説明

気体分離装置

【課題】本発明は、吸着槽と製品ガス貯留タンクを有した気体分離装置の省スペース化を実現できる気体分離装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明における気体分離装置は、供給された気体から所定の気体を分離して製品ガスとして生成する吸着剤が充填された略円筒状の吸着槽と、前記製品ガスを貯留する略円筒状の製品ガス貯留タンクとを備え、前記吸着槽を前記製品ガス貯留タンクよりも上または下に配置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着槽を備える気体分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のガス発生装置は、二つの吸着槽と、それら二つの吸着槽に挟まれた中央に製品ガス貯留タンクを設けていた。
【0003】
また、特許文献2に記載の酸素を分離するための装置は、筐体内部に上下方向に並列配置された吸着槽と、製品ガスを貯留するバッファタンクが筐体外部に別設置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−166413
【特許文献2】特開平11−21108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス発生装置は、複数の吸着槽と製品ガス槽から構成されているが、吸着槽は円筒状の筐体内に格納された吸着剤が粉砕されることと、設置スペースが大きくなってしまう等の理由で横置きには適さなかった。
【0006】
ここで、特許文献1のように、吸着槽を縦置きで並列配置し、さらに製品ガス貯留タンクを中央に設けた場合は、設置面積の省スペース化は実現できない。
【0007】
また、特許文献2のように製品ガス貯留タンクを外部へ別設置した場合は、ガス発生装置単体での設置面積は小さいが、貯留タンクを含む総設置面積は大きくなる。
【0008】
本発明は、吸着槽と製品ガス貯留タンクを有した気体分離装置の省スペース化を実現できる気体分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため本発明における気体分離装置は、供給された気体から所定の気体を分離して製品ガスとして生成する吸着剤が充填された略円筒状の吸着槽と、前記製品ガスを貯留する略円筒状の製品ガス貯留タンクとを備え、前記吸着槽を前記製品ガス貯留タンクよりも上または下に配置することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の観点における気体分離装置は、空気を貯留する略円筒状の空気貯留タンクと、前記空気貯留タンクから供給された空気から所定の気体を分離して製品ガスとして生成する吸着剤が充填され、略円筒状の吸着槽と、前記製品ガスを貯留する略円筒状の製品ガス貯留タンクとを備え、前記吸着槽は、前記空気貯留タンクよりも下で前記製品ガス貯留タンクよりも上の位置または、前記空気貯留タンクよりも上で前記製品ガス貯留タンクよりも下の位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸着槽と製品ガス貯留タンクを有した気体分離装置の省スペース化を実現できる気体分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る気体分離装置の概略構成図
【図2】本発明の実施例1に係る気体分離装置のフロー詳細図
【図3】本発明の実施例2に係るPSAユニットの概略構成図
【図4】本発明の実施例1の比較例に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【図5】本発明の実施例1の比較例に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【図6】本発明の実施例1に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【図7】本発明の実施例1に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【図8】本発明の実施例1の比較例に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【図9】本発明の実施例1の比較例に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【図10】本発明の実施例1に係る吸着槽と窒素槽の配置図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1について図1、2、4−10を用いて説明する。
