説明

気泡コンクリート用起泡剤及び気泡コンクリート

【課題】 優れた気泡安定性を発揮する気泡コンクリート用起泡剤を提供すること。
【解決手段】
一般式
【化1】


(式中、Rは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基、Yは水素原子又はメチル基、mは1〜10の整数、Xはアルカリ金属カチオン、アンモニウム又はアミンカチオンである。)で示される化合物(A)と、
一般式
【化2】


(式中、R及びXは一般式(1)と同じ)で示される化合物(B)と、
炭素数8〜20の脂肪族アルコール(C)とからなり、
脂肪族アルコール(C)が(C)の重量に基づいて、炭素数8〜10の脂肪族アルコール(C1)を0〜20重量%、炭素数11〜13の脂肪族アルコール(C2)を30〜80重量%、炭素数14〜20の脂肪族アルコール(C3)を10〜70重量%含有してなることを特徴とする気泡コンクリート製造用起泡剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡コンクリート用起泡剤及び気泡コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
気泡コンクリート用気泡剤としては、一般式(1)で示される気泡成分(A)及び炭素数8〜20の脂肪族アルコール(B)からなる気泡剤が知られている(特許文献1)。
【化1】

{式中、Rは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基、Yは水素又はメチル基、mは0又は1〜10の整数、Xはアルカリ金属、アンモニウム又はアミンカチオンである}
【特許文献1】特開平3−50168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の気泡剤では必ずしも気泡安定性が万全でなく、例えばトンネル外部で作った気泡コンクリートスラリーをトンネル内部にポンプ圧送して打設する場合、圧送中に気泡の多くが消滅してしまい気泡コンクリートの比重が所望の数値にならないときがあるという問題点がある。すなわち、本発明の目的は、優れた気泡安定性を発揮する気泡コンクリート用起泡剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の気泡コンクリート用気泡剤の特徴は、一般式
【化2】

(式中、Rは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基、Yは水素原子又はメチル基、mは1〜10の整数、Xはアルカリ金属カチオン、アンモニウム又はアミンカチオンである。)で示される化合物(A)と、一般式
【0005】
【化3】

(式中、R及びXは一般式(1)と同じ)で示される化合物(B)と、
炭素数8〜20の脂肪族アルコール(C)とからなり、
脂肪族アルコール(C)が(C)の重量に基づいて、炭素数8〜10の脂肪族アルコール(C1)を0〜20重量%、炭素数11〜13の脂肪族アルコール(C2)を30〜80重量%、炭素数14〜20の脂肪族アルコール(C3)を10〜70重量%含有してなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤は起泡力に優れ、また高い気泡安定性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
一般式(1)及び(2)について説明する。
炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基(R)としては、アルキル及びアルケニルが含まれ、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、オレイル、リノレイル及びリノレニル等が挙げられる。これらのアルキル及びアルケニルは直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよいが、直鎖状が好ましい。
これらのうち、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、オレイル、リノレイル及びリノレニルが好ましく、さらに好ましくはウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル及びヘキサデシル、特に好ましくはドデシル、トリデシル及びテトラデシルである。
【0008】
繰り返し単位{CH2CH(Y)O}は、オキシエチレン又はオキシプロピレンを表す。mが2〜10の場合、{CH2CH(Y)O}mは、オキシエチレン又はオキシプロピレンのいずれか1種が含まれてもよく、これらの混合が含まれてもよい。オキシエチレン及びオキシプロピレンの混合の場合、ブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、ブロック状及びブロック状とランダム状との混合が好ましく、さらに好ましくはブロック状である。
【0009】
mは、1〜10の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜8の整数、特に好ましくは1〜5の整数である。この範囲であると、気泡力がさらに良好となる。
【0010】
Xは、硫酸エステルの対イオンを表し、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)カチオン、アンモニウム、及びアミンカチオン[アルキル(炭素数1〜18)アミン(メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ノニルアミン、ドデシルアミン、ペンチルアミン及びステアリルアミン等)カチオン、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン及びシクロヘキシルエタノールアミン等)カチオン]が挙げられる。これらのうち、アンモニウム及びアミンカチオンが好ましく、さらに好ましくはアンモニウム及びアルカノールアミンカチオン、特に好ましくはアンモニウム及びエタノールアミンカチオンである。
