説明

気相蒸着供給源のための加熱システム

本発明は、2つの区画を備えた容器を有する気相蒸着供給源について記載する。第1の区画は、蒸気を生成するためのものである。この区画は、材料のための入れ物およびその入れ物の中に置かれる材料を加熱するための手段を備えている。第2は、拡散区画であり、この拡散区画は、生成区画と連通する容器を有し、かつ少なくとも1つのオリフィスを備え、その結果、気相状態の材料がこのオリフィスを通って容器の外側に向かって送られる。この供給源の特徴は、一方では、空間が熱輸送液体で満たされる中間空間を画定している内壁および外囲器を有し、他方では、空間がこの液体を加熱するための手段で埋められていることである

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはマイクロエレクトロニクス産業における材料の蒸気蒸着に関する。特に、本発明は、不都合なく中断可能な、大きな面への連続的な蒸着を可能とする蒸気供給源の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
絶え間なく増大する電子および光学部品の数と、それらの同じ1つのデバイス内での集積化によって、基板上に各種材料を蒸着してこれらのデバイスを構成する薄層を形成するための高度な技術が開発されてきた。
【0003】
気相蒸着は、非常に幅広い範囲の処理、特に、気相化学蒸着と称され、一般的にその英語の頭字語CVPD、「化学気相蒸着」(“chemical vapor−phase deposition”)で示される処理を包含する。その名称が示唆するように、この種の蒸着は、例えば蒸着チャンバへの前駆ガスの先行導入、または、基板上に既に蒸着されている材料の層および基板それ自体と生じている化学反応によって操作中に生じる化学反応を伴う。他のタイプの化学気相蒸着は、このような化学反応を伴わない。これらは、管理された中性雰囲気および/またはほぼ真空中での蒸発による簡単な物理蒸着から成っている。
【0004】
すべての気相蒸着技術は、蒸着される蒸発材料の供給源を蒸着チャンバ内に作製するために機械装置を必要とする。この機械装置は、一様な厚さに蒸着された薄層およびその薄層の物理化学的特性の良好な管理を得るために適用される常に決定的な因子である。電子および光学装置の低コストでの大量生産により、それらの装置が適用される基板が、同じ生産サイクル中にますます数多くの装置またはますます大きな装置を生産するためにますますサイズが大きくなることが必要となるため、供給源の作製はますます困難になってきている。それ故、幅が何十センチメートルを超える、さらには1メートル近くの可能性がある各種材料の連続的な気相蒸着を可能とする供給源が必要とされることは、意外なことではない。さらに、このようなデバイスを工業生産することは、供給源および蒸発材料に損傷を与えずに、蒸着が自在に中断および再開できることを暗示している。
【0005】
マイクロエレクトロニクス産業は、誘電体または金属などの材料を蒸着させる必要性に長期間直面してきているが、有機発光ダイオード(OLED)を含むディスプレイおよびスクリーンなどのエレクトロルミネッセンス素子を製造するには、より壊れやすい有機材料の蒸着に頼る必要がある。
【0006】
広い横幅の線形供給源からの有機材料の蒸発によって、温度変化という重大な問題が引き起こされる。この温度変化は、蒸着チャンバ内の蒸気生成位置と蒸気拡散位置(すなわち、供給源の全横幅に亘って設置されるノズル)との間に観察されるものである。実際に、蒸気を運ぶチューブの壁、そして、供給源を構成しているディフューザの壁における材料の結露を避けるために、常に正である温度勾配を維持できることが必要である。温度勾配が常に正であるのは、あらゆる冷温区画がガス温度を露点より低くするのを防ぐためである。これは、実行するのがなおさら難しいことである。というのは、有機材料の場合のように、蒸着させられる材料の破壊温度が蒸発温度に近いからである。大部分の材料は、450°Cより高い温度で分解すると考えることができる。さらに、蒸発温度と劣化温度との間の差は、約10〜100°Cに達し得る。温度差がこのように小さいので、より高い温度で発生する蒸発の可能性は制限される。
さらに、複数の体積から成る非常に広い線形供給源は、点供給源より微妙である。その理由は、この緩やかな温度勾配が、蒸発坩堝から各ノズルまでの、すべてのディフューザ面に亘って制御されなければならないからである。
【0007】
