説明

気泡含有水流発生器及びそれを備えた汚濁物除去装置

【課題】湖沼等の閉鎖水域において、貧酸素水域に酸素を供給し動植物にとって好適な環境にすることができる汚濁物の除去装置を提供する。
【解決手段】湖沼等の水中及び底部の汚濁物に微細気泡を付着させて、浮上させ回収除去する汚濁物の除去装置1であって、水面上に装置を浮上維持させるための浮き構造体2と、発電機3と、気体を溶解させる気体溶解量調整器4と、水流中に微細気泡を多量に含んだ水流を発生させる気泡含有水流発生器5と、底部分から水面に向かって囲いながら収束させシート等を貼り付けたシートガイド6と、伸縮するシート7と、シート7下端に取り付けた錘8と、浮き構造体2と気泡含有水流発生器5を固定する支持軸棒9と、浮上した汚濁物をオーバーフロー方式によって回収するオーバーフロー回収口13と、回収した汚濁物を湖沼等の水域から該水域外へ除去するフレキシブル排水パイプ14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼等の水中及び底部に堆積している有機物及び無機有機複合体の汚濁物に、広範囲に微細気泡を噴出させることのできる気泡含有水流発生器から発生させた微細気泡を、汚濁物に付着させて浮力増加させることにより水面に浮上させて、オーバーフロー方式によって回収することで、湖沼等から外に除去することで、湖沼等を確実に浄化できる。
同時にその水域の溶存酸素量を高めて、生態系にとって好適な水質にすることのできる汚濁物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼等の水質浄化法としては、以下に列挙するように種々のものがあり、従来それぞれに対応策が取られていた。
1.閉鎖性水域内に停滞する水塊を、エジェクタによって作られた水流によって曝気作用を高め、水塊の流動を促進させて酸素を供給し、生物化学的分解を促進させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
2.水温が高く密度の低い富酸素状態にある上層水と、水温が低く密度の高い貧酸素状態にある下層水とを強制的に混合させて、中層・底層水域の貧酸素状態を解消させ、有機物の生物化学的分解を促進させる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−73099号公報
【特許文献2】特開2003−230894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1・2に記載の従来技術は以下のような課題を有していた。
湖沼等の集水区域には田畑や人家が存在する場合が多く、残留肥料分や生活排水等の富栄養成分が継続的に流入し貯留されている現状がある。
特に自然に流れていた河川を堰き止めて築造した溜め池や治水ダム等には、底部に何十年分もの落ち葉等の有機物がヘドロ化して堆積している状況の上に、更に上記の人為的な富栄養成分が流入している状態にあり、前記2例の様な曝気作用や上層・下層水を混合させて対象水域の溶存酸素を高めて、微生物や動植物を活性化させて水質を浄化する生物化学的分解方法だけでは限界があり、年々進行する湖沼内の水質汚濁を防止することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するもので、湖沼等の水中に浮遊する有機物や底部に無機・有機複合体(無機性の微粒子と有機物が合体している。)等が堆積している汚濁物(ヘドロ)に、気体を高濃度に溶解させた溶解圧力水を用いて、多量の微細気泡を発生させ、プロペラによって作られた強い水流と混合することによって、広範囲の汚濁物に微細気泡を付着させることによって、汚濁物は浮力が増加し水面上に浮上する。
水面上に浮上している汚濁物をオーバーフローにより吸引回収することで、汚濁物を湖沼外へ除去することができる。
