説明

毛髪処理剤組成物

【課題】処理乾燥後の毛髪に、良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与することができる毛髪処理剤組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する毛髪処理剤組成物、及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアスタイルの多様化に伴って、染毛剤、毛髪用脱色剤、パーマネントウエーブ剤、ストレートパーマ剤、持続性毛髪セット剤、縮毛矯正剤等による化学的処理や、過度なブラッシングやブローといった日常のヘアケア行動、又は紫外線等の生活環境によって、毛髪は損傷を受け易くなっている。そのため、毛髪の表面をコートし、なめらかな感触に戻すために、毛髪処理剤組成物には様々な工夫がなされている。
例えば、毛髪のコンディショニング剤には、指通り性、柔らかさ、まとまり感等を向上させるために、カチオン性ポリマーや、シリコーン、エステル油、鉱物等の油剤が配合される。しかし、それらの配合量を増やすと、毛髪乾燥後にべたつきが生じ、使用感が低下し、それらの配合量を減らすと、コンディショニング効果が不充分となる。
そのため、コンディショニング効果の高い毛髪処理剤組成物が要望されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基剤の混合性に優れ、すすぎ時の感触、施術後の毛髪の感触が改善された染毛・脱色剤組成物として、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、アルカリ剤、陽イオン界面活性剤、高級アルコールとを含みpH8〜13である第1剤、及び酸化剤を含みpH2〜5である第2剤を含む染毛・脱色剤組成物が開示されている。
特許文献2には、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等のカチオン変性セルロース誘導体の製造方法が開示されており、化粧品、シャンプー、リンス、トリートメント等の配合剤に使用できることが記載されている。
特許文献3には、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロースとアルコール溶媒を含むヘアースプレー用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−126415号公報
【特許文献2】特開昭53−90368号公報
【特許文献3】特開昭60−170601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の毛髪処理剤組成物は、乾燥後の毛髪の指通り性やまとまり等の使用感において、十分に満足できるものではなく、更にコンディショニング効果の高い毛髪処理剤組成物の開発が望まれる。
本発明は、処理乾燥後の毛髪に、良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与することができる毛髪処理剤組成物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、毛髪化粧料に特定のカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを含有させることにより、前記の課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する毛髪処理剤組成物。
(2)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する毛髪処理剤組成物の製造方法であって、下記工程(a−1)〜(a−3)、下記工程(b−1)〜(b−4)、又は下記工程(c−1)〜(c−4)を有する、毛髪処理剤組成物の製造方法。
工程(a−1):セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行う工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた粉砕機処理物に塩基を添加して粉砕機処理を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(a−3):工程(a−2)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
工程(b−1):セルロース含有原料を粉砕機処理して、結晶化度が10〜50%であるセルロースを含有するセルロース含有原料を得る工程
工程(b−2):工程(b−1)で得られたセルロース含有原料に対して、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対して20〜100質量%の水を添加して、アルカリセルロースを得る工程
工程(b−3):工程(b−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(b−4):工程(b−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
工程(c−1):セルロース含有原料及びセルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基との混合物を、該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で粉砕機処理し、セルロースの平均粒径が10〜150μmであるセルロース・塩基混合粉砕物を得る工程
工程(c−2):工程(c−1)で得られたセルロース・塩基混合粉砕物に水を添加し、該セルロース・塩基混合粉砕物中の水分量を、工程(c−1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、アルカリセルロースを得る工程
工程(c−3):工程(c−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(c−4):工程(c−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、処理乾燥後の毛髪に、良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与することができる毛髪処理剤組成物、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[毛髪処理剤組成物]
本発明の毛髪処理剤組成物は、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有することを特徴とする。
<カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)>
本発明において、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)(以下、「C−HPC」ともいう)とは、カチオン性基とプロピレンオキシ基を有するセルロースを意味する。カチオン性基としては四級アンモニウム基が好ましい。
C−HPCは、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつ該アンヒドログルコース単位あたりのカチオン化エチレンオキシ基の平均モル数が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の平均モル数が0.1〜4.0であるものが好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50〜5000である。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Y1及びY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、更にp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
【0015】
(一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖)
一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖は、下記一般式(1)に示されるとおり、アンヒドログルコース由来の主鎖を有する。
【0016】
【化4】

【0017】
式(1)におけるR1、R2、R3は、一般式(2)で表される置換基であり、R1、R2、R3は、同一であっても、異なっていてもよい。また、n個のR1、n個のR2、n個のR3は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。
【0018】
また、本発明の毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、一般式(1)における平均重合度nは、50以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がより好ましく、400以上が更に好ましい。また、上記と同様の観点、及び毛髪処理剤組成物の粘度を低減する観点から、平均重合度nは、5000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
これらの観点を総合すると、平均重合度nは、50〜5000が好ましく、200〜2000がより好ましく、300〜1500がより好ましく、400〜1000が更に好ましい。
なお、平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には、実施例に記載の方法により算出される。
【0019】
(一般式(2)で表される置換基)
一般式(2)で表される置換基は、下記式(2)に示すとおり、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する。
【0020】
【化5】

【0021】
一般式(2)において、Y1及びY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。
pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、0又は正の整数である。製造の容易さの観点から、pは、0〜3の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
qは一般式(2)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、0又は正の整数である。製造の容易さの観点から、qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることがより更に好ましい。
C−HPC分子内に複数の一般式(2)で表される置換基が存在する場合、該置換基間においてp、qの値はそれぞれ異なっていてもよい。
【0022】
pとqの合計は、製造の容易さの観点から、1〜5の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが更に好ましく、1又は2であることがより更に好ましい。
p及びqのどちらもが0でない場合、前記カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わないが、製造の容易さの観点から、一般式(2)に記載した順序であることが好ましい。
また、p及びqのどちらもが0でなく、かつp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよいが、製造の容易さの観点から、ブロック結合であることが好ましい。
【0023】
n個のR1、n個のR2、n個のR3において、少なくとも1つは、一般式(2)のpが0ではなく、また、少なくとも1つは、一般式(2)のqが0ではない。
【0024】
(一般式(3)で表されるカチオン性基)
一般式(3)で表されるカチオン性基は、下記式(3)に示す構造を有する。
【0025】
【化6】

