説明

気化量を増減設定可能な自然気化式液体気化装置

【課題】 気化量の増減設定が可能な自然気化式の気化装置を提供すること。
【解決手段】
気化対象溶液を貯蔵する水槽(1)と、気化フィルター素片を自立・保持させるための逆L字型板に複数の溝を設けたフィルター保持板(3)と、フィルター保持板を取り付ける長方形の開口部を設けた水槽の蓋(2)と、吸水・蒸発性の素材からなる複数の気化フィルター素片(4)を、フィルター保持板に任意枚数だけ挿入・自立させ、気化量を設定可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水・蒸発性素材を利用して、液体を自然気化させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無電力の自然気化式液体気化装置として、加湿器が家庭やホテルや車に使用されている。これらは吸湿性の不織布などの気化フィルターを水の入った容器に自立させ、自然に気化することを応用している。気化量を増やすため、気化フィルターを複雑な形状に加工し、気化フィルターの表面積を増やしている。しかし自然気化を促進するためには、気化した気体が気化フィルター表面近辺から速やかに除去されなければならないが、気化フィルターの複雑な形状が気化された気体の除去を妨げ、液体の気化量増加を阻害している。
【0003】
特許文献1の発明では、気化するための気化フィルター表面積を増やすことが不可能である。また、特許文献2の発明では、気化した気体が気化フィルター近辺に滞留しやすく、気化フィルター面積が大きい割には気化量を増やすことが難しい。また、特許文献1、特許文献2とも自然気化量の増減設定が不可能である。更に腐食性のある溶液の気化には適していない。
【特許文献1】特許公開2000−272336
【特許文献2】特許公開2007−107768
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自然気化式の液体気化装置の気化量は、気化対象液体を気化させるための気化フィルターなどの表面積を増やし、更に気化した気体を気化フィルターの近辺から速やかに移動させなければならない。この2つを同時に解決することが困難であった。
【0005】
また、気化効率を高めて液体気化装置を使用する環境に合せて気化量の増減が要望されるが、これまでの方法では不可能であった。
【0006】
また、従来の自然気化式液体気化装置は主に加湿器として使用されているため、気化対象溶液は水道水などの清水に限られており、脱臭や除菌溶液の腐食性のある液体を気化させるには困難でした。
【0007】
また、エアコンの普及が進んだ現在、居住空間の空気が絶えず対流しており、この空気の流れを利用して気化量の増加に役立てようとする自然気化式液体気化装置は無かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1に記載の発明は、液体気化装置に係わり、気化対象溶液を貯蔵する水槽と、気化フィルター素片を自立・保持させるための逆L字型板に複数の溝を設けたフィルター保持板と、フィルター保持板を取り付ける長方形の開口部を設けた水槽の蓋と、吸水・蒸発性の素材からなる気化フィルター下面の吸水部分に縦方向の溝を設けた複数の気化フィルター素片と、気化フィルター素片をフィルター保持板に任意枚数挿入して自立させ、気化対象溶液の気化量を増減させることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、気化フィルターが複数の気化フィルター素片で構成されているため、任意枚数の気化フィルター素変をフィルター保持板に装着すれば、好みの気化量に設定可能である。
【0010】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、自立させた気化フィルターの気化部分である上面を、吸水部分である下面より広くして、気化量の増加を図ることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、吸水・蒸発性素材の気化フィルターの吸水性は高く、自然気化式の場合は、気化フィルターの気化部分の断面積が吸水部分の断面積の2倍程度でも気化量が変わらないことから、気化部分の気化面の幅を吸水部分の吸水面より広くすることで、気化量の増加が可能になる。
【0012】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、フィルター保持板の垂直面の溝を中心部は垂直に、周辺部に離れるに従って斜めにして、自立した複数の気化フィルター素片の上面を扇状に開放させ空気の流れを円滑にして、気化対象溶液の気化を促進させることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、フィルター保持板の垂直面の溝は気化フィルター素片の傾きを保持、さらに天板面の溝は気化フィルター素片の間隔を保持するのに役立っている。これにより、気化フィルター素片の上部の間隔が広くなり、気化フィルター近辺から気化した気体を迅速に移動させることが可能になる。
【0014】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、水槽を溶液が見える材質にして、溶液の残量が外部から見えるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、水槽の材質が溶液の残量が目視できるため、溶液の消費状況が目視できるため、溶液が空の状態での運転を防ぐことが可能になる。
