説明

気体輸送膜

疎水性高分子から形成された多孔質高分子膜、例えば、膜を横切る親水性液体の流れを許容せず、ガス及び/又は蒸気の透過を可能にする充分な大きさの膜の気孔0.05μm〜5pmをもつHalarなど。気孔分布は均一であり、気孔率は高く、いくつかの場合には最大80%である。膜は例えば平面シート又は中空糸であってよく、多くの用途、例えばHFガスのストリッピング、苛性溶液の脱ガス、塩素ガス/アルカリ濾過、溶解している塩素を除去するための水道水の脱ガスなどに使用することができる。そのような膜を製造するために用いる方法は、クエン酸エチルエステル又はグリセロールトリアセテートなどの比較的無毒性の溶媒を用いて行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスろ過及び関連する用途における使用のための高分子膜の使用及び調製に関し、特に、Halar(エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、又はポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン))及び過酷な化学環境に遭遇する環境における関連する膜に関する。
【背景技術】
【0002】
以下は普通の一般的知識であるとの承認と解釈されるべきではない。
【0003】
合成高分子限外濾過及び精密濾過膜は、脱塩、ガス分離、濾過、及び透析を含めた様々な用途に対して公知である。膜の濾過特性は、膜のモルフォロジーの特性、例えば、対称性、気孔形状、気孔径など、及び膜を形成するために用いられた高分子(ポリマー)材料の化学的性質に左右される。
【0004】
精密濾過及び限外濾過は圧力駆動工程であり、膜の気孔径は、膜が保持又は通過可能な粒子もしくは分子の大きさと関連する。精密濾過はマイクロメートル及びサブミクロン、一般的基準として0.05μmまでの範囲の非常に微細なコロイド粒子を除去可能であるが、限外濾過は0.01μm及びそれより小さな粒子を保持することができる。
【0005】
膜のガス濾過又は膜のガス輸送はまた、液体から、溶解している気体の分離を可能にしうる。この工程はガスの拡散によって起こり、例えば、膜透過蒸留、浸透蒸留、脱ガス、乾燥、及び吸着の基礎となる。逆工程、例えば、無気泡膜通気、及び膜接触器中で生じるこれらの工程も可能である。
【0006】
膜の化学的特性はまた、ガス輸送膜の場合に非常に重要である。
【0007】
(i) 適切に小さな気孔径及び
(ii) 膜と液体の親水性/疎水性の必要な組み合わせ
の正しい組み合わせを前提として、液体が多孔質膜を通って通過することが防止されうる。
【0008】
したがって、液体分子の大きさは制限的要因ではないが、むしろ膜を通る通過は、液−液、及び液−膜の力のバランスによって決定される。
【0009】
ガスは、一方で、それらは表面張力をもたないので膜を通過するのに問題はなく、拡散条件が好適であり(すなわち、ガスは、より高圧の領域中には拡散しない)且つ膜壁上に吸着されることがないという条件で、分子の大きさよりも大きな任意の大きさの膜細孔(通常は0.1nmオーダー)を通過する。
【0010】
親水性液体(例えば、水溶液)は、小さな気孔径を有する疎水性膜を透過せず、疎水性液体は小さな径をもつ親水性膜を透過しない。例えば水は非常に小さな分子であるが、表面張力のために、疎水性膜中の小さな気孔を透過するために高圧を必要とする。疎水性膜の気孔径が低下するにしたがい、水を膜に通すためにいっそう大きな圧力が必要となる。
【0011】
水は、充分な圧力を用いることによって疎水性膜を通過させられうるが、必要な圧力は非常に高く、精密−限外濾過膜に対しては150〜300psiである。膜はそのような圧力では損傷を受ける可能性があり、いずれの場合でも通常は結局濡れることはない。したがって、水濾過用途に用いる場合、疎水性膜はエタノール又はグリコールなどの薬剤で「親水化」又は「湿潤」されて、水の透過を可能にすることが必要である。ガス濾過膜は、もちろん、膜が湿潤されておらず且つ高分子の疎水性が保持されているならばより好ましい。
【0012】
ガス濾過は、非常に厳しい条件を用いる工程でしばしば必要とされる。例えば、ガス濾過は、電子工業においてHFガスのストリッピング又は使用前の苛性溶液の脱ガスに有用であり、あるいは、塩素と組み合わされた熱濃縮苛性又は酸に膜が耐えることが必要な塩素/アルカリ電解の分野で有用である。膜作製に用いられる多くの慣用材料は、適切な小さな径の気孔を作り出す方法で成形されることができるとしても、そのような高い水準の化学的攻撃に耐えることはできない。
【0013】
水道水を脱気して、細菌を死滅させるために用いられた低濃度の溶解塩素を除去することでさえ、大きな処理量のために、膜の可使時間にわたって大量の塩素に膜を曝す。最終的には、膜は黄色くなるか脆くなりうるのであり、これは膜の分解のしるしである。
【0014】
現在、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)は最も一般的で利用可能な疎水性膜材料である。
【0015】
PDVFは、耐熱性、(次亜塩素酸ナトリウムを含めた、一連の腐食性化学薬品に対する)妥当な耐化学薬品性、及び耐候性(耐UV性)を含めた、膜用途にとっての多くの好ましい特性を示す。
【0016】
PVDFが、微孔質膜に適した一連の材料からこれまでに最も好ましい材料であることを立証してきた一方で、より優れた化学的安定性及び性能を備える一方、適切な方法で膜が形成されて機能することを可能にするために必要とされる所望の物理特性を保持する膜材料について、研究が続けられている。
【特許文献1】国際公開WO94/17204号パンフレット
【特許文献2】AU653528明細書
【特許文献3】米国特許第4702836号明細書
【特許文献4】米国特許第4247498号明細書