又、同時に高濃度に空気又は酸素を溶解させた溶解圧力水を用いているので、広範囲の貧酸素水域に酸素を供給でき、水域の動植物にとって好適な環境にすることができる気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の請求項1に記載の気泡含有水流発生器は、プロペラにより水流を発生させる水流発生器と、前記水流発生器の下流側に設けられた単数又は複数の凹部と、前記凹部内に気体を高濃度に溶解した溶解圧力水を供給し、水流発生器によって発生している水流までの距離を、調整することのできるアジャスターナットが取り付けられた単数又は複数の溶解水供給管と、前記溶解水供給管の端に微細気泡発生器、流量調整ノズル、エジェクタノズル等のノズルを接続することができるノズル部と、を備えて構成されている。
この構成によって以下の作用を有する。
(1)プロペラによって強力な水流を発生させることによって、微細気泡を多量に含んだ水流を広範囲に噴射でき、効率良く水中の汚濁物に微細気泡を付着させることができる。
(2)気体を高濃度に溶解した溶解圧力水を用いて微細気泡を発生させているので、微細気泡発生器から放出された微細気泡交じりの噴出水は、まだ気体が高濃度に溶解している過飽和水なので、プロペラで作られた水流の高速部から離れた凹部の奥で微細気泡を発生させた場合、微細気泡内の空間に向かって過飽和水に溶存している気体が放出するため微細気泡の気泡径が大きくなる。
(3)プロペラからの水流に微細気泡発生器を近づけて微細気泡を発生させると、過飽和水は速やかに希釈されるので、微細気泡内の空間に向かって気体の放出は起こらないので微細気泡の気泡径は大きくならず、ほぼ発生した微細気泡の状態のまま水流中に混合させることができる。
(4)溶解水供給管にアジャスターナットが取り付けてあるので、プロペラからの水流とノズル部との距離を所望に調整することで、上記(2)(3)の特性を利用し水流中に混合される微細気泡の気泡径を、その水域の水質や汚濁物の状況に応じて所望の大きさに調整することができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置は、湖沼等の水中に浮遊及び堆積している汚濁物を除去することにおいて、動力源や機器類等を搭載し水面上を移動することのできる浮き構造体と、閉ざされたタンク内に配置された液泡生成容器内で液泡を生成し、気体を高濃度に溶解させる気体溶解量調整器と、プロペラによって発生した水流と、気体を高濃度に溶解した溶解圧力水によって作られた微細気泡と、を混合させる請求項1の気泡含有水流発生器と、シート等を用いて底部から水面に向かって収束する形状に囲い、浮上する汚濁物を水面の狭い範囲に集中させるシートガイド部と、浮上させた汚濁物をポンプや水頭差を利用し、オーバーフロー方式によって湖沼外へ除去する回収除去部と、を備えて構成されている。
この構成によって以下の作用を有する。
(1)浮き構造体を有するので、下部の水中に連結されている気泡含有水流発生器からの水流を推進力として装置全体を移動することができる。
又、岸からロープ等を用いて移動させることや、浮き構造体に船外機を取り付けて移動させることもでき、汚濁物が多く堆積している場所へ水面上を自由に移動し、効率的に汚濁物を除去できる。
(2)気体溶解量調整器を有するので、空気や酸素等の気体を高濃度に溶解した溶解圧力水を製造することができ、この溶解圧力水を用いることで多量の微細気泡を発生させる事ができる。
又、多量に酸素を含んでいるので、その周辺の水域を生態系にとって好適な富酸素水域にすることもできる。
(3)気泡含有水流発生器を有するので、微細気泡を多量に含んだ水流を広範囲な水域に噴射できる。
(4)シートガイド部を有するので、シートガイド内を自然の水流や水面上の風の影響を最小限に抑えることができる。
又、気泡含有水流発生器によって生じた水流のエネルギーを、シートガイド部外に放出されないので、エネルギーを無駄にせず微細気泡を効率良く汚濁物に付着させることができる。
又、この事によって微細気泡が付着した汚濁物は、シートガイド内に添って収束した狭い水面に浮上し、前記回収除去部に導くことができる。
(5)回収除去部を有するので、浮上分離した汚濁物をオーバーフロー方式で吸引回収し、確実に湖沼等から外へ除去することができる。
又、回収する動力はポンプを用いても良いが、堰堤内の水位と排出される場所との水頭差(サイホンも含む)があれば、人工的な動力源を使わず回収除去できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の気泡含有水流発生器によれば以下のような効果を有する。
