説明

気液接触装置用充填物、それを積み重ねてなる気液接触装置用エレメントおよびそれを用いた気液接触装置

【課題】蒸留装置においては、経済的に安価で、圧力損失が低く、高効率の規則充填物の提供。
【解決手段】構造が異なる複数のエクスパンドメタル(expanded metal)状物を積層して得られた積層体を基本単位として構成されていることを特徴とする気液接触装置用充填物、それを積み重ねてなる気液接触装置用エレメントおよびそれを用いた気液接触装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(イ)複数の成分を含む混合溶剤を沸点の差を利用して低沸点成分と高沸点成分に分離する蒸留精製装置内の気液接触機構として、(ロ)乾燥装置などから排出される溶剤を含んだ排ガスを吸収液と接触させ、溶剤を吸収液に吸収させるガス吸収装置の気液接触機構などとして、それぞれ使用することができる気液接触装置用(規則)充填物、それを積み重ねてなる気液接触装置用エレメントおよびそれを用いた気液接触装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充填物に関する従来の技術の1つとしては、蒸留装置における気液接触機構として用いられている規則充填物がある。減圧蒸留、真空蒸留などの操作では圧力損失を低く抑える必要があるため、規則充填物が多く用いられている。常圧または加圧蒸留においても棚および不規則充填物より分離効率の良好性が認められる規則充填物が用いられる場合が多い。
前記蒸留装置は、蒸留塔本体の高さ方向におけるほぼ中央部に混合溶剤を供給し、供給口の上方および下方に気液接触機構が具備され、理論段(「気液平衡」関係が瞬時に成立すると仮定して理論的に算出した段数のことをいう)に相当する高さをもった充填物で構成されている。上方気液接触機構の上部には凝縮器が、下方気液接触機構の下部には再沸器があり、凝縮および蒸発を行なうよう構成されている。
そして、供給された混合溶剤は、上方ほど沸点の低い成分に富んだ蒸気が上昇し、該凝縮器で凝縮し、還流比分塔に戻される。下方には沸点の高い液が下降し、再沸器で蒸発し塔に熱源として投入される。
一般に、蒸留装置の蒸留塔内における上昇する蒸気量(Q)と下降する液量(Z)の比〔(i)供給液組成の低沸点物と高沸点物の組成割合、(ii)供給液の供給状態(液またはベーパー)(iii)還流比の値(iv)濃縮部と回収部によって異なるが〕は、経済的な値として0.5≦(Z/Q)≦2.0で操作される場合が多い。
蒸留装置に用いられる従来の代表的な充填物には、例えば、金属薄板、金網などの充填物素材を規則的に折り曲げ、かつ、積層させて形成された規則充填物がある。これら精密な充填物の製作には、切断・表面加工・金網取り付け・曲げ加工・組立(溶接含む)など複雑な工程を要し、経済的に高価な充填物となるだけでなく、そのものが変形しやすいという問題点がある。
【0003】
蒸留装置において、少量の液でも良好に分散し、圧力損失が改善され、液滴の飛散、吹上を気液接触に不均一を生じることなく除去できる装置の1例としては特許文献1がある。この発明は充填物の構成材として平板状のシートではなく、折れ線状の糸状形状を有するもの、らせん状の糸状形状を有するもの、折れ線状の帯状の形状を有するもの、らせん状の帯状の形状を有するものなど板とは異なった構成材を使用しているがこれらの充填物の垂直方向(蒸留装置の縦方向)は、上下の支持物で固定されているが、水平方向(直径方向)は、支持物がないため、液の降下またはガスの上昇に対して抵抗が弱く、前記糸状形状や帯状形状を維持することが難しい。
【0004】
充填物に関する従来の技術の他の1つとしては、ガス吸収装置における気液接触機構として用いられている充填物がある。乾燥などの工程から排出される排ガス中に含まれる溶剤を吸収剤と向流接触させ排ガス中の溶剤を吸収液に吸収させ排ガスを浄化することを目的とする装置である。
従来、排ガスの処理は経営に対する負担が大きく、大気放出、回収液の放流など環境的に問題があった。最近、ISO14000やVOC規制(大気汚染法で危険とされる常温揮発性有機化合物を規制している)など法規制が整えられ、何らかの対策が求められている。対策の方法として(1)燃焼法による溶剤の燃焼、(2)他の方法としては、活性炭・ゼオライトなどの吸着剤による排ガス中の溶剤吸着法などがあるが、有限資源の保護、吸着後の処理など難点がある。さらに他の方法として前述した(3)溶剤吸収装置がある。従来吸収装置に用いられてきた充填物は、比較的安価なラシヒリング、テラレットなど不規則充填物が使用され、従って吸収処理による排ガス中の溶剤残量が充分なところまでは達していなかった。
従来、排ガスを浄化処理するには、吸収塔の下部より溶剤を含有する排ガスを吹き込み
吸収塔の上部から吸収液を流し、排ガス中の溶剤を吸収液に吸収させ、前記排ガスを洗浄していた。この場合、排ガス吸収装置の吸収塔における上昇する排ガス量は処理を要求されるガス量(V)であり、一定である。一方、吸収液の量(L)は吹き込み排ガスに含有する溶剤の濃度と洗浄後のガスに求められる溶剤の濃度により決められるが、通常、吸収液の量は、洗浄後の排ガス溶剤濃度をクリアーし、更に吸収塔塔底から排出する回収液の処理方法により決められる。1例として無処理で放流する場合は回収液の溶剤が50ppm(地域によって規制値が異なる)以下とする条件で吸収液の量を決めている。
【0005】