【0011】
一般式(1)で示される化合物(A)としては、オキシエチレンラウリルサルフェートアンモニウム塩、オキシエチレンラウリルサルフェートジエタノールアミン塩、オキシエチレンラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩、オキシエチレンテトラデシルサルフェートアンンモニウム塩、オキシエチレンテトラデシルサルフェートジエタノールアミン塩、オキシエチレンテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン(m=2〜5)ラウリルサルフェートアンモニウム塩、ポリオキシエチレン(m=2〜5)ラウリルサルフェートジエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン(m=2〜5)ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン(m=2〜5)テトラデシルサルフェートアンモニウム、ポリオキシエチレン(m=2〜5)テトラデシルサルフェートジエタノールアミン塩及びポリオキシエチレン(m=2〜5)テトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
化合物(A)は、m、R、Y及び/又はXが異なる化合物の混合物でもよい。
【0012】
一般式(2)で示される化合物(B)としては、ラウリルサルフェートアンモニウム塩、ラウリルサルフェートジエタノールアミン塩、ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩、テトラデシルサルフェートアンンモニウム塩、テトラデシルサルフェートジエタノールアミン塩及びテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
化合物(B)は、R及び/又はXが異なる化合物の混合物でもよい。
【0013】
炭素数8〜20の脂肪族アルコール(C)としては、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール及びノニルシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
これらの脂肪族アルコール(C)は直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよいが、直鎖状が好ましい。
【0014】
脂肪族アルコール(C)は、(C)の重量に基づいて、炭素数8〜10の脂肪族アルコール(C1)を0〜20重量%、炭素数11〜13の脂肪族アルコール(C2)を30〜80重量%、炭素数14〜20の脂肪族アルコール(C3)を10〜70重量%含有してなることが好ましく、さらに好ましくは(C1)を0〜15重量%、(C2)を40〜70重量%、(C3)を20〜60重量%含有してなること、特に好ましくは(C1)を0〜10重量%、(C2)を50〜60重量%、(C3)を30〜50重量%含有してなることである。この範囲であると、気泡安定性がさらに良好となる。
好ましい脂肪族アルコール(C)としては、例えば表1(数値は重量%)に示した混合物等が例示できる。
【0015】
【表1】

【0016】
化合物(A)及び化合物(B)の含有重量比(A/B)は、40/60〜65/35が好ましく、さらに好ましくは45/55〜60/40、特に好ましくは50/50〜55/45である。この範囲であると、気泡安定性がさらに良好となる。
【0017】
脂肪族アルコール(C)の含有量(重量%)は、化合物(A)及び化合物(B)の合計重量に基づいて、5〜45が好ましく、さらに好ましくは10〜40、特に好ましくは20〜30である。この範囲であると、気泡安定性がさらに良好となる。
【0018】
本発明の気泡剤には、さらに炭素数8〜14の脂肪酸(塩)(D)を含有することが好ましい。
炭素数8〜14の脂肪酸(塩)(D)としては、カプリル酸(塩)、ペラルゴン酸(塩)、カプリン酸(塩)、シトロネル酸(塩)、ウンデシル酸(塩)、ウンデシレン酸(塩)、ラウリン酸(塩)、リンデル酸(塩)、トリデシル酸(塩)、ミリスチン酸(塩)及び抹香酸(塩)等が挙げられる。
これらのうち、カプリル酸(塩)、ペラルゴン酸(塩)、カプリン酸(塩)、シトロネル酸(塩)、ウンデシル酸(塩)、ウンデシレン酸(塩)、ラウリン酸(塩)及びミリスチン酸(塩)が好ましく、さらに好ましくはカプリル酸(塩)、カプリン酸(塩)、ラウリン酸(塩)及びミリスチン酸(塩)、特に好ましくはカプリン酸(塩)及びラウリン酸(塩)である。
【0019】
なお、・・・酸(塩)は、・・・酸及び/又は・・・酸塩を意味する。そして、塩としてはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アンモニウム塩、及びアミン[アルキル(炭素数1〜18)アミン(メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ノニルアミン、ドデシルアミン、ペンチルアミン及びステアリルアミン等)、アルカノール(炭素数2〜4)アミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン及びシクロヘキシルエタノールアミン等)]塩及び第4級アンモニウム[テトラアルキル(炭素数1〜4;テトラメチル、テトラエチル、トリメチルエチル及びトリメチルブチル等)アンモニウム]塩等が挙げられる。
これらの(D)のうち、脂肪酸塩が好ましく、さらに好ましくはアンモニウム塩及びアミン塩、特に好ましくはアンモニウム塩及びアルカノールアミン塩、最も好ましくはアンモニウム塩及びエタノールアミン塩である。
【0020】
