオキシエチレンステアリルエーテルや、日本エマルジョン株式会社、「EMALEX 600シリーズ」などがある。また、「加水分解シルク液」としては、成和化成株式会社製「Promois SILK−1000」を用いた。更に、香料としては、天然精油として、オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリンからそれぞれ抽出した成分を、2:1:1:2の割合で混合したものを用いた。これらのうち、非イオン系可溶化剤については、後述する実施例4、5、比較例4ないし6でも同様である。また、加水分解シルク液と香料については、全実施例および全比較例においても、同じものを用いた。
【0040】
ついで、第1剤および第2剤をそれぞれ重量比1:2の割合で混合した。図6中(混合)とあるのは、この混合状態を示す。混合したものを、長さ20cm、重量15gの未処理毛に塗布し、30分放置、次いで水洗後、ドライヤーにて乾燥した。評価基準3の引っ張り強度は、この状態で測定した。
【0041】
図に示したように、実施例1ないし3では、パネラは、第1剤、第2剤、および両剤を混合した場合でも、全く臭気を感じることがなかった。また、実施例の組成物で処理を受けた毛髪の引張り強度は、いずれも33キログラム以上あり、ダメージは小さかった。これに対して比較例では、いずれも第1剤および両剤を混合した場合には、僅かに刺激臭があるか(比較例1)あるいは強い臭気が感じられた。また、引張り強度は、30キログラム以下となった。
【0042】
<実施例4,5、比較例4〜6>
実施例4,5および比較例4ないし6の第1剤および第2剤の組成と、評価基準1による臭気についての評価と、評価基準3による髪の傷みについての評価とを、図7に示した。図7において、各成分は、図1に示した工程に従って、毛髪脱色剤組成物第1剤および第2剤の試料として調製された。
【0043】
ついで、第1剤および第2剤をそれぞれ重量比1:2の割合で混合した。図7中(混合)とあるのは、この混合状態を示す。混合したものを、長さ20cm、重量15gの未処理毛に塗布し、30分放置、次いで水洗後、ドライヤーにて乾燥した。評価基準3の引っ張り強度は、この状態で測定した。
【0044】
図に示したように、実施例4,5では、パネラは、第1剤、第2剤、および両剤を混合した場合でも、全く臭気を感じることがなかった。また、実施例の組成物で処理を受けた毛髪の引張り強度は、いずれも34キログラム以上あり、ダメージは小さかった。これに対して比較例では、いずれも第1剤および両剤を混合した場合には、強い臭気が感じられた。また、引張り強度は、29キログラム以下となった。
【0045】
<実施例6〜8、比較例7〜9>
実施例6ないし8および比較例7ないし9の第1剤および第2剤の組成と、評価基準1による臭気についての評価と、評価基準3による髪の傷みについての評価とを、図8に示した。図8において、各成分は、図1に示した工程に従って、パーマネントウェーブ用組成物第1剤および第2剤の試料として調製された。
【0046】
なお、実施例6ないし8、および比較例7ないし9で用いた非イオン系可溶化剤は、日光ケミカルズ株式会社製、「CO(またはHCO)シリーズ」として購入可能なポリオキシエチレンヒマシ油(または硬化ヒマシ油)を用いた。代替品としては、同社製「PBC(またはPEN)シリーズ」のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどがある。
【0047】
ついで、長さ20cm、重量15gの未処理毛を直径13mmのロッドに巻き、図8に示したパーマネントウェーブ用第1剤に10分浸積、次いで水洗後、前記パーマネントウェーブ用第2剤に10分間浸積、水洗し、ドライヤーにて乾燥した。評価基準3の引っ張り強度は、この状態で測定した。
【0048】
図に示したように、実施例6ないし8では、パネラは、第1剤、第2剤、および使用中、使用後においても、全く臭気を感じることがなかった。また、実施例の組成物で処理を受けた毛髪の引張り強度は、いずれも34キログラム以上あり、ダメージは小さかった。これに対して比較例では、いずれも第1剤単独および使用中、使用後において、強い臭気が感じられた。また、引張り強度は、25キログラム以下となった。
【0049】
次に、上述した実施例1ないし8について、評価基準2により臭気を評価した結果を図9に示す。なお、図中、第1実施例と第6実施例を除いて、第2剤の表示がないが、第2実施例ないし第5実施例については、第2剤は、第1実施例と同一であり、第7,第8実施例については、第6実施例と同一なので、それぞれ結果の表示を省略した。また、上述した比較例1ないし9についても、同様に測定した結果を、図10に示した。
【0050】
実施例1ないし8については、図9に示したように、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンのいずれについても、ほとんど検出されないか、あるいは極めて微量であり、これらの成分に基づく不快臭は、ほとんど存在しないことが分かる。他方、図10に示した比較例では、アンモニアが30ppm以上(使用した検知管の検知上の上限を越える量)アミン類が100ppm以上(使用した検知管の検知上の上限を越える量)、メルカプタンが比較例1の混合したものと比較例8の第1剤を除いて、4ppm以上検出されており、使用者はかなり強い不快臭を感じることが分かる。
【0051】
[発明の効果]
以上詳述したように本発明の毛髪処理剤組成物によれば、組成物自体に不快な臭いがない。従って、使用者は不快臭に悩まされることなく、各種の毛髪処理剤組成物を使用することができる。また、本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法によれば、簡易な工程で、使用時の不快臭がない毛髪処理剤組成物を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
