説明

気体分離装置及び気体分離方法

【課題】 小型化かつ軽量化が可能であり、かつ、時には無電源でも使用可能な気体分離装置を提供する。
【解決手段】 気密容器(2)の外部と内部とを隔離する隔壁の少なくとも一部が、気体分離膜(13)を含めて構成してあり、隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、気体分離膜が、気密容器内部の全圧Pが容積減少により全圧P1(P<P1)以上となったときに容器内部に密封されていた気体Gから気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を気密容器外部に分離排出可能に構成してあり、気体取出弁が、気密容器内部のさらなる容積減少により気密容器内部の全圧がP2(P2>P1)となったときに気密容器内部と外部とを連通して気密容器内部に残る気体g2を外部に排出可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体分離膜によって隔離された一方と他方との間に生じさせた圧力差により気体を分離するための気体分離装置及び気体分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体分離膜を用いた気体分離装置として、特許文献1乃至3に開示されたものがある。特許文献1乃至3のそれぞれに開示された気体分離装置(以下、適宜「従来の気体分離装置」と総称する)は、窒素分離膜モジュールに空気圧縮機(コンプレッサー)から圧縮空気を供給して、窒素分離膜の一方側と他方側に生じさせた圧力差により酸素気体と窒素気体とを分離するように構成されている。分離によって得られた窒素気体は、何れも自動車タイヤに充填するために利用される。
【特許文献1】特開2002−1045号公報(段落0014、0015及び図1参照)
【特許文献2】特開2004−17955号公報(段落0010、図1参照)
【特許文献3】特開2003−54918号公報(段落0010、0013、0014及び図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の気体分離装置は、何れも空気圧縮機を必要とすることから、一般的に装置全体が大型化かつ重量化してしまう。構造が複雑である点にも問題がある。従来の気体分離装置は、何れも自動車タイヤへの窒素気体充填を目的とすることから、一般的にガソリンスタンドや自動車修理工場等に設置されるものであって、それが大型化かつ重量化していても使用にさほどの問題はない。しかし、気体分離装置によって分離しようとする気体の種類、気体の濃度、分離量の多少等によって気体分離装置に与えられる使用環境は様々である。たとえば、停電のときや屋外で使用するときに、空気圧縮機を駆動させるための電源を確保できない場合もあり得る。そのように様々な使用環境に対応させるためには、空気圧縮機が邪魔となることがある。本発明は、上述した状況に対応するためになされたものであって、その解決しようとする課題は、小型化かつ軽量化が可能であり、かつ、時には無電源でも使用可能な気体分離装置及び気体分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために発明者は、気体分離膜を利用して気体分離を行わせるには、その気体分離膜を挟んだ一方側と他方側との間に圧力差が必要なところ、その圧力差を生成するために一部又は全部を気体分離膜により構成した気密容器の容積を増加又は減少させ、これにより気体分離を行わせることを案出した。本発明は、このような観点からなされたものである。その詳しい内容については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う解釈や用語の定義等は、発明のカテゴリーを問わずその性質上可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用されるものとする。
【0005】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項1の分離装置」という)は、隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、当該隔壁に設けられた気体取出弁と、当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してある。隔壁は、これを、たとえば、金属や剛性又は軟性の合成樹脂によって構成することができ、気密性保持のために必要に応じてパッキン(パッキング)等を用いることもできる。パッキン等は、それらが容器外部と容器内部とを隔離するものであれば、本願における隔壁に該当する。隔壁の一部が残る部分に対して移動可能に構成したり、隔壁自体の柔軟性を利用して弾性変形可能に構成したり、移動可能な構成と弾性変形可能な構成とを組合せて構成したりすることによって、容器内部の容積減少を実現する。外力は、直接であると間接であるとを問わず、手動により、又は、電気エネルギーや位置エネルギー等を利用した手段により作用させることができる。気密容器の形態に制限はなく、通気管等により連通させた一方の気密容器と他方の気密容器の総体等も、本願における気密容器に該当する。上記構成における隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、当該気体分離膜が、当該気密容器内部の全圧Pが容積減少により全圧P1(P<P1)以上となったときに容器内部に密封されていた気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該気密容器外部に分離排出可能に構成してある。気体Gから少なくとも気体g1が分離されることによって、容器内部には気体g2が残される。ここで、当該気体取出弁が、当該気密容器内部のさらなる容積減少により当該気密容器内部の全圧がP2(P2>P1)となったときに当該気密容器内部と外部とを連通して当該気密容器内部に残る気体g2を外部に排出可能に構成してある。「気体分離膜」は、気体分離機能を持った膜の総称である。気体分離膜の形態は特に限定されるものではなく、たとえば、平板型、中空糸型、スパイラル型等が挙げられ、これらを構成する各気体分離膜が、屈曲・湾曲・厚みの変化等により表面に起伏を持っていてもよい。上記例における中空糸型の気体分離膜にあっては、各中空糸が気密容器を構成する隔壁に該当し、それらの内部が容器内部に該当する。気体分離膜を構成する素材には、高分子などの有機材料、シリカ・アルミナ・カーボン等の無機材料、有機材料と無機材料とを組み合わせたハイブリッド材料等があり、これらの材料に吸着剤のような添加物等を含ませたものも含まれる。気体分離膜の性状(たとえば、透過係数、膜厚、膜面積)は、分離装置の使用目的、分離によって得ようとする気体の種類、量、濃度等に合わせて適宜設定するとよい。なお、気体分離膜は、形態的に、また、素材的に同一のものを用いる必要は必ずしもなく、上記例示した形態や素材等を複数組み合わせて用いることもできる。なお、本願において「全圧」とは、気密容器内部に存する各気体分圧の総和のことをいう。
【0006】
請求項1の分離装置によれば、気密容器内部に密閉された気体Gが、気密容器内部が容積減少により全圧PからP1に上昇することによって気体分離膜を介した気密容器内外に圧力差が生じることになり、この圧力差によって気体g1の一部又は全部が気体分離膜を透過して気密容器外部に分離排出される。この時点で、気体取出弁は閉鎖状態にあり、容器内部には気体g2(気体g1が含まれる場合もある)が充満している。気体g1が分離排出された後も気密容器内外に圧力差があるから、一旦分離排出した気体g1と同じ種類の気体が、当該気密容器の外的環境に変化がない限り容器内部に入ってくることはない。ただ、外的環境に変化(たとえば、内部より外部のほうが圧力及び/又は濃度が高くなった)した場合には入ってくることもあり得る。全圧P1となった気密容器内部の容積をさらに減少させることにより、全圧P1をそれよりも高い全圧P2にまで至らせると、今度は気体取出弁が開放して容器内部にある気体g2の少なくとも一部が容器外部に押し出し排出される。排出の際にも、気体分離膜の内外に圧力差が存在するため、気体g1が気体分離膜を介して気密容器外へ分離排出される場合もある。この時点で、気体Gが気体分離膜によって気体g1と気体g2に分離されることになる。気体分離膜の種類、形状、大きさ、厚み等、気体取出弁の開放圧力の設定値等は、たとえば、分離装置の使用目的、分離によって得ようとする気体の種類、量、濃度等に合わせて適宜設定する。つまり、気体Gが、たとえば、大気であり気体分離膜が酸素気体を透過させ窒素気体を透過させない性質のものである場合において、全圧Pの大気が(たとえば、容器変形により)気密容器内部の容積減少に伴い全圧P1に達したときに、気体分離膜を介して酸素気体g1が容器外部へ分離排出される。この分離排出によって、酸素気体g1と窒素富化気体g2とが分離される。気密容器内に残った窒素リッチ(窒素富化気体)な気体g2は、さらなる容積減少により全圧がP2に至ったときに気体取出弁から気密容器外部へ排出される(取り出される)。つまり、気体吸引装置のような特別な装置を用いることなく、気体g2を気密容器から取り出すことができる。請求項1の分離装置は、空気圧縮機を使用するものではないから、装置全体を小型化かつ軽量化が可能であり、特に、外力の作用を手動によるものとするなら、この装置は、無電源の場所でも使用可能である。
【0007】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項2の分離装置」という)では、請求項1の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁には、ジャッキ構造を介して外力が作用するように構成してある。「ジャッキ構造」とは、たとえば、ネジ、歯車、水圧、油圧等を利用することによって、たとえば、人力のような原動力を増大させることのできる構造のことをいう。
【0008】
請求項2の分離装置によれば、請求項1の分離装置の作用効果に加え、ジャッキ構造の働きによって原動力が増大され、増大によって隔壁の移動及び/又は変形させる操作を楽に(又は、小さな力で)行うことができる。すなわち、同じ大きさの外力を作用させるのであれば、ジャッキ構造を用いることにより原動力をより小さなものとすることができるし、同じ大きさの原動力を用いるのであれば、より大きな外力を作用させることができる。
【0009】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項3の分離装置」という)では、請求項1又は2の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器内部と外部とを連通させるときの全圧P2を可変設定可能に構成してある。
【0010】
請求項3の分離装置によれば、請求項1又は2の分離装置の作用効果に加え、気体取出弁の設定を変化させることによって、気体分離膜に負担させる圧力(設定圧力)を異ならせることができる。つまり、設定圧力を高くすればそれだけ気体分離膜に負担させる圧力が高まるので、気体分離効率をよくする(気密容器に残った気体の濃度を高める)ことができる。すなわち、気体分離装置の、たとえば、使用用途、分離する気体の種類や量、使用環境の違いに合わせた圧力設定を可能にする。
【0011】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項5の分離装置」という)では、請求項1乃至3何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気体分離膜が、通気性補強膜により補強してある。
【0012】
請求項4の分離装置によれば、請求項1乃至3何れかの分離装置の作用効果に加え、通気性補強膜によって気体分離膜が補強される。すなわち、気体分離膜を透過する量(気体透過量)は、一般的に気体分離膜の厚みに反比例するから気体透過量を増やす一つの方法として気体分離膜を薄くする方法がある。気体分離膜を構成する素材自体の強度にもよるが、薄くなれば薄くなるほど気体分離膜の強度は低下する。そこで、薄く形成した気体分離膜は、強度的に見て単独では隔壁を構成不能であっても、通気性補強膜によって補強すれば構成可能とすることができる。