蒸発温度と破壊温度との間のこの小さな差のために、解決するのがより困難になっている他の問題は克服されなければならない。加熱システムそれ自体が、蒸発坩堝の表面に温度ムラを作り出している可能性がある。このような温度ムラが、蒸着させられる材料の局部劣化の一因となり、それによって使用時間を減らし損失の原因となり、そして、この材料が一般に極めて高コストなものになっている。劣化している材料が、気づかないうちに蒸着膜品質の損失につながっているかもしれないというリスクがあると言っておかねばならない。それ故、生産効率低下のリスクは顕著である。このことは、工業生産の場で他の深刻な弱点につながっている。それは、限られた量の材料が、これらの損失を減らすために、2つの蒸着の間に導入されなければならないという事実である。これは、中断されない直結生産工程と簡単には両立できない。
【0008】
線形供給源は、大変関心がわく主題であり、特に、高速蒸着を達成する能力には関心がわく。線形供給源は、主に、点供給源と比較してはるかに小さい供給源〜基板間距離のために、材料の効率的な利用を確実にする。複数ノズルの存在およびそれらの設計は、大きな面上で一様な蒸着を確保することを意図したものである。これは、複数ノズルを使用することを、前述のエレクトロルミネッセンス素子などの装置の大規模生産のために不可欠にしている主要な利点である。しかしながら、蒸発の高速度と相まって、この短い距離によって、従来のスクリーン式クロージングシステム(screen−type closing system)(基板への、蒸着処理を中断可能にする)を適用するのが、機械的な理由により困難になる。従来のクロージングシステム(closing system)のサイズは、ロングノズル式ディフューザ(long nozzle−type diffuser)と互換性がない。さらに、従来のクロージングシステムは、それらの詰まる速度が原因で使いやすくはない。また、基板に向けての拡散を中断し、蒸発される材料を浪費しないために、蒸気輸送チューブを閉めることを可能にするバルブを備えた供給源がある。そして、そのバルブが閉じられると、バルブにより、蒸気が作られる位置に連結されるパイプの体積が著しく減少する。この体積の著しい減少によって、蒸気生成システム負荷が激しく変化し、これによって、蒸気生成区画の圧力が非常に顕著に上昇する。次に、この強い圧力変化により、蒸気生成区画が飽和状態になるまで、温度上昇が発生する。この温度上昇により、蒸着される材料の熱劣化が次々と発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、本発明の全般的な目的は、蒸着を停止したり再開したりしながら連続的に作動することが必要とされる気相蒸着システムの線形供給源で見つかっている上記の弱点の1つを少なくとも部分的に克服することである。蒸発温度に近い破壊温度を有する有機材料の蒸着を可能にする線形供給源を記載することも本発明の目的である。
【0010】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の説明および添付図面を検討することで明らかになるであろう。他の利点が組み込まれてもよいことは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的を達成するために、本発明は、材料の気相蒸着のための供給源を記載する。この供給源は、2つの区画に分けられている容器から成る。第1の区画は、蒸気を生成するためのものである。この区画は、材料のための入れ物およびその入れ物の中に置かれる材料を加熱するための手段を備えている。第2は、拡散区画であり、この拡散区画は、生成区画と連通する容器を有し、かつ少なくとも1つの開口を備え、その結果、気相状態の材料がこの開口を通って容器の外側に向かって送られる。この供給源の特徴は、一方では、空間が熱輸送液体で満たされる中間空間を画定している内壁および外囲器を有し、他方では、空間がこの液体を加熱するための手段で埋められていることである。
【0012】
本発明は、以下のオプションを含んでいてもよい。
− 熱輸送液体を加熱するための手段は、全面的または部分的にチャンバ外囲器と接触する少なくとも1つの電気抵抗を含む。
− 電気抵抗は、チャンバ外囲器の外部表面と接触している。
− 加熱手段は、中間空間の中に、全面的または部分的に配置される少なくとも1つの電気抵抗を有する。
− 電気抵抗は、内壁の外部表面と接触している。
− 熱輸送液体を加熱するための手段は、チャンバの外側に配置される熱輸送液体を加熱するための装置、および加熱装置と中間空間との間で熱輸送液体を循環させるための手段を含む。
− 内壁の熱伝導率は、外囲器の熱伝導率より大きい。
− 入れ物は、熱輸送液体で満たされる第2の中間空間を画定している内壁および外囲器を有する。
− 入れ物を加熱するための手段は、全面的または部分的に入れ物の外囲器と接触する少なくとも1つの電気抵抗を含む。
− 入れ物加熱手段は、第2の中間空間の中に全面的または部分的に配置される少なくとも1つの電気抵抗を含む。
− 入れ物加熱手段は、入れ物の外側に位置する熱輸送液体を加熱するための装置、および熱輸送液体をこの加熱装置と第2の中間空間との間で循環させるための手段を含む。