【0026】
上記一般式(3)において、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。これらの中では、C−HPCの水溶性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(3)において、X-は、アンモニウム基の対イオンであるアニオン性基を示す。X-はアニオン性基であれば特に限定されない。その具体例としてはアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、アルキル炭酸イオン、及びハロゲン化物イオン等が挙げられる。これらの中では、製造の容易さの観点から、ハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられるが、C−HPCの水溶性及び化学的安定性の観点から、塩化物イオン、臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0027】
本発明の毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、一般式(1)で表されるC−HPCにおいて、カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がより好ましく、毛髪の更に良好な指通り性を付与する観点から、0.8以上が更に好ましい。また、処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性を付与する観点、及び製造の容易さの観点から、2.9以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.2以下がより更に好ましい。
これらの観点を総合すると、カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、0.01〜2.9が好ましく、0.1〜2.5がより好ましく、0.2〜2.0がより好ましく、0.3〜1.5が更に好ましく、0.8〜1.2がより更に好ましい。
本発明において、「カチオン化エチレンオキシ基の置換度」とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう)1モルあたりのC−HPCの分子中に存在するカチオン化エチレンオキシ基の平均モル数をいう。カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0028】
本発明の毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、プロピレンオキシ基の置換度は、0.1以上が好ましく、毛髪の良好な指通り性を付与する観点から、0.2以上がより好ましく、0.3以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましく、1.0以上がより更に好ましい。また、処理乾燥後の毛髪の良好なまとまり感を付与する観点、及び製造の容易性の観点から、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.8以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましく、2.0以下がより更に好ましい。
これらの観点を総合すると、プロピレンオキシ基の置換度は、0.1〜4.0が好ましく、0.2〜3.0がより好ましく、0.3〜2.8がより好ましく、0.6〜2.5が更に好ましく、1.0〜2.0がより更に好ましい。
本発明においてプロピレンオキシ基の置換度とは、セルロース主鎖を構成するAGU1モルあたりのC−HPC分子中に存在するプロピレンオキシ基の平均モル数をいう。プロピレンオキシ基の置換度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0029】
処理乾燥後の毛髪の良好なまとまり感を付与する観点、及び製造の容易さの観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度の和は、3.5以下であることが好ましく、3.2以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましく、2.5以下であることがより更に好ましい。また、処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、まとまり性、ハリコシ感を付与する観点から、0.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることが更に好ましく、2.2以上であることがより更に好ましい。
これらの観点を総合すると、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度の和は、0.3〜3.5が好ましく、1.5〜3.2がより好ましく、2.0〜3.0が更に好ましく、2.2〜2.5がより更に好ましい。
【0030】
〔C−HPCの製造〕
C−HPCは、例えば、以下の(1)〜(3)の製造方法により得ることができる。
(1)セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合し、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(2)塩化リチウムを含むジメチルアセトアミドを溶媒として用い、更にアミン類やアルコラート触媒を添加してセルロースを溶解させ、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(3)前記(1)や(2)のように、過剰の水や溶媒を用いず、粉末状、ペレット状又はチップ状のセルロースとカチオン化剤、及び酸化プロピレンを塩基共存下に反応させる方法。
前記(1)〜(3)の製造方法において、カチオン化剤との反応、及び酸化プロピレンとの反応はどちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
これら製造方法の中では、製造の容易さの観点から、前記(3)の製造方法が好ましい。前記(3)の方法によるC−HPCの製造方法の具体例としては、(3−1)セルロース含有原料のカチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法、(3−2)セルロース含有原料のアルカリセルロース化を行った後、カチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法等が挙げられる。
以下、前記(3)の製造方法について、具体的に説明する。
【0031】
[(3−1)セルロース含有原料のカチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法]
<セルロース含有原料>
C−HPCを製造するためのセルロース含有原料としては、(i)結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性の粉末セルロースや、(ii)結晶性の高いセルロース含有原料、例えばパルプが好適に用いられる。
【0032】
<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>
(結晶性を低下させたセルロース含有原料の製造)
結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性の粉末セルロースは、汎用原料として得られるシート状やロール状のセルロース純度の高いパルプから調製することができる。低結晶性の粉末セルロースの調製方法は特に限定されない。例えば、特開昭62−236801号公報、特開2003−64184号公報、特開2004−331918号公報等に記載の方法を挙げることができる。これらの中では、結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性の粉末セルロースの生産性を向上させる観点から、メカノケミカル処理して得られた低結晶性又は非結晶性粉末セルロース(以下、総称して「低結晶性粉末セルロース」ともいう)を使用することがより好ましい。
ここで、低結晶性粉末セルロースの「低結晶性」とは、セルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を意味する。具体的には下記計算式(1)により求められる結晶化度が、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応性を高める観点から、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、該結晶化度がほぼ0%である完全非晶化セルロースを用いることがより更に好ましい。
結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (1)
(式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。)
【0033】
メカノケミカル処理による低結晶性粉末セルロースの製造方法としては、例えばシート状パルプを粗粉砕して得られるチップ状パルプを粉砕機で処理することによる方法が挙げられる。粉砕機による処理の前にチップ状パルプを押出機で処理しておくこともできる。
この方法に用いられる押出機としては、単軸又は二軸の押出機、好ましくは二軸押出機が挙げられるが、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものが好ましい。
押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。
粉砕機としては高圧圧縮ロールミル、ロール回転ミル等のロールミル;リングローラーミル、ローラーレースミル、ボールレースミル等の竪型ローラーミル;転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル、遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル;塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル、アニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル;高速遠心ローラーミル、オングミル等の圧密せん断ミル;乳鉢、又は石臼等が挙げられる。これらの中では、セルロースの結晶化度を効率的に低下する観点、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル及び振動チューブミル等の振動ミルが更に好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルがより更に好ましい。
【0034】
処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
ボール、ロッド等の媒体の充填率は、粉砕機の機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、原料パルプと媒体との接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、粉砕機の攪拌部の容積に対する媒体の見かけの体積をいう。
ボールミルの場合、媒体として用いるボールの材質には特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボールの外径は、セルロースの結晶化度を効率的に低下させる観点から、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは1〜50mmである。
また、セルロースの結晶化度を効率的に低下させる観点から、粉砕機の処理時間は、好ましくは5分〜72時間、より好ましくは10分〜30時間である。また、粉砕機処理の際には、発生する熱による変性や劣化を最小限に抑える観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは5〜200℃の範囲で処理を行うことが望ましい。
【0035】
粉砕機の媒体として用いるロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
ロッドの外径としては、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1〜100mm、更に好ましくは5〜50mmの範囲である。ロッドの長さとしては、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られ効率的にセルロースを低結晶化させることができる。
ロッドを充填した振動ミルの処理時間、処理温度に特に制限はないが、前記のボールミルと同様の処理時間、処理温度で行うことができる。
【0036】
上記の方法によれば、分子量の制御も可能であり、一般には入手困難な、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セルロースを容易に調製することが可能である。低結晶性粉末セルロースの平均重合度は、好ましくは100〜2000であり、より好ましくは300〜1500、更に好ましくは、350〜1350である。
また、低結晶性粉末セルロースの平均粒径は、粉体として流動性のよい状態が保てればよく、特に限定されないが、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。また、粉末セルロースの取り扱い性向上の観点から、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。凝集等による微量な粗大粒子の混入を避けるため、反応には必要に応じて300〜1000μm程度の篩を用いた篩下品を用いるのが好ましい。
【0037】
(結晶性を低下させたセルロース含有原料のカチオン化)
上記のようにして得られた結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性粉末セルロースに、塩基存在下、グリシジルトリアルキルアンモニウム塩を反応させてカチオン化し、カチオン化セルロースを製造する。
カチオン化剤として用いるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。入手性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
グリシジルトリアルキルアンモニウム塩の添加量は、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点及び、製造の容易さの観点から、セルロースのAGU1モルに対して、0.01〜8.5倍モルが好ましく、0.1〜7倍モルがより好ましく、0.2〜5.5倍モルがより好ましく、0.5〜4.5倍モルが更に好ましい。
カチオン化時に存在させる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。入手性、汎用性、経済性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化バリウムがより好ましい。
塩基の添加量は、セルロースの種類等により異なるが、セルロースとカチオン化剤を効率的に反応させる観点から、セルロースのAGU1モルに対して、0.05〜1.0倍モルが好ましく、0.06〜1.0倍モルがより好ましく、0.07〜0.7倍モルが更に好ましく、0.1〜0.3倍モルがより更に好ましい。
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80質量%以下がより好ましく、5〜50質量%が更に好ましい。
反応温度は、通常10〜85℃であり、好ましくは15〜80℃である。
【0038】
(カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化)
上記のようにして得られたカチオン化セルロースを酸化プロピレンと反応させてヒドロキシプロピル化することによりC−HPCを製造することができる。
ここで、酸化プロピレンの使用量は、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、セルロース分子中のAGU1モル当たり0.01〜8.5倍モルが好ましく、0.1〜5.0モル倍がより好ましく、1.0〜3.0倍モルが更に好ましい。
【0039】
ヒドロキシプロピル化の触媒としては、塩基又は酸を用いることができる。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類が挙げられる。酸触媒としては、ランタニドトリフラート等のルイス酸触媒等が挙げられる。
これらの中では、セルロース含有原料中のセルロースの重合度の低下を抑制する観点から、塩基触媒が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらの触媒は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
触媒の使用量は、特に制限はないが、セルロース分子中のAGU1モル当たり、通常0.05〜1.0倍モルであり、0.07〜0.7倍モルが好ましく、0.1〜0.3倍モルがより好ましい。
カチオン化工程を先に行う場合は、カチオン化工程で用いた塩基を、そのままヒドロキシプロピル化における触媒として用いることができ、ヒドロキシプロピル化工程において新たに触媒を添加しなくてもよい。
【0040】
酸化プロピレンの添加方法に特に制限はなく、例えば(a)カチオン化セルロースに触媒を添加した後に酸化プロピレンを滴下する方法、(b)カチオン化セルロースに酸化プロピレンを一括で添加し、その後に触媒を徐々に加えて反応させる方法が挙げられるが、(a)法がより好ましい。
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、カチオン化セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80質量%以下が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
本発明においては、カチオン化セルロース、触媒及び酸化プロピレンを流動性のある粉末状態で反応させることが好ましいが、カチオン化セルロース粉末と触媒とを予めミキサー等の混合機や振とう機、又は混合ミル等で必要に応じて均一に混合分散させた後に、酸化プロピレンを添加して反応させることも可能である。
【0041】
ヒドロキシプロピル化の反応温度は、0〜150℃が好ましいが、酸化プロピレン同士が重合するのを避け、かつ急激に反応が起こるのを避ける観点から、10〜100℃がより好ましく、20〜80℃が更に好ましい。反応は常圧で行うことができる。
また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
反応終了後は、未反応酸化プロピレンを除去した後、必要に応じて、中和処理、精製処理等を行った後、乾燥することにより、本発明で用いられるC−HPCを得ることができる。
中和処理は、常法により行うことができる。例えば触媒として塩基触媒を用いた場合は、酢酸等の液体酸、酸と不活性有機溶媒との混合溶液又は酸水溶液を添加することにより行うことができる。酸の種類は特に限定されず、装置の腐食等を考慮して適宜選択すればよい。精製処理は、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等の溶剤及び/又は水による洗浄又は透析膜により行うことができる。
上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>におけるカチオン化、ヒドロキシプロピル化の反応の順序は、セルロース含有原料中のセルロースのヒドロキシプロピル化を行った後にカチオン化を行ってもよいし、同時に行ってもよい。
カチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基の置換度の制御の観点から、セルロース含有原料中のセルロースにカチオン化を行った後、ヒドロキシプロピル化を行うことが好ましい。
また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度を高める目的で、カチオン化反応、ヒドロキシプロピル化反応を行った後、更にカチオン化反応を行ってもよい。
上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>におけるカチオン化反応工程及びヒドロキシプロピル化反応工程においては、主鎖となるセルロース骨格の解裂は実質上生じないため、得られるC−HPCの平均重合度は、低結晶化処理後の粉末セルロースの平均重合度で近似することもできる。
【0042】
<(3−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>
(結晶性の高いセルロース含有原料のカチオン化)
セルロース含有原料として前述の結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性粉末セルロースを使用せずに、結晶性の高いセルロース含有原料、例えばパルプ(以下、セルロース含有原料とは、代表的にはパルプを意味する)を使用する場合は、セルロース含有原料の反応性を改善するため、カチオン化の際に低結晶化を行うことが好ましい。
具体的には、セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行うこと、又はセルロース含有原料に塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後カチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行うことで、カチオン化セルロースを得ることができる。また、高いカチオン化エチレンオキシ基の置換度を持つC−HPCを得る観点から、セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行い、その後、塩基を添加して粉砕機処理を行い、更にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行うことが好ましい。塩基を添加して後のカチオン化剤の添加は、多段階で行ってもよい。
このカチオン化を経て得られるC−HPCの水への溶解性の観点から、セルロースのカチオン化においては、初めにセルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行うことが好ましい。
【0043】
結晶性の高いセルロース含有原料の種類としては、各種木材チップ;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられ、セルロース純度が高い観点、C−HPCの生産性の観点から、ウッドパルプが好ましい。
【0044】
セルロース含有原料として用いるパルプの形状は、製造装置内への導入に支障が出ない限り特に限定されないが、操作上の観点からシート状パルプやシート状パルプを裁断又は粗粉砕して得られるペレット状又はチップ状パルプや、微粉砕して得られる粉末状セルロースを用いることが好ましい。
セルロース含有原料として用いるパルプの結晶化度に限定はない。しかしながら、一般に、セルロースの結晶化度低下処理には、セルロース鎖の切断に伴う分子量の低下が伴うため、結晶化度が低いセルロース含有原料は分子量が低い。したがって、高分子量のC−HPCを得る観点から、結晶性が高いセルロースを用いることが好ましい。また、逆に前記計算式(1)による結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロースも入手が困難である。よって、重合度及び入手の容易さの観点から、セルロース含有原料の前記計算式(1)で示される結晶化度は10〜95%が好ましく、30〜90%がより好ましく、60〜80%が更に好ましい。
セルロース含有原料中のセルロースの平均重合度にも限定はないが、高分子量のC−HPCを得る観点から、より重合度の大きいセルロース含有原料中のセルロースを用いることが好ましい。この観点からセルロース含有原料中のセルロースの平均重合度は、50〜5000が好ましく、100〜2000がより好ましい。
【0045】
カチオン化剤の種類並びに量、塩基の種類、粉砕機の種類、低結晶化の方法並びに条件等の好ましい様態は、低結晶化のための粉砕機の処理時間及び塩基の量を除き、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>の項で記載のものと同様である。
低結晶化のための粉砕機の処理時間は、セルロースの結晶化度を効率的に低減し、かつ重合度の低下を抑制する観点から、1分〜5時間が好ましく、2分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間が更に好ましい。
塩基の量は、セルロースとカチオン化剤を効率的に反応させる観点から、セルロース含有原料中のセルロースのAGU1モルあたり0.05〜1.5倍モルが好ましく、0.07〜1.0倍モルがより好ましく、0.1〜0.6倍モルが更に好ましい。
【0046】
カチオン化剤及び塩基添加後の低結晶化の際にカチオン化は進行するが、反応が不十分である場合、好ましくは10〜100℃、より好ましくは30〜80℃で熟成を行うことにより、反応を進行させることができる。
カチオン化反応の進行が十分である場合であっても、更にグリシジルトリアルキルアンモニウム塩を加えて、上記熟成を行うことにより、カチオン化エチレンオキシ基の置換度が高いカチオン化セルロースを得ることができる。
熟成時の水分量、及びその好ましい態様は、原料として低結晶性粉末セルロースの替わりに結晶化度の高いセルロース含有原料を用いている点を除き、前述の低結晶性粉末セルロースのカチオン化の場合と同様である。
また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0047】
(カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化)
<(3−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造:a法>におけるカチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化で使用する酸化プロピレン量、触媒、反応条件、反応終了後の処理及びそれらの好ましい様態は、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>におけるヒドロキシプロピル化に記載のものと同様である。
上記<(3−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造:a法>におけるカチオン化、ヒドロキシプロピル化の反応の順序は、セルロース含有原料のヒドロキシプロピル化を行った後にカチオン化を行ってもよいし、同時に行ってもよいが、カチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基の置換度の制御の観点から、セルロース含有原料にカチオン化を行った後、ヒドロキシプロピル化を行うことが好ましい。
また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度を高める観点から、カチオン化反応、ヒドロキシプロピル化反応を行った後、更にカチオン化反応を行ってもよい。
【0048】
[(3−2)セルロース含有原料のアルカリセルロース化を行った後、カチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法]
<セルロース含有原料>
C−HPCを製造するためのセルロース含有原料は、[(3−1)セルロース含有原料のカチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法]と同様に、(i)結晶性を低下させたセルロース含有原料や、(ii)結晶性の高いセルロース含有原料が好適に用いられる。
【0049】
<(3−2−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造:b法>
(結晶性を低下させたセルロース含有原料の製造)
結晶性を低下させたセルロース含有原料については、<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>に記載したものと同様である。
結晶性を低下させたセルロース含有原料の生産性を向上させる観点から、結晶性の高いセルロース含有原料、例えば、ウッドパルプを粉砕処理して得られるものが好ましい。
