説明

気体置換装置および気体置換方法

【課題】空間内の効率的な気体置換を簡易に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】気体置換装置1は、空間10Sを形成するグローブボックス10内の気体を置換するためのものであり、前記気体置換装置1は、窒素ガスを供給する送風部40と、前記グローブボックス10に接続されて前記送風部40から供給される窒素ガスを前記グローブボックス10に導入する導入管21を含む導入部20と、前記グローブボックス10内の窒素ガスを排出する排出部30と、前記導入管21の開口面積を変更する三方バルブを備え、前記三方バルブは、前記グローブボックス10内について、気体が置換される前よりも置換された後において、前記導入管21の開口面積が大きくなるように変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバー内の気体を置換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャンバー内の空間を高純度の不活性ガス等の気体で充填する場合、まず、チャンバー内の雰囲気が不活性ガスでパージされる。その後、循環精製装置などで不活性ガスを循環精製することによって、チャンバー内の不活性ガスが高純度に維持される。不活性ガスが高純度化された後には、チャンバー内において電子精密機器などのデバイスが製造される。
【0003】
本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。具体的に特許文献1では、チャンバー内に空気よりも重い不活性ガスを供給する際に、空気と不活性ガスの境界面における不活性ガスの拡散速度よりも大きい速度で不活性ガスを供給するガス置換方法が開示されている。特許文献1では、このように不活性ガスを供給することによって、効率的にチャンバー内のガスを置換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−165294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の気体置換方法の場合、気体の流速を上昇させるためには、チャンバーに供給される単位時間あたりの気体供給量を増大させる必要あった。したがって、デバイスを処理する通常時よりも多くの気体供給が要求される。したがって、精製能力の高い循環精製装置を用いる必要があったり、また、供給能力の高い不活性ガス供給装置を用いる必要があり、装置コストが増大したりするという問題があった。このため、効率的な気体の置換をより簡易に行うことのできる技術が要求されている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、空間内の効率的な気体置換を簡易に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
空間を形成するチャンバー内の気体を置換する気体置換装置において、気体を供給する気体供給部と、前記チャンバーに接続されて前記気体供給部から供給される気体を前記チャンバーに導入する導入管を含む導入部と、前記チャンバー内の気体を排出する排出部と前記導入管の開口面積を前記チャンバー内についての気体を置換する前よりも置換された後において、前記導入管の前記開口面積が大きくなるように変更する開口面積変更部と、前記気体供給部により前記導入管に供給される前記気体の単位時間あたりの流量を略一定に保つように制御する制御部とを備える。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係る気体置換装置において、前記導入部は、開口面積が相互に異なる複数の前記導入管を有しており、前記開口面積変更部は、前記複数の導入管のうちから、前記チャンバーに接続する導入管を選択する選択部を含む。
【0009】
また、第3の態様は、第1から第2の態様までのいずれか1態様に係る気体置換装置において、前記開口面積変更部は、前記導入管の開度を変更する開度変更部を備える。
【0010】
また、第4の態様は、第1から第3の態様までのいずれか1態様に係る気体置換装置において、前記排出部から排出された気体を精製する気体精製部、をさらに備え、前記気体供給部は、前記気体精製部において精製された気体を前記導入管に供給する。
【0011】