【非特許文献1】Smoldersら、Kolloid Z. u. Z Polymer, 43, 14-20 (1971)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ガス濾過膜の制限は、非常に厳しい化学的環境中及び高温での貧弱な安定性である。本研究は、適切な方法で膜が形成されて機能することを可能にするために必要とされる所望の物理特性を保持すると同時に、より優れた化学安定性及び性能をもたらす膜材料について続けている。
【0018】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを打開もしくは改善すること、又は商業用代替品を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、第一の局面では、本発明は、抵抗性疎水性膜から形成された高分子膜であって、膜を横切る親水性液体の流れを許すことなく、膜中の気孔がガス透過を可能にするために充分な大きさである高分子膜を提供する。
【0020】
本発明はまた、抵抗性疎水性膜から形成された高分子膜であって、膜を横切る親水性液体の流れを許すことなく、膜中の気孔が蒸気の透過を可能にするために充分な大きさである高分子膜をも提供する。
【0021】
したがって、第二の局面では、本発明は、Halarから形成された高分子膜であって、膜を横切る親水性液体の流れを許すことなく、膜中の気孔がガス透過を可能にするために充分な大きさである高分子膜を提供する。
【0022】
Halar又はポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)は、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの1:1交互共重合体であって、以下の構造を有する:
-(CH2-CH2-CFCl-CF2-)n-
【0023】
本発明の態様を、Halarに関して本明細書中に記載するが、この用語はHalar等価体、例えば、
-(-(CH2-CH2-)m-CX2-CX2-)n-
〔式中、各Xは独立してF又はClから選択され、
mは0〜1の間であり、高分子のエチレン部分が0〜50%の範囲となることができるように選択される〕
を含むように用いられる。Halar等価体の例はPCTFEである。
【0024】
好ましくは、上記気孔は0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜1μm、最も好ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲である。
【0025】
好ましくは、本発明の膜は非対称膜であり、これは大きな気孔面と小さな気孔面とを有し、膜の断面を横切る気孔径勾配をもつ。膜は平面シート、又はより好ましくは中空糸膜であってよい。
【0026】
好ましくは、膜は中空糸膜の形態である。より好ましくは、本発明はTIPS(熱誘導相分離)工程によって調製される。
【0027】
好ましくは、上記膜は、膜透過蒸留(トランスメンブラン蒸留)、浸透蒸留、脱ガス、乾燥、吸着、無気泡膜通気からなる群から選択される1以上の工程で、あるいは膜接触器中で使用される。
【0028】
膜接触器は、多孔質膜によって分離された2以上の流体(ガス又は液体)を有する。溶解されたガスの散逸度(フガシティー)が、膜のガスの豊富な側からガスの少ない側への拡散をもたらす。
【0029】
そのような膜はまた、2つの液体を分離するために用いることができ、あるいは二酸化炭素から水蒸気を分離するために用いることができる。
【0030】
好ましくは、本発明は、高い水準の化学的安定性が要求される厳しい又は過酷な条件である環境中で使用される。
【0031】
好ましい工程は、HFガスのストリッピングもしくは使用前の苛性溶液の脱ガス、又は、塩素と組み合わされた熱濃縮苛性又は酸に膜が耐えることが必要な塩素/アルカリ電解の分野、溶解している塩素を除去するための水道水の脱ガス、を包含する。電子工業を含めた多くの工業で有用であると予測される。
【0032】
驚くべきことに、本発明によって、Halarが上述のような非常に小さな気孔を有する膜に成形されうることが発見された。これは、そのような疎水性材料にとっては異例のことであり、TIPS工程によって調製した膜にとっては異例のことである。
【0033】
Halarはまた、驚くべきことに、狭い範囲の気孔径分布で成形されることができ、すなわち、所望する場合は、気孔は常に小さく作ることができる。このことは、小さな気孔径をもつが、70%以下もしくは80%以下又はそれ以上の水準のかなり高い気孔率をもつ膜を調製することを可能にする。
【0034】
好ましくは、Halarを含むガス濾過膜は、有毒な溶媒、安全性が疑わしいか又は安全性が証明されていない溶媒を使用することなく形成される。この膜は好ましくは平面シート又は好ましくは中空糸であってよい。
【0035】
好ましくは、ガス濾過膜はTIPS(熱誘導相分離)工程によって形成され、非対称気孔径分布を有する。最も好ましくは、Halarガス濾過膜は非対称断面(大きな気孔面と小さな気孔面)を有する。
【0036】
好ましくは、ガス濾過膜の気孔径は、ガス濾過膜をもたらすように、膜材料の極性との組み合わせで選択される。
【0037】
好ましくは、気孔は0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜1μm、最も好ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲である。脱ガスされる溶液の疎水性、膜の疎水性、および必要とされる予想操作圧に応じて、任意の好適な気孔径を選択できる。これらは操作圧で膜の気孔中に液体を保持するために可能な限り大きくなるように、あるいは実施上の配慮に応じたいずれかの小さな値となるように選択することができ、気孔径は膜調製法に左右され、分離が望まれる速度によって決定されうる。
【0038】
気孔径は、いわゆるバブルポイント法によって測定できる。