また、結晶性を低下させたセルロース含有原料の結晶化度は、後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの反応性を高める観点、及びセルロース含有原料の重合度を高める観点から、10〜50%が好ましく、10〜40%がより好ましく、10〜30%が更に好ましい。
【0050】
(結晶性を低下させたセルロース含有原料のアルカリセルロース化)
結晶性を低下させたセルロース含有原料、塩基及び水を混合することにより、アルカリセルロースを得ることができる。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらの塩基は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基の量は、アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及び後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの生産性を高める観点から、セルロース含有原料中のセルロースを構成するAGU1モルあたり、0.6〜1.5モルが好ましく、0.7〜1.3モルがより好ましく、0.8〜1.2モルが更に好ましい。
水の添加量は、アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及び後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの生産性を高める観点から、セルロース含有原料中のセルロースに対して、20〜100質量%以上が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が更に好ましい。
【0051】
結晶性を低下させたセルロース含有原料、塩基、及び水の混合方法は、特に限定はないが、生産性を向上させる観点から、結晶性を低下させたセルロース含有原料に塩基及び水を添加することが好ましい。添加する方法としては、一括添加でも、分割添加でもよい。また、予め塩基と水を混合したものを噴霧して添加しても良い。
混合を行う装置としては、塩基をセルロース含有原料中に分散可能な装置であれば特に限定はない。例えば、リボン型混合機、パドル型混合機、円錐遊星スクリュー型混合機、ニーダー等の混合機が挙げられる。これらの中では、水平軸型パドル型混合機がより好ましく、具体的には、チョッパー翼を有する水平軸型のパドル型混合機であるレディゲミキサーが好ましい。
結晶性を低下させたセルロース含有原料、塩基、及び水を混合した後、アルカリセルロースの生成速度を向上させる観点から、熟成することが好ましい。熟成温度は、35〜90℃が好ましく、38〜80℃がより好ましく、40〜70℃が更に好ましい。また、熟成時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましく、1〜6時間が更に好ましい。
セルロース含有原料からアルカリセルロースへの変化は、X線結晶回折測定により確認することができる。
【0052】
(アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化)
アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化における酸化プロピレン量、触媒種、触媒量、反応条件の好ましい態様は、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>における(ヒドロキシプロピル化)に記載のものと同様である。
(ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化)
ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化におけるカチオン化剤種、カチオン化剤量、触媒種、触媒量及び反応条件の好ましい態様は、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>における(カチオン化)に記載のものと同様である。
【0053】
<(3−2−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造:c法>
(セルロース含有原料のアルカリセルロース化)
セルロース含有原料を塩基と共に、実質的に水が存在しない条件下で粉砕機処理して、セルロース・塩基混合粉砕物を得た後、水を混合することにより、アルカリセルロースを得ることができる。
セルロース含有原料の種類、形状、結晶化度、平均重合度の好ましい態様は、上記a法における(結晶性の高いセルロース含有原料のカチオン化)に記載のものと同様である。
また、塩基化合物の種類、塩基の量の好ましい態様は、上記b法における(アルカリセルロース化)に記載のものと同様である。
塩基は、粉砕時の水分量を低減する観点から、水分を含有しない状態で混合することが好ましい。
粉砕機処理は、実質的に水が存在しない条件下で行うことが好ましい。すなわち、粉砕効率や水分除去の簡便性等の生産性を向上させる観点から、セルロース含有原料に対する水分量が10質量%以下が好ましく、0.01〜8質量%がより好ましく、0.1〜6質量%が更に好ましく、1〜5質量%がより更に好ましい。
【0054】
粉砕機の種類、及び粉砕条件の好ましい態様は、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>における(結晶性を低下させたセルロース含有原料の製造)に記載のものと同様である。
アルカリセルロースの生成速度を向上させる観点、アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及びセルロースの平均重合度の低下を抑制する観点から、セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径が10〜150μmになるまで粉砕することが好ましく、20〜130μmがより好ましく、40〜100μmが更に好ましく、50〜80μmがより更に好ましい。セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及び後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの生産性を高める観点から、セルロース・塩基混合粉砕物の水分量が、セルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%になるように、水をセルロース・塩基混合粉砕物に混合することが好ましく、35〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%が更に好ましい。
【0055】
(アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化)
アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化における酸化プロピレン量、触媒種、触媒量、反応条件の好ましい態様は、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>における(ヒドロキシプロピル化)に記載のものと同様である。
(ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化)
ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化におけるカチオン化剤種、カチオン化剤量、触媒種、触媒量及び反応条件の好ましい態様は、上記<(3−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造>における(カチオン化)に記載のものと同様である。
【0056】
上記b法、c法におけるヒドロキシプロピル化、カチオン化の反応順序は、逆でもよいが、カチオン化エチレンオキシ基の置換度を高める観点から、ヒドロキシプロピル化反応、カチオン化反応の順に行うことが好ましい。
【0057】
本発明で用いるC−HPCの製造方法としては、本発明の毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、前記(3−1)の方法において、<(3−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料、例えばパルプを使用するC−HPCの製造>に記載の方法(下記a法)、及び(3−2)に記載の方法(下記b法及びc法)が好ましい。
具体的には、本発明の毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、C−HPCは、下記工程(a−1)〜(a−3)を有する方法によって得られるもの、又は下記工程(a−4)及び(a−5)を有する方法によって得られるもの、又は下記工程(b−1)〜(b−4)を有する方法によって得られるもの、又は下記工程(c−1)〜(c−4)を有する方法によって得られるものが好ましく、下記工程(a−1)〜(a−3)を有する方法によって得られるもの、下記工程(b−1)〜(b−4)を有する方法によって得られるもの、又は下記工程(c−1)〜(c−4)を有する方法によって得られるものがより好ましい。
【0058】
a法:
工程(a−1):セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行う工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた粉砕機処理物に塩基を添加して粉砕機処理を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(a−3):工程(a−2)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【0059】
工程(a−4):セルロース含有原料に塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後カチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(a−5):工程(a−4)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
【0060】
b法:
工程(b−1):セルロース含有原料を粉砕機処理して、結晶化度が10〜50%であるセルロースを含有するセルロース含有原料を得る工程
工程(b−2):工程(b−1)で得られたセルロース含有原料に対して、該セルロースを構成するAGU1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対して20〜100質量%の水を添加してアルカリセルロースを得る工程
工程(b−3):工程(b−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(b−4):工程(b−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【0061】
c法:
工程(c−1):セルロース含有原料及びセルロース含有原料中のセルロースを構成するAGU1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基との混合物を、該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で粉砕機処理し、セルロースの平均粒径が10〜150μmであるセルロース・塩基混合粉砕物を得る工程
工程(c−2):工程(c−1)で得られたセルロース・塩基混合粉砕物に水を添加し、該セルロース・塩基混合粉砕物中の水分量を、工程(c−1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、アルカリセルロースを得る工程
工程(c−3):工程(c−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(c−4):工程(c−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【0062】
(C−HPCの含有量)
本発明で用いられるC−HPCの含有量は、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、毛髪処理剤組成物中、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感を付与する観点、及び毛髪処理剤組成物の粘度を低減する観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。
これらの観点を総合すると、C−HPCの含有量は、毛髪処理剤組成物中、0.005〜20質量%が好ましく、0.01〜15質量%がより好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.2〜7質量%が更に好ましい。
なお、後述する二剤型毛髪処理剤や二剤型パーマネントウェーブ剤等の多剤型毛髪処理剤の場合、上記含有量は第1剤あるいは第2剤中の含有量を示す。
【0063】
[毛髪処理剤組成物]
本発明の毛髪処理剤組成物は、C−HPCの他に、染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する。
本発明の毛髪処理剤組成物とは、一般概念としての染毛剤、毛髪用脱色剤、パーマネントウエーブ剤、ストレートパーマ剤、持続性毛髪セット剤、縮毛矯正剤等を含む広義の処理剤組成物を意味する。
本発明の毛髪処理剤組成物の代表的な形態としては、毛髪染毛剤、パーマ剤が挙げられる。以下において、「毛髪染毛剤」とは、染料を含む毛髪染色剤と染料を含まない毛髪脱色剤を包含する概念であり、毛髪を脱色すると共に染める剤も含む。
毛髪染毛剤としては、例えば、下記(a)及び(b)の一剤型毛髪染毛剤と、下記(c)及び(d)の多剤型毛髪染毛剤が挙げられる。
(a)染毛用染料と必要により酸化剤を含有する一剤型毛髪染毛剤。
(b)染毛用染料を含有せず、酸化剤を含有する一剤型毛髪染毛剤。
(c)アルカリ剤及び/又は染毛用染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とからなる二剤型毛髪染毛剤。
(d)アルカリ剤及び/又は染毛用染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、酸化助剤を含有する第3剤とからなる三剤型毛髪染毛剤。
また「パーマ剤」とは、パーマネントウエーブ剤、ストレートパーマ剤、縮毛矯正剤を包含する概念であり、ケラチン還元剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤からなる二剤型である。
以上のことから、本発明の毛髪処理剤組成物は、C−HPCの他に、染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する。
【0064】
<毛髪染毛剤>
毛髪染毛剤は、C−HPCの他に、染毛用染料、酸化剤、及びアルカリ剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する。
(染毛用染料)
染毛用染料には、直接染料と酸化染料中間体が含まれる。
直接染料としては、通常、化粧料等で用いられるものであれば特に制限はなく、ニトロ染料、アントラキノン染料、酸性染料、油溶性染料、塩基性染料等が挙げられる。
ニトロ染料としては、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC赤3、HC黄2、HC黄4等が挙げられ、アントラキノン染料としては、1−アミノ−4−メチルアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン等が挙げられる。
酸性染料としては、赤色各号、橙色各号、黄色各号、緑色各号、青色各号、紫色401号、黒色401号、アシッドブルー1、同3、同62、アシッドブラック52、アシッドブラウン13、アシッドグリーン50、アシッドオレンジ6、アシッドレッド14、同35、同73、同184、ブリリアントブラック1等が挙げられる。
油溶性染料としては、赤色各号、橙色各号、黄色各号、緑色202号、紫色201号、青色403号等が挙げられ、塩基性染料としては、ベーシックブルー6、同7、同9、同26、同41、同99、ベーシックブラウン4、同16、ベーシックブラウン17、ベーシックグリーン1、ベーシックレッド2、同12、同22、同51、同76、ベーシックバイオレット1、同3、同10、同14、同57、ベーシックイエロー57、同87、ベーシックオレンジ31等が挙げられる。
【0065】
酸化染料中間体としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカップラーを用いることができる。
プレカーサーとしては、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、オルトクロルパラフェニレンジアミン、N−フェニルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、3−メチル−4−アミノフェノール、2−ヒドロキシエチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、4−アミノメタクレゾール、オルトアミノフェノール及びこれらの塩等が挙げられ、カップラーとしては、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、1−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、メタフェニレンジアミン、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2,6−ジアミノピリジン、2−メチル−5−ヒドロキシエチルアミノフェノール、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン及びこれらの塩等が挙げられる。
【0066】
(酸化剤)
酸化剤としては、過酸化水素、過酸化水素又は酸素の発生剤である過酸化尿素、過酸化メラミン、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられ、毛髪への染色性の観点から、過酸化水素が好ましい。
(酸化助剤)
酸化助剤としては、例えば、過硫酸塩等が挙げられる。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらは造粒物のような粉末の形態が好ましい。
【0067】
(アルカリ剤)
アルカリ剤としては、アンモニア及びその塩;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩;1,3−プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。中でも、毛髪への染色性の観点から、アンモニア、アルカノールアミン及びそれらの塩がより好ましい。
【0068】
上記の直接染料、酸化染料中間体、酸化剤、酸化助剤、及びアルカリ剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
直接染料の含有量は、毛髪処理剤組成物中0.005〜5質量%が好ましい。
酸化染料中間体である、プレカーサーとカップラーの含有量は、毛髪への染色性の観点から、それぞれ毛髪処理剤組成物中0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
酸化剤の含有量は、十分な染毛性・脱色性の観点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、毛髪処理剤組成物中の0.1〜12質量%が好ましく、0.5〜9質量%がより好ましい。
酸化助剤の含有量は、十分な脱色効果及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、毛髪処理剤組成物中の0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、3〜25質量%が更に好ましい。
アルカリ剤の含有量は、十分な染色性・脱色性の観点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、毛髪処理剤組成物中0.1〜10質量%が好ましい。
染毛剤のpHは、皮膚や毛髪の損傷を抑制するために、一剤型染毛剤では3〜9が好ましい。二剤型染毛剤の第1剤では8〜13が好ましく、第2剤では2〜5が好ましい。三剤型染毛剤の第1剤では8〜13が好ましく、第2剤では2〜5が好ましい。pHの調整は、公知のpH調整剤を使用して行うことができる。
【0069】
毛髪染毛剤は、室温で使用するもの、加温して使用するもの等、いずれの形式のものにも適用することができる。
また、二剤型染毛剤において、第1剤と第2剤の含有量比(質量比)[第1剤/第2剤]は、2/8〜6/4が好ましく、3/7〜5/5がより好ましく、3.5/6.5〜4.5/5.5が更に好ましい。
【0070】
<パーマ剤>
パーマ剤は、C−HPCの他に、処理剤(B)としてケラチン還元剤、アルカリ剤及び酸化剤を含有する。
(ケラチン還元剤)
ケラチン還元剤は、毛髪を構成するケラチンのジスルフィド結合を開裂させることができる。このようなケラチン還元剤を含む毛髪処理剤組成物は、パーマネントウェーブ第1剤として好ましく使用することができる。
ケラチン還元剤としては、チオグリコール酸及びその誘導体、チオ乳酸及びその誘導体、システイン及びその誘導体、又はそれらの塩、下記式(4)のチオグリセリルアルキルエーテル又はその塩、及び下記式(5)のメルカプトアルキルアミド又はその塩等が挙げられる。
7OCH2CH(OH)CH2SH (4)
(式中、R7は水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ低級アルキル基を示す。)
H−(CHOH)x−(CH2y−CONH(CH2z−SH (5)
(式中、xは0〜5の数であり、yは0〜3の数であり、zは2〜5の数である。ただし、yとzとは同時に0ではない。)
【0071】
ケラチン還元剤の具体例としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸グリセリンエステル、L−システイン、D−システイン、N−アセチルシステイン、これらシステイン類のアンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン塩類、エトキシヒドロキシプロパンチオール、メトキシエトキシヒドロキシプロパンチオール、イソプロポキシエトキシヒドロキシプロパンチオール等のチオグリセリルアルキルエーテル、メルカプトエチルプロパンアミド、メルカプトエチルグルコンアミド等が挙げられる。
還元剤の含有量は、毛髪を構成するケラチンのジスルフィド結合を開裂させ、仕上がりの良好なパーマ性を得る観点から、毛髪処理剤組成物中0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0072】
(アルカリ剤)
アルカリ剤は、ケラチン還元剤と一緒に用いられる。
アルカリ剤としては、毛髪染毛剤で挙げられてものと同様のものが用いられる。中でも、ケラチン還元剤の作用を向上させる観点から、アンモニア、アルカノールアミン及びそれらの塩、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0073】
(酸化剤)
酸化剤は、パーマネントウェーブ第1剤と組み合わせて使用するためのパーマネントウェーブ第2剤に配合される。酸化剤としては、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。
酸化剤の含有量は、毛髪処理剤組成物中1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%より好ましい。これにより、毛髪内の切断されたケラチンのジスルフィド結合を十分に再結合させることができる。
パーマ剤のpHは、皮膚や毛髪の損傷を抑制するために、第1剤では6〜12が好ましく、第2剤では3〜9が好ましい。pHの調整は、公知のpH調整剤を使用して行うことができる。
パーマ剤は、室温で使用するもの、加温して使用するもの、ウェーブ形成を目的とするもの、縮毛矯正を目的とするもの等、いずれの形式のものにも適用することができる。
パーマネントウェーブ剤において、第1剤と第2剤の使用量比(質量比)[第1剤/第2剤]は、3/7〜7/3が好ましく、4/6〜6/4がより好ましく、4.5/5.5〜5.5/4.5が更に好ましい。
【0074】
<その他の成分>
本発明の毛髪処理剤組成物は、上記C−HPC、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有するが、それら以外に、通常化粧品原料として用いられる他の成分を含有することができる。このような任意成分としては、感触向上剤、増粘剤、界面活性剤、油剤、香料、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、パール光沢剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0075】
(感触向上剤、増粘剤)
感触向上剤、増粘剤としては、水溶性コラーゲン、コラーゲン誘導体に代表されるタンパク加水分解物、特許第3472491号公報に記載のカチオン性基含有共重合体、特公昭58−35640号公報、特公昭60−46158号公報、及び特開昭58−53996号公報中に記載されているカチオン化グアーガム誘導体、特開平4−108723号公報に記載されているカチオン化ヒドロキシエチルセルロース、BASF社より販売されているルビカットセンセーション、ナルコ社より販売されているマーコート100、550等のカチオン性ポリマー、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマーや両性ポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースやポリエチレングリコール等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0076】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、通常、医薬品、医薬部外品、化粧料、トイレタリー等で用いられるものであれば特に制限はなく、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0077】
陰イオン性界面活性剤の具体例としては、(i)アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、(ii)アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート、アルキルスルホネート、スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩等のスルホン酸塩、(iii)アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等のアミノ酸塩、(iv)高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等のカルボン酸塩、(v)アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0078】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリアルキレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0079】
両性界面活性剤としては、ベタイン系界面活性剤及びアミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。具体的には、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤が挙げられる。
【0080】
陽イオン性界面活性剤としては、下記式(6)で表される3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩、及び下記式(7)で表される四級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。
【0081】
【化7】