また、第5の態様は、空間を形成するチャンバー内の気体を置換する気体置換方法において、(a)チャンバーに接続されている導入管の開口面積を、第1開口面積にする工程と、(b)前記(a)工程の後、前記導入管を介してチャンバーに気体を供給する工程と、(c)前記(b)工程の後、前記導入管の開口面積を、前記第1開口面積よりも大きい第2開口面積とする工程と、(d)前記(b)工程と前記(c)工程とにおいて、前記気体供給部により前記導入管に供給される前記気体の単位時間あたりの流量を略一定に保つように制御する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
第1から第4の態様に係る気体置換装置によると、チャンバー内の気体置換の前に導入管の開口面積を比較的小さくし、気体の単位時間あたりの供給量を保つことにより、チャンバーに対する気体の流入速度を容易に向上することができる。これにより、チャンバー内の気体の流動性を高めることができる。したがって、チャンバー内の気体置換を迅速に行うことができる。
【0013】
また、第2の態様に係る気体置換装置によると、比較的迅速に開口面積を変更することができる。したがって、気体の流速の迅速な変更が容易になる。
【0014】
また、第3の態様に係る気体置換装置によると、導入管の開度を調整することにより、開口面積を容易に変更することができる。したがって、気体の流速の細かい調整が容易になる。
【0015】
また、第4の態様に係る気体置換装置によると、気体を循環させながら、チャンバー内についての気体置換を行うことができる。
【0016】
第5の態様に係る気体置換方法によると、チャンバー内の気体導入前における導入管の開口面積を、気体導入後のものよりも小さくし、気体の単位時間あたりの供給量を保つことで、チャンバーに供給される気体の流速を容易に上昇させることができる。これにより、チャンバー内の気体の流動性を高めることができる。したがって、チャンバー内の効率的な気体置換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る気体置換装置の概略構成図である。
【図2】導入部の概略構成図である。
【図3】グローブボックス内の気体を置換するときの気体置換装置の動作の流れ図である。
【図4】第2実施形態に係る導入部の概略構成図である。
【図5】第2実施形態に係るグローブボックス内の気体を置換するときの気体置換装置の動作の流れ図である。
【図6】第3実施形態に係るグローブボックスの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
<1. 第1実施形態>
<1.1.気体置換装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る気体置換装置1の概略構成図である。気体置換装置1は、密閉された空間を形成するグローブボックス10(チャンバー)、グローブボックス10内に気体(ここでは、窒素ガス)を導入する導入部20、および、グローブボックス10内から気体を排出する排出部30を備えている。また、気体置換装置1は、ブロワーまたはファンなどで構成される送風部40、気体を精製する気体精製部50、および、制御部60を備えている。
【0020】
グローブボックス10は、各種電子デバイス(有機ELディスプレイ、有機EL照明、リチウム電池など)を製造したり、研究のための作業をしたりする作業スペースとして、不活性ガス(窒素ガス)で充填される空間10Sを形成している。グローブボックス10内の上方の壁部には、窒素ガスを導入するための導入口211が形成されている。なお、グローブボックス10に導入される気体は、窒素ガスに限定されるものではなく、その他の不活性ガス(アルゴンなど)が供給されてもよい。導入口211は、導入部20が備える導入管21に接続されている。
【0021】
グローブボックス10内の底部には、排気口311が設けられている。排気口311は、排出部30が備える排出管31に接続されている。導入口211を介してグローブボックス10内に高純度の窒素ガスが供給されると、グローブボックス10内に存在する大気または窒素ガス(水分や酸素等を含むガス)が、排気口311を介してグローブボックス10の外部に押し出されて排出される。排出された気体は、排出管31を通って冷却部33にて所要温度に冷却された後、気体精製部50に送られる。
【0022】
