説明

気体送通・排出切替弁を備えた外部型血管・心機能補助システム

【課題】本発明は、加圧部の膨張・収縮を個々の患者の心臓の状態と精密に同調させることができ、広範囲の患者に使用可能な外部型血管・心機能補助システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の外部型血管・心機能補助システムは、圧縮気体発生手段Cを備えた装置本体4と、患者の処置部位を囲む少なくとも1個の加圧部3と、圧縮気体発生手段Cと加圧部3を連通する配送管7とから成り、配送管7の中間部分に、加圧部3の近傍に気体送通・排出切替弁8を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧部の膨張・収縮を個々の患者の心臓の状態と精密に同調させることができ、広範囲の患者に使用可能な外部型血管・心機能補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環器系疾患治療等の現場で、患者の血管・心機能を補助する手段として、非侵襲性、無外傷性の手段である外部型カウンターパルゼーション装置等の血管・心機能補助システムが使用されている。例えば、特許文献1には、圧縮気体発生手段を備えた装置本体と、患者の処置部位を囲む加圧部とから成り、この圧縮気体発生手段と加圧部が配送管により連通されたシステムであって、前記圧縮気体発生手段からの気体の送達に基づく前記加圧部の膨張による患者処置部位の押圧と前記加圧部の排気に基づくその収縮による当該部位の除圧を、患者の心臓の拡張・収縮と同調させて行うことを特徴とするものが開示されている。また、特許文献2には、加圧部をダブルチャンバー方式にして、患者処置部位に与える衝撃を和らげたシステムが開示されている。
【特許文献1】特表2004-523260号公報
【特許文献2】特開2004-261592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来のシステムでは、圧縮気体を加圧部へ送り出す手段と、当該加圧部内の気体を排出する手段が共に装置本体に内蔵されている。このため、かかる圧縮気体の送出と加圧部の排気を患者の心拍に合わせて交番に行うにつき、特に、心拍の速い患者に用いた場合等に、加圧部の排気に伴う問題があった。即ち、従来のシステムでは、加圧部内の気体が排出されるためには、気体は、当該加圧部から長い配送管を通って、装置本体内の排気手段に回収される必要があり、これに、圧縮気体の送出と排気の切替操作上、各種連結部に設けられたジョイント等の抵抗等の負荷が加わって、未だ加圧部が十分に排気されないうちに圧縮気体が加圧部に送達されてしまう誤作動が生じることが少なくなかった。また、配送管が治療現場で嵩張り、治療現場の安全性を害する問題もあった。
そこで、本発明は、個々の患者の心拍に正確に同期した、患者処置部位の適切な押圧・除圧を可能とする外部型血管・心機能補助システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の外部型血管・心機能補助システム(以下、本発明のシステムと称する)は、圧縮気体発生手段を備えた装置本体と、患者の処置部位を囲む少なくとも1個の加圧部と、前記圧縮気体発生手段と前記加圧部を連通する配送管と、から成り、前記圧縮気体発生手段から前記加圧部に気体を送達することにより前記加圧部を膨張させて、前記処置部位を押圧する外部型血管・心機能補助システムにおいて、前記配送管の中間部分に、前記加圧部の近傍に、気体送通・排出切替弁(以下、切替弁と称する)を設け、この切替弁を、前記圧縮気体発生手段から前記加圧部への圧縮気体の送通と、前記加圧部からの気体の排出を行うように形成したことを特徴とする。
【0005】
かかる構成により、圧縮気体送出の停止後早期に加圧部の十分な排気を完遂でき、個々の患者の心臓の収縮・拡張に精密かつ正確に同期した加圧部の膨張・収縮を、効率的に確保することが可能となる。
なお、本明細書中「患者処置部位」とは、加圧部を取り付ける患者の身体の部分を意味し、例えば、患者の腰部、上肢部、下肢部および足底等の各部のみならず、当該各部の一部が含まれる。
【0006】
前記切替弁は、前記配送管の中間部分に、前記加圧部の近傍に取り付けられることが好ましく、特に、前記加圧部から5〜100cm離れた箇所に取り付けられた場合に、非常に優れた加圧部排気効果が得られる。また、より迅速に加圧部から気体を排出するためには、かかる切替弁は、各加圧部につき1個取り付けられることが好ましい。