前述した各種規制をクリアーし、排ガス中の溶剤をリサイクルするシステムとしては、本出願人の特許文献2記載の発明(排ガス中の水より高沸点の物質を濃縮する方法と装置)がある。この発明によると、圧力損失が小さく、さらに、流下する吸収液の量は必要最小限の量で操作することが望ましいとされ、少量の液でも良好に分散できる充填物の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−44927号公報
【特許文献2】特開2004−230265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、蒸留装置においては、経済的に安価で、圧力損失が低く、高効率の規則充填物を提供することにある。本発明の第2の目的は、液・ガス比(L/G)が小さくても(かりに液・ガス比が1/10以下であっても)いいかえればガス量が大きくても、液の分散性が良好であり、したがって、空隙率および表面積が大きな規則充填物を提供することにある。さらに本発明の第3の目的は、薄板をエクスパンド加工を行なうことにより構造的に強い規則充填物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、構造が異なる複数のエクスパンドメタル(expanded metal)状物を積層して得られた積層体を基本単位として構成されていることを特徴とする気液接触装置用充填物に関する。
なお、本発明において、構造が異なるとは形状;大きさなど、いずれかが異なっていればよい。これによりエクスパンドメタル同士が相互に食い込んでしまいエクスパンドメタル同士の間にほとんど空隙がなくなってしまうといった現象を回避し、気液の流通を適切なものとすることができる。空隙率は90%以上、好ましくはそれより高いほどよい。
本発明の第2は、エクスパンドメタル状構造物が、金属製、合成樹脂製またはセラミックス製である請求項1記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第3は、複数種類のエクスパンドメタル状構造物が、網目サイズの異なるものである請求項1または2記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第4は、構造が異なる複数のエクスパンドメタル状物を積層して得られた積層体がロール状に巻き付けられていることを特徴とする気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第5は、構造が異なる複数のエクスパンドメタル状物を積層して得られた積層体が所望枚数積み重ねられていることを特徴とする気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第6は、前記積層体の積み重ね方向が、その充填物を充填するための充填塔の垂直方向と同一方向である請求項5記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第7は、前記積層体の積み重ね方向が、その充填物を充填するための充填塔の垂直方向と直角方向である請求項5記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第8は、前記積層体の積み重ね方向が、その充填物を充填するための充填塔の垂直方向に対して斜め方向である請求項5記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第9は、請求項1記載の積層体が、エクスパンドメタル状物(甲)、エクスパンドメタル状物(乙1)、エクスパンドメタル状物(乙2)の順で積層されたものを基本単位とし、この基本単位を任意数積層してなる積層体であって、エクスパンドメタル状物(甲)の網目の大きさが、エクスパンドメタル状物(乙1)およびエクスパンドメタル状物(乙2)の網目より大きく、かつエクスパンドメタル状物(乙1)とエクスパンドメタル状物(乙2)の網目が両者の相互の喰い込みを許さない形状および/または大きさである請求項1〜8いずれか記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第10は、網目の形が菱形である請求項1〜9いずれか記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第11は、 前記菱形の網目をもつエクスパンドメタル状物(甲)の
メッシュ短目方向の中心距離(SW)が0.5mm〜30mm
メッシュ長目方向の中心距離(LW)が1mm〜60mm
刻み幅(W)が0.05mm〜10mm
材料の厚み(T)が0.03mm〜1.0mm
エクスパンドメタルの厚み(D)が2mm〜20mm
であり、前記菱形の網目をもつエクスパンドメタル状物(乙1)の
メッシュ短目方向の中心距離(SW)が0.5mm〜10mm
メッシュ長目方向の中心距離(LW)が1mm〜20mm
刻み幅(W)が0.05mm〜5mm
材料の厚み(T)が0.03mm〜1.0mm
エクスパンドメタルの厚み(D)が0.1mm〜10mm
であり、前記菱形の網目をもつエクスパンドメタル状物(乙2)の
メッシュ短目方向の中心距離(SW)が0.5mm〜10mm
メッシュ長目方向の中心距離(LW)が1mm〜20mm
刻み幅(W)が0.05mm〜5mm
材料の厚み(T)が0.03mm〜1.0mm
エクスパンドメタルの厚み(D)が0.1mm〜10mm
である請求項10記載の気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第12は、請求項1〜11いずれか記載の充填物に、スカート、補強材を付加してなる気液接触装置用充填物に関する。