【0013】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項5の分離装置」という)では、請求項1乃至4何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、移動及び/又は変形した前記隔壁が、外力の作用を取り除くことにより移動位置及び/又は変形状態から復帰可能に構成してある。復帰方法は、隔壁自体が有する復帰力に基づく自力復帰、復帰方向に作用する外力に基づく他力復帰、さらに、両者混在を含む。
【0014】
請求項5の分離装置によれば、請求項1乃至4何れかの分離装置の作用効果に加え、移動及び/又は変形させた隔壁を復帰可能とすることによって、一旦終了した気体分離作業を、再度行うことが可能になる。つまり、隔壁の復帰した気密容器は、これに気体を充填すれば再度の気体分離が可能になる。復帰には、完全に移動及び/又は変形前の状態に戻る完全復帰と、移動及び/又は変形前の状態にまでには戻らなくても再利用可能な状態に至る部分復帰と、がある。
【0015】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項6の分離装置」という)では、請求項5の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁には、移動及び/又は変形した前記隔壁が復帰する際に開放して当該気密容器外部にある気体を当該気密容器内部に導入するための逆止弁を設けてある。気密容器外部にある気体は、たとえば、気密容器が大気中にあるならその大気のことをいい、気密容器が特定の雰囲気の中にあるならその雰囲気を構成する気体及び/又は蒸気のことをいう。さらに、気密容器外部から逆止弁に連結された気体供給源から供給される気体も、上記した気密容器外部にある気体に該当する。たとえば、早熟果物を入れた気密容器(空気が入っている)内から酸素を分離排出することにより気密容器内部を窒素雰囲気又は窒素富化雰囲気にして果物の劣化を防ぎつつ、出荷前や食べる前にエチレン気体(エチレンガス)を逆止弁経由で注入して果物の熟成を早めさせるような使い方ができる。
【0016】
請求項6の分離装置によれば、請求項5の分離装置の作用効果に加え、隔壁が復帰する際に逆止弁が開いて容器外部にある気体を気密容器内部に他動的及び/又は自動的に導入する。他動的な導入とは意図的に気体を導入することをいい、自動的な導入とは隔壁復帰に伴い他力を必要とせずに気体を導入することをいう。自動的導入とした場合は気密容器内部に容器外部にある気体を充填する作業を省くことができる。外気充填の作業を要しないため、分離装置を繰り返して使用する際に特に便利である。
【0017】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項7の分離装置」という)では、請求項5又は6の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁を自動復帰させるための復帰部材を設けてある。復帰部材は、これを、たとえば、コイルバネ、板バネ、エラストマ−材等が該当する。隔壁自体が弾性変形可能な部材により構成してある場合は、この部材自体が復帰部材の機能を兼ねることになる。
【0018】
請求項7の分離装置によれば、請求項5又は6の分離装置の作用効果に加え、一旦、移動及び/又は変形した隔壁が復帰部材の働きによって元の位置及び/又は状態に自動復帰する。隔壁自体がある程度の自動復帰能力を有する場合は、復帰部材による復帰作用は補助的に作用する。隔壁が自動復帰することにより、分離装置を繰り返して、特に、連続して使用する場合にたいへん便利である。
【0019】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項8の分離装置」という)では、請求項5乃至7何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁が、中空部を有する有底筒状の固定隔壁と、当該固定隔壁の中空部内で当該固定隔壁内周面に対して当該中空部長さ方向に気密状態を保ちながら往復摺動可能な可動隔壁と、を含めて構成してある。固定隔壁をシリンダーに例えれば、可動隔壁はシリンダー内を往復するピストンに該当する。
【0020】
請求項8の分離装置によれば、請求項5乃至7何れかの分離装置、すなわち、隔壁が復帰可能な分離装置において、固定隔壁に対して可動隔壁が往復摺動することによって気密容器の内部容積の減少と復帰との繰り返しを可能とする。可動隔壁の往復摺動は、気密容器の気密状態を害さない。したがって、気密容器の内部容積の減少と復帰は、気密容器内部の増圧と減圧を生じさせる。
【0021】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項9の分離装置」という)では、請求項5乃至7何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁の少なくとも一部が、復帰可能に変形する弾性材により構成してある。
【0022】
請求項9の分離装置によれば、請求項5乃至7何れかの分離装置の作用効果に加え、隔壁の一部が変形後に弾性復帰する。隔壁の弾性復帰力だけで変形前の状態に復帰可能であれば、復帰部材を設ける必要は必ずしもないが、たとえば、弾性復帰力だけでは復帰不能であったり復帰可能ではあるが復帰時間を早めたりすることを求める場合は復帰部材を設けることができる。
【0023】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項10の分離装置」という)では、請求項5又は6の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁の面積方向全部が、通気性があり復帰可能に変形する弾性補強膜と、当該弾性補強膜の内壁に貼り付けた気体分離膜と、から構成してある。
【0024】
請求項10の分離装置によれば、請求項5又は6の分離装置の作用効果に加え、隔壁全体が気体分離膜で構成される。すなわち、隔壁全体が気体分離膜で構成されることにより、気体分離膜の表面積が可及的に大きくなる。表面積が大きくなることによって、大きくなった文、気体分離効率をよくすることができる。一般的に気体分離膜は、その分離効率を高めるために薄く作られ、それ自体が単独で弾性復帰するために充分な弾性力を備えていないから、その弾性力を弾性補強膜により補助させれば、薄い、しかも、表面積の広い気体分離膜を採用することができる。薄くて表面積の広い気体分離膜は、効率のよい気体分離を実現する。
【0025】
(請求項11記載の発明の特徴)
請求項11記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項11の分離装置」という)では、請求項5乃至7何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記隔壁が、伸縮自在で筒状の蛇腹隔壁と、当該蛇腹隔壁の上端と下端とを気密閉鎖する一対の対向隔壁と、を含めて構成してある。
【0026】
請求項11の分離装置によれば、請求項5乃至7何れかの分離装置の作用効果に加え、気密容器の内部容積の減少及び復帰が蛇腹隔壁の縮みと伸びとによって実現する。蛇腹隔壁は、これを合成樹脂製とすれば、その製造を簡単に行うことができる。
【0027】
(請求項12記載の発明の特徴)
請求項12記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項12の分離装置」という)では、請求項11の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記蛇腹隔壁が、通気性があり復帰可能に変形する弾性補強膜と、当該弾性補強膜の内壁に貼り付けた気体分離膜と、を含めて構成してある。
【0028】
請求項12の分離装置によれば、請求項11の分離装置の作用効果に加え、気体の分離排出を、蛇腹隔壁全体から行うことができる。蛇腹構造は往復折り返し構造となっているから、場所を取らない割には、その表面積が大きい。したがって、蛇腹隔壁を気体分離膜(弾性補強膜)によって構成すれば、気体分離膜を、薄く、しかも、表面積を広くすることができる。薄くて表面積の広い気体分離膜は、効率のよい気体分離を実現する。
【0029】
(請求項13記載の発明の特徴)
請求項13記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項13の分離装置」という)では、請求項1乃至12何れかの分離装置の基本的構成を備えた上で、前記気体Gが大気であり、前記気体g1が酸素である。
【0030】
請求項13の分離装置によれば、請求項1乃至12何れかの分離装置の作用効果によって大気から、少なくとも酸素を分離排出することができる。大気に含まれる窒素及び/又は大気に含まれるその他の気体も、酸素と併せて分離排出される場合もあり得るが、窒素は酸素に比べて透過速度が遅いから気密容器内には大気よりも窒素又は窒素富化気体が残る。窒素又は窒素富化気体は、たとえば、早熟果物を入れた気密容器(空気が入っている)内から酸素を分離排出することにより気密容器内部を窒素雰囲気又は窒素富化雰囲気にして果物の劣化を防ぐために使用することができる。窒素又は窒素富化気体が、果物の劣化防止のために有効であることは既に述べた。果物だけでなく、たとえば、飲料ポットのような気密容器に入れたコーヒーや紅茶等の飲料や、様々な形態の気密容器に入れた各種液体又は流体(たとえば、薬品や化粧品)などの劣化を有効防止するために、請求項13の分離装置により分離した窒素又は窒素富化気体を用いることもできる。これに加え、たとえば、指輪のような貴金属、写真その他の印刷物のように、大気に触れさせたままにしておくと劣化の恐れがあるものも、上記同様に窒素又は窒素雰囲気の気密容器内に保存しておけば、そのような劣化の有効防止を期待することができる。
【0031】
(請求項14記載の発明の特徴)
請求項14記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項14の分離装置」という)は、請求項1乃至12何れかの分離装置の基本的構成を備えた上で、前記気体Gが大気であり、前記気体g1が蒸気である。
【0032】
請求項14の分離装置によれば、請求項1乃至12何れかの分離装置の作用効果によって大気から、少なくとも蒸気を分離排出することができる。大気に含まれる窒素及び/又は大気に含まれるその他の気体も、蒸気と併せて分離排出される場合もあり得る。
【0033】
(請求項15記載の発明の特徴)
請求項15記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項15の分離装置」という)では、請求項1乃至14何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器には、前記気密容器が排出する気体g2を内部に受入可能な副気密容器を接続してある。副気密容器は、その大きさや形状等まで気密容器のそれらと同じである必要は必ずしもない。副気密容器の数は少なくとも1個あればよいが、副気密容器に、さらに、1個又は2個以上の副気密容器を直列接続することもできる。副気密容器の構造は、原理的・機能的に気密容器と略同じ構造を備えている。すなわち、当該副気密容器が、当該副気密容器の内部と外部とを隔離する隔壁と、当該隔壁に設けられた気体取出弁と、当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してある。ここで、当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、当該気体分離膜が、当該気密容器内部の全圧P´が容積減少により全圧P´1(P´<P´1)以上となったときに容器内部に密封されていた気体g2から当該気体G2に含まれていた気体g´1の少なくとも一部を当該気密容器外部に分離排出可能に構成してある。さらに、当該気体取出弁が、当該気密容器内部のさらなる容積減少により当該気密容器内部の全圧がP´2(P´2>P´1)となったときに当該気密容器内部と外部とを連通して当該気密容器内部に残る気体g´2を外部に排出可能に構成してある。