【0015】
図1、2に示す本実施例における気体分離装置1はPSA式の気体分離装置である。気体分離装置1は、空気を供給する空気供給ユニット2と、製品ガスを生成するPSAユニット3で構成される。この空気供給ユニット2は、空気を圧縮する圧縮機4と、圧縮空気を貯留させる空気槽(空気貯留タンク)5、圧縮空気を除湿するドライヤー6と、析出したドレン水を回収しながら不純物を除去するドレンフィルター7を有している。本実施例では、一例として、これら圧縮機4と、空気槽5と、ドライヤー6とドレンフィルター7とは筐体に格納されている。一方、PSAユニット3は、空気供給ユニット2から供給される圧縮空気から所定の気体を分離することにより、製品ガスを生成する吸着槽19と、製品ガス(窒素)を貯留する窒素槽(製品ガス貯留タンク)41を有している。これら吸着槽19と窒素槽41は筐体に格納されている。これにより、外気からの温度的な影響を受けにくくなるため、吸着槽19の周りの温度を安定化させることができ、周囲温度により吸着効率が変動する特性を持つ吸着剤が充填された吸着槽19の吸着効率の低下を防止することができる。また、吸着槽19からの排気による騒音を低減させることができる。
【0016】
上記実施例では、2つの筐体にそれぞれ機器を格納する場合を説明したが、これに限らず、変形例として、1つの筐体内にすべての機器を格納してもよい。この1の筐体は、空気供給ユニット2を格納する1のブロックと、PSAユニット3を格納する他のブロックとに仕切板等で内部を2ブロックに区画する構成とすることも可能である。
【0017】
空気槽5で貯留された圧縮空気は後述の吸着槽19に供給され、空気槽5で貯留された圧縮空気から所定の気体が分離される。本実施例では、吸着槽19で酸素を吸着することにより、窒素を分離する場合について説明するが、窒素を吸着することにより酸素を分離してもよいし、大気以外の圧縮空気から他の気体を分離するものであってもよい。
【0018】
圧縮機4として、往復動式、スクリュー式あるいはスクロール式等の圧縮機や、外部から1次圧を供給され再圧縮する所謂ブースタ圧縮機等が用いられている。
【0019】
空気槽5には、空気槽5からの圧縮空気を流す配管16が接続されており、この配管16の端末位置には2系列に分岐した配管17が接続されている。配管17には、それぞれ流路を開閉する供給弁18が途中に設けられており、端末には酸素分子を吸着して窒素ガスを製品ガスとして取り出すための吸着槽19がそれぞれ接続されている。また、配管17には、それぞれ供給弁18と吸着槽19との間位置に配管21が接続されており、これら配管21には、途中に流路を開閉する排気弁22が、端末に消音用のフィルタ付きの排気サイレンサ23が設けられている。また、配管17には、互いの配管21と吸着槽19との間位置を結ぶように配管25が接続されており、この配管25には流路を開閉する下均圧弁26が設けられている。
【0020】
吸着槽19には、例えば、酸素分子を吸着する吸着手段である吸着剤が充填されている。吸着剤は、具体的には分子ふるいカーボンやゼオライト等を用いている。本実施例では、最小限の構成部品にして簡素化を図ることと、吸着工程と脱着工程とを交互に行い、効率良く製品ガスを取り出すために、2槽の吸着槽で構成しているが、2つに限らず、1つであってもよいし3つ以上であってもよい。
【0021】
吸着槽19には、端末位置で互いに合流する配管31がそれぞれ接続されている。これら配管31には、互いの吸着槽19側同士を結ぶように配管32が接続されており、この配管32には絞り33が設けられている。また、配管31には、互いの配管32よりも吸着槽19とは反対側同士を結ぶように配管35が接続されており、この配管35には流路を開閉する上均圧弁36が設けられている。また、配管31には、それぞれの配管35よりも吸着槽19とは反対側に流路を開閉する取出弁38がそれぞれ設けられている。
【0022】
配管31の合流位置には配管40が接続されており、この配管40の端末位置には窒素ガスを貯留させる製品ガス貯留タンクとしての窒素槽41が接続されている。この窒素槽41を吸着槽19の下部の空間に配置し、設置スペースの省スペース化を図った。この窒素槽41には、端末位置が吐出口42とされた配管43が接続されており、この配管43の途中位置には窒素槽41側から順に、塵埃等を除去するとともにガスの流量を調整するフィルターレギュレーター44、流路を開閉する吐出弁45、ガスの流量を調整する流量調整弁46が設けられている。
【0023】
