気管内チューブカフ充填の調整
被験者に挿管する方法が開示される。この方法は:気管内チューブを被験者の気道内に挿入すること;気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること;尺度のレベルを該尺度の最適レベルと比較すること;および、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、比較に基づいてカフの膨張を調整することを含む。尺度は二酸化炭素濃度、そのような濃度の推測を可能にする代理尺度、または挿管中に被験者に送達される、1つまたはそれ以上の添加剤のレベルであってよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は挿管に関し、さらに詳しくは、気管内挿管を実行しかつ気管内チューブカフ充填を調整するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸補助を必要とする患者の医療処置では、口、鼻、またはいずれかの他の外科的に形成された開口を経由して患者の気管内に気管内チューブを挿入することが一般的である。気管内チューブの1端は、管を介して肺に空気を周期的に送り込む人工呼吸器に接続される。管の内端には典型的には、管を気管内に挿入した後で常套の手段によって膨張される、膨張可能なカフが具備される。膨張したカフは気管の内壁を封止するはずである。
【0003】
そのようなカフ付き気管内チューブでは、高すぎる圧力でカフを気管の内壁と接触させる場合、接触部分の毛細血管に対する過度の圧力のため、粘膜内の正常な血流が妨害され、結果として組織虚血または不適切な血流を引き起こす。長時間の虚血は、粘膜の糜爛、骨環の破壊、または気管の拡張による分節性気管軟化症などの様々な程度の傷害を引き起こし得る。結果として前側に無名動脈穿孔または後側に食道穿孔を生じ得る全層腐食は、さらにいっそう劇的である。長期人工呼吸器補助を必要とする患者はしばしば、軽度から日常生活ができなくなる閉塞まで、気管狭窄の遅発合併症を発現する。
【0004】
他方、低すぎる圧力でカフを気管の内壁と接触させる場合、麻酔ガス、酸素、または空気の漏洩のため、人工呼吸が抑制されることがあり得る。さらに、圧力が低い場合、体分泌、粘液性、または他の望ましくない流体が、気管の内面とカフの外面との間を徐々に通過するおそれがある。これらの分泌物は気管から出て気管支に入り、潜在的に肺感染症を引き起こすおそれがある。
【0005】
したがって、機械的人工呼吸の間に膨張カフと気管壁との間から空気が漏洩するのを防止しながら、同時に接触部分の毛細血管における必要な血流を維持するように、気管の内壁に対するカフ接触圧力を適切なレベルに維持することが必要である。
【0006】
カフからの長期圧力によって生じる組織損傷を防止するために、医師は定期的にカフを収縮および再膨張させる。しかしこの手順が、組織の適切な再灌流を可能にするのに充分な頻度で、または充分に長い時間行なわれることは稀である。したがって、この手順に頼って気管虚血を防止することはできない。
【0007】
様々な気管内チューブが開発されてきた。例えば米国特許第4159722号は、比較的高速の圧力上昇を防止し、かつ比較的低速の圧力上昇を可能にする、気管内チューブの膨張可能なカフ用の改善された圧力調整器を開示している。圧力調整器は、カフの空気圧の視覚的表示を提供する。
【0008】
米国特許第4305392号は、吸引によって分泌物の漏洩の問題を解決しようとしている。気管内チューブは、カフより上の気管内の流体を吸出し、かつ薬液を気管内に導入するための吸引ポート付きチャンバの形の吸引装置と結合される。
【0009】
米国特許第4501273号は、カフを制御することによって漏洩の問題を解決しようとしている。カフ内の圧力は自動的に、気管内チューブの内部に供給される圧力の上昇に比例して上昇し、それによって膨張カフと気管壁との間の封止の破断または漏洩を防止する。
【0010】
米国特許第5765559号は、長時間の外科手術中に気管狭窄症を引き起こすおそれのある、カフによって気管壁に対して加えられる一定静圧の問題に対処するものである。提案される解決策は、カフリングの1つまたはそれ以上が収縮するときに他が膨張したまま維持されるように、各々が周期的に膨張および収縮することができる複数のカフリングを有するカフ付き気管内チューブを含む。これにより、固定位置に対する定圧のため、気管壁の損傷が低減される。
【0011】
しかし、上記および他の先行技術はどれも、カフと気管内壁との間の接触領域における漏洩を監視しない。
【0012】
異なる手法が、どちらも本発明の発明者によって出願された国際特許出願公開第WO2002/076279号および米国特許第6843250号に開示されている。この手法では、カフと声帯との間の患者の気道の二酸化炭素濃度が監視される。監視に基づき、カフを通過する二酸化炭素の漏洩を防止するように、カフの膨張は調整される。カフの膨張は、カフを通過する二酸化炭素の漏洩を防止する最小限の膨張圧力をもたらすように調整される。
【0013】
追加の関連先行技術として、米国特許第3504676号、第3794036号、第4305392号、第4770170号、第4825862号、第5067497号、第5579762号、第5582166号、第5582167号、第5752921号、第5819723号、第5937861号、および第6062223号が挙げられる。
【0014】
本発明は、先行技術の気管内挿管技法に関連する問題の解決策を提供する。
【発明の開示】
【0015】
背景技術は、カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す尺度を測定し、かつ指示的尺度を該尺度の最適レベルと比較することによる、気管内チューブカフ充填の最適化を教示するものではない。背景技術は二酸化炭素濃度の最適値を教示するものではなく、二酸化炭素濃度以外の尺度を教示するものでもない。さらに、背景技術は、カフ調整を目的としてカフ付近における漏洩ダクトの形成を識別するための添加剤の使用を教示するものではない。
【0016】
本発明は、気管内チューブを気管の気道内に導入し、かつカフを声帯の下の気道内で膨張させる、挿管手順で効率的に使用することができる方法およびシステムを提供する。
【0017】
本発明の様々な例示的実施形態では、本発明の方法およびシステムは、カフを通過する分泌物の漏洩を示す1つまたはそれ以上の尺度の測定を実行し、該尺度を該尺度の1つまたはそれ以上の最適値と比較し、比較に基づきカフ充填を調整する。本発明の好適な実施形態に係る尺度は、二酸化炭素濃度、そのような濃度の推測を可能にする代理尺度、またはカフ付近の漏洩ダクトの形成が識別されるように挿管中に被験者に送達される、1つまたはそれ以上の添加剤のレベルであってよい。
【0018】
1つまたはそれ以上の添加剤を被験者に送達するときに、それらは、気管内チューブのメインルーメンを通して肺へ(例えば呼吸用ガスに添加剤を混合することによって)、または被験者の気道の内壁と気管内チューブの外壁との間のカフより上の位置へのいずれかに送達することができる。添加剤のレベルは、送達技法に応じて選択される監視位置で監視される。例えば送達が気管内チューブのメインルーメンを通して行なわれる場合、監視位置は、被験者の気道の内壁と気管内チューブの外壁との間のカフの上であってよく、気道と気管内チューブとの間のカフの上の位置に送達が行なわれる場合、監視位置は、カフの下または気管内チューブのメインルーメン内であってよい。
【0019】
したがって、本発明の1態様では、肺で終端する気管の気道を有する被験者に挿管する方法を提供する。該方法は:気管内チューブを気道内に挿入すること;気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること;尺度のレベルを該尺度の最適レベルと比較すること;および、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、比較に基づいてカフの膨張を調整することを含む。
【0020】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、尺度はカフと声帯との間の二酸化炭素濃度以外である。
【0021】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、 該方法は、周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行し、最適レベルの値を設定するために周囲二酸化炭素分圧を利用することをさらに含む。
【0022】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、周囲二酸化炭素分圧の一連の実時間値を提供するように、周囲二酸化炭素分圧の測定を連続的に実行する。
【0023】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、周囲二酸化炭素分圧は基準分圧として使用され、最適レベルは基準分圧より約4mmHg大きい二酸化炭素分圧に相当する。
【0024】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、最適レベルは約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する。
【0025】
本発明の別の態様では、声帯および肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法を提供する。該方法は:気管内チューブを気道内に挿入すること;気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;気管内チューブを通して呼吸用ガスおよび少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達すること;被験者の体内の監視位置で少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを監視すること;ならびに、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながらカフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、監視に基づきカフの膨張を調整することを含む。
【0026】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生することをさらに含む。
【0027】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、監視位置は被験者の鼻孔、中咽頭、気管内チューブと気道壁との間のカフの上および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部である。
【0028】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、 該方法は、カフより上の気道の吸引位置で分泌物を吸引することをさらに含む。
【0029】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、気管内チューブの挿入は、測定用導管および吸引用導管の少なくとも一方を挿入することを含む。
【0030】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、カフ膨張の調整は手動で実行する。
【0031】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、カフ膨張の調整を自動的に実行する。
【0032】
本発明のさらに別の態様では、気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブと、カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置とを含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステムを提供する。
【0033】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、測定装置は、少なくとも1つの尺度のレベルが最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される。
【0034】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、最適レベルは予め定められた最適レベルである。
【0035】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は、尺度のレベルが約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される。
【0036】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行するように設計かつ構成され、周囲二酸化炭素分圧は最適レベルの値を設定するために利用される。
【0037】
本発明の追加の態様では、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステムを提供する。該システムは:気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブと;気管内チューブと作動的に関連付けられ、気管内チューブを通して少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達ユニットと;少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを測定するための測定装置とを含む。
【0038】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、測定装置は、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される。
【0039】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、気管内チューブは、少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達用導管を含む。
【0040】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、添加剤送達用導管は気管内チューブのルーメン内に配置される。
【0041】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、添加剤送達用導管は気管内チューブの外部に結合されるか、あるいは気管内チューブの壁に埋め込まれる。
【0042】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、測定装置から受け取った信号に基づいてカフの膨張を調整するための膨張装置をさらに含む。
【0043】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は、少なくとも1つの尺度のレベルを表示するためのディスプレイ装置を含む。
【0044】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、測定装置と連絡状態にあって測定装置から受け取った信号に応答して警報を発生するための警報ユニットを含む。
【0045】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、膨張装置は測定装置と連絡状態にあり、それによって共に閉ループ制御を形成する。
【0046】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、測定装置から気道のカフの上まで延びる測定用導管を含む。
【0047】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、気道内のカフより上の吸引位置で分泌物を吸引するために動作する吸引装置を含む。
【0048】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、吸引装置から吸引位置まで延びる吸引用導管を含む。
【0049】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、吸引位置まで延びる測定および吸引用導管を含み、該位置における測定および吸引を促進するように、該測定および吸引用導管が測定装置および吸引装置に結合されている。
【0050】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定および吸引用導管は気管内チューブ内に内部配置される。
【0051】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定および吸引用導管は気管内チューブの外部に配置される。
【0052】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定および吸引用導管は気管内チューブの壁に埋め込まれる。
【0053】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は被験者の鼻孔で行なう。
【0054】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は被験者の中咽頭で行なう。
【0055】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は被験者の声帯より下、カフより上で行なう。
【0056】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定はカフより下およびその隣接部で行なう。
【0057】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフと声帯との間の二酸化炭素濃度を含む。
【0058】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、声帯より上の二酸化炭素濃度を含む。
【0059】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、被験者の鼻孔における二酸化炭素濃度を含む。
【0060】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の漏洩を示す音響データを含む。
【0061】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は音響データから背景データを取り除くことを含む。
【0062】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、背景データは約1200Hz未満の周波数によって特徴付けられる。
【0063】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は、音響データを特徴付ける、ドップラ効果によって誘発される周波数差を算出することを含む。
【0064】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は、音響信号の伝搬時間を算出し、かつカフ付近の流体流れを決定するために該伝搬時間を利用することを含む。
【0065】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の流体流れを示す圧力データを含む。
【0066】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の流体流れを示す流量データを含む。
【0067】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の分泌物の存在を示す光学データを含む。
【0068】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、気管内チューブを通過する吸気量と呼気量との間の差を含む。
【0069】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフより上の気管内チューブの外側の流体の電気的特性を含む。
【0070】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルの監視は、被験者の声帯より下、カフより上で行なう。
【0071】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は質量分析計を含む。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルの監視は、質量分析を実行することを含む。
【0072】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置はガス分析装置を含む。
【0073】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な電気的特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は電気的特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、電気的特性を測定することによる。
【0074】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な磁気的特性を測定することによって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は磁気的特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、磁気的特性を測定することによる。
【0075】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な光学的特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は光学的特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、光学的特性を測定することによる。
【0076】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な放射特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は放射特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、放射特性を測定することによる。
【0077】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な蛍光特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は蛍光特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、蛍光特性を測定することによる。
【0078】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの不活性ガスを含む。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの不活性ガスはヘリウムおよびクリプトンから成る群から選択される。
【0079】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は少なくとも1つの有色ガスを含む。
【0080】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの放射性同位体を含む。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの放射性同位体は、テクネチウム放射性同位体、キセノン放射性同位体、およびクリプトン放射性同位体から成る群から選択される。