【0007】
かかる切替弁としては、例えば、柱形の内部空洞を有する弁筺と、この弁筺内に、当該弁筺の内周壁面と密着した状態で、当該弁筺内部の軸方向にスライド移動可能に収容される平板形の弁体とから成る切替弁であって、前記弁筺が、その一端部側から他端部側に向けて、順次間隔を開けて、第一、第二、および第三の開口を有し、前記第一の開口が前記圧縮気体発生手段に、前記第二の開口が前記加圧部に、各々管状部材で連通されると共に、前記第三の開口が外部に開放しており、かつ、前記弁体に、当該弁体を常時前記第一の開口と前記第二の開口の間に付勢する弾性体であって、前記第一の開口からの圧縮気体の流入による前記弁体の、前記第二の開口と前記第三の開口の間の位置へのスライド移動を可能とするものを付設した切替弁(以下、気圧式切替弁と称する)を好適に使用できる。
かかる気圧式切替弁は、加圧部に送出される圧縮気体の圧力を利用して、加圧部への当該気体の送通と排気の両方を単独で行うことができ、極めて効率的であり、またシステムをコンパクト化できる点で都合がよい。
【0008】
詳しくは、前記弁体は、弁筺内部で当該弁体により仕切られる空間間の気体の流通を封じると共に、前記第一、第二および第三の開口の間をスライド移動することにより、第一の開口と第二の開口の開通状態と、第二の開口と第三の開口の開通状態を切り替える機能を果たす。かかる弁体としては、例えば、合成ゴムのみから成るものや、アルミ等の軽量の金属と合成ゴムを組み合わせたもの、プラスチック等の樹脂と合成ゴムを組み合わせたもの等を好適に使用できる。
【0009】
前記弾性体は、例えば、その一部が前記弁体に、他の部分が前記弁筺内壁に固定されて、前記弁筺内で前記弁体を支持すると共に、弁体に対する力の付加および解除に伴い、その弾性力により、当該弁体の移動の許容と、実質的に元の位置への当該弁体の押し戻しないし引き戻しを反復的に行い得るものであり、例えばプラスチック製の弁筺内部に、合成ゴムから成る5〜50gの弁体を収容した前記気圧式切替弁において、当該弁体の面に対して略直角方向に10〜100KPaの気圧がかかった場合に、当該弁体の0.1〜10cm程度の当該力方向の移動を許容すると共に、気圧が除去されると当該弁体を実質的に元の位置まで押し戻す弾性特性を有するもの、例えば弾性係数が6.0×104〜1.8×105N/mm2の金属製のコイルバネ等を好適に使用できる。
【0010】
前記加圧部は、患者処置部位を包囲した状態で、内部に気体が封入されることにより膨張して当該処置部位に圧力を付与し得る袋体であり、一つの袋体から成るものであってもよいが、前記特許文献2に記載されるダブルチャンバー方式のものを好適に使用でき、特に、以下に説明する支持板を含むダブルチャンバー方式の加圧部を使用した場合、非常に優れた押圧力を確保できる。
【0011】
即ち、本発明において特に適した、支持板を含むダブルチャンバー方式の加圧部は、患者処置部位を覆う常時膨張可能な予圧チャンバーと、この予圧チャンバーと前記処置部位の間に別個に担持される随時膨張可能なメインチャンバーと、前記予圧チャンバーと前記メインチャンバーの間に配置される支持板とから成り、予圧チャンバーへの気体の封入による予圧チャンバーの常時膨張下、メインチャンバーのみにおいて、圧縮気体の送達と排気を反復することで、加圧部による急激な圧迫を回避して、メインチャンバーと患者処置部位との接触箇所で、的を絞った効率的な押圧・除圧を確保すると共に、メインチャンバーと予圧チャンバーの間に支持板を配置することで効率的に、メインチャンバーの当該押圧力を高め、メインチャンバーの押圧・除圧機能を安定化したものである。かかる加圧部は、低馬力のエア・コンプレッサーを用いて十分な押圧力を発揮し、経済面でも都合がよい。メインチャンバーは、例えば狭い範囲を押圧したい場合には、これを細長棒状に形成する等、押圧を要する処置部位の範囲や形態、要求される押圧の程度等に応じた適切なサイズ・形状とすることができる。予圧チャンバーは、メインチャンバーの少なくとも一部を覆って、処置部位との間でこれを担持可能な種々の形状とすることができる。
【0012】