送風部40は、排出管31の途中に設けられている。送風部40は管内の気体を一方へ送風する。本実施形態では、送風部40は、排出口311から排出された排出ガスを冷却部33に向けて移動させる。冷却部33を通過したガスは、気体精製部50を通過したあと、導入部20を介して再びグローブボックス10に導入される。したがって、送風部40は、グローブボックス10に窒素ガスを供給する気体供給部として構成されている。この送風部40は、後述する制御部60によって制御される。なお、冷却部33は、送風部40により排出ガスの温度が上昇する場合に、それを冷却するために設けられている。ただし、送風部40により排出ガスの温度が上昇しないか、または上昇率が低い場合は冷却部33を備えなくてもよい。
【0023】
導入管21の途中であって、導入部20と精製筒51a,51bとの間の位置には、流量計41が設けられている。流量計41は、後述する制御部60にデータ通信可能に接続されており、導入管21を通る窒素ガスの流量の測定結果(流量データ)を制御部60に送信する。
【0024】
気体精製部50は、複数(ここでは2個)の精製筒51a,51bを備えている。図示を省略するが、精製筒51a,51bは、その内部に、酸素を除去する還元銅が充填された酸素吸着部と、ゼオライトまたはシリカゲル等の吸水性粒子が充填された吸水部とを備えている。精製筒51a,51bでは、酸素吸着部および給水部によって、グローブボックス10から排出された排出ガスから酸素および水分を効率的に除去し、高純度の窒素ガスが精製できるように、内部の温度が調整される。なお、精製筒51a,51bの内部に、酸素や水分以外の成分を排出ガスから除去する除去手段を適宜設けてもよい。
【0025】
精製筒51a,51bと導入部20との間には、それぞれバルブ511a,512aが設けられている。また、排出部30と精製筒51a,51bとの間には、それぞれバルブ512a,512bが設けられている。バルブ511a,512aが開放されることによって、導入部20および排出部30と、精製筒51aとが連通接続される。また、バルブ511b、512bが開放されることにより、導入部20および排出部30と、精製筒51bとが連通接続される。
【0026】
気体置換装置1においては、グローブボックス10から排出された気体を気体精製部50の精製筒51aまたは精製筒51bに通すことで、酸素および水分が除去される。そして精製筒51aまたは精製筒51bから精製された高純度の窒素ガスが送出されて、再びグローブボックス10に供給される。つまり、気体置換装置1は、精製された窒素ガスを循環させることにより、グローブボックス10内を高純度の窒素ガスで充填する窒素ガス循環システムを構成している。
【0027】
精製筒51a,51bは、還元ガス供給部55に接続されており、それぞれバルブ513a,513bを介して還元ガスが内部に導入されるように構成されている。上述したように、酸素吸着部の還元銅は、酸素を吸着することによって酸化される。このときに生成される酸化銅は、還元ガスに曝されることによって再び還元銅に戻される。また、精製筒51a,51bは、それぞれバルブ515a,515bを介して真空ポンプ56に接続されている。精製筒51a,51bは、ゼオライトやシリカゲルの水分を真空ポンプ56による真空加熱によって脱離させる。還元銅に戻しかつ水分を脱離させる再生処理において発生したガスまたは使用済みの還元ガスなどは、バルブ514a,514bを介して精製筒51a,51bの外部に排出される。また、再生処理において発生した水分は、バルブ515aまたはバルブ515bを介して真空ポンプ56により外部に放出される。
【0028】
精製筒51a,51bにより窒素ガスを精製する場合、精製筒51a,51bのうちのいずれか一方が、導入管21および排出管31に接続される。そして、精製筒51a,51bのうち使用されていない方には、必要に応じて還元ガスが導入され、再生処理が行われる。このように、複数の精製筒51a,51bを切り換えて使用できるようにすることにより、精製された窒素ガスの循環を連続的に行うことができる。
【0029】
なお、図示を省略するが、気体置換装置1に対して、外部から窒素ガスを供給できるようにしてもよい。例えば、排出管31と気体精製部50とを接続する配管、気体精製部50と導入管21とを接続する配管、または、気体精製部50自体に窒素ガスを外部から導入するようにしてもよい。
【0030】
図2は、導入部20の概略構成図である。グローブボックス10の壁部には、導入口211として、2つの導入口211a,211bが形成されている。これらの導入口211a,211bは、それぞれ開口面積(配管断面積)が相互に異なる導入管21a,21bに接続されている。
【0031】
