説明

気体加熱装置

【課題】効率良く気体を加熱することができる気体加熱装置を提供する。
【解決手段】気体が導入される導入部32と、一方の端部が導入部32に接続され、導入部32内の気体が分岐して導入される複数本の加熱管体34と、複数本の加熱管体34の周囲に巻回された誘導加熱用のコイル42と、各加熱管体34の他方の端部が接続され、各加熱管体34で加熱された気体が合流する吐出部36とを備え、複数本の加熱管体34は、誘導加熱用のコイル42の内側に沿って配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生成したり、その他気体を加熱するために用いられる気体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱蒸気は、製造、医療等の様々な分野で幅広く用いられており、その過熱蒸気を生成するための装置も従来より様々なものが知られている。過熱蒸気を生成するには、ボイラで発生させた飽和蒸気をヒータ等の別の手段により再度加熱する方法がとられる。
さらに、飽和蒸気を加熱するための方法としては、誘導加熱によって加熱することも従来から検討されている。
【0003】
図5及び図6には、誘導加熱によって過熱蒸気を生成する、従来の過熱蒸気発生装置を示す。
この過熱蒸気発生装置10は、飽和蒸気を導入するための導入部11と、導入された飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる加熱部12と、加熱部12で発生した過熱蒸気を吐出する吐出部16とを備えている。
加熱部12には、複数本の加熱管体13が配置されている。各加熱管体13の一方の端部は、導入部11に接続され、導入部11に導入された飽和蒸気をそれぞれに分配して流通できるように設けられている。また、加熱管体13の他方の端部は吐出部16に接続されており、各加熱管体13を流通して発生した過熱蒸気は、吐出部16で1つに合流して吐出される。
【0004】
加熱管体13の周囲には、誘導加熱用のコイル15が巻回されている。
なお、加熱管体13内を流通する飽和蒸気が直進するとコイル15からの熱交換効率が悪くなってしまうので、加熱管体13内で飽和蒸気が乱流となるように、加熱管体13内部には、邪魔体としての波板(図示せず)が配置されている。
このような複数本の加熱管体13は、導入部11と吐出部16との間に、図6のように断面視略円形となるように密集して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−24336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述してきたような構成の過熱蒸気発生装置では、コイルに近い側(外周側)に配置された加熱管体と、コイルから遠い側(内周側)に配置された加熱管体における加熱温度が異なっているということが判明した。
すなわち、コイルに近い側の加熱管体は温度が高いが、コイルから遠い側の加熱管体は温度が低いのである。
【0007】
コイルに電流を通した後の加熱管体の温度変化の様子をサーモグラフィ等で確認したところ、コイル直近の外側の加熱管体はすぐに高温となり、その後、密集して配置された加熱管体のうち、内側の加熱管体が外側から中心に向けて徐々に加熱されていく様子が確認された。誘導加熱は、その性質上、コイルに近い部分がコイルからの電磁誘導で高温になるが、コイルから離れると磁力線が到達しにくくなり、加熱されにくくなる。したがって、コイルに近い加熱管体とコイルから離れた位置の加熱管体には温度差がある。
【0008】
このように、断面円形となるように密集して複数の加熱管体を配置した場合には、外側と内側とで発生する過熱蒸気の温度は異なっているというのが現状である。
しかし、吐出部では各加熱管体で発生した過熱蒸気が合流しているので、高い温度の過熱蒸気と低い温度の過熱蒸気とが混合され、所定温度の過熱蒸気として吐出できるようになっている。
【0009】
上述したように、従来の過熱蒸気発生装置では、高温の過熱蒸気と低温の過熱蒸気とを混合させて、吐出部から吐出される過熱蒸気の温度設定をせざるを得ない。
すなわち、従来の過熱蒸気発生装置では、外側に配置された加熱管体における過熱蒸気の温度を、吐出される過熱蒸気の設定温度よりも高い温度となるように誘導加熱を行わなくてはならず、高温の過熱蒸気を発生させようとすると外側の加熱管体へのストレスが大きく、使用できる材料が高価であったり、過熱蒸気の上限温度が制約されたりするという課題がある。
【0010】
なお、上述したような過熱蒸気発生装置は、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するだけでなく、他の気体も加熱し、様々な用途に用いることができる。このため、他の気体を加熱する場合においても、例えば、殺菌、消臭、化学反応等の、指定した温度以上で処理されていない場合には使用できない用途には対応できない。
【0011】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、気体を高温に加熱することが制約無く行える気体加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる気体加熱装置によれば、気体が導入される導入部と、一方の端部が導入部に接続され、導入部内の気体が分岐して導入される複数本の加熱管体と、複数本の加熱管体の周囲に巻回された誘導加熱用のコイルと、各加熱管体の他方の端部が接続され、各加熱管体で加熱された気体が合流する吐出部とを備え、前記複数本の加熱管体は、前記誘導加熱用のコイルの内側に沿って配列されていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、コイルの内側に沿って配列された加熱管体の内側には、加熱管体が存在せず、内側にも加熱管体が存在する場合と比較して、所定温度に気体を加熱することが可能となる。
