説明

気化器用ガバナ及びそれを付設した気化器

【課題】燃料カット機構を備えた気化器について、エンジン停止時のランオン及びジーゼリングの回避を確実にするとともに、エンジン始動性を良好にする。
【解決手段】エンジン停止時にメイン系燃料供給路を遮断するメインカットソレノイド11を備えた気化器1に連結され、そのスロットルレバー12をガバナアーム23,ガバナロッド24を含むリンク手段を介して動作させることによりスロットルバルブの開閉を行うとともに、エンジン停止時にはスロットルレバー12を開方向に動作させる気化器用ガバナ2Aにおいて、そのリンク手段に電動式アクチュエータであるアシストソレノイド25が付設されており、エンジンのキーOFF操作に連動してアシストソレノイド25が駆動することによりスロットルレバー12を強制的に全開位置にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化器用ガバナ及びそれを付設した気化器に関し、殊に、エンジンキーをOFFした後に燃料供給を遮断する燃料カット機構を備えた気化器に付設して、そのスロットルバルブを開閉操作するための気化器用ガバナ及びその気化器用ガバナを付設した気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用エンジン等、比較的簡易な構成のエンジンに燃料を供給する気化器では、例えば特開平10−227264号公報に記載されているように、メインジェット出口からメインノズル入口側に至るメイン系の燃料通路をソレノイド等の電動式アクチュエータで動作する開閉弁により閉鎖することで、燃料供給を遮断してエンジンキーをOFFした後に生じるランオンやジーゼリングを回避するために燃料カット機構を備えたものが周知である。
【0003】
しかし、このような燃料カット機構を備えた気化器において、メイン系の燃料通路を閉鎖した状態であっても、スロー燃料通路、メインウェル、メインノズル内には残留燃料が存在しており、これらの残留燃料がスロー燃料通路を介して吸気通路に吸引されてランオン等を誘発させてしまうという問題がある。
【0004】
これに対し、燃料カット機構を備えるとともにガバナ2Bを付設した図2に示す気化器1のように、エンジン停止時におけるエンジンキーのOFF動作に連動してメインカットソレノイド11が作動することに加え、ガバナ2Bのガバナスプリング22で付勢されたガバナアーム23とガバナロッド24のリンク手段を介し気化器1のスロットルレバー12を開方向に動作させ、スロットルバルブを全開にしてスロー通路から吸気通路に残留燃料が吸引されないようにしたものが知られている。
【0005】
しかしながら、この場合においても、エンジンによってはガバナ2Bの特性上、ガバナスプリング22を弱めに設定することがあり、その結果、エンジン停止時にスロットルレバー12が全開位置まで作動せず、メインカットソレノイド11が作動してもスロー系を経由した燃料でランオンやジーゼリングが誘発されてしまうことがある。また、エンジン停止時にスロットルレバー12が全開位置にならないことを原因とした他の問題として、メイン系からの燃料供給不足によるエンジン始動性の悪化も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−227264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、燃料カット機構を備えた気化器について、エンジン停止時のランオン及びジーゼリングの回避を確実にするとともに、エンジン始動性を良好にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、エンジン停止時にメイン系の燃料供給路を遮断する燃料カット機構を備えた気化器に連結され、そのスロットルレバーをリンク手段により動作させることによりスロットルバルブの開閉を行うとともに、エンジン停止時にはスロットルレバーを開方向に動作させる気化器用ガバナにおいて、前記リンク手段に電動式アクチュエータが付設されており、エンジンキーのOFF操作に連動して電動式アクチュエータが駆動することによりスロットルレバーを強制的に全開位置にすることを特徴とするものとした。
【0009】
このように、燃料カット機構を備えた気化器に付設するガバナにおいて、エンジンキーのOFF操作に連動して駆動させることでスロットルレバーを全開位置まで強制的に動作させる電動式アクチュエータを設けたことにより、エンジン停止時にスロットルバルブを確実に全開状態にすることができる。
【0010】
また、この場合において、前記リンク手段にスロットルレバーの開方向に動作させるように付勢するガバナスプリングが設けられており、前記電動式アクチュエータはガバナスプリングの付勢力によるスロットルレバーの開動作をアシストするようにすれば、ガバナスプリングのバネ圧を最小限に抑えるとともに比較的小出力のアクチュエータによりエンジン停止時にスロットルバルブを全開状態にすることができる。
【0011】
さらに、上述したガバナにおいて、その電動式アクチュエータは通電することにより突出する突出軸を有したソレノイドであるものとすれば、通常時はリンク機構の動作と分離した状態としながら、エンジン停止時に突出動作によりスロットルレバーを開方向に動作させるものとして、極めて簡易な構成で上述した機能を発揮できるものとなる。
【0012】
さらにまた、上述したガバナが付設されているとともに燃料カット機構を備えており、エンジン停止時にエンジンキーのOFF操作に連動してスロットルバルブが全開となる、ことを特徴とした気化器とすれば、ランオンやジーゼリングを確実に回避できるとともにエンジン始動性にも優れたものとなる。
【発明の効果】
【0013】
エンジンのキーOFF操作に連動してスロットルレバーを全開位置まで強制的に動作させる電動式アクチュエータを設けた本発明によると、エンジン停止時のランオン及びジーゼリングの回避を確実にするとともに、エンジン始動性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における実施の形態であるガバナを気化器に付設した状態を示す斜視図である。
【図2】従来例によるガバナを気化器に付設した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態である気化器用のガバナ2Aを気化器1に連結して付設した状態を示している。気化器1は、燃料カット機構としてのメインカットソレノイド11を備えており、エンジンキーのOFF操作に連動してメイン燃料通路を介した燃料供給を遮断する。