− 入れ物壁の熱伝導率は、入れ物外囲器の熱伝導率より大きい。
− 入れ物は、材料と接触するその内部表面上に1つあるいは数個のフィンを含む。
− 少なくとも1つのオリフィスは、中間空間を通るノズルを備えている。
− 中間空間は、チャンバの内壁のすべての外部表面を取り囲む。
− 蒸気生成区画およびチャンバは、直角に連結する。
− 蒸気生成区画は、チャンバの幅の中央に置かれる。
− 加熱手段は、少なくとも1つのオリフィスの高さに位置する。
− 各オリフィスに対して、加熱手段は、オリフィスの周壁のまわりにフィラメントを有する。
− フィラメントは、中間空間の外側に置かれる。
− フィラメントは、中間空間の中に置かれる。
【0013】
本発明の目的、目標、特徴および利点は、以下の添付図面に示す実施形態の詳細な記述によってより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明による線形気相蒸着供給源を示しており、この線形気相蒸着供給源では、加熱フィラメントが、加熱炉の外囲器および熱輸送流体を含んでいる蒸気ディフューザの周りに巻かれている。
【図1B】本発明による線形気相蒸着供給源を示しており、この線形気相蒸着供給源では、加熱フィラメントが、加熱炉の外囲器および熱輸送流体を含んでいる蒸気ディフューザの周りに巻かれている。
【図2A】本発明による線形気相蒸着供給源の変形例を示しており、この線形気相蒸着供給源の変形例では、加熱フィラメントが、熱輸送流体に直接接触している。
【図2B】本発明による線形気相蒸着供給源の変形例を示しており、この線形気相蒸着供給源の変形例では、加熱フィラメントが、熱輸送流体に直接接触している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図は、実施例として与えられており、限定的なものではない。
【0016】
図1Aおよび図1Bは、本発明による線形気相蒸着供給源を示しており、この線形気相蒸着供給源では、加熱フィラメントが、加熱炉の外囲器および蒸気ディフューザの周りに巻かれている。
【0017】
本発明は、線形気相蒸着供給源10が、好適な実施形態において、加熱炉または材料生成区画20とチャンバ50のオリフィス30を形成する蒸発ノズルとの間で非常に緩やかな温度勾配を得ることをどのように可能にしているかについて記載する。
【0018】
本発明と同じ種類の蒸着供給源は、その高さで材料が加熱されると気相に変化する蒸気生成区画を有する。
【0019】
供給源は、供給源の外側にオリフィス30を通って蒸気をもたらすことができる前記蒸気のための生成区画を有し、その結果、材料は蒸着され得る。
【0020】
供給源は、拡散を実行、すなわち生成区画20から蒸気を分散するチャンバを含む。
【0021】
示した実施形態においては、蒸発させられる材料23の入れ物21と連通するのに、生成区画20とチャンバ50は、パイプ40を介して連結されている。有利には、パイプ40は、2つの供給源区画の間に「T」字形を形成しているチャンバ50の一体化部分である。
【0022】
形容詞「線形の(linear)」は、いくつかのノズル(好適な実施形態)を有する供給源を意味するものとし、これらのノズルは供給源の1つの寸法に従って隣接配置されている。好ましくは、この隣接配置は直線に沿ったノズルの配列を含むが、これは制限的な配置ではない。
【0023】
炉の坩堝または入れ物21は、蒸発させられる材料23、例えばエレクトロルミネセンスダイオードを製造するのに使われる種類の有機材料を含む。坩堝は、中間空間の坩堝のまわり中に存在する熱輸送流体25に浸漬している。この中間空間は、これから先では第2の中間空間(チャンバ50の高さで形成され以後記述される中間空間に対して)と呼ばれ、これは、加熱炉、すなわち坩堝自体および炉の外囲器29を形成する2つの同軸チューブ間の空間である。この筒状構成は、有利ではあるが、限定的ではない。材料23を受けている入れ物21の内壁と外囲器29の間に、第2の中間空間は、一般に形成される。
【0024】
有利には、第2の中間空間は入れ物21の底面および側面の壁の部分をカバーする。そして、その底面に対向する入れ物21の部分はチャンバ50と連結する。図1Aおよび図1Bに示される本発明の実施形態の例において、加熱手段は、加熱炉の外囲器を囲むフィラメント27から成る。それ故、入れ物21は、加熱フィラメントと直接には接触していない。これにより、ホットポイントの発生が防がれる。ホットポイントは、背景技術に関する導入で述べた不都合、すなわち、蒸発させられる材料には劣化および高コストの材料の損失があり、使用寿命が短いという不都合を有する。それ故、坩堝の加熱は間接的である。これは、全体として一様な蒸発温度を確保する熱輸送流体を介して行われる。
【0025】