【0039】
第三の局面によれば、本発明はHalarから形成され、下記式(I)又は式(II)の1種以上の化合物を含む溶液から調製されたガス濾過膜を提供する。
【化1】

式中、R、R、及びRは独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその他のアルキルである。
は、H、OH、COR、OCOR、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその他のアルキル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、又はその他のアルコキシ、である。
は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその他のアルキルである。
好ましくは、R=R=R=エチル、及びR=Hである。
【0040】
好ましくは、上記化合物は気孔調節剤として作用し、より好ましくはクエン酸エチルエステル(Citroflex(登録商標)-2)又はグリセロールトリアセテートである。
【0041】
そのような化合物は高分子溶剤として、単独で、上記化合物の混合物で、又はその他の適切な薬剤と共に、用いることができる。
【0042】
本発明のガス濾過もしくはガス精密濾過膜は、疎水性もしくは親水性であってよく、好ましくはHalarである基礎となる高分子材料と相容性のあるその他の材料を含んでもよい。疎水性膜は水性溶液とともに用いるのに好ましく、親水性膜は非極性溶液とともに用いるのに好ましい。
【0043】
膜の化学特性を変性するために採用される追加のものを添加してもよい。一つの非常に好ましい代替物においては、本発明のガス濾過膜は、膜の親水性/疎水性バランスを変性するための変性剤をさらに含む。これは、親水性である多孔質高分子膜、又は代わりに、疎水性である多孔質高分子膜をもたらしうる。
【0044】
好ましくは、本発明の多孔質高分子ガス濾過膜は、良好な巨視的完全性、均一な膜壁の厚さ、及び高い機械強度(例えば、引っ張り強度は1.3Nより大きい)。
【0045】
第四の局面によれば、本発明は以下のステップ:
(a)Halarと、Halarに対する潜在的溶媒である第一成分と任意選択によりHalarに対する非溶媒である第二成分とを最初に含む溶媒システムとを、高温で加熱し、Halarがこの溶媒システムに溶解して光学的に透明な溶液を与えるステップ、
(b)上記溶液を急速に冷却し、非平衡の液−液相分離が起こって、高分子が多い連続相と高分子が少ない連続相とを形成し、この2つの相が大きな界面領域の双連続マトリクス
の形態で混合されるステップ、
(c)上記の高分子が多い相が固化するまで冷却を継続するステップ;
(d)上記固体高分子材料から高分子の少ない相を除去するステップ;ここで、膜極性との組み合わせでガス濾過膜をもたらす気孔径が達成されるように条件を選択する、
を含むガス濾過材料の製造方法を提供する。
【0046】
第5の局面によれば、本発明は、Halarを含む高分子組成物から膜を成形するステップを含む、精密濾過膜もしくは限外濾過膜の製造方法を提供する。
【0047】
第6の局面によれば、本発明は、以下のステップ:
相容性溶媒とHalarの混合物を形成する;
上記混合物を、中空糸をもたらす形状に成形する;
上記混合物の管腔内部表面を内腔形成液と接触させるステップ;
上記混合物中で熱誘導相分離を起こさせて中空糸膜を形成するステップ;
上記膜から溶媒を除去するステップ;かつ、
ここで、膜の極性との組み合わせでガス濾過膜をもたらす気孔径を達成するように条件を選択する、
を含む、中空糸Halar膜を形成する方法を提供する。
【0048】
好ましくは、Halarは上記混合物中に14〜25%、最も好ましくは16〜23%の範囲の量で存在する。好ましくは、内腔形成液はdigolである。非常に好ましい態様においては、本方法は高温、好ましくは200℃より上、より好ましくは220℃より上で実施する。
【0049】
第7の局面によれば、本発明は以下のステップ:
Halarと相容性溶媒との混合物を形成するステップ;
上記混合物を、中空糸をもたらす形状に成形するステップ;
上記混合物の外表面を被覆液(コーティング液)と接触させるステップ;
前記混合物の管腔内部表面を内腔形成液と接触させるステップ;
上記混合物中で熱誘導相分離を起こさせて中空糸膜を形成するステップ;
上記膜から溶媒を抽出するステップ;かつ、
ここで、膜の極性との組み合わせでガス濾過膜をもたらす気孔径を達成するように条件を選択する、
を含む、中空糸Halar膜の形成方法を提供する。
【0050】
本発明は、ガス濾過膜を形成するためのHalarの使用と、上述した局面のいずれかによって調製した場合の多孔質高分子Halarガス濾過膜とに関する。
【0051】
本明細書で用いるように「環境にやさしい」の語は、競合製品又は同じ目的を提供するサービスと比較した場合に、人間の健康及び環境へのより少ない若しくは低減された影響しか有しない材料をいう。特に「環境にやさしい」とは、植物及び動物、特に人間に対して低い毒性しかもたない材料をいう。環境にやさしいとは、生分解性材料をも含む。
【0052】
本発明に用いられる環境にやさしい溶媒は、対象者の暴露が急性(短期間/高用量)又は長期(通常は低用量)のいずれかの場合で、人又はその他の生物の健康に有害なものとして認識されていないことが好ましい。
【0053】
本発明で用いられる溶媒の急性毒性は低いことが好ましい。すなわち、溶媒が高いLD50をもっていれば好ましい。本発明では、LD50は1000mg/kgより大きく、さらに好ましくは2000mg/kgより大きいことが好ましい。
【0054】
しかしまた、急性毒性と並んで、溶媒が長期の低レベル暴露の影響を示さず、発ガン性、変異原性、又は催奇形性がないことが非常に好ましい。このことはそれらのLD50(これは一つの要素であるけれども)によってはそれほど反映されないが、生物蓄積性に対する溶媒の能力並びにその本来の毒性及び変異原性などの要素に映し出される。本発明の溶媒は生物蓄積性でないことが好ましい。これに関連して、溶媒の生分解性は重要であり、高い生分解性が好ましい。