詳しくは、前記支持板は、メインチャンバーよりも大きく形成されて、メインチャンバーの表面全体を覆うことが好ましい。前記支持板は、また、患者処置部位の形状に沿って若干撓み、メインチャンバー膨張時、これに押し上げられつつもその撓んだ形状を維持し得る、弾力性と形状維持性を併せ持つものが好ましく、さらに、メインチャンバーの膨張を反発する一定の反発力・硬さを保持するものがより好ましい。かかる支持板としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の合成樹脂製のものを好適に使用できる。なお、メインチャンバーの収縮時、支持板は患者処置部位周囲に沿って、患者処置部位を保護する機能も果たす。
【0013】
かかるダブルチャンバー方式の加圧部を用いて本発明のシステムを構成する場合、少なくとも前記メインチャンバーと前記圧縮気体発生手段を配送管で連通し、前記メインチャンバーと前記圧縮気体発生手段を連通する当該配送管の中間部分に、前記メインチャンバーの近傍に、好ましくは各メインチャンバーに1個ずつ、前記切替弁を取り付ける。特に好ましくは、前記切替弁は、前記メインチャンバーから5〜100cm離れた箇所に取り付けられる。
本発明のシステムを構成する前記配送管は、あらゆる適切な管状部材であり、例えばゴム管、合成ポリマー製のチューブ等である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシステムによれば、個々の患者の心拍に非常に正確に同期した適切な押圧を患者処置部位に付与できる。
【実施例】
【0015】
以下の実施例1〜4により本発明のシステムを詳細に説明し、実施例5〜7により本発明のシステムの効果を示す。
[実施例1]
図1に、本発明のシステムの一例をブロック図で示す。この図に示すシステムは、圧縮気体発生手段C(図1中のコンプレッサー)を内蔵する装置本体4と加圧部3と配送管7とから成る。加圧部3はメインチャンバー1と予圧チャンバー2と両チャンバー間に担持される支持板(図1には示さず)とから成る。装置本体4は、コンプレッサーCからの圧縮気体を一時的に貯め置くタンク5を内蔵しており、各チャンバーは配送管7でタンク5と連通されている。装置本体4内部で配送管7には、加圧部への圧縮気体の送出と配送管中の気体の排気を行う電磁弁Eが取り付けられている。電磁弁Eは、患者の心臓の状態を認識するコンピュータに接続しており、その指令に基づいて所定の時期に作動する。メインチャンバー1とタンク5を連通する配送管7には、メインチャンバー1から5〜100cm離れた箇所に、タンク5からの圧縮気体の圧力を利用して作動する気圧式切替弁8が取り付けられている。気圧式切替弁8の取付箇所がメインチャンバー1に近い程、メインチャンバー1の排気効率がよい。
【0016】
[実施例2]
本実施例では、本発明のシステムに適した加圧部を、図2および図3に示す一具体例を用いて説明する。本実施例の加圧部は、図2に示すメインチャンバー1および支持板9と、図3に使用状態を示す予圧チャンバー2とから成る。メインチャンバー1は、縦が24cmで横が12cmの略長方形の表面の一端近傍に気体注入口10を設けた袋体であり、合成ゴムから成る。支持板9は、縦が25cmで横が13cmで厚さが0.15cmの硬質ポリ塩化ビニル製の積層板(ASTM D790基準に基づく曲げ弾性率2940〜3140Mpa)であり、メインチャンバー1の気体注入口10を有する面を覆ってメインチャンバー1に重ねられる。即ち、支持板9は、メインチャンバー1の気体注入口10と重なる箇所に、気体注入口10を貫通するための孔11を有し、メインチャンバー1と当接状態で重なり得る。メインチャンバー1と支持板9は、両者のずれを抑えるために、互いの当接面の少なくとも一部を接着テープ等で接着・結合してもよい。
【0017】
ここで、加圧部の作動原理を説明する。患者処置部位Pにメインチャンバー1と支持板9をこの順で当てがい、その上に予圧チャンバー2を配置する。この状態で、支持板9は、処置部位Pの表面形状に沿って若干湾曲しており(図3A)、メインチャンバー1は、支持板9に裏打ち・支持されて、ある程度の硬さを有している。予圧チャンバー2は、その一部に設けられた気体注入口(図示せず)を通じて、タンク5から圧縮気体(例えば空気)を注入することより、常時、例えば10KPaの膨張状態とされる。この状態で、患者の心拍に合わせてメインチャンバー1にタンク5から、例えば40KPaの圧縮気体を送ることによりメインチャンバー1を膨張させると、支持板9が押し上げられ(図2B)、これに伴って膨張状態の予圧チャンバー2が圧縮変形して支持板9全体を押し、次いでこの支持板9が面全体でメインチャンバー1を押す結果、処置部位Pとメインチャンバー1との接触部位P'が強く押圧される。