【0082】
(式中、R15は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数6〜28の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R16アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数1〜28の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はアルカノール基を示し、R17は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルカノール基を示す。)
【0083】
【化8】

【0084】
(式中、R18は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数6〜28の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R19はアミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数1〜28の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はアルカノール基を示し、R20及びR21は、炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Z−は、アンモニウムイオンの対イオンであるアニオン性基を示す。)
【0085】
上記式(6)で表される3級アミンと塩を形成する鉱酸又は有機酸は特に限定されないが、界面活性剤の分散安定性の観点から、ハロゲン化水素、硫酸、酢酸、クエン酸、乳酸及び炭素数1〜3のアルキル硫酸が好ましく、ハロゲン化水素としては、化学的安定性の観点から塩化水素が好ましい。
上記式(6)及び(7)で表される陽イオン性界面活性剤の具体的としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム等の塩化モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジイソステアリルジメチルアンモニウム等の塩化ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム;ステアリルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン等のモノ長鎖ジメチルアミン、モノ長鎖ジエチルアミンのグルタミン酸、塩酸、クエン酸、又は乳酸塩等が挙げられる。
【0086】
本発明の毛髪処理剤組成物において、界面活性剤の含有量は、毛髪処理剤組成物で処理した毛髪の乾燥後の指通り性、ハリコシ感、まとまり性を得る観点及び処方の粘度調整の観点から、毛髪処理剤組成物中、0.1〜50質量%が好ましく、0.3〜40質量%がより好ましく、0.5〜30質量%が更に好ましい。
【0087】
(油剤)
本発明の毛髪処理剤組成物は、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、まとまり感を高める観点から、油剤を含有することが好ましい。
油剤としては、通常、医薬品、医薬部外品、化粧料、トイレタリー等で用いられるものであれば特に制限はない。具体的には、高級アルコール、シリコーン、エーテル油、エステル油、炭化水素類、グリセリド類、植物油、動物油、ラノリン誘導体、高級脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0088】
高級アルコールとしては、2−エチルヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、イコシルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
シリコーンとしては、特開平6−48916号公報に記載されている(a)ジメチルポリシロキサン、(b)メチルフェニルポリシロキサン、(c)アミノ変性シリコーン〔水性乳濁液としては、SM8704C(東レ・ダウコーニング製)、DC939(東レ・ダウコーニング製)等が挙げられる〕、(d)脂肪酸変性ポリシロキサン、(e)アルコール変性シリコーン、(f)脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、(g)ポリエーテル変性シリコーン、(h)エポキシ変性シリコーン、(i)フッ素変性シリコーン、(j)環状シリコーン、(k)アルキル変性シリコーン、(l)アミノ変性シロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0089】
エーテル油としては、プロピレンオキシ基の平均付加モル数が、2〜15であるポリオキシプロピレンヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル、ジラウリルエーテル、ジミリスチルエーテル、ジセチルエーテル、ジステアリルエーテル、ジイコシルエーテル、ジベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0090】
エステル油としては、モノエステル油、又は分子内に2以上のエステル結合を有するエステル油の一種又は二種以上の混合物が好ましい。
エステル油の具体例としては、ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油、ヒマワリ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、シア脂油等の植物油、炭酸ジオクチル、クエン酸ポリオキシプロピレン(平均付加モル数3)ベンジルエーテル、ミリスチン酸ポリオキシプロピレン(平均付加モル数3)ベンジルエーテル、2−エチルヘキシル酸ポリオキシプロピレン(平均付加モル数3)ベンジルエーテル等の合成エステル油等が挙げられる。
【0091】
炭化水素油としては、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α―オレフィンオリゴマー、シクロパラフィン、ポリブテン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、セレシン等が挙げられる。
油剤の含有量は、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、まとまり感を付与する観点及び乳化安定性の観点から、毛髪用処理剤組成物中、1〜30質量%が好ましく、1.5〜25質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。
【0092】
本発明の毛髪化粧料は、常法に従って製造することができる。また、その剤型も特に制限されず、液体状、泡状、ペースト状、クリーム状、固形状、粉末状等、任意の剤型とすることができるが、液体状、ペースト状又はクリーム状とすることが好ましく、液体状とすることがより好ましい。
液体状とする場合には、液体媒体として水、ポリエチレングリコール、エタノール等を用いるのが好ましく、水の配合量は、全組成物中に10〜90質量%が好ましい。
【0093】
[毛髪処理剤組成物の製造方法]
本発明の毛髪処理剤組成物の製造方法は、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する毛髪処理剤組成物の製造方法であって、前記工程(a−1)〜(a−3)、前記工程(a−4)〜(a−5)、前記工程(b−1)〜(b−4)、又は前記工程(c−1)〜(c−4)を有する。
本発明の製造方法は、毛髪処理剤組成物による処理乾燥後の毛髪の良好な指通り性、ハリコシ感、まとまり感を付与する観点から、前記工程(a−1)〜(a−3)、前記工程(b−1)〜(b−4)又は前記工程(c−1)〜(c−4)を有することが好ましく、さらにC−HPCの分子量の低下を抑制する観点から、前記工程(b−1)〜(b−4)又は前記工程(c−1)〜(c−4)を有することがより好ましい。
【実施例】
【0094】
以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
製造例、実施例において行った各種物性の測定法は以下のとおりである。
【0095】
(1)パルプ及び粉末セルロースの結晶化度の算出
株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて、以下の条件で測定した回折スペクトルのピーク強度から、前記計算式(1)により算出した。
X線光源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:2θ=5〜45°、
測定サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作成
X線のスキャンスピード:10°/min
得られた結晶化度が負の値をとった場合は、全て結晶化度0%とした。
【0096】
(2)粉末セルロース、セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径の測定
粉末セルロースの平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定試料として粉末セルロース0.1gを5mLの水に加え、超音波で1分間処理した試料分散液を用いた。体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定し、これを平均粒径とした。
セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径は、同様の測定装置を用い、セルロース・塩基混合粉砕物にエタノールに加え、透過率が70-95%の範囲に入るように濃度に調節し、超音波で1分間処理し、NaOHを溶解させた試料分散液を用いた。
【0097】
(3)パルプ及び粉末セルロース水分量の測定
パルプ、粉末セルロースの水分量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を用いて測定した。測定温度120℃で、30秒間の重量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。
【0098】
(4)C−HPCの置換度の算出
製造例で得られたC−HPCを透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られた精製C−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、C−HPC中に含まれるカチオン性基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(2)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)O−)の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100) (2)
分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、ヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(3)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(OC36OH=75.09〕(b(モル/g)を求めた。
b(モル/g)=ガスクロ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (3)
得られたa及びbと下記計算式(4)、(5)からカチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
a=k/(162+k×K+m×58) (4)
b=m/(162+k×K+m×58) (5)
〔式中、k及びKは、それぞれ、カチオン化エチレンオキシ基の置換度及び式量を示し、mはプロピレンオキシ基の置換度を示す。〕
【0099】
(5)平均重合度の測定(銅アンモニア法)
(5−1)パルプ及び粉末セルロースの粘度平均重合度の測定
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したセルロースを加え、標線まで上記アンモニア水を満たした。空気の入らないように密封し、12時間、マグネチックスターラーで撹拌して溶解し、測定用溶液を調製した。添加するセルロース量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
(ii)粘度平均重合度の測定
上記(i)得られた測定用溶液(銅アンモニア溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置した後、液の流下速度を測定した。種々のセルロース濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とセルロース無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により相対粘度ηrを求めた。
ηr=t/t0
次に、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を下記式により求めた。
ηsp/c=(ηr−1)/c
(c:セルロース濃度(g/dL)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、下記式により粘度平均重合度(DP)を求めた。
DP=2000×[η]
【0100】
(5−2)C−HPCの粘度平均重合度の測定
(iii)測定溶液の調製
精秤したセルロースの替わりに精秤したC−HPCを用いた点を除き、上記(i)の測定溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
(iv)粘度平均重合度の測定
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。
ここで、セルロース換算濃度(ccell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(6)で定義する。
cell=u×162/(162+k×K+m×58) (6)
〔式中、uは測定溶液の調製時に用いた精秤したC−HPCの質量(g)を示し、k、K、mは、それぞれ前記計算式(4)及び(5)と同じ意味を表す。〕
【0101】
製造例1〔C−HPC(1)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化工程(1)
上記(1)で得られたチップ状パルプ100gに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(阪本薬品工業株式会社製、含水量20%、純度90%以上)(以下「GMAC」という)23.4g〔セルロースのAGU1モルあたり0.2モル相当量〕を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。30分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行い、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
得られた粉末状混合物に、24.7%水酸化ナトリウム水溶液20g(AGU 1モルあたり0.2モル相当量)を乳鉢で混合した後、前記バッチ式振動ミルに投入した。同様の条件にて60分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロース(i)151gを得た。
(3)カチオン化工程(2)
上記(2)で得られたカチオン化セルロース(i)128gに、GMAC 31.3g(AGU 1モルあたり0.32モル相当量)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物を、還流管を取り付けた1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型)に仕込み、50℃、窒素雰囲気下、50rpmで攪拌しながら5時間熟成を行い、カチオン化セルロース(ii)を得た。
(4)ヒドロキシプロピル化工程
熟成後に得られたカチオン化セルロース(ii)152.6g(未中和・未精製品)の入ったニーダーを70℃に昇温し、酸化プロピレン72.5g(AGU 1モルあたり2.5モル相当量、関東化学株式会社製、特級試薬)を攪拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで20時間反応を行った。
【0102】
反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末210.6gを得た。この粗C−HPC粉末10.0gを採取して酢酸で中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(1)を得た。
得られた精製C−HPC(1)の元素分析より、塩素含有量は3.4%であった。また、前記「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」によるヒドロキシプロポキシ基含有量は43.3%であった。カチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.30、及び1.8であった。精製C−HPC(1)の平均重合度は739であった。結果を表1に示す。
【0103】
製造例2〔C−HPC(2)の製造〕
カチオン化工程(1)を表1に示す条件に変え、カチオン化工程(2)を行なわず、ヒドロキシプロピル化工程を表1に示す条件に変えたこと以外は製造例1と同様に行った。得られた精製C−HPC(2)の結果を表1に示す。
製造例3〔C−HPC(3)の製造〕
カチオン化工程(1)、カチオン化工程(2)、及びヒドロキシプロピル化工程を表1に示す条件に変えたこと以外は製造例1と同様に行った。得られた精製C−HPC(3)の結果を表1に示す。
製造例4〔C−HPC(4)の製造〕
カチオン化工程(1)、カチオン化工程(2)、及びヒドロキシプロピル化工程を表1に示す条件に変えたこと以外は製造例1と同様に行った。得られた精製C−HPC(4)の結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
製造例5〔C−HPC(5)の製造〕
(1)チップ化工程
セルロースとして、シート状木材パルプ〔テンベック社製Biofloc HV10、平均重合度1508、結晶化度74%、水分量7.0%〕をシートペレタイザ(株式会社ホーライ製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化工程(1)
上記(1)で得られたチップ状パルプ989g(水分量7.0%)に、GMAC559g(AGU 1モルあたり0.52モル相当量)とイオン交換水24gを加え、ポリ袋中で混合を行った後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「FV−10」、容器全容量;35L、ロッドとして、φ30mm、長さ510mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド63本、充填率64%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)を行い、セルロースとGMACの粉状混合物を得た。
更に振動ミル内に顆粒状水酸化ナトリウム(有効分100%)136.2g(AGU 1モルあたり0.60モル相当量)を投入した。再び112分間粉砕処理を行いカチオン化セルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化工程
上記(2)で得られたカチオン化セルロース95.0gを製造例1で用いた還流管を取り付けたニーダーに仕込み、ニーダーを70℃に昇温し、酸化プロピレン35.4g(AGU 1モルあたり2.0モル相当量)を攪拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで7時間反応を行った。反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末120.6gを得た。
(4)カチオン化工程(2)
上記(3)で得られた粗C−HPC粉末10.6gにGMAC 16.2g(AGU 1モルあたり3.5モル相当量)を添加し、乳鉢で混合を行った後、恒温槽中50℃にて24時間熟成を行った。得られた粗C−HPCに水:エタノール:イソプロピルアルコール=5:45:50(重量比)の混合溶媒100gを用いて分散を行い、酢酸を加え中和し、沈殿精製を行った。沈殿物をろ過収集し乾燥機中60℃にて一晩減圧乾燥を行い、薄褐色塊状の粗C−HPC(5)を得た。
プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、生成物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(5)を得た。
得られた精製C−HPC(5)の元素分析より、塩素含有量は9.1%であった。また、ヒドロキシプロポキシ基含有量は、25.1%であった。カチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ1.00、及び1.3と算出した。精製C−HPC(5)の平均重合度は464であった。結果を表2に示す。
【0106】
製造例6〔C−HPC(6)の製造〕
原料パルプを表2に示す原料パルプに変え、カチオン化工程(1)、ヒドロキシプロピル化工程、及びカチオン化工程(2)を表2に示す量に変えた以外は製造例5と同様に行った。得られた精製C−HPC(6)の結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
製造例7〔C−HPC(7)の製造〕
(1)低結晶性粉末セルロースの製造工程
シート状木材パルプ(テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.0%)をシュレッダー(株式会社明光商会製、「MSX2000−IVP440F」)にかけて3〜5mm角のチップ状にした。その後、50℃減圧下で12時間乾燥処理を行い、チップ状の乾燥パルプ(水分含量0.4%)を得た。
次に、得られたチップ状の乾燥パルプ100gを、製造例1で使用したバッチ式振動ミルに投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30〜70℃の範囲で35分粉砕処理を行い、粉末セルロース(結晶化度0%、平均重合度836、平均粒径52μm、水分含量1.0%)を得た。
(2)カチオン化工程
上記(1)で得られた粉末セルロース100gに、GMAC 46.9g(AGU 1モルあたり0.4モル相当量)を添加し、乳鉢で混合した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液5.14g(AGU 1モルあたり0.1モル相当量)、イオン交換水18gを添加し、混合した。製造例1で使用したニーダーに、得られた混合物を仕込み、50℃で4時間撹拌し、カチオン化セルロース170gを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化工程
上記(2)で得られたカチオン化セルロースを70℃170gに加温し、攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を4.7g(AGU 1モルあたり0.1モル相当量)、イオン交換水を16.4g加えた。更に、酸化プロピレン101g(AGU 1モルあたり3.0モル相当量)を滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで24時間反応を行った。反応後、セルロースは流動性のある粉末状態を保っていた。この反応終了品10.0gを採取して酢酸で中和し、薄褐色固体を得た。中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(7)を得た。
得られた精製C−HPC(7)の元素分析より、塩素含有量は2.1%であった。また、ヒドロキシプロポキシ基含有量は、49.2%であった。カチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.18及び2.0と算出した。精製C−HPC(7)の平均重合度は832であった。結果を表3に示す。
【0109】
製造例8〔C−HPC(8)の製造〕
原料パルプを表3に示す原料パルプに変え、低結晶性粉末セルロースの製造工程、カチオン化工程、及びヒドロキシプロピル化工程を表3に示す条件に変えたこと以外は製造例7と同様に行った。得られた精製C−HPC(8)の結果を表3に示す。
製造例9〔C−HPC(9)の製造〕
ヒドロキシプロピル化工程を表3に示す条件に変えたこと以外は製造例7と同様に行った。得られた精製C−HPC(9)の結果を表3に示す。
【0110】
【表3】