【0081】
本発明は、気管内挿管を実行し気管内チューブカフ充填を最適化するためのシステムおよび方法を提供することによって、現在公知の構成の欠点に対処することに成功している。
【0082】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているのと類似のまたは等価の方法と材料は本発明を実施または試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。矛盾する場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法および実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【0083】
本発明の方法およびシステムを実行することは、選択されたタスクまたはステップを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法とシステムの好ましい実施態様の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、いずれかのファームウェアのいずれかのオペレーティングシステムのハードウェアまたはソフトウェアまたはそれらの組合せによって実行できる。例えば本発明の選択されたステップはチップまたは回路のようなハードウェアとして実施できる。本発明の選択されたステップは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施できる。いずれにしろ、本発明の方法とシステムの選択されたステップは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットホームで実行されると言える。
【0084】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、先行技術の挿管システムの概略図である。
図2は、吸気および呼気中の気管内チューブカフの概略図である。
図3a〜cは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
図4a〜bは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、様々な測定位置におけるCO2分圧を示す。
図5a〜bは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、音響測定装置の位置の概略図である。
図5cは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、ドップラ効果によって漏洩を識別するための手順の代表的実施例を示す。
図5dは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、呼吸周期中の肺の圧力および漏洩ダクトの圧力の関数依存性の間の相違を示す。
図6a〜bは、気管内チューブの外側の気管内の空気の流れ(図6a)および圧力(図6b)の概略図である。
図7a〜cは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した別の方法のフローチャートである。
図8は、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するためのシステムの簡略図である。
図9a〜bは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するための別のシステムの簡略図である。
図10は、人間シミュレータおよび全身麻酔下にある患者で本発明の教示に従って実行されるCO2サンプリングの解剖学的位置を示す。
図11は、本発明の教示に従って実行した実験中に表示される、気管内チューブカフの圧力に従う呼気CO2圧力波形を示す。
図12は、本発明の教示に従って実行した実験中の気管内チューブカフの圧力と、カフおよび声帯の間で測定されたCO2レベルとの間の相関関係を示す。
図13a〜bは、2つのブタモデルにおける気管内チューブカフの圧力と上気道のCO2レベルとの間の相関関係を示す。
図14は、聴覚的漏洩試験および呼気‐吸気量差を使用して麻酔医によって臨床的に決定された気管内チューブカフの初期平均圧力と、CO2漏洩監視(n=60)によって決定された平均最適カフ圧との間の比較を示す。
図15は、気管内チューブカフの初期圧力が。PCO2漏洩監視(n=60)によって決定された最適カフ圧と比較して著しく高いか、低いか、あるいは正確である患者の百分率を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
本発明の実施形態は、挿管に使用することができる方法およびシステムを含む。特に本発明は、気管内チューブカフ充填を最適化するために使用することができる。
【0086】
図面の図2〜15に示す本発明をよりよく理解するために、最初に、図1に示す一般的な(すなわち先行技術の)挿管システムの構造および動作について言及する。
【0087】
本発明の少なくとも一つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は以下の説明に記載されているかまたは図面に例示されている要素の構造の詳細と配置にその用途が限定されないと解すべきである。本発明にはその他の実施態様がありまたは種々の方法で実行もしくは実施できる。また、本明細書に使用される用語と語句は説明を目的とするものであり本発明を限定するとみなすべきではないと解すべきである。
【0088】
ここで、図面を参照すると、図1は、本発明と同一発明者によって発明された、本書で概してシステム1と呼ぶ先行技術の挿管システムを示す。システム1は、患者の気道内に挿入される気管内チューブ10を含む。膨張可能なカフ12はチューブ10に関連付けられ、患者の気道11内の声帯13より下の位置に位置するように配設される。チューブ10は人工呼吸器114に結合され、膨張可能なカフ12は、膨張用導管116を介してカフ膨張装置118に接続される。
【0089】
システム1はさらに、カフ12より上のCO2監視位置16で気道11内のCO2濃度を監視する二酸化炭素(CO2)監視装置14を含む。監視装置14はCO2監視用導管18を介して位置16に結合される。加えてシステム1は、カフ12より上の吸引位置22で分泌物を吸引するための吸引装置20を含む。
【0090】
監視装置14はカフ12による気道11の封止の標識を提供し、それによって呼吸効率を高め、圧力に関連する気道11の損傷を低減する。吸引装置20の動作はさらに、分泌物がカフ12の下流で気道11に入るのを防止するように、カフ12の上流の分泌物を除去することによって挿管プロセスを改善する。この防止は、気道11の効果的な封止およびカフ12の上流の分泌物の除去の組合せの結果である。
【0091】
CO2は、肺への分泌物の漏洩の指標として役立つ。したがって、システム1はカフの上のCO2の検出を対象としている。カフの上のCO2の存在は、肺への分泌物の漏洩の指標としてシステム1によって使用される。
【0092】
しかし、上記システム1の性能は最適ではない。これは、気道が最適条件下で封止されているかどうかの標識が無いためである。カフの上のCO2の存在は肺への分泌物の漏洩を示すかもしれないが、それが常に当てはまるわけではない。気道内の分泌物の粘度のため、カフが空気の通過のために完全に封止されず、しかも肺への分泌物の漏洩が無いという状況が存在する。そのような条件下では、カフに接触する組織の圧力関連損傷を生じないように、カフ圧を増大させないことが望ましい。
【0093】
図2は、カフを通過する分泌物の漏洩に関連する問題を示す。典型的には、カフと気管との間の接触面積は略筒状内壁面で約2600〜3200mM2、周長約75〜80mm、長さ約35〜40mmである。分泌物の漏洩は、カフと気管の内壁との間に開口ダクトが形成されるときに始まる。開口ダクトは温度、被験者の体位等の変化のため形成される。これらの変化は、呼吸機械または麻酔機械の周期的動作によって補足される。カフより下の圧力は膨張中に約780mmHgまで増大し、呼気中に約760mmHg(海面位で)まで低減する。この周期的プロセスはカフと気管の内壁との間の相対運動を生じ、結果として上述した開口ダクトの形成を引き起こす。
【0094】
そのような条件下で、声門下部で生じた分泌物は、カフの表面と気管壁との間に形成される小容積内に浸透し始める。分泌物は幾つかの力、すなわち重力(患者は水平方向から約30〜45度上に傾斜される)、外部摩擦(気管壁およびカフの表面によって加えられる)、内部摩擦(分泌物の粘度)、吸気中の約20mmHgの圧力差、および毛細管力に付される。結果として得られる有効力の方向は典型的には肺の方向であり、結果として分泌物の漏洩および被験者の潜在的損傷をもたらす。
【0095】
分泌物と気管内チューブの外側を通過する空気との間の相互作用は分泌物の凝固を引き起こすので、状況は時間が経つにつれて悪化する。そのような状況では、被験者の体位のどんな小さい変化も、新たに形成される分泌物の肺内への漏洩を増大させる。
【0096】
したがって本発明の目的は、カフの膨張圧力を適時にかつ最適に調整するように、初期段階で漏洩形成の識別を可能にする方法およびシステムを提供することである。本発明を着想しながら仮定し、本発明を実施しながら実現したことは、挿管システムが挿管手順の前に定義された最適条件下で動作すれば、挿管された被験者の損傷を著しく低減することができるということである。
【0097】
ここで、図3a〜cを参照すると、それらは、本発明の様々な例示的実施形態に従って、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【0098】
特に明記しない限り、以下で記載する方法ステップは、多くの組合せまたは実行順序で、同時にまたは順次実行することができることを理解されたい。特に、本書で提示するフローチャートの順序は限定とはみなされない。例えば、以下の説明または特定のフローチャートに特定の順序で現われる2つまたはそれ以上の方法ステップは、異なる順序で(例えば逆順で)、または実質的に同時に実行することができる。加えて、下述する幾つかの方法ステップは任意選択的であり、実行されなくてもよい。
【0099】
該方法はステップ30で始まり、ステップ31に進み、そこで気管内チューブを被験者の気道に挿入する。該方法はステップ32に進み、そこで気管内チューブに関連付けられたカフを、被験者の声帯の下の気道内で膨張させる。本発明の様々な例示的実施形態では、該方法は任意選択的ステップ33に進み、そこで分泌物をカフより上の気道の吸引位置で吸引する。任意選択的な吸引ステップが実行される実施形態では、下述する他の方法ステップのいずれかと交互に、連続的に、または同時にそれを実行することができる。例えばステップ33は、下述するステップ34〜37または35〜37の順次実行と同時に実行することができる。代替的に、ステップ33は、該方法がステップ37からループバックするときにいつでも実行することができる。
【0100】
吸引ステップを該方法の他のステップと同時には実行しないことにより幾つかの利点が得られる。
【0101】
分泌物の連続吸引は声門下部の粘膜組織を損傷するおそれがある。1つの利点は、吸引ステップの断続的実行により、組織に対する連続的負荷を軽減することである。
【0102】
別の利点は、吸引ステップと他のステップとの間の時間的分離が、漏洩識別の結果に対する吸引動作の影響を低減または排除することである。下でさらに説明する通り、漏洩識別は、カフを通過して肺内への分泌物の漏洩を示す1つまたはそれ以上の尺度の測定に基づくことが好ましい。吸引動作が測定ステップと同時に実行される場合、漏洩指示尺度のレベルを変化させることにより、測定に対し影響を及ぼすおそれがある。例えば、下述の通り、1実施形態では、漏洩指示尺度はCO2濃度または分圧である。吸引ステップの実行をCO2濃度または分圧レベルの測定と同時にしないことにより、CO2の濃度または分圧が測定中に吸引装置によって変化しないので、吸引と測定との間の干渉が解消される。吸引装置の吸引力は典型的にはCO2のポンピングパワーより高いので、吸引ステップとCO2測定ステップとの間の時間的分離は、吸引装置によるCO2測定の妨害を防止する。
【0103】
さらに、測定前に吸引ステップを実行することにより、実質的に分泌物の無い環境で測定を実行することが可能になり、したがって測定の効率および精度が改善される。
【0104】
本発明の好適な実施形態では、気管内チューブの挿入は、任意選択的な吸引ステップの実行を容易にするために吸引用導管を挿入することを伴う。
【0105】
本発明の様々な例示的実施形態では、該方法は、周囲CO2分圧を測定する任意選択的ステップ34を含む。該測定は、例えば、救急処置室、救急車、手術室等で挿管を実行するときに、被験者の身近の周囲で実行することが好ましい。ステップ34を実行する実施形態では、周囲CO2分圧は、下述するステップ35で実行される単数または複数の測定の基準値を設定するために利用される。周囲CO2分圧の測定は、気管内チューブを気道内に挿入する前または後に1回実行することができ、あるいはより好ましくは、処置中ずっと連続的に、例えばステップ33と同時に実行することができる。この実施形態では、周囲CO2分圧の一連の実時間値を提供することが好ましい。代替的に、周囲CO2分圧測定は、方法ステップのいずれかと交互に実行することができる。例えば測定は、ステップ35と交互に実行することができる。基準周囲値は、システムが吸引プロセスを行なっている間に測定することができる。周囲CO2分圧の変化の速度は遅いと予想されるので、周囲測定は例えば1時間に1回または2時間に1回実行することができる。
【0106】
任意選択的ステップを実行するか否かに関係なく、該方法はステップ35に進み、そこで漏洩指示尺度の測定を実行する。多くの尺度が考えられる。一般的に尺度は、そのレベルがカフを通過して肺への分泌物の漏洩に相関する何らかの量であってよい。処置の精度を高めるために、幾つかの異なる尺度の測定を実行することもできる。この場合、例えば各尺度の相対精度レベルおよび/または分泌物の漏洩に対するその相関レベルに相当し得る予め定められた組の重みを使用して、全ての尺度を加重することが好ましい。典型的には、尺度はカフより上のCO2の濃度、またはそのような濃度をそこから推測することができる代理尺度であってよいが、必須ではない。漏洩指示尺度の代表的な例は本書で後述する。測定は、選択された漏洩指示尺度を測定するのに適した1つまたはそれ以上の測定装置を使用して実行される。本発明の好適な実施形態では、気管内チューブの挿入は、測定装置と連絡する通信装置(例えば導管)の挿入を伴う。
【0107】
ステップ35の測定は、測定装置または通信装置にアクセス可能な測定位置で実行される。好ましくは、測定位置は、被験者の不快感を最小化しながら、測定の精度を最適化するように選択される。したがって、例えば測定位置は被験者の鼻孔、カフと声帯との間、声帯の上(例えば中咽頭)、および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部であってよい。鼻孔または中咽頭はオペレータおよび患者にとってより便利な測定位置であるが、測定の精度および解析の信頼性の観点からは、カフの近くで測定を実行する方がより好ましい。
【0108】
ひとたび漏洩指示尺度が得られると、該方法はステップ36に進み、そこで尺度のレベルを尺度最適基準レベルと比較する。本発明の好適な実施形態では、最適レベルは予め定められる。最適レベルは、例えばCO2の場合のように、周囲レベルを測定することによって定期的に更新することもできる。2つ以上の尺度の測定を行なう好適な実施形態では、各尺度のレベルをそれぞれの最適基準レベルと比較することが好ましい。
【0109】
最適レベルは、カフの上から肺への分泌物の漏洩が無視できるほど低いか全く無いことを示すそれぞれの尺度の最大レベルであることが好ましい。したがって、最適レベルは漏洩識別の閾値を成立させる。尺度のレベルが閾値より低い限り、漏洩は無視できるほど小さい(または存在しない)とみなされ、気道は適切に封止されているとみなされる。閾値は典型的には下限であるので、尺度のレベルが閾値を越えた場合はいつでも、分泌物の漏洩がカフの位置で識別される。代替的に、閾値は上限と定義することもでき、その場合、尺度のレベルが閾値より低ければいつでも、分泌物の漏洩がカフの位置で識別される。
【0110】
最適基準レベルは、このレベルを決定することを対象とした研究、実験的考察および/または理論計算によって得られた表、チャート、グラフ、または公式から導き出すことができる。例えば、本発明の発明者によって実施された実験で、CO2の分圧が典型的な周囲CO2分圧(約0.03%、または約0.26〜0.32mmHg)よりかなり高い場合には、分泌物の漏洩があることが明らかになった。
【0111】
したがって、漏洩指示尺度がCO2の分圧である実施形態では、最適レベルはPmmHgであることが好ましい。ここでPは周囲CO2分圧Prefより高い分圧である。Prefは事前に(挿管手順の前に)知ることができ、あるいはより好ましくは、本書で前に詳述したように実行手順中に測定することができる。(正)差分P−PrefをΔPで表わすと、ΔPは約4mmHg以下であることが好ましく、約2mmHg以下であることがより好ましく、約1mmHg以下であることがより好ましく、約0.4mmHg以下であることがさらにいっそう好ましい。例えば、病院の換気レート標準を1人当たり毎秒40立方フィートと想定すると(これについては、例えばAir‐Conditioning Engineers(ASHRAE)Standard 62‐1989、Ventilation Standard for Acceptable Airを参照されたい))、Pは約0.32mmHgないし約4mmHg、より好ましくは約0.32mmHgないし約2mmHg、さらに好ましくは約0.32mmHgないし約1mmHg、さらにいっそう好ましくは約0.32mmHgないし約0.7mmHgであり得る。
【0112】
本書で使用する場合、用語「約」は±10%を指す。
【0113】
漏洩指示尺度は、CO2濃度以外の尺度であってもよい。この実施形態では、漏洩指示尺度は、そこから漏洩の存在またはレベルを推定することができる代理尺度であることが好ましい。例えば漏洩指示尺度はCO2濃度またはCO2分圧の代理尺度であってよい。この実施形態では、最適レベルは、本書で前に詳述した通り、CO2濃度またはCO2分圧の最適レベルに相当する代理尺度のレベルであってよい。
【0114】
比較ステップ36から、該方法はステップ37に進み、そこで、最適レベルとの比較に基づき、カフの膨張を調整する。調整は、分泌物の漏洩および圧力に関連する損傷の発生が両方とも実質的に最小化されるような仕方で実行される。これは、カフ圧を低減し、次いでそれを徐々に所望の最適レベルまで上昇させることによって行なうことが好ましい。圧力を低下させる前に、吸引ステップを実行して分泌物の空間をきれいにすることが好ましい。ステップ37から方法は、任意選択的にかつ好ましくは、ステップ33またはステップ35にループバックする。
【0115】
ステップ37の2つの代替的かつ任意選択的実行手順を、図3b〜cの部分フローチャートに示す。したがって、ステップ36(図示せず、図3a参照)から、該方法は決定ステップ37に進み、そこで該方法は、漏洩指示尺度のレベルが最適レベルを超えるか否かを決定する。最適レベルを超える場合、無視できない漏洩が識別され、該方法はプロセスステップ37bに進み、そこでカフの膨張圧力が、よりよい封止をもたらすように増大される。最適レベルを超えない場合、該方法は膨張圧力を変更することなくステップ33またはステップ35にループバックする(図3b)か、あるいはステップ37cに進み、そこでカフの膨張圧力を低減させる(図3c)ことができる。ステップ37cから、該方法はステップ33またはステップ35にループバックすることが好ましい。図3cの実施形態の利点は、カフの膨張圧力のさらなる最適化が可能になることである。漏洩が充分に低いかあるいは漏洩が存在しない限り、カフの膨張圧力を低減させることができる。
【0116】
したがって、本実施形態の方法は、気管に対する最小限の局部的圧力により、分泌物の漏洩が最小化されるか実質的に防止されるように、カフの膨張に対する閉ループ制御を提供する。そのような制御は、肺感染症または圧力に関連する気道の壁の損傷に対する最小限の危険性により、被験者に対する効率的な呼吸補助を促進する。
【0117】
該方法はステップ38で終了する。
【0118】
上述の通り、漏洩指示尺度は、そのレベルがカフを通過して肺への分泌物の漏洩に相関する任意の量であってよい。以下は、本発明の様々な例示的実施形態で測定することができる漏洩指示尺度の代表例である。
【0119】
したがって、1実施形態では、尺度はCO2濃度または分圧を含む。測定は、カフと声帯との間、好ましくはカフの近く、または限定ではなく声帯の上(例えば中咽頭)もしくは鼻孔などの別の位置のいずれかの測定位置に、またはそれと連絡して配置することができるCO2濃度または分圧測定装置(例えばCO2分析装置)を使用して実行することができる。CO2濃度の場合、予め定められた最適なレベル(漏洩識別閾値)は上述の通り、周囲CO2分圧(例えば約0.32mmHgないし約4mmHg)より上のCO2分圧であってよい。予め定められた最適なレベルのより特定的な値は、CO2濃度または分圧が測定される位置に基づき定義することができる。
【0120】
ここで、図4a〜bを参照すると、それは様々な測定位置におけるPCO2で表わされたCO2分圧を示す。図4bの実線および破線は、異なる漏洩ダクト径のCO2分圧勾配を表わす。肺の呼気のCO2分圧は一般的に30〜40mmHgであり(健康な人間)、周囲CO2分圧は約0.26〜0.32mmHgである。図4bに示す通り、カフから始まり周囲環境で終わる経路に沿った異なる位置の間に異なる圧力降下が(容積漏洩速度の関数として)存在する。カフと気管壁との間に形成された漏洩ダクトに沿って、CO2分圧は、肺における約40mmHgからカフの反対側における約2mmHgまで降下する(実線)。声門下部に沿って、圧力はカフ付近の約2mmHgから声帯における約1mmHgまで降下する。咽頭内で圧力はさらに周囲圧力まで降下する。
【0121】
したがって、測定位置がカフ付近(カフと声帯との間)である場合、予め定められた最適なレベルは約0.32mmHgないし約4mmHgであってよく、測定位置が声帯の上または鼻孔である場合、予め定められた最適なレベルは約0.32ないし約1mmHgであってよい。他の値を考えることもできる。
【0122】
CO2分圧の測定は、広いダイナミックレンジを有する測定装置を使用して実行することが好ましい。本実施形態の測定装置は、狭いダイナミックレンジを有する高感度CO2センサと、広いダイナミックレンジを有する低感度CO2センサとを含むことがより好ましい。例えば、高感度CO2センサは約0.02mmHgの感度および約0〜1mmHgのダイナミックレンジを持つことができ、低感度CO2センサは約0.1mmHgの感度および約1〜10mmHgのダイナミックレンジを持つことができる。声帯の上または鼻孔で測定を行なう場合、測定装置のダイナミックレンジはより低くてよく(例えば0〜1mmHg)、かつ精度はより高くてよい(例えば0.01mmHg)。
【0123】
別の実施形態では、尺度は気管内チューブの外側のカフ付近の漏洩を示す音響データを含む。音響データは、例えば漏洩ダクトに隣接してカフの上および/または下に配置することができる音響測定装置を使用して収集することができる。気管内に導入するのに適した音響測定装置は当業界で公知であり、例えば米国特許第5655518号、第5890488号、第6168568号、第6261238号、および第6383142号に見られ、それらの内容を参照によって本書に援用する。
【0124】
音響装置を使用して漏洩ダクトの形成を識別する能力は、ダクト内の一方向の空気の流れに帰する。漏洩ダクト内の空気流は、次の理由から一方向である。呼吸周期中に、肺内の空気圧は周期的に変化する。吸気段階で、呼吸機械は肺の空気圧を増大し、肺と声門下部との間に約20mmHgの圧力降下が生じる。この圧力降下は、漏洩ダクト内の肺から声門下部への空気流を引き起こす。ダクトから出ると、空気は声門下部の容積により拡張する。この拡張は吸気段階中ずっと続く。