100…デシケータ
105…ねじ口
110…シャーレ
120…検知管式気体測定器
130…ハンドル
150…検知管
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪処理剤組成物に関し、詳しくは、毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人のケラチン質材料、例えば毛髪、体毛または皮膚の処理のために用いる化粧品組成物は、一般に組成物のpHを5〜13の値にするためのアルカリ剤を少なくとも1つ含有することが知られている。塩基性のpHを持つ組成物の場合、そのアルカリ剤の役割は当該組成物の型により異なる。酸化剤として水性過酸化水素を用いる組成物の場合には、水性過酸化水素を分解させるため塩基性pHにする必要がある。一般に毛髪を処理しようとする組成物の場合には、塩基性pHにすることにより毛髪のキューティクルを拡げることを可能にし、毛髪内部に処理剤が入ることを容易にする。これら2つの効果は、組成物が脱毛剤、毛髪の染色または漂白組成物、皮膚用の染色または脱色組成物あるいはパーマネントウェーブまたは直毛化のための毛髪の永久変形用組成物であるならば、化粧品組成物の多くの適用において個別あるいは同時に起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の技術における毛髪処理剤組成物、例えば染毛剤、毛髪脱色剤およびパーマネントウェーブ用剤組成物に一般的に使用されているアルカリ剤は、水性のアンモニアまたは炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩のような刺激臭を有する。このため、使用に際して、この種の毛髪処理剤組成物の使用者が、不快な思いをすることがあるという問題があった。例えば、水性のアンモニアは強い刺激臭で息苦しくなるような臭いをはなつ。パーマネントウェーブ、染色または漂白組成物使用者には、特に迷惑である。更に、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩においても、アンモニア程ではないが刺激臭がある。また、これらのアンモニウム塩では、比較的高い塩基性pHとするには、相当量必要とすることが多く、結局、組成物としての刺激臭を軽減することはできていない。
【0004】
基剤においても、現在一般的に採用されているものは、何らかの基剤臭を発していた。また、皮膚に対し高い刺激を有する基剤も存在した。従来、こうした刺激臭等については、毛髪処理剤組成物にとって避けられないものと考えられており、芳香を有する成分および着香剤を加えることで、刺激を緩和するといった対応が採られているに過ぎなかった。本発明は、こうした毛髪処理剤組成物における刺激臭等の問題を、根本から解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物において、これら複数の剤の各々が、臭覚を刺激する所定成分の割合を、臭覚上の感知限界以下とすることで、毛髪へのダメージも少ない無臭タイプの毛髪処理剤組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の毛髪処理剤組成物は、
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物であって、
前記複数の剤の各々は、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下であることを要旨としている。このため、本発明の毛髪処理剤組成物は、使用時においても不快な臭覚を覚えることがなく、快適に使用することができる。
【0007】
また、本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法は、
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物を製造する方法であって、
前記複数の剤の各々について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択し、
前記複数の剤を調製し、
該調製された剤を所定の容器に収容すること
を要旨としている。
かかる本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法によれば、単純な工程で、使用者に、臭覚上の不快な知覚を与えない毛髪処理剤組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態としての毛髪処理剤組成物を製造する工程を示す工程図である。
【図2】代表的な検知管の外観を示す説明図である。
【図3】実施の形態における評価基準2の手法での臭気の測定手法を示す説明図である。
【図4】実施例の毛髪処理剤組成物を構成する各剤について、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類について、その含有量を測定した結果を示す説明図である。
【図5】実施例の毛髪処理剤組成物を構成するその他の剤について、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類について、その含有量を測定した結果を示す説明図である。
【図6】実施例1ないし3および比較例1ないし3についての評価基準1および3による結果を示す説明図である。
【図7】実施例4,5および比較例4ないし6についての評価基準1および3による結果を示す説明図である。
【図8】実施例6ないし8および比較例7ないし9についての評価基準1および3による結果を示す説明図である。
【図9】実施例1ないし8について、評価基準2による結果を示す説明図である。