(a)プロペラによって作られた、強力な水流中に多量の微細気泡を混合させる事ができるので、広範囲の水中及び底部分の有機物及び無機有機複合体等の汚濁物に、微細気泡を付着させ効率良く水面に浮上させることができ、制御性及び効率性に優れている。
(b)気体を高濃度に溶解させた溶解圧力水を用いて微細気泡を発生させているので、プロペラからの水流とノズル部の微細気泡発生器との距離を調整することで、水流中に混合される微細気泡の気泡径を、水域の水質や汚濁物の状態に応じて所望に調整できるので、対応性及び制御性に優れている。
(c)ノズル部に流量調整ノズルを取り付けて高濃度の酸素溶解水を噴出させ、直ちにプロペラからの強力な水流に混合し希釈させることによって、減圧発泡を最小限に抑え広範囲の水域に効率良く酸素を供給することができ、優れた貧酸素水域の解消装置としても使用できる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置によれば以下のような効果を有する。
(a)空気又は酸素等の気体を高濃度に溶解した溶解圧力水を用いて、多量の微細気泡を発生させ強い水流中に混合させる方法なので、対象水域の汚濁物を効率良く浮上させて回収でき、又、その水域を富酸素状態にすることができる。
(b)浚渫工事の汚濁堆積物の除去と異なり、砂等の質量のある無機物は除去せずに、水中及び底部中の有機性及び無機有機複合体等の汚濁物を水面に浮上させて回収し、該水域外へ除去することで水域内の水質を改善することができるので、効率性、省エネルギー性に優れている。
(c)浮き構造体なので、気泡含有水流発生器から発生する水流を利用して水面上を移動させることもでき、多く汚濁物が堆積している場所へ移動し、効率良く汚濁物を除去することもでき、操作性に優れている。
(d)この装置は、各種の浚渫工事方法と併用して使用でき、浚渫工事中の水域中を多量に浮遊する汚濁物に微細気泡を付着させて、浮上分離させることで回収除去でき、浚渫工事中の水質汚濁を最小限に抑えることができる。
(e)湖沼や海洋等の閉鎖水域内の養殖場において、例えば、底部に堆積している残餌や糞に微細気泡を付着させ、浮力増加により上昇させ回収することで残餌や糞を回収除去し、同時にその水域に酸素を供給し、魚介類の生態系にとって好適な環境にすることができることで、生存率及び成長率が上がり漁業収入を増収させることができる。
(f)水面に浮上し回収された汚濁物は、多くの有機物を含んでいるので、再資源化し有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態の気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置の構成図で、1は気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置、2は水面上に気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置1を浮上維持させるための浮き構造体、3は装置全体の動力源を発生させる為の発電機、4は図2に記載した高性能の気体溶解量調整器、5は図4に記載した水流中に微細気泡を含有させる請求項1記載の気泡含有水流発生器、6は軽量で頑丈なアルミパイプ等で作られた骨構造を水面に向かって囲いながら収束させ、その骨構造にシート等を貼り付けたシートガイド、7はシートガイド6の下部に取り付けられた伸縮するシート、8はシート7を底部に接地させるため端に取り付けた錘(請求項2中に記載されたシートガイド部はシートガイド6と、シート7と、錘8と、で構成されている。)、9は浮き構造体2と気泡含有水流発生器5を連結させることや、浮き構造体2に回転軸受けを設けることによって、気泡含有水流発生器5を扇風機の首振りように回転することもできる支持軸棒、10は気泡含有水流発生器5内のプロペラ5Cを作動させる電力を送る電線、11は気泡含有水流発生器5内に取り付けられたノズル部(微細気泡発生器5A等)に気体を高濃度に溶解した溶解圧力水を送るホース、12は汚濁物に微細気泡が付着し浮力増で水面上に浮上した汚濁物、13は狭い囲いの水面上に浮上した汚濁物12をオーバーフロー方式によって回収するオーバーフロー回収口、14は回収した汚濁物12を湖沼等の水域から該水域外へ除去するフレキシブル排水パイプ(請求項2中に記載された回収除去部は、オーバーフロー回収口13とフレキシブル排水パイプ14と、で構成されている。)、15は湖沼等の底部に沈積している汚濁物層(ヘドロ等)、16は湖沼等の堰堤である。