導入管21a,21bは、三方バルブ23に接続されている。また、三方バルブ23には、気体精製部50に接続される配管21cが接続されている。三方バルブ23は、後述する制御部60からの制御信号に基づいて、導入管21a,21bのうち一方と、配管21cとを選択的に接続する。このように、本実施形態では、複数の導入管21a,21bのうちから、グローブボックス10に接続する導入管を選択することによって、グローブボックス10に接続されている導入管21の開口面積が変更される。すなわち、本実施形態では、三方バルブ23が開口面積変更部を構成すると共に、選択部を構成する。
【0032】
なお、三方バルブ23による導入管21の切り換えは、制御部60による制御ではなく、オペレーターによる手動操作によって実現されてもよい。
【0033】
本実施形態では、開口面積の異なる2つの導入管21a,21bを備えているため、導入管21の開口面積を2段階で切り換えることができる。導入管21aの開口面積は、第1開口面積となっており、導入管21bの開口面積は、第1開口面積21Sよりも大きい第2開口面積となっている。したがって、一定流量の窒素ガスが導入管21に供給される場合、導入管21aを介してグローブボックス10内に流入する窒素ガスの流入速度を、導入管21bを介する場合よりも大きくすることができる。なお、本実施形態では、三方バルブ23を制御することにより、導入管21の開口面積を素早く変更することができる。したがって、グローボックス10に供給される窒素ガスの流入速度を迅速に変更することができる。
【0034】
制御部60は、図示を省略するが、CPUとRAM等の一般的なコンピュータとしての構成を備えている。図1に示したバルブ制御部61および送風制御部63は、CPUがプログラムにしたがって動作することにより、ソフトウェア的に実現される機能ブロックである。
【0035】
バルブ制御部61は、上述した三方バルブ23を制御する。これにより、上述したように、流入速度を切り換えることができる。また、バルブ制御部61は、バルブ511a,511b,512a,512b,513a,513b,514a,514b,515a,515bを制御する。これにより、精製筒51aまたは精製筒51bのうち一方を導入部20および排出部30に接続するとともに、他方を還元ガスと真空加熱により再生処理することができる。
【0036】
グローブボックス10内の気体を高純度の窒素ガスに置換する際、送風制御部63は、流量計41から送信される単位時間あたりの流量が所要の値に維持されるように、送風部40の出力を制御する。これにより、グローブボックス10内に供給される窒素ガスの供給量が、略一定に維持される。
【0037】
<1.2.気体置換装置1の動作>
図3は、グローブボックス10内の気体を置換するときの気体置換装置1の動作の流れ図である。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、気体置換装置1の動作は、制御部60の制御に基づいて行われるものとする。
【0038】
まず、グローブボックス10内の気体の置換を開始すると、気体置換装置1は、導入管21の開口面積を第1開口面積とする(ステップS11)。具体的には、気体置換装置1は、三方バルブ23を制御することにより、導入管21aとグローブボックス10とを接続する。
【0039】
次に、気体置換装置1は、送風部40を駆動することによって、グローブボックス10内に高純度の窒素ガスを供給する(ステップS12)。グローブボックス10内に窒素ガスが供給されることによって、グローブボックス10内の雰囲気の置換が開始される。グローブボックス10内に供給された窒素ガスは、排気口311から排出され、気体精製部50にて酸素および水分が除去され、再びグローブボックス10内に戻される。なお、気体置換装置1は、流量計41で取得される流量データに基づいて、排出管31を通過する窒素ガスの流量が略一定に維持されるように、送風部40の出力を制御する。
【0040】
次に、気体置換装置1は、グローブボックス10の気体の置換が完了したかどうかを判定する(ステップS13)。このステップでは、グローブボックス10内などに取り付けられた酸素センサーまたは湿度センサーによって、グローブボックス10内の窒素ガスの純度が測定される。そして、窒素ガスの純度が所定の基準値を超えたかどうかによって、置換が完了したかどうかが判定される。なお、タイマーによって窒素ガスの供給開始時からの経過時間を測定することにより、グローブボックス10内の気体置換が完了したかどうかが判定されてもよい。
【0041】