【0125】
ダクト内の空気流量の大きさは零(肺の空気圧が周囲気圧と等しいとき)から最大値(肺の空気圧が最大のとき、例えば周囲気圧より約20mmHg高い)まで変化する。流量の最大の大きさはダクトの断面積に依存する。
【0126】
図5a〜bは、本発明の好適な実施形態に係る音響測定装置58の位置の概略図である。図5aに示されているのは気管56、気管56内に配置された気管内チューブ54、およびチューブ54の外壁と気管56の内壁との間で膨張したカフ52である。音響測定装置58は下流センサM2および上流センサM1を含むことが好ましい。センサM1およびM2は、それに衝突する音波を検知するために働く。相互に間隔を置いて配置され、各センサポートによって収集される音響データは、中でも特に、本書でさらに後述するように、異なる相対流れ方向のため(センサM1に対して流出し、センサM2に対して流入する)異なる。音響データの差は、図5bに関連して下でさらに詳述するように、装置58の感度を改善するために使用することができる。
【0127】
センサM1とM2との間に漏洩が存在する場合、異なる相対流れ方向のため、および周知のドップラ効果に従って、センサM2によって検知される音響信号は、センサM1によって検知される音響信号と比較して高い周波数を有する。したがって、M1およびM2によって検知される音響信号の間の周波数の差をΔf=f2−f1によって定義することによって(式中、f1はM1によって検知される周波数、f2はM2によって検知される周波数である)、Δfが約20Hzより高い場合、漏洩を識別することができる。ドップラ効果による漏洩識別の代表例を図5cに示す。
【0128】
漏洩を識別するための追加的方法は、センサM1からセンサM2への音響音の伝搬時間に基づく。
【0129】
漏洩ダクトを通して肺から出る空気は、肺内の圧力の影響によって加速する。音響信号は、音の速度νa(約340m/s)と漏洩ダクト内を流れる空気の速度νLとの間の差である速度ν1でセンサM1に到達する。
ν1=νa−νL (方程式1)
【0130】
音響信号は、νaとνLとの和である速度ν2でセンサM2に到達する。
ν2=νa+νL (方程式2)
【0131】
音響信号源とセンサM1およびM2との間の差はそれぞれ、d1およびd2と表わされる。したがって、音響信号のM1およびM2への伝搬時間はそれぞれt1=d1/ν1およびt2=d2/ν2である。以下では、簡素化のために、d1およびd2は等しいと仮定する。
d1=d2≡d (方程式3)
【0132】
伝搬時間の差は測定可能な量である。この差をΔtで表わすと、方程式1〜3から次式が得られる。
Δt=d/(νa−νL)−d/(νa+νL) (方程式4)
または
式中、最後のステップでは、νLの2乗はνaの2乗に比較して無視した。
【0133】
上記方程式5から理解できるように、Δt、d、およびνaの値が分かれば、νLの値、したがって漏洩の有無も識別することができる。したがって、本発明の現在の好適な実施形態では、漏洩指示尺度は速度νLに相関する。この実施形態では、最適レベルは約1m/sないし約3m/sの速度に相当することが好ましい。
【0134】
音響データの測定は、背景ノイズが取り除かれるように行なうことが好ましい。背景ノイズは、漏洩ダクトを通しての流体の漏洩以外の現象に関連する全ての音響データを含むことができる。背景ノイズの大半は呼吸機械によって発生する。機械の呼気段階(被験者の吸気段階)中、流れは漏洩ダクト中の一方向の流動とは反対の方向である。これは、空気がカフと肺との間で、気管内チューブの低直径から気管のより大きい直径に拡張するためである。機械の吸気段階(被験者の呼気段階)中に、空気は再び圧縮される。したがって、背景ノイズは(圧縮から拡張へ、およびその逆)の振動挙動によって特徴付けられるが、漏洩ダクト内の流れは一方向である。呼吸周期中の肺内の圧力および漏洩ダクト内の圧力の関数依存性の間の相違を図5dに示す。
【0135】
背景ノイズの除去は、収集された音響データのスペクトル解析によって行なうことができる。一般的に、約1200Hzないし約2500Hzの周波数によって特徴付けられる音響データは、漏洩の代理と識別することができる。他の音響データは、呼吸、呼吸障害、嗄声、ならびに心臓および肺などの筋肉の動きに関連付けることができる。呼吸に関連付けられる音響データは一般的に低い周波数(300Hz未満)、中間周波数(300から600Hzの間)、および高い周波数(600から1200Hzの間)を含むが、呼吸エネルギの大部分は60〜600Hzの範囲である。心臓および肺の動きに関連付けられる音響データは典型的には、低い周波数である。呼吸障害または嗄声に関連付けられる音響データは一般的に2000Hzより高い。
【0136】
除外すべき音響データの識別は、較正ステップを実行することによっても行なうことができ、そこで背景ノイズを定義するために漏洩ダクトから充分に遠くで音響測定を実行する。ひとたび背景ノイズが定義されると、それをカフ付近で収集されたデータから減算することができる。
【0137】
追加の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側でカフ付近の流体流れを示す圧力データを含む。圧力データは、圧力測定装置を用いて測定することができる。
【0138】
図6a〜bは、気管内チューブの外側の気管内の空気の流動(図6a)および圧力(図6b)の概略図である。吸気段階中の肺のよどみ点圧力は約780mmHgであり、これは上述の通り、周囲圧力より約20mmHg高い。漏洩ダクト中を流動する空気は、乱流状態で声門下部に流入する。空気が声門下部の端部(声帯付近)に達するときまでに、流量は層流になる。
【0139】
したがって、本発明の好適な実施形態では、圧力は声門下部内の圧力測定位置で測定される。位置は空気流が実質的に層状である声帯付近であることが好ましい。圧力測定位置における空気圧Psdは、次の方程式に従って低下する。
Psd=(PLT−Pa)(Ad/As) (方程式6)
式中、PLTは漏洩ダクト付近(声門下部入口)の動的圧力であり、Paは周囲圧力であり、Adは漏洩ダクト(声門下部入口の)の断面積であり、Asは圧力測定位置の声門下部の断面積である。
【0140】
代表的数値例として、気管の直径が約15〜30mmであるときに、気管内ダクトの内径は約7〜8.5mmであり、漏洩ダクトの断面積は約5〜25mm2であり、Psdは約0.01ないし約2mmHgである。したがって、本発明の好適な実施形態では、圧力測定装置は約0〜2mmHgのダイナミックレンジおよび0.01mmHgの分解能によって特徴付けられる。
【0141】
小型高感度圧力測定装置は当業界で公知である。適切な圧力測定装置の代表例は、例えば米国特許第6621278号および第6856141号、国際特許出願公開第WO00/67013号、第WO03/036321号、第WO03/048688号、第WO2004/072658号、第WO2005/062719号、および第WO2005/076727号、ならびに米国特許出願第20050027206号、第20040207409号、第20040104733号、および第20020105340号に記載されたイスラエル国NexenseTMの圧力センサを含み、それらの内容を参照によって本書に組み込む。
【0142】
追加の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側のカフ付近の流体流れを示す流量データを含む。流量データは、流量計などの流量測定装置を用いて測定することができる。肺から漏洩ダクトを通して空気が流動するときに、流量測定装置が流量を測定するように、流量測定装置は声門下部内のカフ付近に配置することが好ましい。本発明の好適な実施形態では、流量測定装置は約1〜3m/sのダイナミックレンジおよび約10%の分解能によって特徴付けられる。小型高感度流量測定装置はイスラエル国NexenseTMによって製造され、上述した特許および特許出願に記載されている。
【0143】
さらに別の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側のカフ付近の分泌物の存在を示す光学データを含む。この実施形態では、測定装置は、カフの下、カフと肺との間に配置された1つまたはそれ以上の小型カメラを含む。カメラは、漏洩ダクトを通して肺の方向への分泌物の漏洩を識別するために解析することができる画像、好ましくはビデオ画像を取り込む。気管内チューブに取り付けることができる小型カメラは当業界で公知である(例えば「MedGadget Journal」、2005年3月号、http://www.medgadget.com/archives/2005/03/etview_ett.htmlを参照されたい)。
【0144】
さらに別の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブを通過する吸気空気量と呼気空気量との間の差を含む。この実施形態では、測定は呼吸機械の入口で実行することができる。吸気および呼気空気量の量は記録され、それらの間の差が算出される。この差に基づき、漏洩の識別が達成される。
【0145】
さらなる実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側のカフの上の流体の電気的特性を含む。この実施形態では、カフの上の流体はチャンバ内に移送され、そこで加熱される。空気がCO2を含む場合、それは高温で導電性になる。したがって、導電性は、カフの上のCO2の濃度の代理尺度として役立つ。本発明の好適な実施形態では、カフの上の空気の導電性が最適レベルを超える場合にはいつでも漏洩が識別される。最適レベルは上述したCO2分圧レベルに相当することができる。
【0146】
ここで、図7a〜cを参照すると、それらは、漏洩が被験者に添加剤を送達することによって識別される好適な実施形態で、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【0147】
該方法はステップ370で開始され、上述の通りステップ31および32に進む。該方法はまた、上述の通り任意選択的な吸引ステップ33に進むこともできる。任意の選択的な吸引ステップは断続的に、連続的に、または下述する他の方法ステップのいずれかと同時に実行することができる。さらに詳しくは、ステップ33は連続的に、下述するステップ374〜377または375〜377の順次実行と同時に実行することができる。代替的にステップ33は、該方法がステップ377からループバックするときにいつでも実行することができる。
【0148】
該方法はステップ374に進み、そこで呼吸用ガスおよび1つまたはそれ以上の識別可能な添加剤を、気管内チューブを通して送達する。呼吸用ガスは、空気、濾過空気、濃縮空気、空気と1つまたはそれ以上の麻酔剤との混合気、および類似物などの、しかしそれらに限定されない、常套の呼吸機械または麻酔機械から被験者に典型的には送達される任意の呼吸用ガスであってよい。識別可能な添加剤は流体の形(例えば気体の形)であることが好ましく、それは送達の前に呼吸用ガスと混合することができ、あるいは異なる容器から送達することができる。被験者の体内に入るように設計されている識別可能な添加剤は、低毒性であることが好ましく、毒性が無いことがより好ましい。
【0149】
添加剤の送達は、添加剤が被験者の肺内に入ることができるように実行することが好ましい。呼吸周期中に、添加剤レムナントは肺を通過し、二酸化炭素排気と共に、呼吸機械によって肺から追い出される。代替的に、添加剤はカフより上、気道の壁と気管内チューブとの間の位置に送達することができる。この実施形態では、カフと気道との間に漏洩ダクトが存在する場合に、添加剤だけが肺内に入る。
【0150】
添加剤の送達は、処置中ずっと連続的に、あるいは(例えば、本書でさらに詳しく後述するように該方法がステップ33またはステップ374にループバックするときにいつでも)予め定められた時間間隔で、実行することができる。添加剤がカフより上の位置に送達される実施形態では、送達は処置全体に対して1回、またはカフより上の位置における添加剤のレベルが予め定められた閾値より下に減少したときにいつでも、実行することができる。
【0151】
多くのタイプの識別可能な添加剤が考えられる。大まかに言うと、添加剤が識別可能であるためには、それが、添加剤を呼吸用ガスまたは環境における他の物質と区別するために使用することができる少なくとも1つの測定可能な特性を持つ必要がある。したがって添加剤は環境に存在せず、あるいは環境に低い既知の濃度で存在することが好ましい。添加剤が環境に既に存在している場合、濃度レベルによって添加剤を識別することができるように、充分に高い濃度で送達することが好ましい。添加剤の判別特性は例えば原子量、分子量、ならびに/または光学、蛍光、および放射特性をはじめ1つまたはそれ以上の他の判別可能な特性であってよい。加えて、または代替的に、添加剤は、添加剤を識別するために使用することができる特定の電気的および/または磁気的特性を持つことができる。
【0152】
本発明の実施形態に適した識別可能な添加剤の代表例として、ヘリウム、クリプトン等の不活性ガス、放射性同位体、好ましくはテクネチウム放射性同位体(例えばTc‐99)、キセノン放射性同位体(例えばXe‐133)、クリプトン放射性同位体(例えばKr‐81)などの半減期が充分に短い(数秒ないし数日)低放射線量の放射性同位体、有色ガス、好ましくは無毒の有色ガス、および様々な蛍光材、好ましくは無毒の蛍光材が挙げられるがそれらに限定されない。
【0153】
送達される添加剤の量は、その識別が可能になるように充分に高く、かつ被験者の呼吸を妨害しないように、または生体組織を損傷しないように充分に低く選択することが好ましい。量は、使用される特定のタイプの添加剤のFDA規制に従って選択することができる。したがって最適量は、添加剤のタイプ、およびそれを識別する測定装置に依存する。本発明者によって、本発明の実施形態に適した添加剤は、約7.5×10−12(例えば質量分析を介して)から約0.001(例えば放射線検出を介して)までの精度で識別することができることが明らかになった。したがって、吸気される空気の量に対する添加剤の量の比はR未満であることが好ましい。ここでRは約7.5×10−12から約0.001までの数字であり、下限は質量分析を介する検出に適用可能である。
【0154】
本書で使用する場合、「約」とは±10%を指す(例えば「約7.5×10−12」は、6.75×10−12〜8.25×10−12の範囲を指し、「約0.001」は0.0009〜0.0011の範囲を指す)。
【0155】
該方法はステップ375に進み、そこで識別可能な添加剤のレベルを監視する。監視は、カフを通過して声帯方向への添加剤の漏洩を識別するように実行される。通常の当業熟練者には理解される通り、そのような漏洩の識別は、カフと気道の内壁との間の漏洩ダクトの形成の代理であり、該形成は一般的にカフから肺への分泌物を随伴する。
【0156】
本発明の様々な例示的実施形態では、監視は挿管手順中ずっと実質的に連続的に実行される。これは例えば、添加剤のレベルの一連の実時間値を得ることによって行なうことができる。2つ以上の添加剤が気管内チューブを通して送達される実施形態では、監視は、2つ以上の添加剤のレベルの測定を含むことが好ましく、送達された全ての添加剤のレベルを測定することを含むことがより好ましい。この場合、全ての測定値は、例えば各測定値の相対精度レベルおよび/または分泌物の漏洩との相関レベルに相当することができる、予め定められた組の重みを用いて加重することが好ましい。
【0157】
監視は、添加剤の判別特性を測定するのに適した1つまたはそれ以上の測定装置を使用して実行することができる。本発明の好適な実施形態では、気管内チューブの挿入は、測定装置と連絡する通信装置(例えば導管)の挿入を伴う。導管は気管内チューブの外部に配置することができ、あるいは本書でさらに詳しく下述するように、チューブの壁内に埋め込むことができる。
【0158】
監視は、測定装置または通信装置にアクセス可能な監視位置で実行される。本発明の様々な例示的実施形態では、監視は、流体(気体または液体)を監視位置からサンプリングし、サンプルを解析のために測定装置に送達することによって行なわれる。好ましくは、監視位置は、被験者の不快感を最小化しながら、測定の精度を最適化するように選択される。適切な監視位置として、カフの上、気管内チューブと気道の壁との間、被験者の鼻孔、または声帯の上(例えば中咽頭)、および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部が挙げられるが、それらに限定されない。オペレータおよび患者にとっては鼻孔または中咽頭がより好都合な測定位置であるが、測定精度および解析の信頼性の観点からは、カフ付近で測定を実行する方がより好ましい。添加剤がカフの上の位置に送達される場合、監視位置はカフの下、肺内、または人工呼吸器位置またはその付近の気管内チューブの呼吸用ルーメン内であってよい。
【0159】
本発明の好適な実施形態では、測定は気道の壁と気管内チューブとの間に存在する原子の組成および存在量に関する情報を提供することができ、それによって添加剤を識別し、かつそのレベルを測定する、質量分析計またはガス分析装置によって実行される。例えば添加剤が不活性ガス(例えばヘリウム、クリプトン)を含む場合、質量分析計は不活性ガスの原子(例えばHe、Kr)の存在を識別し、任意選択的にそれらの濃度レベルを測定することができる。他の気体状物質を、質量分析計を用いて識別することもできる。
【0160】
別の実施形態では、測定は放射線検出装置によって実行される。この実施形態は、添加剤が特定放射特性を有する場合に好ましい。例えば添加剤が放射性同位体(例えば、Tc‐99、Xe‐133、Kr‐81)を含む場合、放射線検出装置は放射性同位体によって放射される放射線を検出することができ、こうして、気道の壁と気管内チューブとの間における放射性同位体の存在および/または濃度レベルを決定することができる。これは、流体(気体または液体)を監視位置からサンプリングし、サンプルを放射線検出装置に送達することによって達成することができる。
【0161】
追加の実施形態は、添加剤が特徴的な光学特性を有する場合に好適である。この実施形態では、測定は、光学特性を測定することができる光学装置によって実行される。例えば添加剤の光学特性は独特な色(例えば有色ガスの場合など)であってよく、その場合、光学装置は小型カメラ、または外部カメラに結合された光導波管を含むことができる。気管内チューブに取付け可能な小型カメラは当業界で公知である(例えば「MedGadget Journal」、2005年3月号、http://www.medgadget.com/archives/2005/03/etview_ett.htmlを参照されたい)。
【0162】
カメラによって取り込まれた画像は処理して、添加剤の存在を検出し、かつ任意選択的にカフの上のその濃度レベルを決定することができる。添加剤の光学特性は蛍光であってもよく、その場合、光学装置は添加剤からの蛍光放射を検出するための蛍光カメラであってよく、それにより添加剤の存在の検出および/または濃度レベルの測定が可能になる。添加剤がカフより上の位置に送達される場合、添加剤がカフを通過して下流の肺に移動すると漏洩が識別されるように、画像はカフより下で取り込むことが好ましい。この実施形態では、添加剤は、それが漏洩ダクトを通過すると有色または無色の気泡が形成され、それをカメラによって検出することができるように選択することもできる。気泡は小型超音波装置によって検出することもできる。
【0163】
追加の実施形態は、添加剤が特徴的な電気的特性を有する場合に好適である。この実施形態では、測定は、伝導または抵抗などの電気的特性を測定することができる装置によって実行される。代替的に、または追加的に、添加剤が特徴的な磁気的特性を有する場合、測定は、磁気的特性、例えば磁化を測定することができる装置によって実行される。したがって、それぞれの量の測定は、カフより上の添加剤の存在または濃度レベルを決定するために、監視位置で実質的に連続して実行することができる。
【0164】
ひとたび測定が実行されると、該方法はステップ376に進むことが好ましく、そこで識別可能な添加剤のレベルを、好ましくは予め定められたその最適レベルと比較する。2つ以上の添加剤が使用される好適な実施形態では、各々の識別可能な添加剤のレベルをそれぞれの最適レベルと比較することが好ましい。
【0165】
最適レベルは、カフの上から肺内への分泌物の漏洩が無視できるほど低いか、あるいは全く無いことを示す、それぞれの添加剤の最大レベルであることが好ましい。したがって、最適レベルは漏洩識別の閾値を成立させる。添加剤のレベルが閾値未満である限り、漏洩は無視できるほど小さい(または存在しない)とみなされ、気道は適切に封止されているとみなされる。閾値は典型的には下限であるので、添加剤のレベルが閾値を越えるといつでも、カフの位置における分泌物の漏洩が識別される。
【0166】
最適レベルは絶対最適レベルであってよく、あるいは例えば周囲または呼吸用ガスのオンライン基準に対して相対的に定義することができる。最適レベルは、このレベルを決定することを対象とした研究、実験的考察および/または理論計算によって得られた表、チャート、グラフ、または公式から導き出すことができる。
【0167】
本発明の好適な実施形態では、該方法はステップ377に進み、そこで識別可能な添加剤のレベルに基づき、カフの膨張を調整する。調整は、分泌物の漏洩および圧力に関連する損傷の発生が両方とも実質的に最小化されるような仕方で実行される。ステップ377から、該方法は任意選択的にまたは好ましくは、ステップ33、374、または375にループバックする。
【0168】
ステップ377の2つの代替的かつ任意選択的実行手順を、図7b〜cの部分フローチャートに示す。したがって、ステップ376(図示せず、図7a参照)から、該方法は決定ステップ377に進み、そこで該方法は、既述の通り添加剤のレベルに基づき、無視できない漏洩が識別されるか否かを決定する。無視できない漏洩が識別された場合、該方法はステップ377bに進み、そこでカフの膨張圧力が、よりよい封止をもたらすように増大される。該方法で、漏洩が無い(または漏洩が無視できるほど小さい)と決定された場合、該方法は、膨張圧力を変更することなく、ステップ373、374、または375にループバックするか(図7b)、あるいはステップ377cに進み、そこでカフの膨張圧力を低減させることができる(図7c)。ステップ377cから、該方法はステップ373、374、または375にループバックすることが好ましい。図7cの実施形態の利点は、カフの膨張圧力のさらなる最適化が可能になることである。漏洩が充分に低いかあるいは漏洩が存在しない限り、カフの膨張圧力は低減させることができる。
【0169】
したがって本実施形態の方法は、気管に対する最小限の局部的圧力により、分泌物の漏洩が最小化されるか実質的に防止されるように、カフの膨張に対する閉ループ制御を提供する。そのような制御は、肺感染症または圧力に関連する気道の壁の損傷に対する最小限の危険性により、被験者に対する効率的な呼吸補助を促進する。
【0170】
該方法はステップ378で終了する。
【0171】
ここで、図8を参照すると、それは、本発明の様々な例示的実施形態に従って被験者に挿管するためのシステム70の簡略図である。システム70は、気道74に挿入されるように適応された気管内チューブ72を含む。気管内チューブ72は、例えば被験者の声帯(図示せず、例えば図4aおよび6a参照)の下の膨張導管77を介して膨張させることのできる、カフ76に関連付けられる。システム70はさらに、本書で前に詳述した通り、分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置78を含む。本発明の様々な例示的実施形態では、装置78はCO2(濃度、分圧)に直接関係する尺度、またはCO2の代理尺度の測定を実行する。本特許の存続期間中に、CO2の代理尺度を測定するのに適した多くの関連測定装置が開発されることが予想され、測定装置という用語の範囲は、全てのそのような新しい技術を先験的に含むつもりである。
【0172】
装置78は、例えばCO2濃度測定装置、CO2分圧測定装置、音響測定装置、圧力測定装置、流量測定装置、光学測定装置(例えばカメラ)、ガス量測定装置、電気的特性測定装置であってよい。