脂肪酸(塩)(D)を含有する場合、(D)の含有量(重量%)は、(A)及び(B)の合計重量に基づいて、20〜100が好ましく、さらに好ましくは40〜80、特に好ましくは30〜70である。この範囲であると、気泡安定性がさらに良好となる。
【0021】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤には必要に応じて水溶性有機溶剤を含有してもよい。
水溶性有機溶剤としては、起泡性を阻害しないものであって水に溶解しやすい有機溶剤であれば制限なく使用でき、例えばセロソルブ溶剤(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ及びフェニルセロソルブ等)、カルビトール溶剤(エチルカルビトール及びブチルカルビトール等)、エチレンオキシドの付加モル数が3〜10のポリオキシエチレン低級アルキルモノエーテル(ポリオキシエチレン(3モル)モノメチルエーテル等)、分子量が500以下のジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコール等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのうち、セロソルブ溶剤及びポリオキシエチレン低級アルキルエーテルが好ましく、さらに好ましくはブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ及びポリオキシエチレン(3モル)モノメチルエーテルである。
【0022】
水溶性有機溶剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、脂肪族アルコール(C)の合計重量に基づいて、20〜2000が好ましく、さらに好ましくは50〜1000、特に好ましくは100〜500である。
【0023】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤には必要に応じて水溶液としてもよい。水溶液とする場合、水の含有量(重量%)は、化合物(A)、化合物(B)及び脂肪族アルコール(C)の合計重量に基づいて、1〜500が好ましく、さらに好ましくは10〜300、特に好ましくは50〜200である。
【0024】
化合物(A)又は化合物(B)は、それぞれ、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物{RO(CH2CHYO)m−H}又は脂肪族アルコール(ROH)を硫酸化することによって得られるが、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物及び脂肪族アルコールの混合物を硫酸化して、化合物(A)及び化合物(B)の混合物を得ることができる。そして、この混合物をそのまま本発明の起泡剤に用いることができる。
なお、硫酸化方法としては、例えば、(i)クロロスルホン酸を用いる方法、(ii)サルファンを用いる方法、(iii)スルファミン酸を用いる方法、(iv)硫酸を用いる方法が挙げられる。(ii)のサルファンについては、乾燥窒素等で希釈して用いる。
反応温度は、(i)、(ii)の場合は、通常0〜70℃、好ましくは10〜50℃である。(iii)、(iv)の場合は、通常50〜150℃、好ましくは60〜130℃である。
【0025】
本発明の起泡剤は、化合物(A)、化合物(B)、脂肪族アルコール(C)、並びに必要により脂肪酸(塩)(D)、水溶性有機溶剤及び/又は水を、均一混合することにより容易に得ることができる。
混合する際に、一括で投入し混合しても、任意の順番で投入しならがら混合してもよい。また、化合物(A)、化合物(B)及び必要により含有する脂肪酸(塩)(D)は、酸の形態で混合してから、中和により塩としてもよい。
【0026】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤は、この気泡剤、セメント、骨材及び水を必須成分として含有してなる気泡コンクリートスラリーに調製され、このスラリーを所定の型枠内に打設したり、所定の空間部に充填するした後、硬化させて、気泡コンクリートを形成できる。この気泡コンクリートスラリーの気泡安定性は極めて高いため、気泡コンクリートの比重を目的の範囲とすることが極めて容易である。
セメントとしては、通常の水硬性セメントが用いられ、普通ポルトランドセメント、特殊ポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント)及び/又は混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメント)等が使用できる。
骨材としては、細骨材と粗骨材とがある。細骨材としては、JIS A5308:1998の付属書1(規定)レディ−ミクストコンクリート用骨材に準拠される骨材等が使用でき、川砂、陸砂、山砂、海砂及び砕砂等が挙げられる。粗骨材としては、JIS A5308:1998の付属書1(規定)レディーミクストコンクリート用骨材に準拠される骨材等が使用でき、川砂利、陸砂利、山砂利及び砕石等が挙げられる。
水としては、海水、河川水、湖沼水、水道水、工業用水及び脱イオン水等が挙げられる。
【0027】
気泡コンクリートスラリーには、以上の他に、混和材{フライアッシュ、高炉スラグ及びシリカフューム等}及びセメント組成物用混和剤{減水剤(AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤)、空気連行剤(AE剤)、膨張材、消泡剤(抑泡剤、破泡剤)、硬化促進剤(急結剤)、硬化遅延剤、防錆剤、増粘剤、収縮低減剤、ポリマーセメントコンクリート又はポリマーモルタル用のポリマーディスパージヨン及びその他の混和剤等}等を含んでもよい。
【0028】
フライアッシュとしてはJIS A6201:1999コンクリート用フライアッシュに準拠するもの等が使用でき、高炉スラグとしてはJIS A6206:1997コンクリート用高炉スラグ微粉末に準拠するもの等が使用でき、シリカフュームとしてはJIS A6207:2000コンクリート用シリカフュームに準拠するもの等が使用できる。