【0034】
請求項15の分離装置によれば、請求項1乃至14何れかの分離装置の作用効果に加え、気体の段階的(波状的)分離が可能になる。気体の段階的分離とは、ある気体から同じ種類の気体を段階的に分離することと、ある気体から異なる種類の気体を段階的に分離することの双方のことをいう。たとえば、大気から酸素を分離し残った気体からさらに酸素を分離することが同じ種類の気体の段階的分離に該当し、大気から酸素を分離し残った気体から二酸化炭素を分離することが異なる種類の気体の段階的分離に該当する。同じ種類の気体分離を段階的に行うことにより、残余気体の中の分離対象となる気体の量を可及的に少なくすることができる。先の例でいえば、酸素濃度の極めて低い大気(気体)を得ることができる。また、異なる種類の気体分離を段階的に行うことにより、1回の分離ではできなかった複数種の気体分離を行うことができる。同じく先の例でいえば、酸素と二酸化炭素の少ない大気(気体)を得ることができる。何れの場合も、残余気体は副気密容器の気体取出弁を介して取り出すことができる。すなわち、気密容器の気体取出弁から排出された気体(たとえば、酸素が分離され残った窒素富化気体)は、副気密容器内に充填され、気密容器における気体分離作用と同じ作用によって上記例における窒素富化気体から酸素気体がさらに分離され、副気密容器による酸素分離前に比べてさらに濃度の高い窒素富化気体が気体取出弁を介して取り出すことができる。つまり、気密容器と直列に副気密容器(必要に応じて、さらに、1又は2以上の別の副気密容器)を接続して気体の分離排出を行うことによって最終的に取り出される気体濃度を、同一又は異なる種類の気体を段階的に分離することによって高めることができる。純度の極めて高い気体を必要とするときに、請求項15の分離装置によれば、そのような要求に充分に応え得る。
【0035】
(請求項16記載の発明の特徴)
請求項16記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項16の分離装置」という)では、請求項13の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、すなわち、気体取出弁から得られる気体が窒素富化気体であることを前提として、前記気体取出弁が、ノズルを取付可能又はノズル構造と一体に構成してある。
【0036】
請求項16の分離装置によれば、請求項13の分離装置の作用効果に加え、気体の被供給体に気密容器から分離排出した気体をノズル又はノズル構造を介して供給することができる。ノズル又はノズル構造は、これらを、窒素富化気体を必要とする供給先の供給を受けるための構造に対応させた構造に構成すれば、窒素富化気体の円滑な供給が可能となる。窒素富化気体は、いわゆる不活性ガスとして固体や液体等の劣化を防止する作用があるので、その用途は極めて広い。
【0037】
(請求項17記載の発明の特徴)
請求項17記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項17の分離装置」という)では、請求項16の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記ノズル又はノズル構造が、球技用ボール又はゴムタイヤの弁に差し込んで気体注入可能に構成してある。
【0038】
請求項17の分離装置によれば、窒素富化気体を球技用ボールや自転車タイヤに直接供給することができる。球技用ボールには、たとえば、テニスボール、サッカーボール、バスケットボール、バレーボール等があるが、これらは、ゴムでできているため単に空気を入れるだけでは時間の経過とともに酸素気体が表面を透過してしまい空気圧が不足しがちである。ゴムを透過しづらい窒素リッチ気体を空気の代わりに充填できれば、時間経過に伴う圧力不足を大幅に改善することができる。ゴムタイヤの代表的なものとして、自転車やバイクのタイヤや、車両用タイヤなどがある。ゴムタイヤに窒素富化液体を注入するとエアー抜けが少ないことは、背景技術の欄で既に述べた通りである。たとえば、自転車用タイヤに使用されるエアーポンプ(空気入れ)に、請求項17の分離装置と同じ機能を持たせれば、コンプレッサー等の大型の装置を持たずとも、業務用・一般家庭用として窒素富化気体を手軽に自転車用タイヤに注入することができるので、たいへん便利である。球技用ボール又はゴムタイヤ以外のものに窒素富化気体を入れる装置であっても、客観的に見て球技用ボール又はゴムタイヤに使用可能なものは、請求項17の分離装置に該当する。
【0039】
(請求項18記載の発明の特徴)
請求項18記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項17の分離装置」という)では、請求項1乃至12の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器内部から前記気体分離膜を介して分離排出される気体g1を貯留可能な分離気体用気密容器と、当該分離気体用気密容器に設けられた分離気体取出弁と、を含めて構成してある。
【0040】
請求項18の分離装置によれば、請求項1乃至12何れかの分離装置の作用効果に加え、気密容器から分離排出する気体g1を、貯留しておき必要に応じて分離気体取出弁から取り出すことができる。気密容器内にある気体g2ともに、又は、これに代え、気体g2の有効利用が可能になる。
【0041】
(請求項19記載の発明の特徴)
請求項19記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項19の分離装置」という)では、請求項18の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記分離気体用気密容器が、前記気体分離膜を隔てて前記気密容器に併設してあり、前記気体分離膜の移動及び/又は変形による前記気密容器の内部容積の増加又は減少に応じて当該分離気体用気密容器の内部容積が減少又は増加可能に構成してある。
【0042】
請求項19の分離装置によれば、請求項18の分離装置の作用効果に加え、気密容器と分離気体用気密容器との間で気体分離膜を移動させることにより、両者の内部容積が相対的に増減する。すなわち、一方が増加すれば他方が減少し、一方が減少すれば他方が増加する。気体分離膜を挟んで一方側の全圧が上昇し、これに伴い他方側の全圧が減少することになるので、気体分離膜を挟んだ両側の圧力差は、何れか一方の増加又は減少のみの場合の圧力差に比べて大きなものとなる。したがって、効率のよい気体分離を可能とし、同時に、気体分離後の残余気体g2と分離した気体g1の両者の利用を可能とする。
【0043】
(請求項20記載の発明の特徴)
請求項20記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項20の分離装置」という)では、請求項19の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、具体的構成例として、次のように構成してある。すなわち、前記気密容器及び前記分離気体用気密容器が、気密筒体の内部において可動隔壁によって相互隔離可能に構成してあり、当該可動隔壁が、少なくとも一部を気体分離膜により構成してあり、かつ、当該気密筒体の内周面に対して当該気密筒体の長さ方向に往復摺動可能に構成してある。
【0044】
請求項20の分離装置によれば、可動隔壁を取り去ったと考えれば気密容器内部と分離気体用気密容器内部とが気密筒体の中に同居している状態になる。次に、可動隔壁を気密筒体の中に戻したとして考えると、気密筒体の内部が相互隔離され一方の空間が気密容器内部となり他方の空間が分離気体用気密容器内部となる。ここで、可動隔壁を気密筒体の長さ方向に摺動させると、一方の空間(たとえば、気密容器内部)の容積が減少し、その分、他方の空間(上記例における分離気体用気密容器内部)の容積が増加する。可動隔壁を逆方向に摺動させた場合は、容積の増減は上記の場合と逆になる。容積の増減により可動隔壁(気体分離膜)を挟んだ両側に圧力差が生じて気体分離が行われる。
【0045】
(請求項21記載の発明の特徴)
請求項21記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項21の分離装置」という)では、請求項20の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記分離気体取出弁が、前記可動隔壁の復帰による当該分離気体用気密容器内部の容積減少により前記分離気体用気密容器内に分離排出されていた気体g1の全圧が所定圧力を超えたときに当該分離気体用気密容器内部と外部とを連通して当該分離気体用気密容器内部に残る気体g1を外部に排出可能に構成してある。
【0046】
請求項21の分離装置によれば、請求項20の分離装置の作用効果に加え、可動隔壁の気密容器側への移動によって気体g1を分離した後、さらに、必要に応じて、可動隔壁の更なる移動によって気密容器内に残る気体g2を気体取出弁から排出させた後、可動隔壁の復帰によって分離気体用気密容器内に貯留された気体g1を分離気体取出弁を開放させ、これにより、気体g1を分離気体用気密容器から取り出すことができる。すなわち、可動隔壁の往復移動(摺動)によって、気体吸い取り装置のような特別な装置を用いることなく、気体g1を分離気体用気密容器内から取り出すことができる。
【0047】
(請求項22記載の発明の特徴)
請求項22記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項22の分離装置」という)では、請求項20又は21の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記分離気体取出弁が、ノズルを取付可能又はノズル構造と一体に構成してある。
【0048】
請求項22の分離装置によれば、請求項20又は21の分離装置の作用効果に加え、気体の被供給体に気密容器から分離排出した気体をノズル又はノズル構造を介して供給することができる。
【0049】
(請求項23記載の発明の特徴)
請求項23記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項23の分離装置」という)では、請求項18乃至22何れかの分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気体Gが大気であり、前記気体g1が酸素である。
【0050】
請求項23の分離装置によれば、請求項18乃至22何れかの分離装置の作用効果によって大気から、少なくとも酸素を分離気体取出弁を介して取り出すことができる。大気に含まれる窒素及び/又は大気に含まれるその他の気体も、酸素と併せて取り出される場合もあり得るが、窒素は酸素に比べて透過速度が遅いから気密容器内には大気よりも窒素富化な気体が残る。
【0051】
(請求項24記載の発明の特徴)
請求項24記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項24の分離装置」という)では、請求項23の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記ノズル又はノズル構造が、前記気体g1を人体に供給するための気体供給具に接続可能に構成してある。「気体供給具」とは、人体の口及び/又は鼻へ吸引可能な状態で気体を供給可能な器具のことをいう。たとえば、口と鼻を覆うマスク形状のものや、口に咥えることできるもの、さらに、鼻の穴に差込可能な管形状のものが、気体供給具に該当する。
【0052】
請求項24の分離装置によれば、請求項23の分離装置の作用効果によって酸素(気体g1)又は酸素富化気体を、ノズル又はノズル構造経由の気体供給具を介して人体に供給することができる。疾患や傷害により酸素吸入を必要とする者、激しい運動した直後の者、高い山の上など空気の薄い場所にいる者等に、酸素又は酸素富化気体を供給することが可能になる。
【0053】
(請求項25記載の発明の特徴)
請求項25記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項25の分離装置」という)は、隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、
