説明

毛髪処理用組成物

【課題】 毛髪表面の感触を良好に仕上げることができ、刺激臭を低減でき、且つ有効成分を効率よく毛髪内に浸透することができる毛髪処理用組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の毛髪処理用組成物は、(a)高級アルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ノニオン性界面活性剤、(d)アルカリ剤、及び(e)水を構成成分として含み、且つ液晶構造を有する毛髪処理用組成物であって、前記カチオン性界面活性剤(b)が、炭素総数25以上である第四級アンモニウム塩であることを特徴とする。このような毛髪処理用組成物は、脱色剤組成物、染色剤組成物、パーマネントウェーブ用還元性組成物、及びストレートパーマ用還元性組成物等として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱色、染色、パーマネントウェーブ、ストレートパーマ等の毛髪処理に用いられる毛髪処理用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱色剤、染毛剤、パーマネントウェーブ用還元性組成物及びストレートパーマ用(縮毛矯正用を含む)還元性組成物中にはアルカリ剤が配合されている。このようなアルカリ剤としては、一般にアンモニアが用いられている。そのアンモニアの刺激臭を低減させるため、例えばアンモニアの代わりにアルカノールアミンを使用する方法が提案されている。しかし、この方法によっては、脱色や染色、パーマネントなどの本来目的とする効果を十分に得ることができないと言う欠点があった。
【0003】
一方、特開2003−40750号公報には、揮発性アルカリ剤としてアンモニアを含み、且つ高級アルコールと各種界面活性剤、水とで形成される液晶構造を一定の比率で含む脱色剤組成物が開示されており、前記液晶構造内に臭いの成分を組み込んで脱色剤組成物の刺激臭を低減することが記載されている。しかし、この脱色剤組成物で脱色された毛髪は、手で触れたときの毛髪表面の感触が悪く、使用感や仕上がりに劣るという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−40750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、毛髪表面の感触を良好に仕上げることができ、刺激臭を低減でき、且つ有効成分を効率よく毛髪内に浸透することができる毛髪処理用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、毛髪処理用組成物に、特定のカチオン性界面活性剤を配合することにより、刺激臭を著しく低減しうると同時に、毛髪表面の感触を良好に仕上げることができ、しかもアルカリ剤、染料、還元剤などの有効成分が毛髪内へ効率よく浸透して毛髪へ所望の処理を効率よく施すことができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)高級アルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ノニオン性界面活性剤、(d)アルカリ剤、及び(e)水を構成成分として含み、且つ液晶構造を有する毛髪処理用組成物であって、前記カチオン性界面活性剤(b)が、炭素総数25以上の第四級アンモニウム塩であることを特徴とする毛髪処理用組成物を提供する。前記カチオン性界面活性剤(b)として、好ましくはハロゲン化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジステアリルジメチルアンモニウム、及びハロゲン化ジココイルジメチルアンモニウム等が用いられる。
【0008】
本発明の毛髪処理用組成物は、例えば、脱色剤組成物、染色剤組成物、パーマネントウェーブ用還元性組成物、又はストレートパーマ用還元性組成物等が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、毛髪の感触を損なうことなく、刺激臭を著しく低減された毛髪処理用組成物を得ることができる。このような毛髪処理用組成物は、さらにアルカリ剤、染料、還元剤などの有効成分が毛髪内へ効率よく浸透することができるため、脱色剤組成物、染毛剤組成物、パーマネントウェーブ用還元性組成物、及びストレートパーマ用還元性組成物などとして広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の毛髪処理用組成物は、(a)高級アルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ノニオン性界面活性剤、(d)アルカリ剤、及び(e)水を構成成分として含有している。本発明の毛髪処理用組成物は、上記成分で構成され、且つ液晶構造を有しているため、刺激臭を効率よく低減することができる。
【0011】
本発明における「液晶構造を有する」とは、組成物全体に対する液晶構造の存在比率が5体積%以上であることを意味している。前記液晶構造の存在比率は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、特に40体積%以上である。図1は、本発明の毛髪処理用組成物の一例を示す顕微鏡写真であり、全体の約40体積%が液晶構造を形成している。本発明においては、毛髪処理用組成物が高い割合で液晶構造を有するため、臭気を効率よく低減する効果を奏する。一方、図2は、液晶構造が全体の約5体積%未満である状態を示しており、このような構造を示す組成物によっては十分な刺激臭の低減効果は得られにくい。本発明における液晶構造の評価(存在比率の算出)は、慣用の方法を用いることができ、例えば特開2003−40750号公報に記載の方法に従って行うことができる。
