説明

気体処理装置

【課題】大容量の気体を低圧力損失で供給可能とすることにより気体供給動力を低減することができ、且つ接触効率が高いことにより反応率が高く、また被処理気体の容量変化に対応して処理が可能であり、長期間連続して処理が可能な気体処理装置とする。
【解決手段】気体処理機能を施した気体処理部材4を、気体供給管1内に気体処理部材供給装置8によって連続的に供給する。気体処理後の気体処理部材4は処理済気体処理部材容器12内に収容される。気体処理部材は、糸、紙、織物、網、気体透過性の壁からなる中空の容器内に気体処理材を収納したもの等からなる。また、この気体処理部材は気体流に対して直角または傾斜、或いは平行に配置する。気体処理部材をカット紙状とし、カセット内に収納して連続的に供給し、カセット内に抜き取り排出し、或いはロール紙状に形成し、ローラに連続的に巻き取るようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
除湿装置、吸着装置、有害物質処理装置等において、これらの機能を有する繊維、織物状、網状、棒状、平板状の処理材料を連続的に供給、排出しながら、流体と低圧力損失で接触させることができるようにした気体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の除湿装置、吸着装置、有害物質処理装置等においては、例えばデシカント空調装置の場合、ハニカム状ローターに除湿剤を付着させ大風量・低圧力損失除湿を行っているが、この方法では排熱供給と冷熱需要が一致しないと使うことができず、低温排熱の利用が困難であるという問題があった。
【0003】
また、粒子を用いた固定層や流動層によって除湿、吸着、化学触媒反応や光触媒反応による有害物質処理が行われていた。これらの装置においては、装置、熱交換装置などは粒子層の間隙を流体が透過するため固気接触効率は非常に高かった。しかし、固定層の方式では粒子交換のためには装置を停止しなくてはならず、流動層の方式では圧力損失が高いことや完全混合層になることに依る反応率の低下、粒子の摩滅などが問題となっていた。
【0004】
更に従来より本発明者等が提案している方式のように、固体粒子を循環して用いることができるようにして、流体と流動層式に接触させる方式は、固体粒子を貯留することが容易のため、廃熱供給と冷熱需要が一致しない場合でも容易に対応することができる。但し、この方式は大風量時には圧力損失が高くなり、動力費が高くなる問題があった。
【0005】
なお本発明者等は先に、単位体積あたりの空気の処理範囲を大幅に拡大でき、気体搬送流動層を形成する範囲でガス流速および粒子循環速度等の流動条件を変更し、あるいは粒子サイズを変更することで、空気と粒子の接触面積および接触時間を任意に変更できるようにするとともに、更に、気体搬送流動層により処理することにより圧力損失が少ない状態で処理を行うことができるようにした流動層型の固体粒子と流体との接触装置を下記特許文献1に提案している。
【特許文献1】特開2005−30754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決するため、大容量の気体を低圧力損失で供給可能とすることにより気体供給動力を低減することができ、且つ接触効率が高いことにより反応率が高く、また被処理気体の容量変化に対応して処理が可能であり、長期間連続して処理が可能な気体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る気体処理装置は、上記課題を解決するため、気体流路中に気体処理機能を施した気体処理部材を気体流に対して連続的に供給する手段と、気体処理後の気体処理部材を連続的に抜き取る手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置における前記気体処理部材が、気体処理機能を有するか、或いは気体処理機能を有する固体粒子、液体、ペーストなどを担持した糸、紙、織物、網のいずれかからなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置における前記気体処理部材が、気体透過性の壁からなる中空の棒状または平板状容器内に気体処理材を収納したもの、或いは、気体処理機能を有する材料そのもので成型したものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置における前記気体処理部材が、気体流に対して直角または傾斜、或いは平行に配置したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記気体処理部材を気体流路中に複数配置したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、カット紙状に形成しトレイに保管した前記気体処理部材を連続的に気体流路中に供給することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記カット紙状の気体処理部材をカセット内に収納し、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記気体流路中に供給したカット紙状の気体処理部材をカセット内に抜き取り、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記気体処理部材をロール紙状に形成し、供給用ローラに巻回している前記ロール紙状の気体処理部材を巻き取りローラに連続的に巻き取ることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記ロール紙状の気体処理部材を巻回した供給用ローラをカセット内に収納し、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記巻き取りローラをカセット内に収納し、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記気体処理部材の供給速度を気体流量に応じて調節することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の気体処理装置は、前記気体処理装置において、前記気体処理部材は、気体の除湿、気体中物質の吸着、気体中物質の化学変化のいずれかの処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、大容量の気体を低圧力損失で供給可能とすることにより気体供給動力を低減することができ、且つ接触効率が高いことにより反応率が高く、また被処理気体の容量変化に対応して処理が可能であり、長期間連続して処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、大容量の気体を低圧力損失で供給可能とすることにより気体供給動力を低減することができ、且つ接触効率が高いことにより反応率が高く、また被処理気体の容量変化に対応して処理が可能であり、長期間連続して処理を可能とするという課題を、気体流路中に気体処理機能を施した気体処理部材を気体流に対して連続的に供給する手段と、気体処理後の気体処理部材を連続的に抜き取る手段とを備えることにより実現したものである。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明の第1実施例であり、図示の例では内部に気体流路を備えた断面矩形の気体供給管1の側部近傍に気体処理部材挿入口2と、これに対向する位置に気体処理部材排出口3を形成している。この気体処理部材挿入口2と気体処理部材排出口3との間には、気体処理機能を有する固体粒子、液体、ペーストなどを担持した糸、紙、織物、網状体、平板等の種々の態様からなる気体処理部材4を両側から挟むローラ5として示している気体処理部材搬送装置6によって、図中上方から下方に搬送可能とし、気体供給管1外に設けた駆動装置7により気体処理部材搬送装置6を駆動し、所定の速度で気体処理部材4を搬送可能としている。
【0023】
気体供給管1における前記気体処理部材挿入口2の部分には、未使用の所定形状の気体処理部材4を多数蓄え、これを順に供給する気体処理部剤供給装置8を配置しており、図示実施例では押圧部材9により順に気体処理部材供給装置8の前端部11側に常時押圧している。気体処理部材供給装置8の前端部11の下方は、気体処理部材挿入口2に対向して開口している。
【0024】
それによりこの気体処理装置10は、気体処理部材供給装置8に多数収容されている気体処理部材4が、押圧部材9によって順に前端部11側に押圧されることにより、前端部11に押された気体処理部材4は気体処理部材挿入口2に落下可能となる。気体処理部材挿入口2に落下した気体処理部材4は、その後複数のローラ5の対とこれを駆動するローラ駆動装置7からなる気体処理部材搬送装置6によって、図示実施例では気体供給管1内を気体流に直交する方向に搬送される。その後、下方に位置する気体処理部材排出口3から処理済気体処理部材容器12内に落下して貯留される。
【0025】
上記のような気体処理装置10においては、例えばこの装置を空調用の除湿器として用いる際には、気体処理部材4として吸湿性繊維、活性炭素繊維、吸湿剤を混ぜ込んで製作した繊維、或いは除湿剤を混ぜた通気性の紙、中空通気性板状体の中に水分吸着粒子を収容した板等を用い、気体供給管1内に前記のように順にこれを供給することにより、気体供給管1を流れる室内空気をこれらの除湿性物質と接触させ除湿することができる。それにより、気体との接触効率を高め、且つ圧力損失を低下させた状態で、連続的な気体処理が可能となる。
【0026】
また、この装置を有害気体の処理装置として用いる際には、気体処理部材4として有害物質特有の吸着能力を有する吸着性物質、或いは光触媒等の触媒、更には反応性物質等を有するものとし、気体供給管1内に被処理気体を流すことにより、前記と同様の連続的な気体処理ができる。また、前記各種の気体処理機能を複合的に行わせる気体処理剤を用いても良い。
【0027】
前記実施例においては、気体処理部材4を気体供給管1の気体流動方向に直角に配置し、移動させる例を示したが、配置角度は任意に設定することができ、例えば図2に示すように、気体の流れに平行に複数配置して、気体供給管1内を移動させても良く、その際には同図(a)に示すように水平に移動させ、或いは(b)に示すように垂直に移動させることができる。気体流動方向と平行に、複数配置しても良い。また、気体処理部材4の供給速度を可変とし、被処理気体の速度、即ち需要変動に合わせて調節することもできる。
【0028】
また、前記実施例においては気体処理部材供給装置8として押圧部材9により順に気体処理部材供給装置8の前端部11側に常時押圧する供給手法を採用したが、更に種々の供給手法を採用することができ、例えばカット紙使用プリンタのように、供給トレイに保管されたカット紙状に加工された気体処理機能を有する織物、網、板を、カット紙の供給機構を介して流路を通過させ、反対側にはこれら気体処理済みのカット紙を回収し、排出トレイに納めることで連続処理を容易にする手法も採用することができる。
【0029】
その際には、供給トレイ及び排出トレイをカセット状にして気体供給管1に着脱自在とし、容易に交換可能としても良い。また、気体処理部材は上記のようなもの以外に、多孔性で中空の棒状或いは板状体の中に、粒子等の気体処理部材を充填し、或いは他の各種気体処理部材を充填したものを用い、更には、気体処理機能を有する材料そのもので成型したものを用い、これを前記と同様に気体供給管内に順に供給し、排出することにより連続処理を行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0030】
前記実施例においては所定の大きさに形成した多数の気体処理部材を順に気体供給管内に送り込む例を示したが、その他例えば図3に示すように、気体供給管20を挟んで両側に供給ロール21と巻き取りロール22を配置し、供給ロール21に気体処理機能を有する糸、織物、網等の気体処理部材23を巻き、巻き取りロール21に端部を固定すると共に、巻き取りロールを駆動装置24によって回転して、供給ロール21の気体処理部材23を巻き取ることにより連続的に気体供給管1内に新しい気体処理部材23を供給するように気体処理部材供給装置25を構成しても良い。その際には、図3に示すように複数の気体処理部材供給装置25を気体供給管1に並列して設けることができる。