配管43のフィルターレギュレーター44と吐出弁45との間位置には配管48および配管49が接続されており、配管48には、配管43側から順に、流路を開閉する開閉弁50と、ガスの流量を調整する流量調整弁51と、サイレンサ52とが設けられている。配管49には、配管43側から順に、流路を開閉する開閉弁54と、ガスの流量を調整する流量調整弁55と、酸素濃度を検出する酸素センサー56とが設けられている。
【0024】
酸素センサー56は制御部60に通信可能に接続されており、検出信号を制御部60に出力する。また、供給弁18、排気弁22、下均圧弁26、上均圧弁36、取出弁38、吐出弁45、流量調整弁46、開閉弁50、流量調整弁51、および開閉弁54、制御部60に通信可能に接続されており、制御部60からの指令で作動する。
【0025】
本実施例における空気供給ユニット2とPSAユニット3の配置について説明する。
【0026】
本実施例では、空気供給ユニット2とPSAユニット3とを横に並べて配置した。空気ユニット2には、振動源である圧縮機4がある。一方、PSAユニット3の吸着槽19は、振動により吸着剤が壊れるおそれがあり、配管17、21、25、31、35や制御部60、振動に弱い部材が多く設けられている。従って、空気供給ユニット2とPSAユニット3を上下に並べて配置すると、振動源である空気供給ユニット2から振動に弱い部材を多く有するPSAユニット3へ振動が伝わりやすくなる。そこで、本実施例では、振動源である空気供給ユニット2と振動に弱い部材を多く有するPSAユニット3とを横に並べて配置することで、空気供給ユニット2からの振動がPSAユニット3に伝わりにくくした。
【0027】
本実施例では、図1に示すとおり、吸着槽19が配置された空間と窒素槽41が配置された空間とを仕切り板で区切り、吸着槽19を仕切り板の上に配置することで、吸着槽19を窒素槽41よりも上に配置した。上述の通り、空気供給ユニット2とPSAユニット3とは横に並べて配置する必要があるため、設置スペースの省スペース化を図るためには、水平方向の設置スペースを小さくする必要がある。そこで、上記のように吸着槽19を配置することで、気体分離装置1全体としての省スペース化を図ることができる。なお、吸着槽19と窒素槽41との上下関係は必ずしも上記の通りである必要はなく、吸着槽19が窒素槽41よりも下に配置されていてもよい。ただし、吸着槽19を窒素槽41よりも上に配置することにより、吸着槽19の上下にそれぞれ配置された配管17、31やそれらの開閉を制御する弁18、38などは、窒素槽41の高さ方向分で設置面(床等)より上部に配置することができる。これにより、製造およびメンテナンス作業時に、各部品が作業者の目や手の高さの近くまで高くすることができるため、作業時に手が届きやすく、各部品を目視しながら作業ができる。従って、製造作業やメンテナンス作業を容易に行うことができるため、本実施例では上記のように吸着槽19を配置した。
【0028】
本実施例の図1では、吸着槽19の下端が窒素槽41の上端よりも上に配置され、吸着槽19の設置スペースと窒素槽41の設置スペースとが上から見てほぼ重なっているが、吸着槽19と窒素槽41との少なくとも一部が重なって配置されていれば、設置スペースの省スペース化が図れるので、吸着槽19の下端が窒素槽41の下端よりも上または下に配置され、上から見て吸着槽19と窒素槽41との少なくとも一部が重なって配置されていればよい。
【0029】
また、本実施例では、吸着槽19が配置された空間と窒素槽41が配置された空間とを仕切る仕切り板を設けたが、吸着槽19が窒素槽41よりも上または下に配置(吸着槽19の下端が窒素槽41の下端よりも上または下に配置され、上から見て吸着槽19と窒素槽41との少なくとも一部が重なって配置)されていればよく、吸着槽19と窒素槽41とが配置される空間を仕切る仕切り板は必ずしも必要ない。ただし、仕切り板を設けることにより、吸着剤の充填により重量の大きくなった吸着槽19を安定して支持することができる。また、仕切り板を設け、仕切り板の上に吸着槽19を配置することにより、仕切り板の下に配管17または配管31を設置するスペースを設けることができるので、配管を吸着槽19や窒素槽41の横に配置する必要がなくなり、設置スペースのさらなる省スペース化を図ることができる。仕切り板を設けない場合は、例えば、窒素槽41の上にフレームを設け、フレーム上に吸着槽19が支持されて窒素槽41、吸着槽19が配置されてもよい。また、筐体側面に取付ステーを設けて吸着槽19を直接支持し、窒素槽41の上に吸着槽19が配置されてもよい。
【0030】