【0012】
液晶構造の形成は、上記(a)〜(e)の構成成分の種類や量を調整することにより制御することができ、特にカチオン性界面活性剤(b)の種類及び使用量は、液晶構造を高い比率で形成する点で重要である。
【0013】
高級アルコール(a)は、組成物中の水との混合により乳化物を構成して刺激臭を低減させる目的で添加される。本発明における高級アルコール(a)としては、例えば、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数10以上の飽和及び不飽和アルコール等が挙げられる。なかでも、刺激臭の低減効果が高い点で、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数16以上(例えば炭素数16〜30程度、好ましくは炭素数16〜22程度)の直鎖状飽和アルコール等が好ましく用いられる。
【0014】
高級アルコール(a)の使用量は、組成物全量に対して、例えば1〜20重量%、好ましくは5〜18重量%程度である。前記使用量が1重量%未満又は20重量%を越える場合は、組成物の乳化が不十分で安定性に劣る傾向にある。
【0015】
カチオン性界面活性剤(b)は、毛髪処理用組成物で処理された毛髪に対するごわつきやきしみを解消し、毛髪表面の感触を良好にする目的で添加される成分であって、炭素総数が25以上の第四級アンモニウム塩で構成される。ここで、炭素総数が25以上の第四級アンモニウム塩とは、分子内の一又は複数の炭化水素基を構成する炭素数の合計が25以上(炭素数25〜60程度)となる化合物を意味している。
【0016】
炭素総数が25以上の第四級アンモニウム塩の具体例としては、例えば、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタコサントリメチルアンモニウムなどの塩化アルキルトリメチルアンモニウム;臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化オクタコサントリメチルアンモニウムなどの臭化アルキルトリメチルアンモニウムなどのハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム;塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジミリスチルジメチルアンモニウム、塩化ラウリルミリスチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウムなどの塩化ジアルキルジメチルアンモニウム;臭化ジラウリルジメチルアンモニウム、臭化ジミリスチルジメチルアンモニウム、臭化ラウリルミリスチルジメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化ジココイルジメチルアンモニウム、臭化ジセチルジメチルアンモニウムなどの臭化ジアルキルジメチルアンモニウムなどのハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤(b)は単独で又は2種以上を組み合わせて利用できる。なかでも、毛髪の感触の向上効果に優れ、しかも液晶構造を効率よく形成できる点で、例えば炭素総数25〜50程度、特に好ましくは炭素総数25〜40程度の第四級アンモニウム塩が用いられる。好ましいカチオン性界面活性剤(b)の具体例としては、例えば、ハロゲン化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジステアリルジメチルアンモニウム、又はハロゲン化ジココイルジメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明においては、炭素総数が25以上である第四級アンモニウム塩以外の他のカチオン性界面活性剤を組み合わせて用いることもできる。他のカチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなどの炭素総数が25未満である第四級アンモニウム塩等が挙げられる。具体的には、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムと塩化セチルトリメチルアンモニウム;塩化ジステアリルジメチルアンモニウムと塩化セチルトリメチルアンモニウムなどの炭素総数が25以上である第四級アンモニウム塩と炭素総数が25未満である第四級アンモニウム塩との組み合わせにより使用すると、毛髪をより柔軟に仕上げることができるという利点があり好ましい。
【0018】
カチオン性界面活性剤(b)の使用量は、組成物全体に対して、例えば0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%程度である。特に本発明の毛髪処理用組成物の構成によれば、カチオン性界面活性剤(b)を1.5重量%を越える量用いた場合にも、液晶構造を形成できるため、刺激臭を著しく低減する効果を得るとともに、毛髪の感触を良好にすることができる点で有利である。カチオン性界面活性剤(b)の使用量が多すぎたり少なすぎる場合には、組成物の乳化が不十分で安定性に劣る傾向にある。
【0019】
