説明

気体を個体の体腔に送り込み、かつ個体の体腔から排出物を収集する装置

【課題】個体の体腔に気体を送り込み、かつ個体の体腔から排出物を収集する装置に関し、好ましくは、画像による腸の診査時に腸を拡張させるための気体を直腸内に送り込む装置を提供する。
【解決手段】送気装置1と、個体の体腔に挿入可能な部材3に気体を送り込むための第1の管2とを備え、第1の管2は過剰な気体を外部に向けて排出するためのバイパス21を備える。挿入可能な部材3は、3つの通路を有し、出口33を有する通路に第1の管2を結合するためにその後端部にある第1の口31と、入り口36を有する通路に排出物排出管5を結合するための第2の口34と、入り口および出口33、36の手前に設けられた膨張可能な環状要素への出口を有する通路に膨張可能な環状要素の膨張手段6を接続するための第3の口37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体の体腔に気体を送り込み、かつ個体の体腔から排出物を収集する装置に関し、好ましくは、画像による腸の診査時に腸を拡張させるための気体を直腸内に送り込む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、患者の腸が拡張するように患者の腸に気体、例えば空気または炭酸ガス、を導入することによって画像による診断方法を可能にする装置に関する。
【0003】
上記診査中、当然のことながら個体は排出物を直腸腔から外部に向けて排出または漏出するため、上記気体を体内に送り込むために使用されている手段および診査中の場所が汚染されるおそれがある。
【0004】
これらの問題を減らす装置が存在することは知られている。この装置は、送気装置と、この送気装置によって供給された気体を個体の体腔の内部に向けて送り込むための第1の管と、当該個体からの排出物を送気装置の内部に向けて進入させないために第1の管に挿入された複数のバリアと、上記排出物を収集するための貯留部と、当該個体の体腔に挿入可能であり、第1の管に取り付け可能であり、かつ当該個体の体腔を周辺方向に封止するための膨張可能な環状要素を有する部材と、この挿入可能部材を個体の体腔に導入した後で膨張可能な環状要素を膨張させる手段とを備える。
【0005】
これにより、挿入可能部材を個体の直腸腔に挿入すると、診査中に発生した排出物は第1の管を経由して貯留部に収集される。この装置はいくつかの問題があり、その主なものは、第1の管によって気体を送り込み、その同じ通路によって排出物を収集するため、送気装置のより広範囲な汚染の一因となる点である。さらに、この送気装置は、診断プロセス中に生じうる過剰な圧力に持ちこたえる必要があり、その結果、体腔から発生した気体を吸収せざるを得ないため、液体および固体の進入がバリアによって効果的に防止されたとしても、装置は汚染される。
【0006】
さらに、これらの装置では、送り込まれた気体の流れが管内を反対方向に流れる排出物の収集を妨げるため、排出物は完全には抜き取られず、排出物の一部が直腸腔に残る。直腸腔に残っている排出物は、画像による診査中にレントゲン技師によって取得される画像を歪めるため、診断をかなり妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的である、気体を個体の体腔に送り込み、かつ個体の体腔から排出物を収集する装置は、患者の快適さを向上すると共に、送気装置の清潔および衛生を保証するための技術的特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本装置は、送気装置と、送気装置から供給された気体を個体の体腔の内部に向けて送り込むための第1の管と、個体からの排出物が送気装置の内部に進入しないようにするために第1の管に挿入された複数のバリアと、排出物を収集するための貯留部と、個体の体腔に挿入可能であり、第1の管に取り付け可能であり、かつ個体の体腔を周辺方向に封止するための膨張可能な環状要素を有する部材と、この挿入可能部材を個体の体腔に導入した後に膨張可能な要素を膨張させる手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、第1の管はバイパスを有し、このバイパスに第2の気体排出管が接続される。第2の気体排出管は、第1の管に収容された気体の圧力が事前に設定された値を超えた場合に気体を外部に向けて自動的に放出するための安全弁を備える。このように気体を外部に逸らすことによって、体腔内の過剰な気体が送気装置に進入せずに排出されるため、個体の直腸腔からの帰還気体による送気装置の汚染を防止できる。また、気体を外部に直接放出できることによって体腔の内圧が制御しやすくなるため、患者の体腔内の圧力および容積がより一定に維持される。
【0010】
このバイパスは、送気装置と、送気装置側への排出物の進入を阻止する1つ以上のバリアとの間の区間に配設される。このため、排出される気体は清潔であり、送気装置は気体をほぼ一定に送り込む。
【0011】
他方、挿入可能部材は、その後端部に、挿入可能部材の先端部に隣接して設けられた出口を有する第1の内部通路に第1の管を結合するための第1の口と、挿入可能部材の先端部に隣接して設けられた出口を有する第2の内部通路に排出物排出管を結合するための第2の口と、膨張可能な環状要素の内部に設けられた出口を有する第3の内部通路に膨張可能な環状要素の膨張手段を接続するための第3の口とを備える。これにより、個体の体腔への気体の供給が排出物の収集ルートまたは経路とは完全に独立した通路を通じて行われ、排出物は別の独立した通路を通じて収集されるので、収集された排出物によって送気装置が汚染される可能性が低くなる。