本発明の第13は、請求項1〜12いずれか記載の充填物を所望個数積み重ねて充填したことを特徴とする気液接触装置用エレメントに関する。
本発明の第14は、請求項13記載の気液接触装置用エレメントを用いたことを特徴とする気液接触装置に関する。
【0009】
図1の(A)は、本発明に用いる多数の網目をもつエクスパンドメタル状物の上面図であり、(B)はその1つの網目構造を示した上面図であり、(C)は(B)のX−X′線断面図である。
図2の(A)は、エクスパンドメタルの1つの製法を示す工程図であり、(B)は(A)の左側からみた1部側面図である。
図3の(A)は、本発明とは異なり、構造が同一の2枚のエクスパンドメタル状物を積層した場合の積層状態を示すものであり、(B)は本発明の1例に相当する積層状態を示すものであり、エクスパンドメタル(甲)に相当するI材、エクスパンドメタル(乙1)に相当するII材、エクスパンドメタル(乙2)に相当するIII材の積層構造が1つの基本単位であり、この基本単位をどのように積層するかによって、請求項4〜8に規定する形となる。
図4は、後段の〔0015〕で述べる本発明の具体的積層体の基本構成について説明するためのものである。
図5は、前記基本単位をもつ積層体を反物のロールのように巻きつけた構造のものであり、請求項4の発明の1例である。
図6は、前記基本単位を図のように垂直方向に積層して円柱構造としたものであり、請求項6の発明の1例である。
図7は、前記基本単位を円形に切り抜き、これを所望枚数積み重ねた構造のものであり、請求項7の発明の1例である。
図8は、前記基本単位を斜め方向に積層して得られたものであり、請求項8の発明の1例である。
【0010】
本発明で用いるエクスパンドメタル状物は、通常図2に示すようなエクスパンドメタルの製造方法により得ることができる(なお、エクスパンドメタルは、昭和48年9月20日 株式会社 地人書館発行、寺澤正男編著「金属工学辞典」第52頁に説明がある)。具体的な一つの製造方法としては、原料板に下刃および上刃で例えば千鳥状の切れ目を入れ、これを金網状に押し広げて網目を形成することによりエクスパンドメタル状物を得ることができる(兵庫県三木市口吉川町南畑758−65 株式会社サンクメタルの「SUPER EXPANDED METAL」と題したカタログに記載)。エクスパンドメタルの用途によっては、エクスパンドメタルの平面が図1の(C)にみられるような凹凸があると不都合なときは、これを圧延して凹凸をなくするが、本発明の場合は、凹凸がある方が空隙率や液体保持力が上がるので、好ましい構造である。この製法が適用できる材料は、アルミニウム、銅、ステンレススチール、チタン、ニッケル、鉄などの金属あるいは合成樹脂であって、通常伸び率が15%以上を有するものであればよい。本発明のエクスパンドメタル状物は、前述のように必ずしもエクスパンドすることが不可欠ではなく、結果として得られたものが前述のような構造になっていればよい。
伸び率が15%を下廻ってしまう材料の場合、例えばセラミックスの場合には、材料の混練、成形、焼成といった工程を採用することになる。
【0011】
本発明の場合、構造が異なる複数のエクスパンドメタル状物としては、通常、2種類のものを用いる場合が多く、第1のものは網目の大きいエクスパンドメタル状物であり、第2のものは網目の小さいエクスパンドメタル状物である。
【0012】
網目の大きいエクスパンドメタル状物は、主として気体が通過しやすいことを狙ったものであり、網目の小さいエクスパンドメタル状物は、主として液体を保持しやすいことを狙ったものである。とくに網目の小さいエクスパンドメタル状物を2枚(ただし、この2枚も同一構造のものでないことが好ましい。その理由は、2枚を重ねても〔0013〕でいうような喰い込みが発生せず、液体保持力が高いためである。)重ねて使用すると、液体が液滴を形成せず、網目を液体の膜として覆うため液の保持力が一層向上するので好ましいことである。なお、エクスパンドメタル状物の厚さや網目の大きさは、網目の形状が菱形の場合について記載したものと同様のことが言える。
【0013】
網目の大きさと形状が同一のもののみを用いると、その積層構造は図3の(A)のように1枚目のエクスパンドメタル状物に2枚目のエクスパンドメタル状物が喰い込んだ積層構造となってしまうのに対し、同一の2枚のエクスパンドメタルの間に図3の(B)に示すように、網目の小さいエクスパンドメタル状物が存在すると、図3の(A)に示すような喰い込んだ積層構造にはならないので、これにより得られた充填物の空隙率が高くなり、またその表面積もI材、II材の表面積が加わり大きなものとなる。
したがって、構造が異なるエクスパンドメタル状物を組み合せて用いることは、本発明にとって極めて大切なことである。
また、1枚のエクスパンドメタルにあっても、下刃と上刃を用いた打ち抜きにより、エクスパンドメタル自体に図1の(C)に見られるような平坦ではない立体的な凹凸を有することが好ましい。通常エクスパンドメタルの厚み(D)は、刻み幅(W)の1.5〜2.0倍である。
【0014】
請求項11に対応する積層体としては、
網目の大きい第1のエクスパンドメタル状物(甲)
T=0.03mm〜1mm、好ましくはT=0.05mm〜0.2mm
SW=0.5mm〜30mm、好ましくはSW=5.0mm〜30mm
LW=1mm〜60mm、好ましくはLW=10mm〜60mm
W=0.05mm〜10mm、好ましくはW=1mm〜5mm
D=2mm〜20mm、好ましくはD=2mm〜10mm