ステップS13において、置換が完了していないと判定された場合には、気体置換装置1は、ステップS12に戻って、窒素ガスの供給が継続して行われる。また、ステップS13において、置換が完了したと判定された場合には、気体置換装置1は、導入管21の開口面積を第2開口面積に変更する(ステップS14)。具体的には、気体置換装置1は、三方バルブ23を制御することにより、グローブボックス10に導入管21bが接続されるように切り換える。なお、上述したように、三方バルブ23をオペレーターが手動で操作して、グローブボックス10に接続する導入管を切り換えるようにしてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態では、グローブボックス10内の気体置換が完了するまでは、配管断面積が比較的小さい(第1開口面積)導入管21aを介してグローブボックス10内に窒素ガスを導入し、置換後は、比較的開口面積の大きい導入管21bを介してグローブボックス10内に窒素ガスを導入する。したがって、置換時におけるグローブボックス10への窒素ガスの流入速度を相対的に大きくすることができる。これにより、グローブボックス10内の窒素ガスの流動性または拡散性を高めることができるため、気体置換を迅速に行うことができる。また、本実施形態では、グローブボックス10内に供給する窒素ガスの流量が一定に保たれるように送風部40が制御される。これにより、導入管21の開口面積が小さくなった場合に、配管内の圧力上昇による単位時間あたりの流量低下が抑えられる。したがって、導入管21を通過する窒素ガスの流速を上げやすくなる。よって、グローブボックス10内への窒素ガスの流入速度を容易に大きくすることができる。
【0043】
また、置換後においては、グローブボックス10への窒素ガスの流入速度を相対的に小さくすることができる。これにより、グローブボックス10内における微小な不純物などの飛散を抑制することができる。したがって、グローブボックス10内での電子デバイスの製造などの作業を良好に行うことができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、導入管21の開口面積を2段階で変更できるように構成されている。しかしながら、3つ以上の開口面積の異なる複数の導入管のうちからグローブボックス10に接続する導入管を選択するようにして、開口面積を3段階以上に変更できるようにしてもよい。
【0045】
<2. 第2実施形態>
上記実施形態では、開口面積が異なる複数の導入管を用意して、グローブボックス10に接続する導入管の開口面積を変更できるようにしている。しかしながら、他の態様によって、導入管の開口面積を変更するようにしてもよい。
【0046】
図4は、第2実施形態に係る導入部20Aの概略構成図である。なお、以下の説明において、第1実施形態の場合と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係る気体置換装置1Aは、導入部20の代わりに導入部20Aを備えており、また、気体置換装置1Aは、グローブボックス10の代わりに導入口211Aが上方の壁部に形成されているグローブボックス10Aを備えている。導入口211Aは、導入部20Aが備える導入管21Aに接続されており、高純度の窒素ガスをグローブボックス10に導入する。また導入管21Aには、管内の開度を調整する開度調整バルブ23Aが取り付けられている。
【0048】
開度調整バルブ23Aは、電動モーター駆動される電動弁で構成されており、制御部60のバルブ制御部61によって制御される。本実施形態では、開度調整バルブ23Aが導入管21Aの開口面積を変更する開口面積変更部を構成している。なお、開度調整バルブ23Aは、オペレーターの手動操作により、導入管21Aの開度を調整できるように構成されていてもよい。
【0049】
導入管21Aを通過する窒素ガスの流量が、送風制御部63による送風部40の制御により一定に保たれる場合、導入管21Aの開度を小さくする(つまり、開口面積を小さくする)と、導入管21Aを通過する窒素ガスの流速を上昇させることができる。したがって、グローブボックス10内に供給される窒素ガスの流入速度を上昇させることができる。また、導入管21Aの開度を大きくする(つまり、開口面積を大きくする)と、導入管21Aを通過する窒素ガスの流速を下げることができる。これにより、グローブボックス10A内に供給される窒素ガスの流入速度を低下させることができる。
【0050】