【0111】
製造例10〔カチオン化セルロース(1)の製造〕
酸化プロピレンの付加反応を行わなかったこと以外は製造例4と同様に行い、カチオン化セルロース(1)を得た。
【0112】
製造例11〔C−HPC(10)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1481、結晶化度74%、水分含量4.6%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)アルカリセルロース化工程
上記工程(1)で得られたチップ状パルプ100gと0.7mm粒状のNaOH23.6g(AGU1モルあたり1.0モル相当量)を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入し、15分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行った。得られたセルロース・NaOH混合粉砕物(セルロースの平均粒径:65μm)を乳鉢に移し、水50gを噴霧にて添加した。セルロース・NaOH混合粉砕物の水分量は、セルロースに対して57%であった。20℃にて乳棒で5分間混合し、アルカリセルロースを得た(平均重合度:1175)。
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2)で得られたアルカリセルロースを還流管と滴下ロートを取り付けたニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型、容積1.0L)に仕込み、酸化プロピレン85.7g(AGU1モルあたり2.5モル相当量)を投入し、攪拌を行いながら50℃にて6時間反応させた。反応は、酸化プロピレンを5時間かけて滴下した後、1時間熟成を行った。
(4)カチオン化反応工程
上記工程(3)で得られた反応混合物5.8gを乳鉢にとり、65% 3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液(四日市合成株式会社製)2.10g(AGU1モルあたり0.50モル相当量)を添加して、5分間混合後、50mlガラス瓶に移し、50℃、7時間反応させることで粗C−HPCを製造した。
この粗C−HPC粉末5.0gを採取して乳酸で中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(10)を得た。
得られた精製C−HPC(10)の元素分析より、塩素元素含有量は3.3%であり、ヒドロキシプロポキシ基含有量は38.8%であった。また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.27、1.5と算出された。また、平均重合度は、643であった。結果を表4に示す。
【0113】
【表4】

