説明

毛髪化粧料組成物

【課題】炭酸系のアンモニウム塩を使用する毛髪化粧料組成物において、保存安定性を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5である第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤とから構成される。好ましくは、第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウムの含有量は、2.5〜16質量%であり、(B)リン酸塩の含有量は、リン酸塩無水物に換算した場合0.2〜2.5質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸系のアンモニウム塩を含有し、染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物に関し、さらに詳しくは、炭酸系のアンモニウム塩の保存安定性を向上させた毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する毛髪化粧料組成物が知られている。そのような毛髪化粧料組成物としては、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される染毛剤及び毛髪脱色剤が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染色性を向上させる。従来より、染毛剤及び毛髪脱色剤に用いられるアルカリ剤としては、アンモニア及びアルカノールアミンが知られている。しかしながら、アンモニアは配合量を多くすると刺激臭を伴うという問題があった。また、アルカノールアミンは配合量を多くすると洗髪後の残留による毛髪の感触の低下及び頭皮に刺激を与えるおそれがあった。
【0003】
そこで従来、特許文献1〜5に開示される毛髪化粧料組成物が知られている。例えば、特許文献1〜3は、アンモニア又はアルカノールアミンと炭酸系のアンモニウム塩を併用することにより、アンモニア又はアルカノールアミンの配合量を従来よりも低下させるとともに染毛力の向上を図っている。また、特許文献4,5に開示されるように、炭酸アンモニウムの配合量を多くすることにより、アンモニア又はアルカノールアミンを併用しない染毛剤及び毛髪脱色剤が知られている。
【特許文献1】特開2008−127343号公報
【特許文献2】特開2004−262885号公報
【特許文献3】特開2001−328926号公報
【特許文献4】特表2006−526655号公報
【特許文献5】特表2008−521833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1〜3に開示される毛髪化粧料組成物は、依然としてアンモニア又はアルカノールアミンを使用する構成であるため、アンモニアによる刺激臭又はアルカノールアミンの残留による毛髪の感触の低下等の問題が生じるおそれがあった。また、特許文献4,5に開示される染毛剤及び毛髪脱色剤は、炭酸アンモニウムの溶解度が低いという問題があった。特に、複数の薬剤を混合する形態の毛髪化粧料組成物に適用した場合、炭酸アンモニウムを含有する薬液において、炭酸アンモニウム濃度が高いと保存時に薬液が激しく分離する場合があるという問題があった。さらに、激しく分離した薬液を再び溶解状態にすることは難しく、保存安定性が悪いという問題があった。特に、エアゾール式のように加圧して保存する剤系のものはより分離が生じやすく、また発泡させる剤系のものは振ると泡立つため激しく振ることができなかった。そのため、炭酸系のアンモニウム塩を含有する毛髪化粧料組成物において保存安定性を向上させることが求められていた。
【0005】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、炭酸系のアンモニウム塩を含有する薬剤において、リン酸塩を併用させることにより上記問題が解決されることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的とするところは、炭酸系のアンモニウム塩を使用する毛髪化粧料組成物において、保存安定性を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の毛髪化粧料組成物は、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5である第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤とから構成され、染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物において、前記第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量は、2.5〜16質量%であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物において、前記第1剤中における(B)リン酸塩の含有量は、リン酸塩無水物に換算した場合0.2〜2.5質量%であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物において、前記第1剤中における(B)リン酸塩のリン酸塩無水物に換算した場合の含有量に対する(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量の質量比が1〜7.5であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭酸系のアンモニウム塩を使用する毛髪化粧料組成物において、保存安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を毛髪脱色剤に具体化した第1実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る毛髪脱色剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の毛髪化粧料である。
【0012】
<第1剤>
第1剤は、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5に調整される。
【0013】
(A)炭酸系のアンモニウム塩は、毛髪脱色剤処理後の毛髪の明度を向上させるために配合される。(A)炭酸系のアンモニウム塩としては、例えば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びカルバミン酸アンモニウムが挙げられる。これらの中で、保存安定性及び脱色処理後の毛髪の明度向上の観点から、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムが好ましく、さらに炭酸アンモニウムがより好ましい。
【0014】