網目の小さい第2のエクスパンドメタル状物(乙1)
T=0.03mm〜1mm、好ましくはT=0.05mm〜0.2mm
SW=0.5mm〜10mm、好ましくはSW=0.5mm〜5mm
LW=1mm〜20mm、好ましくはLW=1mm〜10mm
W=0.05mm〜5mm、好ましくはW=0.5mm〜5mm
D=0.1mm〜10mm、好ましくはD=0.2mm〜5mm
網目の小さい第3のエクスパンドメタル(乙2)
T=0.03mm〜1mm、好ましくはT=0.05mm〜0.2mm
SW=0.5mm〜10mm、好ましくはSW=0.5mm〜5mm
LW=1mm〜20mm、好ましくはLW=1mm〜10mm
W=0.05mm〜5mm、好ましくはW=0.5mm〜5mm
D=0.1mm〜10mm、好ましくはD=0.2mm〜5mm
を用いることが好ましい。
ここで最も重要な数字はD(エクスパンドメタル状物の厚み)である。図4で説明すると、Dの値が小さいとピッチが小さくなり密な充填物ができる。Dが大きくなるに従ってピッチが大きくなるため粗い充填物ができる。ガス吸収装置や蒸留装置など液・ガス比に応じて充填物の形状を操作に合わせて選択することができる。また形状による製作の困難も伴わない。
【0015】
具体的な積層体の例としては、図4に示す構成の下記のものを挙げることができる。
I材 T=0.15mmのステンレスSUS304を SW=7.0mm、LW=14.0mm、W=2.5mm、のエクスパンド加工を行なうとD=4.5mmの厚みとなる。
II材 T=0.15mmのSUS304を SW=1.5mm、LW=3.0mm、W=0.15mm、のエクスパンド加工を行なうとD=0.3mmの厚みとなる。
III材 T=0.15mmのSUS304を SW=2.0mm、LW=3.0mm、W=0.15mm、のエクスパンド加工を行なうとD=0.3mmの厚みとなる。
このI、II、IIIの3枚を重ね合わせれば厚みDの和が基礎ブロック間のピッチ=4.5+0.3+0.3=5.1mmとなり、この基礎ブロック(図4の成形体)を所望単位積層して規則充填物を形成する。
このケースではSW/LW=ほぼ1/2、D/W=ほぼ2の関係にあるが、各値はそれぞれのケースに応じて自由に選択できる。
【0016】
図1の(B)に示す点A1、A2、A3、A4、それに対応する点はB1、B2、B3、B4であり、エクスパンドメタルにおけるA1とB1、A2とB2、A3とB3、A4とB4の距離は、すなわちエクスパンドメタルの厚みD:刻み幅Wの比、D/Wは、ほぼ刻み幅Wの2倍となる。
A1、B1からA3、B3をつなぐ部材C2は、その上面はA1から斜め下方に伸び、A3、B3の中間部に至る。中間部とは〔0010〕の製造方法で述べた千鳥状の切れ目を等間隔で入れるので成型後はA3、B3の中間部となる。
同様にA1、B1からA3、B3をつなぐ部材C1は、その上面はA1、B1の中間部から斜め上方に伸び、A2に至る。
【0017】
例えば、前述のI材、II材、III材の積層により得られた基本単位である積層体を、請求項4のようにロール状に巻き上げて得られた充填物の高さは、エクスパンドメタルの原材料である金属板の横幅に対応するものであり、その高さは自ずと制約があり、これ1個では充填塔の必要とする充填層の高さには不充分である。
したがって、本発明の充填物は図9に示すように必要個数積み重ねて、所望の高さのエレメントとすることになる。
【0018】
ここで、本発明におけるガスの流れの1例を説明する。使用する充填物が図5の(A)(請求項4に対応)に示す構造である場合を例にとって説明する。説明をしやすくするため、エクスパンドメタルI材の片面にエクスパンドメタルII材が、他方の面にエクスパンドメタルIII材が存在している部分〔図5の(B)〕におけるガスの流れとして説明する。
このような構造の場合、ガスの流れる中心部分はエクスパンドメタルI材であり、エクスパンドメタルII材およびIII材は網目が小さいのでガスは余り透過しない。ガスの主力はエクスパンドメタルII材およびIII材が不透板であるかの如き流れとなるので、その流れについて述べる。このような構成のセルとして考えると、Y′方向よりこのセルに流入したガスは図5の(C)の矢印に示すような流れとなる。たとえばこのセルにY′方向より流入するガスは大きい網目のエクスパンドメタルI材の部材C1とその両側の小さい網目のエクスパンドメタルII材、III材で形成される間隙は部材C1が図1の(C)に示すように傾斜しているため、A2を頂点とした(A2)/(A1)/(A1とB1の中間位置)、の3角形とB1を頂点とする(B1)/(B2)/(A2とB2の中間位置)、の3角形が形成される。したがって、ガスは主として大きな間隙を流れるため、ガスは部材C1により2分割され、セル内に流入する。部材C2についても同様である。部材C1、C2から流入したガスは、セル内で衝突、分散、混合し、両側の小さい網目のエクスパンドメタルII材、III材を伝って流下する液と気液接触する。Y方向に移動するセル内のガスは、部材C3、C4により部材C1の場合と同様に分割され、つぎのセルに流入する。また部材C4方向に向かうガスは、部材C4を通過する際、部材C4のA2、B2寄りの部分では部材C4の上方を通過し、部材C4のA4、B4寄りの部分では部材C4の下方を通過することが分かる。