本実施例において、吸着槽19は、昇圧・減圧を繰り返した時に、吸着工程・脱着工程を行うが、吸着槽内部に充填された吸着剤(図示しない)は、縦方向上側から下側に向けて付勢力を与えられて押さえられているので、内部で上下に動いても動きを吸収してくれる。一方、吸着槽19の長手方向を横に向けた(横置きにした)場合、吸着槽内部に充填された吸着剤は自重で偏るため、吸着槽19の短手方向(胴回り)上部には小さな隙間ができる。そのため、吸着・脱着工程で吸着槽内に気体の流れが生じると、隙間内で吸着剤の粒が飛散して粒同士が衝突することで粉砕してしまう。粉砕された吸着剤は、吸着できる表面積が減ってしまうことで、吸着効率が低下する。また、この粉砕された吸着剤が、バルブ等のエアー機器に目詰まり等の不具合を起こす原因となる場合がある。
【0031】
上記理由により、吸着槽19は、内部に吸着剤を充填しているため、横置きには適さない。そのため、吸着槽19は長手方向が水平方向と交差するように配置した。即ち縦置きにした。これにより、水平方向の省スペース化を図ることができる。吸着槽19を複数備える場合には、複数の吸着槽を並列に配置すれば、水平方向の省スペース化を図りつつ、鉛直方向の長さが大きくなりすぎないようにした。
【0032】
窒素槽41は、図1に示すように長手方向が吸着槽19の長手方向と交差する方向、即ち水平方向となるように配置した。これにより、吸着槽19を縦置きにしたため、鉛直方向の長さが大きくなりすぎないようにした。
【0033】
空気供給ユニット2においては、PSAユニット3と同様に水平方向の省スペース化を図るため、圧縮機4、空気槽5、ドライヤー6をそれぞれ上下に並べて配置した。特に、圧縮機4はメンテナンス作業が必要な部材が多いため、空気槽5の上に配置することでメンテナンス作業を容易に行うことができるようにした。
【0034】
ここで、本実施例の配置におけるPSAユニットの省スペース効果について図4−10を用いて説明する。図4−10は、本実施例または本実施例の比較例における吸着槽19と窒素槽41の配置を示した図である。図4−10を用いて、略円筒状の2つの吸着槽19と1つの窒素槽41とを特許文献1のように長手方向を上下方向(水平方向と交差する方向)に向けて縦置きで並列に配置した場合と、本実施例のように上下に並べて配置した場合とで設置面積を比較して説明する。
【0035】
図4−10では、略円筒状の吸着槽19と窒素槽41とについて、長手方向の長さがHで直径をDと仮定して設置面積の計算を行った。また、窒素槽41の長手方向の長さHを直径Dの1倍から4倍までのそれぞれの場合について設置面積の計算を行った。
【0036】
図4、図5は本実施例の比較例における吸着槽19と窒素槽41の配置を示した図である。それぞれ、H=Dであり、2つの吸着槽19と窒素槽41を縦置きに並列に配置している。図4、図5の場合における設置面積A1、A2は、
【数1】


【数2】

【0037】
ここで、図4、図5のように配置した場合を基準として、本実施例のように吸着槽19と窒素槽41とを配置した場合における設置面積について説明する。
【0038】
図6、図7は本実施例における吸着槽19と窒素槽41の配置を示した図である。窒素槽41の長手方向の長さHは、それぞれ、H=D,2Dであり、2つの吸着槽19を縦置きにして並列に配置し、窒素槽41を横置きにして吸着槽19の下に配置している。図4、図5の場合における設置面積A3、A4は、
【数3】


【数4】

【0039】
式(3)(4)を式(1)(2)と比較すると、本実施例のように配置した場合は、図4、5のように配置した場合に比べてそれぞれ、45.9%、33.3%の設置面積を減らすことができる。
【0040】
図6、図7より、吸着槽19を2つ配置した場合は窒素槽41の直径が吸着槽19の直径以下であり、窒素槽41の長手方向の長さが吸着槽41の直径の2倍以下である場合において、設置面積を2つの吸着槽19を縦置きにした場合の設置面積以下に抑えることができる。同様に考えて、吸着槽19をn個配置した場合は、窒素槽41の直径が吸着槽19の直径以下であり、窒素槽41の長手方向の長さが吸着槽41の直径のn倍以下である場合において、設置面積をn個の吸着槽19を縦置きにした場合の設置面積以下に抑えることができる。
【0041】
図8、図9は本実施例の比較例における吸着槽19と窒素槽41の配置を示した図である。窒素槽41の長手方向の長さHは、それぞれ、H=3D,4Dであり、2つの吸着槽19を縦置きにして並列に配置し、窒素槽41を横置きにして吸着槽19の下に配置している。図8、図9の場合における設置面積A5、A6は、
【数5】


【数6】

【0042】
