説明

毛髪処理用組成物

【課題】ヘアダイ及びパーマネント・ウェーブ用剤、縮毛矯正剤等、毛髪を処理する毛髪処理用組成物の提供。
【解決手段】液晶構造を形成する特定のリン酸エステルと脂肪族アルコール及びノニオン界面活性剤及び/又はカチオン界面活性剤を安定に含有させることからなり、安定に含有させることで、毛髪処理用組成物の刺激臭を低減すると共に毛髪が受ける損傷を低減する等の特性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理用組成物に関し、具体的にはヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤、縮毛矯正剤として優れた特性を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアダイ・脱色剤組成物、パーマネントウェーブ用剤及び縮毛矯正剤中にはアルカリ剤が配合されている。アルカリ剤としては主としてアンモニアを使用しているが、アンモニアによる刺激臭の問題から例えば特許文献1 や特許文献2ではアンモニアの代わりにアルカノールアミンや無機アルカリを使用してきた。しかし、アルカノールアミン単独では脱色、縮毛矯正等の十分な効果が得られず、その効果を補うためにアンモニアを併用すると刺激臭の低減が十分でないと言う欠点があった。特許文献3や特許文献4ではラメラ液晶構造の特性を活かして刺激臭と毛髪の損傷を低減して、染色性を向上させる効果を応用してきたが、業界において刺激臭と毛髪が受ける損傷をさらに低減できるヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物が求められているが、現状の技術では不可能であった。
【特許文献1】特開昭6 0 − 1 5 5 1 0 8 号
【特許文献2】特開平1 − 2 1 3 2 2 0 号
【特許文献3】フレグランスジャーナルVol32,No.10(P31−36)
【特許文献4】特開2004−189680号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の問題点について鋭意検討した結果、液晶構造を形成する特定のリン酸エステルとノニオン界面活性剤およびまたはカチオン界面活性剤をきわめて安定に併用できることを見出し、それらを応用したヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物がきわめて有効にアンモニア臭などの刺激臭を低減させることや毛髪が受ける損傷を低減できることを見いだし、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は液晶構造を形成する特定のリン酸エステルとノニオン界面活性剤およびまたはカチオン界面活性剤を併用し、安定に含有させることからなる。
【発明の効果】
【0005】
本発明はアンモニアおよびアンモニウム塩を使用する毛髪処理用組成物の刺激臭をきわめて有効に低減すると共に毛髪が受ける損傷を低減できるなどの特性を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に配合される特定のリン酸エステルは、下記一般式(1)又は(2)で示されるリン酸エステルである。そして、式中の置換基R1とR2は炭素数8〜24好ましくは8〜18の炭化水素基であり、特に炭素数8〜18の直鎖状または不飽和のアルキル基であることが好ましい。具体的に例示すると、リン酸ジラウリル、リン酸ジミリスチル、リン酸ジセチル、リン酸ジステアリル、リン酸ジオレイルなどが挙げられ、リン酸ジセチルおよびリン酸ジオレイルが好適である。本発明の毛髪処理用組成物に於ける、上記リン酸エステルの配合量は好ましくは0.1〜30.0重量%。さらに好ましくは0.3〜15.0重量%である。
【0007】
一般式(2)で示されるリン酸エステルの式中R3で表される置換基として炭素数8〜24、好ましくは8〜18の炭化水素基であり、特に炭素数8〜18の直鎖状または不飽和のアルキル基であることが好ましい。nは0〜20の中から選ばれる整数であるが、n=5およびn=10およびn=20の化合物が好ましい。具体的に例示すると、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸などが挙げられ、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸およびポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸が好適である。本発明の毛髪処理用組成物に於ける、上記リン酸エステルの配合量は好ましくは0.1〜30.0重量%。さらに好ましくは0.3〜15.0重量%である。
一般式(1)
【化1】