当該隔壁に設けられた気体取出弁と、当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してある。上記構成を前提として、当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少又は増加可能に構成してある。ここで、容積減少に伴う当該気密容器内部の増圧により当該気密容器内部にある気体に含まれる所定気体を当該気密容器外部に透過可能に、又は、容積増加に伴う当該気密容器内部の減圧により当該気密容器外部にある気体に含まれる所定気体を当該気体分離膜を介して当該気密容器内部に透過可能に、構成してあり、当該気体取出弁を介して当該気密容器内部の気体を取出可能に構成してある。
【0054】
請求項25の分離装置によれば、気密容器内部の容積減少に伴う全圧の増加により密封された気体から所定気体が気体分離膜を介して気密容器外へ分離排出され、これとは逆に容積増加に伴う全圧の減少により気密容器外にある気体から所定気体が気体分離膜を介して気密容器内に分離導入される。所定気体が分離導入されるときに、予め気密容器内を空(容積ゼロ)又は空に近い状態にしておけば、所定気体又は所定気体を富化した気体を気密容器内に貯留させ、これを気体取出弁を介して取り出すことが可能になる。気密容器の内部容積の増減は、隔壁の移動か変形により、又は、隔壁の移動及び変形の両者により実現する。請求項25の分離装置によれば、所定気体又は所定気体を富化した気体を分離排出するか、又は、分離導入するかを、その使用用途や使用環境等に合わせて選択することができる。
【0055】
(請求項26記載の発明の特徴)
請求項26記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項26の分離装置」という)は、隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、当該気体分離膜を外部又は内部から気密被覆可能な被覆部材と、を含めて構成してある。ここで、当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、容積減少に伴う当該気密容器内部の増圧により当該気密容器内部にある気体に含まれる所定気体を当該気密容器外部に透過可能に構成してある。さらに、当該被覆部材が、当該気密容器の内部又は外部から当該気体分離膜を被覆することにより当該気体分離膜に代わって気密容器内部と外部とを隔離可能に構成してある。
【0056】
請求項26の分離装置によれば、気密容器内部の容積減少に伴う全圧の増加により密封された気体から所定気体が気体分離膜を介して気密容器外へ分離排出される。これにより、気密容器内部は所定気体が除かれた雰囲気となる。所定気体が除かれる前の雰囲気が気密容器外部の雰囲気と同じであることを前提とすれば、所定気体が除かれた雰囲気は、これを気密容器外部の雰囲気と比べると、所定気体を除いた分だけ除かれる前の雰囲気(すなわち、外部の雰囲気と同じ)に比べて所定気体の濃度が低い。つまり、何らかの気体について、気密容器内部のほうが外部よりも濃度が高い状態が形成される。このままの状態を続けると、内外の濃度差により外部に含まれる所定気体が気体分離膜を透過して気密容器内部に侵入する恐れがある。たとえば、気密容器内外が大気雰囲気であるとして、気体分離膜の作用により気密容器外へ酸素を分離排出させると、気密容器内は窒素富化雰囲気となる。つまり、窒素富化雰囲気のほうが大気雰囲気よりも窒素濃度が高い。このままの状態を続ければ、大気中に含まれる窒素が気体分離膜を透過して気密容器内に進入してしまう。この侵入を抑制するのが、被覆部材の役割である。被覆部材は気体分離膜を被覆することにより気体分離膜に代わって気密容器内部と外部とを隔離するから、所定気体分離後に気体分離膜を被覆させるようにすれば、分離後における気体分離膜を介した気体の透過を有効抑制することができる。したがって、気密容器内への所定気体の侵入透過、さらに、気密容器外部の雰囲気や全圧等の条件にもよるが気密容器内の残存気体の排出透過が生じ得る状態にありその排出透過を望まないときのその排出透過を有効抑制することができる。
【0057】
(請求項27記載の発明の特徴)
請求項27記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項27の分離装置」という)は、請求項26の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器が、保存物を収納可能に構成してあり、前記隔壁が、当該収納した保存物の影響を受けずに移動及び/又は変形可能に構成してある。すなわち、保存物の影響を受けずに気密容器の内部容積を減少可能に構成してある。
【0058】
請求項27の分離装置によれば、請求項26の分離装置の作用効果に加え、所定気体の分離排出後の気密容器内部は所定気体を分離排出した残余気体雰囲気となるから、当該残余気体雰囲気の中に保存物を収納しておくことができる。たとえば、上記残余気体が窒素富化気体であるとするなら、液体や固体等の性状に関わらず酸化を嫌う保存物、たとえば、飲食物、貴金属、写真、印刷物等を収納しておけば、これら保存物の劣化を有効に防止することができる。
【0059】
(請求項28記載の発明の特徴)
請求項28記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項28の分離装置」という)は、請求項26又は27の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器内部にある気体が大気であり、前記所定気体が酸素であることを特徴とする。
【0060】
請求項28の分離装置によれば、請求項26又は27の分離装置の作用効果によって大気から、少なくとも酸素を分離排出することができる。大気に含まれる窒素及び/又は大気に含まれるその他の気体も、蒸気と併せて分離排出される場合もあり得る。
【0061】
(請求項29記載の発明の特徴)
請求項29記載の発明に係る気体分離装置(以下、適宜「請求項29の分離装置」という)は、請求項28の分離装置の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器に収納する保存物が食品(飲食物)であることを特徴とする。
【0062】
請求項29の分離装置によれば、請求項28の分離装置の作用効果によって保存物としての食品を窒素富化雰囲気の中で収納しておくことができる。食品には、たとえば、コーヒーや紅茶のような液体、顆粒状調味料のような固体、ゼリーのような流動体、さらに、これらの混合体がある。
【0063】
(請求項30記載の発明の特徴)
請求項30記載の発明に係る気体分離方法(以下、適宜「請求項30の分離方法」という)は、少なくとも一部が気体分離膜によって構成された気密容器を用意する工程と、当該気密容器内に密封した気体の容積を外力の作用により減少又は増加させて当該気密容器内部を増圧又は減圧させる工程と、当該気体分離膜を挟んだ当該気密容器内部と外部との圧力差により気体分離膜を介して所定気体を分離排出又は分離吸入する工程と、当該気密容器内にある気体を気体分離弁を介して取り出す工程と、を含めてなることを特徴とする。
【0064】
請求項30の分離方法によれば、気密容器内部の容積減少に伴う全圧の増加により密封された気体から所定気体が気体分離膜を介して気密容器外へ分離排出され、これとは逆に容積増加に伴う全圧の減少により気密容器外にある気体から所定気体が気体分離膜を介して気密容器内に分離導入される。所定気体が分離導入されるときに、予め気密容器内を略空(容積略ゼロ)又は略空に近い状態にしておけば、所定気体又は所定気体を富化した気体を気密容器内に貯留させ、これを気体取出弁を介して取り出すことが可能になる。請求項26の分離方法によれば、所定気体又は所定気体を富化した気体を分離排出するか、又は、分離導入するかを、その使用用途や使用環境等に合わせて選択することができる。請求項26の分離方法によれば、空気圧縮機を使用しないので当該分離方法を実施するための装置の小型化かつ軽量化が可能であり、かつ、時には無電源でも使用可能となる。
【0065】
(請求項31記載の発明の特徴)
請求項31記載の発明に係る気体分離方法(以下、適宜「請求項31の分離方法」という)では、請求項30の分離方法に用いる気体取出弁が、前記気密容器内部に密封した所定気体の分離排出又は分離吸入後の気体の容積をさらなる外力の作用により減少させることによって当該気密容器内部の全圧が所定圧力に達したときに開放可能に構成してある。
【0066】
請求項31の気体分離方法によれば、気密容器内に残った所定気体の分離排出又は分離吸入後の気体は、さらなる容積減少により全圧が所定圧力に達したときに気体取出弁から気密容器外部へ排出される(取り出される)。つまり、気体吸引装置のような特別な装置を用いることなく、気体g2を気密容器から取り出すことができる。
【0067】
(請求項32記載の発明の特徴)
請求項32記載の発明に係る気体分離方法(以下、適宜「請求項32の分離方法」という)では、請求項30又は31の分離方法の基本的構成を備えさせた上で、前記気密容器内に密封した気体が大気であり、前記所定気体が酸素であることを特徴とする。
【0068】
請求項32の分離方法によれば、請求項30又は31の分離方法により、大気から酸素を分離排出又は分離導入することができる。この結果、分離排出した後の気密容器内には窒素富化気体が、略空にしてあった気密容器内には酸素又は酸素富化気体が、それぞれ貯留される。各気体は、これを用途に応じて使い分けるとよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明に係る気体分離装置によれば、小型化かつ軽量化が可能であり、かつ、時には無電源でも使用可能である。また、本発明に係る気体分離方法によれば、実施のために使用する装置を小型化かつ軽量化可能であり、かつ、時には無電源でも使用可能である。したがって、気体分離装置の持ち運びが楽であり、また、小さなスペースがあれば設置可能であるから、分離した気体を必要とする各種器具、装置等に組み込み易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
ここで、本発明を実施するための最良の形態(以下、適宜「本実施形態」という)について説明する。本実施形態は、後述するように、第1乃至第6の変形例を含む。なお、本実施形態及び付随する各変形例の説明に当たって大気から酸素を分離することを前提としているが、大気以外の気体からそれに含まれる気体を分離する場合にも適用可能であることは言うまでもない。
【0071】
(気体分離装置の概略構造)
図1及び2を参照する。図1は、気体分離装置の平面図であり、図2は、図1に示す気体分離装置のA−A断面図である。気体分離装置1は、隔壁3によって容器外部2bと隔離された容器内部2aを備える気密容器2と、気体取出弁として機能するリリーフ弁11と、気密容器2の外部から内部に気体を導入するための逆止弁9と、隔壁3の一部を構成する気体分離膜13と、から概ね構成してある。隔壁3は、図2の上下方向に対向する一対の対向隔壁5,6と、対向隔壁5と対向隔壁6との間に配した蛇腹隔壁7と、により構成してある。対向隔壁5,6は、それぞれが、たとえば、金属又は硬質合成樹脂により構成した同じ大きさの平面視円形の板、すなわち、円盤である。
【0072】