例えば下肢の表在静脈Vの加圧を要する場合には、このメインチャンバー1を膝の裏側に担持せしめると効果的である。また、メインチャンバー1の代わりに、棒状に形成された別のメインチャンバーを、表剤静脈Vと予圧チャンバー2の間に担持させることにより、いっそう効果的に表在静脈Vを押圧できる。
【0018】
なお、このように配置した加圧部の外周に、予圧チャンバー2を覆う合成樹脂製硬質板12をその内部に挟持せしめたカフホルダー13を巻付けた場合、メインチャンバー1、支持板9および予圧チャンバー2の膨張・変位・圧縮変形により生じる加圧部外部方向への力が硬質板12により反発されて、予圧チャンバー2、支持板9およびメインチャンバー1が順次、処置部位Pの方向へといっそう強く圧迫され、接触部位P'がいっそう強く押圧される。
【0019】
[実施例3]
本実施例では、本発明のシステムに適した気圧式切替弁を、図4に示す一具体例を用いて説明する。図4に示す気圧式切替弁は、円柱形の内部空洞を有するプラスチック製の弁筺14と、弁筺14の内部を仕切るように設けられる円板形の弁体15とから成る。弁筺14は、一端壁に第一の開口16が、周壁中央部に第二の開口17が、周壁の、第二の開口17よりも弁筺他端壁側に、外部に通じる第三の開口18が設けられている。第一の開口16はゴム製の配送管部材によりタンク(図1の符号5)に、第二の開口17はゴム製の配送管部材によりメインチャンバー1に連結される。弁体15は、弁筺14の内径より若干小さな径を有するアルミ製の円板であって、その中央部に貫通口を有するもの19の周囲に合成ゴム製の枠20を取り付けて成り、弁筺14の内径より若干大きな径を有する。弁筺14の他端壁中央部には、弁筺内部空洞の軸方向に、第一の開口16の近傍まで伸びるロッド21が設けられていて、弁体15を貫通し、弁体15の当該軸方向のスライド移動を案内する。弁体15は、また、その一方の面の中央部に取り付けられたリング状のパッキン22により支持されて、ロッド21に対して直交状態を保ち得、かつ、ロッド21を巻回するスチール製の弁バネ23(JECTIVE製、弾性係数8.4×104N/mm2)により、弁筺他端壁の内側部分に連結されて、常時、第一の開口16と第二の開口17の間に付勢される。かかる構成により、弁筺14の内部の、弁体15により仕切られる空間(図5の符号S1、S2)の間を、気体は実質的に流通し得ず、図5Aに示すように、弁体15に対し、圧縮気体による圧力(約30〜50KPa)がかかると、弁体15が、弁筺14の内周壁面と密着状態を保ちながら、第二の開口17と第三の開口18の間の位置まで(約1〜5cm)スライド移動する(D1)。(この結果、第一の開口16と第二の開口17が開通して、圧縮気体がメインチャンバー1に送達される。)次いで圧縮気体の圧力が解除されると、弁体15が第一の開口16と第二の開口17の間の実質的に元の位置に戻る。(この結果、第二の開口17と第三の開口18が開通して、メインチャンバー1内の気体が排出される。)本実施例では、弁筺14の内部に、第二の開口17と第三の開口18の間にリング形の障壁板24が設けられており、弁体15は、障壁板24よりも弁筺他端壁側には移動できない。
【0020】
[実施例4]
本実施例では、本発明のシステムを構成するのに適した気圧式切替弁を、図6に示すもう一つの具体例を用いて説明する。図6に示す気圧式切替弁は、実施例3の気圧式切替弁を変形したものであり、実施例1の気圧式切替弁と概ね同様の構成を示すが、第三の開口18'が弁筺の他端壁に設けられている。また、弁体15'は、弁筺14'の内径より若干大きな径を有するゴム製の円板から成り、その一方の面の中央部に、弁筺14'の他端壁中央部に設けられた貫通口から外部に進退自在に貫通するロッド21'を有し、かつロッド21'を巻回する弁バネ23' (JECTIVE製、弾性係数8.0×104N/mm2)により弁筺他端壁に連結されていて、弁バネ23'により常時、第一の開口16'と第二の開口17'の間に付勢されている(図6A)。ロッド21'は、外部へ突き抜けた箇所でリング型ネジNにより、その軸方向を弁筺内部空洞の軸方向に一致させて進退可能に支持されている。弁体15'に対し、圧力(約30〜50KPa)がかかると、弁体15'は、弁筺14'の内周壁面に密着した状態で、第二の開口17'と第三の開口18'の間の位置まで(約1〜5cm)スライド移動する(図6B)。なお、弁体15'の弁筺他端壁側へのスライド移動は、弁バネ23'が最も収縮した段階で止まり、それ以上は移動できない。