尚、堰堤16外に排出された汚濁物12は有機物を多く含んでいるので、容易に再資源化することもできる。
【実施例】
【0012】
実施の形態における気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置1について説明する。
まず、図1中の発電機3(陸上からの送電でもよい。)を作動させて動力源を発生させ、次に、図2に記載した気体溶解量調整器4を拡大した正面断面図のポンプ20を作動させて、湖沼内の水Wを吸引管20aで吸引することで、吸引管20a内に発生する負圧を利用して、気体自吸管20bの細孔部分から気体Xを、タンク21内において溶解される気体Xの量より若干多く調整弁20cで自吸させ、ポンプ20の吐出し側に気体Xと水Wの混合圧力水を作り、閉ざされたタンク21内の上部に配置されたノズル22から液泡生成容器23内の中央底に向かって噴射させることで、図2aに記載した液泡生成容器23内の気泡と液泡の流動拡大図ように、タンク内の気体Xを多量に巻き込み液泡生成容器23内の底部分に多量の気泡を発生させることができる。
液泡生成容器23の底部分で多量に発生した気泡は、浮力で液泡生成容器23の周壁を上昇し、上部の縮径域では図2bに記載したように液泡に変化することによって、結果的にタンク21内に噴射された水Wは液泡表面の薄膜水になり、その薄膜水にタンク21内の圧力気体Pに応じて気体Xが高濃度に溶解され、その液泡は液泡生成容器23の上部から溢流し、タンク21の下部に溶解圧力水2Wとして一時的に貯留され、排出管25にホース11を介して接続されているノズル部の排出抵抗に応じて、徐々にタンク21内の圧力は上昇し、ノズル22のからの圧力とノズル部の排出抵抗とでタンク21内の圧力が決まる。
又、調整弁20cから気体Xをタンク21内に溶解される量より若干多く自吸させていることで、溶解圧力水2Wの水位は徐々に下がり、水位センサー24によってZの水位を感知させ、その情報を調整弁20cに伝えて気体Xの自吸を停止する。
タンク21内への気体Xの供給が停止されたことで、タンク21内の気体Xは溶解されてゆく分減少することになり、溶解圧力水2Wの水位が上昇してゆく。Yの水位まで上昇した水位を水位センサー24で感知し、その情報を調整弁20cに伝え、再び、気体Xをタンク21内に溶解される量より若干多く自吸させる。
この工程を繰り返すことで溶解圧力水2Wの水位をY〜Zの範囲に保つことができ、安定して気体を効率良く高濃度に溶解し、排出管25に接続されたホース11を介して気泡含有水流発生器5内のノズル部(微細気泡発生器5A等)へ送ることができる。
26はタンク21内の圧力を感知する圧力計である。
【0013】
図2中の調整弁20cから純酸素ガスを自吸させた場合には、純酸素ガスは水Wに対して溶解率が良く、水W中に元々溶存しているチッソガスがタンク21内に放出されることにより、徐々にタンク21内のチッソガス濃度が高くなり、排出管25から排出される溶解圧力水2Wの酸素濃度が下がる。
この時に、例えばチッソ排出弁23aから電磁弁・タイマー等を用いて、タンク21内に溜まったチッソガスを間欠的にタンク21外へ排出させることで、再び排出管25から排出される溶解圧力水2Wの酸素濃度を上げることができる。
【0014】
図3は図1のシートガイド6内に取り付けられた請求項1記載の気泡含有水流発生器5の断面図で、浮き構造体2上に搭載された気体溶解量調整器4から送水される溶解圧力水2Wを、ホース11を経由し凹部5D内に配置された溶解水供給管5Wから微細気泡発生器5A(ノズル部)に供給することで、凹部5D内で多量の微細気泡を発生させることができる。