蛇腹隔壁7は、薄い軟性合成樹脂フィルム又は金属箔(又は、これらを併用したもの)を内外方向互い違いに折り返して復帰可能に変形する円筒蛇腹状に形成したものであり、その折り返し部分の屈伸により軸心方向(長さ方向)に伸縮可能に構成してある。蛇腹隔壁7の一端は対向隔壁5の対向隔壁6に面する側の面(対向面)に、同じく他端は対向隔壁6の対向隔壁5に面する側の面(対向面)に、それぞれ密着させてある。蛇腹隔壁7の対向隔壁5,6への密着により、逆止弁9とリリーフ弁11が閉鎖されたときに気密容器2の容器内部2aが常圧時(使用していないとき)に気密状態となり容器外部2bから隔離される。蛇腹隔壁7の伸縮、すなわち、気密容器2の変形は、伸長又は収縮の方向に働く外力により主として行われ、本実施形態では、その外力として人力を予定している。すなわち、対向隔壁5,6の何れか一方又は双方を互いに他方の隔壁に対して近づく方向に手動押圧することにより蛇腹隔壁7が長さ方向に縮んで容器内部2aの容積を減少させ、逆に、遠のく方向に手動牽引することにより長さ方向に伸びて容器内部2aの容積を復帰させ得るように構成してある。気密容器2の変形のために人力を予定したのは、人力を外力とする限り、空気圧縮装置はもとより外力を得るために特別な装置を必要としないからである。つまり、気体分離装置1自体を簡素な構造とすることができること、無電源であっても使用可能に構成できること、が人力を予定した主な理由である。もっとも、気密容器2の変形のために電気エネルギーや位置エネルギー等を用いることを妨げる趣旨ではなく、気体分離装置1の用途、分離対象となる気体の種類、また、対象気体の多寡等の関係から必要であればそのようなエネルギーを用いることができる。
【0073】
対向隔壁5には、単数又は複数(本実施形態では4個)の通気孔5a,・・と、1個の導気孔5hと、をそれぞれ厚み方向に貫通形成してある。各通気孔5aは、何れも円形に形成してあり、図1から明らかなように、平面視したときに円周方向に等間隔となるように配してある。各通気孔5aは、これを円形としたのは、対向隔壁5が円形であることに合わせたデザイン上の理由であって、機能的に本件発明の目的を達成し得る範囲であれば、その形状や個数、さらに、設ける位置等に何ら制限はない。各通気孔5aの常圧時における気密閉鎖は、対向隔壁5の対向面側に貼り付けた気体分離膜13に行わせてある。すなわち、気体分離膜13は、気密容器2の容器外部2bと容器内部2aとを隔離する隔壁3の一部を構成している。導気孔5hは、対向隔壁5の略中央に形成した貫通孔である。導気孔5hを気密閉鎖する役目は、逆止弁9が担っている。逆止弁9の構造は、後述する。リリーフ弁11は、弁本体11aと弁本体11aの外周に回転自在に設けられた調整リング11bとを備え、気密容器2内部の全圧が所定圧力を超えたときに開放して気密容器2の内部と外部とを連通する機能を有している。リリーフ弁11は、調整リング11bを回転させることにより気密容器2の内部と外部とを連通させるときの全圧P2を可変設定可能に構成してある。全圧が所定圧力を下回ると、リリーフ弁11は閉鎖して気密容器2の内部と外部との連通を遮断する。リリーフ弁11は、気密容器2内部への外気流入を阻止する逆止機能を兼ね備えている。対向隔壁5,6及びこれに伴う蛇腹隔壁7の形状は何れも平面視円形としたが、気体分離装置1の使用用途や気体分離装置1の設置環境等に合わせて適宜変更可能である。なお、対向隔壁5に設けた気体分離膜13,・・は、対向隔壁5の代わりに対向隔壁6に設けてもよいし、対向隔壁6にも併せて設けてもよい。同じ大きさ同じ個数の気体分離膜13であれば、対向隔壁5と対向隔壁6の双方に設けたほうが気体分離膜13全体の面積を広くすることができるので、効率のよい気体分離の観点から有利である。
【0074】
(気体分離膜の構造)
気体分離膜13は、前述したように、対向隔壁5の各通気孔5aを常圧時において気密閉鎖可能とするための膜(フィルム、シート)である。気体分離膜13は、圧力を受けたときに圧力の高い側にある気体に含まれる所定気体を圧力の低い側に透過させるという気体分離機能を有している。この点も、既に述べた。気体分離膜13を構成する素材は、分離前の気体(たとえば、大気、特定の混合気)や、その分離前の気体から分離しようとする気体の種類(たとえば、酸素、水素、二酸化炭素、蒸気)、さらには、分離しようとする気体量、これらに加え、使用目的や使用環境等を総合的に考慮した上で選択する。分離効率をよくするためには、同じ種類の気体分離膜を使用するのであれば、その気体分離膜の面積をできるだけ広く、同じく厚みをできるだけ薄くすることが必要である。ただ、広く、かつ、薄くすることにより、一般的に気体分離膜の強度を保ちづらくなる。このため、通気を妨げないような補強部材により気体分離膜を補強しておくことが望まれる。本実施形態における気体分離膜13は、大気から酸素(酸素富化気体)を分離して窒素(窒素富化気体)を取り出すことを目的として、シリコーンゴム(ジメチルポリシロキサン加硫弾性体)によって構成してある。シリコーンゴムを採用したのは、シリコーンゴムが比較的入手しやすく安価であること、また、シリコーンゴムの耐薬品性、耐温度性、耐蒸気性、さらに、人体に対する安全性等は既に立証されており食品に対してさえも安心して使用できること、がその主たる理由である。大気から酸素を分離する目的であるなら、シリコーンゴムの代わりに、又は、シリコーンゴムとともに、ポリ;poly(1−トリメチルシリルー1−プロピン;1−trimethylsilyl−1−propyne)やアモルファステフロン(商標;DuPont社製)等を充分に使用可能である。さらに、これら例示した素材は、大気から水素及び/又は二酸化炭素を分離する目的のためにも好適に用いることができる。また、気体分離膜13は、いわゆる平型に形成してあるが、気密容器の形態が許すのであれば中空糸型やスパイラル型等に形成することを妨げない。
【0075】
(逆止弁の構造)
図2に示すように、逆止弁9は、対向隔壁5略中央の導気孔5hを密着面を介して気密閉鎖可能な形状(図示していないが、本実施形態では円形)弁体9aと、弁体9aの密着面とは反対側の面(保持面)から僅かに突き出す環状支持部9bと、環状支持部9bにその一端を収納された押圧バネ9cと、弁体9aと押圧バネ9cを収納してこれらを対向隔壁5に取り付けるための有底円筒体9dと、有底円筒体9dの底部9eの環状支持部9b対向面から僅かに突き出す環状支持部9fと、から概ね構成してある。環状支持部9fは、押圧バネ9cの他端を収納可能に構成してあり、環状支持部9bとともに押圧バネ9cを支持し、押圧バネ9cが弁体9aを対向隔壁5に充分な押し付け力を作用させられるように構成してある(図2(b)拡大図参照)。底部9eには、厚み方向に複数の貫通する貫通孔9h,・・を設けてある。各貫通孔9hは、有底円筒体9dの内部と気密容器2の容器内部2aとを、ひいては、容器外部2bと容器内部2aとを、連通させるためのものである。
【0076】
逆止弁9は、気密容器2の容器内部2aの全圧が容器外部2bの全圧に対して負圧になり容器外部2bの全圧(全圧力)が押圧バネ9cの押圧力に勝ったときに押圧バネ9cが縮み、これに伴い、弁体9aが対向隔壁5に対して後退するようになっている。弁体9aの後退は、導気孔5hを開放し容器外部2bにある気体が開放した導気孔5hから有底円筒体9dの貫通孔9h,・・を介して容器内部2aへの流入を許容する。外気流入は、容器外部2bの全圧が容器内部2aの全圧に勝っている間継続され、内外全圧が等しくなったとき、又は、容器外部2bの全圧(全圧力)が押圧バネ9cの押圧力に負けたとき遮断される。外気の遮断は、押圧バネ9cが伸長して弁体9aを対向隔壁5に押し付けて導気孔5hを閉鎖することにより行われる。導気孔5hの閉鎖により、気密容器2は元の状態に復帰する。
【0077】
(気密容器を用いた気体分離方法)
図2に基づいて、気体分離装置1を用いて実施する気体分離方法について説明する。図2(a)に示すのは、気体分離方法を実施するために用意した気体分離装置1である(第1工程)。気体分離装置1の気密容器2を構成する対向隔壁5,6は、一方の手で対向隔壁5を、他方の手で対向隔壁6を、それぞれ持って両者を互いに遠のく方向に移動させる。この移動により、蛇腹隔壁7が伸長して気密容器2の容器内部2aの容積が増加する。蛇腹隔壁7自身が、それ自身の弾性力等により自動伸長可能に構成してある場合は、その弾性力により、又は、その弾力性に補助されて容積が増加する。容積増加によって内部全圧Pが容器外部2bの全圧(すなわち、大気圧)に対して負圧(大気圧のほうが圧力が高い)になる。この内外圧力差により、逆止弁9が開放して外気、すなわち、大気が気密容器2の容器内部2aに導入される。大気の導入により、容器内部2aの全圧Pと容器外部2bの全圧とが均衡すると逆止弁9が閉鎖して大気導入を遮断する。この時点で、逆止弁9とともにリリーフ弁11も閉鎖しているから、気密容器2の容器内部2aの大気は密封状態にある。対向隔壁5,6同士の遠のく方向への移動が既に行われ容器内部2aに大気が既に導入されている場合は、上記した移動作業は省略してよい。
【0078】
次は、用意した気密容器2の容器内部2aの全圧Pを、増圧して全圧P1の状態を形成する(第2工程)。具体的には、図2(b)に示すように対向隔壁5を押圧して対向隔壁6に近づける方向に移動させ併せて蛇腹隔壁7を縮み変形させることによって、容器内部2aの容積を減少させる。容器内部2aは気密状態にあるから密封された大気の全圧Pが増圧して全圧P1になる。全圧P1は、リリーフ弁11を開放させるには十分な圧力ではない。全圧P1になったところで容器内部2a内にある大気に含まれる酸素g1が気体分離膜13を透過して容器外部2bに分離排出される。酸素g1の透過は、容器内部2aの全圧がP1に達したときに突然生じるわけではなく気密容器2の内外に大きさを問わず圧力差が生じたときから始まる。すなわち、全圧P1は、常圧時の全圧Pよりも高い圧力であって、リリーフ弁11を開放させる圧力P2に満たない圧力のことをいう(P<P1<P2)。容器外部2bへ酸素g1が分離排出されることによって、気密容器2の容器内部2aには窒素富化気体g2が残る。一般的に窒素は大気の体積の略80%を占めているので、窒素富化気体g2はより高い窒素の占有率を占めることになる。なお、容器内部2aの容積減少は、上記した対向隔壁5の押圧とともに対向隔壁6を押圧することにより、また、対向隔壁5の押圧の代わりに対向隔壁6を押圧することにより、行うようにしてもよい。この点、後述するリリーフ弁11を開放するための押圧についても同じである。
【0079】
次に、気密容器2の容器内部2aに残った窒素富化気体g2をリリーフ弁11から取り出す(第3工程)。具体的には、図2(c)に示すように、対向隔壁5をさらに押圧して、容器内部2aの容積を減少させることによって全圧P1をさらに増圧して全圧P2の状態を形成する。全圧P2は、リリーフ弁11を開放可能な圧力である。容器内部2aにある窒素富化気体g2が増圧により全圧P2に至るとリリーフ弁11が開放して容器内部2aと容器外部2bとが連通する。連通した状態におけるさらなる押圧は、窒素富化気体g2を容器外部2bに押し出す。ここで、リリーフ弁11に供給先となる密封容器(図示を省略)等を接続しておけば、窒素富化気体g2を上記密封容器等内へ取り出すことができる。リリーフ弁11は、対向隔壁5が押圧され続けている間、すなわち、容器内部2aの全圧がP2を下回らない間は開放したままであり、下回ったときに閉鎖して容器内部2aと容器外部2bとの間の連通を遮断する。対向隔壁5の押圧を一時中断したことによって全圧がP2を下回り、その結果閉鎖したリリーフ弁11であっても、押圧を再開して全圧をP2に至らせれば再開放して窒素富化気体g2の再取り出しを可能とする。
【0080】
以上述べた3工程によって窒素富化気体g2の取り出しは完了するが、取り出しを完了した気密容器2は、これを再利用可能とするために、元の状態に戻しておくことが好ましい。すなわち、窒素富化気体g2の取り出しを完了したときの対向隔壁5,6は押圧によって互いに近づけられた状態にあるが、ここで、一方の手と他方の手を使って対向隔壁5,6を互いに遠のく方向に移動させる。対向隔壁5,6の移動に伴い蛇腹隔壁7も伸長して気密容器2の容器内部2aの容積が増加する。すなわち、容器内部2aの全圧が容器外部2bの全圧に対して負圧となる。この結果、図2(d)に示すように逆止弁9が開放して導気孔5h経由で流れこんできた外気(大気)を容器内部2aに導入させる。逆止弁9は、容器内部2aの全圧と容器外部2bの全圧との差に対して押圧バネ9cのバネ力が勝ったときに閉鎖する。このとき、容器内部2aには大気が充満しており、対向隔壁5を押圧することにより、上述した手順で酸素g1を分離して窒素富化気体g2を取り出すことのできる状態にある。前記した窒素富化気体g2を取り出すための3工程と、上記した再利用のための復帰工程と、を併せれば、気体分離装置1を繰り返して使用可能となるので極めて経済的であり、かつ、便利である。
【0081】
(気体分離装置の第1変形例)