【0021】
実施例2の加圧部と、実施例3または実施例4の気圧式切替弁を用いた本発明のシステムでは、気圧式切替弁を使用しない従来のシステムと比較して、加圧部の排気速度が1.5〜2倍も速い。即ち、圧縮気体発生手段からの気体の送達時、メインチャンバー1の内圧(P1とする)、予圧チャンバー2の内圧(P2とする)および大気圧(P0とする)に関して、P1>P2>P0の関係が成立するところ、圧縮気体の送出を停止すると、予圧チャンバー2の内圧(P2)と支持板9の形状変化によりメインチャンバー1内の気体が押し出され、メインチャンバー1の内圧(P1)が急速に低下し、さらに予圧チャンバー2の内圧(P2)がメインチャンバー1の内圧(P1)に逆転した後は、メインチャンバー1の排気が一層加速される。
【0022】
[実施例5]
本実施例では、支持板を含むダブルチャンバー方式の加圧部の押圧能力を以下のごとく評価した。
患者の処置部位−足底、脹脛、大腿および腰−に実施例2の加圧部を取り付け、上からカフホルダー13を巻きつけて固定した。患者の処置部位Pとメインチャンバー1の間に圧力センサー[株式会社エイ・エム・アイ・テクノ製、名称エアパック(型式AMI3037)および名称接触圧測定器(型式A−0101)から構成される]を設置し、予圧チャンバー2を10KPaの常時加圧状態とし、エア・コンプレッサーから40KPaの圧縮空気をメインチャンバー1に一定の時間間隔で送った。圧力センサーの測定器が示す最大値と最小値を記録した。前記最大値はメインチャンバーの膨張による加圧部の最大の押圧力を示し、前記最小値は、メインチャンバーの収縮時のその押圧力を示す。結果を図7に示す。
【0023】
図7から、支持板9を含む加圧部は、支持板を含まないものと比較して、メインチャンバー膨張時に強い押圧力を示し、患者処置部位における血液循環向上効果に優れることが分かる。また、支持板を含む加圧部は、メインチャンバー膨張時とメインチャンバー収縮時の押圧力の差が大きいことから、抑揚のある加圧を患者処置部位に付与できることが分かる。
【0024】
[実施例6]
本実施例では、本発明のシステムの加圧部排気能力を下記のごとく評価した。本発明のシステムとして、実施例2の加圧部と実施例4に示す気圧式切替弁を使用した実施例1のシステムを用い、比較用のシステムとして、装置本体に内蔵された電磁弁により圧縮気体の送出と加圧部の排気を行う従来のシステムを使用した。なお、比較用のシステムでも、実施例2の加圧部を使用した。
加圧部を患者処置部位(脹脛)に取り付け、実施例5と同様にカフホルダー13を巻きつけて固定した。患者の処置部位Pとメインチャンバー1の間に実施例5で用いたものと同じ圧力センサーを設置し、予圧チャンバー2を10KPaの常時加圧状態とし、エア・コンプレッサーから40KPaの圧縮空気をメインチャンバー1に所定の間隔で送り、圧力センサー測定器が示す値を記録した。結果の一部を図8に示す。
図8より、気圧式切替弁を使用することにより、使用しない場合と比較して、患者処置部位で1KPaも大きな除圧が達成されることが分かる。これが、気圧式切替弁を使用することにより、メインチャンバー内の気体がより十分に排気されたことによることは明らかである。
【0025】
[実施例7]
本実施例では、本発明のシステムのメインチャンバー排気能力を、実施例6で用いたものと同じ本発明のシステムと比較用のシステムを用いて、以下のごとく排気速度の観点から評価した。
加圧部を患者処置部位(脹脛)に取り付け、実施例5と同様にカフホルダー13を巻きつけて固定した。患者処置部位Pとメインチャンバー1の間に実施例5で用いたものと同じ圧力センサーを設置し、予圧チャンバー2を8KPaの常時加圧状態とし、メインチャンバーに圧縮気体を送達して患者処置部位の初期圧を38.0KPaに設定し、圧縮気体の送出を止めてから一定時間経過毎に、圧力センサー測定器が示す値を記録した。結果を図9に示す。
図9より、気圧式切替弁を取り付けることにより、より短時間でメインチャンバーの排気を完遂できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明のシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明のシステムに適した加圧部を構成するメインチャンバーおよび支持板の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明のシステムに適した加圧部の使用態様を示す断面図であり、Aはメインチャンバー収縮時の態様を、Bはメインチャンバー膨張時の態様を示す。