入れ物21のように、チャンバは熱輸送液体25に浸漬している。この熱輸送液体25は、すべての環状空間に存在し、一方で、パイプ40とディフューザの内壁52との間にそして、他方では、T形の外側の筒状外囲器60に入れられている。T形筒状外囲器の分岐部分は、パイプ40およびチャンバ50の横向き部分のそれぞれと同軸になっている。
【0026】
熱輸送液体は、材料の蒸発温度と両立する温度範囲内で熱を移動できなければならない。使用される液体を選択するうえでの主制約は、温度に関するその化学的安定性であり、物理化学的特性は温度の立ち上がりとは無関係のままである。特にここでより考慮される有機材料のために、流体は、通常は400°Cまで機能できなければならない。液体は、様々な化学組成を有してもよい。すなわち、シリコン・ベース、合成芳香族化合物または合成製品の使用に基づくものである。さらに、これらの液体は、液体の体積が一定であることを保証するための低熱膨張係数、および供給源の内壁への熱伝達量を最適化するような高熱伝達係数を有することが好ましい。これらの基準を満たす流体は、貿易筋から入手可能である。例えば:
− SOlutia Europe SPRL/BVBA社製 Therminol 75(登録商標)、ここで、SOlutia Europe SPRL/BVBA社の住所は、3 Rue Laid Burniat, B−1348 Louvain la Neuve (Sud), Belgiumである。
− 「ダウ・ケミカル(Dow Chemical)」社製 Syltherm800(登録商標)、ここで、「ダウ・ケミカル(Dow Chemical)」社のフランスでの登録事務所および販売代理店は、Dow France S.A.S, Avenue Jules Rimet, 93631 La Plaine St Denisである。
【0027】
本発明のこの実施形態において、加熱フィラメント41も、熱輸送液体を用いて間接的にディフューザを加熱するために外側の筒状外囲器を取り囲む。この熱輸送液体は、それによって、一方では、加熱炉内で蒸発される材料に接触する、他方では、噴射パイプ40および水平ディフューザを有するチャンバ内で蒸気に接触するすべての表面上での熱の良好な分布を確実にする。
【0028】
さらに、図には、オリフィス30の高さに位置するオプションの加熱手段を示す。図1Aおよび図1Bに図示した実施形態において、この局所加熱手段は、オリフィス30の上端、すなわちパイプのノズル吹出口に置かれるフィラメント31を含む。フィラメント31は、中間空間の外側のパイプの末端の周壁と結合する。
【0029】
オプションとして、図2Aおよび図2Bには、中間空間の内側の、オリフィス30のパイプ周辺のフィラメント31を示す。
【0030】
環状形状において、フィラメント31により、温度勾配のさらに微細な調整が確保される。
【0031】
この加熱手段は、入れ物21およびその外囲器20、ならびに良好な熱伝導を有する材料(例えば、金属)の垂直パイプ40、チャンバ50およびそれらの外囲器60の本体の実施形態と組み合わせて使用され、蒸発される材料またはその蒸気に接触する壁の全体に渡る非常に一様な温度を確保する。これによって、フィラメントがこれらの壁と直接に接触すると発生するかもしれないホットポイントが排除される。
【0032】
坩堝または入れ物21の中に置かれ蒸発させられる材料について、その芯まで確実に均一な温度にするために、入れ物は、放射状のフィン22を有する。フィンは、坩堝と負荷との間の加熱面を大いに増大させ、入れ物内部のいかなる温度差も避けるためにすべての加熱パワーを伝導により拡散する。これにより、壁に接触している材料が局部的に焦げることが、一方、もしこれが行われなかったら、坩堝の中央の材料が低い温度になったであろうことが避けられる。
【0033】
わずかではあるが、それでもなお正である温度勾配は、蒸着される材料の破壊温度を超えないと共に、蒸着供給源が適切に機能することを確実にするために、蒸気供給源からノズルまで有利につくられなければならない。そして、この温度勾配は、加熱フィラメントの電気的制御の実行、ならびにすべてのディフューザ、垂直噴射パイプおよび坩堝に渡る加熱フィラメントの分布によって確保され得る。熱輸送液体の存在は、非常に効果的にいかなる変化も取り除いて、ホットスポットの出現を防止する。
【0034】
1つの実施形態において、フィラメントまたは抵抗27および41の様々な制御が、この調整を容易にする。それ故、抵抗値27および41は、供給源の位置に依存して、加熱を調整するために、異なって制御される数個の本体に分割され得る。
【0035】