図3乃至5を参照しながら、第1変形例に係る気体分離装置1−1について説明する。図3は、気体分離装置1−1の平面図であり、図4及び5は、図3に示す気体分離装置1−1のB−B断面図である。気体分離装置1−1が、前述した気体分離装置1と異なるのは、主として後者では対向隔壁に設けた気体分離膜を前者では蛇腹隔壁に設けた点である。ここで、気体分離装置1−1を説明するにあたって、気体分離装置1と共通する部材については後者で使用した符号と同じ符号を使用するにとめ、共通する部材についての説明は省略する(後述する他の気体分離装置についても適宜同じとする)。
【0082】
気体分離装置1−1は、隔壁3−1によって容器外部2b―1と隔離された容器内部2a−1を備える気密容器2−1と、気体取出弁として機能するリリーフ弁11と、気密容器2−1の外部から内部に気体を導入するための逆止弁9と、から概ね構成してある。隔壁3−1は、図2の上下方向に対向する一対の対向隔壁5−1,6−1と、対向隔壁5−1と対向隔壁6−1との間に配した蛇腹隔壁7−1と、により構成してある。対向隔壁5−1,6−1は、それぞれが、たとえば、金属又は硬質合成樹脂により構成した同じ大きさの平面視円形の板、すなわち、円盤である。符号8は、対向隔壁5−1と対向隔壁6−1とを互いに遠のかせる方向に押圧する復帰バネを示している。復帰バネ8は、対向隔壁5−1が手動押圧される(外力が作用する)と縮んで押圧が解除される(外力が取り除かれる)と伸長して対向隔壁5−1を元の位置に自動復帰させるための復帰部材として機能する。
【0083】
蛇腹隔壁7−1は、薄いフィルム状の通気性補強膜7a−1と、通気性補強膜7a−1の容器内側に貼り付けた薄膜状の気体分離膜7b−1と、により構成してある。通気性補強膜7a―1は、たとえば、ポリスルホン(polysulfon)製やポリイミド(polyimide)製の多孔質弾性樹脂フィルム(弾性補強膜)により構成してあり、シリコーンゴム製の気体分離膜7b−1に対する通気性を確保しつつ気体分離膜7b−1を補強する機能を担っている。蛇腹隔壁7−1は、通気性補強膜7a−1と気体分離膜7b−1とを貼り合わせたシート状のものを内外方向互い違いに折り返して円筒蛇腹状に形成したものであり、その折り返し部分の屈伸により軸心方向(長さ方向)に伸縮可能に構成してある。蛇腹隔壁7−1の一端は対向隔壁5−1の対向隔壁6−1に面する側の面(対向面)に、同じく他端は対向隔壁6−1の対向隔壁5−1に面する側の面(対向面)に、それぞれ密着させてある。蛇腹隔壁7−1の対向隔壁5−1,6−1への密着により、逆止弁9とリリーフ弁11が閉鎖されたときに気密容器2−1の内部が常圧時(使用していないとき)に気密状態となり外部から隔離される。対向隔壁5−1,6−1の何れか一方又は双方を互いに他方の隔壁に対して近づく方向に手動押圧することにより蛇腹隔壁7−1が長さ方向に縮んで気密容器2−1内部の容積を減少させ、手動押圧を停止することにより主として復帰バネ8のバネ力が作用して押圧された隔壁3−1を元の位置に復帰させる。隔壁3−1の復帰により気密容器2−1の容器内部2a−1の容積も復帰する。容器内部2a−1の容積減少により全圧が上昇し、これによって、容器内部2a−1内にある大気から含まれていた酸素g1が気体分離膜7b−1を透過して容器外部2b−1に分離排出される。通気性補強膜7a−1は、その通気性により、気体分離を邪魔することがないか、あっても僅かである。蛇腹隔壁7−1の気体分離膜7b−1によれば、蛇腹状に形成してあるため前述した気体分離膜13,・・よりも広い表面積を確保することができる。したがって、気体分離装置1−1によれば、より効率のよい気体分離が実現可能である。なお、気体分離装置1に気体分離機能を持った気体分離装置1−1の蛇腹隔壁7−1を設けること、又は、後者に気体分離機能を持った前者の対向隔壁5を設けることを妨げない。なお、図示は省略するが、上記の押圧作業を、ジャッキ構造を介して行えば、押圧作業による負担を軽減することが可能である。
【0084】
(気体分離装置の第2変形例)
図6及び7を参照しながら、第2変形例に係る気体分離装置1−2について説明する。図6及び7は、気体分離装置1−2の縦断面図である。気体分離装置1−2が、前述した気体分離装置1又は気体分離装置1−1と異なるのは、主として後二者が1個であった気密容器を前者が2個である点にある。ここでは、前述した気密容器2−1に副気密容器2−1´を直列接続した場合について説明する。
【0085】
図6に示す気密容器2−1の構造は前述した通りであり、副気密容器2−1´は、気密容器2−1と基本的に同じ構造を有しており、異なるのは次の3点である。すなわち、副気密容器2−1´の対向隔壁5−1´に上述の連通逆止弁17を設けた点、導気孔(逆止弁)を設けていない点、及び、復帰バネを設けていないので蛇腹隔壁7−1´が常態において縮んでいる点において副気密容器2−1´は気密容器2−1と異なっている。連通逆止弁17は、気密容器2−1のリリーフ弁11と連通パイプ15を介して連通可能に、かつ、リリーフ弁11から供給された気体g2を副気密容器2−1´内に受け入れるも副気密容器2―1´内の気体の逆流を許さないように構成してある。すなわち、気密容器2−1から副気密容器2−1´への一方通行である。気密容器2−1の気体分離機能によりリリーフ弁11から取り出された窒素富化気体g2は連通パイプ15及び連通逆止弁17を介して副気密容器2−1´内に送られる。このとき、気密容器2−1の操作は1回(蛇腹隔壁7−1の伸縮1回)でもよいし複数回でもよい。複数回の操作を行えば、複数回分の気体g2が副気密容器2−1´に送られることになる。
【0086】
気体g2が供給されると、供給された気体g2の全圧によって副気密容器2−1´の蛇腹隔壁7−1´が伸長させられて副気密容器2−1´の内部容積が増加する。内部容積の増加は、窒素富化気体g2の供給停止とともに停止する。ここで、副気密容器2−1´の対向隔壁5−1´を気密容器2−1の対向隔壁5−1と同様の手順で押圧すると、副気密容器2−1´内にある気体g2の全圧が上昇して大気圧より高くなる。すなわち、副気密容器2−1´内外に圧力差が生じる。生じた圧力差は、副気密容器2−1´内の窒素富化気体g2から気体分離膜7b−1を介してさらに酸素g1を分離排出し、これにより窒素濃度の高い窒素富化気体g3を生成する。ここで、対向隔壁5−1´をさらに押圧すると、副気密容器2−1´内の窒素富化気体g3の全圧はさらに増圧し、これが、副気密容器2−1´のリリーフ弁11´を開放させ窒素富化気体g3を取り出し可能とする。以上から理解されるように気体分離装置1−2によれば、副気密容器2−1´を直列接続したことによって気密容器2−1から取り出す窒素富化気体g2よりもより濃度の高い窒素富化気体g3を取り出すことができる。
【0087】
なお、気体分離装置1−2は、直列接続した2個の気密容器を含めて構成してあるが、上記した副気密容器2−1´のリリーフ弁11´に、1又は2以上の気密容器を別途接続することにより、さらに高濃度の窒素富化気体を得ることができる。さらに、図7に示すように、気密容器2−1の対向隔壁6−1を共通隔壁として構成することによって、副気密容器2−1´の対向隔壁5−1´及び連通パイプ15を省略した気体分離装置1´−2することも可能である。気体分離装置1´−2は、多数の通気孔10hを備え上部開口の通気容器内に収納してある。
【0088】
(気体分離装置の第3変形例)
図8を参照しながら、第3変形例に係る気体分離装置1−3について説明する。図8は、気体分離装置1−3の縦断面図である。気体分離装置1−3は、隔壁21により内外が隔離された気密容器22を備えている。隔壁21は、中空部24を有する筒状の固定隔壁23と、中空部24内にあり固定隔壁23の内周面23eに対して中空部24の長さ方向(図8の上下方向)に往復摺動可能な可動隔壁25と、を含めて構成してある。固定隔壁23は、金属や合成樹脂により全体構成した円形の底部23aと、底部23aの外周から起立する環状周壁23bと、を備えている。底部23aの形状を円形に構成したのは円形であれば内周面23eとの間の気密性担保が比較的簡単であると考えたからであるところ、気密容器22内にある中空部24の気密性が確保できるのであれば円形以外の形状でもよい。底部23aの形状を円形にしたことから、これに対応して環状周壁23bの形状も円形としてある。なお、符号23cは、環状周壁23bの上端部にネジ固定可能な蓋体を示している。
【0089】
可動隔壁25の外周には環状パッキン26を密着固定してあり、環状パッキン26の働きにより可動隔壁25と内周面23eとの間の密着性を担保しつつ摺動を可能としている。密着性担保によって気密容器22の内部23jの機密性が保持される。環状パッキン26も、気密容器22の内部23jと外部23kとを隔離する機能を有しており、隔壁21の一部を構成する。可動隔壁25には複数の通気孔21h,・・を厚み方向に貫通形成してあり、各通気孔21hを気体分離膜21m,・・により閉鎖してある。すなわち、各気体分離膜21mは、気密容器22の内外を隔離する機能を有しており、隔壁21の一部を構成する。蓋体23cの中央には滑り軸受23dを埋め込み固定してあり、この滑り軸受23dは、符号25sで示す操作棒25sを蓋体23cの厚み方向(可動隔壁25の可動方向)に往復スライドさせるための部材である。操作棒25sの気密容器22内部側一端は可動隔壁25に固定してあり、気密容器22外部側一端には操作盤25pを固定してある。操作棒25sは、その往復スライドにより気密容器22内にある可動隔壁25を往復摺動させられるように、すなわち、可動隔壁25によって閉鎖した中空部24の容積を増減させられるように構成してある。なお、符号23h,23hは、蓋体23cの厚み方向に形成した気体抜き孔を示している。各気体抜き孔23hは、蓋体23cと可動隔壁25との間の空間23k´を連通させる機能を有しており、この連通によって上記空間23k´は気密容器22の外部23kの一部となる。また、符号27はリリーフ弁を、符号28は外気の流入のみを許す逆止弁を、それぞれ示している。
【0090】
ここで、気体分離装置1−3の使用方法を説明する。操作盤25pを手で持ち図8(a)に示す矢印(1)方向に引き上げると、それに伴い操作棒25sとともに可動隔壁25が同方向に摺動する。これによって、気密容器22の内部23jの容積が増加して外部23kに対して負圧になるため、逆止弁28が開いて大気を気密容器22の内部23jに導入する。このとき、リリーフ弁27は閉鎖したままである。次に、操作盤25pを図8(b)に示す矢印(2)方向に押し下げて可動隔壁25を同方向に摺動させると気密容器22の内部23jの体積が減少してPであった全圧がP1にまで増圧され、気体分離膜21mを介して内部23j内の大気から酸素g1(白矢印で示す)が外部23k´へ分離排出される。気密容器22の内部23jには、窒素富化気体g2が残る。ここで、可動隔壁25をさらに押し下げて窒素富化気体g2の全圧をP2にまで増圧すると、リリーフ弁27が開放して窒素富化気体g2が押し出される。リリーフ弁27に密封容器(図示を省略)等を接続しておけば、窒素富化気体g2を取り出すことができる。上記した密封容器の代わりに自転車や自動二輪車等のゴムタイヤ53の充填口に、リリーフ弁27を直接的又は充填部材等(図示を省略)を介して間接的に接続しておけばゴムタイヤ53に窒素冨化気体g2を充填することができる。ここで、操作盤25pを矢印(1)方向に再度引き上げることにより、可動隔壁25が同方向に摺動し逆止弁28を介して内部23jに大気が導入され、次の気体分離作業が可能な状態となる。
【0091】
(気体分離装置の第4変形例)
図9を参照しながら、第4変形例に係る気体分離装置1−4について説明する。図9は、気体分離装置1−4の縦断面図である。気体分離装置1−4は先に説明した気体分離装置1−3と類似した構成を備えていて、両者間で異なるのは、後者では容器外部に排出していた酸素g2を取り出し可能に構成した点である。このため、両者間で共通する部材については図8に示した符号を図9に示すにとめ、それらについての説明は可能な限り省略する。
【0092】