【0173】
周囲CO2分圧を測定する実施形態では、装置78は、例えば2つ以上の別々の入口79および一方向弁81の配列を使用して、2つの並行測定を実行することができることが好ましい。入口79はまた、基準尺度として使用される周囲尺度(例えばCO2分圧)を測定するために使用することもできる。
【0174】
装置78は、測定量に相当するデータを処理または解析するデータ処理ユニット94を含み、あるいはそれに関連付けることができる。例えば、測定量をデジタルデータに変換し、音響測定値に相当するデータの解析(例えば背景データの除去、または本書で前に詳述したΔf、Δt、もしくはνLの計算)、または光学測定値に相当するデータの解析などの、しかしそれらに限らず、さらなる処理のために、データをユニット94に転送することができる。ユニット94はまた、好ましくは実時間で、尺度のレベルとそれに相当する最適値との間の比較を実行することもできる。例えば本発明の様々な例示的実施形態では、ユニット94は、カフ付近のCO2分圧と周囲CO2分圧との間の実時間比較を実行する。
【0175】
測定装置のタイプに応じて、装置は所望の測定位置82に配置することができ、あるいはより好ましくは、それは、例えば測定用導管80を使用して測定位置と連絡することができる。図8はカフ76より上の測定位置82を示しているが、既述の通り、測定位置は本書で前に詳述したようにカフより上である必要は無いので、これは必ずしも当てはまらないことを理解されたい。
【0176】
装置78はまた、測定位置に配置され、かつ適切な伝送ラインであり得るかまたはそれを含むことができる測定用導管80などの、しかしそれに限らず、通信チャネルを介して、装置78と通信するように構成された、1つまたはそれ以上のセンサ84をも含むことができる。センサのタイプは、測定装置のタイプに依存する。例えば測定装置が音響測定装置である場合、センサは音響センサであり、測定装置が圧力測定装置である場合、センサは圧力センサ等である。
【0177】
本発明の好適な実施形態では、システム70は、カフ76より上の気道内の吸引位置87で分泌物を吸引するための吸引装置86を含む。吸引装置86は、装置86から位置87まで延びる吸引用導管88によって、または導管80によって吸引位置87と流体連通することができ、後者の場合、導管80は吸引および測定用導管として働く。導管80および/または導管88は、所望により、気管内チューブ内にまたはその外部に配置することができる。導管80および/または88はまたチューブ72の壁63内に埋め込むこともできる。
【0178】
本発明の様々な例示的実施形態では、システム70は、装置78から受け取る信号に基づき、カフ76の膨張を調整するための膨張装置90を含む。これはオペレータが手動で行なうことができ、その場合、測定装置は尺度のレベルを表示するためのディスプレイ装置を含み、あるいは自動的に行なうことができ、その場合、膨張装置は測定装置と連絡し、それによってそれとの閉ループ制御を形成する。
【0179】
システム70はまた、測定装置78と連絡する警報ユニット92を含むこともできる。ユニット92は、尺度のレベルが最適レベルを超える場合に、警報を発生するように働く。
【0180】
ここで、図9a〜bを参照すると、それは、本発明の様々な例示的実施形態に従って、被験者に挿管するためのシステム100の簡略図である。上記システム70と同様に、システム100は、本書で前に詳述した通り、気管内チューブ72、カフ76、および膨張導管77を含むことが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、システム100はさらに、本書で前に詳述した通り、気管内チューブを通して1つまたはそれ以上の識別可能な添加剤を送達する、添加剤送達ユニット75を含む。ユニット75はチューブ72に動作的に関連付けられる。この関連付けは呼吸機械または麻酔機械(図示せず)を介してよく、その場合、チューブ72を通して添加剤を送達する前に、添加剤が呼吸用ガスと混合されるように、ユニット75は機械の一部であるか、あるいは機械と流体連通することが好ましい。
【0181】
代替的に、ユニット75はチューブ72と流体連通であってよく、その場合、添加剤はユニット75からチューブ72に直接送達される。添加剤を被験者の肺102に流入させることを希望する場合、添加剤および呼吸用ガスは、チューブ72の呼吸用ルーメン65を通して送達することが好ましい。この実施形態では、添加剤および呼吸用ガスを混合させることができる。添加剤をカフより上の位置に送達することを希望する場合、添加剤は、カフ76の上に開口73を含むことができる添加剤送達用導管71をとして送達することが好ましい(図9b参照)。導管71は、チューブ72のルーメン65内に配置するか、あるいはそれに隣接することができる。導管71はまた、チューブ72の壁63に埋め込むこともできる。ルーメン65および導管71はそれらの間の流体連通を欠いていることが望ましいが、必須ではない。また、添加剤はルーメン65に入ることが防止されるが、呼吸用ガスは導管71に入ることができ、あるいはその逆となる、一方向弁を使用した非対称な構成も考えられる。添加剤がルーメン65を通して送達される実施形態では、導管71は、本書でさらに詳しく下述するように、測定用導管80として使用することができる。
【0182】
システム100はさらに、本書で前に詳述した通り、識別可能な添加剤のレベルを測定するための測定装置85を含む。装置85は、既述の通りカフより上、被験者の鼻孔、または声帯の上(例えば中咽頭)、および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部であり得る監視位置83と連絡することが好ましい。図9aに示す実施形態では、監視位置83はカフの上、気管内チューブと気道の壁との間である。
【0183】
装置85は、添加剤の1つまたはそれ以上の上述した判別特性を測定することができる。したがって、装置85は例えば質量分析計、ガス分析装置、光学測定装置(例えば光学カメラまたは蛍光カメラ)、小型超音波装置、電気的特性測定装置(例えば伝導測定装置、抵抗測定装置)、および磁気的特性測定装置(例えば、磁化測定装置)であってよい。装置85はまた、各々が異なる量を測定するように設計かつ構成された幾つかの装置の組合せであってもよい。例えば装置85は質量分析計およびカメラ、または任意の他の組合せを含むことができる。
【0184】
装置85は、例えば2つ以上の別々の入口79および一方向弁81の配列を使用して、2つの並行測定を実行することができることが好ましい。この実施形態は、例えば監視位置における添加剤のレベルを環境レベルと比較するために、環境における添加剤のレベルを決定することを希望する場合に特に有用である。
【0185】
装置85は、上述の通り、測定量に相当するデータを処理または解析するデータ処理ユニット94を含み、あるいはそれに関連付けることができる。システム100のデータ処理ユニット94の原理および動作は、必要な変更を加えて、システム70のデータ処理ユニット94の原理および動作と同様である。例えば装置85は、測定量をデジタルデータに変換し、光学測定値に相当するデータの解析などの、しかしそれらに限らず、さらなる処理のために、データをユニット94に転送することができる。
【0186】
装置85は所望の監視位置83に配置することができ、あるいはそれは、例えば測定用導管80を使用して監視位置83と連絡することができる。図9aはカフ76より上の監視位置83を示しているが、既述の通り、多くの他の監視装置が考えられるので、これは必ずしも当てはまらないことを理解されたい。添加剤がカフより上の位置に送達される場合、装置85はルーメン65から直接ガスをサンプリングして、そこにおける添加剤の有無を決定することができる。
【0187】
図9aの例示的例証では、添加剤はルーメン65を通して送達され、装置85は導管80を介して位置83と連絡し、図9bの例示的例証では、添加剤は導管71を介して送達され、装置85は、直接的にまたは例えば呼吸機械または人工呼吸器を介して間接的に、ルーメン65と連絡する。図9bは肺内またはその付近の監視位置83を示しているが、本書で前に詳述した通り、多くの他の監視装置が考えられるのでこれは必ずしも当てはまらないことを理解されたい。
【0188】
装置85はまた、監視位置に配置され、かつ適切な伝送ラインであり得るかまたはそれを含むことができる測定用導管80などの、しかしそれに限らず、通信チャネルを介して装置85と連絡するように構成された、1つまたはそれ以上のセンサ84を含むこともできる。センサのタイプは測定装置のタイプに依存する。
【0189】
システム100はまた、本書で前に詳述した通り、吸引装置86、吸引用導管88、膨張装置90、および警報ユニット92などの、しかしそれらに限らず、他の構成要素を含むこともできる。
【0190】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0191】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0192】
本実施例では、本発明の教示に従って、上気道のCO2圧力(PCO2)を監視することによって、気管内チューブカフ付近の漏洩の連続評価を実行した。
【0193】
この研究の目的は、気管内チューブカフ付近の漏洩の評価のための正確で客観的な非侵襲性臨床方法を確立することであった。最初に、人間シミュレータで該方法の実現可能性を調査した。次に、ヒト気道粘膜をシミュレートするブタモデルにおけるヨード漏洩試験により、様々なカフ圧時の漏洩を評価した。最後に、新しい方法を今日使用されている標準臨床評価と比較して、待機的手術を受ける60名の患者で該方法の実現可能性を評価した。
【0194】
方法
本発明の様々な例示的実施形態に従って、3つの解剖学的位置、すなわち(i)気管内チューブの外部に取り付けられた吸引用ミニガイドルーメンカテーテルを通して気管内チューブカフと声帯との間、(ii)プラスチック中咽頭気道に挿入されたカテーテルにより喉頭蓋より上の中咽頭、および(iii)鼻カニューレを通して鼻孔を評価した。
【0195】
図10は、人間シミュレータおよび全身麻酔下の患者におけるCO2サンプリングの解剖学的位置を示す。
【0196】
該研究は3段階で実行した。段階1では、人間シミュレータで該方法の実現可能性を確認した。段階2では、ブタモデルで該方法を実験的に探求した。段階3では、該方法を、全身麻酔下の60名の外科患者で、最適気管内チューブカフ充填を推定するための標準的技法と比較した。
【0197】
研究の3段階中ずっと、50ml/分−7.5+15ml/分の流速および約0.2秒のCO2ステップまでの立上り時間を持つマイクロサイドストリームカプノグラフ(イスラエル国エルサレム、Oridion、Microcap(登録商標))を使用して、PCO2レベルを記録した。Microcap(登録商標)は、呼気終末のPCO2値だけを検出して保存するアルゴリズムを利用する。カプノグラフによるPCO2データの不正確な処理を回避するために、呼気終末のPCO2を検出するために日常的に利用されるアルゴリズムを中性化し、全てのPCO2値をデータプロセッサに直接転送して保存した。PCO2の読みの1mmHgより大きい増加は、カフ周辺の漏洩の徴候と解釈し、それに応じて適切なカフ圧を設定した。このカフ圧は、±2ミリバールの制御精度を持つ特殊電子カフ圧制御装置(ドイツ国、TRACOE(登録商標)カフ圧制御装置によって、吸気圧の変動またはいずれかの他の局所的変動のため可能なカフ圧変化を回避し、自動的に一定に維持された。カフより1cm上で開口するミニガイドルーメンが外側に取り付けられた高容量低圧カフ付きの気管内チューブ(米国、Mallinckrodt、Hi‐Lo(登録商標)Evac)を使用した。吸引用ミニガイドの近端はカプノグラフに接続した(図10参照)。
【0198】
図11は、第1段階中に表示された気管内チューブカフ圧による呼気CO2圧力波形を示す。吸引時間(上気道からの)は、CO2圧力波形の直線によって表わされる。
【0199】
段階1‐人間シミュレータモデル
70kgの男の人間シミュレータ(フロリダ州サラソータ、Medical Education Technologies,Inc.(METI))を使用した。Hi‐Lo(登録商標)Evac気管内チューブNo.8を人間シミュレータの気管内に挿入した。気管内チューブカフの位置における気管の直径は25mmであった。シミュレータの肺内への連続CO2ストリームを調整することによって、40mmHgの呼気終末のCO2をシミュレートした。
【0200】
人間シミュレータに人工呼吸を行いながら、一度に2mmHgずつ、カフを順次膨張させ、3つの解剖学的位置でPCO2漏洩レベルを測定した(図10参照)。各カフ圧変化後に、CO2レムナントがその後の測定値を変化させるのを防止するために、中咽頭を吸引した。
【0201】
段階2‐ブタモデル
米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の実験動物の管理および使用のための指針(Guidelines for the Care and Use of Laboratory 動物s)に従って実験を行なった。体重10kgおよび13kgの2頭のブタに、No.7気管内チューブで全身麻酔をかけた。小切開を介して気管内チューブカフより1cm上、声帯より下の気管内に直接挿入された、4mm径のカテーテルによってCO2漏洩レベルを評価した。気管内チューブカフ圧を一度に2mmHgずつ順次増大させ、カテーテルを介してPCO2を測定した。各測定後、CO2レムナントを回避するために、上気道を吸引した。
【0202】
上気道におけるPCO2の読みが無く、定常カフ圧に達した後、気管内チューブカフより下に気管「窓」を外科的に開口した。ヨード液(5cc)をカフより上に注入し、気管「窓」を通して様々なカフ圧レベルでカフより下のヨード漏洩レベルを評価しながら、ヨード液をそこに60分間静止させた。実験中ずっと(ヨード漏洩レベル測定期間を含む)、動物を同一陽圧換気状態に維持し、気管内チューブ位置ならびに動物の頭部および頸部の位置は変えなかった。
【0203】
段階3‐ヒト被験者
バランス全身麻酔(NO2:O2)による待機的手術を受ける60名の連続的成人患者を研究に含めた。機械的人工呼吸量および圧力に関して均質な患者群を得るために、喫煙または呼吸困難の経歴がある患者を肺機能検査により事前評価した。9名の患者は、毎秒強制呼気量(FEV1)または肺活量が予想の50%未満であったため、除外した。研究プロトコルは地域倫理委員会によって承認され、患者はインフォームドコンセントに署名した。
【0204】
全ての患者に麻酔医が挿管を実行し、次の公式、すなわち気管内チューブの遠端から右口角までの長さ(1cm単位で測定)=[身長(1cm単位)/5]−13[Cherng CH、Wong CS、Hsu CH、Ho ST.「成人の気道の長さ:経口気管内挿管用の気管内チューブの最適長さの概算」、J Clin Anesth.2002;14:271‐274]を使用して、患者の身長に従って気管内の気管内チューブの位置を決定した。
【0205】
挿管後、呼気‐吸気量の差による漏洩レベルおよび聴診器によりカフ周辺で聞こえる空気漏洩レベルを防止するために必要な最小気管内チューブカフ圧を設定するように麻酔医に要求した。最小カフ圧を使用して5分間呼気‐吸気量の差が無く、かつ聴診器により聞こえる空気漏洩レベルが無いときに、カフ圧は麻酔医によって最適とみなされた。カフ圧レベルが麻酔医によって最適とみなされた後、上記3つの位置でPCO2を測定した。
【0206】
ブタモデルでの研究結果に基づき、Hi‐Lo(登録商標)Evac気管内チューブの外部ミニガイドルーメンを介して、気管内チューブカフの近接部における2mmHgを超えるPCO2漏洩レベルを回避するために要求される最小カフ圧を、最適カフ充填と定義した。必要に応じて、各PCO2測定の2分前にプラスチック気道を通して吸引を実行した。動作中ずっと、3つの解剖学的位置からのPCO2の連続監視を実行した。
【0207】
統計
実行した全ての解析に統計SPSSTMソフトウェア(バージョン10.0、イリノイ州シカゴ、SPSS Inc.)を使用した。カテゴリデータは数字および百分率の形で表わされる。連続データは平均±標準偏差で表わされ、対となるt検定によって比較される。回帰係数(R)を気管内チューブカフ圧と上気道のPCO2との間の相関の測定値として算出し、R2と表わした。0.05未満のP値を有意とみなした。
【0208】
結果
段階1‐人間シミュレータモデル
図11は、人間シミュレータモデルでPCモニタに表示される気管内チューブカフ圧に応じた呼気PCO2波形の例を示す。3つの解剖学的位置の全部で、気管内チューブカフ圧とカフより上で測定されたPCO2との間に線形相関が観察された。すなわち(i)カフと声帯との間で、R2=0.954、p<0.0001、(ii)喉頭蓋より上の中咽頭で、R2=0.923、p<0.0001、(iii)鼻孔で、R2=0.911、p<0.0001であった。
【0209】
図12は、気管内チューブカフ圧と、カフおよび声帯の間で測定されたCO2レベルとの間の相関を示す。26mmHg以上の気管内チューブカフ圧時に、3つの解剖学的位置全部でPCO2は記録されなかった。25mmHgの気管内チューブカフ圧時に、カフと声帯との間だけでPCO2が検出された。気管内チューブカフ圧が24mmHgに達すると、全ての位置でCO2漏洩レベルが測定された。カフ圧の全レベルで、様々な解剖学的位置の間のPCO2の読みの最大差は2mmHg未満であった。
【0210】
段階2‐ブタモデル
図13a〜bは、2つのブタモデルにおける気管内チューブカフ圧と上気道のCO2レベルとの間の相関を示す。黒の矢印は、ヨード液漏洩レベルが最初に検出された位置を表わす。
【0211】
動物「A」(図13a)で、CO2漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は28mmHgであったが、カフ付近のヨード液漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は、2〜3mmHgのPCO2漏洩レベルがすでに測定された圧力、すなわち24mmHgであった。気管内カフ圧とカフより上のPCO2漏洩レベルとの間には線形相関があった(R2=0.984、p<0.0001)。
【0212】
動物「B」(図13b)で、気管内カフ付近のCO2漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は30mmHgであったが、カフ付近のヨード液漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は、3〜4mmHgのPCO2漏洩レベルが測定された圧力、すなわち25mmHgであった。気管内チューブカフ圧とカフより上のPCO2漏洩レベルとの間には線形相関があった(R2=0.988、p<0.0001)。
【0213】
段階3‐ヒト被験者
患者のベースライン特性を下の表1に要約する。
【0214】
患者の平均年齢は58.5±16.2歳であった。平均最大呼気圧は21.2±0.6mmHgであった。重度の肺疾患患者は研究から除外したが(予想の50%未満のFEV1またはVC)、6名の患者(10%)は軽度の閉塞性肺疾患であり、1名の患者は軽度の拘束性肺疾患であった。
【0215】
人間シミュレータおよびブタモデルからの結果は、PCO2漏洩レベルの測定値と気管内チューブカフ圧との間の線形相関を実証した。PCO2漏洩レベルの測定値は、それがHi‐Lo(登録商標)Evac ETTの外部ミニガイドルーメンを介して気管内チューブカフの隣接部で2mmHgより高かった場合、臨床的に有意であるとみなした。PCO2漏洩レベルの読みが2mmHgより高かったときにだけ、ヨード液漏洩レベルが発生したという事実によるものであった。
【0216】
図14は、聴覚的漏洩レベル検査および呼気‐吸気量の差を用いて麻酔医によって臨床的に決定された初期平均気管内チューブカフ圧と、CO2漏洩レベル監視によって決定された平均最適カフ圧との間の比較を示す。麻酔医によって臨床的に決定された研究対象集団の全員の平均初期気管内チューブカフ圧は、気管内チューブカフの近接部の上気道PCO2漏洩レベル監視によって決定された平均最適カフ圧より著しく高く、それぞれ25.2±3.6対18.2±7.8mmHg、p<0.001であった。
【0217】
図15は、初期気管内チューブカフ圧が、PCO2漏洩レベル監視によって決定された最適カフ圧と比較して、著しく高いか、低いか、あるいは正確な患者の百分率を示す(n=60)。
【0218】
43名の患者(72%)では、臨床的に決定された気管内チューブカフ圧が、CO2漏洩によって決定された最適カフ圧より著しく高く、カフ圧の10.2mmHgの平均変化で、25.4±3.9対15.2±4.7mmHg、p<0.0001であった。
【0219】
8名の患者(13%)では、初期気管内チューブカフ圧は最適カフ圧より著しく低かった。9名の患者(15%)は、初期気管内チューブカフ圧が最適カフ圧と同様であった。
【0220】
3名の患者では、最高35mmHgまでの例外的に高いカフ圧にもかかわらず、CO2漏洩レベルが続いた。これらの患者で麻酔医によって決定された圧力は、30、32、および33mmHgであった。気管内チューブの遠位再配置後、CO2漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧は、研究対象集団の残りと同様の30mmHg未満まで低減した。完全な封止のために必要なカフ圧は、遠位再配置の後、劇的に低減したので、当初の不完全な封止はおそらく、非常に高い近位気道位置が気管内チューブカフと患者の気道の解剖学的形態との間の誤接触(例えばカフと声帯との間の直接接触)を引き起こしたためであったと推定された。
【0221】
手術中に、16名の患者(27%)で、腹部ガス膨張を伴う腹腔鏡手術による5mmHgを超える最大呼気圧の増加、軽度麻酔または不適切な神経筋遮断、外科的要求による頭部位置の変化、および手術中のETTの動きなどの様々な原因に帰することができる、CO2の新しい漏洩レベルが気管内チューブカフ付近に発生した。
【0222】
下の表2は、動作中の「新しい」漏洩レベルの原因を要約する。
【0223】
手術中に、3つの解剖学的位置全部でCO2の記録を得、PCO2の読みの差は2mmHg未満であった。気管内チューブに取り付けられた吸引用ミニガイドカテーテルを通して平均9±4回の測定後、分泌物による妨害のため、それ以上読みを得ることができなくなったので、それ以上のPCO2の読みは、プラスチック気道(下咽頭)および鼻孔のみから得た。
【0224】
論考
今日、適切なカフ充填を決定するために使用される方法は不適切であるか、あるいは扱いにくいかのいずれかである[Petring OU、Adelhoj B、Jensen BNら、「Prevention of silent aspiration due to leaks around cuffs of endotracheal tubes」、Anesth Analg 1986;65:777‐780;Young PJ、Basson C、Hamilton D、Ridley SA.「Prevention of tracheal aspiration using the pressure‐limited tracheal tube cuff」、Anaesthesia 1999;54:559‐563]。
【0225】
この研究では、本発明の教示に従って、上気道の連続的CO2圧力(PCO2)監視により、適切な気管内チューブカフ充填の決定を実行した。気管内チューブカフ圧とカフより上のCO2漏洩レベルとの間で見られる線形相関は、PCO2を空気漏洩の量的標識として使用できることを示している。気管内チューブカフ圧と上気道のPCO2との間に全体的な線形相関があった(3つの解剖学的位置全部で、R2>0.91、p<0.0001)が、曲線の最初および最後では、カフ圧の増加と比較してPCO2の変化が予想より小さく、相関の線形性が小さくなるようである。観察された非線形性は、カプノグラフの広いダイナミックレンジ(0〜40mmHg)および比較的低い感度(+1mmHg)によって説明することができる。この非線形性は、低いダイナミックレンジ(例えば0〜10mmHg)および高い感度(例えば0〜1mmHg)を有するカプノグラフを使用して回避または低減することができる。