【0013】
また、前記複数本の加熱管体は、加熱管体の軸線方向からみて、一列の円周状に配置されていることを特徴としてもよい。
【0014】
また、前記誘導加熱用のコイルは、導入部及び吐出部から離間した位置で巻回されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、導入部及び吐出部を非磁性材料で構成したとすると、非磁性材料で構成した導入部及び吐出部は誘導加熱されないため、コイルを導入部及び吐出部からある程度の距離を離しておくことで、効率良く加熱管体のみを加熱することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率良く気体を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る気体加熱装置の側面図である。
【図2】図1の気体加熱装置から誘導加熱用のコイルを外したところを示す側面図である。
【図3】導入部及び吐出部の正面図である。
【図4】接続フランジ部の正面図である。
【図5】従来の過熱蒸気発生装置の側面図である。
【図6】加熱管体の配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る気体加熱装置の好適な実施の形態を以下に説明する。
ここでは、気体加熱装置の一実施形態として、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気発生装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、過熱蒸気発生装置30の側面図を示し、図2は、図1において誘導加熱用のコイルを外したところを示し、図3は、導入部及び吐出部の正面図を示し、図4は、加熱管体を導入部及び吐出部へ接続するための接続フランジ部の正面図を示している。
【0018】
過熱蒸気発生装置30は、導入口31が中央に形成された椀状の導入部32と、一方の端部が導入部32に接続された複数本の加熱管体(ねじれ管)34と、複数本の加熱管体34の他方の端部が接続された吐出部36を具備している。ただし、導入部32としては椀状に限定するものではない。
複数の加熱管体34の全体の周囲には、誘導加熱用のコイル42が巻回されている。
【0019】
導入部32は、側面視すると導入口31が突出して形成され、導入口31側に凸となるような曲面形状を有している。導入口31には、図示しないボイラからの配管が接続可能となっており、ボイラによって発生させられた飽和蒸気が導入部32内に導入される。導入部32内は空洞となっており、この中に飽和蒸気が導入される。
【0020】
導入部32の吐出部36側には、導入部32の本体部分よりも大径のフランジ部35が、導入部32と一体に設けられている。フランジ部35は、同径の接続フランジ部38を取り付けるために設けられている。フランジ部35と接続フランジ部38とは、ボルト及びナット(図示せず)によって固定される。また、フランジ部35と接続フランジ部38との間にはガスケット41が介在し、気密性を持たせている。
【0021】
本実施形態における導入部32(フランジ部35を含め)と接続フランジ部38は、非磁性体であるSUS304等のステンレスで構成されている。
【0022】
なお、本実施形態では、吐出部36も導入部32と全く同じ構造となっている。
すなわち、吐出部36は、吐出口43が突出して形成され、この吐出口43側に凸となるような曲面形状を有している。
吐出部36の導入部32側には、吐出部36の本体部分よりも大径のフランジ部39が、吐出部36と一体に設けられている。フランジ部39は、同径の接続フランジ部45を取り付けるために設けられている。
フランジ部39と接続フランジ部45とは、ボルト及びナット(図示せず)によって固定される。また、フランジ部39と接続フランジ部45との間にはガスケット41が介在し、気密性を持たせている。
【0023】
接続フランジ部38は、正面視すると円形の板状の部材であり、導入部32のフランジ部35側の開口部を閉塞するように設けられている。ただし、接続フランジ部38には、複数本の加熱管体34が取り付けられるように複数の取付穴40が穿設されており、導入部32内の飽和蒸気を各取付穴から各加熱管体34へ分岐して導入させることができる。また、取付穴40は、複数の加熱管体34が一列の円周状に配置されるように、複数の取付穴40が環状に配置されている。
【0024】
加熱管体34として、本実施形態ではねじれ管を採用している。
ねじれ管とは、軸線方向にそってねじれた溝が形成された管状の部材であって、内部を流通する気体(飽和蒸気)が直進せずに回転しながら軸線方向に進行するように設けられた構成となっている。
このように、加熱管体34をねじれ管とすることによって、加熱管体34内を気体(飽和蒸気)が回転しつつ軸線方向に進む。このため、加熱管体34の壁面に対して気体(飽和蒸気)は常に接触する状態となり、加熱効率を上げることができる。