一般式(2)
【化2】






【0008】
脂肪族アルコールを具体的に例示すると、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール等が挙げられ、直鎖状高級飽和アルコールであるミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールが好適である。これらの中でも、刺激臭の低減効果が高いことから、炭素数16〜22の脂肪族アルコールが好ましい。これらの脂肪族アルコールは単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。脂肪族アルコールの配合量は好ましくは0.4〜20.0重量%、さらに好ましくは8.0〜16.0重量%である。
【0009】
界面活性剤を構成するノニオン界面活性剤は、毛髪処理用組成物の刺激臭を低減するために配合される。ノニオン界面活性剤を具体的に例示すると、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのエーテル型ノニオン界面活性剤とモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレングリセリン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリルなどのエステル型ノニオン界面活性剤等が挙げられ、これらの中でも、毛髪処理用組成物の刺激臭の低減効果が高いことからエーテル型ノニオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルが好適である。本発明では界面活性剤の親水性と疎水性との比率を表すHLB値4〜12のノニオン界面活性剤とHLB値12〜20のノニオン界面活性剤を2種組み合わせて配合する。HLB値4〜12のノニオン界面活性剤の配合量は好ましくは1.0〜10重量%、さらに好ましくは1.5〜5.0重量%である。HLB値12〜20のノニオン界面活性剤の配合量は好ましくは1.0〜10重量%、さらに好ましくは1.5〜5.0重量%である。
【0010】
カチオン界面活性剤は、毛髪の感触を良好にするために配合する。カチオン界面活性剤を具体的に例示すると、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤の配合量は好ましくは4.0重量%以下、さらに好ましくは3.0重量%以下である。4重量%以上配合すると液晶構造を形成しにくくなり、毛髪処理用組成物の刺激臭を低減できなくなる。
【0011】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記必須成分の他に、天然油脂、鉱物油、合成エステル、多価アルコール、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料等を配合することが可能である。
【実施例1】
【0012】
次に本発明を実施例及び比較例によって更に具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されない。なお、以下に記載する数値はいずれも重量%である。
【実施例2】
【0013】
表−1の処方で縮毛矯正剤第一剤を調整して安定性・液晶構造の確認、臭いの評価および毛髪の損傷の試験を行った。評価した結果は表−2にまとめた。調整した縮毛矯正剤は20日後、結晶の析出や分離もなく安定であった。また、チオグリコール酸アンモニウムから来るパーマ臭やアンモニアから来る刺激臭等の不快な臭いを低臭化する効果が高いことがわかった。これらの結果から、リン酸エステルとノニオン界面活性剤およびまたはカチオン界面活性剤を安定に配合する事によって縮毛矯正剤やパーマネントウェーブ用剤において毛髪の損傷が少なく、不快な臭い(パーマ臭や刺激臭)を低減する効果に優れていることがわかる。
【0014】
【表−1】

【0015】
【表−2】

評価項目
【0016】
安定性の評価 :
30日後の外観(40℃)を目視で評価
【0017】
液晶構造の評価:
試料を偏光顕微鏡(OLYMPUS社製偏光顕微鏡を使用。倍率:×400(接眼レンズ:×10,対物レンズ:×40))により写真撮影する。この写真をグレー画像化した後、しきい値130で2値化し、白の割合について評価。
評価 評価指標
◎ 白の割合が15%以上。
○ 白の割合が5%以上15%未満。
△ 白の割合が1%以上5%未満。
× 白の割合が1%未満。
【0018】
臭いの評価 :
縮毛矯正剤を調整後、ヘッドスペースが出来ないようにプラスチック容器に充填する。充填して1日経過後、キャップをあけて臭いの有無を確認する。
評価 評価指標
◎ 全く臭いを感じない。
○ 若干臭いを感じる。
△ 少し臭いを感じる。
× 強い臭いを感じる。
【0019】
毛髪の損傷評価 :
長さ15cm、5gの人毛毛束を用意して、調整した縮毛矯正剤を20g塗布し、なじませて温度30℃で15分間放置する。15分後、ぬるま湯ですすいだ後タオルドライを行い、ガラス板に毛髪をまっすぐになるように一本ずつ並べてテープ等で張り付けた後、臭素酸ナトリウム6%水溶液に浸積させて温度30℃で15分間静置する。15分後毛髪を取り出してぬるま湯ですすいだ後タオルドライを行い、温度20℃湿度65%の環境に48時間静置・乾燥する。48時間後に引っ張り試験器(INSTRON 5569型)で毛髪が切れる最大瞬間応力を測定して毛髪の損傷評価とした
評価 測定値
◎ 応力1.4N以上
○ 応力1.2〜1.4N
△ 応力1.0〜1.2N
× 応力1.0N以下
【実施例3】
【0020】
表−3で酸化染毛剤第一剤を調整し、第一剤の臭いの評価や毛髪に施術後の染色性、均染性、毛髪の損傷の試験を行った。10人のパネラーによる臭いの評価、毛髪の引っ張り強度および40日での安定性試験を表−4にまとめた。調整した酸化染毛剤は20日後、結晶の析出や分離もなく安定であった。第一剤と第二剤(過酸化水素6%水溶液)を重量比1:1で混合したときに刺激臭がさらに少なくなる事を確認。染色性も向上した。これらの結果から、リン酸エステルとノニオン界面活性剤およびまたはカチオン界面活性剤を安定に配合する事によって刺激臭をさらに低減し、染色性が高く毛髪の損傷が少ない酸化染毛剤が得られた。
【0021】
【表−3】