【図4】図4は、気圧式切替弁の一具体例を示す図である。
【図5】図5は、本発明のシステムの作動原理を示す図である。
【図6】図6は、気圧式切替弁の別の具体例を示す図である。
【図7】図7は、支持板を含むダブルチャンバー方式の加圧部の患者処置部位押圧能力の評価結果を示す表である。
【図8】図8は、本発明のシステムの加圧部排気能力を比較評価した結果を示すグラフであり、Aは本発明のシステムに関する測定データを、Bは比較用システムに関する測定データを示す。
【図9】図9は、本発明のシステムの加圧部排気能力を排気速度の観点から比較評価した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0027】
1 メインチャンバー
2 予圧チャンバー
3 加圧部
4 装置本体
5 タンク
7 配送管
8 切替弁
9 支持板
10 気体注入口
11 孔
12 合成樹脂製硬質板
13 カフホルダー
14、14' 弁筺
15、15' 弁体
16、16' 第一の開口
17、17' 第二の開口
18、18' 第三の開口
19 アルミ製の円板
20 合成ゴム製の枠
21、21' ロッド
22 パッキン
23、23' 弁バネ
24 障壁板
C 圧縮気体発生手段
D1、D2 弁体の移動方向
E 電磁弁
P 患者処置部位
P' 患者処置部位とメインチャンバーとの接触部位
S1、S2 弁体により仕切られる空間部分
V 表在静脈

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気体発生手段を備えた装置本体と、患者処置部位を囲む少なくとも1個の加圧部と、前記圧縮気体発生手段と前記加圧部を連通する配送管と、から成り、前記圧縮気体発生手段から前記加圧部に気体を送達することにより前記加圧部を膨張させて、前記処置部位を押圧する外部型血管・心機能補助システムにおいて、
前記配送管の中間部分に、前記加圧部の近傍に、気体送通・排出切替弁を設け、この気体送通・排出切替弁を、前記圧縮気体発生手段から前記加圧部への圧縮気体の送通と、前記加圧部からの気体の排出を行うように形成したことを特徴とする外部型血管・心機能補助システム。
【請求項2】
前記気体送通・排出切替弁が、柱形の内部空洞を有する弁筺と、この弁筺内に、当該弁筺の内周壁面と密着した状態で、当該弁筺内部の軸方向にスライド移動可能に収容される平板形の弁体とから成り、
前記弁筺が、その一端部側から他端部側に向けて、順次間隔を開けて、第一、第二、および第三の開口を有し、前記第一の開口が前記圧縮気体発生手段に、前記第二の開口が前記加圧部に、各々管状部材で連通されると共に、前記第三の開口が外部に開放しており、かつ、
前記弁体に、当該弁体を前記第一の開口と前記第二の開口の間に常時付勢する弾性体であって、前記第一の開口からの圧縮気体の流入による前記弁体の、前記第二の開口と前記第三の開口の間の位置へのスライド移動を可能とするものが付設されていることを特徴とする請求項1に記載の外部型血管・心機能補助システム。
【請求項3】
前記加圧部が、前記患者処置部位を覆う常時膨張可能な予圧チャンバーと、この予圧チャンバーと当該処置部位の間に別個に担持されるメインチャンバーと、前記予圧チャンバーと前記メインチャンバーの間に配置される支持板と、から成り、少なくとも前記メインチャンバーが前記配送管により前記圧縮気体発生手段と連通されており、前記気体送通・排出切替弁が、前記メインチャンバーと前記圧縮気体発生手段とを連通する当該配送管の中間部分に、前記メインチャンバーの近傍に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外部型血管・心機能補助システム。
【請求項4】
前記加圧部の外周にカフホルダーを巻きつけて使用することを特徴とする請求項3に記載の外部型血管・心機能補助システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−200224(P2008−200224A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38725(P2007−38725)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(300023981)西村器械株式会社 (5)
【Fターム(参考)】