【0055】
その他の環境毒性への影響、例えば、人以外/非哺乳動物への毒性、及び溶媒がオゾン破壊性化合物であるか否かなどの要素も考慮する必要がある。
【0056】
構造上の配慮に関しては、好適な、環境に優しい溶媒に存在しうる構造特性のタイプは、分解性基、例えば、エステルなどの加水分解性基(特により小さな分子、例えばC4以下である場合)の存在;ハロゲン(例えば、塩素)の不存在;及び芳香族環の不存在、である。本発明の好ましい溶媒は、これらの3つの好ましい特性を示す。
【0057】
Halarあるいはポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)は、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの1:1交互共重合体であって、以下の構造を有する:
-(CH2-CH2-CFCl-CF2-)n-
【0058】
本発明の態様を、Halarに関して本明細書中に記載するが、この用語はHalar等価体、例えば、
-(-(CH2-CH2-)m-CX2-CX2-)n-
〔式中、各Xは独立してF又はClから選択され、
mは0〜1の間であり、高分子のエチレン部分が0〜50%の範囲となることができるように選択される〕
を含むように用いられる。Halar等価体の例はPCTFEである。
かねてから、平面シートのHalar膜の製造は公知である。Halarの性質は、限外濾過及び精密濾過の分野においてHalarを非常に魅力的なものにしている。特に、Halarは、塩素及び苛性溶液、並びにオゾン及びその他の強酸化剤に対する耐性に関する非常に良好な特性を有する。
【0059】
中空糸の形態のHalarの精密濾過膜は、PCT AU94/00198 (WO94/17204)及びAU653528に開示された方法にしたがって調製された。これら文献の内容を参照により本明細書に援用する。
【0060】
本発明の場合、本発明者らは、ハロゲン化高分子、例えばHalarから作られた膜を変性して、それらが用いられる用途範囲を強化すると同時に、化学的、物理的、及び機械的分解に対するこの材料の優れた本来の耐性を保持する方法を探し求めていた。
【0061】
本発明のガス輸送膜は、中空糸での使用に特に適しており、相反転によって製造される。
【0062】
中空糸限外濾過及び精密濾過膜は、通常、拡散誘導相分離(DIPS法)又は熱誘導相分離(TIPS法)のいずれかによって製造される。
【0063】
TIPS法は、PCT AU94/00198 (WO94/17204)、AU653528に詳細に記載されており、これらの内容を本明細書中に参照により援用する。
【0064】
微小孔性システムを形成するための最も迅速な方法は、2成分混合物の熱的沈殿であり、この方法においては、熱可塑性高分子を、その高分子を高温では溶かすが低温では溶かさない溶媒中に溶かすことによって溶液を形成させる。そのような溶媒は、しばしば、高分子のための潜在溶媒とよばれる。この溶液を冷却し、冷却速度に左右されるが特定の温度で、相分離が起こり、溶媒から高分子が多い相が分離する。本発明の一方法では、Halarを好適な溶媒、又は好適な溶媒/非溶媒の組み合わせに溶かして、溶液の適切な粘度を達成する。この高分子溶液はフィルム又は中空糸として成形し、次に水などの沈殿槽中に浸漬する。これが、均一な高分子溶液の、固体高分子と液体溶媒相への分離を引き起こす。沈殿した高分子は、均質な気孔の網目(ネットワーク)を含む多孔質構造を形成する。膜構造と特性に影響を及ぼす製造パラメータには、高分子濃度、沈殿媒体、並びに高分子溶液中の溶媒及び非溶媒の温度及び量が含まれる。
【0065】
これらの因子は、広い範囲の気孔径(0.1μm〜0.005μm)をもつ微孔性膜を製造するために変えることができる。驚くべきことに、これらの膜は良好なガス濾過膜であることを発見した。
【0066】
全ての実用的な熱沈殿法は、Kolloid Z. u. Z Polymer, 43, 14-20 (1971)でSmoldersらによって概説されたこの一般法にしたがう。この論文は、高分子溶液のスピノーダル分解とバイノーダル分解を区別している。
【0067】
液−液相分離のための平衡条件は、高分子/溶媒システムに対するバイノーダル曲線によって定義される。バイノーダル分解が起こるためには、相分離が起こって高分子が多い相が溶媒から分離する温度よりも低い温度に達するまで、溶媒中の高分子の溶液を非常に遅い速度で冷却する。
【0068】
上記の相は純粋な溶媒及び純粋な高分子ではないことがより普通であり、なぜなら溶媒中での高分子のいくらかの溶解度がまだあり、高分子中への溶媒のいくらかの溶解度がまだあり、高分子が多い相と高分子が少ない相とが存在する。この議論の目的のためには、高分子が多い相を高分子相といい、高分子が少ない相を溶媒相という。
【0069】
冷却速度が比較的速い場合は、相分離が起こる温度はバイノーダルの場合よりも一般に低く、生じる相分離はスピノーダル分解とよばれる。米国特許第4247498号明細書に開示された方法によれば、相分離が、連続した高分子相中での溶媒の微小液滴の形成をもたらすような、高分子と溶媒の相対的な濃度がある。これらの微小液滴は膜の気泡を形成する。冷却を続けるにつれ、高分子がその溶媒の液滴の周りで固まる。
【0070】
温度が低下するにしたがい、これらの溶解度は低下し、より多くの溶媒液滴が高分子マトリクス中に現れる。高分子からの溶媒の離液現象(シネレシス)は、収縮及びひび割れをもたらし、それにより気泡間の連結又は起泡間の気孔が形成される。さらなる冷却が高分子を固定する。最後に溶媒が構造体から除去される。
【0071】