最後に、連続的な工業生産のために用いられる本発明の線形供給源のために、蒸発される材料を破損することなく蒸発処理を止めたり再開したりするための手段もまた提供されなければならない。本発明のこの目的は、ディフューザ内に蒸気チェックバルブを配置することによって、本発明のこの第1の実施形態において達成される。このチェックバルブは、ディフューザの内径に相当する直径を有する回転スリーブ70の形をしており、軸方向の機械的調節装置72を使って回転可能である。オリフィス73は、蒸着操作中に蒸気が通過することができるように、ノズルの位置に穿設される。スリーブを簡単に回転させるだけで、ノズルを遮蔽し蒸着処理を中断するのに十分である。下部オリフィス71は、垂直蒸気噴射パイプ40に対向して配置されている。この下部オリフィス71は、回転させられノズルを遮蔽したとき、この回転によって、蒸気噴射パイプ40がふさがれないようになっている。
【0036】
図2Aおよび図2Bには、本発明による線形気相蒸着供給源の変形例を示し、この変形例において、加熱または電気抵抗フィラメントが熱輸送液体に直接接触している。
【0037】
この図は、熱輸送液体25を含んでいる環状空間に加熱エレメントを配置することができることを示している。フィラメントは、熱輸送液体に浸漬されおり、そして直接熱を加え、それによって、温度が先のケースと少なくとも同じように一様になることを確実にしている。これは、入れ物21を加熱するために用いるフィラメント27、ならびに、垂直パイプ40および内壁52周辺で温度勾配を維持するために用いるフィラメント41の両方に関する。この場合、外壁の方がずっと冷たく、そして、これは蒸着供給源を含んでいる蒸着チャンバの中の線形供給源からの放熱を制限する。本発明のこの第2の実施形態において、坩堝29の外囲器およびディフューザ60の外囲器は、この放熱をさらに減少させるために、低熱伝導率を有する材料で有利には作製可能である。あるいは、水などの液体クーラントシステムがこの放熱を制限してもよい。
【0038】
それ故、熱輸送液体の加熱は、蒸着チャンバの外部に配置されるバッファータンク(図示せず)に代えられ得ることがわかる。液体は、その後、供給源および/またはチャンバの高さで循環され、使用中に交換することが可能であり、例えば、供給源の急速冷却、そして、一般に、温度を外部装置から制御することを可能にする。この場合、加熱フィラメントを設置する必要はない。
【0039】
この本発明の第2の実施において、回転スリーブ70は、摺動スリーブ70と置き換えられる。ノズルはチャンバ50の横本体を形成しているディフューザより少し短いので、ノズルは軸方向調節装置72を使い摺動スリーブ70の横方向の移動によって今回は閉じられる。前と同じように、開口73は、蒸着フェーズ中に蒸気を通過させるためにノズルの位置に穿設される。下部オリフェス81は、垂直蒸気噴射パイプ40に対向して配置されている。この下部オリフィス81は、ノズルを遮蔽するための横方向移動が、蒸気パイプ40をどんなやり方であれ遮断しないような形状や大きさを有している。
【0040】
もちろん、図1、図2に示される実施形態のオプションは、いかなる不都合も無く組み合され得る。フィラメントは熱輸送液体中に置かれてもよいし、そして、これは回転スリーブの使用を伴ってもよい。また、この逆も可能である(摺動スリーブおよび外囲器のまわりの加熱エレメント)。
【0041】
したがって、記載されている加熱手段もまた組み合わせ可能である。
【0042】
同様に、液体25は、2つの中間空間において同一であっても、あるいは、同一でなくてもよい。空間は、温度を一様にするために連通することも、あるいは切り離されることも可能である。
【0043】
バルブはさらにインターロックされ、温度変化無しでフラックスの急速な変化またはフラックスの安定を確実なものにする放出フラックス調節を確保するために使用され得る。具体的には、この解決策は、坩堝を埋めている材料の高さによって左右されるいかなるフラックス変化も急速に取り除く。
【0044】
中間空間が拡散ノズルを取り囲んでいることがわかる。蒸気は、蒸着供給源の最終端までこのように加熱される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの区画を備える容器を有する、気相状態にある材料の蒸着供給源(10)であって、前記2つの区画とは、
前記材料のための入れ物および前記入れ物(21)の中に配置された前記材料を加熱するための手段を備える蒸気生成区画(20)と、
前記生成区画と連通し、かつ少なくとも1つのオリフィス(30)を備え、その結果、気相状態にある前記材料は前記オリフィス(30)を通って前記容器の外側に向かって送られるチャンバ(50)とである蒸着供給源であって、
一方では、チャンバ(50)は、熱輸送液体(25)が満たされる中間空間を画定する内壁(52)および外囲器(60)を有し、他方では、前記蒸着供給源は熱輸送液体(25)を加熱するための手段を備えることを特徴とする、蒸着供給源。
【請求項2】