図5は、第2実施形態に係るグローブボックス10A内の気体を置換するときの気体置換装置1Aの動作の流れ図である。まず、グローブボックス10A内の気体置換を開始すると、気体置換装置1Aは、導入管21Aの開口面積を第1開口面積とする(ステップS21)。具体的には、気体置換装置1は、開度調整バルブ23Aを制御することにより、導入管21Aの開度を第1開口面積とする。この開口面積は、後述する第2開口面積よりも小さくなっている。
【0051】
次に、気体置換装置1Aは、送風部40を駆動することによって、グローブボックス10内に窒素ガスを供給する(ステップS22)。このステップは、第1実施形態において説明したステップS12(図3参照)とほぼ同様である。
【0052】
窒素ガスの供給を開始すると、気体置換装置1Aは、導入管21Aの開度調整バルブ23Aを開けることで開度を連続的または段階的に大きくする。これにより、気体置換装置1Aは、導入管21Aの開口面積を増大させる(ステップS23)。このとき、制御部60の送風制御部63は、流量計41から送信される流量データに基づいて、送風部40の出力を制御する。これにより、グローブボックス10内に供給される窒素ガスの単位時間あたりの流量が略一定となるように調整される。このため、導入管21Aの開口面積が第1開口面積にあるときに、グローブボックス10Aに導入される窒素ガスの流入速度が略最大となり、開度が連続的または段階的に大きくなるにつれて、流入速度が連続的または段階的に下降することとなる。なお、開度調整バルブ23Aを手動で操作するようにして、導入管21Aの開度(開口面積)を変更してもよい。
【0053】
次に、気体置換装置1Aは、導入管の開口面積が第2開口面積になったかどうかを確認する(ステップS23)。窒素ガスの流入速度がグローブボックス10内でデバイスの製造などの作業に適したものとなるように、第2開口面積の大きさが設定される。
【0054】
なお、導入管21Aの開口面積を第1開口面積から第2開口面積に変更するまでの時間は、グローブボックス10A内の気体が、適当な純度の窒素ガスに置換されるまでの時間に合わせて設定さることが望ましい。これにより、置換時における窒素ガスの流入速度を比較的高速に維持することが可能となる。
【0055】
本実施形態においては、開度調整バルブ23Aによって、導入管21Aの開口面積を調整できる。これにより、第1実施形態と同様に、気体置換時における窒素ガスの流入速度を容易に上昇させることができる。よって、グローブボックス10A内の効率的な気体置換を容易に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、開度調整バルブ23Aにより、導入管21Aの開度を細かく調整することができる。したがって、グローブボックス10A内に供給する流入速度を細かく調整することが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、開度調整バルブ23Aで導入管21Aの開度を調整する際に、連続的または段階的に開口面積を大きくしている。しかしながら、第1実施形態のように、開口面積を第1開口面積から第2開口面積に2段階で変更するようにしてもよい。この場合、開度調整バルブ23Aとして電磁バルブを採用することもできる。
【0058】
<3. 第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るグローブボックス10Bの概略構成図である。本実施形態に係る気体置換装置1Bは、第1実施形態に係るグローブボックス10の代わりにグローブボックス10Bが取り付けられている。
【0059】
グローブボックス10Bは、窒素ガスを導入する導入口211の他に、導入口215が形成されている。導入口215は、気体精製部50と導入口211との間を接続する配管(導入管21を含む。)の途中から分岐する分岐管25に接続されている。このため、送風部40を駆動したときに、精製された窒素ガスが導入口215からグローブボックス10B内に導入される。
【0060】
導入口211から流入する窒素ガスの流入方向に対して交差する方向に窒素ガスを流入させる。本実施形態では、導入口211からの窒素ガスの流入方向は略水平方向になっており、導入口215からの窒素ガスの流入方向は略鉛直方向となっている。なお、窒素ガスの流入方向は、これらに限定されるものではなく、任意に設定することができる。例えば、導入口211をグローブボックス10の天井側に設けてもよい。
【0061】
また、分岐管25には、バルブ27が取り付けられている。バルブ27は、制御部60のバルブ制御部61によって制御される。このバルブ27は、例えば、グローブボックス10B内の気体置換を行うときに開放される。すなわち、バルブ27が開放されることによって、導入口215からも窒素ガスが供給されると、導入口211から流入する窒素ガスの流れをかき乱すことができる。したがって、拡散効率を高めることができるため、グローブボックス10B内の気体置換を効率的に短時間で行うことができる。