【0226】
この観察の合理的説明は、非常に低いカフ圧時に、連続CO2漏洩を可能にするかなりの容量が依然として存在し、高いカフ圧時に、最小CO2漏洩で、カフによる気管の完全な封止を達成するためには、カフ圧のより高い変化が必要であるとすることができる。
【0227】
本研究の段階2で、ブタモデルを使用して、カフ付近のヨード漏洩レベルを評価した。ヨードは咽頭の分泌物より粘度が低いので、ヨード漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧は、気管内チューブカフ付近の分泌物漏洩レベルを防止するのに充分であると想定した。このモデルで、カフ圧の2mmHgの順次増加を使用し、PCO2の読みが2mmHgより高い場合にだけ、ヨード漏洩レベルが発生し、PCO2漏洩レベル検査は2mmHgの安全域を有することが示唆された。これらの結果に基づき、かつ3つの位置の間のPCO2測定位置の最大変化が2mmHg未満であったことを考慮して、中咽頭または鼻孔におけるPCO2の臨床実践的測定値が、カフの真上の遠位測定値と同等であると結論付けた。研究の第2段階は、米国国立衛生研究所の実験動物の管理および使用のための指針による制限および制約のため、2頭のブタだけで実施した。CO2漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧と、ヨード漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧との間の差は、両方のブタでほぼ同一であり、このモデルのためにより多くの動物を犠牲にすることは不適切と思われた。
【0228】
研究の第3段階では、全身麻酔をかけて待機的手術を受ける患者で当該方法を評価した。麻酔医によって臨床的に決定された平均初期気管内チューブカフ圧は、CO2漏洩レベルの監視によって評価された最適カフ圧より著しく高かった。全ての患者で、25.2±3.6対18.2±7.8mmHg、p<0.001であり、72%の患者で、初期気管内チューブカフ圧は、10.2mmHgの平均変化で、PCO2の読みによって決定された最適カフ圧より著しく高かった。
【0229】
麻酔医の一般的傾向として初期カフ圧は「オーバシュート」したが、事例の13%では、最適初期カフ圧より低いカフ圧が見られた。さらに、手術中に27%の患者で「新しい」漏洩レベルが発生し、潜在的に彼らを吸引リスクにさらした。安定した待機的手術患者でさえも観察されたこのカフ圧の変動性は、適切なカフ圧を決定する正確な連続的臨床方法の必要性を際立たせる。
【0230】
研究中に遭遇した重要な問題は、上気道の吸引にもかかわらず、PCO2測定のために数回吸い込んだ後のHi‐Lo(登録商標)Evac ETTのミニガイドルーメンの分泌物による閉塞であった。対照的に、鼻カニューレを通して、またはプラスチック気道を通しての中咽頭からのPCO2の読みは、経口吸引によって分泌物を除去した後、容易に得られた。
【0231】
別の重要な問題は、気管内チューブの位置に関係する。気管内チューブの誤配置は、挿管患者にとって危険である。気管内チューブの挿入が遠位すぎると、気管支内挿管を導き、それは反対側の肺の圧壊を引き起こすおそれがある一方、近位挿入は偶発的な抜管または声帯外傷を導くかもしれない[Streitz JM Jr、Shapshay SM、「Airway injury after tracheotomy and endotracheal intubation」、Surg Clin North Am 1991;71:1211‐1230]。気管内チューブ挿入の最適な長さを概算するための幾つかの公式および他の方法が提案されている[Owen RL、Cheney FW、「Endobronchial intubation:a preventable complication」、Anesthesiology 1987;67:255‐257、Mehta S、「Intubation guide marks for correct tube placement.A clinical study」、Anaesthesia 199;46:306‐308、Patel N、Mahajan RP、Ellis FR、「Estimation of the correct length of tracheal tubes in adults」、Anaesthesia 1993;48:74‐75、Cherng CH、Wong CS、Hsu CH、Ho ST、「Airway length in adults:estimation of the optimal endotracheal tube length for orotracheal intubation」、J Clin Anesth.2002;14:271‐274]。しかし、いずれも必ずしも満足できるものではない。
【0232】
現在の研究では、3名の患者は、例外的に高い(>35mmHg)カフ圧にもかかわらず、CO2漏洩レベルがあった。しかし、気管内チューブの遠位再配置の後、(研究対象集団の残りと同様に)圧力は30mmHgまで減少した。それは研究の目的ではなかったが、適切に膨張させたカフ付近の連続的なCO2漏洩レベルを、誤配置された気管内チューブの標識として使用することができる。気管内チューブカフ付近の絶え間の無いCO2漏洩レベルは、声帯との誤接触、気管支内挿管(反対側の肺からのCO2)、または声帯上挿管(above vocal cord inturbation)による不完全な封止がある場合に発生し得る。
【0233】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0234】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】先行技術の挿管システムの概略図である。
【図2】吸気および呼気中の気管内チューブカフの概略図である。
【図3a】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【図3b−c】本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【図4】本発明の様々な例示的実施形態に係る、様々な測定位置におけるCO2分圧を示す。
【図5a−b】本発明の様々な例示的実施形態に係る、音響測定装置の位置の概略図である。
【図5c−d】本発明の様々な例示的実施形態に係る、ドップラ効果によって漏洩を識別するための手順の代表的実施例(図5c)および呼吸周期中の肺の圧力および漏洩ダクトの圧力の関数依存性の間の相違(図5d)を示す。
【図6】気管内チューブの外側の気管内の空気の流れ(図6a)および圧力(図6b)の概略図である。
【図7a】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した別の方法のフローチャートである。
【図7b−c】本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した別の方法のフローチャートである。
【図8】本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するためのシステムの簡略図である。
【図9a】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するための別のシステムの簡略図である。
【図9b】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するための別のシステムの簡略図である。
【図10】人間シミュレータおよび全身麻酔下にある患者で本発明の教示に従って実行されるCO2サンプリングの解剖学的位置を示す。
【図11】本発明の教示に従って実行した実験中に表示される、気管内チューブカフの圧力に従う呼気CO2圧力波形を示す。
【図12】本発明の教示に従って実行した実験中の気管内チューブカフの圧力と、カフおよび声帯の間で測定されたCO2レベルとの間の相関関係を示す。
【図13a】ブタモデルにおける気管内チューブカフの圧力と上気道のCO2レベルとの間の相関関係を示す。
【図13b】ブタモデルにおける気管内チューブカフの圧力と上気道のCO2レベルとの間の相関関係を示す。
【図14】聴覚的漏洩試験および呼気‐吸気量差を使用して麻酔医によって臨床的に決定された気管内チューブカフの初期平均圧力と、CO2漏洩監視(n=60)によって決定された平均最適カフ圧との間の比較を示す。
【図15】気管内チューブカフの初期圧力が。PCO2漏洩監視(n=60)によって決定された最適カフ圧と比較して著しく高いか、低いか、あるいは正確である患者の百分率を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は挿管に関し、さらに詳しくは、気管内挿管を実行しかつ気管内チューブカフ充填を調整するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸補助を必要とする患者の医療処置では、口、鼻、またはいずれかの他の外科的に形成された開口を経由して患者の気管内に気管内チューブを挿入することが一般的である。気管内チューブの1端は、管を介して肺に空気を周期的に送り込む人工呼吸器に接続される。管の内端には典型的には、管を気管内に挿入した後で常套の手段によって膨張される、膨張可能なカフが具備される。膨張したカフは気管の内壁を封止するはずである。
【0003】
そのようなカフ付き気管内チューブでは、高すぎる圧力でカフを気管の内壁と接触させる場合、接触部分の毛細血管に対する過度の圧力のため、粘膜内の正常な血流が妨害され、結果として組織虚血または不適切な血流を引き起こす。長時間の虚血は、粘膜の糜爛、骨環の破壊、または気管の拡張による分節性気管軟化症などの様々な程度の傷害を引き起こし得る。結果として前側に無名動脈穿孔または後側に食道穿孔を生じ得る全層腐食は、さらにいっそう劇的である。長期人工呼吸器補助を必要とする患者はしばしば、軽度から日常生活ができなくなる閉塞まで、気管狭窄の遅発合併症を発現する。
【0004】
他方、低すぎる圧力でカフを気管の内壁と接触させる場合、麻酔ガス、酸素、または空気の漏洩のため、人工呼吸が抑制されることがあり得る。さらに、圧力が低い場合、体分泌、粘液性、または他の望ましくない流体が、気管の内面とカフの外面との間を徐々に通過するおそれがある。これらの分泌物は気管から出て気管支に入り、潜在的に肺感染症を引き起こすおそれがある。
【0005】
したがって、機械的人工呼吸の間に膨張カフと気管壁との間から空気が漏洩するのを防止しながら、同時に接触部分の毛細血管における必要な血流を維持するように、気管の内壁に対するカフ接触圧力を適切なレベルに維持することが必要である。
【0006】
カフからの長期圧力によって生じる組織損傷を防止するために、医師は定期的にカフを収縮および再膨張させる。しかしこの手順が、組織の適切な再灌流を可能にするのに充分な頻度で、または充分に長い時間行なわれることは稀である。したがって、この手順に頼って気管虚血を防止することはできない。
【0007】
様々な気管内チューブが開発されてきた。例えば米国特許第4159722号は、比較的高速の圧力上昇を防止し、かつ比較的低速の圧力上昇を可能にする、気管内チューブの膨張可能なカフ用の改善された圧力調整器を開示している。圧力調整器は、カフの空気圧の視覚的表示を提供する。
【0008】
米国特許第4305392号は、吸引によって分泌物の漏洩の問題を解決しようとしている。気管内チューブは、カフより上の気管内の流体を吸出し、かつ薬液を気管内に導入するための吸引ポート付きチャンバの形の吸引装置と結合される。
【0009】
米国特許第4501273号は、カフを制御することによって漏洩の問題を解決しようとしている。カフ内の圧力は自動的に、気管内チューブの内部に供給される圧力の上昇に比例して上昇し、それによって膨張カフと気管壁との間の封止の破断または漏洩を防止する。
【0010】
米国特許第5765559号は、長時間の外科手術中に気管狭窄症を引き起こすおそれのある、カフによって気管壁に対して加えられる一定静圧の問題に対処するものである。提案される解決策は、カフリングの1つまたはそれ以上が収縮するときに他が膨張したまま維持されるように、各々が周期的に膨張および収縮することができる複数のカフリングを有するカフ付き気管内チューブを含む。これにより、固定位置に対する定圧のため、気管壁の損傷が低減される。
【0011】
しかし、上記および他の先行技術はどれも、カフと気管内壁との間の接触領域における漏洩を監視しない。
【0012】
異なる手法が、どちらも本発明の発明者によって出願された国際特許出願公開第WO2002/076279号および米国特許第6843250号に開示されている。この手法では、カフと声帯との間の患者の気道の二酸化炭素濃度が監視される。監視に基づき、カフを通過する二酸化炭素の漏洩を防止するように、カフの膨張は調整される。カフの膨張は、カフを通過する二酸化炭素の漏洩を防止する最小限の膨張圧力をもたらすように調整される。
【0013】
追加の関連先行技術として、米国特許第3504676号、第3794036号、第4305392号、第4770170号、第4825862号、第5067497号、第5579762号、第5582166号、第5582167号、第5752921号、第5819723号、第5937861号、および第6062223号が挙げられる。
【0014】
本発明は、先行技術の気管内挿管技法に関連する問題の解決策を提供する。
【発明の開示】
【0015】
背景技術は、カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す尺度を測定し、かつ指示的尺度を該尺度の最適レベルと比較することによる、気管内チューブカフ充填の最適化を教示するものではない。背景技術は二酸化炭素濃度の最適値を教示するものではなく、二酸化炭素濃度以外の尺度を教示するものでもない。さらに、背景技術は、カフ調整を目的としてカフ付近における漏洩ダクトの形成を識別するための添加剤の使用を教示するものではない。
【0016】
本発明は、気管内チューブを気管の気道内に導入し、かつカフを声帯の下の気道内で膨張させる、挿管手順で効率的に使用することができる方法およびシステムを提供する。
【0017】
本発明の様々な例示的実施形態では、本発明の方法およびシステムは、カフを通過する分泌物の漏洩を示す1つまたはそれ以上の尺度の測定を実行し、該尺度を該尺度の1つまたはそれ以上の最適値と比較し、比較に基づきカフ充填を調整する。本発明の好適な実施形態に係る尺度は、二酸化炭素濃度、そのような濃度の推測を可能にする代理尺度、またはカフ付近の漏洩ダクトの形成が識別されるように挿管中に被験者に送達される、1つまたはそれ以上の添加剤のレベルであってよい。
【0018】
1つまたはそれ以上の添加剤を被験者に送達するときに、それらは、気管内チューブのメインルーメンを通して肺へ(例えば呼吸用ガスに添加剤を混合することによって)、または被験者の気道の内壁と気管内チューブの外壁との間のカフより上の位置へのいずれかに送達することができる。添加剤のレベルは、送達技法に応じて選択される監視位置で監視される。例えば送達が気管内チューブのメインルーメンを通して行なわれる場合、監視位置は、被験者の気道の内壁と気管内チューブの外壁との間のカフの上であってよく、気道と気管内チューブとの間のカフの上の位置に送達が行なわれる場合、監視位置は、カフの下または気管内チューブのメインルーメン内であってよい。
【0019】
したがって、本発明の1態様では、肺で終端する気管の気道を有する被験者に挿管する方法を提供する。該方法は:気管内チューブを気道内に挿入すること;気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること;尺度のレベルを該尺度の最適レベルと比較すること;および、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、比較に基づいてカフの膨張を調整することを含む。
【0020】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、尺度はカフと声帯との間の二酸化炭素濃度以外である。
【0021】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、 該方法は、周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行し、最適レベルの値を設定するために周囲二酸化炭素分圧を利用することをさらに含む。
【0022】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、周囲二酸化炭素分圧の一連の実時間値を提供するように、周囲二酸化炭素分圧の測定を連続的に実行する。
【0023】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、周囲二酸化炭素分圧は基準分圧として使用され、最適レベルは基準分圧より約4mmHg大きい二酸化炭素分圧に相当する。
【0024】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、最適レベルは約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する。
【0025】
本発明の別の態様では、声帯および肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法を提供する。該方法は:気管内チューブを気道内に挿入すること;気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;気管内チューブを通して呼吸用ガスおよび少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達すること;被験者の体内の監視位置で少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを監視すること;ならびに、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながらカフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、監視に基づきカフの膨張を調整することを含む。
【0026】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生することをさらに含む。
【0027】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、監視位置は被験者の鼻孔、中咽頭、気管内チューブと気道壁との間のカフの上および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部である。
【0028】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、 該方法は、カフより上の気道の吸引位置で分泌物を吸引することをさらに含む。
【0029】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、気管内チューブの挿入は、測定用導管および吸引用導管の少なくとも一方を挿入することを含む。
【0030】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、カフ膨張の調整は手動で実行する。
【0031】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、カフ膨張の調整を自動的に実行する。
【0032】
本発明のさらに別の態様では、気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブと、カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置とを含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステムを提供する。
【0033】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、測定装置は、少なくとも1つの尺度のレベルが最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される。
【0034】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、最適レベルは予め定められた最適レベルである。
【0035】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は、尺度のレベルが約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される。
【0036】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行するように設計かつ構成され、周囲二酸化炭素分圧は最適レベルの値を設定するために利用される。
【0037】
本発明の追加の態様では、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステムを提供する。該システムは:気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブと;気管内チューブと作動的に関連付けられ、気管内チューブを通して少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達ユニットと;少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを測定するための測定装置とを含む。
【0038】
下述する発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、測定装置は、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される。
【0039】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、気管内チューブは、少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達用導管を含む。
【0040】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、添加剤送達用導管は気管内チューブのルーメン内に配置される。
【0041】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、添加剤送達用導管は気管内チューブの外部に結合されるか、あるいは気管内チューブの壁に埋め込まれる。
【0042】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、測定装置から受け取った信号に基づいてカフの膨張を調整するための膨張装置をさらに含む。
【0043】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は、少なくとも1つの尺度のレベルを表示するためのディスプレイ装置を含む。
【0044】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、測定装置と連絡状態にあって測定装置から受け取った信号に応答して警報を発生するための警報ユニットを含む。
【0045】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、膨張装置は測定装置と連絡状態にあり、それによって共に閉ループ制御を形成する。
【0046】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、測定装置から気道のカフの上まで延びる測定用導管を含む。
【0047】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、気道内のカフより上の吸引位置で分泌物を吸引するために動作する吸引装置を含む。
【0048】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、吸引装置から吸引位置まで延びる吸引用導管を含む。