第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量は、好ましくは2.5〜16質量%、より好ましくは5〜10質量%である。また、第1剤と第2剤が混合された混合物中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量は、好ましくは0.63〜8質量%、より好ましくは2.5〜5質量%である。第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量が2.5質量%未満では、脱色処理後の毛髪の明度を十分に向上できない場合がある。この(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量が16質量%を超えると、炭酸系のアンモニウム塩が十分に溶解しないため薬液の分離により第1剤の保存安定性が低下する場合がある。
【0015】
(B)リン酸塩は、(A)炭酸系のアンモニウム塩の溶解性を高め、第1剤の保存安定性の向上及び脱色処理後の毛髪の明度の向上のために配合される。リン酸塩としては、例えばリン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、及びリン酸水素アンモニウムナトリウムが挙げられる。これらの中で、炭酸系のアンモニウム塩の保存安定性及び脱色処理後の毛髪の明度向上の観点から、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムが好ましく、さらにリン酸三ナトリウムがより好ましい。
【0016】
第1剤中における(B)リン酸塩の含有量は、リン酸塩無水物に換算した場合、好ましくは0.2〜2.5質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。また、第1剤と第2剤が混合された混合物中における(B)リン酸塩の含有量は、リン酸塩無水物に換算した場合、好ましくは0.05〜1.25質量%、より好ましくは0.25〜1.25質量%である。第1剤中における(B)リン酸塩の含有量が0.2質量%未満では、(A)炭酸系のアンモニウム塩の溶解性を高めることにより第1剤の保存安定性を向上できない場合がある。この(B)リン酸塩の含有量が2.5質量%を超えると、(B)リン酸塩が十分に溶解しないため、第1剤の保存安定性を向上できない場合がある。
【0017】
第1剤中における(B)リン酸塩のリン酸塩無水物に換算した場合の含有量に対する(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量の質量比(A/B)は、好ましくは1〜7.5、より好ましくは4〜7である。この質量比が1未満であると第1剤の保存安定性を向上できない場合がある。一方、この質量比が7.5を超えると第1剤の保存安定性を向上できない場合があり、それに伴い脱色処理後の毛髪の明度が低下するおそれがある。
【0018】
第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量と(B)リン酸塩のリン酸塩無水物に換算した場合の含有量の合計は、好ましくは2〜20質量%である。この含有量の合計が2質量%未満であると脱色処理後の毛髪の明度を向上できない場合がある。一方、この含有量の合計が20質量%を超えると(A)炭酸系のアンモニウム塩と(B)リン酸塩が十分に溶解しないため、第1剤の保存安定性を向上できない場合がある。
【0019】
第1剤のpHは、8.5〜9.5の範囲、好ましくは8.8〜9.5の範囲に調整される。第1剤のpHが8.5未満では、第1剤が第2剤と混合されたときに、第2剤に含有される酸化剤として例えば過酸化水素の作用が十分に促進されない場合がある。また、第1剤の保存安定性が低下する。第1剤のpHが9.5を超えると、第1剤の保存安定性が低下するとともに、脱色処理後の毛髪の明度が低下する場合がある。第1剤のpHは、(A)炭酸系のアンモニウム塩、(B)リン酸塩、及び後述するpH調整剤の配合量を変えることにより適宜調整される。
【0020】
第1剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば水、水溶性高分子化合物、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤を含有してもよい。
【0021】
水は、各成分の可溶化剤として作用する。水溶性高分子化合物としては、アニオン性高分子化合物、カチオン性高分子化合物、非イオン性高分子化合物、及び両性の天然又は合成高分子化合物が挙げられる。カチオン性高分子化合物としては、例えばポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液が挙げられる。非イオン性の合成高分子化合物として、例えばポリエチレングリコールが挙げられる。
【0022】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、第1剤は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0023】
油脂としては、例えばラノリン、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0024】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0025】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、及び2−エチルヘキサン酸セチルが挙げられる。
【0026】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650〜10,000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらの油性成分の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0027】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。
【0028】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として毛髪脱色剤を乳化又は可溶化し、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0029】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0030】
カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、及びメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、及びラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が挙げられる。