【0062】
なお、導入口215に接続される配管は、分岐管25に限定されるものではない。例えば、図示しない外部の窒素ガス供給部(ボンベなど)から窒素ガスを供給するようにしてもよい。
【0063】
<4. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0064】
例えば上記実施形態では、窒素ガスを精製しながら循環させることで、グローブボックス内を高純度の窒素ガスに置換するようにしている。しかしながら、本発明は、グローブボックス内の雰囲気を、他の態様で供給される気体(成分の異なる気体)に置換する場合にも有効である。
【0065】
また、上記実施形態では、チャンバーとして、グローブボックス内の気体置換を行う気体置換装置について説明した。しかしながら、本発明は、ドラフトチャンバーなどのその他のチャンバーの気体を置換する場合にも有効である。
【0066】
さらに、上記実施形態および変形例で説明した各構成は、相互に組み合わせたり、または省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B 気体置換装置
10,10A,10B グローブボックス
10S 空間
20 導入部
21,21a,21b,21A 導入管
211,211a,211b,211A,215 導入口
21A 導入管
21S 開口面積
23 三方バルブ
23A 開度調整バルブ
30 排出部
311 排出口
40 送風部
41 流量計
50 気体精製部
51a,51b 精製筒
52b 精製筒
60 制御部
61 バルブ制御部
63 送風制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を形成するチャンバー内の気体を置換する気体置換装置において、
気体を供給する気体供給部と、
前記チャンバーに接続されて前記気体供給部から供給される気体を前記チャンバーに導入する導入管を含む導入部と、
前記チャンバー内の気体を排出する排出部と
前記導入管の開口面積を前記チャンバー内についての気体を置換する前よりも置換された後において、前記導入管の前記開口面積が大きくなるように変更する開口面積変更部と、
前記気体供給部により前記導入管に供給される前記気体の単位時間あたりの流量を略一定に保つように制御する制御部と、
を備える気体置換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気体置換装置において、
前記導入部は、開口面積が相互に異なる複数の前記導入管を有しており、
前記開口面積変更部は、前記複数の導入管のうちから、前記チャンバーに接続する導入管を選択する選択部を含む気体置換装置。
【請求項3】
請求項1から2までのいずれか1項に記載の気体置換装置において、
前記開口面積変更部は、前記導入管の開度を変更する開度変更部を備える気体置換装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の気体置換装置において、
前記排出部から排出された気体を精製する気体精製部、をさらに備え、
前記気体供給部は、前記気体精製部において精製された気体を前記導入管に供給する気体置換装置。
【請求項5】
空間を形成するチャンバー内の気体を置換する気体置換方法において、
(a) チャンバーに接続されている導入管の開口面積を、第1開口面積にする工程と、
(b) 前記(a)工程の後、前記導入管を介してチャンバーに気体を供給する工程と、
(c) 前記(b)工程の後、前記導入管の開口面積を、前記第1開口面積よりも大きい第2開口面積とする工程と、
(d) 前記(b)工程と前記(c)工程とにおいて、前記気体供給部により前記導入管に供給される前記気体の単位時間あたりの流量を略一定に保つように制御する工程と、
を含む気体置換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7499(P2013−7499A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138593(P2011−138593)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(504339790)株式会社FEBACS (4)
【Fターム(参考)】