【0017】
ガバナ2Aは、操作手段から延設された軸部材により先端側を旋回可能に設けられたガバナアーム23と、その先端側を気化器1のスロットルレバー12に連結するガバナロッド24とを含むリンク手段を有しており、気化器1の吸気通路に配設されたスロットルバルブを、リンク手段を介して開閉動作させる。
【0018】
また、そのガバナアーム23には、その先端側をスロットルレバー12の開弁方向に旋回させる方向に付勢するようにガバナスプリング22が基端側に張設されており、エンジン停止時に気化器1のスロットルバルブを開く動作を自動的に行うようになっており、以上の構成については図2に示した従来のガバナ2Bと同様であり周知の技術である。
【0019】
上述したように、従来例のガバナ2Bにおいては、エンジンキーのOFF操作により気化器1のメインカットソレノイド11を作動させると、通常の汎用エンジンン等ではメイン系の燃料が遮断されるとともに、ガバナスプリング22の付勢力により気化器1のスロットルレバー12が全開位置にされるため、結果的にスロー系からの燃料も供給されなくなってエンジンン停止に至る。
【0020】
ところが、ガバナスプリング22のバネ圧力(張力)を比較的弱く設定したエンジンにあっては、エンジン停止時にスロットルレバー12は全開位置にならずにアイドル状態になることがあり、結果的にスロー系から燃料が供給されてランオンやジーゼリングを誘発してしまうという問題があった。
【0021】
これに対し、本実施の形態のガバナ2Aでは、ガバナアーム23の基端側を挟んでガバナスプリング22取付け位置の反対側に電動式アクチュエータであるアシストソレノイド25が、その突出軸25aをガバナスプリング22の中心軸線に沿った状態で対向させて配置された構成となっている。
【0022】
これにより、エンジンキーのOFF動作に連動してアシストソレノイド25が作動して、その突出軸25a先端をガバナアーム23の基端側に当接して押すことによりガバナスプリング22による付勢力をアシストしながら、スロットルレバー12を全開位置まで強制的に動作させることになる。
【0023】
即ち、エンジン停止時のエンジンキーのOFF操作に連動して気化器1のメインカットソレノイド11を作動させるのは従来例と同様であるが、本実施の形態においてキーOFFに同期して作動するアシストソレノイド25を追加したことにより、エンジン停止時にガバナスプリング22の付勢力が弱いことでスロットルレバー12がアイドル位置で停止するような場合でも、アシストソレノイド25の突出軸25a先端がガバナアーム23を直接押して気化器1のスロットルレバー12を強制的に全開位置となる。
【0024】
このように、図2における従来例の構成にアシストソレノイド25を追加しただけの簡易な構成により、メインカットソレノイド11が有効に機能してランオンやジーゼリングを確実に防止することができ、また、エンジンン始動性の向上にも繋がることになる。さらに、アシストソレノイド25は作動していない状態で、その突出軸25a先端がスロットルレバー12へのリンク手段を構成するガバナアーム23に接していないため、その通常の動作を邪魔する心配がない。
【0025】
尚、ガバナスプリング22を用いずにアシストソレノイド25のみの動作でスロットルレバー12を全開位置に動作させることも可能であるが、本実施の形態において、ガバナスプリング22の動作をアシストソレノイド25がアシストするように組み合わせたことで、ガバナスプリング22のバネ圧力を最低限のレベルに設定できるとともに、アシストソレノイド25の大きさとその駆動電力も小さく抑えることが可能となった。
【0026】
また、エンジンン停止時にアシストソレノイド25が一瞬だけ駆動してスロットルレバー12の全開位置までの動作をアシストした後は、ガバナスプリング22の付勢力のみでスロットルレバー12の全開位置を維持できる場合が殆どであるため、アシストソレノイド25による電力消費量も最小限に抑えることが可能となる。
【0027】
以上、述べたように、燃料カット機構を備えた気化器について、本発明により、エンジン停止時のランオン及びジーゼリングの回避を確実にすることができるとともに、エンジン始動性を良好にすることが可能となった。
【符号の説明】
【0028】
1 気化器、2A ガバナ、11 メインカットソレノイド、12 スロットルレバー、22 ガバナスプリング、23 ガバナアーム、24 ガバナロッド、25 アシストソレノイド、25a 突出軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン停止時にメイン系の燃料供給路を遮断する燃料カット機構を備えた気化器に連結され、該気化器のスロットルレバーをリンク手段により動作させることによりスロットルバルブの開閉を行うとともに、エンジン停止時には前記スロットルレバーを開方向に動作させる気化器用ガバナにおいて、前記リンク手段に電動式アクチュエータが付設されており、エンジンキーのOFF操作に連動して前記電動式アクチュエータが駆動することにより前記スロットルレバーを強制的に全開位置にすることを特徴とする気化器用ガバナ。
【請求項2】
前記リンク手段には、該リンク手段をスロットルレバーの開方向に動作させるように付勢するガバナスプリングが設けられており、前記電動式アクチュエータは前記ガバナスプリングの付勢力による前記スロットルレバーの開動作をアシストするものとされていることを特徴とする請求項1に記載した気化器用ガバナ。
【請求項3】
前記電動式アクチュエータは、通電することにより突出する突出軸を有したソレノイドであることを特徴とする請求項1または2に記載した気化器用ガバナ。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載した気化器用ガバナが付設されているとともに前記燃料カット機構を備えており、エンジンキーのOFF操作に連動してスロットルバルブが全開となることを特徴とした気化器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−270596(P2010−270596A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120492(P2009−120492)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】