ノニオン性界面活性剤(c)は、液晶の形成に重要な成分であり、毛髪処理用組成物の刺激臭を低減する目的で添加される成分であって、例えば、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と称する場合がある)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEラウリルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等のエーテル型ノニオン性界面活性剤;モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリルなどのエステル型ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤(c)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでもエーテル型のノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0020】
これらの中でも、液晶構造を形成しやすく、毛髪処理用組成物の刺激臭の低減効果が高い点で、界面活性剤の親水性と疎水性との比率を表すHLBが9〜20程度のノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。HLBが9〜20のノニオン性界面活性剤には、例えば、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEラウリルエーテル等のエーテル型ノニオン性界面活性剤;モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等のエステル型ノニオン性界面活性剤が含まれる。
【0021】
ノニオン性界面活性剤(c)の使用量は、組成物全量に対して、例えば0.5〜12重量%未満、好ましくは1〜8重量%程度である。ノニオン性界面活性剤(c)の使用量が上記範囲を超えると液晶構造が形成されにくく、刺激臭の低減効果が不十分となりやすい。
【0022】
アルカリ剤(d)は、有効成分を含む薬剤の浸透と、酸化剤の作用の効果を高める為に添加される。アルカリ剤としては、常温で揮発性であってもよく、不揮発性であってもよい。不揮発性アルカリ剤としては、特に限定されず公知の化合物を利用でき、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。不揮発性アルカリ剤は、刺激臭を一層低減することが可能であるが、毛髪処理用組成物を構成する有効成分の浸透性がより優れる点で、好ましくは揮発性アルカリ剤が用いられる。揮発性アルカリ剤として、例えばアンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等を利用できる。本発明の毛髪処理用組成物によれば、アンモニア等の揮発性アルカリ剤を用いた場合にも、刺激臭を著しく低減することができるため、有効成分を効率よく浸透でき、染色性やパーマネント効率などに高い効果を奏する薬剤を提供することができる。
【0023】
アルカリ剤(d)の使用量は、組成物全量に対して、例えば0.14〜3.36重量%、好ましくは0.25〜2.80重量%、より好ましくは0.30〜2.24重量%程度である。また、アルカリ剤としてアンモニアを用いる場合には、アンモニアの使用量は、濃度28重量%アンモニア水換算で、例えば0.2〜12重量%、好ましくは0.5〜10重量%程度である。アルカリ剤(d)の使用量が少なすぎると、脱色、染色、パーマネントなど毛髪処理用組成物に期待される本来の毛髪処理効果を十分に発揮することができず、使用量が多すぎると、組成物の刺激臭を低減しにくいため好ましくない。なお、本発明の毛髪処理用組成物によれば、例えば濃度28重量%アンモニア水換算で3.6〜8重量%程度の量を使用しても刺激臭が抑制されるため、脱色、染色、パーマネントなどの組成物本来の効果をより効率良く発揮することができ好ましい。
【0024】
水(e)は、高級アルコール(a)と安定に乳化し、液晶構造を形成して刺激臭を低減させる目的で用いられる。水の使用量は、上記目的を満たす範囲であれば特に限定されないが、組成物全量に対して、例えば50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%程度である。前記使用量が少なすぎると液晶構造を形成しにくく、多すぎると組成物の乳化安定性を損ないやすく好ましくない。
【0025】
本発明の毛髪処理用組成物は、染色剤組成物やパーマネントウェーブ用還元性組成物等として用いる場合、毛髪の感触をより向上させる目的で、上記以外に、カチオン性高分子、及びシリコーン類などを構成成分として添加される場合がある。前記カチオン性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガムなどのポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含む化合物;及びジアリル4級アンモニウム塩の単独重合体又は共重合体などのジアリル4級アンモニウム塩を構成単位に含む化合物;4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。 前記シリコーン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0026】