多孔質膜形成の公知の熱沈殿法は、溶媒からの高分子が多い相の分離とそれに続く冷却に左右され、固化した高分子は次に溶媒から分離されうる。溶媒を高分子から除去するときに溶媒が液体又は固体のいずれであるかは、操作を行う温度と溶媒の融点に左右される。
【0072】
真の溶液は、溶媒と溶質があることを必要とする。溶媒は連続相を構成し、溶質は溶質−溶質相互作用なしに溶媒中に均一に分散される。そのような状態は高分子溶液ではほとんど知られていない。長い高分子鎖は、接触してきた別の高分子鎖と一時的な相互作用又は結合を形成する傾向がある。したがって、高分子溶液は真の溶液であることはほとんどなく、真の溶液と混合物との間のどこかに存在する。
【0073】
多くの場合においては、どちらが溶媒でどちらが溶質であるかをいうこともまた困難である。当技術分野では、高分子と溶媒の混合物を、いずれかの相の他の相中への包含がなくそれが光学的に透明である場合は、溶液とよぶことが許容された慣習である。「光学的に透明」によって、当業者は、高分子溶液が、大きな高分子鎖の存在によるいくらかよく知られた光散乱を有しうることを理解するであろう。次に相分離が、曇り点として知られる温度で起こり、ここでは光学的に検出可能な分離がある。高分子を溶質といい、均質な溶液を形成するために混合される物質を溶媒ということもまた許容された慣例である。
【0074】
本発明の場合においては、本発明者らは、ガス濾過に適した非常に小さな気孔径をもつHalar膜を調製する方法を発見することを模索してきた。
【0075】
かねてから、平面シートのHalar膜を製造することは公知であり、その方法は例えば米国特許第4702836号明細書に開示されている。従来法は中空糸を製造することには適しておらず、さらに用いている溶媒は、1,3,5−トリクロロベンゼン、フタル酸ジブチル、及びフタル酸ジオクチルなどであり、環境に高い影響をもち非常に毒性である。
【0076】
Halarの性質は、Halarをガス濾過の分野で非常に魅力あるものにしている。特に、Halarは非常に疎水性であり(例えばPVDFよりも疎水性である)、塩素及び苛性溶液の両方ばかりでなく、オゾン及びその他の強酸化剤へのその耐性に関連する非常に良好な特性をもつ。高い毒性溶媒を使用せずにHalarガス輸送膜を調製することが好ましい。
【0077】
ほとんどのガス/液体輸送用途は、水性相又は極性相からのガスの分離が関与し、膜は疎水性であることが好ましい。このことは、高い表面張力をもつ液体、主に水性溶液が、膜の気孔を通って浸透できないことを意味する。しかし、ガスは表面張力をもたないので、液体又は液体蒸気中に溶けたガスは、多孔性の膜壁を通って浸透できる。拡散は中立圧力で起こるか、又は膜を横切って適切な圧力差を適用する場合にはより速い。例えば、わずかな負圧の適用は、膜を通してガスを引きよせる。
【0078】
ガス濾過膜はまた、液体からほとんど又は全く抵抗をうけずに、微分散した形で液体中にガスを通すために用いることができる。わずかな正圧の適用は液体をガス処理する工程を速めることができる。
【0079】
疎水性の微孔性膜は、それらの優れた耐化学薬品性、生体適合性、低膨潤性、及び良好な分離性能によって一般的に特徴づけられる。
【0080】
言及したように、ガス濾過膜の微細構造は非対称であって、すなわち、膜を横切っての気孔径勾配が一様ではなく、むしろ膜内の断面距離と関連して変化する。中空糸膜は、一方又は両方の外表面上のしっかり纏まった小さな気孔と、膜壁の内側端面に向いたより大きくより開いた気孔をもつ、非対称膜であることが好ましい。
【0081】
この非対称微孔性膜は、機械強度と濾過効率の良好なバランスをもたらすので、有利であることを発見した。
【0082】
一般原理として、大きな濾液流量が必要な場合は、大きな表面領域が必要である。用いる装置の大きさを最小化するための一般に用いられる手法は、膜を中空多孔糸の形状に形成することである。本発明の場合、本発明の一つの装置は、一緒に束ねられてモジュール内に格納された多数のこれらの中空糸(最大数千)を有する。この糸(繊維)は、モジュール内の全ての繊維の外表面と接触して流れる溶液(通常は水性溶液)からガスを除去するために並列で働く。ガス濾過においては、ガスは各繊維の中央流路又は内腔に押し進められ、水及びその他の溶けた物質は繊維の外側に捕捉されて残る。濾過されたガスは繊維の内側に集まり、終端を通って取り除かれるか、又は、動く空気が低圧を作り出してそれが膜を通る空気の流れを引き出すのを助けながら単純に噴き出すことによって除去されてもよい。
【0083】
繊維モジュール(ファイバーモジュール)の構成は、モジュールが単位体積当たりの非常に高い表面領域を達成することを可能にするので、非常に望ましいものである。
【0084】
本発明に従って作られた膜は、良好な耐pH性(酸及び塩基)及び耐酸化性(塩素、オゾンなど)をもつ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
具体的態様を参照して本発明を説明するが、当業者には本明細書で開示した発明概念が開示したこれらの具体的態様のみに限定されないことが理解されよう。
【0086】
図1aと1bは、HF膜を調製するために用いた代替的なTIPS法の図である。
TIPS法はPCT AU94/00198 (WO94/17204) AU653528に、より詳細に説明されており、その内容を参照により本明細書に援用する。本発明の膜を調製するために用いた一つの好ましい方法は、簡単化した形で本明細書で説明している。
【0087】
本発明の一つの好ましい形では、ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)を中空糸として形成する。ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)は適切な溶媒中に溶かし、次に環状の共押出ヘッドを通して押出した。
【0088】
[中空糸の調製]
