説明

気密材

【課題】基礎と土台間に配置されてその部分の十分な気密シールを達成し、しかも、基礎コーナー部への敷き込み作業並びに基礎外周部における接合作業を簡易迅速に行うことが可能な気密材を提供することを課題とする。
【解決手段】テープ状の防湿シート2の一端から他端にかけて、棒状又は管状の弾性パッキン材3、4を複数本並走させて成り、各弾性パッキン材3、4の両端部は、防湿シート2の端部から適宜長さ分、防湿シート2に固定されずに可動状態にされている。コーナー部に用いるものの場合、防湿シート2は直角形状にされ、弾性パッキン材3、4は直角形状又は円弧状にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気密材、より詳細には、住宅の基礎と土台との間に配装されてその部分の気密性を保持する作用を果たす、施工性に優れた気密材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年住宅の建築手法において省エネ効果、温熱環境及び空気環境の向上を目的として高気密高断熱が行なわれるケースが増えてきている。この手法においては、住宅の床・壁・天井(いわゆる住宅の外皮部)の気密・断熱化を図ることとなる。
【0003】
この高気密高断熱の手法において、床(最下階床)部の気密・断熱化を図る代わりに基礎部を断熱する手法が増えてきており、これを基礎断熱工法と呼んでいる(これに対して床部を断熱する場合は、床断熱工法と呼ばれている。)。基礎断熱工法のメリットとしては、気密施工が床断熱工法よりも簡易であること、1階床下部に配管される水道配管などの各種設備のメンテナンスがし易くなる等の点を挙げることができる。
【0004】
この基礎断熱工法の場合は、基礎と土台間の気密性を如何にして保つかが問題となるが、この問題を解決する目的で、本願出願人は、透湿性と防水性とを併せ有する適宜サイズのシートの端部に、複数本の棒状又は管状の弾性パッキン材を並走させたことを特徴とする気密材を提唱した(特開2006−118305号公報)。
【0005】
この気密材は、その弾性パッキン材設置部分を基礎と土台の間に挟み入れることにより、弾性パッキン材が潰れてその部分が確実に気密シールされ、また、シート部分が立上げられ、気密防湿シートと連続性を持って断熱材に定着されることにより、気密防湿シートと相俟って、土台から断熱材に至る部分の構成部材間における気密シールを達成するという作用効果を奏するものである。
【0006】
この気密材は、このような優れた効果を奏するものであるが、それをコーナー部に用いる際における作業性や接合時における作業性について十分に配慮がなされているとは言えず、その作業に手間がかかっていた。即ち、それをコーナー部に用いる場合は、一方の気密材50の一方の側の弾性パッキン材51先端部を、他方の気密材54の弾性パッキン材55、56間の間隔に対応する長さ分シート53から剥離して切除する(図5参照)。
【0007】
そして先ず、一方の気密材50を、シート53を上側にし且つ先端部を切除した弾性パッキン材51を内側にして、アンカーボルト59を貫通させて、基礎58のコーナーに設置する。次いで、他方の気密材54を、その先端部を気密材50のシート53の下にもぐらせ、その弾性パッキン材55、56の先端が気密材50の弾性パッキン材52に当たるようにして敷き込む。
【0008】
また、基礎外周の直線部分において気密材50、54同士を接合する場合は、一方の気密材50の一方の側の弾性パッキン材51の先端部を、適宜長さシート53から剥離して切除する。また、他方の気密材54の上記先端部を切除したものとは反対側の弾性パッキン材52に突合する弾性パッキン材55の先端部を、弾性パッキン材51の切除分と同じ長さ分シート57から剥離して切除し、同時に他方の弾性パッキン材56の先端部を、上記と同じ長さ分シート57から剥離する(図6参照)。
【0009】
そして、先ず気密材50を基礎58上に敷き込み、次いで、気密材54を、そのシート57から剥離した弾性パッキン材56の先端部を気密材50のシート53の下にもぐらせ、シート57をシート53の上に重ねるようにして配置する(図6、7参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平8−319676号公報
【特許文献2】特開平8−319677号公報
【特許文献3】特開2006−118305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の気密材の場合は、基礎と土台間の気密シールに優れた効果を発揮するものの、基礎コーナー部への敷き込み作業、並びに、基礎外周部における接合作業に多くの手間を要するという問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の気密材における問題点に鑑みてなされたもので、基礎と土台間に配置されてその部分の十分な気密シールを達成し、しかも、基礎コーナー部への敷き込み作業並びに基礎外周部における接合作業を簡易迅速に行うことが可能な気密材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、テープ状の防湿シートの一端から他端にかけて、棒状又は管状の弾性パッキン材を複数本並走させて成り、前記各弾性パッキン材の両端部は、前記防湿シートの端部から適宜長さ分、前記防湿シートに固定されずに可動状態にされていることを特徴とする気密材である。
【0014】