また、ガスがセルをほぼ直線的に進行する場合では、ガスはA4、B4に衝突し上下に2分され、一方は部材C3の下方を通過しまた他方は部材C4の上方を乗り越え、それぞれ別のセル単位に分散される。また、図1(B)のX−X′の断面図である図1の(C)においてみられるように部材C3、C4は垂直板では無く、傾斜している(これはエクスパンド加工による傾きである)。この傾斜によりガスはX−X′とY−Y′で形成される平面に対して垂直方向へのベクトルが発生し、隣り合うエクスパンドメタルへガスが移動する。さらに、図2に示すエクスパンドメタルの製造方法から分かるように、上刃(三角形状)と下刃(平形状)で板に刻み目を入れ、図2(A)に示すSWの押し込みを行なうため、エクスパンドメタルI材のC1〜C4はメッシュ短目方向に対して傾斜している。このためガスの流れは小さい網目のエクスパンドメタルII材、III材の方向に変換される。この際部材Cの表面に凹状の押し形状が成型、裏面は凸状となる。この凹凸形状がガスと液の接触に大へん有効に作用する。説明したようにY′からY方向に移動するガスはそれぞれのセル単位においても上述したような複雑な分散と集合を繰り返すことができる。すなわち、上昇するガスの揺らぎ現象を与えることができる。
【0019】
次に液の流下分散流れについて説明する。液は図1(B)のY方向からY′方向にガスと対向して流下するものと仮定する。液の流れはA4を始点とする液はC3およびC4に分岐され、それぞれA2、A3に至る。さらにA2、A3の液は、それぞれ2分され隣り合う方向とA1に至る。このように下降する液は、分散と集合を繰り返し流下することが前提である。
【0020】
然るに水のような表面張力が大きな液体は丸い玉状で転がり落ちる場合が多く、前述のごとき流下状態を得ることは期待できない。従って網目の小さい(目の密な)エクスパンドメタルを2〜数枚重ね合わせ、網の毛細現象を利用して液の保持(小さい網目に膜状に付着させて保持する)および分散を行なわせる。この現象を行なわせるにはエクスパンドメタル以外の例えばメッシュ金網を使用することもできるが強度上エクスパンドメタルが望ましい。
【0021】
図4は、〔0015〕で述べた本発明の具体例である積層体の基本単位を1ブロックとし、その2ブロックを図示したものである。I材は、比較的目の粗いエクスパンドメタルであり、II材およびIII材は目の密なエクスパンドメタルである。I材の主たる目的は、前述したガスの分散機構を行なわせ、II材およびIII材の主たる目的は、流下する液の保持および分散を行なわせる。この場合II材およびIII材の2枚のエクスパンドメタルを使用しているが、1枚から数枚組み合わせてもよい。図4の左側は2つのバラバラのブロックを示し、それを組み合わせたのが図4の右側の成形体である。従って粗いエクスパンドメタルの中心部で測定したピッチはそれぞれの厚みDの和である4.5+0.3+0.3=5.1mmとなり、規則的な間隔を保つことが出来る。II材とIII材の液の保持および分散機能以外の役目は、II材およびIII材をなくした場合、粗いエクスパンドメタル同士を隣り合わせて成型すると、それぞれが同じ形状のためお互いが食い込むことがあり(ほとんど食い込む)、ピッチを同一にすることが困難となる。すなわち、II材、III材はI材を規則的なピッチに保持する役目もあり、それなりの強度を必要とする。同様の主旨で、II材とIII材も目が密である点は同じであっても、SW、LW、Wのいずれかが異なるものを使用することが好ましい。
【0022】
図4の右側に示すブロックが本発明の基本構造の1つのモデルである。本発明では、基本単位であるブロックの形状を保ちながら、ブロックを(イ)図5(A)に示すように、Y軸を上下方向とし、ブロックを中心部より円周方向に所定の直径まで巻く。(ロ)図6(1/4のみを図示)に示すように、方形に切断されたブロックを垂直方向に重ね合わせ所定の角柱または円筒状に成型する。(ハ)図7に示すように、円形に切断したブロックを水平軸方向に重ね合わせ所定の高さまで積層する。このようにすることにより規則充填物を成型することができる。
なお、ここでいう上下方向や水平、垂直などの方向の基準は、本発明の充填物を充填塔にセットして使用するときの方向に合致させて説明している。
【0023】
次に前述した(イ)、(ロ)、(ハ)の成型方法について記述する。
図5(A)はY−Y′軸を中心に円周方向に所定の直径まで巻いた1実施例である。図5の(A)は、図4に示すI材、II材、III材を(B)に示す順序で積層し、それをロール状に巻きつけた状態を示す斜視図であり、(B)は(A)の基本単位の積層構造を示し、(C)は網目内の流体の流れを示す。X−X′はY−Y′と直交している。図〔とくに図5(B)〕中クロス斜線は図4のI材である目の粗いエクスパンドメタルであり、点線はII材およびIII材の目の密なエクスパンドメタルである。このように簡単に3枚の異なったエクスパンドメタルを巻くことにより規則充填物を製作することができる。なお図5の(B)において、エクスパンドメタルのII材を外にして巻くか、II材を裏(中心側)にして巻くか、の2通りがある。また、II材の網目がIII材の網目より大きいと、図5(A)のように巻いた場合、II材がIII材の内側に巻かれる。これを充填塔に充填して使用すると、液は網目の大きい方、すなわち内側に移動する傾向が強くなる。一方、II材の網目とIII材の網目を入れ替えた状態を図5(B)に示す。これを図5(A)のように巻いた場合は液は外側に移動する傾向が強くなる。
【0024】
図6は、方形に裁断された基礎ブロックを垂直方向に重ね合わせ、所定の円筒状(角柱状にすることも可)に成型した規則充填物の1例である。実線部分がI材の目の粗いエクスパンドメタルを示し、点状部分がII材、III材の目の密なエクスパンドメタルである。