【図10】比較例1ないし9について、評価基準2による結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の毛髪処理剤組成物の実施の形態について詳述する。本発明の毛髪処理剤組成物を実施する場合には、複数の剤の各々は、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下であるよう調製される。このとき、複数の剤のいずれにも、芳香を有する成分および着香剤を配合しないものとすることができる。なお、着香剤としては、組成物に何らかの芳香を付与することを目的とするもので、天然香料および合成香料等の香料を挙げることができる。また、臭覚を刺激する所定成分としては、少なくとも、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンが含まれる。これらの成分は、使用者に不快な臭覚を感知させるからである。また、複数の剤としては、(A)アルカリ剤、(B)高精製度の基剤、(C)還元剤などを考えることができる。これらの複数の剤は、使用時に、(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の混合により、臭覚を刺激する不快臭を発することがないものとすれば、更に好ましい。
【0010】
上記複数の剤のうち、成分(A)のアルカリ剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールや2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等無機アルカリ化剤が挙げられる。なかでも、モノエタノールアミンが特に好ましい。
【0011】
成分(A)のアルカリ剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、全組成中に0.5〜20重量%が好ましく、特に好ましくは1〜15重量%である。この配合量が少なすぎると毛髪を膨潤させる効果に劣り、多すぎると還元剤および酸化剤等の作用の妨げになり、また、毛髪の損傷および皮膚への刺激が高くなるからである。
【0012】
これらの剤のうち(B)基剤としては、油剤、活性剤、増粘剤、溶剤、アルカリ剤、還元剤、毛髪保護剤、植物抽出物、安定化剤など、現在一般的に使用できる全ての基剤が挙げられる。このうち、上記の条件を満たす剤の具体例については、以下の「実施例」で詳述するが、逆に精製度が低く、何らかの基剤臭を有するものは、除かれる。例えば、オレイルアルコール、オレイン酸およびそれらより合成される油剤、活性剤等は、特有の臭いを有する基剤であって、本発明の基剤としては使用されない。
【0013】
成分(B)の基剤としては、特に限定されるものではなく、精製度が高く、厳選された素材であることが好ましく、特に好ましくは脱臭精製されていることである。
【0014】
(B)基剤としては、目的とする組成物の用途および剤型等により1種またはそれ以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、組成物の効果を損なわない範囲で加えることができ、特に限定されるものではない。
【0015】
成分(C)の還元剤としては、システインまたはその誘導体、チオリンゴ酸等のメルカプトカルボン酸、チオグリセロール等のメルカプトアルコール類、グリセロールモノチオグリコレート等のメルカプトカルボン酸エステル類、システアミン、システインアミド等のメルカプト化合物、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、アスコルビン酸又はその誘導体が挙げられる。
【0016】
成分(C)の還元剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、アスコルビン酸又はその誘導体が特に好ましい。
【0017】
還元剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、全組成中に0.1〜20重量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜15重量%である。この配合量が少なすぎると組成物の安定性および毛髪に対する処理効果に劣り、多すぎると毛髪の損傷および皮膚への刺激が高くなるからである。
【0018】
本発明の毛髪処理剤組成物には、活性薬剤を配合することも差し支えない。毛髪処理剤組成物に用いられた活性薬剤としては、酸化染料中間体、カプラー、直接染料より成る群から選択される染色化合物などが挙げられる。
【0019】
活性薬剤である酸化染料中間体としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類およびそれらの塩類が挙げられる。これらの中でもp−フェニレンジアミン、p−トルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−(2’−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェニルスルファミン酸、2,5−ジアミノピリジンおよびそれらの塩類が効果および染毛力の点から好ましい。
【0020】
酸化染料中間体は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
【0021】
活性薬剤であるカプラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、3,3’−イミノジフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−o−クレゾール、ジフェニルアミン、p−メチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、タンニン酸、没食子酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシアミノ)−2−メチルフェノールおよびそれらの塩類が挙げられ、その他、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されたものも適宜、用いることができる。