【0012】
送気装置は気体をほぼ一定の割合で送り込むため、患者へのこの気体流によって、直腸および結腸の内部の排出物および液体の第1の導管への進入が防止される。
【0013】
本装置は気体を1つの通路を通じて導入し、排出物を別の通路を通じて収集するので、排出物がより効率的に除去される。これにより、排出物が適切に収集され、取得される画像が排出物によって歪められないので、診断プロセスを実施中のレントゲン技師の作業が容易になる。
【0014】
第1の管は、第2の管の接続用バイパスと送気装置に接続された端部との間の区間に設けられた第2のバイパスを有し、口または鼻から患者の体腔に気体を導入するための管がこの第2のバイパスに接続される。したがって、消化管の診断中、単一の送気装置によって上記管を通じて小腸を拡張させ、それらの2つの端部から両方の腸を拡張させる内圧を均衡させることが可能である。
【0015】
第1の実施形態において、挿入可能部材の第2の口に接続される排出物排出管の長さは、発生した排出物を収集するために十分な長さである。ただし、特定の状況において、排出物が大量の場合は、挿入可能部材の第2の口に接続された排出物排出管の後端部を排出物収集容器に接続する。
【0016】
第2の管は、気体の排出用であり、外部に向けて排出される帰還気体の悪臭を取り除く香り付きバリアを備える。
【0017】
本送気装置は、供給する気体を加熱する手段を備える。これらの気体加熱手段は、個体の体腔に導入される気体が、例えば、減圧された瓶詰め気体の通常の低温ではなく、その個体の体温と同じ温度になるように、気体の加熱を約37.5℃の温度に調整するサーモスタットを備える。これにより、患者の快適さが向上され、緊張が緩和される。
【0018】
外部に向けて排出される気体がより清潔になるように、第1の管に設けられたバリアのうちの少なくとも1つは、坑ウイルスまたは抗菌材料を備える。同様に、バリアのうちの少なくとも1つは、外部に向けて排出される上記気体に湿気または水関連の汚染物質が存在しないようにすると共に、送気装置の安全性および衛生を向上する疎水性フィルタを備える。
【0019】
本装置は、診断後に使い捨て手段を引き抜いたときおよび廃棄時に排出物の漏出を防止するように第1の管のバリアの前方と排出管とに設けられる締め付け手段、クランプ、または封鎖手段を備えることを想定している。
【0020】
この説明を補完するために、また本発明の特徴をさらに説明する目的で、本願明細書には一連の図面が含まれており、以下の図は例示として非限定的な方法で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本装置の平面図を示す。
【図2】挿入可能部材の横断面を示す。
【図3】挿入可能部材の縦断面を示す。
【図4】鼻または口から導入される第2の管を有する構成の本装置の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記の各図から観察できるように、気体を個体の体腔に送り込み、かつ個体の体腔から排出物を収集する装置は、気体を挿入可能部材(3)を介して個体の体腔に送り込むための第1の管(2)に接続された第1の送気装置(1)を備える。この送気装置(1)は、気体加熱手段(11)と、気体を約37.5℃で供給するように調整されたサーモスタット(12)とを有する。
【0023】
第1の管(2)は、送気装置(1)に接続された端部に隣接してバイパス(21)を備える。バイパス(21)は、第1の管(2)に収容された気体の圧力が事前に設定された値を超えた場合に気体を外部に向けて自動的に放出するための安全弁(41)を有する第2の気体排出管(4)に接続されている。気体排出中の悪臭を防ぐために香り付きバリア(42)が第2の管(4)に設けられている。
【0024】
第1の管(2)は、バイパス(21)の後方に配設された坑ウイルスおよび抗菌バリアと、疎水性フィルタとを有する。
【0025】
挿入可能部材(3)は、その後端部に、挿入可能部材(3)の先端部に隣接して設けられた出口(33)を有する第1の内部通路(32)に第1の管(2)の自由端を結合するための第1の口(31)を備える。挿入可能部材(3)は、挿入可能部材(3)の先端部に隣接して設けられた入り口(36)を有する第2の内部通路(35)に排出物排出管(5)を結合するための第2の口(34)をさらに備える。さらに、挿入可能部材(3)は、膨張可能な環状要素(30)の内部に設けられた出口(39)を有する第3の内部通路(38)に膨張手段(6)を接続するための第3の口(37)を備える。膨張可能な環状要素(30)は、その膨張によって体腔への進入を阻止するために、挿入可能部材(3)の周囲に設けられている。この挿入可能部材(3)は、損傷または不快感を引き起こさずに直腸腔への部材(3)の挿入を容易にするために、丸みを帯びた先端部を有する。
【0026】
排出管(5)は、排出物が廃棄されるまで排出物を蓄えておくために十分な長さを有する。
【0027】
一実施形態においては、より大きな容量を有する排出物収集容器(51)がこの排出管(5)の端部に設けられる。
【0028】
一実施形態においては、使用後に管を遮断するためのクランプ(7)が第1の管(2)と排出物排出管(5)とに結合されている。これにより、挿入可能部材(3)を個体の体腔から引き抜いたときに排出物の漏出と起こりうる汚染とが回避される。