【0049】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、システムはさらに、吸引位置まで延びる測定および吸引用導管を含み、該位置における測定および吸引を促進するように、該測定および吸引用導管が測定装置および吸引装置に結合されている。
【0050】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定および吸引用導管は気管内チューブ内に内部配置される。
【0051】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定および吸引用導管は気管内チューブの外部に配置される。
【0052】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定および吸引用導管は気管内チューブの壁に埋め込まれる。
【0053】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は被験者の鼻孔で行なう。
【0054】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は被験者の中咽頭で行なう。
【0055】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は被験者の声帯より下、カフより上で行なう。
【0056】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定はカフより下およびその隣接部で行なう。
【0057】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフと声帯との間の二酸化炭素濃度を含む。
【0058】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、声帯より上の二酸化炭素濃度を含む。
【0059】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、被験者の鼻孔における二酸化炭素濃度を含む。
【0060】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の漏洩を示す音響データを含む。
【0061】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は音響データから背景データを取り除くことを含む。
【0062】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、背景データは約1200Hz未満の周波数によって特徴付けられる。
【0063】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は、音響データを特徴付ける、ドップラ効果によって誘発される周波数差を算出することを含む。
【0064】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定は、音響信号の伝搬時間を算出し、かつカフ付近の流体流れを決定するために該伝搬時間を利用することを含む。
【0065】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の流体流れを示す圧力データを含む。
【0066】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の流体流れを示す流量データを含む。
【0067】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフ付近の気管内チューブの外側の分泌物の存在を示す光学データを含む。
【0068】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、気管内チューブを通過する吸気量と呼気量との間の差を含む。
【0069】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの尺度は、カフより上の気管内チューブの外側の流体の電気的特性を含む。
【0070】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルの監視は、被験者の声帯より下、カフより上で行なう。
【0071】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は質量分析計を含む。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルの監視は、質量分析を実行することを含む。
【0072】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置はガス分析装置を含む。
【0073】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な電気的特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は電気的特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、電気的特性を測定することによる。
【0074】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な磁気的特性を測定することによって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は磁気的特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、磁気的特性を測定することによる。
【0075】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な光学的特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は光学的特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、光学的特性を測定することによる。
【0076】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な放射特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は放射特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、放射特性を測定することによる。
【0077】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な蛍光特性によって特徴付けられる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、測定装置は蛍光特性を測定することができる。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、蛍光特性を測定することによる。
【0078】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの不活性ガスを含む。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの不活性ガスはヘリウムおよびクリプトンから成る群から選択される。
【0079】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は少なくとも1つの有色ガスを含む。
【0080】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの放射性同位体を含む。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴によると、少なくとも1つの放射性同位体は、テクネチウム放射性同位体、キセノン放射性同位体、およびクリプトン放射性同位体から成る群から選択される。
【0081】
本発明は、気管内挿管を実行し気管内チューブカフ充填を最適化するためのシステムおよび方法を提供することによって、現在公知の構成の欠点に対処することに成功している。
【0082】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているのと類似のまたは等価の方法と材料は本発明を実施または試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。矛盾する場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法および実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【0083】
本発明の方法およびシステムを実行することは、選択されたタスクまたはステップを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法とシステムの好ましい実施態様の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、いずれかのファームウェアのいずれかのオペレーティングシステムのハードウェアまたはソフトウェアまたはそれらの組合せによって実行できる。例えば本発明の選択されたステップはチップまたは回路のようなハードウェアとして実施できる。本発明の選択されたステップは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施できる。いずれにしろ、本発明の方法とシステムの選択されたステップは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットホームで実行されると言える。
【0084】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、先行技術の挿管システムの概略図である。
図2は、吸気および呼気中の気管内チューブカフの概略図である。
図3a〜cは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
図4a〜bは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、様々な測定位置におけるCO2分圧を示す。
図5a〜bは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、音響測定装置の位置の概略図である。
図5cは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、ドップラ効果によって漏洩を識別するための手順の代表的実施例を示す。
図5dは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、呼吸周期中の肺の圧力および漏洩ダクトの圧力の関数依存性の間の相違を示す。
図6a〜bは、気管内チューブの外側の気管内の空気の流れ(図6a)および圧力(図6b)の概略図である。
図7a〜cは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した別の方法のフローチャートである。
図8は、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するためのシステムの簡略図である。
図9a〜bは、本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するための別のシステムの簡略図である。
図10は、人間シミュレータおよび全身麻酔下にある患者で本発明の教示に従って実行されるCO2サンプリングの解剖学的位置を示す。
図11は、本発明の教示に従って実行した実験中に表示される、気管内チューブカフの圧力に従う呼気CO2圧力波形を示す。
図12は、本発明の教示に従って実行した実験中の気管内チューブカフの圧力と、カフおよび声帯の間で測定されたCO2レベルとの間の相関関係を示す。
図13a〜bは、2つのブタモデルにおける気管内チューブカフの圧力と上気道のCO2レベルとの間の相関関係を示す。
図14は、聴覚的漏洩試験および呼気‐吸気量差を使用して麻酔医によって臨床的に決定された気管内チューブカフの初期平均圧力と、CO2漏洩監視(n=60)によって決定された平均最適カフ圧との間の比較を示す。
図15は、気管内チューブカフの初期圧力が。PCO2漏洩監視(n=60)によって決定された最適カフ圧と比較して著しく高いか、低いか、あるいは正確である患者の百分率を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
本発明の実施形態は、挿管に使用することができる方法およびシステムを含む。特に本発明は、気管内チューブカフ充填を最適化するために使用することができる。
【0086】
図面の図2〜15に示す本発明をよりよく理解するために、最初に、図1に示す一般的な(すなわち先行技術の)挿管システムの構造および動作について言及する。
【0087】
本発明の少なくとも一つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は以下の説明に記載されているかまたは図面に例示されている要素の構造の詳細と配置にその用途が限定されないと解すべきである。本発明にはその他の実施態様がありまたは種々の方法で実行もしくは実施できる。また、本明細書に使用される用語と語句は説明を目的とするものであり本発明を限定するとみなすべきではないと解すべきである。
【0088】
ここで、図面を参照すると、図1は、本発明と同一発明者によって発明された、本書で概してシステム1と呼ぶ先行技術の挿管システムを示す。システム1は、患者の気道内に挿入される気管内チューブ10を含む。膨張可能なカフ12はチューブ10に関連付けられ、患者の気道11内の声帯13より下の位置に位置するように配設される。チューブ10は人工呼吸器114に結合され、膨張可能なカフ12は、膨張用導管116を介してカフ膨張装置118に接続される。
【0089】
システム1はさらに、カフ12より上のCO2監視位置16で気道11内のCO2濃度を監視する二酸化炭素(CO2)監視装置14を含む。監視装置14はCO2監視用導管18を介して位置16に結合される。加えてシステム1は、カフ12より上の吸引位置22で分泌物を吸引するための吸引装置20を含む。
【0090】
監視装置14はカフ12による気道11の封止の標識を提供し、それによって呼吸効率を高め、圧力に関連する気道11の損傷を低減する。吸引装置20の動作はさらに、分泌物がカフ12の下流で気道11に入るのを防止するように、カフ12の上流の分泌物を除去することによって挿管プロセスを改善する。この防止は、気道11の効果的な封止およびカフ12の上流の分泌物の除去の組合せの結果である。
【0091】
CO2は、肺への分泌物の漏洩の指標として役立つ。したがって、システム1はカフの上のCO2の検出を対象としている。カフの上のCO2の存在は、肺への分泌物の漏洩の指標としてシステム1によって使用される。
【0092】
しかし、上記システム1の性能は最適ではない。これは、気道が最適条件下で封止されているかどうかの標識が無いためである。カフの上のCO2の存在は肺への分泌物の漏洩を示すかもしれないが、それが常に当てはまるわけではない。気道内の分泌物の粘度のため、カフが空気の通過のために完全に封止されず、しかも肺への分泌物の漏洩が無いという状況が存在する。そのような条件下では、カフに接触する組織の圧力関連損傷を生じないように、カフ圧を増大させないことが望ましい。
【0093】
図2は、カフを通過する分泌物の漏洩に関連する問題を示す。典型的には、カフと気管との間の接触面積は略筒状内壁面で約2600〜3200mM2、周長約75〜80mm、長さ約35〜40mmである。分泌物の漏洩は、カフと気管の内壁との間に開口ダクトが形成されるときに始まる。開口ダクトは温度、被験者の体位等の変化のため形成される。これらの変化は、呼吸機械または麻酔機械の周期的動作によって補足される。カフより下の圧力は膨張中に約780mmHgまで増大し、呼気中に約760mmHg(海面位で)まで低減する。この周期的プロセスはカフと気管の内壁との間の相対運動を生じ、結果として上述した開口ダクトの形成を引き起こす。
【0094】
そのような条件下で、声門下部で生じた分泌物は、カフの表面と気管壁との間に形成される小容積内に浸透し始める。分泌物は幾つかの力、すなわち重力(患者は水平方向から約30〜45度上に傾斜される)、外部摩擦(気管壁およびカフの表面によって加えられる)、内部摩擦(分泌物の粘度)、吸気中の約20mmHgの圧力差、および毛細管力に付される。結果として得られる有効力の方向は典型的には肺の方向であり、結果として分泌物の漏洩および被験者の潜在的損傷をもたらす。
【0095】
分泌物と気管内チューブの外側を通過する空気との間の相互作用は分泌物の凝固を引き起こすので、状況は時間が経つにつれて悪化する。そのような状況では、被験者の体位のどんな小さい変化も、新たに形成される分泌物の肺内への漏洩を増大させる。
【0096】
したがって本発明の目的は、カフの膨張圧力を適時にかつ最適に調整するように、初期段階で漏洩形成の識別を可能にする方法およびシステムを提供することである。本発明を着想しながら仮定し、本発明を実施しながら実現したことは、挿管システムが挿管手順の前に定義された最適条件下で動作すれば、挿管された被験者の損傷を著しく低減することができるということである。
【0097】
ここで、図3a〜cを参照すると、それらは、本発明の様々な例示的実施形態に従って、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【0098】
特に明記しない限り、以下で記載する方法ステップは、多くの組合せまたは実行順序で、同時にまたは順次実行することができることを理解されたい。特に、本書で提示するフローチャートの順序は限定とはみなされない。例えば、以下の説明または特定のフローチャートに特定の順序で現われる2つまたはそれ以上の方法ステップは、異なる順序で(例えば逆順で)、または実質的に同時に実行することができる。加えて、下述する幾つかの方法ステップは任意選択的であり、実行されなくてもよい。
【0099】
該方法はステップ30で始まり、ステップ31に進み、そこで気管内チューブを被験者の気道に挿入する。該方法はステップ32に進み、そこで気管内チューブに関連付けられたカフを、被験者の声帯の下の気道内で膨張させる。本発明の様々な例示的実施形態では、該方法は任意選択的ステップ33に進み、そこで分泌物をカフより上の気道の吸引位置で吸引する。任意選択的な吸引ステップが実行される実施形態では、下述する他の方法ステップのいずれかと交互に、連続的に、または同時にそれを実行することができる。例えばステップ33は、下述するステップ34〜37または35〜37の順次実行と同時に実行することができる。代替的に、ステップ33は、該方法がステップ37からループバックするときにいつでも実行することができる。
【0100】
吸引ステップを該方法の他のステップと同時には実行しないことにより幾つかの利点が得られる。
【0101】
分泌物の連続吸引は声門下部の粘膜組織を損傷するおそれがある。1つの利点は、吸引ステップの断続的実行により、組織に対する連続的負荷を軽減することである。
【0102】
別の利点は、吸引ステップと他のステップとの間の時間的分離が、漏洩識別の結果に対する吸引動作の影響を低減または排除することである。下でさらに説明する通り、漏洩識別は、カフを通過して肺内への分泌物の漏洩を示す1つまたはそれ以上の尺度の測定に基づくことが好ましい。吸引動作が測定ステップと同時に実行される場合、漏洩指示尺度のレベルを変化させることにより、測定に対し影響を及ぼすおそれがある。例えば、下述の通り、1実施形態では、漏洩指示尺度はCO2濃度または分圧である。吸引ステップの実行をCO2濃度または分圧レベルの測定と同時にしないことにより、CO2の濃度または分圧が測定中に吸引装置によって変化しないので、吸引と測定との間の干渉が解消される。吸引装置の吸引力は典型的にはCO2のポンピングパワーより高いので、吸引ステップとCO2測定ステップとの間の時間的分離は、吸引装置によるCO2測定の妨害を防止する。
【0103】
さらに、測定前に吸引ステップを実行することにより、実質的に分泌物の無い環境で測定を実行することが可能になり、したがって測定の効率および精度が改善される。
【0104】
本発明の好適な実施形態では、気管内チューブの挿入は、任意選択的な吸引ステップの実行を容易にするために吸引用導管を挿入することを伴う。
【0105】
本発明の様々な例示的実施形態では、該方法は、周囲CO2分圧を測定する任意選択的ステップ34を含む。該測定は、例えば、救急処置室、救急車、手術室等で挿管を実行するときに、被験者の身近の周囲で実行することが好ましい。ステップ34を実行する実施形態では、周囲CO2分圧は、下述するステップ35で実行される単数または複数の測定の基準値を設定するために利用される。周囲CO2分圧の測定は、気管内チューブを気道内に挿入する前または後に1回実行することができ、あるいはより好ましくは、処置中ずっと連続的に、例えばステップ33と同時に実行することができる。この実施形態では、周囲CO2分圧の一連の実時間値を提供することが好ましい。代替的に、周囲CO2分圧測定は、方法ステップのいずれかと交互に実行することができる。例えば測定は、ステップ35と交互に実行することができる。基準周囲値は、システムが吸引プロセスを行なっている間に測定することができる。周囲CO2分圧の変化の速度は遅いと予想されるので、周囲測定は例えば1時間に1回または2時間に1回実行することができる。
【0106】
任意選択的ステップを実行するか否かに関係なく、該方法はステップ35に進み、そこで漏洩指示尺度の測定を実行する。多くの尺度が考えられる。一般的に尺度は、そのレベルがカフを通過して肺への分泌物の漏洩に相関する何らかの量であってよい。処置の精度を高めるために、幾つかの異なる尺度の測定を実行することもできる。この場合、例えば各尺度の相対精度レベルおよび/または分泌物の漏洩に対するその相関レベルに相当し得る予め定められた組の重みを使用して、全ての尺度を加重することが好ましい。典型的には、尺度はカフより上のCO2の濃度、またはそのような濃度をそこから推測することができる代理尺度であってよいが、必須ではない。漏洩指示尺度の代表的な例は本書で後述する。測定は、選択された漏洩指示尺度を測定するのに適した1つまたはそれ以上の測定装置を使用して実行される。本発明の好適な実施形態では、気管内チューブの挿入は、測定装置と連絡する通信装置(例えば導管)の挿入を伴う。
【0107】
ステップ35の測定は、測定装置または通信装置にアクセス可能な測定位置で実行される。好ましくは、測定位置は、被験者の不快感を最小化しながら、測定の精度を最適化するように選択される。したがって、例えば測定位置は被験者の鼻孔、カフと声帯との間、声帯の上(例えば中咽頭)、および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部であってよい。鼻孔または中咽頭はオペレータおよび患者にとってより便利な測定位置であるが、測定の精度および解析の信頼性の観点からは、カフの近くで測定を実行する方がより好ましい。
【0108】
ひとたび漏洩指示尺度が得られると、該方法はステップ36に進み、そこで尺度のレベルを尺度最適基準レベルと比較する。本発明の好適な実施形態では、最適レベルは予め定められる。最適レベルは、例えばCO2の場合のように、周囲レベルを測定することによって定期的に更新することもできる。2つ以上の尺度の測定を行なう好適な実施形態では、各尺度のレベルをそれぞれの最適基準レベルと比較することが好ましい。
【0109】
最適レベルは、カフの上から肺への分泌物の漏洩が無視できるほど低いか全く無いことを示すそれぞれの尺度の最大レベルであることが好ましい。したがって、最適レベルは漏洩識別の閾値を成立させる。尺度のレベルが閾値より低い限り、漏洩は無視できるほど小さい(または存在しない)とみなされ、気道は適切に封止されているとみなされる。閾値は典型的には下限であるので、尺度のレベルが閾値を越えた場合はいつでも、分泌物の漏洩がカフの位置で識別される。代替的に、閾値は上限と定義することもでき、その場合、尺度のレベルが閾値より低ければいつでも、分泌物の漏洩がカフの位置で識別される。