【0022】
【表−4】

【0023】
評価項目
【0024】
安定性の評価 :
温度40℃の恒温機に第一剤を静置・保存する。保存30日後の外観性状を目視で評価した。
【0025】
液晶構造の評価:
第一剤を偏光顕微鏡(OLYMPUS社製偏光顕微鏡を使用。倍率:×400(接眼レンズ:×10,対物レンズ:×40))により写真撮影する。この写真をグレー画像化した後、しきい値130で2値化し、白の割合について評価。
評価 評価指標
◎ 白の割合が15%以上。
○ 白の割合が5%以上15%未満。
△ 白の割合が1%以上5%未満。
× 白の割合が1%未満。
【0026】
臭いの評価 :
第一剤および過酸化水素6%水溶液を重量比1:1で混合したときに発生する刺激臭について以下の基準で評価した。
評価 評価指標
◎ 全く刺激臭を感じない。
○ 若干刺激臭を感じる。
△ 少し刺激臭を感じる。
× 強い刺激臭を感じる。
【0027】
染色性の評価 :
第一剤及び過酸化水素6%水溶液を重量比で1:1に混合し、得られた混合物10gをビューラックス製人毛白毛束(BM−W)長さ10cm、重さ1gに塗布して温度30℃で20分間放置した後、ぬるま湯で十分すすぎ、シャンプー後ドライヤーで乾燥する。染色性を目視で以下の基準で評価した。
評価 評価基準
◎ オレンジ色に濃く染まっている。
○ オレンジ色に染まっている。
△ あまり染まっていない。
× ほとんど染まっていない。
【0028】
均染性の評価 :
第一剤及び過酸化水素6%水溶液を重量比で1:1に混合し、得られた混合物10gをビューラックス製人毛白毛束(BM−W)長さ10cm、重さ1gに塗布して温度30℃で20分間放置した後、ぬるま湯で十分すすぎ、シャンプー後ドライヤーで乾燥する。目視で以下の基準で評価した。
評価 評価基準
◎ ムラがなく均一に染まっている。
○ ほぼムラがなく均一に染まっている。
△ ややムラがある。
× ムラがある。
【0029】
毛髪の損傷評価 :
第一剤及び過酸化水素6%水溶液を重量比で1:1に混合し、得られた混合物10gをビューラックス製人毛黒毛束(BS−B)長さ10cm、重さ1gに塗布して温度30℃で20分間放置した後、ぬるま湯で十分すすぎ、シャンプー後ドライヤーで乾燥する。温度20℃、湿度65%の環境に48時間静置した後、選別(平均直径0.07mm)した毛髪を引っ張り試験器(INSTRON 5569型)で毛髪が切れる最大瞬間応力を測定して毛髪の損傷評価とした
評価 測定値
◎ 応力1.4N以上
○ 応力1.2〜1.4N
△ 応力1.0〜1.2N
× 応力1.0N以下

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)及び一般式(2)で示されるリン酸エステルと脂肪族アルコールおよびノニオン界面活性剤およびまたはカチオン界面活性剤を含有することを特徴とするヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物。
一般式(1)
【化1】





一般式(2)
【化2】




【請求項2】
一般式(1)で示されるリン酸エステルの式中のR1、R2で表される置換基として炭素数8〜18の直鎖状または不飽和のアルキル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載したヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物。
【請求項3】
一般式(2)で示されるリン酸エステルの式中R3で表される置換基として炭素数8〜18の直鎖状または不飽和のアルキル基であり、nが0〜20以下の整数である請求項1、2に記載したヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物。
【請求項4】
脂肪族アルコールが炭素数8〜22の直鎖状アルキル基からなる脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1、2、3記載のヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物。
【請求項5】
ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルからなることを特徴とする請求項1、2、3、4記載のヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物。
【請求項6】
カチオン界面活性剤が塩化アルキルトリメチルアンモニウムおよびまたは臭化アルキルトリメチルアンモニウムからなることを特徴とする請求項1、2、3、4記載のヘアダイおよびパーマネント・ウェーブ用剤または縮毛処理に適する組成物。

【公開番号】特開2008−290971(P2008−290971A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138278(P2007−138278)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000104995)クローダジャパン株式会社 (35)
【Fターム(参考)】