【0022】
カプラーは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。
【0023】
活性薬剤である直接染料としては、ニトロ染料、塩基性染料、タール系色素および天然色素などの公知のものが挙げられる。その中でも、ニトロ系染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料またはインジゴ染料が安定性および効果の面から好ましい。
【0024】
直接染料は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、0.001〜15重量%が好ましく、0.01〜10重量%が特に好ましい。
【0025】
次に、毛髪処理剤組成物の製造方法の実施の形態について説明する。本発明の製造方法では、複数の剤の各々について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択するが、このとき選択は、臭覚を刺激する所定成分として、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンのいずれも、臭覚上の感知限界以下であることを条件として行なえば良い。また、複数の剤を調製し、これを所定の容器に収容するが、かかる工程は次のように行なうことができる。即ち、薬剤の調製は、複数の剤を、油溶性成分である油相、水溶性成分である水相、高温下では不安定な成分である添加剤相に分類して、秤量する工程と、該油相、水相の成分を、それぞれ加温溶解する工程と、それぞれ所定温度以上となった水相を油相に加えて乳化混合する工程と、該乳化混合物を所定温度以下に冷却した後、前記添加剤相の成分を低温で、該乳化混合物に添加する工程とから行なえばよい。
【0026】
[実施例]
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものでない。なお、配合量は、重量%を示す。まず、実施例における毛髪処理剤組成物の製造方法について説明する。図1は、実施例における毛髪処理剤組成物の製造工程を示す工程図である。図示するように、実施例の組成物は、
工程S10:(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の3種類の剤から毛髪処理剤組成物を製造するものとし、これらの各剤について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択する工程、
工程S20:(A)(B)(C)の各剤を、油溶性成分である油相、水溶性成分である水相、高温下では不安定な成分である添加剤相に分類して、秤量する工程、
工程S30:油相、水相の成分を、それぞれ加温溶解する工程、
工程S40:それぞれ所定温度以上となった水相を油相に加えて乳化混合する工程、
工程S50:乳化混合物を所定温度以下に冷却した後、添加剤相の成分を低温で、乳化混合物に添加する工程、
工程S60:添加剤相の成分を加えた乳化混合物を、所定の容器に収納する工程
からなる製造工程により製造される。
【0027】
こうした工程で得られる毛髪処理剤組成物としては、毛髪染毛剤、毛髪脱色剤およびパーマ剤などがある。上記製造工程のうち、工程S10を除く各工程は、公知のものなので、説明を省略し、工程S10、即ち(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の3種類の剤について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択する工程に関して、更に詳しく説明する。こうした各剤に含まれる臭覚を刺激する所定成分としては、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類を取り上げる。これらの成分は、毛髪処理剤組成物に含まれる得る各剤が有する臭い、特に使用者に不快感を生じさせる臭いの成分として代表的なものである。これらの成分は、含有の割合がppmのオーダーでも、使用者に不快感を与えるので、その検出には、検知管を用いた。
【0028】
検知管とは、特定の成分にのみ反応してその色相をかえるような物質を内封したものであり、その代表的な形態を図2に示した。検知管150は、管の種類ごとに、検知し得る物質とその濃度範囲が決まっている。例えば、株式会社ガステック製、検知管・アンモニア3L、という検知管では、測定範囲は0.5〜78ppm、検知限界0.2ppm、変色は桃色から黄色、となっている。また、こうした検知管150には、ガスを吸引する吸引時間なども定められており、例えばアンモニア3Lでは、吸引回数は2回(100ミリリットル)であり、吸引から検知までの時間は60秒である。検知管は、この時間の経過後に、色が変わった領域を読み取ることにより、その物質の濃度を特定することができる。
【0029】
なお、測定対象を検知管150に取り込むには、図3に示したように、
(1)測定対象物1グラムを、サンプルSMPとして、直径30ミリ、深さ15ミリのシャーレ110にとり、その表面をできるだけ平坦に整え、
(2)このシャーレ110を、内容量3リットルのガラスねじ口デシケータ100内に設置し、密栓し、
(3)この状態で3時間放置して、デシケータ100内に検出対象が均一に分散した後、デシケータねじ口105に検知管式気体測定器120を接続し、そのハンドル130を操作して測定ガスを吸引する、
という手法で行なう。
【0030】
工程S10では、各剤について、アンモニア、アミン類、硫化水素およびメチルメルカプタンの濃度を専用の検知管を用いて測定することで、選択を行なう。測定対象の臭気と検知管の型式とは次の通りである。