【0029】
減水剤としては、リグニンスルホン酸塩(ナトリウム等のアルカリ金属塩及びカルシウム等のアルカリ土類金属塩等;以下の化合物の塩についても同様)、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩(縮合度:5〜20)、メラミンホルマリン酸ホルマリン縮合物塩(縮合度:5〜20)、ポリカルボン酸塩(数平均分子量:5000〜6万)、アミノスルホン酸ホルマリン縮合物塩(縮合度:2〜20)、及びポリオキシアルキレン基(例えばアルキレン基の炭素数が2及び/又は3のポリオキシアルキレン基)含有ポリカルボン酸塩(数平均分子量:1万〜60万){例えば、コンクリート混和剤の開発技術、(株)シーエムシー、1995年発行}等が挙げられる。
【0030】
空気連行剤(AE剤)としては、アルキル硫酸エステル塩(アルキル基の炭素数10〜14)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(アルキル基の炭素数10〜14、アルキレン基の炭素数が2のポリオキシアルキレン基)及び樹脂酸塩等が挙げられる。
膨張材としては、カルシウムサルフォアルミネート及び生石灰(例えば、デンカCSA、電気化学工業社製;アサノジプカル、太平洋マテリアル製)等が挙げられる。
消泡剤としては、エステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、鉱物油系消泡剤、シリコーン系消泡剤及び粉末消泡剤(例えば、新・界面活性剤入門、三洋化成工業(株)、1981年発行に記載されたものやSNディフォーマー14HP、SNディフォーマー11−P:サンノプコ社製)等が挙げられる。
硬化促進剤としては、多価アルコール(ペンタエリスリトール等)の分子内縮合物、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びその他の公知の硬化促進剤、塩化カルシウム等が挙げられる。
硬化遅延剤としては、糖類及びオキシカルボン酸塩等が挙げられる。
防錆剤としては、亜硝酸塩等が挙げられる。
収縮低減剤としては低級アルコール(炭素数1〜8)アルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
増粘剤としては、ポリアクリルアミド及びセルロースエーテル等が挙げられる。
ポリマーセメントコンクリート又はポリマーモルタル用ポリマーディスパージヨンとしては、スチレンブタジエンゴムラテックス、エチレン酢酸ビニル及びポリアクリル酸エステルエマルション等が挙げられる。
その他の混和剤としては、公知のモルタル又はコンクリート用混和剤{例えば、コンクリート混和剤の開発技術、(株)シーエムシー、1995年発行}等が使用できる。
【0031】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤の含有量(重量%)は、セメントの重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜5、特に好ましくは 0.01〜3である。
セメント、骨材及び水の含有量は、通常の含有量でよい。また、混和材{フライアッシュ、高炉スラグ及びシリカフューム等}及びセメント組成物用混和剤等を含む場合、これらの含有量は、通常の含有量でよい。
【0032】
本発明の気泡コンクリート用起泡剤を用いて気泡コンクリートスラリーを製造する場合、本発明の起泡剤を水に溶解して水溶液とした後、この水溶液を泡立たせておき、この泡をセメント、骨材及び水、並びに必要により混和材及び/又はセメント組成物用混和剤がらなるセメントスラリー中に導入させる方法(プレフォーム法)、及び本発明の起泡剤をその他の材料とともにミキサー中で、撹はんしながら徐々に泡立たせていく方法(ミックスフォーム法)等の方法を採用できる。これらの方法のうち、プレフォーム法が好ましい。
プレフォーム法で気泡コンクリートスラリーを製造する場合、泡の比重は0.1〜0.01が好ましい。また、起泡剤を溶解する水の量(重量%)は、化合物(A)と化合物(B)の合計重量に基づいて、1000〜50000が好ましく、さらに好ましくは2000〜30000、特に好ましくは3000〜20000、最も好ましくは5000〜10000である。この範囲であると、セメントスラリーに混合したときの泡の安定性がさらによくなる。また、混合する気の量(容積%)は、目標とする気泡コンクリートの比重により適宜決定されるが、セメントスラリ−の容積に基づいて、10〜400が好ましく、さらに好ましくは20〜200、特に好ましくは50〜100である。
一方、ミックスフォーム法で気泡コンクリートを製造する場合、本発明の起泡剤は、その他の材料とモルタルミキサー等で一度に混練してもよいし、予めセメントスラリーの配合水に溶解させておいたものをその他の材料と合わせモルタルミキサー等で混練してもよい。また、この場合、本発明の起泡剤の添加量(重量%)は、目的とする気泡コンクリートの比重により適宜決定されるが、セメントの重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5である。この範囲であると、添加量に応じて比重を容易にコントロールすることができる。
【0033】
このようにして調製された気泡コンクリートスラリーは、従来の施工方法と同様にして施工され、硬化ないし養生方法も従来の気乾養生、湿空養生、水中養生及び/又は加熱促進養生(蒸気養生、オートクレーブ養生)でよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%である。
<実施例1>
ステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1モル部)、過塩素酸マグネシウム0.27部及び水酸化マグネシウム0.03部を投入してから100℃にて均一混合し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(20mmHg)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでエチレンオキサイド(EO)44部(1モル部)を150℃にて、ゲージ圧が0.1〜0.3MPaとなるように導入して、反応物を得た。この反応物をGPCによって測定した結果、ラウリルアルコールが15%、ポリオキシエチレン(m=1〜5)ラウリルエーテルが85%(m=1:68%、m=2:11%、m=3:4%、m=4:1.5%、m=5:0.5%)含有していた。
この反応物にクロルスルホン酸120部(1.03モル部)を20℃に保ちながら徐々に滴下した後、同温度で2時間脱塩酸(窒素を液層からバブリング)を行って、硫酸化物を得た。この硫酸化物に、トリエタノールアミン153.7部(1.03モル部)及び水1045部からなる水溶液を添加し硫酸化物を中和して、ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)及びポリオキシエチレンラウリルサルフェートトリエタノールアミン(m=1〜5)塩(a1)の混合物を得た。なお、(a1)の含有量は25.3%、(b1)の含有量は5.1%であった{(a1)/(b1)=83/17:硫酸化前のGPC測定結果からの計算値、以下同様}。
この混合物にラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(日光ケミカルズ株式会社製TEALS)305.2部を加えて、ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)及びポリオキシエチレンラウリルサルフェートトリエタノールアミン(m=1〜5)塩(a1)の混合物を得た。なお、(a1)の含有量は21%、(b1)の含有量は21%であった{(a1)/(b1)=50/50}。
得られた(b1)及び(a1)の混合物と、オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)191部及びブチルセロソルブ382部からなる溶液とを均一混合して、本発明の起泡剤(1)を得た。
【0035】
<実施例2>
オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)191部をデシルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール/ペンタデシルアルコール(10部/60部/20部/10部)(c2)229部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の起泡剤(2)を得た。
【0036】
<実施例3>
オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)191部をデシルアルコール/トリデシルアルコール/セチルアルコール(5部/45部/50部)(c3)191部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の起泡剤(3)を得た。
【0037】
<実施例4>
トリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1045部からなる水溶液をトリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1000部からなる水溶液に、変更した以外、実施例1と同様にして、ポリオキシエチレン(m=1〜5)ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(a1)及びラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)の混合物を得た。
この混合物にラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)305.2部を加えて、ポリオキシエチレン(m=1〜5)ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(a1)及びラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)の混合物を得た。なお、実施例1と同様にして求めた含有重量比(a1)/(b1)は50/50であった。
得られた(a1)及び(b1)の混合物と、ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(50部/50部)(c4)153部及びブチルセロソルブ306部からなる溶液と、カプリン酸トリエタノールアミン塩(d1)230部とを均一混合して、本発明の起泡剤(4)を得た。
【0038】
<実施例5>
トリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1045部からなる水溶液をトリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1000部からなる水溶液に変更した以外、実施例1と同様にして、ポリオキシエチレン(m=1〜5)ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(a1)及びラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)の混合物を得た。
この混合物にラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)305.2部を加えて、ポリオキシエチレン(m=1〜5)ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(a1)及びラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩(b1)の混合物を得た。なお、実施例1と同様にして求めた含有重量比(a1)/(b1)は50/50であった。