熱輸送液体(25)を加熱するための前記手段が、全面的または部分的に前記チャンバ(50)の外囲器(60)に接触している少なくとも1つの電気抵抗(41)を含む、請求項1に記載の蒸着供給源。
【請求項3】
電気抵抗(41)が、前記チャンバ(50)外囲器(60)の外表面に接触している、請求項2に記載の蒸着供給源。
【請求項4】
熱輸送液体(25)の前記加熱手段が、前記中間空間内に全面的または部分的に配置されている少なくとも1つの電気抵抗(41)を含む、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項5】
電気抵抗(41)が内壁(52)の外表面に接触している、請求項4に記載の蒸着供給源。
【請求項6】
前記熱輸送液体を加熱するための前記手段が、前記チャンバの外側に配置される、前記熱輸送液体(25)を加熱するための装置、および前記熱輸送液体を前記加熱装置と前記中間空間との間で循環させるための手段を含む、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項7】
内壁(52)の熱伝導率が外囲器(60)の熱伝導率より大きい、請求項4〜6のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項8】
入れ物(21)が、熱輸送液体(25)で満たされる第2の中間空間を画定する内壁および外囲器(29)を含む、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項9】
入れ物(21)を加熱するための前記手段が、前記入れ物の外囲器(29)と全面的または部分的に接触している少なくとも1つの電気抵抗(27)を含む、請求項8に記載の蒸着供給源。
【請求項10】
入れ物加熱手段(21)が、前記第2の中間空間内に全面的または部分的に配置された少なくとも1つの電気抵抗(27)を含む、請求項8または9に記載の蒸着供給源。
【請求項11】
入れ物(21)を加熱するための前記手段が、入れ物(21)の外側に配置される前記熱輸送液体(25)を加熱するための装置、および、前記加熱装置と前記第2の中間空間との間で前記熱輸送液体(25)を循環させるための手段を含む、請求項8〜10のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項12】
入れ物(21)の内壁の熱伝導率が、入れ物(21)の外囲器(29)の熱伝導率より大きい、請求項10または11に記載の蒸着供給源。
【請求項13】
入れ物(21)が、前記材料と接触するその内部表面上に1つあるいは数個のフィン(22)を含む、請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項14】
前記少なくとも1つのオリフィス(30)が、前記中間空間を通り抜けるノズルを有する、請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項15】
前記中間空間が、チャンバ(50)の内壁(52)のすべての外表面を取り囲む、請求項1〜14のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項16】
前記蒸気生成区画(20)およびチャンバ(50)が、直角に連結される、請求項1〜15のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項17】
蒸気生成区画(20)が、チャンバ(50)の幅の中央に置かれる、請求項16に記載の蒸着供給源。
【請求項18】
少なくとも1つのオリフィス(30)の高さに位置する局部加熱手段を有する、請求項1〜17のうちいずれか1項に記載の蒸着供給源。
【請求項19】
前記局部加熱手段が、各オリフィス(30)のために、オリフィス(30)の周壁を囲むフィラメント(31)を含む、請求項18に記載の蒸着供給源。
【請求項20】
フィラメント(31)が、前記中間空間の外側に位置している、請求項19に記載の蒸着供給源。
【請求項21】
フィラメント(31)が、前記中間空間内に位置している、請求項19に記載の蒸着供給源。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2013−519787(P2013−519787A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552425(P2012−552425)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052172
【国際公開番号】WO2011/101325
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512199771)
【Fターム(参考)】