コーナー部に用いるものの場合、前記防湿シートは直角形状にされ、前記弾性パッキン材は直角形状又は円弧状にされる。通例、前記弾性パッキン材は2本配置され、また、前記弾性パッキン材は断面が中空の円形又は楕円形であって、前記防湿シートに対する十分な接着面積を確保するための着座部を備えたものとされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のとおり、テープ状の防湿シートの一端から他端にかけて、棒状又は管状の弾性パッキン材を複数本並走させて成るので、基礎と土台間に配置されることによりその部分の十分な気密シールを達成することができ、また、前記各弾性パッキン材の両端部は、前記防湿シートの端部から適宜長さ分前記防湿シートに固定されていないため、基礎コーナー部への敷き込み作業並びに基礎外周部における接合作業に際し、弾性パッキン材の端部を防湿シートから剥離して切除する手間が省け、以て、これらの作業を簡易迅速に行うことを可能にする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態につき、図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る気密材1の一実施形態の平面図であり、気密材1は、テープ状の防湿シート2の一端から他端にかけて、棒状又は管状の弾性パッキン材3、4を複数本(通例2本)並走させて成る。図1に示す気密材1は、基礎20のコーナー部に用いることを予定したものであって、防湿シート2及び弾性パッキン材3、4は、それぞれ直角形状に形成されている(弾性パッキン材3、4は円弧状にすることもできる。)。基礎20の外周直線部分等に用いる場合の気密材1は、防湿シート2及び弾性パッキン材3、4共に直線状にされる。
【0017】
本発明に係る気密材1は、各弾性パッキン材3、4の両端部が、防湿シート2の端部から適宜長さ分、防湿シート2に接着固定されずに離されることで、非接着部6が形成されることを特徴とするものである(図1において斜線を付した部分が接着されている部分を示している。)。一例としてこの非接着部6は、防湿シート2の端部から100mmの長さとされる。
【0018】
通例、弾性パッキン材3、4の断面は円形又は楕円形にされ、好ましくは、防湿シート2に対する十分な接着面積を確保するために、底面が平坦な面状の着座部5が設けられる(図2、3参照)。
【0019】
次に、本発明に係る気密材1の施工方法について説明する。図示したコーナー部用の気密材1の場合は、防湿シート2を上にして基礎20のコーナー部上に載置し、その両端に直線状の気密材7を接合する(図4参照)。図示してないが、アンカーボルトがある場合はそれを防湿シート2に貫通させる。気密材7は、テープ状の防湿シート8の一端から他端にかけて、棒状又は管状の弾性パッキン材9、10を複数本(通例2本)並走させて成るものであるが、気密材1と同様に、弾性パッキン材9、10の両端に非接着部6を設けたものであってもよいし、非接着部6を設けることなく、全長に亘って防湿シート8に接着したものであってもよい。
【0020】
この気密材7の接合に当たっては、気密材1の非接着部6部分の防湿シート2を捲り上げ、基礎20上に非接着部6部分の弾性パッキン材3、4を残した状態で、気密材7の端部を気密材1の端部にオーバーラップさせる。従って、気密材7の防湿シート8が気密材1の防湿シート2の下側にくることになる。また、その際、気密材1の弾性パッキン材3、4と気密材7の弾性パッキン材9、10とが重なり合うので、可動状態にある非接着部6の弾性パッキン材3、4の端部を内側に寄せて弾性パッキン材9、10間に収め(図4の上方オーバーラップ部参照)、あるいは、一方を内側にし、他方を外側に移動(図4の下方オーバーラップ部参照)させたりすることで、弾性パッキン材同士の重なり合いを回避することができる。そして、弾性パッキン材3、4の端部は、上記のように移動させた後離すと、その復元力で弾性パッキン材9、10に密着するので、隙間ができない。
【0021】
基礎20外周部の直線部における、気密材1同士、あるいは、気密材1と気密材7との接合も上記と同様にして行い、また、その後の土台の設置等の工程は、従来の気密施工の場合と同じである。
【0022】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る気密材の一実施形態の平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】本発明に係る気密材の施工方法を示す図である。
【図5】従来の気密材の構成及び施工方法を示す斜視図である。
【図6】従来の気密材の構成及び他の施工方法を示す斜視図である。
【図7】従来の気密材の構成及び他の施工方法を示す平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 気密材
2 防湿シート
3 弾性パッキン材
4 弾性パッキン材
5 着座部
6 非接着部
7 気密材
8 防湿シート
9 弾性パッキン材
10 弾性パッキン材
20 基礎


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の防湿シートの一端から他端にかけて、棒状又は管状の弾性パッキン材を複数本並走させて成り、前記各弾性パッキン材の両端部は、前記防湿シートの端部から適宜長さ分、前記防湿シートに固定されずに可動状態にされていることを特徴とする気密材。
【請求項2】
前記防湿シートは直角形状である、請求項1に記載の気密材。
【請求項3】
前記弾性パッキン材は直角形状又は円弧形状である、請求項2に記載の気密材。
【請求項4】
前記弾性パッキン材は2本配置されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の気密材。
【請求項5】
前記弾性パッキン材は断面が円形又は楕円形であって、前記防湿シートに対する十分な接着面積を確保するための着座部を備えている、請求項1乃至4のいずれかに記載の気密材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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