【0114】
製造例12〔C−HPC(11)の製造〕
(1)低結晶性粉末セルロース製造工程
製造例11(1)と同様に行い、3〜5mm角のチップ状パルプを得た。得られたチップ状パルプ1kgを、乾燥器(アドバンテック東洋株式会社製、商品名;VO−402)に投入し、105℃で2時間乾燥して、乾燥チップ状パルプ(水分含有量0.8%)を得た。
得られた乾燥チップ状パルプ920gをバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、「FV−10」:全容器量35L、ロッドとして、φ30mm、長さ510mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド63本、充填率65%)に投入した。10分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)を行い、粉末セルロース(結晶化度14%、平均重合度1198、水分含有量1.0%)を得た。
(2)アルカリセルロース化工程
上記工程(1)で得られた粉末セルロース369gを混合機(株式会社マツボー製、「レディゲミキサー」、容量5L)に投入し、主翼250rpm、チョッパー翼2500rpmで撹拌しながら、42.5%水酸化ナトリウム水溶液212g(NaOH:AGU1モルあたり1.0モル相当量、水:セルロースに対して33%)を1.5分間で噴霧添加した。噴霧後、内温を50℃に昇温し、3時間熟成し、アルカリセルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2)で得られたアルカリセルロース607gを、上記レディゲミキサー内で、主翼50rpm、チョッパー翼400rpmで撹拌しながら50℃まで昇温し、その後、酸化プロピレン187g(AGU1モルあたり1.6モル相当量)を3.5時間で滴下した。滴下終了後50℃で2時間熟成した。
(4)カチオン化反応工程
上記工程(3)で得られた反応混合物11.4gを乳鉢にとり、65% 3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液4.31g(AGU1モルあたり0.5モル相当量)とイオン交換水0.84gを添加して、5分間混合後、50mlガラス瓶に移し、50℃、5時間反応させ粗C−HPCを得た。この粗C−HPC粉末を製造例12(4)と同様に、中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(13)を得た。
得られた精製C−HPC(11)の元素分析より、塩素元素含有量は4.3%であり、ヒドロキシプロポキシ基含有量は24.3%であった。また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.25、0.8と算出された。また、平均重合度は、659であった。結果を表5に示す。
【0115】
製造例13〔C−HPC(12)の製造〕
(1)低結晶性粉末セルロース製造工程
製造例12(1)と同様に行い、粉末セルロース(結晶化度14%、平均重合度1198、水分含有量1.0%)を得た。
(2)アルカリセルロース化工程
上記工程(1)で得られた粉末セルロース530.5g及び42.5%水酸化ナトリウム水溶液307g(NaOH:AGU1モルあたり1.0モル相当量、水:セルロースに対して34%)を用いた以外は、製造例13(2)と同様に行い、アルカリセルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2)で得られたアルカリセルロース825gを、上記レディゲミキサー内で、主翼50rpm、チョッパー翼400rpmで撹拌しながら50℃まで昇温し、その後、酸化プロピレン467g(AGU1モルあたり2.6モル相当量)を6時間で滴下した。滴下終了後50℃で2時間熟成した。
(4)カチオン化反応工程
上記工程(3)で得られた反応混合物12.3gを乳鉢にとり、65% 3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液4.31(AGU1モルあたり0.5モル相当量)とイオン交換水0.84gを添加して、5分間混合後、50mlガラス瓶に移し、50℃、5時間反応させることで粗C−HPCを得た。この粗C−HPC粉末を製造例16(4)と同様に、中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(14)を得た。
得られたC−HPC(12)の元素分析より、塩素元素含有量は2.5%であり、ヒドロキシプロポキシ基含有量は38.5%であった。また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.19、1.4と算出された。また、平均重合度は、1186であった。結果を表5に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
製造例1〜9、11〜13で得られたC−HPCの平均重合度、カチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度と、カチオン化セルロース(1)の平均重合度及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を合わせて表6に示す。
【0118】
【表6】