本発明の毛髪処理用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分を含んでいても良い。他の成分としては、当該組成物の用途、目的、種類等に応じて適宜選択でき、例えば、染料、顔料、油性成分、糖類、界面活性剤、多価アルコール、低級アルコール、シリコーン類、酸化防止剤、香料、防腐・殺菌剤、増粘剤、植物抽出液、pH調整剤、紫外線吸収剤、アミノ酸等の添加剤などを配合できる。
【0027】
本発明の毛髪処理用組成物の粘度は、構成成分の混合性、取扱性、仕上がり性等を考慮して適宜設定され、例えば5000〜50000mPa・s程度である。粘度はB型粘度計などの慣用の機器を用いて測定できる。
【0028】
本発明の毛髪処理用組成物は、毛髪に施される処理の種類に応じて、他の組成物と混合して利用することもできる。例えば、染毛には、染料を含む本発明の毛髪処理用組成物を第一剤として用い、酸化剤を含む第二剤と混合した混合液が用いられる。このように、他の成分と混合して用いられる場合、本発明の毛髪処理用組成物を構成する各成分の使用量の基準となる「組成物全量」とは、混合する前の組成物(前記「第一剤」)全量を意味している。
【0029】
本発明の毛髪処理用組成物は、上記構成を有するため、毛髪に所望の処理を施すために用いられる各種組成物として利用することができる。本発明の毛髪処理用組成物は、例えば、染毛剤組成物、脱色剤組成物、パーマネントウェーブ用還元性組成物、ストレートパーマ(縮毛矯正)用還元性組成物等として好ましく利用できる。
【0030】
脱色剤組成物は、毛髪中のメラニンを酸化分解することにより毛髪を脱色するものであって、アルカリ剤を含有する第一剤と、酸化剤を含有する第二剤とからなり、さらに第三剤として過硫酸塩等の酸化剤を用いる場合がある。本発明の毛髪処理用組成物は、脱色剤を構成するアルカリ剤を含有する組成物、例えば前記第一剤として利用することができる。
【0031】
染毛剤組成物は、染料を毛髪中に浸透させ、酸化重合を行わせることによって発色させ、毛髪を染色するものであって、アルカリ剤、染料を含有する第一剤と、酸化剤を含有する第二剤とからなり、さらに第三剤として過硫酸塩等の酸化剤を用いる場合がある。アルカリ剤は、染毛剤、脱色剤ともに薬液の浸透性向上と、第二剤に含まれる酸化剤の作用の効果を高める為に添加されている。
【0032】
例えば、酸化染毛剤の第一剤には、上記したアルカリ剤の他、酸化染料が含有される。用いられる酸化染料は、一般的な酸化染毛剤で用いられるものであれば特に限定されず、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類、及びそれらの塩類等が挙げられる。具体的には、p−フェニレンジアミン、トルエン −2,5−ジアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、2,6−ジアミノピリジン等およびそれらの塩類などを例示することができる。また、レゾルシン、m−アミノフェノール、5−アミノ−o−クレゾール、カテコール等およびこれらの塩等が例示できる。
【0033】
本発明の毛髪処理用組成物を染毛剤組成物として用いた場合には、アルカリ剤及び染料等の薬剤が毛髪に効率よく浸透するため、従来の染毛剤と比較して極めて優れた染色性を発揮することができる。
【0034】
パーマネントウェーブやストレートパーマ(縮毛矯正)に用いる薬剤は、一般に、還元剤を含有する第一剤と、酸化剤を含有する第二剤からなる。本発明の毛髪処理用組成物は、還元剤と共にアルカリ剤を含有する第一剤として利用することができる。前記還元剤としては、一般的なパーマネントウェーブ剤やストレートパーマ剤で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、チオグリコール酸、L−システイン、DL−システイン、N−アセチルシステイン、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオリンゴ酸、チオ乳酸、亜硫酸、亜硫酸水素、チオ硫酸、チオグリセロール、システアミン及びそれらの塩類等が挙げられる。
【0035】
本発明の毛髪処理用組成物をパーマネントウェーブ用還元性組成物として用いた場合には、特に還元剤が毛髪に効率よく浸透するため、極めて優れたウェーブ効率を発揮することができる。具体的には、ウェーブ効率が、例えば17%以上(17〜80%程度)、好ましくは20〜70%程度である。なお、本発明におけるウェーブ効率は、「サイエンス オブ ウェーブ(Science of Wave)改訂版 34頁、2002年4月10日発行、日本パーマネントウェーブ液工業組合」に記載される方法で測定した値を意味している。
【0036】
本発明の毛髪処理用組成物によれば、液晶構造を形成して刺激臭を著しく低減することができるため、取扱性が極めて向上される。特に本発明の毛髪処理用組成物は、優れた乳化安定性により刺激臭を抑制するとともに、毛髪表面の感触を良好に仕上げることができる。しかも、有効成分が毛髪内部に速やかに且つ十分に浸透するため、毛髪に所望の処理を効果的に施すことができ、例えば、染毛剤においては染色性の向上、パーマネントウェーブにおいてはウェーブ効率の向上などの効果が得られ、毛髪処理用組成物として極めて有用である。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
実施例A1〜A8及び比較例A1〜A5