【0110】
最適基準レベルは、このレベルを決定することを対象とした研究、実験的考察および/または理論計算によって得られた表、チャート、グラフ、または公式から導き出すことができる。例えば、本発明の発明者によって実施された実験で、CO2の分圧が典型的な周囲CO2分圧(約0.03%、または約0.26〜0.32mmHg)よりかなり高い場合には、分泌物の漏洩があることが明らかになった。
【0111】
したがって、漏洩指示尺度がCO2の分圧である実施形態では、最適レベルはPmmHgであることが好ましい。ここでPは周囲CO2分圧Prefより高い分圧である。Prefは事前に(挿管手順の前に)知ることができ、あるいはより好ましくは、本書で前に詳述したように実行手順中に測定することができる。(正)差分P−PrefをΔPで表わすと、ΔPは約4mmHg以下であることが好ましく、約2mmHg以下であることがより好ましく、約1mmHg以下であることがより好ましく、約0.4mmHg以下であることがさらにいっそう好ましい。例えば、病院の換気レート標準を1人当たり毎秒40立方フィートと想定すると(これについては、例えばAir‐Conditioning Engineers(ASHRAE)Standard 62‐1989、Ventilation Standard for Acceptable Airを参照されたい))、Pは約0.32mmHgないし約4mmHg、より好ましくは約0.32mmHgないし約2mmHg、さらに好ましくは約0.32mmHgないし約1mmHg、さらにいっそう好ましくは約0.32mmHgないし約0.7mmHgであり得る。
【0112】
本書で使用する場合、用語「約」は±10%を指す。
【0113】
漏洩指示尺度は、CO2濃度以外の尺度であってもよい。この実施形態では、漏洩指示尺度は、そこから漏洩の存在またはレベルを推定することができる代理尺度であることが好ましい。例えば漏洩指示尺度はCO2濃度またはCO2分圧の代理尺度であってよい。この実施形態では、最適レベルは、本書で前に詳述した通り、CO2濃度またはCO2分圧の最適レベルに相当する代理尺度のレベルであってよい。
【0114】
比較ステップ36から、該方法はステップ37に進み、そこで、最適レベルとの比較に基づき、カフの膨張を調整する。調整は、分泌物の漏洩および圧力に関連する損傷の発生が両方とも実質的に最小化されるような仕方で実行される。これは、カフ圧を低減し、次いでそれを徐々に所望の最適レベルまで上昇させることによって行なうことが好ましい。圧力を低下させる前に、吸引ステップを実行して分泌物の空間をきれいにすることが好ましい。ステップ37から方法は、任意選択的にかつ好ましくは、ステップ33またはステップ35にループバックする。
【0115】
ステップ37の2つの代替的かつ任意選択的実行手順を、図3b〜cの部分フローチャートに示す。したがって、ステップ36(図示せず、図3a参照)から、該方法は決定ステップ37に進み、そこで該方法は、漏洩指示尺度のレベルが最適レベルを超えるか否かを決定する。最適レベルを超える場合、無視できない漏洩が識別され、該方法はプロセスステップ37bに進み、そこでカフの膨張圧力が、よりよい封止をもたらすように増大される。最適レベルを超えない場合、該方法は膨張圧力を変更することなくステップ33またはステップ35にループバックする(図3b)か、あるいはステップ37cに進み、そこでカフの膨張圧力を低減させる(図3c)ことができる。ステップ37cから、該方法はステップ33またはステップ35にループバックすることが好ましい。図3cの実施形態の利点は、カフの膨張圧力のさらなる最適化が可能になることである。漏洩が充分に低いかあるいは漏洩が存在しない限り、カフの膨張圧力を低減させることができる。
【0116】
したがって、本実施形態の方法は、気管に対する最小限の局部的圧力により、分泌物の漏洩が最小化されるか実質的に防止されるように、カフの膨張に対する閉ループ制御を提供する。そのような制御は、肺感染症または圧力に関連する気道の壁の損傷に対する最小限の危険性により、被験者に対する効率的な呼吸補助を促進する。
【0117】
該方法はステップ38で終了する。
【0118】
上述の通り、漏洩指示尺度は、そのレベルがカフを通過して肺への分泌物の漏洩に相関する任意の量であってよい。以下は、本発明の様々な例示的実施形態で測定することができる漏洩指示尺度の代表例である。
【0119】
したがって、1実施形態では、尺度はCO2濃度または分圧を含む。測定は、カフと声帯との間、好ましくはカフの近く、または限定ではなく声帯の上(例えば中咽頭)もしくは鼻孔などの別の位置のいずれかの測定位置に、またはそれと連絡して配置することができるCO2濃度または分圧測定装置(例えばCO2分析装置)を使用して実行することができる。CO2濃度の場合、予め定められた最適なレベル(漏洩識別閾値)は上述の通り、周囲CO2分圧(例えば約0.32mmHgないし約4mmHg)より上のCO2分圧であってよい。予め定められた最適なレベルのより特定的な値は、CO2濃度または分圧が測定される位置に基づき定義することができる。
【0120】
ここで、図4a〜bを参照すると、それは様々な測定位置におけるPCO2で表わされたCO2分圧を示す。図4bの実線および破線は、異なる漏洩ダクト径のCO2分圧勾配を表わす。肺の呼気のCO2分圧は一般的に30〜40mmHgであり(健康な人間)、周囲CO2分圧は約0.26〜0.32mmHgである。図4bに示す通り、カフから始まり周囲環境で終わる経路に沿った異なる位置の間に異なる圧力降下が(容積漏洩速度の関数として)存在する。カフと気管壁との間に形成された漏洩ダクトに沿って、CO2分圧は、肺における約40mmHgからカフの反対側における約2mmHgまで降下する(実線)。声門下部に沿って、圧力はカフ付近の約2mmHgから声帯における約1mmHgまで降下する。咽頭内で圧力はさらに周囲圧力まで降下する。
【0121】
したがって、測定位置がカフ付近(カフと声帯との間)である場合、予め定められた最適なレベルは約0.32mmHgないし約4mmHgであってよく、測定位置が声帯の上または鼻孔である場合、予め定められた最適なレベルは約0.32ないし約1mmHgであってよい。他の値を考えることもできる。
【0122】
CO2分圧の測定は、広いダイナミックレンジを有する測定装置を使用して実行することが好ましい。本実施形態の測定装置は、狭いダイナミックレンジを有する高感度CO2センサと、広いダイナミックレンジを有する低感度CO2センサとを含むことがより好ましい。例えば、高感度CO2センサは約0.02mmHgの感度および約0〜1mmHgのダイナミックレンジを持つことができ、低感度CO2センサは約0.1mmHgの感度および約1〜10mmHgのダイナミックレンジを持つことができる。声帯の上または鼻孔で測定を行なう場合、測定装置のダイナミックレンジはより低くてよく(例えば0〜1mmHg)、かつ精度はより高くてよい(例えば0.01mmHg)。
【0123】
別の実施形態では、尺度は気管内チューブの外側のカフ付近の漏洩を示す音響データを含む。音響データは、例えば漏洩ダクトに隣接してカフの上および/または下に配置することができる音響測定装置を使用して収集することができる。気管内に導入するのに適した音響測定装置は当業界で公知であり、例えば米国特許第5655518号、第5890488号、第6168568号、第6261238号、および第6383142号に見られ、それらの内容を参照によって本書に援用する。
【0124】
音響装置を使用して漏洩ダクトの形成を識別する能力は、ダクト内の一方向の空気の流れに帰する。漏洩ダクト内の空気流は、次の理由から一方向である。呼吸周期中に、肺内の空気圧は周期的に変化する。吸気段階で、呼吸機械は肺の空気圧を増大し、肺と声門下部との間に約20mmHgの圧力降下が生じる。この圧力降下は、漏洩ダクト内の肺から声門下部への空気流を引き起こす。ダクトから出ると、空気は声門下部の容積により拡張する。この拡張は吸気段階中ずっと続く。
【0125】
ダクト内の空気流量の大きさは零(肺の空気圧が周囲気圧と等しいとき)から最大値(肺の空気圧が最大のとき、例えば周囲気圧より約20mmHg高い)まで変化する。流量の最大の大きさはダクトの断面積に依存する。
【0126】
図5a〜bは、本発明の好適な実施形態に係る音響測定装置58の位置の概略図である。図5aに示されているのは気管56、気管56内に配置された気管内チューブ54、およびチューブ54の外壁と気管56の内壁との間で膨張したカフ52である。音響測定装置58は下流センサM2および上流センサM1を含むことが好ましい。センサM1およびM2は、それに衝突する音波を検知するために働く。相互に間隔を置いて配置され、各センサポートによって収集される音響データは、中でも特に、本書でさらに後述するように、異なる相対流れ方向のため(センサM1に対して流出し、センサM2に対して流入する)異なる。音響データの差は、図5bに関連して下でさらに詳述するように、装置58の感度を改善するために使用することができる。
【0127】
センサM1とM2との間に漏洩が存在する場合、異なる相対流れ方向のため、および周知のドップラ効果に従って、センサM2によって検知される音響信号は、センサM1によって検知される音響信号と比較して高い周波数を有する。したがって、M1およびM2によって検知される音響信号の間の周波数の差をΔf=f2−f1によって定義することによって(式中、f1はM1によって検知される周波数、f2はM2によって検知される周波数である)、Δfが約20Hzより高い場合、漏洩を識別することができる。ドップラ効果による漏洩識別の代表例を図5cに示す。
【0128】
漏洩を識別するための追加的方法は、センサM1からセンサM2への音響音の伝搬時間に基づく。
【0129】
漏洩ダクトを通して肺から出る空気は、肺内の圧力の影響によって加速する。音響信号は、音の速度νa(約340m/s)と漏洩ダクト内を流れる空気の速度νLとの間の差である速度ν1でセンサM1に到達する。
ν1=νa−νL (方程式1)
【0130】
音響信号は、νaとνLとの和である速度ν2でセンサM2に到達する。
ν2=νa+νL (方程式2)
【0131】
音響信号源とセンサM1およびM2との間の差はそれぞれ、d1およびd2と表わされる。したがって、音響信号のM1およびM2への伝搬時間はそれぞれt1=d1/ν1およびt2=d2/ν2である。以下では、簡素化のために、d1およびd2は等しいと仮定する。
d1=d2≡d (方程式3)
【0132】
伝搬時間の差は測定可能な量である。この差をΔtで表わすと、方程式1〜3から次式が得られる。
Δt=d/(νa−νL)−d/(νa+νL) (方程式4)
または
式中、最後のステップでは、νLの2乗はνaの2乗に比較して無視した。
【0133】
上記方程式5から理解できるように、Δt、d、およびνaの値が分かれば、νLの値、したがって漏洩の有無も識別することができる。したがって、本発明の現在の好適な実施形態では、漏洩指示尺度は速度νLに相関する。この実施形態では、最適レベルは約1m/sないし約3m/sの速度に相当することが好ましい。
【0134】
音響データの測定は、背景ノイズが取り除かれるように行なうことが好ましい。背景ノイズは、漏洩ダクトを通しての流体の漏洩以外の現象に関連する全ての音響データを含むことができる。背景ノイズの大半は呼吸機械によって発生する。機械の呼気段階(被験者の吸気段階)中、流れは漏洩ダクト中の一方向の流動とは反対の方向である。これは、空気がカフと肺との間で、気管内チューブの低直径から気管のより大きい直径に拡張するためである。機械の吸気段階(被験者の呼気段階)中に、空気は再び圧縮される。したがって、背景ノイズは(圧縮から拡張へ、およびその逆)の振動挙動によって特徴付けられるが、漏洩ダクト内の流れは一方向である。呼吸周期中の肺内の圧力および漏洩ダクト内の圧力の関数依存性の間の相違を図5dに示す。
【0135】
背景ノイズの除去は、収集された音響データのスペクトル解析によって行なうことができる。一般的に、約1200Hzないし約2500Hzの周波数によって特徴付けられる音響データは、漏洩の代理と識別することができる。他の音響データは、呼吸、呼吸障害、嗄声、ならびに心臓および肺などの筋肉の動きに関連付けることができる。呼吸に関連付けられる音響データは一般的に低い周波数(300Hz未満)、中間周波数(300から600Hzの間)、および高い周波数(600から1200Hzの間)を含むが、呼吸エネルギの大部分は60〜600Hzの範囲である。心臓および肺の動きに関連付けられる音響データは典型的には、低い周波数である。呼吸障害または嗄声に関連付けられる音響データは一般的に2000Hzより高い。
【0136】
除外すべき音響データの識別は、較正ステップを実行することによっても行なうことができ、そこで背景ノイズを定義するために漏洩ダクトから充分に遠くで音響測定を実行する。ひとたび背景ノイズが定義されると、それをカフ付近で収集されたデータから減算することができる。
【0137】
追加の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側でカフ付近の流体流れを示す圧力データを含む。圧力データは、圧力測定装置を用いて測定することができる。
【0138】
図6a〜bは、気管内チューブの外側の気管内の空気の流動(図6a)および圧力(図6b)の概略図である。吸気段階中の肺のよどみ点圧力は約780mmHgであり、これは上述の通り、周囲圧力より約20mmHg高い。漏洩ダクト中を流動する空気は、乱流状態で声門下部に流入する。空気が声門下部の端部(声帯付近)に達するときまでに、流量は層流になる。
【0139】
したがって、本発明の好適な実施形態では、圧力は声門下部内の圧力測定位置で測定される。位置は空気流が実質的に層状である声帯付近であることが好ましい。圧力測定位置における空気圧Psdは、次の方程式に従って低下する。
Psd=(PLT−Pa)(Ad/As) (方程式6)
式中、PLTは漏洩ダクト付近(声門下部入口)の動的圧力であり、Paは周囲圧力であり、Adは漏洩ダクト(声門下部入口の)の断面積であり、Asは圧力測定位置の声門下部の断面積である。
【0140】
代表的数値例として、気管の直径が約15〜30mmであるときに、気管内ダクトの内径は約7〜8.5mmであり、漏洩ダクトの断面積は約5〜25mm2であり、Psdは約0.01ないし約2mmHgである。したがって、本発明の好適な実施形態では、圧力測定装置は約0〜2mmHgのダイナミックレンジおよび0.01mmHgの分解能によって特徴付けられる。
【0141】
小型高感度圧力測定装置は当業界で公知である。適切な圧力測定装置の代表例は、例えば米国特許第6621278号および第6856141号、国際特許出願公開第WO00/67013号、第WO03/036321号、第WO03/048688号、第WO2004/072658号、第WO2005/062719号、および第WO2005/076727号、ならびに米国特許出願第20050027206号、第20040207409号、第20040104733号、および第20020105340号に記載されたイスラエル国NexenseTMの圧力センサを含み、それらの内容を参照によって本書に組み込む。
【0142】
追加の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側のカフ付近の流体流れを示す流量データを含む。流量データは、流量計などの流量測定装置を用いて測定することができる。肺から漏洩ダクトを通して空気が流動するときに、流量測定装置が流量を測定するように、流量測定装置は声門下部内のカフ付近に配置することが好ましい。本発明の好適な実施形態では、流量測定装置は約1〜3m/sのダイナミックレンジおよび約10%の分解能によって特徴付けられる。小型高感度流量測定装置はイスラエル国NexenseTMによって製造され、上述した特許および特許出願に記載されている。
【0143】
さらに別の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側のカフ付近の分泌物の存在を示す光学データを含む。この実施形態では、測定装置は、カフの下、カフと肺との間に配置された1つまたはそれ以上の小型カメラを含む。カメラは、漏洩ダクトを通して肺の方向への分泌物の漏洩を識別するために解析することができる画像、好ましくはビデオ画像を取り込む。気管内チューブに取り付けることができる小型カメラは当業界で公知である(例えば「MedGadget Journal」、2005年3月号、http://www.medgadget.com/archives/2005/03/etview_ett.htmlを参照されたい)。
【0144】
さらに別の実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブを通過する吸気空気量と呼気空気量との間の差を含む。この実施形態では、測定は呼吸機械の入口で実行することができる。吸気および呼気空気量の量は記録され、それらの間の差が算出される。この差に基づき、漏洩の識別が達成される。
【0145】
さらなる実施形態では、漏洩指示尺度は、気管内チューブの外側のカフの上の流体の電気的特性を含む。この実施形態では、カフの上の流体はチャンバ内に移送され、そこで加熱される。空気がCO2を含む場合、それは高温で導電性になる。したがって、導電性は、カフの上のCO2の濃度の代理尺度として役立つ。本発明の好適な実施形態では、カフの上の空気の導電性が最適レベルを超える場合にはいつでも漏洩が識別される。最適レベルは上述したCO2分圧レベルに相当することができる。
【0146】
ここで、図7a〜cを参照すると、それらは、漏洩が被験者に添加剤を送達することによって識別される好適な実施形態で、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【0147】
該方法はステップ370で開始され、上述の通りステップ31および32に進む。該方法はまた、上述の通り任意選択的な吸引ステップ33に進むこともできる。任意の選択的な吸引ステップは断続的に、連続的に、または下述する他の方法ステップのいずれかと同時に実行することができる。さらに詳しくは、ステップ33は連続的に、下述するステップ374〜377または375〜377の順次実行と同時に実行することができる。代替的にステップ33は、該方法がステップ377からループバックするときにいつでも実行することができる。
【0148】
該方法はステップ374に進み、そこで呼吸用ガスおよび1つまたはそれ以上の識別可能な添加剤を、気管内チューブを通して送達する。呼吸用ガスは、空気、濾過空気、濃縮空気、空気と1つまたはそれ以上の麻酔剤との混合気、および類似物などの、しかしそれらに限定されない、常套の呼吸機械または麻酔機械から被験者に典型的には送達される任意の呼吸用ガスであってよい。識別可能な添加剤は流体の形(例えば気体の形)であることが好ましく、それは送達の前に呼吸用ガスと混合することができ、あるいは異なる容器から送達することができる。被験者の体内に入るように設計されている識別可能な添加剤は、低毒性であることが好ましく、毒性が無いことがより好ましい。
【0149】
添加剤の送達は、添加剤が被験者の肺内に入ることができるように実行することが好ましい。呼吸周期中に、添加剤レムナントは肺を通過し、二酸化炭素排気と共に、呼吸機械によって肺から追い出される。代替的に、添加剤はカフより上、気道の壁と気管内チューブとの間の位置に送達することができる。この実施形態では、カフと気道との間に漏洩ダクトが存在する場合に、添加剤だけが肺内に入る。
【0150】
添加剤の送達は、処置中ずっと連続的に、あるいは(例えば、本書でさらに詳しく後述するように該方法がステップ33またはステップ374にループバックするときにいつでも)予め定められた時間間隔で、実行することができる。添加剤がカフより上の位置に送達される実施形態では、送達は処置全体に対して1回、またはカフより上の位置における添加剤のレベルが予め定められた閾値より下に減少したときにいつでも、実行することができる。
【0151】
多くのタイプの識別可能な添加剤が考えられる。大まかに言うと、添加剤が識別可能であるためには、それが、添加剤を呼吸用ガスまたは環境における他の物質と区別するために使用することができる少なくとも1つの測定可能な特性を持つ必要がある。したがって添加剤は環境に存在せず、あるいは環境に低い既知の濃度で存在することが好ましい。添加剤が環境に既に存在している場合、濃度レベルによって添加剤を識別することができるように、充分に高い濃度で送達することが好ましい。添加剤の判別特性は例えば原子量、分子量、ならびに/または光学、蛍光、および放射特性をはじめ1つまたはそれ以上の他の判別可能な特性であってよい。加えて、または代替的に、添加剤は、添加剤を識別するために使用することができる特定の電気的および/または磁気的特性を持つことができる。
【0152】
本発明の実施形態に適した識別可能な添加剤の代表例として、ヘリウム、クリプトン等の不活性ガス、放射性同位体、好ましくはテクネチウム放射性同位体(例えばTc‐99)、キセノン放射性同位体(例えばXe‐133)、クリプトン放射性同位体(例えばKr‐81)などの半減期が充分に短い(数秒ないし数日)低放射線量の放射性同位体、有色ガス、好ましくは無毒の有色ガス、および様々な蛍光材、好ましくは無毒の蛍光材が挙げられるがそれらに限定されない。
【0153】
送達される添加剤の量は、その識別が可能になるように充分に高く、かつ被験者の呼吸を妨害しないように、または生体組織を損傷しないように充分に低く選択することが好ましい。量は、使用される特定のタイプの添加剤のFDA規制に従って選択することができる。したがって最適量は、添加剤のタイプ、およびそれを識別する測定装置に依存する。本発明者によって、本発明の実施形態に適した添加剤は、約7.5×10−12(例えば質量分析を介して)から約0.001(例えば放射線検出を介して)までの精度で識別することができることが明らかになった。したがって、吸気される空気の量に対する添加剤の量の比はR未満であることが好ましい。ここでRは約7.5×10−12から約0.001までの数字であり、下限は質量分析を介する検出に適用可能である。
【0154】
本書で使用する場合、「約」とは±10%を指す(例えば「約7.5×10−12」は、6.75×10−12〜8.25×10−12の範囲を指し、「約0.001」は0.0009〜0.0011の範囲を指す)。
【0155】
該方法はステップ375に進み、そこで識別可能な添加剤のレベルを監視する。監視は、カフを通過して声帯方向への添加剤の漏洩を識別するように実行される。通常の当業熟練者には理解される通り、そのような漏洩の識別は、カフと気道の内壁との間の漏洩ダクトの形成の代理であり、該形成は一般的にカフから肺への分泌物を随伴する。
【0156】
本発明の様々な例示的実施形態では、監視は挿管手順中ずっと実質的に連続的に実行される。これは例えば、添加剤のレベルの一連の実時間値を得ることによって行なうことができる。2つ以上の添加剤が気管内チューブを通して送達される実施形態では、監視は、2つ以上の添加剤のレベルの測定を含むことが好ましく、送達された全ての添加剤のレベルを測定することを含むことがより好ましい。この場合、全ての測定値は、例えば各測定値の相対精度レベルおよび/または分泌物の漏洩との相関レベルに相当することができる、予め定められた組の重みを用いて加重することが好ましい。
【0157】
監視は、添加剤の判別特性を測定するのに適した1つまたはそれ以上の測定装置を使用して実行することができる。本発明の好適な実施形態では、気管内チューブの挿入は、測定装置と連絡する通信装置(例えば導管)の挿入を伴う。導管は気管内チューブの外部に配置することができ、あるいは本書でさらに詳しく下述するように、チューブの壁内に埋め込むことができる。
【0158】