【0119】
実施例1〜9、21〜23及び比較例1〜7(二剤型毛髪染毛剤の製造及び評価)
(1)第1剤の調製
表7に示す、高級アルコールと28%アンモニア水溶液以外の成分と適量の水を混合し撹拌した。60℃に加温して完全に溶解させた。そこに、高級アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール)を予め混合し70℃に加温したものを添加し、乳化させた。40℃まで冷却し、28%アンモニア水溶液と残りの水を添加して均一に混合し、第1剤を調製した。pHは10であった。
表7に示す成分の詳細は以下のとおりである。
・C−HPC(1)〜(12)(製造例1〜9、11〜13で得られたもの)
・カチオン化セルロース(1)(製造例10で得られたもの)
・カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(Amerchol社製、UCARE POLYMER JR−125)
・塩化ジメチルジアリルアンモニウム−アクリルアミド共重合体(ナルコ社製、マーコート295)
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−SE850K)
・ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、CELNY M)
・臭化ヘキサジメスリン(シグマ−アルドリッチ社製)
・染毛用染料:トルエン−2,5−ジアミン塩酸塩0.6部
・酸化染料中間体:パラアミノフェノール0.3部、レゾルシン0.3部、5−アミノオルトクレゾール0.1部を合計0.7部
・アルカリ剤:モノエタノールアミン1.4部、28%アンモニア水溶液6.5部を計7.9部
・界面活性剤:ラウレス−12を7.0部、オレス−30を4.0部、ラウレス−3を5.0部、ラウリン酸を3.0部計19.0部
・高級アルコール:セチルアルコール5.8部、ステアリルアルコール5.8部を計11.6部
・その他:プロピレングリコール7.0部、亜硫酸ナトリウム0.3部、アスコルビン酸ナトリウム0.3部、EDTA−2−ナトリウム0.1部を計7.7部
【0120】
(2)第2剤の調製
下記の界面活性剤とその他と適量の水を混合し撹拌した。60℃に加温して完全に溶解させた。そこに、70℃に加温した高級アルコールを添加し、乳化させた。40℃まで冷却し、35%過酸化水素水溶液と残りの水を添加して均一に混合し、第2剤を調製した。pHは4であった。
・界面活性剤:セテアレス−13を0.5部、ラウレス−1硫酸ナトリウム1.0部、計1.5部
・高級アルコール:セチルアルコール3.0部
・その他:EDTA−2−ナトリウム0.1部、リン酸0.1部、リン酸水素2ナトリウム0.2部を計0.4部
【0121】
(3)二剤型毛髪染毛剤の評価
下記組成のプレーンシャンプーで洗浄した毛束1gをドライヤーの温風で乾燥させた。前記(1)、(2)で得られた第1剤0.4g及び第2剤0.6gを混ぜ合わせ、あわせて1gを毛束に塗布した。その後、毛束を30℃で30分間静置し、温水で30秒間すすぎ、プレーンシャンプーで洗浄し、下記組成のプレーンコンディショナーで処理した。
その後、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整えた。更にドライヤーの温風で乾燥させ、仕上げに櫛で毛束を整え、評価用トレスを得た。5人のパネラーが、以下に示す評価基準、評価方法により、毛髪の指通り性、ハリコシ感、まとまり感の評価を行った。
結果を表5に示す。
【0122】
〔プレーンシャンプーの組成〕
(成分) (%)
ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸Na 11.0
(花王株式会社製、商品名:エマールE-27C 有効成分:27%を40.7%添加)
ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド 3.0
(花王株式会社製、商品名:アミノーンC11S)
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.3
精製水 残 余
計 100.0
【0123】
〔プレーンシャンプーの製造〕
ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸Naとヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミドと適量の水を混合し、均一に溶解させた。更にメチルパラベンを加えて均一に溶解させた。最後に、クエン酸と残りの水を加えて均一に溶解させた。
【0124】
〔プレーンコンディショナーの組成〕
(成分) (%)
ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド 1.0
セチルアルコール 0.6
ステアリルアルコール 2.3
プロピレングリコール 1.0
フェノキシエタノール 0.3
精製水 残 余
計 100.0
【0125】
〔プレーンコンディショナーの製造〕
フェノキシエタノールと適量の水を加えて混合し、80℃まで加温した。そこに、ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルアルコール、ステアリルアルコール、プロピレングリコールを予め混合し70℃に加温したものを添加し、乳化させ、常温まで冷却した。
【0126】
・指通り性
5:指通りが非常によい
4:指通りがよい
3:指通りが普通
2:指通りが悪い
1:指通りが非常に悪い
・ハリコシ感
5:髪のハリコシが非常によい
4:髪のハリコシがよい
3:髪のハリコシが普通
2:髪のハリコシが悪い
1:髪のハリコシを全く感じない
・まとまり感
5:髪のまとまりが非常によい
4:髪のまとまりがよい
3:髪のまとまりが普通
2:髪のまとまりが悪い
1:髪が全くまとまらない
【0127】
(評価基準:比較例3を基準スコア3とする)
5人のパネラーの評価結果を平均して評点を求めた。
【0128】
【表7】

【0129】
表7より、実施例1〜9、21〜23の毛髪染毛剤は処理乾燥後に、良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0130】
実施例10〜14、及び比較例8(二剤型毛髪染毛剤の製造及び評価)
表8に示す組成の二剤型毛髪染毛剤を実施例1と同様にして製造した。第1剤のpHは10であり、第2剤のpHは4であった。表8に結果を示す。
表8より、実施例10〜14の毛髪染毛剤は処理乾燥後に、良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0131】
【表8】