【0025】
図7は、円形に裁断した基礎ブロックを水平軸方向に重ね合わせ所定の高さまで積層した規則充填物の1例である。実線がI材の目の粗いエクスパンドメタルを示し、II材、III材は目の密なエクスパンドメタルである。円柱以外にも角柱・楕円柱などに成型することが出来る。
【0026】
図5、6、7では上昇するガスと流下する液が垂直方向を主としているが、図8は、他の1例として、前記した円形に裁断したブロックを斜めに積み上げた形状のものであり、これによりガスを斜め上方に移動させ、一方液の流下を斜め下方に移動するように考慮した方法のものである。
1つの充填物の高さは、ケースバイケースでとくに限定するものではないが、例えば、塔(蒸留塔やガス吸収塔)の直径が400mmを超えるような場合には、1つの充填物の高さは通常200〜400mmであり、塔の直径が400mm以下の場合には1つの充填物の高さは400mm以下、好ましくは150〜300mmである。
その理由は、1つの充填物内で液やガスの変流が生じたとしても、1つの充填物の高さを低く抑え、その充填物で発生した変流をつぎの充填物で補正することも可能とするからである。
【0027】
ガス吸収装置または蒸留装置に用いられる本発明の規則充填物は、理論段数にもとづいて所定の充填層高まで積載する必要がある。そのため、前述した図5、6、7、8の規則充填物を垂直方向に積み重ねることになる。この積み上げる方法として、ガスおよび液の分散・集積を考慮して、図5〜図8に示す充填物X−X′の方向を、例えば45°づつ回転させて積載したり、あるいは、Y−Y′を逆転させて積み上げることも出来る。このように積み上げたものをエレメントと称する。
図9は高さ200mmの充填物を8段重ねてφ200×1600のエレメントとした1例である。充填物1段の高さは、原材料となる金属板のロール幅によって限定されるが150mm〜650mmが適当である。
【0028】
エクスパンドメタルの材質は、ステンレス、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル鋼、モネル、鉄、各種樹脂などを使用することが出来る。
【0029】
〔0020〕で述べたが、ステンレスなど平板上の比較的表面張力の大きな(例えば水のようなもの)液体は、丸い玉状の形状となる。この形状は、ガス吸収・蒸留などの操作を行なおうとする場合、物質移動を妨げる要因となる。これを防止するため粗い目のエクスパンドメタル(図4のI材)の表面をエンボス加工(小さな凸凹や線状の溝を付ける)や親水性物質のコーティングなど親水性処理を前もって施し、液の伸展性を高めることで吸収・物質移動の効率を上げることが出来る。
【0030】
図5、6、7、8の充填物は、エレメントの製作時にその形状を固定する。以下にその方法の1例を示す。
図10は、図5、6に示した充填物を固定する1方法である。中心に取り付けた芯棒の両端に補強材1、2(上下面の形状を保つ役割を果す)を放射状に伸延し、円周を補強するカラー部1に接続する。カラー部1の外周にはスカートを設け、図10、図11に示す充填物を上下を逆にして積み重ねることにより、壁面に移動した液をスカートにより充填部に戻すようになっている。また1ケの充填物の高さが高い場合または直径が大きな場合は中間部にカラー部2を施し、充填物の中心を穿つ補強材と接続して形状を固定することができる。
【0031】
図11は、図7、8に示した充填物を固定する1方法である。積み上げた充填物の内部に数箇所の補強材を埋め込みその両先端を折り曲げカラー部に接続し、固定する方法である。
【0032】
前述した補強材、芯棒、カラー部、カラー、スカートの材質は、充填物で使用した材質またはテフロン(登録商標)などの樹脂で製作することが望ましい。
【0033】
規則充填物の構造的機能を測定することは規則充填物の性能評価を知る上で大切なデータである。
【0034】
本発明の充填物と従来の充填物の主たる特性値を表1に示す。
本発明のパッキングは、表中NRパック(2.7)およびNRパック(5.0)として表示している。ここで、(2.7)および(5.0)とは図4に示すI材、II材、III材の積層体の厚みに相当するDの値である。また、双方とも図5(A)の実施例により成形した充填物である。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から明らかなように、NRパック(2.7)は、ガス吸収装置をターゲットにおいて意識的に充填密度を密にし、液の保持能力を高めている。NRパック(5.0)は蒸留装置をターゲットにした充填物で、表面積、空隙率が高い。
【0037】
充填物を評価する他の特性として、上昇するガス流速と下降する液体の量に対する圧力損失を測定することである。図12は、本発明の充填物(エレメント)を塔に充填し、下方からガスを送入し、上方から液を流下し、圧力損失ΔPを求めるための実験装置である。
【0038】
図13は、前述した実験装置で測定した結果である。図13の(A)はNRパック(5.0)のデータであり、図13の(B)は、NRパック(2.7)のデータである。横軸はガス流量を、縦軸は圧力損失をあらわし、液流量をパラメータとして表示している。双方とも圧力損失は異なるがガス流速が2.75m/s以下の流速であれば安定した操作ができることを示している。特に、NRパック(5.0)は、スルザーパッキング(スイス国スルザー社の規則充填物)など他の既存充填物と比しても遜色が認められない。
【0039】