【0029】
図4に示されている一実施形態においては、第1の管(2)は、第2の管(4)を接続するバイパス(21)との間の区間に、気体を口または鼻から患者の体腔に導入するための管(8)が接続される第2のバイパス(23)を有する。
【0030】
好適な実施形態の一例と共に、本発明の本質を十分に説明してきた。以下に記載されている本発明の基本的特徴を変更しない限りにおいて、記載の各要素の材料、形状、大きさ、およびレイアウトを適切な目的のために変更しうることを発明者らはここに表明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の体腔に気体を送り込み、かつ前記個体の前記体腔から排出物を収集する装置であって、送気装置(1)と、前記送気装置(1)によって供給された前記気体を個体の体腔の内部に向けて送り込むための第1の管(2)と、個体からの排出物が前記送気装置(1)の前記内部に向けて進入しないように前記第1の管(2)に挿入された複数のバリア(22)と、前記排出物を収集するための貯留部と、個体の体腔に挿入可能であり、前記第1の管(2)に取り付け可能であり、かつ前記個体の前記体腔を周辺方向に封止するための膨張可能な環状要素(30)を有する部材(3)と、前記挿入可能部材(3)を個体の前記体腔に導入した後に前記膨張可能な環状要素(30)を膨張させるための膨張手段(6)と、を備える種類の装置において、前記第1の管(2)は、第2の気体排出管(4)が接続されるバイパス(21)を有し、前記第2の気体排出管(4)は、前記第1の管(2)に収容された気体の圧力が事前に設定された値を超えた場合に前記気体を外部に向けて自動的に放出するための安全弁(41)を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記バイパス(21)は、前記送気装置(1)と、前記送気装置(1)側への前記排出物の進入を阻止する前記1つ以上のバリア(22)との間の区間に配設されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記挿入可能部材(3)は、前記挿入可能部材(3)の前記先端部に隣接して設けられた出口(33)を有する第1の内部通路(32)に前記第1の導管(2)を結合するためにその後端部にある第1の口(31)と、前記挿入可能部材(3)の前記先端部に隣接して設けられた出口(36)を有する第2の内部通路(35)に排出物排出管(5)を結合するための第2の口(34)と、前記膨張可能な環状要素(30)の内部に設けられた出口(39)を有する第3の内部通路(38)に前記膨張可能な環状要素(30)の前記膨張手段(6)を接続するための第3の口(37)と、を備えることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の管(2)は、前記第2の管(2)を接続する前記バイパス(21)と前記送気装置(1)に接続された前記端部との間の区間に、口または鼻から患者の体腔に気体を導入するための管(8)が接続される第2のバイパス(23)を有することを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記挿入可能部材(3)の前記第2の管(34)に接続された前記排出物排出管(5)は、その後端部が排出物収集容器または貯留部(51)に接続されることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の気体排出管(4)は複数の香り付きバリア(42)を備えることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記送気装置(1)は、前記供給される気体を加熱する手段(11)を備えることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記気体加熱手段(11)は、前記気体の加熱を約37.5°Cの温度に調整するサーモスタット(12)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の管(2)に配設された前記バリア(22)のうちの少なくとも1つは、坑ウイルスまたは抗菌性材料を備えることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記バリア(22)のうちの少なくとも1つは疎水性フィルタを備えることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の管(7)の前記バリア(22)の前方と前記排出管(5)とに配設された締め付け手段、クランプ(7)、または封鎖手段を備えることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−104336(P2011−104336A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−110034(P2010−110034)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(510130642)
【氏名又は名称原語表記】NICOLAS ANTHONY COSTOVICI
【住所又は居所原語表記】SARAGOSSA,14 − MAS FUMATS,17480 ROSES(GIRONA−SPAIN)
【Fターム(参考)】