【0132】
実施例15、及び比較例9〜11(二剤型毛髪染毛剤の製造及び評価)
表9に示す組成の二剤型毛髪染毛剤を実施例1と同等にした製造した。第1剤のpHは10であり、第2剤のpHは4であった。結果を表9に示す。
表9より、実施例15の二剤型毛髪染毛剤は、処理乾燥後に良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0133】
【表9】

【0134】
実施例16、及び比較例12〜14(二剤型毛髪染毛剤の製造及び評価)
表10に示す組成の二剤型毛髪染毛剤を製造例1と同様に製造した。第1剤のpHは10であり、第2剤のpHは4であった。結果を表10に示す。
表10より、実施例16の二剤型毛髪染毛剤は、処理乾燥後に良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0135】
【表10】

【0136】
実施例17及び比較例15(一剤型毛髪染毛剤の製造及び評価)
C−HPC(2)、ヒドロキシプロピルキサンタンガム(大日本住友製薬株式会社製、ラボーガムEX)と適量の水を混合し撹拌した。60℃に加温して溶解させた。71%グリコール酸水溶液、黒色401号、橙色205号、エタノール、グリセリン、ラウレス−13、PEG−11メチルエーテルジメチコン(信越化学工業株式会社製、KF6011)を添加し、溶解するまで撹拌した。40℃まで冷却し、適量の水を添加して均一に混合し、表9に示す組成の一剤型毛髪染毛剤を製造した。pHは3であった。
実施例1と同様のプレーンシャンプーで洗浄した白髪毛束1gをドライヤーの温風で乾燥させた。一剤型毛髪染毛剤組成物1gを毛束に塗布した。その後、毛束を30℃で30分間静置し、温水で30秒間すすぎ、実施例1と同様のプレーンシャンプーで洗浄し、実施例1と同様のプレーンコンディショナーで処理した。その後、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整え、更にドライヤーの温風で乾燥させ、仕上げに櫛で毛束を整え、評価用トレスを得た。評価は実施例1と同様に行った。結果を表11に示す。
表11より、実施例17の一剤型毛髪染毛剤は、処理乾燥後に良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0137】
【表11】

【0138】
実施例18及び比較例16(一剤型毛髪脱色剤の製造及び評価)
C−HPC(2)、セテス−40、PEG(60)−水添ヒマシ油、ポリソルベート−40、ジプロピレングリコール、EDTA−4ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸と適量の水を混合し撹拌した。60℃まで加温し、完全に溶解させた。70℃に加温したセチルアルコールを添加し、乳化させた。40℃まで冷却し、35%過酸化水素水と残りの水を添加し、均一に混合し、表12に示す組成の一剤型毛髪染毛剤を製造した。pHは3であった。
実施例1と同様のプレーンシャンプーで洗浄した黒髪毛束1gをドライヤーの温風で乾燥させた。上記で得られた一剤型毛髪脱色剤組成物1gを毛束に塗布した。その後、毛束を30℃で30分間静置し、温水で30秒間すすぎ、実施例1と同様のプレーンシャンプーで洗浄し、実施例1と同様のプレーンコンディショナーで処理した。その後、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整え、更にドライヤーの温風で乾燥させ、仕上げに櫛で毛束を整え、評価用トレスを得た。評価は実施例1と同様に行った。結果を表12に示す。
表12より、実施例18の一剤型毛髪脱色剤は、処理乾燥後に良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0139】
【表12】

【0140】
実施例19及び比較例17〜22(パーマネントウェーブ剤の製造及び評価)
(1)第1剤の調製
表13に示す、50%チオグリコール酸アンモニウム、28%アンモニア水以外の成分と適量の水と混合し、完全に溶解するまで撹拌した。50%チオグリコール酸アンモニウム、28%アンモニア水と残りの水を加えて撹拌し、完全に溶解させ、第1剤を調製した。pHは9であった。
表13に示す成分の詳細は以下のとおりである。
・C−HPC(2)(製造例2で得られたもの)
・カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(Amerchol社製、UCARE POLYMER JR−125)
・塩化ジメチルジアリルアンモニウム−アクリルアミド共重合体(ナルコ社製、マーコート295)
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−SE850K)
・ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、CELNY M)
・臭化ヘキサジメスリン(シグマ−アルドリッチ社製)
(2)第2剤の調製
臭素酸ナトリウム、プロピレングリコール、界面活性剤(セテアレス−13、ラウレス−3)、ケラチン加水分解物(株式会社成和化成製、プロモイス(有効分10%)を1.0%添加)と適量の水を混合し、完全に溶解するまで撹拌した。アモジメチコン(東レダウコーニング株式会社製、SM8904(有効分40%)を1.25%添加)を添加し、均一に混合し、第2剤を調製した。pHは7であった。
【0141】
(3)パーマネントウェーブ剤の評価
化学処理歴のない女子成人毛髪で長さ約26cm、重さ10gの黒色の直毛を検体とし、これを実施例1と同様のプレーンシャンプーで処理し、流水で洗浄した後風乾した。この毛髪検体2gを均一な厚みとなるように2cm幅に引きそろえた。毛髪の片端を2cm幅のプラスチック版に接着剤で固定したもの試験用毛束とした。
作成した毛束を実施例1と同様のプレーンシャンプーで処理し、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整えた。この毛束を直径9mmのロッド(株式会社ダリヤ製、ベネゼルコールドロッド6号)に巻きつけ、第1剤2gを塗布し、30℃で15分間静置した。更に、第2剤を2g塗布し、30℃で15分静置した。処理した毛髪を温水で30秒間すすいだ。その後、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整え、更にドライヤーの温風で乾燥させ、仕上げに櫛で毛束を整え、評価用トレスを得た。
実施例1と同様に評価した結果を表13に示す。
表13より、実施例19のパーマネントウェーブ剤は、処理乾燥後に良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0142】
【表13】

【0143】
実施例20及び比較例23〜28(縮毛矯正剤の製造及び評価)
(1)第1剤の調製
表14に示す、50%チオグリコール酸アンモニウム以外の成分と適量の水を混合し、完全に溶解するまで撹拌した。50%チオグリコール酸アンモニウムと残りの水を加えて撹拌し、完全に溶解させ、第1剤を調製した。pHは9であった。
(2)第2剤の調製
乳酸、β−ナフタレンスルホン酸、ベンジルオキシエタノール、エタノール、セテアレス−13と適量の水を混合し、完全に溶解するまで撹拌した。次に48%水酸化ナトリウム水溶液を添加し攪拌混合した。さらに35%過酸化水素水と残りの水を加えて攪拌し、完全に溶解させ、第2剤を調製した。pHは3であった。
(3)縮毛矯正剤の評価
日本人成人女性でくせ毛がある人から提供された、長さ26cm、重さ10gの毛髪を検体とした。これを実施例1と同様のプレーンシャンプーで処理し、流水で洗浄した後風乾した。この毛髪検体2gを均一な厚みとなるように2cm幅に引きそろえた。毛髪の片端を2cm幅のプラスチック版に接着剤で固定したもの試験用毛束とした。
作成した毛束を実施例1と同様のプレーンシャンプーで処理し、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整えた。この毛束に、第1剤1.5gを塗布し、25℃で15分間静置し、温水で30秒間すすぎ、タオルで水分を拭き取った。その後、130℃に設定した、高温整髪用アイロンで処理した。次いで、第2剤を1.5g塗布し、25℃で5分静置した。処理した毛束を温水で30秒間すすいだ。その後、タオルで水分を取り、櫛で毛束を整え、更にドライヤーの温風で乾燥させ、仕上げに櫛で毛束を整え、評価用トレスを得た。
実施例1と同様に評価した結果を表14に示す。
表14より、実施例20の縮毛矯正剤は、処理乾燥後に良好な指通り性とハリコシ感、まとまり感を付与できたことが分かる。
【0144】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の毛髪処理剤組成物は、毛髪用染毛剤、毛髪用脱色剤、パーマネントウエーブ剤、ストレートパーマ剤、持続性毛髪セット剤、縮毛矯正剤等の分野で好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する毛髪処理剤組成物。
【請求項2】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)が、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0である、請求項1に記載の毛髪処理剤組成物。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50〜5000である。)
【化2】

(式中、Y1及びY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、更にp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。)
【化3】

(式中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
【請求項3】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)の含有量が0.001〜20質量%である、請求項1又は2に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項4】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)が、下記工程(a−1)〜(a−3)によって得られるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
工程(a−1):セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行う工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた粉砕機処理物に塩基を添加して粉砕機処理を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(a−3):工程(a−2)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【請求項5】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)が、下記工程(b−1)〜(b−4)によって得られるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
工程(b−1):セルロース含有原料を粉砕機処理して、結晶化度が10〜50%であるセルロースを含有するセルロース含有原料を得る工程
工程(b−2):工程(b−1)で得られたセルロース含有原料に対して、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対して20〜100質量%の水を添加して、アルカリセルロースを得る工程
工程(b−3):工程(b−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(b−4):工程(b−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【請求項6】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)が、下記工程(c−1)〜(c−4)によって得られるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
工程(c−1):セルロース含有原料及びセルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基化合物との混合物を、該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で粉砕機処理し、セルロースの平均粒径が10〜150μmであるセルロース・塩基混合粉砕物を得る工程
工程(c−2):工程(c−1)で得られたセルロース・塩基混合粉砕物に水を添加し、該セルロース・塩基混合粉砕物中の水分量を、工程(c−1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、アルカリセルロースを得る工程
工程(c−3):工程(c−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(c−4):工程(c−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【請求項7】
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、及び染毛用染料、酸化剤、アルカリ剤、及びケラチン還元剤から選ばれる一種以上の処理剤(B)を含有する毛髪処理剤組成物の製造方法であって、請求項4に記載の工程(a−1)〜(a−3)、請求項5に記載の工程(b−1)〜(b−4)、又は請求項6に記載の工程(c−1)〜(c−4)を有する、毛髪処理剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−149028(P2012−149028A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103315(P2011−103315)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】