・アンモニア:ガステック社製、3Lアンモニア検知管
測定範囲、0.5〜78ppm
検知限度、0.2ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・アミン類 :ガステック社製、180Lアミン類検知管
測定範囲、0.5〜10ppm
検知限度、0.1ppm
吸引回数1回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・硫化水素:ガステック社製、4LT硫化水素検知管
測定範囲、0.1〜4ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・メチルメルカプタン:ガステック社製、70Lメルカプタン類検知管
測定範囲、0.1〜8.0ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数4回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間90秒
かかる条件で、測定対象である各剤の臭気の濃度をppm単位で計測した。なお、アミン類については、必要に応じて、ガステック社製、180アミン類検知管(測定範囲、5〜100ppm)も用いた。この検知管は、同社製、180Lアミン類検知管と、その他の測定条件は同一である。
【0031】
図4および図5は、これら各剤について、検知管を用いて、臭覚を刺激する成分のうち、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンの4種類について、その含有量をテストした結果を示す説明図である。図示した剤は、「50%チオグリコール酸アンモニウム液」「試薬特級25%アンモニア水」を除けば、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンについて、その濃度は、いずれも臭覚の検知限界以下であった。そこで、少なくともこれら2つの剤は、(A)(B)(C)の各剤については選択しない。なお、図中左端の欄には、各成分が、(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の3種類の剤のいずれに該当するかを示した。
【0032】
以上説明した工程を経て、(A)(B)(C)の各剤が選択され、図1に示した全工程を経ることにより、毛髪処理剤組成物が製造される。そこで、次に、かかる工程で得られた組成物の実施例について説明するが、実施例の各剤の説明に先立ち、本実施例で用いた各評価方法について説明する。
【0033】
<評価基準1>
[臭気]専門パネラ(10名)により、毛髪染毛剤、毛髪脱色剤およびパーマ剤に関し、使用前(第1剤、第2剤および/又は第1剤、第2剤混合時)、使用中および使用後の各パネラが感じる臭気を下記基準により評価した。
◎・・・全く臭気を感じない
○・・・ほとんど臭気を感じない
△・・・わずかに刺激臭あるいは基剤臭を感じる
×・・・強い刺激臭あるいは基剤臭を感じる
【0034】
<評価基準2>
検知管による測定:検知管による測定は、原理的には、各剤についておこなった上記の測定と同様である(再掲)。
(1)測定対象物1グラムを、サンプルSMPとして、直径30ミリ、深さ15ミリのシャーレ110にとり、その表面をできるだけ平坦に整える。
(2)このシャーレ110を、内容量3リットルのガラスねじ口デシケータ100内に設置し、密栓しする。
(3)この状態で3時間放置して、デシケータ100内に検出対象が均一に分散した後、デシケータねじ口105に検知管式気体測定器120を接続し、そのハンドル130を操作して測定ガスを吸引し、アンモニア、アミン類、硫化水素およびメチルメルカプタンの濃度を専用の検知管を用いて測定する。
【0035】
測定対象の臭気と検知管の型式とは次の通りである(再掲)。
・アンモニア:ガステック社製、3Lアンモニア検知管
測定範囲、0.5〜78ppm
検知限度、0.2ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・アミン類 :ガステック社製、180Lアミン類検知管
測定範囲、0.5〜10ppm
検知限度、0.1ppm
吸引回数1回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・硫化水素:ガステック社製、4LT硫化水素検知管
測定範囲、0.1〜4ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数2回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間60秒
・メチルメルカプタン:ガステック社製、70Lメルカプタン類検知管
測定範囲、0.1〜8.0ppm
検知限度、0.05ppm
吸引回数4回、吸引量100ミリリットル/回
吸引時間90秒
かかる条件で、測定対象の臭気の濃度をppm単位で計測した。
【0036】
<評価基準3>
[毛髪の傷み]染毛剤、脱色剤およびパーマネントウェーブ処理をしたそれぞれ毛束から毛髪をそれぞれ30本採取し、毛先から5cmおよび6cmの両端部分を1cm幅のガラス繊維入りテープで止めて、毛先から5cm部分と6cm部分とで破断が生じるようにしておき、マイクロメーターで毛髪の直径を測定し、レオメーターを用いて破断重量を測定し、下記の式(1)により、毛髪の引っ張り強度を求めた。
【0037】
【数1】
【0038】
<実施例1〜3、比較例1〜3>
実施例1ないし3および比較例1ないし3の第1剤および第2剤の組成と、評価基準1による臭気についての評価と、評価基準3による髪の傷みについての評価とを、図6に示した。図6において、各成分は、図1に示した工程に従って、毛髪染毛剤組成物第1剤および第2剤の試料として調製された。
【0039】