【0032】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、及びエステル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、及びPOEオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0033】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、及びモノミリスチン酸デカグリセリルが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0034】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えば乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、及びアルギニンが挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸及び亜硫酸塩が挙げられる。キレート化剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類が挙げられる。
【0035】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。
【0036】
<第2剤>
第2剤は、酸化剤を含有する。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色する。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは0.1〜15.0質量%であり、より好ましくは2.0〜9.0質量%であり、最も好ましくは3.0〜6.0質量%である。酸化剤の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合がある。酸化剤の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等の不具合が発生するおそれがある。
【0037】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸及びその塩を含有する。1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸塩としては、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸四ナトリウム、及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、毛髪脱色剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される、(A)炭酸系のアンモニウム塩以外の成分を適宜含有してもよい。
【0038】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。毛髪脱色剤の使用時には、第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。次いで、必要量の混合物がコーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0039】
本実施形態に係る毛髪脱色剤は以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る毛髪脱色剤は、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5である第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤とから構成される。したがって、炭酸系のアンモニウム塩を含有する第1剤の保存安定性を向上させることができる。また、脱色処理後の毛髪の明度を向上させることができる。
【0040】
(2)本実施形態に係る毛髪脱色剤は、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有する第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤とから構成される。したがって、アンモニアによる刺激臭又はアルカノールアミンの残留による毛髪の感触の低下及び頭皮に対する刺激を抑制することができる。
【0041】
(3)好ましくは、第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量は、2.5〜16質量%である。この場合、脱色処理後の毛髪の明度をより向上させることができるとともに、薬液の分離による第1剤の保存安定性の低下を抑制することができる。
【0042】
(4)好ましくは、第1剤中における(B)リン酸塩の含有量は、リン酸塩無水物に換算した場合0.2〜2.5質量%である。この場合、(A)炭酸系のアンモニウム塩の第1剤中における溶解性をより向上させることができ、保存安定性を向上させることができる。
【0043】
(5)好ましくは、第1剤中における(B)リン酸塩のリン酸塩無水物に換算した場合の含有量に対する(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量の質量比が1〜7.5である。したがって、脱色処理後の毛髪の明度をより向上させることができる。また、第1剤の保存安定性をより向上させることができる。
【0044】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・前記実施形態の毛髪脱色剤は第1剤において、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、アルカリ剤、例えばアンモニア、アルカノールアミン、有機アミン類、無機アルカリ、塩基性アミノ酸、及びそれらの塩が含有されてもよい。
【0045】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を染毛剤に具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る染毛剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の毛髪化粧料である。
【0046】
第1剤は、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5に調整されている。第1剤は、好ましくは酸化染料を配合する。
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0047】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0048】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。
【0049】
染毛剤における第2剤は、第1剤と混合された後、毛髪の染色に使用される。第2剤の具体的な構成は、第1実施形態に係る第2剤と同じである。