規則充填物の主たる用途として用いられているガス回収塔の1例を図14−1に示し、もう1つの主な用途である蒸留塔の1例を図14−2に示す。構造的にはガス回収塔、蒸留塔は殆ど同一でありノズル名称が異なる。本発明の規則充填物(NRパック)は、AR11(ガス吸収部、濃縮部)とAR12(ガス冷却部、回収部)における規則充填物として高い効率で使用されている。
【発明の効果】
【0040】
以上詳細に説明したように、本発明により、(a)規則充填物としての新規な構造を提案することができた。(b)充填物において、充填物素材として、エクスパンドメタルを使用することにより、従来の充填物より経済的に安価に製作できる。
さらに、(c)従来の規則充填物に比して、空隙率がほぼ等しく表面積が大きな規則充填物の製作が可能となった。特に、(d)有毒な揮発性有機化合物(VOCの排気)が厳しく規制され、排気ガス中のVOC量を減少させるガス回収装置において、従来使用されてきた不規則充填物または規則充填物ではクリアーできないような溶剤含有量まで排ガスを洗浄処理することができる本発明による規則充填物の効果は大きい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
【0042】
実施例1
図15は、リチウムイオン電池の製作過程から排出されるN−メチルピロリドン(NMP)を約2000ppm含む排ガスを被処理ガスとして吸収処理するための装置の概要図である。ここで使用している充填物としては、〔0034〕で説明したNRパック(2.7)およびNRパック(5.0)が用いられている。直径200mmの塔には、ガス吸収部にNRパック(2.7)を1800mmの高さで充填し、ガス冷却部にはNRパック(5.0)を1000mmの高さで充填した。80℃のNMP含有被処理ガス(風量320m/h)を塔下部から送入し、吸収液の水を水量12L/hで塔上部より流下させた。このとき塔上部から排出される排ガス中のNMP濃度は平均して10PPM以下であった。また塔下部より排出される排液中のNMP濃度は80wt%であった。従来の吸収装置による排ガス処理装置(不規則充填物使用)では排ガス中のNMP濃度は平均して50ppm程度で、廃液中のNMP濃度は50%であり、本発明の充填物は効率よくNMPを吸収でき、さらに排液も高濃度で回収することが出来た。
したがって、本発明の充填物は、本出願人の出願にかかる特開2004−230265号公報(特願2003−20725)記載の「排ガス中の水より高沸点物質を濃縮する装置」の充填塔に使用して大いに効果を発揮することができる。
【0043】
実施例2
図16は、高沸点物と低沸点物を分離精製する蒸留装置の部分図である。この蒸留塔を使用して50vol%のメタノール水溶液を蒸留し、99.5vol%の留出物と50ppm以下の排出物に分離する操作を行なった。還流比を1.0としたときの理論段数は濃縮部17段、回収部は8段であった。濃縮部に前記NRパック(2.7)を3500mmの高さで充填し、回収部に前記NRパック(5.0)を2400mmの高さで充填した。処理量は4000l/hの場合の塔径は700mmとした。濃縮部と回収部の中間より50vol%のメタノール水溶液(MeOH・水混合液)を供給し、稼動した結果、留出液組成は99.8vol%まで濃縮出来、さらに排出液のメタノールは10ppmまで減らすことができた。さらに従来使用していた同じ処理量の泡鐘棚を使用した蒸留塔を用いた場合と比較して塔径は1200mmから700mmに、気液接触部の高さを10000mmより8000mmに低く抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1の(A)は、本発明のエクスパンドメタル状物の上面図であり、(B)はその1つの網目構造を示した上面図であり、(C)は(B)X−X′線断面図である。
【図2】図2の(A)は、エクスパンドメタルの製法を示す工程図であり、(B)は、(A)の左側からみた1部側面図である。
【図3】図3の(A)は、本発明とは異なり、構造が同一の2枚のエクスパンドメタル状物を積層した場合の積層状態を示すものであり、(B)は、本発明の1例に相当する積層状態を示すものである。
【図4】図4は、〔0015〕で述べる本発明の具体的積層体の基本構造について説明するための断面図である。
【図5】図5は、前記基本単位をもつ積層体を反物のロールのように巻きつけた構造の斜視図であり、請求項4の発明の1例である。
【図6】図6は、前記基本単位を垂直方向に積層して円柱構造としたものの部分斜視図であり、請求項6の発明の1例である。
【図7】図7は、前記基本単位を円形に切り抜き、これを所望枚数積み重ねた構造のものの斜視図であり、請求項7の発明の1例である。
【図8】図8は、前記基本単位を斜め方向に積層して得られたものの斜視図であり、請求項8の発明の1例である。
【図9】本発明の充填物を8段重ねて作った本発明エレメントの1例を示す斜視図である。
【図10】本発明の充填物を気液接触させるために充填塔に充填するに先立ってスカートなどの付加的部品を付加し、各充填物が安定した状態でエレメントを構成させるために加工された充填物の1構造例を示す斜視図である。
【図11】本発明の充填物を気液接触させるために充填塔に充填するに先立ってスカートなどの付加的部品を付加し、各充填物が安定した状態でエレメントを構成させるために加工された充填物の他の構造例を示す斜視図である。
【図12】本発明のエレメントを充填塔に充填し、下からガスを送入し、上方から液を流下し、エレメントの圧力損失ΔPを求めるための実験装置を示す。