得られた(a1)及び(b1)の混合物と、トリデシルアルコール/ミリスチルアルコール(50部/50部)(c5)153部及びブチルセロソルブ306部からなる溶液と、カプリン酸トリエタノールアミン塩(d1)230部とを均一混合して、本発明の起泡剤(5)を得た。
【0039】
<実施例6>
ラウリルアルコール186部(1モル部)をテトラデシルアルコール212部(1モル部)に変更し、トリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1045部からなる水溶液をトリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1200部からなる水溶液に変更した以外、実施例1と同様にして、ポリオキシエチレン(m=1〜5)テトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(a2)及びテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(b2)の混合物を得た。
この混合物にテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(b2)290部を加えて、ポリオキシエチレン(m=1〜5)テトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(a2)及びテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(b2)の混合物を得た。なお、実施例1と同様にして求めた含有重量比(a2)/(b2)は54/46であった。
得られた(a2)及び(b2)の混合物と、オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)194部及びブチルセロソルブ388部からなる溶液と、カプリン酸トリエタノールアミン塩(d1)540部とを均一混合して、本発明の起泡剤(6)を得た。
【0040】
<比較例1>
オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)191部をラウリルアルコール(c6)191部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の起泡剤(5)を得た。 。
【0041】
<比較例2>
オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)191部をミリスチルアルコール(c7)191部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の起泡剤(6)を得た。
【0042】
<比較例3>
オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)191部をオクチルアルコール(c8)191部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の起泡剤(7)を得た。
【0043】
<比較例4>
ラウリルアルコール186部(1モル部)をテトラデシルアルコール212部(1モル部)に変更し、トリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水1045部からなる水溶液をトリエタノールアミン153.7部(1.03モル)及び水840部からなる水溶液に変更した以外、実施例1と同様にして、ポリオキシエチレン(m=1〜5)テトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(a2)及びテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(b2)の混合物を得た。
この混合物にテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(b2)357.3 部を加えて、ポリオキシエチレン(m=1〜5)テトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(a2)及びテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩(b2)の混合物を得た。なお、実施例1と同様にして求めた含有重量比(a2)/(b2)50/50であった。
得られた(a2)及び(b2)の混合物と、オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール(10部/50部/40部)(c1)843部及びブチルセロソルブ1686部からなる溶液とを均一混合して、比較例の起泡剤(10)を得た。
【0044】
【表2】

【0045】
A:一般式(1)で示される化合物
a1:ポリオキシエチレンラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩
(m=1〜5の混合物)
a2:ポリオキシエチレンテトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩
(m=1〜5の混合物)
B:一般式(2)で示される化合物
b1:ラウリルサルフェートトリエタノールアミン塩
b2:テトラデシルサルフェートトリエタノールアミン塩
C:脂肪族アルコール
c1:オクチルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール
(10部/50部/40部)
c2:デシルアルコール/ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール/ペンタ デシルアルコール(10部/60部/20部/10部)
c3:デシルアルコール/トリデシルアルコール/セチルアルコール