第1剤及び第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。染毛剤の使用時には、第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。次いで、必要量の混合物がコーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0050】
本実施形態に係る染毛剤は第1実施形態の効果に加えて以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る染毛剤は、(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5である第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤とから構成される。したがって、炭酸系のアンモニウム塩を含有する第1剤の保存安定性を向上させることができる。また、染色処理後の毛髪の明度を向上させることができるため、より鮮やかに染色することができる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
表1〜5に示す各成分を含有する、毛髪脱色剤の第1剤及び第2剤を調製した。表1〜5における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:1の質量比で混合して毛髪脱色剤を調製した。尚、表4に示す毛髪脱色剤の第1剤は、第1剤95質量%及びLPG5質量%からなるエアゾールタイプとして調製した。得られた毛髪脱色剤を、黒毛の人毛毛束(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて塗布し、室温(25℃)にて30分間放置した。次に、毛束に付着した毛髪脱色剤を水で洗い流した後、毛束にシャンプーを2回、及びリンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。脱色処理が施された毛束について、下記に示す方法に従い明度の評価を行った。また、脱色処理前の各実施例及び比較例の毛髪脱色剤の第1剤について下記に示す方法に従い保存安定性の評価を行った。
【0052】
表中「成分」欄における(A),(B)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「b」の表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。
【0053】
また、表中の「(A)炭酸系のアンモニウム塩の質量比」欄は、第1剤中における、(B)リン酸塩の含有量に対する(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量の質量比(A/B)を示す。
【0054】
<保存安定性>
脱色処理前の各実施例及び比較例の毛髪脱色剤の第1剤について、ガラス瓶に入れ、50℃の恒温漕中で1ヶ月間保存した後に毛髪脱色剤の第1剤の分離状態を目視にて評価することにより溶解状態の保持効果が良いか否かを判断した。分離がほとんど認められないものを評価5、分離があまり認められないものを評価4、分離が僅かに認められるもの評価3、分離がやや認められるもの評価2、分離がかなり認められるものを評価1とした。結果を表1〜4に示す。
【0055】
<明度>
10名のパネラーが毛髪脱色剤処理後の人毛毛束の明度を標準光源下で目視にて観察し、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」及び1点以上1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表1〜4に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

表1,3に示されるように、各実施例に係る毛髪脱色剤の第1剤においては、各比較例に対し高い保存安定性及び明度が得られることが分かった。また、表4に示されるエアゾールタイプの毛髪脱色剤(実施例18)についても表1,3の実施例と同様に、各比較例に対し高い保存安定性及び明度が得られることが分かった。また、(A)炭酸系のアンモニウム塩として炭酸アンモニウム及び(B)リン酸塩としてリン酸三ナトリウムを使用する実施例1は、各比較例に対し、より高い保存安定性及び明度が得られることが分かった。また、第1剤中における、(B)リン酸塩の含有量に対する(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量の質量比(A/B)が1〜7.5の範囲内であり、且つ第1剤中における(B)リン酸塩の含有量が0.2〜2.5質量%の範囲内の実施例7,8,11,14,15は、各比較例に対し、より高い保存安定性及び明度が得られることが分かった。
【0061】
表2に示されるように、毛髪脱色剤の第1剤が(B)リン酸塩の代わりに無機酸塩(メタケイ酸ナトリウム)を含有する比較例1,2は、各実施例に対し保存安定性及び明度の評価が低いことが分かった。毛髪脱色剤の第1剤が(A)炭酸系のアンモニウム塩を含有しない比較例3は、各実施例に対し明度の評価が最も低いことが分かった。第1剤のpHが8.5〜9.5の範囲を外れる比較例4,5は、各実施例に対し保存安定性及び明度の評価が最も低いことが分かった。
【0062】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)炭酸系のアンモニウム塩を含有する溶液にリン酸塩を配合し、pHが8.5〜9.5に調整することを特徴とする炭酸系のアンモニウム塩含有溶液の安定化方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭酸系のアンモニウム塩及び(B)リン酸塩を含有し、pHが8.5〜9.5である第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤とから構成され、染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記第1剤中における(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量は、2.5〜16質量%であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記第1剤中における(B)リン酸塩の含有量は、リン酸塩無水物に換算した場合0.2〜2.5質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記第1剤中における(B)リン酸塩のリン酸塩無水物に換算した場合の含有量に対する(A)炭酸系のアンモニウム塩の含有量の質量比が1〜7.5であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物。

【公開番号】特開2010−150223(P2010−150223A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333009(P2008−333009)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】