【0031】
また例えば図4に示すように、前記供給ロール21及び巻き取りロール22を容器26中に収納し、カセット式として気体供給管に着脱可能に構成し、気体供給管20内に配置した上段ガイドロール27と下段ガイドロール28によってガイドし、気体の流れに平行に複数の気体処理部材を配置させる。
【0032】
なお、このような装置においては、下段ガイドロール28を上下動自在として、上方に配置した下段ガイドロール28’の状態で、下段ガイドロール28’と上段ガイドロール27との間に、供給ロール21に巻いた気体処理部材23を直線上に挿入可能とし、容器26の脱着時に上記のように下段ガイドロール28を上方に位置させることにより、カセット状容器26の脱着と気体処理部材23の取り扱いを容易にすることもできる。
【0033】
更に、この実施例においても、気体処理部材23を気体供給管1内を流れる気体流に対して図示するように直角に配置する以外に任意の角度傾けて配置しても良く、また気体流に平行に複数配置しても良い。更に、ロールに巻き取る気体処理部材を無端状に形成し、気体処理部材の再生装置に通し、適宜搬送に余裕を持たせることによって処理能力と再生能力の差を吸収し、連続的に気体処理部材を気体流路中に往復循環使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は気体処理部材を除湿性のものを用いて空調装置に利用し、また気体中物質の吸着性物質を用いて気体中の有害物質を吸着処理する装置に利用し、また光触媒や、各種触媒の機能を備えた物質を用いて化学反応装置に利用する等、種々の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施例の説明図である。
【図2】同実施例の他の態様を示す図である。
【図3】同第2実施例の説明図である。
【図4】同実施例の他の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 気体供給管
2 気体処理部材挿入口
3 気体処理部材排出口
4 気体処理部材
5 ローラ
6 気体処理部材搬送装置
7 ローラ駆動装置
8 気体処理部材供給装置
9 押圧部材
10 気体処理装置
11 前端部
12 処理済気体処理部材容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流路中に気体処理機能を施した気体処理部材を気体流に対して連続的に供給する手段と、気体処理後の気体処理部材を連続的に抜き取る手段とを備えたことを特徴とする気体処理装置。
【請求項2】
前記気体処理部材は、気体処理機能を有するか、或いは気体処理機能を有する固体粒子、液体、ペーストなどを担持した糸、紙、織物、網のいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項3】
前記気体処理部材は、気体透過性の壁からなる中空の棒状または平板状容器内に気体処理材を収納したもの、或いは、気体処理機能を有する材料そのもので成型したものであることを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項4】
前記気体処理部材は、気体流に対して直角または傾斜、或いは平行に配置したことを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項5】
前記気体処理部材を気体流路中に複数配置したことを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項6】
カット紙状に形成しトレイに保管した前記気体処理部材を連続的に気体流路中に供給することを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項7】
前記カット紙状の気体処理部材をカセット内に収納し、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項6記載の気体処理装置。
【請求項8】
前記気体流路中に供給したカット紙状の気体処理部材をカセット内に抜き取り、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項6記載の気体処理装置。
【請求項9】
前記気体処理部材をロール紙状に形成し、供給用ローラに巻回している前記ロール紙状の気体処理部材を巻き取りローラに連続的に巻き取ることを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項10】
前記ロール紙状の気体処理部材を巻回した供給用ローラをカセット内に収納し、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項9記載の気体処理装置。
【請求項11】
前記巻き取りローラをカセット内に収納し、該カセットを気体供給管に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項9記載の気体処理装置。
【請求項12】
前記気体処理部材の供給速度を気体流量に応じて調節することを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。
【請求項13】
前記気体処理部材は、気体の除湿、気体中物質の吸着、気体中物質の化学変化のいずれかの処理を行うことを特徴とする請求項1記載の気体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−144326(P2007−144326A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343508(P2005−343508)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】