なお、実施例中、「非イオン系可溶化剤」とあるのは、日光ケミカルズ株式会社製「BCシリーズ」として購入可能なポリオキシエチレンセチルエーテルを用いた。代替品としては、同社「BSシリーズ」のポリオキシエチレンステアリルエーテルや、日本エマルジョン株式会社、「EMALEX 600シリーズ」などがある。また、「加水分解シルク液」としては、成和化成株式会社製「Promois SILK−1000」を用いた。更に、香料としては、天然精油として、オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリンからそれぞれ抽出した成分を、2:1:1:2の割合で混合したものを用いた。これらのうち、非イオン系可溶化剤については、後述する実施例4、5、比較例4ないし6でも同様である。また、加水分解シルク液と香料については、全実施例および全比較例においても、同じものを用いた。
【0040】
ついで、第1剤および第2剤をそれぞれ重量比1:2の割合で混合した。図6中(混合)とあるのは、この混合状態を示す。混合したものを、長さ20cm、重量15gの未処理毛に塗布し、30分放置、次いで水洗後、ドライヤーにて乾燥した。評価基準3の引っ張り強度は、この状態で測定した。
【0041】
図に示したように、実施例1ないし3では、パネラは、第1剤、第2剤、および両剤を混合した場合でも、全く臭気を感じることがなかった。また、実施例の組成物で処理を受けた毛髪の引張り強度は、いずれも33キログラム以上あり、ダメージは小さかった。これに対して比較例では、いずれも第1剤および両剤を混合した場合には、僅かに刺激臭があるか(比較例1)あるいは強い臭気が感じられた。また、引張り強度は、30キログラム以下となった。
【0042】
<実施例4,5、比較例4〜6>
実施例4,5および比較例4ないし6の第1剤および第2剤の組成と、評価基準1による臭気についての評価と、評価基準3による髪の傷みについての評価とを、図7に示した。図7において、各成分は、図1に示した工程に従って、毛髪脱色剤組成物第1剤および第2剤の試料として調製された。
【0043】
ついで、第1剤および第2剤をそれぞれ重量比1:2の割合で混合した。図7中(混合)とあるのは、この混合状態を示す。混合したものを、長さ20cm、重量15gの未処理毛に塗布し、30分放置、次いで水洗後、ドライヤーにて乾燥した。評価基準3の引っ張り強度は、この状態で測定した。
【0044】
図に示したように、実施例4,5では、パネラは、第1剤、第2剤、および両剤を混合した場合でも、全く臭気を感じることがなかった。また、実施例の組成物で処理を受けた毛髪の引張り強度は、いずれも34キログラム以上あり、ダメージは小さかった。これに対して比較例では、いずれも第1剤および両剤を混合した場合には、強い臭気が感じられた。また、引張り強度は、29キログラム以下となった。
【0045】
<実施例6〜8、比較例7〜9>
実施例6ないし8および比較例7ないし9の第1剤および第2剤の組成と、評価基準1による臭気についての評価と、評価基準3による髪の傷みについての評価とを、図8に示した。図8において、各成分は、図1に示した工程に従って、パーマネントウェーブ用組成物第1剤および第2剤の試料として調製された。
【0046】
なお、実施例6ないし8、および比較例7ないし9で用いた非イオン系可溶化剤は、日光ケミカルズ株式会社製、「CO(またはHCO)シリーズ」として購入可能なポリオキシエチレンヒマシ油(または硬化ヒマシ油)を用いた。代替品としては、同社製「PBC(またはPEN)シリーズ」のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどがある。
【0047】
ついで、長さ20cm、重量15gの未処理毛を直径13mmのロッドに巻き、図8に示したパーマネントウェーブ用第1剤に10分浸積、次いで水洗後、前記パーマネントウェーブ用第2剤に10分間浸積、水洗し、ドライヤーにて乾燥した。評価基準3の引っ張り強度は、この状態で測定した。
【0048】
図に示したように、実施例6ないし8では、パネラは、第1剤、第2剤、および使用中、使用後においても、全く臭気を感じることがなかった。また、実施例の組成物で処理を受けた毛髪の引張り強度は、いずれも34キログラム以上あり、ダメージは小さかった。これに対して比較例では、いずれも第1剤単独および使用中、使用後において、強い臭気が感じられた。また、引張り強度は、25キログラム以下となった。
【0049】
次に、上述した実施例1ないし8について、評価基準2により臭気を評価した結果を図9に示す。なお、図中、第1実施例と第6実施例を除いて、第2剤の表示がないが、第2実施例ないし第5実施例については、第2剤は、第1実施例と同一であり、第7,第8実施例については、第6実施例と同一なので、それぞれ結果の表示を省略した。また、上述した比較例1ないし9についても、同様に測定した結果を、図10に示した。
【0050】
実施例1ないし8については、図9に示したように、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンのいずれについても、ほとんど検出されないか、あるいは極めて微量であり、これらの成分に基づく不快臭は、ほとんど存在しないことが分かる。他方、図10に示した比較例では、アンモニアが30ppm以上(使用した検知管の検知上の上限を越える量)アミン類が100ppm以上(使用した検知管の検知上の上限を越える量)、メルカプタンが比較例1の混合したものと比較例8の第1剤を除いて、4ppm以上検出されており、使用者はかなり強い不快臭を感じることが分かる。
【0051】
[発明の効果]