なお、加熱管体34をねじれ管とすることにより、従来の技術で説明したように邪魔体としての波板を設けるよりもコストを下げることができる。
【0025】
また、本実施形態における加熱管体34としては、SUS430等の磁性材料を用いることが必要である。加熱管体34に磁性材料を用いることで、誘導加熱用のコイル42による誘導加熱を行うことができる。
なお、加熱管体としては、ねじれ管に限定するものではなく、気体が旋回して進行するような構造のものであればよい。例えば、管の内部に管の進行方向に沿って捻って形成した板材を配置した構成であってもよいし、さらに管の壁面に気体が旋回できる溝を形成したものであってもよい。
【0026】
加熱管体34の他方の端部は、吐出部36に取り付けられた接続フランジ部45に接続されている。
吐出部36側の接続フランジ部45は、導入部32側の接続フランジ部38と同一の構造をなしており、複数の取付穴40が穿設されている。取付穴40は、複数の加熱管体34が一列の円周状に配置されるように、複数の取付穴40が環状に配置されている。
また、接続フランジ部45も正面視円形の板状の部材であり、吐出部36の吐出口43と反対側の開口部を閉塞するように設けられている。複数の加熱管体34から取付穴40を介して吐出部36内に過熱蒸気が導入されて混合し、1つの吐出口43から過熱蒸気が吐出される。
【0027】
上述してきたように、複数本の加熱管体34は、コイル42の内側に沿って一列の円周状に配置されており、円周の内側は空洞である。したがって、円周状に配置された加熱管体34が後述する誘導加熱用のコイル42によって確実に加熱され、従来のように無駄な加熱をしなくても済む。また、温度コントロール時の応答性が極めて良くなる。
【0028】
誘導加熱用のコイル42は、一列の円周状に配置された複数の加熱管体34の周囲を巻回して配置されている。
本実施形態では、誘導加熱用のコイル42は、導入部32側の接続フランジ部38及び吐出部36側の接続フランジ部45から所定間隔をあけた離間した位置で巻回されている。これは、本実施形態の両接続フランジ部38、45を非磁性材料で構成したためであって、誘導磁界を磁性材料である加熱管体34に集中させるためである。
【0029】
本実施形態における、誘導加熱用のコイル42は隣り合う線同士の間隔は一定であり、またなるべくその間隔を狭めるようにしており、誘導磁界が効率良く加熱管体34にあたるようにしている。
【0030】
このようにして一列の円周状に配置された複数の加熱管体34の周囲を誘導加熱用のコイル42で巻回し、このコイル42に所定の電流を流すことにより、誘導加熱で加熱管体34が加熱される。
導入部32にボイラで発生させた飽和蒸気を導入すると、加熱管体34内で飽和蒸気が300〜400℃に加熱されて過熱蒸気が生成される。生成された過熱蒸気は、吐出口43から吐出し、様々な用途に用いられる。
【0031】
本発明にかかる気体加熱装置では、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するだけでなく、例えば悪臭を含む気体を導入して加熱することで無臭の気体を吐出させたりする用途に用いることができる。なお、悪臭を含む気体をこの気体加熱装置に導入することで、悪臭の元となっている匂いの分子を、誘導加熱により高温で分解できるので、無臭化できる。
また、気体の加熱用途としては、これらに限定されることなく、その他様々なものに用いることができる。
【0032】
以上本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【符号の説明】
【0033】
30 過熱蒸気発生装置
31 導入口
32 導入部
34 加熱管体
35 フランジ部
36 吐出部
38 接続フランジ部
39 フランジ部
40 取付穴
41 ガスケット
42 誘導加熱用のコイル
43 吐出口
45 接続フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が導入される導入部と、
一方の端部が導入部に接続され、導入部内の気体が分岐して導入される複数本の加熱管体と、
複数本の加熱管体の周囲に巻回された誘導加熱用のコイルと、
各加熱管体の他方の端部が接続され、各加熱管体で加熱された気体が合流する吐出部とを備え、
前記複数本の加熱管体は、前記誘導加熱用のコイルの内側に沿って配列されていることを特徴とする気体加熱装置。
【請求項2】
前記複数本の加熱管体は、加熱管体の軸線方向からみて、一列の円周状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の気体加熱装置。
【請求項3】
前記誘導加熱用のコイルは、導入部及び吐出部から離間した位置で巻回されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の気体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113574(P2013−113574A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263492(P2011−263492)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(393014039)ナビオ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】