表1に示される成分からなる第一剤と、表2に示される成分からなる第二剤を、容量比1:1で混合することにより染毛剤組成物を調製した。得られた染毛剤組成物を、ヤク毛と人毛にそれぞれ塗布し、室温で30分間放置した後、毛束を5重量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄することにより、染色された毛束を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
実施例B及び比較例B
同一人から採取した長さ20cmの健康な毛髪を二束用意し、それぞれ5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後、充分にすすいで自然乾燥する。乾燥後、表3の実施例B及び比較例Bに示される成分からなるパーマネントウェーブ用組成物第一剤を各毛束に塗布して10分間放置した後、水洗した。水洗した毛束をタオルで水気を取り、その毛束の一端(束ねた側)をスパイラルロッドの器具の一端に輪ゴムを用いて固定し、毛束の下端に6gの重しを吊るしロッドを回転させながら毛束を巻きつけた。この毛束をセットした器具をシャーレに入れ、表4に示す成分からなる第二剤を毛束が充分に浸るまで注ぎ、35℃の恒温水浴中で5分間放置した後、再び器具を取り出し、第二剤を水洗することによりパーマネントウェーブ処理を施した。
得られた毛束を適当な場所に吊るし、以下の方法によりウェーブ効率を測定し、評価した。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
(評価方法)
液晶構造の判定
実施例及び比較例で得た染毛剤組成物を、OLYMPUS社製の偏光顕微鏡(商品名「高級システム偏光顕微鏡BXP」、総合倍率×400(接眼レンズ:×10、対物レンズ:×40))を用いて撮影した顕微鏡写真を目視観察し、以下の基準で評価を行った。なお、各評価に対応する顕微鏡写真の一例を図1及び図2に示す。
液晶の評価については
○ 全体の20体積%を越える比率で液晶構造が形成されていた
△ 液晶構造の比率が5体積%以上20体積%以下であった
× 液晶構造の比率が5体積%未満であった
【0045】
刺激臭
実施例及び比較例で得た染毛剤組成物及びパーマネントウェーブ用還元性組成物(第一剤)の臭気について、パネラー5名が官能試験を行い、以下の基準で評価した。
○ 刺激臭がわずかに感じられた
× 刺激臭が強く感じられた
【0046】
毛髪表面の感触
実施例及び比較例で得た染色後の人毛の毛束を手で触れたときの感触を、以下の基準で評価した。
○ 毛束表面がなめらかで極めて良好な感触が得られた
△ ほぼなめらかであったが、毛束の感触にやや劣っていた
× きしみやごわつきが感じられ、毛束の感触に劣っていた
【0047】
染色性
実施例及び比較例で得た染色後のヤク毛の毛束を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○ 濃く染色されていた
× 薄く染色されていた
【0048】
ウェーブ効率
実施例B及び比較例Bで得たパーマネントウェーブ処理後の毛束を、損傷や負荷がかからないよう注意しつつ器具から静かにはずし、タオルドライ後適当な場所に吊し、コームで毛流れを整えた後、ウェーブの山の距離を測定し、「サイエンス オブ ウェーブ(Science of Wave)改訂版 34頁、2002年4月10日発行、日本パーマネントウェーブ液工業組合」に記載の方法に基づき、下記式を用いてウェーブ効率を算出した。
,l:一番目の山と最後の山を除いた、左右の波の山の距離
,n:左右の波の数

L(平均波長)=(l+l)/(n+n

ウェーブ効率(%)=(ロッドの波長)/L × 100
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の毛髪処理用組成物の一例を示す顕微鏡写真である。
【図2】液晶構造が十分に形成されていない組成物の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高級アルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ノニオン性界面活性剤、(d)アルカリ剤、及び(e)水を構成成分として含み、且つ液晶構造を有する毛髪処理用組成物であって、前記カチオン性界面活性剤(b)が、炭素総数25以上である第四級アンモニウム塩であることを特徴とする毛髪処理用組成物。
【請求項2】
カチオン性界面活性剤(b)が、ハロゲン化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジステアリルジメチルアンモニウム、及びハロゲン化ジココイルジメチルアンモニウムから選択される少なくとも一つである請求項1記載の毛髪処理用組成物。
【請求項3】
脱色剤組成物、染色剤組成物、パーマネントウェーブ用還元性組成物、又はストレートパーマ用還元性組成物である請求項1又は2記載の毛髪処理用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−184447(P2008−184447A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20298(P2007−20298)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(592028514)コタ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】