式(5)を式(1)(2)と比較すると、図8のように配置した場合は、図4のように配置した場合と比較して18.9%設置面積を減らすことができるが、図5のように配置した場合と比較すると設置面積は同じである。
【0043】
式(6)を式(1)(2)と比較すると、図9のように配置した場合は、図5、6のように配置した場合と比較して、それぞれ8.1%、23%設置面積が増加している。
【0044】
以上より、図6、図7のように吸着槽19をn個配置した場合は、窒素槽41の直径が吸着槽19の直径以下であり、窒素槽41の長手方向の長さが吸着槽19の直径のn倍以下である場合において、設置面積をn個の吸着槽19を縦置きにした場合の設置面積に抑えることができる。一方、窒素槽41の直径が吸着槽19の直径以下であるか、窒素槽41の長手方向の長さが吸着槽41の直径のn倍以上である場合において、n個の吸着槽19を縦置きにした場合の設置面積を超えてしまう。しかし、n個の吸着槽19と窒素槽41を図5のように縦置きに配置した場合の設置面積以下に抑えることができれば本実施例のように配置して省スペース化を実現することができる。
【0045】
ここで、式(1)−(6)をさらに一般化して、直径D1、長手方向の長さがH1の吸着槽19をn個配置し、直径D2、長手方向の長さがH2の窒素槽41をより設置面積が小さくなる図6のように縦置きにして並列に配置した場合の設置面積A7と、直径D1、長手方向の長さがH1の吸着槽19をn個配置し、直径D2、長手方向の長さがH2の窒素槽41を本実施例のように配置した場合の設置面積A8について計算する。
【0046】
直径D1、長手方向の長さがH1の吸着槽19をn個配置し、直径D2、長手方向の長さがH2の窒素槽41を図6のように縦置きにして並列に配置した場合の設置面積A7は、
A7=(D1×n+D2)×D1 (D1>D2の場合) ・・・(7)
A7=(D1×n+D2)×D2 (D1<D2の場合) ・・・(8)
【0047】
直径D1、長手方向の長さがH1の吸着槽19をn個配置し、直径D2、長手方向の長さがH2の窒素槽41を本実施例のように配置した場合の設置面積A8は、
A8=D1×H2 (D1>D2 かつ D1×n<H2の場合)・・・(9)
A8=D2×D1×n (D1<D2 かつ D1×n>H2の場合)・・・(10)
A8=D2×H2 (D1<D2 かつ D1×n<H2の場合)・・・(11)
A8=D1×D1×n (D1>D2 かつ D1×n>H2の場合)・・・(12)
【0048】
式(7)−(12)より、本実施例のように配置した場合の設置面積A8が図5のように配置した場合の設置面積A7よりも小さくなるのは
H2<D1×n+D2 ・・・(13)
上記式(13)が成立するときである。
【0049】
なお、特にD1<D2かつD1×n>H2の場合(窒素槽41の直径が吸着槽19の直径以下であり、窒素槽41の長手方向の長さが吸着槽19の直径のn倍以下である場合)は、設置面積をn個の吸着槽19を縦置きにした場合の設置面積(D1×D1×n)に抑えることができるので設置面積をさらに効果的に減らすことができる。
【0050】
以上より、(13)のように吸着槽19をn個配置する場合は、吸着槽19の直径をD1、窒素槽41の直径をD2、長手方向の長さをH2としたとき、H2<D1×n+D2とすることで、n個の吸着槽19と窒素槽41を図5のように縦置きにした場合の設置面積以下に抑えることができる。さらに、窒素槽41の直径を吸着槽19の直径以下とし、窒素槽41の長手方向の長さを吸着槽41の直径のn倍以下(D1>D2かつD1×n>H2)とすることで、n個の吸着槽19を縦置きにした場合の設置面積以下に抑えることができ、設置面積をさらに効果的に減らすことができる。
【0051】
ここで、容量の大きな窒素槽41が必要である場合について説明する。上述の通り、吸着槽19をn個配置する場合において、吸着槽19の直径をD1、窒素槽41の直径をD2、長手方向の長さをH2としたとき、H2>D1×n+D2となる窒素槽41を用いた場合、n個の吸着槽19と窒素槽41を図5のように縦置きにした場合の設置面積以下に抑えることはできない。ここで、本実施例では、容量の大きな窒素槽41が必要である場合、図10に示すように、H2<D1×n+D2となる複数の窒素槽41を上下に並べて配置した。これにより、n個の吸着槽19と窒素槽41を図5のように縦置きにした場合の設置面積以下に抑えることができ、大きな容量の窒素ガスを貯留することができる。
【0052】
ここまで、気体分離装置1の構成を説明してきたが、ここで気体分離装置において行われる気体分離方法について説明する。
【0053】