気体分離装置1−4は、隔壁21により内外が隔離された気密容器22を備えている。隔壁21は、中空部24を有する筒状の固定隔壁23と、中空部24内にあり固定隔壁23の内周面23eに対して中空部24の長さ方向(図9の上下方向)にパッキン26を介して往復摺動可能な可動隔壁25と、を含めて構成してある。固定隔壁23は、金属や合成樹脂により全体構成した円形の底部23aと、底部23aの外周から起立する環状周壁23bと、を備えている。ここまでは、気体分離装置1−3の構造と異ならない。図9に示す符号29は、環状周壁23bの上端部にネジ固定可能な蓋体を示している。蓋体29は、中空部24を気密閉鎖可能に構成してあり、これにより、気密容器22内には、可動隔壁25によって仕切られた気密容器内部23jと気密空間23j´が併存することになる。換言すると、固定隔壁23、可動隔壁25及びパッキン26により気密筒体が構成され、さらに、換言すると、気密容器22と、気密容器22に密封された気体から分離した気体を密封する分離気体用気密容器とが、気体分離膜21mを隔てて併設された状態にある。ここで、気密容器内部23jと気密空間23j´とを合わせた体積は一定であるから、両者を仕切る可動隔壁25(気体分離膜21m)の摺動により前者を増加させれば後者が減少し、逆に前者を減少させれば後者が増加する。なお、蓋体29には、気密空間23j´内にある気体(酸素)g1の外部への通過のみ許す分離気体取出弁(リリーフ弁30)を設けてある。ここで、リリーフ弁30にはノズル構造30aを備えさせてあり、このノズル構造30aを介して、たとえば、鼻に装着して酸素供給するための気体供給具51を接続すれば人体に酸素供給をすることができる。
【0093】
気体分離装置1−4の使用方法について説明する。操作盤25pを手で持ち図9(a)に示す矢印(1)方向に引き上げると、それに伴い操作棒25sとともに可動隔壁25が同方向に摺動する。これによって、気密容器内部23jの容積が増加して外部23k´に対して負圧になるため、逆止弁28が開いて大気を気密容器内部23jに導入する。このとき、リリーフ弁27は閉鎖したままである。次に、操作盤25pを図9(b)に示す矢印(2)方向に押し下げて可動隔壁25を同方向に摺動させると気密容器内部23jの体積が減少してPであった全圧がP1にまで増圧され、気体分離膜21mを介して気密容器内部23j内の大気から酸素g1(白矢印で示す)が気密空間23j´へ分離排出される。気密容器内部23jには、窒素富化気体g2が残る。ここで、可動隔壁25を引き上げると、気密空間23j´内の酸素g1の全圧が増圧してリリーフ弁30を開放させ酸素g1を取り出すことができる。酸素g1の取り出しの前又は後に可動隔壁25を最下端まで押し下げて気密容器内部23j内の窒素富化気体g2の全圧をP2にまで増圧すると、リリーフ弁27が開放して窒素富化気体g2が押し出される。リリーフ弁27に密封容器(図示を省略)等を接続しておけば、窒素富化気体g2を取り出すことができる。ここで、操作盤25pを矢印(1)方向に再度引き上げることにより、可動隔壁25が同方向に摺動し逆止弁28を介して気密容器内部23jに大気が導入され、次の気体分離作業が可能な状態となる。
【0094】
(気体分離装置の第5変形例)
図10乃至12を参照しながら、第5変形例に係る気体分離装置1−5について説明する。図10乃至12は、気体分離装置1−5の縦断面図である。気体分離装置1−5は、大径部と先細り部とを有する無花果形状に類似する形状の気密容器31を備えている。気密容器31は、隔壁32を備え、隔壁32は、その面積方向全部(一部でもよい)が、通気性があり復帰可能に変形する弾性補強膜33と、弾性補強膜33の内壁に貼り付けた気体分離膜35と、から構成してある。弾性補強膜33に通気性を持たせたのは、気体分離膜35に対する通気性を確保することによって気体分離膜35の気体分離機能を発揮可能にするためである。気密容器31大径部に該当する隔壁32には逆止弁37を、同じく先細り部先端には気体取出弁(リリーフ弁39)を、それぞれ設けてある。逆止弁37は、気密容器31内への気体導入のみを許容するように構成してある。リリーフ弁39には針状のノズル39aを一体化してあり、ノズル39aは、サッカーボール等の球技用ボール41の空気取入口に差込可能に構成してある。なお、隔壁32はその全体を弾性補強膜33と気体分離膜35とにより構成してあるが、この隔壁32の一部を上記二者の代わりに弾性材により構成することを妨げない。この場合の弾性材は気体分離機能を有しないことになるが、たとえば、気密容器31の形態や強度等の関係から気体分離膜を用いることの出来ない部位が存するという問題がある場合に、弾性材を用いることにより当該問題を解決できる。
【0095】
図10乃至12に基づいて、気体分離装置1−5の使用方法を説明する。図11に示すように、気体分離装置1−5を握り押圧すると隔壁32が変形して気密容器31の内部容積が減少する。容積減少により、気密容器31内部にある大気の全圧Pが増圧され全圧P1となる。ここで、大気に含まれる気体(酸素)g1が気体分離膜35を透過して外部に分離排出され、内部には窒素富化気体g2が残る。気密容器31をさらに押圧すると、内部の全圧P1が増圧して全圧P2となる。全圧がP2になるとリリーフ弁39が開放して窒素富化気体g2がノズル39aの先端から押し出される。ノズル39aを球技用ボール41の空気取入口に挿し込んでおけば、窒素富化気体g2を球技用ボール41に充填することができる。押圧している手を離せば隔壁32は、その弾性力により復帰して内部容積を復帰させる。内部容積の復帰により内部の全圧は大気圧に対して負圧となるから、逆止弁37が開放して大気を気密容器31内部に導入する。この押圧と押圧解除の操作は、繰り返して行うことができ、その度に所定量の窒素富化気体を充填することができる。
【0096】
(気体分離装置の第6変形例)
図13乃至15を参照しながら、第6変形例に係る気体分離装置1−6について説明する。図13は、気体分離装置1−6の平面図であり、図14及び15は、図13に示す気体分離装置1−6のC−C断面図である。気体分離装置1−6は、隔壁44によって内外を隔離する気密容器45を備え、この気密容器45は内部に食品等の保存物を収納可能に構成してある。すなわち、隔壁44は、上端開口の下容器46と、下端開口の上容器47と、蓋体49と、から概ね構成してあり、何れの部材も合成樹脂を主素材として構成してある。下容器46は底部46aと、底部46aの周縁から起立する周壁46bと、から概ね構成してあり、容器内部には保存物を収納する空間が形成してある。他方、上容器47は、平面視矩形の天板部47aと、天板部47aの周縁から垂下する周壁47bと、により概ね構成してあり、下容器46に被せられる形状及び大きさに形成してある。被せたときの下容器46の周壁46bは、被せられた上容器47の周壁47bの内側に位置するように構成してある。これとは逆に周壁46bを周壁47bの外側に位置させることも可能であるが、そのように構成すると周壁47bを下容器46内に入り込ませることになり周壁47bと下容器46内の保存物との接触が起こり得る。接触は被せ作業に悪影響を与えかねないので、上容器47の周壁47bを下容器46の周壁46bの外側に位置させるようにしたのである。下容器46に被せた上容器47は、両者をロックするためのロック機構48によってロック可能に構成してある。
【0097】
上容器47の天板部47aには、通気孔47h,・・と、各通気孔47hを気密閉鎖する気体分離膜47mと、を設けてある。つまり、各気体分離膜47mは、内外を隔離する隔壁44の一部を構成する。周壁47bの下端内側(下容器46に面する側)には、周壁47bを一回りする断面横向きU字状の環状溝47gを形成してあり、この環状溝47gには、環状パッキン47pを密着固定してある。環状パッキン47pは、環状溝47gから幅方向僅かにはみ出すように形成してある。上容器47を下容器46に被せたときに、環状パッキン47pのはみ出し部分が下容器46の周壁46b外周面に密着して気密性を保持しつつ前者に対する後者の摺動を可能にするためである。蓋体49は、上容器47の天板部47aより僅かに小さな平面視矩形の蓋本体49aと、蓋本体49aの下面(嵌めたときに通気孔47hに向く面)から下方に突き出す閉鎖突起49b,・・と、から概ね構成してある。閉鎖突起49bの数は通気孔47hの数と同数であり、各閉鎖突起49bは、蓋体49を天板部47aに嵌めた(被せた)ときに気体分離膜47mに接触せずに通気孔47hを気密閉鎖可能な形状に形成してある。蓋体49の気密閉鎖は、気体分離膜47mを気体が透過することを抑制する。すなわち、蓋体49は気体分離膜47mを気密被覆して気体分離膜47mの代わりに隔壁44の一部を構成することになる。蓋体49は、気体分離膜47mを気密容器45の外部から被覆可能に構成してあるが、この蓋体49の代わりに気密容器45の内部から気体分離膜47mを被覆可能な構造を採用することも可能である。
【0098】
気体分離装置1−6の使用方法を説明する。まず、図14(a)に示すように保存物を入れた下容器46の上から上容器47を被せる。このとき、環状パッキン47pの働きによって、下容器46と上容器47を合体された気密容器45が形成される。気密容器45内部は大気雰囲気である。次に、上容器47を押圧すると気密容器45の内部容積が減少して内部の全圧が高まり、これによって、気密容器45内の大気から少なくとも酸素が分離排出される(図14(b)参照)。このとき、気密容器45の内部は窒素冨化雰囲気になっている。ロック機構48を操作して下容器46と上容器47とをロックしたら、図15に示すように、蓋体49を天板47aに被せて各通気孔47hを気密閉鎖する。蓋体49の被せにより、気体分離膜47mを介した気体透過はなくなるか、また、あっても無視可能な量となる。気密容器45内の保存物は窒素雰囲気内に収納されているので、大気に曝されている場合に比べて酸化(劣化)される可能性は極めて低い。したがって、気密容器45内に収納した保存物を、まったく、又は、ほとんど劣化なく保存物を長期保存することが可能になる。
【0099】
食品には、たとえば、コーヒーや紅茶のような液体、顆粒状調味料のような固体、ゼリーのような流動体、さらに、これらの混合体がある。このような食品を窒素富化雰囲気の気密容器内に収納しておけばその酸化(劣化)を可及的に抑制することができ、同じ食品であっても大気中に保存する場合に比べて、それらの味や鮮度等を長時間に渡って保持することができる。また、食肉、鮮魚、野菜等の生鮮食品も食品に含まれることはいうまでもないところ、これらの食品を窒素雰囲気の気密容器内に収納しておくことは品質低下の抑制のために好ましいと考えられる。他方、まだ、研究段階ではあるが、これらの生鮮食品は呼吸をしておりある程度の酸素が必要と考えられるから、気密容器内部の酸素濃度を幾分高めに、すなわち、酸素の分離排出量を少なめに設定することが必要であろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本実施形態に係る気体分離装置の平面図である。
【図2】図1に示す気体分離装置のA−A断面図である。
【図3】本実施形態の第1変形例に係る気体分離装置の平面図である。
【図4】図3に示す気体分離装置のB−B断面図である。
【図5】図3に示す気体分離装置のB−B断面図である。
【図6】本実施形態の第2変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図7】本実施形態の第2変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図8】本実施形態の第3変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図9】本実施形態の第4変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図10】本実施形態の第5変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図11】本実施形態の第5変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図12】本実施形態の第5変形例に係る気体分離装置の縦断面図である。
【図13】本実施形態の第6変形例に係る気体分離装置の平面図である。
【図14】本実施形態の第6変形例に係る気体分離装置のC−C断面図である。
【図15】本実施形態の第6変形例に係る気体分離装置のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 気体分離装置