同時に発電機3により動力線10を介して送られた電気を水中モーター5Bに送り、プロペラ5Cの回転によって強力な水流を発生させることによって、凹部5D内で発生した微細気泡と混合され、強力な水流中に多量の微細気泡を含んだ気泡含有水流を作ることができる。
図3内の気泡含有水流発生器5において、溶解水供給管5Wの端に微細気泡発生器5A等のノズルが接続、交換できるようになっている。
又、プロペラ5Cの下流側に配置された凹部5D内において、高濃度に気体が溶解された溶解圧力水2Wを用いているので、図3内の上側の凹部5D内に記載された微細気泡発生器5Aように、プロペラ5Cからの水流の高速部から離せば、凹部5D内は過飽和になり、その過飽和中に溶存する気体は、発生した微細気泡内の空間に向かって放出するので、その微細気泡の気泡径は大きくなる。
図3内の下側の凹部5D内に記載された微細気泡発生器5Aのように、プロペラ5Cからの水流の高速部へ接近させれば、凹部5D内にプロペラ5Cから水流が継続して送られるため希釈され、発生した微細気泡の周辺は過飽和にならず、従って気泡径は大きくならない。
上記の特性を利用して、ノズル部と水流の高速部との距離を溶解水供給管5Wに取り付けられたアジャスターナット5Eによって調整することで、水流に混合放出される微細気泡の気泡径を調整できる。
5Fは水面上の浮き構造体2に接続された支持棒9と、気泡含有水流発生器5とをボルトナット等を用いて固定できるボス穴で、水流方向を固定するためのものである。
尚、流量調整ノズルとエジェクタノズルは既製品が多種類あり図は省略する。
【0015】
図3aは旋回流方式の略回転対称に形成された中空部を有する微細気泡発生器で、水流及び気体の流れを示す模式図で、気体溶解量調整器4からホース11を介して送られた溶解圧力水2Wは、器体5aの内面接線方向に接続された供給管5bから供給されることで、器体5a内に強力な旋回流を形成し、回転対称軸方向の両端に設けられた気液噴出孔5cへ収束しながら旋回して移動し、外部の水中に向かって高速旋回して噴出気液5dとして噴出される。
この時に、器体5a内において旋回流の中心軸部分に強力な負圧軸2Xが形成される。これによって外部の液体は、負圧軸2Xが形成されている器体5a内に向かって進入しようとする力が働く(以下、この力が働く液体を負圧液5eという)。
同時に器体5a内において、気体が高濃度に溶解した溶解圧力水2Wは、強力な負圧軸2Xの周囲を旋回する過程で、負圧軸2Xに近い部分の負圧部では溶解圧力水2W中に溶解している気体が放出され、負圧軸2Xに集り負圧気体軸を形成しながら連続的に増加する気体は、低圧域から高圧域である両端の気液噴出孔5cに流れ、高速旋回している噴出液5dと負圧液5eとが押し合う状態の間隙の部分に送られる。
低圧の負圧軸2Xの両端から高圧の前記間隙に送られる気体は、強力な圧縮及び剪断を受けて微細気泡に生成され、微細気泡を多量に含んだ噴出液5dとして水中に放出される。
又、気体溶解量調整器4で作られた高濃度の溶解圧力水2Wを、微細気泡発生器5Aに供給し微細気泡を発生させた噴出水には、まだ十分に気体が高濃度に溶存している過飽和水なので、プロペラ5Cからの水流と離すことでその水流と希釈される時間が長くなり、微細気泡内の空間に過飽和水に溶存する気体が放出することで、微細気泡の気泡径は大きくなり、逆に近づけると、微細気泡発生器5Aから噴出した過飽和水は水流と即座に接触して希釈され、微細気泡の周囲は過飽和水ではなくなるので気泡径は大きくならない。
【0016】
図4は汚濁物Hに微細気泡Bが付着し、浮上している様子を拡大した模式図であり、又、丸囲いの中の拡大図は微細気泡Bに微小汚濁物hが付着して浮上している様子を示す。
この模式図の様な状態で汚濁物H及び微小汚濁物hはシートガイド6内を浮上し、収束された狭い水面に汚濁物12として集められ、オーバーフロー回収口13からフレキシブル排水パイプ14を介して堰堤16外へ除去される。
【0017】
実施の形態の気泡含有水流発生器5を備えた汚濁物除去装置1は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)気泡含有水流発生器5内のプロペラ5Cによって強力な水流を作り、上昇速度が非常に遅い微細な気泡を多量に水流中に混合させることで、発生させた微細気泡を長時間水域中に漂わせることによって汚濁物との接触する機会を多くできる。