【0016】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、水槽と気化フィルター素片の材質を耐薬品性のあるものにして、腐食性のある液体を含む溶液を気化させることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、腐食性のある溶液に耐えられる構造にしたことから、従来、脱臭・除菌溶液を入れたハンドスプレイを使って散布していたが、本発明品を使うことで人手を使わずに広い空間に脱臭・除菌溶液をより微細なミストで気化・拡散させることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自然気化式液体気化装置にあっては、対象とする空間容積や居住者数などの環境条件に合せて、気化フィルター素片数を変えることで多様なニーズに対応できる。
【0019】
また、気化フィルター素片を扇状に広げることで、フィルター素片あたりの気化量を増加させることが可能である。
【0020】
また、空気より重い気体を気化させる場合、自然気化式液体気化装置を高い壁面に設置することが多い。その場合、水槽の溶液残量が目視できるので溶液の補充確認に役立っている。
【0021】
また、吸水・蒸発性素材は耐食性が高く腐食性の高い脱臭・除菌溶液の気化にも問題なく連続運転が可能である。
【0022】
また、自然気化式液体気化装置をエアコンの吸気口近辺の壁面に設置すると、エアコンの吸気風により、気化フィルター素片当たりの気化量を増加させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明に係わる自然気化式液体気化装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係わる液体気化装置を模擬的に示す斜視図であり、気化対象溶液を貯蔵する水槽1と、気化フィルター素片を自立・保持させるための逆L字型板に複数の溝を持つフィルター保持板3と、フィルター保持板を取り付ける長方形の開口部を設けた水槽の蓋2と、吸水・蒸発性の素材からなる複数の気化フィルター素片4を、フィルター保持板3に挿入して自立させている。
【0024】
図2は、本発明に係わる液体気化装置を模擬的に示す側面図で、気化フィルター素片4は水槽1の底面に密着するようにフィルター保持板3により斜めに装着されている。
【0025】
図3は、フィルター保持板を模擬的に示す斜視図であり、フィルター保持板は取付けネジ孔9、10を使って水槽の蓋に固定される。フィルター保持板の垂直板面の溝8は中心部を垂直に、周辺部に離れるに従って斜めにして、自立した複数の気化フィルター素片4の上面を扇状に開放させ空気の流れを円滑にしている。
【0026】
図4は、気化フィルター素片を模擬的に示す斜視図であり、吸水部分である下面にフィルター保持板に挿入するための縦長の溝11を持っている。
【0027】
図5は、フィルター保持板3に気化フィルター素片を複数枚装着した斜視図であり、フィルター保持板3の垂直板面の溝に挿入された気化フィルター素片4は溝の傾斜に合わせて傾き、気化フィルターの上部が扇状に広がり、気化量の増加に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる自然気化式液体気化装置を模擬的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係わる自然気化式液体気化装置を模擬的に示す側面図である。
【図3】本発明に係わるのフィルター保持板を模擬的に示す斜視図である。
【図4】本発明に係わる気化フィルター素片を模擬的に示す斜視図である。
【図5】本発明に係わるフィルター保持板に気化フィルター素片を挿入した状態を模擬的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 水槽
2 水槽の蓋
3 フィルター保持板
4 気化フィルター素片
5 天板
6 垂直板
7 天板面の溝
8 垂直板面の溝
9 取付けネジ孔
10 取付けネジ孔
11 保持板への挿入溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化対象溶液を貯蔵する水槽と、気化フィルター素片を自立・保持させるための逆L字型板に複数の溝を設けたフィルター保持板と、フィルター保持板を取り付ける長方形の開口部を設けた水槽の蓋と、吸水・蒸発性の素材からなる気化フィルター吸水部である下面に縦方向の溝を設けた複数の気化フィルター素片と、気化フィルター素片をフィルター保持板に任意枚数挿入して自立させ、気化対象溶液の気化量を増減させることを特徴とする自然気化式液体気化装置。
【請求項2】
自立させた気化フィルターの気化部分である上面を、吸水部分である下面より広くして、気化量の増加を図ることを特徴とする請求項1に記載の自然気化式液体気化装置。
【請求項3】
フィルター保持板の垂直面の溝を中心部は垂直に、周辺部に離れるに従って斜めにして、自立した複数の気化フィルター素片の上面を扇状に開放させ空気の流れを円滑にして、気化対象溶液の気化を促進させることを特徴とする請求項1に記載の自然気化式液体気化装置。
【請求項4】
水槽を溶液が見える材質にして、溶液の残量が外部から見えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自然気化式液体気化装置。
【請求項5】
水槽と気化フィルター素片の材質を耐薬品性のあるものにし、腐食性のある液体を気化させることを特徴とする請求項1に記載の自然気化式液体気化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−106731(P2011−106731A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261737(P2009−261737)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(304031553)
【Fターム(参考)】