中空糸に関して、本発明の方法を実施するための2つの可能な方法がある。一つは断面図1bに示したように3つの同心円状の通路をもつ共押出ヘッドを介するものであり、他方は4つの同心円状の通路を有する4重の共押出ヘッドを介するものであり、図1aの断面で示す。冷却液を糸と接触させる方法を除いて、両方の場合に原理は概して同じである。
【0089】
両方の場合で、軸通路1は内膜形成液11を含んでよい。第一の外側同心円通路2は、膜を形成するための高分子と溶媒システムとの均質混合物12を含み、次の外側同心円通路3はコーティング液13を有する。三重押出ヘッドの場合は、冷却は、押出ヘッドに直接近接させるか又は中間の空気層でその下にわずかに空間をとった浴である。四重押出ヘッドにおいては、最も外側の通路4は、糸に対する冷却液14を適用する。
【0090】
注意深い熱制御条件下で、内腔形成液、膜形成液、及びコーティング液が予め決めた温度(さらに、冷却を最も外側の同心円状通路を使って冷却液を適用する場合は予め決めた流速も)で冷却液と接触する。ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)溶液は、中空糸の内側で内腔形成液と接触し、中空糸の外側でコーティング液及び/又は冷却浴液と接触する。
【0091】
内腔形成液及びコーティング液は溶媒システムの一以上の成分を、単独又はその他の溶媒との組み合わせで、選択された割合(第一の成分は存在しなくてもよい)で含む。コーティング液及び内腔液の組成物は、気孔径及び膜表面での気孔頻度を決定する。
【0092】
各液は、個別の計量ポンプを用いて押出ヘッドに輸送される。3つの成分は個々に加熱され、断熱し且つ外部加熱したパイプを通して輸送される。押出ヘッドは多くの温度ゾーンをもっている。内腔液、膜形成溶液(ドープ)、及びコーティング液は、入念に監視された温度ゾーン内で実質的に同じ温度にされ、この温度ゾーンでドープが形作られる。上述したように、冷却の正確な性質は、四重又は三重押出ヘッドのいずれを用いたかに左右される。四重の場合、冷却液は外側の同心円通路を通って導入される。糸は冷却液とは非常に異なる線速度で冷却チューブを降りてきてもよい。所望する場合は、糸は次にさらなる量の冷却液中を通過してもよい。
【0093】
三重押出システムでは、糸はダイから排出され、これは任意選択で糸の構造を決定するために役立つように茎の形状であってもよい。糸は冷却浴中を通す前に任意選択で空気層(エアギャップ)を通してもよい。本明細書に開示した多く糸(繊維)は、三重押出ヘッドによって調製した。製造パラメータ中にエアギャップ距離を含めることによって明確にする。
【0094】
冷却液を上記ドープと接触させる場合、ドープは非平衡の液−液層分離を起こし2種の液体の大きな界面領域の2連続マトリクスを形成し、ここで高分子が多い相は、小さな界面領域の明確な相に凝集分離する前に固化される。
【0095】
好ましくは、全ての空気、ガス、又は蒸気(内腔用液体として働くガス又は蒸気ではない)は押出時に排除され、糸は軸方向に力を加えられて1.5〜5の範囲のファクターで延伸され、それによって表面気孔を引き延ばす。
【0096】
中空糸膜は完全に形成されて押出ヘッドを離れ、押出後の操作で膜から溶媒システムを除去することを除いては、さらなる形成処理の必要はなく、この押出後の操作は膜製造工程には一般的なものである。好ましい方法では、高分子を溶かさないがドープ溶媒と混合可能である適切な溶媒が、完成した膜から高分子について溶媒を除去するために用いられる。
【0097】
内腔形成液は、本明細書で開示したような広範囲の物質から選択できる。同じ物質を、コーティング及び冷却液として用いてもよい。水又は実質的に任意の液体が冷却液として使用できる。高度な非対称構造を望む場合は水を用いる。
【0098】
非対称膜は、まれな場合に、TIPS工程から生じうる。偏析の程度及び速度が膜の外側の面でより速く、その界面から遠いとより遅くおこる。このことが表面でのより小さな気孔とより中心部でのより大きな気孔とをもつ気孔径勾配をもたらす。中空糸の界面の気孔は、糸の外側の相と内腔の壁が、ある状況では小さくて「スキン」領域を生じうる。これは約1ミクロンの厚さであり、濾過にとって重要な領域である。したがって、糸の外側は小さな気孔をもつが、高分子領域の中心はより大きな気孔径をもつ。
【0099】
ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)膜は、グリセリルトリアセテート(GTA)又はCitroflex 2を溶媒として用い、水冷却浴中への押出によって調製した。SEMによって観測した膜の構造は、ある程度スキン化があるが優れていることがわかった。
【0100】
ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)膜は、TIPS工程について上述した方法での押出によって調製した。ドープはCitroflex又はGTA溶媒(21〜24%のポリマーをドープ)から調製し、Citroflex又はGTAのいずれかでコーティングした。コーティングなしで作った試料のSEMは、不浸透性のスキンと見かけ上高い破断伸度(BE)と破断力(BE)値をもっていた。
【0101】
GTAサンプルは高い泡立ち点をもち、少ない数の大きな気孔よりも多くの小さな気孔が高い流量をもたらすことを示している。Citroflex 2コートした膜は、SEMにおいて、良好な気孔構造をもつことがわかる。
【0102】
したがって、Halar糸のためのコーティングとしてGTAを用いることは、糸の表面の構造と気孔率の両方に対して顕著な量の制御をもたらす。より低いコーティング流速は、糸の透過性を保ち、非対称性を高めるようにみえるが、より速いコーティング流量はより多くの開放表面を与える。1cc/分の試料の透過性は、5cc/分の試料とそれほど違わないことは興味深いことであり、糸表面はそれほど多孔性ではないように思われる。このことは、内部の気孔径が非常に小さいことを示唆している。したがって、表面気孔率が正確に制御された場合、いずれも優れた泡立ち点/糸の保持特性を維持しながら、高分子濃度を低減しうるか又は透過性を高めるための溶媒として用いたCitroflex 2を低減しうる。