2 気密容器
2a 容器内部
2b 容器外部
2−1´ 副気密容器
3 隔壁
5,6 対向隔壁
5a 通気孔
5h 導気孔
7 蛇腹隔壁
7a−1 通気性補強膜
7b−1 気体分離膜
8 復帰バネ
9 逆止弁
9a 弁体
9b 環状支持部
9c 押圧バネ
9d 有底円筒体
9e 底部
9f 環状支持部
9h 貫通孔
10 通気容器
10h 通気孔
11 リリーフ弁
11a 弁本体
11b 調整リング
13 気体分離膜
15 連通パイプ
17 連通逆止弁
21 隔壁
21h 通気孔
21m 気体分離膜
22 気密容器
23 固定隔壁
23a 底部
23b 環状周壁
23c 蓋体
23d 軸受
23e 内周面
23h 気体抜き孔
23j 内部
23j 気密容器内部
23j´ 気密空間
23k 外部
23k´ 空間
24 中空部
25 可動隔壁
25p 操作盤
25s 操作棒
26 環状パッキン
27 リリーフ弁
28 逆止弁
29 蓋体
30 分離気体取出弁(リリーフ弁)
30a ノズル構造(ノズル)
31 気密容器
32 隔壁
33 弾性補強膜
35 気体分離膜
37 逆止弁
39 気体取出弁リリーフ弁
39a ノズル
41 球技用ボール
44 隔壁
45 気密容器
46 下容器
46a 底部
46b 周壁
47 上容器
47a 天板部
47b 周壁
47g 環状溝
47h 通気孔
47m 気体分離膜
47p 環状パッキン
48 ロック機構
49 蓋体(被覆部材)
49a 蓋本体
49b 閉鎖突起
51 気体供給具
53 ゴムタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、
当該隔壁に設けられた気体取出弁と、
当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してあり、
当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、
当該気体分離膜が、当該気密容器内部の全圧Pが容積減少により全圧P1(P<P1)以上となったときに容器内部に密封されていた気体Gから当該気体Gに含まれていた気体g1の少なくとも一部を当該気密容器外部に分離排出可能に構成してあり、
当該気体取出弁が、当該気密容器内部のさらなる容積減少により当該気密容器内部の全圧がP2(P2>P1)となったときに当該気密容器内部と外部とを連通して当該気密容器内部に残る気体g2を外部に排出可能に構成してある
ことを特徴とする気体分離装置。
【請求項2】
前記隔壁には、ジャッキ構造を介して外力が作用するように構成してある
ことを特徴とする請求項1記載の気体分離装置。
【請求項3】
前記気体取出弁が、前記気密容器内部と外部とを連通させるときの全圧P2を可変設定可能に構成してある
ことを特徴とする請求項1又は2記載の気体分離装置。
【請求項4】
前記気体分離膜が、通気性補強膜により補強してある
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の気体分離装置。
【請求項5】
移動及び/又は変形した前記隔壁が、外力の作用を取り除くことにより移動位置及び/又は変形状態から復帰可能に構成してある
ことを特徴とする請求項1乃至4何れか記載の気体分離装置。
【請求項6】
前記隔壁には、移動及び/又は変形した前記隔壁が復帰する際に開放して当該気密容器外部にある気体を当該気密容器内部に導入するための逆止弁を設けてある
ことを特徴とする請求項5記載の気体分離装置。
【請求項7】
前記隔壁を自動復帰させるための復帰部材を設けてある
ことを特徴とする請求項5又は6記載の気体分離装置。
【請求項8】
前記隔壁が、中空部を有する有底筒状の固定隔壁と、当該固定隔壁の中空部内で当該固定隔壁内周面に対して当該中空部長さ方向に気密状態を保ちながら往復摺動可能な可動隔壁と、を含めて構成してある
ことを特徴とする請求項5乃至7何れか記載の気体分離装置。
【請求項9】
前記隔壁の少なくとも一部が、復帰可能に変形する弾性材により構成してある
ことを特徴とする請求項5乃至7何れか記載の気体分離装置。
【請求項10】
前記隔壁全体が、通気性があり復帰可能に変形する弾性補強膜と、当該弾性補強膜の内壁に貼り付けた気体分離膜と、から構成してある
ことを特徴とする請求項5又は6記載の気体分離装置。
【請求項11】
前記隔壁が、伸縮自在で筒状の蛇腹隔壁と、当該蛇腹隔壁の上端と下端とを気密閉鎖する一対の対向隔壁と、を含めて構成してある
ことを特徴とする請求項5乃至7何れか記載の気体分離装置。
【請求項12】
前記蛇腹隔壁が、通気性があり復帰可能に変形する弾性補強膜と、当該弾性補強膜の内面に貼り付けた気体分離膜と、を含めて構成してある
ことを特徴とする請求項11記載の気体分離装置。
【請求項13】
前記気体Gが大気であり、前記気体g1が酸素である
ことを特徴とする請求項1乃至12何れか記載の気体分離装置。
【請求項14】
前記気体Gが大気であり、前記気体g1が蒸気である
ことを特徴とする請求項1乃至12何れか記載の気体分離装置。
【請求項15】
前記気密容器には、前記気密容器が排出する気体g2を内部に受入可能な副気密容器を接続してあり、
当該副気密容器が、当該副気密容器の内部と外部とを隔離する隔壁と、
当該隔壁に設けられた気体取出弁と、
当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してあり、
当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、
当該気体分離膜が、当該気密容器内部の全圧P´が容積減少により全圧P´1(P´<P´1)以上となったときに容器内部に密封されていた気体g2から当該気体g2に含まれていた気体g´1の少なくとも一部を当該気密容器外部に分離排出可能に構成してあり、
当該気体取出弁が、当該気密容器内部のさらなる容積減少により当該気密容器内部の全圧がP´2(P´2>P´1)となったときに当該気密容器内部と外部とを連通して当該気密容器内部に残る気体g´2を外部に排出可能に構成してある
ことを特徴とする請求項1乃至14何れか記載の気体分離装置。
【請求項16】
前記気体取出弁が、ノズルを取付可能又はノズル構造と一体に構成してある
ことを特徴とする請求項13記載の気体分離装置。
【請求項17】
前記ノズル又はノズル構造が、球技用ボール又はゴムタイヤの弁に差し込んで気体注入可能に構成してある
ことを特徴とする請求項16記載の気体分離装置。
【請求項18】
前記気密容器内部から前記気体分離膜を介して分離排出される気体g1を貯留可能な分離気体用気密容器と、
当該分離気体用気密容器に設けられた分離気体取出弁と、を含めて構成してある
ことを特徴とする請求項1乃至12何れか記載の気体分離装置。
【請求項19】
前記分離気体用気密容器が、前記気体分離膜を隔てて前記気密容器に併設してあり、
前記気体分離膜の移動及び/又は変形による前記気密容器の内部容積の増加又は減少に応じて当該分離気体用気密容器の内部容積が減少又は増加可能に構成してある
ことを特徴とする請求項18記載の気体分離装置。
【請求項20】
前記気密容器及び前記分離気体用気密容器が、気密筒体の内部において可動隔壁によって相互隔離可能に構成してあり、
当該可動隔壁が、少なくとも一部を気体分離膜により構成してあり、かつ、当該気密筒体の内周面に対して当該気密筒体の長さ方向に往復摺動可能に構成してある
ことを特徴とする請求項19記載の気体分離装置。
【請求項21】
前記分離気体取出弁が、前記可動隔壁の復帰による当該分離気体用気密容器内部の容積減少により前記分離気体用気密容器内に分離排出されていた気体g1の全圧が所定圧力を超えたときに当該分離気体用気密容器内部と外部とを連通して当該分離気体用気密容器内部に残る気体g1を外部に排出可能に構成してある
ことを特徴とする請求項20記載の気体分離装置。
【請求項22】
前記分離気体取出弁が、ノズルを取付可能又はノズル構造と一体に構成してある
ことを特徴とする請求項20又は21記載の気体分離装置。
【請求項23】
前記気体Gが大気であり、前記気体g1が酸素である
ことを特徴とする請求項18乃至22何れか記載の気体分離装置。
【請求項24】
前記ノズル又はノズル構造が、前記気体g1を人体に供給するための気体供給具に接続可能に構成してある
ことを特徴とする請求項23記載の気体分離装置。
【請求項25】
隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、
当該隔壁に設けられた気体取出弁と、
当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、を含めて構成してあり、
当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少又は増加可能に構成してあり、
容積減少に伴う当該気密容器内部の増圧により当該気密容器内部にある気体に含まれる所定気体を当該気密容器外部に透過可能に、又は、容積増加に伴う当該気密容器内部の減圧により当該気密容器外部にある気体に含まれる所定気体を当該気体分離膜を介して当該気密容器内部に透過可能に、構成してあり、
当該気体取出弁を介して当該気密容器内部の気体を取出可能に構成してある
ことを特徴とする気体分離装置。
【請求項26】
隔壁によって外部と隔離された内部を備える気密容器と、
当該隔壁の少なくとも一部を構成する気体分離膜と、当該気体分離膜を外部又は内部から気密被覆可能な被覆部材と、を含めて構成してあり、
当該隔壁が、外力の作用により少なくとも部分的に移動及び/又は変形して当該気密容器の内部容積を減少可能に構成してあり、
容積減少に伴う当該気密容器内部の増圧により当該気密容器内部にある気体に含まれる所定気体を当該気密容器外部に透過可能に構成してあり、
当該被覆部材が、当該気密容器の内部又は外部から当該気体分離膜を被覆することにより当該気体分離膜に代わって気密容器内部と外部とを隔離可能に構成してある
ことを特徴とする気体分離装置。
【請求項27】
前記気密容器が、保存物を収納可能に構成してあり、
前記隔壁が、当該収納した保存物の影響を受けずに移動及び/又は変形可能に構成してある
ことを特徴とする請求項26記載の気体分離装置。
【請求項28】
前記気密容器内部にある気体が大気であり、前記所定気体が酸素である
ことを特徴とする請求項26又は27記載の気体分離装置。
【請求項29】
前記気密容器に収納する保存物が食品である
ことを特徴とする請求項28記載の気体分離装置。
【請求項30】
外部と内部とを隔離する隔壁の少なくとも一部が気体分離膜によって構成され、かつ、当該隔壁に気体取出弁が設けられた気密容器を用意する工程と、
当該気密容器内に密封した気体の容積を外力の作用により減少又は増加させて当該気密容器内部を増圧又は減圧させる工程と、
当該気体分離膜を挟んだ当該気密容器内部と外部との圧力差により気体分離膜を介して所定気体を分離排出又は分離吸入する工程と、
当該気密容器内にある気体を当該気体取出弁を介して取り出す工程と、を含めてなる
ことを特徴とする気体分離方法。
【請求項31】
前記気体取出弁が、前記気密容器内部に密封した所定気体の分離排出又は分離吸入後の気体の容積をさらなる外力の作用により減少させることによって当該気密容器内部の全圧が所定圧力に達したときに開放可能に構成してある
ことを特徴とする請求項30記載の気体分離方法。
【請求項32】
前記気密容器内に密封した気体が大気であり、前記所定気体が酸素である
ことを特徴とする請求項30又は31記載の気体分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−90310(P2007−90310A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291921(P2005−291921)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【特許番号】特許第3769601号(P3769601)
【特許公報発行日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(506009958)
【Fターム(参考)】