又、支持軸棒9によって気泡含有水流発生器5を扇風機の首振りのように回転させることができるので、更に広範囲の水域に微細な気泡を含有した水流を送ることができる。
(b)浮き構造体2なので発電機3や気体溶解調整器4等の機器を搭載でき、湖沼等の水面上を所望の場所に自由に移動させる事ができる。
又、シート7を持ち上げて気泡含有水流発生器5から発生させた水流をシート7外へ噴出させことにより推進力にして、装置を所望の場所に移動させることもできる。
又、陸上からロープ等を用いて移動させることもでき、全く移動しない時はアンカ等を沈めて固定することもできる。
(c)汚濁物Hに微細気泡Bが付着し、シートガイド6内を収束しながら浮上して生じた汚濁物12は、オーバーフロー回収口13から回収され、確実に湖沼内からフレキシブル排水パイプ14によって外部へ除去することができる。
(d)シートガイド6の下端に錘8を付けたシート7によって、微細気泡を含有する水がシートガイド6内に閉じ込められる為、微細気泡が底部の汚濁物層15と接触及び付着し易く、又、シート7内の処理中の汚濁水がシート7外へ流出することを抑えることができる。
(e)凹部内において、高濃度に気体を溶解させた溶解圧力水2Wを使用しているので、微細気泡発生器5A(ノズル部)をプロペラ5Cからの水流から離せば、凹部内は過飽和状態になり発生した微細気泡の気泡径は大きくなり、近づければ凹部内の気体溶解濃度は希釈されるので、凹部内は過飽和状態にならず発生した微細気泡の気泡径は大きくならない。
上記の特性を利用して、微細気泡発生器5A(ノズル部)とプロペラ5Cからの水流との距離を溶解水供給管5Wに取り付けられたアジャスターナット5Eによって調整することで、水流に混合される微細気泡の気泡径を変えることができる。
【0018】
表1は気体溶解量調整器4を用いて水道圧の噴射エネルギーを利用して、タンク21内に空気及び純酸素をそれぞれ供給し、タンク21内の圧力を変化させて溶解能力の判断材料として溶存酸素量(DO)を測定した実験例を示している。
実験では水温7.9℃でDO11.8ppmの水道水を、水圧0.34MPaでノズル22の噴出口径7mmから噴射し稼動させ、その気体溶解水をHORIBA製 形式D−25と日本電池製 形式DOM・2000の二機種の溶存酸素計を用いて測定した。
圧力計は東洋計器興業(株)製TYPE−A0・7、温度計は(株)テクノ・サブン製 形式 D616を使用した。

【0019】
表1の溶存酸素量DOの数値で解るように、気体溶解量調整器4を用いて純酸素を溶解させれば超高濃度の酸素溶解水を生成できるので、図2の排出管25にホース11を介して流量調整ノズルを接続し、次に、この流量調整ノズルから出る排出量を調整することで、気体溶解量調整器4のタンク21内の圧力を所望に調整でき、タンク21内の圧力に応じた高濃度の酸素溶解水を流量調整ノズルの噴出口から求めることができる。
こうして生成された高濃度の酸素溶解水を、直ちにプロペラ5Cの水流によって効率良く希釈することで、過度の減圧発泡を抑えて広範囲の水域に効率良く酸素を供給し、生態系にとって素早く好適な環境にできる酸素供給装置としても利用できる。
又、浮き構造体2上に酸素製造装置を装備すれば、安定して酸素を気体溶解量調整器4に供給できる。
【0020】
処理対象水域の水温が低い、又は、水深が有り水圧が高い水域では、気体の飽和濃度が高く空気で生成した微細気泡でも水中内に吸収溶解され消滅する場合がある。
このような水質状態の場合には、図1内の微細気泡発生器5Aとエジェクタノズルとを交換することで、浮き構造体2の上から空気を自吸するパイプをエジェクタの気体自吸孔に接続することによって、処理対象水域に微細気泡と少し大きめの気泡径を含んだ水流を作ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
(1)湖沼や海洋等の閉鎖水域内において、何十年分もの落ち葉等の有機物が堆積しヘドロ化している場所や、魚介類の養殖場の底部に残餌や糞が堆積している場所で、堆積している汚濁物に微細気泡を付着させ、浮力増加により上昇させ回収することで水質を浄化し、同時にその水域に酸素を供給し、生態系にとって好適な環境にすることができる装置として利用できる。