気体分離装置1では、圧縮機4によって空気を圧縮する圧縮工程、圧縮工程により圧縮された空気をアフタークーラー2により冷却する冷却工程、冷却工程により冷却された空気をエアードライヤー5により除湿する除湿工程、除湿工程により除湿された空気を空気槽7に貯留する貯蔵工程、貯蔵工程により貯留された空気から所定の気体を分離する分離工程が行わる。
【0054】
気体分離装置1の分離工程では、以下の(a)〜(d)の工程を順次行われる。
【0055】
(a)吸着工程:圧縮機4により圧縮され空気槽7に貯留された圧縮空気を、供給弁18を開くことで、吸着剤が充填された吸着槽19に導入するとともに、窒素槽41内に残存する窒素ガスを、取出弁38を開くことで吸着槽19に還流して吸着槽19内を昇圧させ、圧力を利用して吸着剤に酸素分子を吸着させる工程。
【0056】
(b)取出工程:吸着工程から引き続いて、空気槽7から圧縮空気を吸着槽19に導入し続けると同時に、吸着剤により分離生成された窒素ガスを吸着槽19より取り出して窒素槽41に貯留させる工程。
【0057】
(c)均圧工程:上均圧弁36および下均圧弁26の開閉により取出工程終了後の一対の吸着槽19の均圧化を図り、次回の吸着工程の吸着効率を高めて、より高純度の窒素ガスを生成するための工程。なお、ここでは吸着槽19が複数ある場合について説明したが、吸着槽19は1つであってもよく、その場合は均圧工程は不要である。
【0058】
(d)再生工程:均圧工程終了後の吸着槽19内を、排気弁22を開くことにより配管21を介して、吸着剤に吸着された酸素分子を脱着することにより吸着剤を再生する工程。なお、この再生工程において、排気弁22以外の吸着槽19に関連する供給弁18、下均圧弁26、上均圧弁36および取出弁38は、閉状態とする。
【実施例2】
【0059】
本発明の実施例2について図3を用いて説明する。本実施例では実施例1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0060】
図3に本実施例の気体分離装置1におけるPSAユニット3を示す。本実施例におけるPSAユニット3は、吸着槽19を空気槽5と窒素槽41との間に配置し、空気槽5、吸着槽19、窒素槽41の配置されているそれぞれの空間を区切る仕切り板を設けた。本実施例では、窒素槽41が配置されている空間と吸着槽19が配置されている空間とを区切る第1の仕切り板の上面に吸着槽19を配置し、吸着槽19が配置されている空間と空気槽5が配置されている空間とを区切る第2の仕切り板の上面に空気槽5を配置した。即ち、本実施例では、吸着槽19より上に空気槽5を配置し、吸着槽19より下に窒素槽41を配置したが、吸着槽19よりも下に空気槽5を配置し、吸着槽19よりも上に窒素槽41に配置してもよい。
【0061】
また、本実施例では、吸着槽19が配置された空間と窒素槽41が配置された空間とを仕切る第1の仕切り板とを吸着槽19が配置されている空間と空気槽5が配置されている空間とを区切る第2の仕切り板を設けたが、吸着槽19は、空気槽5よりも下で窒素槽41よりも上の位置または、空気槽5よりも上で窒素槽41よりも下の位置に配置(吸着槽19の下端が空気槽5の下端と窒素槽41の下端との間に配置され、上から見て吸着槽19、空気槽5、窒素槽41のそれぞれの少なくとも一部が重なって配置)されていればよく、第1の仕切り板、第2の仕切り板は必ずしも必要ない。この場合、例えば、窒素槽41の上にフレームを設け、フレーム上に吸着槽19、空気槽5が支持されて窒素槽41、吸着槽19、空気槽5が配置されてもよい。
【0062】
吸着槽19を空気槽5と窒素槽41との間に配置することにより、空気槽5と吸着槽19とを接続する配管17、吸着槽19と窒素槽41とを接続する配管31、40等を長く複雑な形状にすることなく配置することができ、スペース、コストを低減することができる。
【0063】
なお、空気槽5、吸着槽19、窒素槽41は1つの筐体に格納される。
【0064】
本実施例は、空気槽5をPSAユニット3に配置した点で実施例1と異なる。空気槽5をPSAユニット3に配置することにより、PSAユニット3に空気を供給する空気供給ユニット2において空気槽がない場合や空気槽の容量が少ない場合であっても十分な容量の圧縮空気を吸着槽19に供給することができる。従って、実施例1と異なり、空気供給ユニット2は必ずしも空気槽5を備えていなくてもよく、空気槽5の容量が小さくてもよい。そのため、例えば、空気供給ユニット2における圧縮機4が大きく、空気供給ユニット2における省スペース化を図る必要がある場合に本実施例におけるPSAユニット3を用いることが有効となる。
【0065】