以上詳述したように本発明の毛髪処理剤組成物によれば、組成物自体に不快な臭いがない。従って、使用者は不快臭に悩まされることなく、各種の毛髪処理剤組成物を使用することができる。また、本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法によれば、簡易な工程で、使用時の不快臭がない毛髪処理剤組成物を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
100…デシケータ
105…ねじ口
110…シャーレ
120…検知管式気体測定器
130…ハンドル
150…検知管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物であって、
前記複数の剤の各々は、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下である毛髪処理剤組成物。
【請求項2】
前記複数の剤のいずれにも、芳香を有する成分および着香剤を配合しない請求項1記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項3】
前記臭覚を刺激する所定成分には、少なくとも、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンが含まれる請求項1記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項4】
請求項1記載の毛髪処理剤組成物であって、
前記複数の剤は、(A)アルカリ剤、(B)高精製度の基剤、(C)還元剤であり、
使用時に、前記(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の混合により、前記臭覚を刺激する不快臭を発することがない毛髪処理剤組成物。
【請求項5】
前記(A)アルカリ剤が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールや2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等無機アルカリ化剤より成る群から選択された少なくとも1つの化合物を含む請求項4記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項6】
前記(B)無臭基剤が、脱臭精製された高精製度の素材である請求項4記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項7】
前記(C)無臭還元剤が、システイン又はその誘導体、チオリンゴ酸等のメルカプトカルボン酸、チオグリセロール等のメルカプトアルコール類、グリセロールモノチオグリコレート等のメルカプトカルボン酸エステル類、システアミン、システインアミド等のメルカプト化合物、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、アスコルビン酸又はその誘導体より成る群から選択された少なくとも1つの化合物を含む請求項4記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の毛髪処理剤組成物であって、
毛髪の漂白または退色させるのに用いる組成物であり、
該組成物のpHが7〜13の範囲である毛髪処理剤組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の毛髪処理剤組成物であって、
毛髪の染色に用いる組成物であり、
活性薬剤として、酸化染料中間体とカプラーと直接染料とより成る群から選択される少なくとも1つの染色化合物を含む毛髪処理剤組成物。
【請求項10】
組成物のpHが5〜13の範囲である請求項9に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項11】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の毛髪処理剤組成物であって、
毛髪の永久的変形に用いる組成物であり、
該組成物のpHが5〜10の範囲である毛髪処理剤組成物。
【請求項12】
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物を製造する方法であって、
前記複数の剤の各々について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択し、
前記複数の剤を調製し、
該調製された剤を所定の容器に収容する
毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記複数の剤は、(A)アルカリ剤、(B)高精製度の基剤、(C)還元剤であり、少なくとも(B)基剤に他の剤を調合して調製する請求項12記載の毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記剤の選択は、臭覚を刺激する所定成分として、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンのいずれも、臭覚上の感知限界以下であることを条件として行なう請求項12記載の毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項12または請求項14記載の毛髪処理剤組成物の製造方法であって、
前記薬剤の調製は、
複数の剤を、油溶性成分である油相、水溶性成分である水相、高温下では不安定な成分である添加剤相に分類して、秤量する工程と、
該油相、水相の成分を、それぞれ加温溶解する工程と、
それぞれ所定温度以上となった水相を油相に加えて乳化混合する工程と、
該乳化混合物を所定温度以下に冷却した後、前記添加剤相の成分を低温で、該乳化混合物に添加する工程と
を備える毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項1】
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物であって、