【0103】
〔平面シートの調製〕
約160gの溶媒(GTA又はCitroflex 2)を温度を制御するための熱電対を備えたガラスの反応容器中に入れた。連続撹拌しながら、溶媒を230℃に加熱し、次に約40gのHalar 901LCをその容器に添加した。高分子は急速に溶解し、10〜15分間混合し、次に高分子溶液の試料をフラスコから、120℃に予備加熱したガラス板状に注いだ。次にドープ液を、これも120℃に予備加熱したガラス棒で上記板上にすみやかに広げた。この棒は両端の周りに巻いた粘着テープを有し、ドープ液を広げる時に板上の均一な高さに棒を持ち上げ、それにより均一な厚さのシートが得られた。成形膜は迅速に冷却し且つ固化させて平面膜シートを形成し、エタノール中で洗浄し、空気中で乾燥させた。
【0104】
Halar膜は上述したようにして調製した。22〜35cc/分の流速、5cc/分のdigolの内膜流量で、GTA溶媒中の約21%Halarを使用した。コーティングは任意選択であるが、用いる場合は10cc/分でCitroflex 2又はGTAのいずれかであった。全体を水中で冷却した。非対称膜の壁の厚さは150〜250μmだった。破断伸度は良好であり(90%を超える)、BF(N)は約1.3、PB(kPa)は約490、そして応力は4.5MPaだった。
【0105】
本発明を、具体的態様を参照して説明したが、本発明の概念は開示したこれらの具体的態様に限定されないことを当業者は理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】図1aは、HF膜を調製するために用いた代替的なTIPS法の図である。
【図1B】図1aは、HF膜を調製するために用いた代替的なTIPS法の図である。
【符号の説明】
【0107】
1・・・軸通路、2・・・外側同心円通路、3・・・外側同心円通路、4・・・外側通路、11・・・内膜形成液、12・・・高分子と溶媒の混合物、13・・・コーティング液、14・・・冷却液
【図1a】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性高分子から形成された多孔質高分子膜であって、前記膜を横切る親水性液体の流れを許容せず、ガス及び蒸気の透過を許容するために充分な径の膜の気孔を有する多孔質高分子膜。
【請求項2】
膜の気孔径が、膜を横切る液体水分子の流れを許容せず、ガス及び/又は蒸気の透過を許容するように選択される、請求項1記載の多孔質高分子膜。
【請求項3】
膜の気孔径が、膜材料の気孔率との組み合わせでガス濾過膜を提供するように選択される、請求項1又は2に記載の多孔質高分子膜。
【請求項4】
Halarから形成された、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項5】
前記気孔径が0.05μm〜5μmの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項6】
前記気孔径が0.1μm〜1μmの範囲である、請求項5記載の多孔質高分子膜。
【請求項7】
前記気孔径が0.1μm〜0.5μmの範囲である、請求項6記載の多孔質高分子膜。
【請求項8】
狭い範囲の気孔径分布を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項9】
気孔率が70%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項10】
気孔率が80%以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項11】
気孔率が70〜80%である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項12】
80%より大きな気孔率を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項13】
非対称膜の形態が、大きな気孔の面と、小さな気孔の面と、膜の断面を横切る気孔径勾配とを有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項14】
平面シートの形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項15】
中空糸膜の形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項16】
熱誘導相分離によって製造される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項17】
膜透過蒸留、浸透蒸留、脱ガス、乾燥、吸着、及び無気泡膜通気からなる群から選択される1以上の工程で用いられる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項18】
ガス濾過膜として使用するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項19】
HFガスをストリッピングするために使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項20】
苛性溶液の脱ガスに使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項21】
塩素ガス/アルカリ濾過に使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項22】
溶解している塩素を除去するために水道水の脱ガスに使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質構高分子膜。
【請求項23】