又、水面に浮上した汚濁物は、多くの有機物を含んでいるので再資源化することもできる。
(2)各種の浚渫工事方法と併用して使用でき、浚渫工事中に水域中を多量に浮遊する汚濁物が工事区域外へ排出されるのを止めることができ、更に浮遊する汚濁物に微細気泡を付着させて回収でき、浚渫工事中の水質汚濁を極めて効果的に抑えることができる装置として利用できる。
(3)浮き構造体上に配置された気体溶解量調整器は、液泡生成による気体溶解のため、タンク内に供給される気体を100%無駄なく溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 実施の形態の気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置の構成図
【図2】 気体溶解量調整器の正面断面図
【図2a】 液泡生成容器内の気泡と液泡の流動拡大図
【図2b】 タンク21内において液泡表面の薄膜水に圧力気体Pが瞬間的に溶解している模式図
【図3】 気泡含有水流発生器の断面図
【図3a】 微細気泡発生器内の流体の流れを示す流動状態図
【図4】 汚濁物に微細気泡が付着し浮上している模式図
【符号の説明】
1 実施の形態の気泡含有水流発生器を備えた汚濁物除去装置
2 浮き構造体
3 発電機
4 気体溶解量調整器
5 気泡含有水流発生器
5A 微細気泡発生器(ノズル部)
5B 水中モーター
5C プロペラ
5D 凹部
5E アジャスターナット
5F ボス穴
5W 溶解水供給管
5a 器体
5b 供給管
5c 気液噴出孔
5d 噴出液
5e 負圧液
6 シートガイド
7 シート
8 錘
9 支持軸棒
10 動力線
11 ホース
12 汚濁物
13 オーバーフロー回収口
14 フレキシブル排水パイプ
15 汚濁物層
16 堰堤
20 ポンプ
20a吸引管
20b気体自吸管
20c調整弁
21 タンク
22 ノズル
23 液泡生成容器
23aチッソ排出弁
24 水位センサー
25 排出管
26 圧力計
X 気体
2X 負圧軸
W 水
2W 溶解圧力水
WF 薄膜水
P 圧力気体
B 微細気泡
H 汚濁物
h 微小汚濁物
Y 上限水位
Z 下限水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラにより水流を発生させる水流発生器と、前記水流発生器の下流側に設けられた単数又は複数の凹部と、前記凹部内に気体を高濃度に溶解した溶解圧力水を供給し、水流発生器によって発生している水流までの距離を、調整することのできるアジャスターナットが取り付けられた単数又は複数の溶解水供給管と、前記溶解水供給管の端に微細気泡発生器、流量調整ノズル、エジェクタノズル等のノズルを接続することができるノズル部と、を備えたことを特徴とする気泡含有水流発生器。
【請求項2】
湖沼等の水中に浮遊及び堆積している汚濁物を除去することにおいて、動力源や機器類等を搭載し水面上を移動することのできる浮き構造体と、閉ざされたタンク内に配置された液泡生成容器内で液泡を生成し、気体を高濃度に溶解させる気体溶解量調整器と、プロペラによって発生した水流と、気体を高濃度に溶解した溶解圧力水によって作られた微細気泡と、を混合させる請求項1の気泡含有水流発生器と、シート等を用いて底部から水面に向かって収束する形状に囲い、浮上する汚濁物を水面の狭い範囲に集中させるシートガイド部と、浮上させた汚濁物をポンプや水頭差を利用し、オーバーフロー方式によって湖沼外へ除去する回収除去部と、を備えたことを特徴とする汚濁物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−836(P2006−836A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206590(P2004−206590)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(393029572)
【出願人】(502242368)
【出願人】(301077459)
【出願人】(301077518)
【Fターム(参考)】