前記複数の剤の各々は、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下である毛髪処理剤組成物。
【請求項2】
前記複数の剤のいずれにも、芳香を有する成分および着香剤を配合しない請求項1記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項3】
前記臭覚を刺激する所定成分には、少なくとも、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンが含まれる請求項1記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項4】
請求項1記載の毛髪処理剤組成物であって、
前記複数の剤は、(A)アルカリ剤、(B)高精製度の基剤、(C)還元剤であり、
使用時に、前記(A)アルカリ剤、(B)基剤、(C)還元剤の混合により、前記臭覚を刺激する不快臭を発することがない毛髪処理剤組成物。
【請求項5】
前記(A)アルカリ剤が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールや2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等無機アルカリ化剤より成る群から選択された少なくとも1つの化合物を含む請求項4記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項6】
前記(B)無臭基剤が、脱臭精製された高精製度の素材である請求項4記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項7】
前記(C)無臭還元剤が、システイン又はその誘導体、チオリンゴ酸等のメルカプトカルボン酸、チオグリセロール等のメルカプトアルコール類、グリセロールモノチオグリコレート等のメルカプトカルボン酸エステル類、システアミン、システインアミド等のメルカプト化合物、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、アスコルビン酸又はその誘導体より成る群から選択された少なくとも1つの化合物を含む請求項4記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の毛髪処理剤組成物であって、
毛髪の漂白または退色させるのに用いる組成物であり、
該組成物のpHが7〜13の範囲である毛髪処理剤組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の毛髪処理剤組成物であって、
毛髪の染色に用いる組成物であり、
活性薬剤として、酸化染料中間体とカプラーと直接染料とより成る群から選択される少なくとも1つの染色化合物を含む毛髪処理剤組成物。
【請求項10】
組成物のpHが5〜13の範囲である請求項9に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項11】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の毛髪処理剤組成物であって、
毛髪の永久的変形に用いる組成物であり、
該組成物のpHが5〜10の範囲である毛髪処理剤組成物。
【請求項12】
毛髪処理剤を構成する複数の剤からなる毛髪処理剤組成物を製造する方法であって、
前記複数の剤の各々について、臭覚を刺激する所定成分の割合が、臭覚上の感知限界以下の剤を選択し、
前記複数の剤を調製し、
該調製された剤を所定の容器に収容する
毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記複数の剤は、(A)アルカリ剤、(B)高精製度の基剤、(C)還元剤であり、少なくとも(B)基剤に他の剤を調合して調製する請求項12記載の毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記剤の選択は、臭覚を刺激する所定成分として、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタンのいずれも、臭覚上の感知限界以下であることを条件として行なう請求項12記載の毛髪処理剤組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項12または請求項14記載の毛髪処理剤組成物の製造方法であって、
前記薬剤の調製は、
複数の剤を、油溶性成分である油相、水溶性成分である水相、高温下では不安定な成分である添加剤相に分類して、秤量する工程と、
該油相、水相の成分を、それぞれ加温溶解する工程と、
それぞれ所定温度以上となった水相を油相に加えて乳化混合する工程と、
該乳化混合物を所定温度以下に冷却した後、前記添加剤相の成分を低温で、該乳化混合物に添加する工程と
を備える毛髪処理剤組成物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−70559(P2010−70559A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289348(P2009−289348)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【分割の表示】特願2002−253598(P2002−253598)の分割
【原出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【分割の表示】特願2002−253598(P2002−253598)の分割
【原出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】
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