(5部/45部/50部)
c4:ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール
(50部/50部)
c5:トリデシルアルコール/ミリスチルアルコール
(50部/50部)
c6:ラウリルアルコール
c7:ミリスチルアルコー
c8:オクチルアルコール
D:脂肪酸(塩)
d1:カプリン酸トリエタノールアミン塩
【0046】
尚、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による測定条件は次の通り。
<GPCの測定条件>
カラム:TSK gel SuperH4000、TSK gel SuperH3000及びTSK gel SuperH2000 (いずれも東ソー株式会社製)を直列につないだカラム
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
試料濃度:0.25%
注入量:10μl
基準物質:ポリオキシエチレングリコール(東ソー株式会社製;TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE)
データ処理装置:SC−8020(東ソー株式会社製)
【0047】
<起泡安定性試験>
水5000部に、起泡剤(測定試料)100部を加えて起泡剤水溶液を調製した後、0.5MPaの圧縮空気と起泡剤水溶液を圧縮空気/起泡剤水溶液(体積比)=30/1で、直径4mmのガラスビーズで満たした発泡筒(内径4cm、長さ40cm:図1)の流入口に送り込み、流出口から溢れ出た泡の一部を直径約15cmで内容量が既知の3Lポリビーカに充填し、泡の重量を計量することにより、得られた泡の比重を測定した。
ついで、得られた泡26.3gを、ポルトラントセメント608.6gと水391.4gとからなるセメントペーストに投入し、その後モルタルミキサー(株式会社マルイ製MIC−362−1型)で30秒間混合することにより気泡モルタルを得た。
得られた気泡モルタルをさらにモルタルミキサーで混合し、混合前(0分)、混合3分後、及び混合6分後の空気量を測定した。
また、モルタル中での気泡安定性として、気泡破泡率[={(空気量0分値)−(空気量3分値又は6分値)}×100/(空気量0分値)]を算出した。
なお、空気量は、JIS A5308:2003の付属書3モルタルの圧縮強度による砂の試験方法に規定されたモルタルの空気量測定法に準拠した。
泡の比重は、値が小さい程、起泡剤が高起泡性であることを意味し、空気量は、値が小さいほど起泡剤が高起泡性であり、更に形成された泡がモルタル中で高安定的であることを意味し、気泡破泡率は値が小さい程、気泡安定性に優れていることを意味する。
【0048】
【表3】

【0049】
表3から、本発明の起泡剤を使用した場合、気泡モルタルの比重を低くすることができる上、攪拌によるシェアーが掛かり続けても気泡安定性が極めて高いことが確認ができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の起泡剤は、気泡コンクリートの製造用として適している。
特に、従来の起泡剤と比較して気泡安定性が著しく高いことから、所望の比重を維持したまま長距離をポンプ圧送する必要がある場合(トンネル外部で作った気泡コンクリートスラリーをトンネル内部に打設する場合等)等に用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】起泡安定性試験で用いた発泡筒を模式的に示した斜視透過図である。
【符号の説明】
【0052】
1 管
2 ガラスビーズ
3 起泡剤水溶液流入口
4 圧縮空気流入口
5 気泡流出口
6 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(式中、Rは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基、Yは水素原子又はメチル基、mは1〜10の整数、Xはアルカリ金属カチオン、アンモニウム又はアミンカチオンである。)で示される化合物(A)と、
一般式
【化2】

(式中、R及びXは一般式(1)と同じ)で示される化合物(B)と、
炭素数8〜20の脂肪族アルコール(C)とからなり、
脂肪族アルコール(C)が(C)の重量に基づいて、炭素数8〜10の脂肪族アルコール(C1)を0〜20重量%、炭素数11〜13の脂肪族アルコール(C2)を30〜80重量%、炭素数14〜20の脂肪族アルコール(C3)を10〜70重量%含有してなることを特徴とする気泡コンクリート製造用起泡剤。
【請求項2】
脂肪族アルコール(C)の含有量が、化合物(A)及び化合物(B)の合計重量に基づいて5〜45重量%である請求項1に記載の起泡剤。
【請求項3】
化合物(A)及び化合物(B)の含有重量比(A/B)が40/60〜65/35である請求項1に記載の起泡剤。
【請求項4】
さらに炭素数8〜14の脂肪酸(塩)(D)を含有し、この含有量が化合物(A)及び化合物(B)の合計重量に基づいて20〜100重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の起泡剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の起泡剤、セメント、骨材及び水を必須成分として含有してなることを特徴とする気泡コンクリートスラリー。
【請求項6】
請求項5に記載の気泡コンクリートスラリーを硬化させてなる気泡コンクリート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−62879(P2006−62879A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243492(P2004−243492)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】