【図13】(A)は本発明の具体例であるNRパック(5.0)と構造を異にする充填物であるスイス国スルザー社の商品名スルザーパッキングのガス流量と圧力損失の関係を示し、(B)は本発明の他の具体例であるNRパック(2.7)のガス流量と圧力損失の関係を示す。
【図14−1】本発明の充填物を用いたガス回収塔の構造例を示す。
【図14−2】本発明の充填物を用いた蒸留塔の構造例を示す。
【図15】本発明の充填物を用いた充填塔を使用したガス吸収装置の実施例を示す。
【図16】本発明の充填物を用いた充填塔を使用した2成分系蒸留装置の実施例を示す。
【符号の説明】
【0045】
SW メッシュ短目方向の中心距離
LW メッシュ長目方向の中心距離
W 刻み幅
T 材料の厚み
D エクスパンドメタルの厚み
S SW方向製品の長さ
L LW方向製品の長さ
11 ガス吸収塔または蒸留塔
12 塔本体
13 供給口
16 吸収液または還流液入口
21 液分散装置
22 集液装置
23 液分散装置
24 液供給パイプ
25 スタンドパイプ
26 メインヘッダ
27 アームチューブ
28 集液溝
29 コレクタボックス
31 充填物支持枠
32 排出パイプ
AR11 ガス吸収塔のガス吸収部または蒸留塔の濃縮部
AR12 ガス吸収塔のガス冷却部または蒸留塔の回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が異なる複数のエクスパンドメタル(expanded metal)状物を積層して得られた積層体を基本単位として構成されていることを特徴とする気液接触装置用充填物。
【請求項2】
エクスパンドメタル状構造物が、金属製、合成樹脂製またはセラミックス製である請求項1記載の気液接触装置用充填物。
【請求項3】
構造が異なる複数種類のエクスパンドメタル状構造物が、網目サイズの異なるものである請求項1または2記載の気液接触装置用充填物。
【請求項4】
構造が異なる複数のエクスパンドメタル状物を積層して得られた積層体がロール状に巻き付けられていることを特徴とする気液接触装置用充填物。
【請求項5】
構造が異なる複数のエクスパンドメタル状物を積層して得られた積層体が所望枚数積み重ねられていることを特徴とする気液接触装置用充填物。
【請求項6】
前記積層体の積み重ね方向が、その充填物を充填するための充填塔の垂直方向と同一方向である請求項5記載の気液接触装置用充填物。
【請求項7】
前記積層体の積み重ね方向が、その充填物を充填するための充填塔の垂直方向と直角方向である請求項5記載の気液接触装置用充填物。
【請求項8】
前記積層体の積み重ね方向が、その充填物を充填するための充填塔の垂直方向に対して斜め方向である請求項5記載の気液接触装置用充填物。
【請求項9】
請求項1記載の積層体が、エクスパンドメタル状物(甲)、エクスパンドメタル状物(乙1)、エクスパンドメタル状物(乙2)の順で積層されたものを基本単位とし、この基本単位を任意数積層してなる積層体であって、エクスパンドメタル状物(甲)の網目の大きさが、エクスパンドメタル状物(乙1)およびエクスパンドメタル状物(乙2)の網目より大きく、かつエクスパンドメタル状物(乙1)とエクスパンドメタル状物(乙2)の網目が両者の相互の喰い込みを許さない形状および/または大きさである請求項1〜8いずれか記載の気液接触装置用充填物。
【請求項10】
網目の形が菱形である請求項1〜9いずれか記載の気液接触装置用充填物。
【請求項11】
前記菱形の網目をもつエクスパンドメタル状物(甲)の
メッシュ短目方向の中心距離(SW)が0.5mm〜30mm
メッシュ長目方向の中心距離(LW)が1mm〜60mm
刻み幅(W)が0.05mm〜10mm
材料の厚み(T)が0.03mm〜1.0mm
エクスパンドメタルの厚み(D)が2mm〜20mm
であり、前記菱形の網目をもつエクスパンドメタル状物(乙1)の
メッシュ短目方向の中心距離(SW)が0.5mm〜10mm
メッシュ長目方向の中心距離(LW)が1mm〜20mm
刻み幅(W)が0.05mm〜5mm
材料の厚み(T)が0.03mm〜1.0mm
エクスパンドメタルの厚み(D)が0.1mm〜10mm
であり、前記菱形の網目をもつエクスパンドメタル状物(乙2)の
メッシュ短目方向の中心距離(SW)が0.5mm〜10mm
メッシュ長目方向の中心距離(LW)が1mm〜20mm
刻み幅(W)が0.05mm〜5mm
材料の厚み(T)が0.03mm〜1.0mm
エクスパンドメタルの厚み(D)が0.1mm〜10mm
である請求項10記載の気液接触装置用充填物。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか記載の充填物に、スカート、補強材を付加してなる気液接触装置用充填物。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか記載の充填物を所望個数積み重ねて充填したことを特徴とする気液接触装置用エレメント。
【請求項14】
請求項13記載の気液接触装置用エレメントを用いたことを特徴とする気液接触装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−222763(P2007−222763A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45996(P2006−45996)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(593053335)日本リファイン株式会社 (15)
【Fターム(参考)】