膜接触器に使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項24】
有毒な溶媒残渣を含まない、請求項1〜23のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項25】
Halarから形成され、且つ下記式I又は式II:
【化1】

(式中、R、R、及びRは独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその他のアルキルであり;
は、H、OH、COR、OCOR、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその他のアルキル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、又はその他のアルコキシ、であり;
は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその他のアルキルである。)
で表される1以上の化合物を含有する溶液から調製された、ガス濾過膜。
【請求項26】
=R=R=エチル、及びR=Hである、請求項25に記載のガス濾過膜。
【請求項27】
式I又は式IIで表される化合物が気孔調節剤として作用する、請求項26に記載のガス濾過膜。
【請求項28】
式Iで表される化合物がクエン酸エチルエステルである、請求項27に記載のガス濾過膜。
【請求項29】
式IIで表される化合物がグリセロールトリアセテートである、請求項27に記載のガス濾過膜。
【請求項30】
疎水性である、請求項1〜29のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項31】
親水性である、請求項1〜29のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項32】
基礎となる高分子材料と、前記基礎となる高分子材料と相容性の材料とを含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項33】
前記基礎となる高分子材料がHalarである、請求項1〜32のいずれか一項に記載の多孔質高分子膜。
【請求項34】
1.3Nより大きな引っ張り強度を有する多孔質高分子膜。
【請求項35】
以下のステップ:
(a)Halarと、Halarに対する潜在的溶媒である第一成分及び任意選択によりHalarに対する非溶媒である第二成分を最初に含む溶媒システムとを、高温で加熱し、Halarが前記溶媒システムに溶解して光学的に透明な溶液を与えるステップ、
(b)前記溶液を急速に冷却し、非平衡の液−液相分離が起こって、高分子が多い連続相と高分子が少ない連続相とを形成し、前記2つの相が大きな界面領域の双連続マトリクス
の形態で混合されるステップ、
(c)前記の高分子が多い相が固化するまで冷却を継続するステップ;
(d)前記固体高分子材料から前記の高分子の少ない相を除去するステップ;ここで、膜極性との組み合わせでガス濾過膜をもたらす気孔径が達成されるように条件を選択する、
を含むガス濾過材料の製造方法。
【請求項36】
以下のステップ:
相容性溶媒とHalarの混合物を形成するステップ;
前記混合物を、中空糸をもたらす形状に成形するステップ;
前記混合物の管腔内部表面を内腔形成液と接触させるステップ;
前記混合物中で熱誘導相分離を起こさせて中空糸膜を形成するステップ;
前記膜から溶媒を除去するステップ;かつ、
ここで、膜の極性との組み合わせでガス濾過膜をもたらす気孔径を達成するように前記条件を選択する、
を含む、中空糸Halar膜を形成する方法。
【請求項37】
前記混合物中にHalarが14〜25%の範囲の量で存在する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記混合物中にHalarが16〜23%の範囲の量で存在する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記内腔形成液がdigolである、請求項36〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記工程が200℃よりも高い温度で行われる、請求項36〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記工程が220℃よりも高い温度で行われる、請求項36〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
以下のステップ:
Halarと相容性溶媒との混合物を形成するステップ;
前記混合物を、中空糸をもたらす形状に成形するステップ;
前記混合物の外表面をコーティング液と接触させるステップ;
前記混合物の管腔内部表面を内腔形成液と接触させるステップ;
前記混合物中で熱誘導相分離を起こさせて中空糸膜を形成するステップ;
前記膜から溶媒を抽出するステップ;かつ、
ここで、膜の極性との組み合わせでガス濾過膜をもたらす気孔径を達成するように条件を選択する、
を含む、中空糸Halar膜の形成方法。

【図1B】
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【公表番号】特表2008−504122(P2008−504122A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518410(P2007−518410)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000961
【国際公開番号】WO2006/002469
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507058144)シーメンス・ウォーター・テクノロジーズ・コーポレーション (23)
【Fターム(参考)】