なお、本実施例でも実施例1と同様に、容量の大きな空気槽5または窒素槽41が必要である場合、複数の空気槽5または複数の窒素槽41を上下に並べて配置すればよい。これにより、設置面積の省スペース化を実現しつつ、大きな容量の窒素ガスを貯留することができる。
【0066】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。また、実施例1、2を組み合わせることにより本発明を実施してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1・・・気体分離装置
2・・・空気供給ユニット
3・・・PSAユニット
4・・・圧縮機
5・・・空気槽(空気貯留タンク)
6・・・エアードライヤー
7・・・ドレンフィルター
18・・・供給弁
19・・・吸着槽
22・・・排気弁
23・・・排気口
26・・・下均圧弁
33・・・オリフィス
36・・・上均圧弁
38・・・取出弁
41・・・窒素槽(製品ガス貯留タンク)
42・・・吐出口
44・・・フィルターレギュレーター
45・・・吐出弁
46・・・流量調整弁
50・・・開閉弁(排気用)
51・・・流量調整弁(排気用)
52・・・サイレンサ
54・・・開閉弁(センサー用)
55・・・流量調整弁(センサー用)
56・・・酸素センサー
60・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された気体から所定の気体を分離して製品ガスとして生成する吸着剤が充填された略円筒状の吸着槽と、
前記製品ガスを貯留する略円筒状の製品ガス貯留タンクとを備え、
前記吸着槽は前記製品ガス貯留タンクよりも上または下に配置されることを特徴とする気体分離装置。
【請求項2】
前記吸着槽は長手方向が水平方向と交差するように配置され、前記製品ガス貯留タンクは長手方向が前記吸着槽の長手方向と交差するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項3】
前記吸着槽を前記貯留タンクよりも上に配置し、前記吸着槽よりも上または下のいずれか一方に前記吸着槽に気体を供給する第1の配管を配置し、他方に前記吸着槽と前記製品ガス貯留タンクとを接続する第2の配管を配置することを特徴とする請求項2に記載の気体分離装置。
【請求項4】
前記第1の配管及び前記第2の配管はそれぞれ流路を開閉する弁を設けることを特徴とする請求項3に記載の気体分離装置。
【請求項5】
前記吸着槽に供給する気体を圧縮する圧縮機と、前記吸着槽に供給する気体を貯留する空気貯留タンクとを有する空気供給ユニットを備えることを特徴とする請求項1乃至4に記載の気体分離装置。
【請求項6】
前記吸着槽と前記製品ガス貯留タンクとを有するPSAユニットと前記空気供給ユニットとを横に並べて配置することを特徴とする請求項5に記載の気体分離装置。
【請求項7】
前記吸着槽と前記製品ガス貯留タンクとは上から見て少なくとも一部が重なって配置されることを特徴とする請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項8】
前記吸着槽をn個配置した場合において、前記吸着槽の直径をD1、前記製品ガス貯留タンクの直径をD2、長手方向の長さをH2としたとき、H2<D1×n+D2とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の気体分離装置。
【請求項9】
前記吸着槽をn個配置した場合において、前記製品ガス貯留タンクの直径を前記吸着槽の直径以下の寸法とし、前記製品ガス貯留タンクの長手方向の長さを前記吸着槽の直径のn倍以下の寸法とすることを特徴とする請求項8に記載の気体分離装置。
【請求項10】
空気を貯留する略円筒状の空気貯留タンクと、
前記空気貯留タンクから供給された空気から所定の気体を分離して製品ガスとして生成する吸着剤が充填され、略円筒状の吸着槽と、
前記製品ガスを貯留する略円筒状の製品ガス貯留タンクとを備え、
前記吸着槽は、前記空気貯留タンクよりも下で前記製品ガス貯留タンクよりも上の位置または、前記空気貯留タンクよりも上で前記製品ガス貯留タンクよりも下の位置に配置されることを特徴とする気体分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−251243(P2011−251243A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126439(P2010−126439)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】