監視は、測定装置または通信装置にアクセス可能な監視位置で実行される。本発明の様々な例示的実施形態では、監視は、流体(気体または液体)を監視位置からサンプリングし、サンプルを解析のために測定装置に送達することによって行なわれる。好ましくは、監視位置は、被験者の不快感を最小化しながら、測定の精度を最適化するように選択される。適切な監視位置として、カフの上、気管内チューブと気道の壁との間、被験者の鼻孔、または声帯の上(例えば中咽頭)、および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部が挙げられるが、それらに限定されない。オペレータおよび患者にとっては鼻孔または中咽頭がより好都合な測定位置であるが、測定精度および解析の信頼性の観点からは、カフ付近で測定を実行する方がより好ましい。添加剤がカフの上の位置に送達される場合、監視位置はカフの下、肺内、または人工呼吸器位置またはその付近の気管内チューブの呼吸用ルーメン内であってよい。
【0159】
本発明の好適な実施形態では、測定は気道の壁と気管内チューブとの間に存在する原子の組成および存在量に関する情報を提供することができ、それによって添加剤を識別し、かつそのレベルを測定する、質量分析計またはガス分析装置によって実行される。例えば添加剤が不活性ガス(例えばヘリウム、クリプトン)を含む場合、質量分析計は不活性ガスの原子(例えばHe、Kr)の存在を識別し、任意選択的にそれらの濃度レベルを測定することができる。他の気体状物質を、質量分析計を用いて識別することもできる。
【0160】
別の実施形態では、測定は放射線検出装置によって実行される。この実施形態は、添加剤が特定放射特性を有する場合に好ましい。例えば添加剤が放射性同位体(例えば、Tc‐99、Xe‐133、Kr‐81)を含む場合、放射線検出装置は放射性同位体によって放射される放射線を検出することができ、こうして、気道の壁と気管内チューブとの間における放射性同位体の存在および/または濃度レベルを決定することができる。これは、流体(気体または液体)を監視位置からサンプリングし、サンプルを放射線検出装置に送達することによって達成することができる。
【0161】
追加の実施形態は、添加剤が特徴的な光学特性を有する場合に好適である。この実施形態では、測定は、光学特性を測定することができる光学装置によって実行される。例えば添加剤の光学特性は独特な色(例えば有色ガスの場合など)であってよく、その場合、光学装置は小型カメラ、または外部カメラに結合された光導波管を含むことができる。気管内チューブに取付け可能な小型カメラは当業界で公知である(例えば「MedGadget Journal」、2005年3月号、http://www.medgadget.com/archives/2005/03/etview_ett.htmlを参照されたい)。
【0162】
カメラによって取り込まれた画像は処理して、添加剤の存在を検出し、かつ任意選択的にカフの上のその濃度レベルを決定することができる。添加剤の光学特性は蛍光であってもよく、その場合、光学装置は添加剤からの蛍光放射を検出するための蛍光カメラであってよく、それにより添加剤の存在の検出および/または濃度レベルの測定が可能になる。添加剤がカフより上の位置に送達される場合、添加剤がカフを通過して下流の肺に移動すると漏洩が識別されるように、画像はカフより下で取り込むことが好ましい。この実施形態では、添加剤は、それが漏洩ダクトを通過すると有色または無色の気泡が形成され、それをカメラによって検出することができるように選択することもできる。気泡は小型超音波装置によって検出することもできる。
【0163】
追加の実施形態は、添加剤が特徴的な電気的特性を有する場合に好適である。この実施形態では、測定は、伝導または抵抗などの電気的特性を測定することができる装置によって実行される。代替的に、または追加的に、添加剤が特徴的な磁気的特性を有する場合、測定は、磁気的特性、例えば磁化を測定することができる装置によって実行される。したがって、それぞれの量の測定は、カフより上の添加剤の存在または濃度レベルを決定するために、監視位置で実質的に連続して実行することができる。
【0164】
ひとたび測定が実行されると、該方法はステップ376に進むことが好ましく、そこで識別可能な添加剤のレベルを、好ましくは予め定められたその最適レベルと比較する。2つ以上の添加剤が使用される好適な実施形態では、各々の識別可能な添加剤のレベルをそれぞれの最適レベルと比較することが好ましい。
【0165】
最適レベルは、カフの上から肺内への分泌物の漏洩が無視できるほど低いか、あるいは全く無いことを示す、それぞれの添加剤の最大レベルであることが好ましい。したがって、最適レベルは漏洩識別の閾値を成立させる。添加剤のレベルが閾値未満である限り、漏洩は無視できるほど小さい(または存在しない)とみなされ、気道は適切に封止されているとみなされる。閾値は典型的には下限であるので、添加剤のレベルが閾値を越えるといつでも、カフの位置における分泌物の漏洩が識別される。
【0166】
最適レベルは絶対最適レベルであってよく、あるいは例えば周囲または呼吸用ガスのオンライン基準に対して相対的に定義することができる。最適レベルは、このレベルを決定することを対象とした研究、実験的考察および/または理論計算によって得られた表、チャート、グラフ、または公式から導き出すことができる。
【0167】
本発明の好適な実施形態では、該方法はステップ377に進み、そこで識別可能な添加剤のレベルに基づき、カフの膨張を調整する。調整は、分泌物の漏洩および圧力に関連する損傷の発生が両方とも実質的に最小化されるような仕方で実行される。ステップ377から、該方法は任意選択的にまたは好ましくは、ステップ33、374、または375にループバックする。
【0168】
ステップ377の2つの代替的かつ任意選択的実行手順を、図7b〜cの部分フローチャートに示す。したがって、ステップ376(図示せず、図7a参照)から、該方法は決定ステップ377に進み、そこで該方法は、既述の通り添加剤のレベルに基づき、無視できない漏洩が識別されるか否かを決定する。無視できない漏洩が識別された場合、該方法はステップ377bに進み、そこでカフの膨張圧力が、よりよい封止をもたらすように増大される。該方法で、漏洩が無い(または漏洩が無視できるほど小さい)と決定された場合、該方法は、膨張圧力を変更することなく、ステップ373、374、または375にループバックするか(図7b)、あるいはステップ377cに進み、そこでカフの膨張圧力を低減させることができる(図7c)。ステップ377cから、該方法はステップ373、374、または375にループバックすることが好ましい。図7cの実施形態の利点は、カフの膨張圧力のさらなる最適化が可能になることである。漏洩が充分に低いかあるいは漏洩が存在しない限り、カフの膨張圧力は低減させることができる。
【0169】
したがって本実施形態の方法は、気管に対する最小限の局部的圧力により、分泌物の漏洩が最小化されるか実質的に防止されるように、カフの膨張に対する閉ループ制御を提供する。そのような制御は、肺感染症または圧力に関連する気道の壁の損傷に対する最小限の危険性により、被験者に対する効率的な呼吸補助を促進する。
【0170】
該方法はステップ378で終了する。
【0171】
ここで、図8を参照すると、それは、本発明の様々な例示的実施形態に従って被験者に挿管するためのシステム70の簡略図である。システム70は、気道74に挿入されるように適応された気管内チューブ72を含む。気管内チューブ72は、例えば被験者の声帯(図示せず、例えば図4aおよび6a参照)の下の膨張導管77を介して膨張させることのできる、カフ76に関連付けられる。システム70はさらに、本書で前に詳述した通り、分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置78を含む。本発明の様々な例示的実施形態では、装置78はCO2(濃度、分圧)に直接関係する尺度、またはCO2の代理尺度の測定を実行する。本特許の存続期間中に、CO2の代理尺度を測定するのに適した多くの関連測定装置が開発されることが予想され、測定装置という用語の範囲は、全てのそのような新しい技術を先験的に含むつもりである。
【0172】
装置78は、例えばCO2濃度測定装置、CO2分圧測定装置、音響測定装置、圧力測定装置、流量測定装置、光学測定装置(例えばカメラ)、ガス量測定装置、電気的特性測定装置であってよい。
【0173】
周囲CO2分圧を測定する実施形態では、装置78は、例えば2つ以上の別々の入口79および一方向弁81の配列を使用して、2つの並行測定を実行することができることが好ましい。入口79はまた、基準尺度として使用される周囲尺度(例えばCO2分圧)を測定するために使用することもできる。
【0174】
装置78は、測定量に相当するデータを処理または解析するデータ処理ユニット94を含み、あるいはそれに関連付けることができる。例えば、測定量をデジタルデータに変換し、音響測定値に相当するデータの解析(例えば背景データの除去、または本書で前に詳述したΔf、Δt、もしくはνLの計算)、または光学測定値に相当するデータの解析などの、しかしそれらに限らず、さらなる処理のために、データをユニット94に転送することができる。ユニット94はまた、好ましくは実時間で、尺度のレベルとそれに相当する最適値との間の比較を実行することもできる。例えば本発明の様々な例示的実施形態では、ユニット94は、カフ付近のCO2分圧と周囲CO2分圧との間の実時間比較を実行する。
【0175】
測定装置のタイプに応じて、装置は所望の測定位置82に配置することができ、あるいはより好ましくは、それは、例えば測定用導管80を使用して測定位置と連絡することができる。図8はカフ76より上の測定位置82を示しているが、既述の通り、測定位置は本書で前に詳述したようにカフより上である必要は無いので、これは必ずしも当てはまらないことを理解されたい。
【0176】
装置78はまた、測定位置に配置され、かつ適切な伝送ラインであり得るかまたはそれを含むことができる測定用導管80などの、しかしそれに限らず、通信チャネルを介して、装置78と通信するように構成された、1つまたはそれ以上のセンサ84をも含むことができる。センサのタイプは、測定装置のタイプに依存する。例えば測定装置が音響測定装置である場合、センサは音響センサであり、測定装置が圧力測定装置である場合、センサは圧力センサ等である。
【0177】
本発明の好適な実施形態では、システム70は、カフ76より上の気道内の吸引位置87で分泌物を吸引するための吸引装置86を含む。吸引装置86は、装置86から位置87まで延びる吸引用導管88によって、または導管80によって吸引位置87と流体連通することができ、後者の場合、導管80は吸引および測定用導管として働く。導管80および/または導管88は、所望により、気管内チューブ内にまたはその外部に配置することができる。導管80および/または88はまたチューブ72の壁63内に埋め込むこともできる。
【0178】
本発明の様々な例示的実施形態では、システム70は、装置78から受け取る信号に基づき、カフ76の膨張を調整するための膨張装置90を含む。これはオペレータが手動で行なうことができ、その場合、測定装置は尺度のレベルを表示するためのディスプレイ装置を含み、あるいは自動的に行なうことができ、その場合、膨張装置は測定装置と連絡し、それによってそれとの閉ループ制御を形成する。
【0179】
システム70はまた、測定装置78と連絡する警報ユニット92を含むこともできる。ユニット92は、尺度のレベルが最適レベルを超える場合に、警報を発生するように働く。
【0180】
ここで、図9a〜bを参照すると、それは、本発明の様々な例示的実施形態に従って、被験者に挿管するためのシステム100の簡略図である。上記システム70と同様に、システム100は、本書で前に詳述した通り、気管内チューブ72、カフ76、および膨張導管77を含むことが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、システム100はさらに、本書で前に詳述した通り、気管内チューブを通して1つまたはそれ以上の識別可能な添加剤を送達する、添加剤送達ユニット75を含む。ユニット75はチューブ72に動作的に関連付けられる。この関連付けは呼吸機械または麻酔機械(図示せず)を介してよく、その場合、チューブ72を通して添加剤を送達する前に、添加剤が呼吸用ガスと混合されるように、ユニット75は機械の一部であるか、あるいは機械と流体連通することが好ましい。
【0181】
代替的に、ユニット75はチューブ72と流体連通であってよく、その場合、添加剤はユニット75からチューブ72に直接送達される。添加剤を被験者の肺102に流入させることを希望する場合、添加剤および呼吸用ガスは、チューブ72の呼吸用ルーメン65を通して送達することが好ましい。この実施形態では、添加剤および呼吸用ガスを混合させることができる。添加剤をカフより上の位置に送達することを希望する場合、添加剤は、カフ76の上に開口73を含むことができる添加剤送達用導管71をとして送達することが好ましい(図9b参照)。導管71は、チューブ72のルーメン65内に配置するか、あるいはそれに隣接することができる。導管71はまた、チューブ72の壁63に埋め込むこともできる。ルーメン65および導管71はそれらの間の流体連通を欠いていることが望ましいが、必須ではない。また、添加剤はルーメン65に入ることが防止されるが、呼吸用ガスは導管71に入ることができ、あるいはその逆となる、一方向弁を使用した非対称な構成も考えられる。添加剤がルーメン65を通して送達される実施形態では、導管71は、本書でさらに詳しく下述するように、測定用導管80として使用することができる。
【0182】
システム100はさらに、本書で前に詳述した通り、識別可能な添加剤のレベルを測定するための測定装置85を含む。装置85は、既述の通りカフより上、被験者の鼻孔、または声帯の上(例えば中咽頭)、および/またはカフの下、ならびにそれらの隣接部であり得る監視位置83と連絡することが好ましい。図9aに示す実施形態では、監視位置83はカフの上、気管内チューブと気道の壁との間である。
【0183】
装置85は、添加剤の1つまたはそれ以上の上述した判別特性を測定することができる。したがって、装置85は例えば質量分析計、ガス分析装置、光学測定装置(例えば光学カメラまたは蛍光カメラ)、小型超音波装置、電気的特性測定装置(例えば伝導測定装置、抵抗測定装置)、および磁気的特性測定装置(例えば、磁化測定装置)であってよい。装置85はまた、各々が異なる量を測定するように設計かつ構成された幾つかの装置の組合せであってもよい。例えば装置85は質量分析計およびカメラ、または任意の他の組合せを含むことができる。
【0184】
装置85は、例えば2つ以上の別々の入口79および一方向弁81の配列を使用して、2つの並行測定を実行することができることが好ましい。この実施形態は、例えば監視位置における添加剤のレベルを環境レベルと比較するために、環境における添加剤のレベルを決定することを希望する場合に特に有用である。
【0185】
装置85は、上述の通り、測定量に相当するデータを処理または解析するデータ処理ユニット94を含み、あるいはそれに関連付けることができる。システム100のデータ処理ユニット94の原理および動作は、必要な変更を加えて、システム70のデータ処理ユニット94の原理および動作と同様である。例えば装置85は、測定量をデジタルデータに変換し、光学測定値に相当するデータの解析などの、しかしそれらに限らず、さらなる処理のために、データをユニット94に転送することができる。
【0186】
装置85は所望の監視位置83に配置することができ、あるいはそれは、例えば測定用導管80を使用して監視位置83と連絡することができる。図9aはカフ76より上の監視位置83を示しているが、既述の通り、多くの他の監視装置が考えられるので、これは必ずしも当てはまらないことを理解されたい。添加剤がカフより上の位置に送達される場合、装置85はルーメン65から直接ガスをサンプリングして、そこにおける添加剤の有無を決定することができる。
【0187】
図9aの例示的例証では、添加剤はルーメン65を通して送達され、装置85は導管80を介して位置83と連絡し、図9bの例示的例証では、添加剤は導管71を介して送達され、装置85は、直接的にまたは例えば呼吸機械または人工呼吸器を介して間接的に、ルーメン65と連絡する。図9bは肺内またはその付近の監視位置83を示しているが、本書で前に詳述した通り、多くの他の監視装置が考えられるのでこれは必ずしも当てはまらないことを理解されたい。
【0188】
装置85はまた、監視位置に配置され、かつ適切な伝送ラインであり得るかまたはそれを含むことができる測定用導管80などの、しかしそれに限らず、通信チャネルを介して装置85と連絡するように構成された、1つまたはそれ以上のセンサ84を含むこともできる。センサのタイプは測定装置のタイプに依存する。
【0189】
システム100はまた、本書で前に詳述した通り、吸引装置86、吸引用導管88、膨張装置90、および警報ユニット92などの、しかしそれらに限らず、他の構成要素を含むこともできる。
【0190】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0191】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0192】
本実施例では、本発明の教示に従って、上気道のCO2圧力(PCO2)を監視することによって、気管内チューブカフ付近の漏洩の連続評価を実行した。
【0193】
この研究の目的は、気管内チューブカフ付近の漏洩の評価のための正確で客観的な非侵襲性臨床方法を確立することであった。最初に、人間シミュレータで該方法の実現可能性を調査した。次に、ヒト気道粘膜をシミュレートするブタモデルにおけるヨード漏洩試験により、様々なカフ圧時の漏洩を評価した。最後に、新しい方法を今日使用されている標準臨床評価と比較して、待機的手術を受ける60名の患者で該方法の実現可能性を評価した。
【0194】
方法
本発明の様々な例示的実施形態に従って、3つの解剖学的位置、すなわち(i)気管内チューブの外部に取り付けられた吸引用ミニガイドルーメンカテーテルを通して気管内チューブカフと声帯との間、(ii)プラスチック中咽頭気道に挿入されたカテーテルにより喉頭蓋より上の中咽頭、および(iii)鼻カニューレを通して鼻孔を評価した。
【0195】
図10は、人間シミュレータおよび全身麻酔下の患者におけるCO2サンプリングの解剖学的位置を示す。
【0196】
該研究は3段階で実行した。段階1では、人間シミュレータで該方法の実現可能性を確認した。段階2では、ブタモデルで該方法を実験的に探求した。段階3では、該方法を、全身麻酔下の60名の外科患者で、最適気管内チューブカフ充填を推定するための標準的技法と比較した。
【0197】
研究の3段階中ずっと、50ml/分−7.5+15ml/分の流速および約0.2秒のCO2ステップまでの立上り時間を持つマイクロサイドストリームカプノグラフ(イスラエル国エルサレム、Oridion、Microcap(登録商標))を使用して、PCO2レベルを記録した。Microcap(登録商標)は、呼気終末のPCO2値だけを検出して保存するアルゴリズムを利用する。カプノグラフによるPCO2データの不正確な処理を回避するために、呼気終末のPCO2を検出するために日常的に利用されるアルゴリズムを中性化し、全てのPCO2値をデータプロセッサに直接転送して保存した。PCO2の読みの1mmHgより大きい増加は、カフ周辺の漏洩の徴候と解釈し、それに応じて適切なカフ圧を設定した。このカフ圧は、±2ミリバールの制御精度を持つ特殊電子カフ圧制御装置(ドイツ国、TRACOE(登録商標)カフ圧制御装置によって、吸気圧の変動またはいずれかの他の局所的変動のため可能なカフ圧変化を回避し、自動的に一定に維持された。カフより1cm上で開口するミニガイドルーメンが外側に取り付けられた高容量低圧カフ付きの気管内チューブ(米国、Mallinckrodt、Hi‐Lo(登録商標)Evac)を使用した。吸引用ミニガイドの近端はカプノグラフに接続した(図10参照)。
【0198】
図11は、第1段階中に表示された気管内チューブカフ圧による呼気CO2圧力波形を示す。吸引時間(上気道からの)は、CO2圧力波形の直線によって表わされる。
【0199】
段階1‐人間シミュレータモデル
70kgの男の人間シミュレータ(フロリダ州サラソータ、Medical Education Technologies,Inc.(METI))を使用した。Hi‐Lo(登録商標)Evac気管内チューブNo.8を人間シミュレータの気管内に挿入した。気管内チューブカフの位置における気管の直径は25mmであった。シミュレータの肺内への連続CO2ストリームを調整することによって、40mmHgの呼気終末のCO2をシミュレートした。
【0200】
人間シミュレータに人工呼吸を行いながら、一度に2mmHgずつ、カフを順次膨張させ、3つの解剖学的位置でPCO2漏洩レベルを測定した(図10参照)。各カフ圧変化後に、CO2レムナントがその後の測定値を変化させるのを防止するために、中咽頭を吸引した。
【0201】
段階2‐ブタモデル
米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の実験動物の管理および使用のための指針(Guidelines for the Care and Use of Laboratory 動物s)に従って実験を行なった。体重10kgおよび13kgの2頭のブタに、No.7気管内チューブで全身麻酔をかけた。小切開を介して気管内チューブカフより1cm上、声帯より下の気管内に直接挿入された、4mm径のカテーテルによってCO2漏洩レベルを評価した。気管内チューブカフ圧を一度に2mmHgずつ順次増大させ、カテーテルを介してPCO2を測定した。各測定後、CO2レムナントを回避するために、上気道を吸引した。
【0202】
上気道におけるPCO2の読みが無く、定常カフ圧に達した後、気管内チューブカフより下に気管「窓」を外科的に開口した。ヨード液(5cc)をカフより上に注入し、気管「窓」を通して様々なカフ圧レベルでカフより下のヨード漏洩レベルを評価しながら、ヨード液をそこに60分間静止させた。実験中ずっと(ヨード漏洩レベル測定期間を含む)、動物を同一陽圧換気状態に維持し、気管内チューブ位置ならびに動物の頭部および頸部の位置は変えなかった。
【0203】
段階3‐ヒト被験者
バランス全身麻酔(NO2:O2)による待機的手術を受ける60名の連続的成人患者を研究に含めた。機械的人工呼吸量および圧力に関して均質な患者群を得るために、喫煙または呼吸困難の経歴がある患者を肺機能検査により事前評価した。9名の患者は、毎秒強制呼気量(FEV1)または肺活量が予想の50%未満であったため、除外した。研究プロトコルは地域倫理委員会によって承認され、患者はインフォームドコンセントに署名した。
【0204】
全ての患者に麻酔医が挿管を実行し、次の公式、すなわち気管内チューブの遠端から右口角までの長さ(1cm単位で測定)=[身長(1cm単位)/5]−13[Cherng CH、Wong CS、Hsu CH、Ho ST.「成人の気道の長さ:経口気管内挿管用の気管内チューブの最適長さの概算」、J Clin Anesth.2002;14:271‐274]を使用して、患者の身長に従って気管内の気管内チューブの位置を決定した。
【0205】
挿管後、呼気‐吸気量の差による漏洩レベルおよび聴診器によりカフ周辺で聞こえる空気漏洩レベルを防止するために必要な最小気管内チューブカフ圧を設定するように麻酔医に要求した。最小カフ圧を使用して5分間呼気‐吸気量の差が無く、かつ聴診器により聞こえる空気漏洩レベルが無いときに、カフ圧は麻酔医によって最適とみなされた。カフ圧レベルが麻酔医によって最適とみなされた後、上記3つの位置でPCO2を測定した。
【0206】
ブタモデルでの研究結果に基づき、Hi‐Lo(登録商標)Evac気管内チューブの外部ミニガイドルーメンを介して、気管内チューブカフの近接部における2mmHgを超えるPCO2漏洩レベルを回避するために要求される最小カフ圧を、最適カフ充填と定義した。必要に応じて、各PCO2測定の2分前にプラスチック気道を通して吸引を実行した。動作中ずっと、3つの解剖学的位置からのPCO2の連続監視を実行した。
【0207】
統計
実行した全ての解析に統計SPSSTMソフトウェア(バージョン10.0、イリノイ州シカゴ、SPSS Inc.)を使用した。カテゴリデータは数字および百分率の形で表わされる。連続データは平均±標準偏差で表わされ、対となるt検定によって比較される。回帰係数(R)を気管内チューブカフ圧と上気道のPCO2との間の相関の測定値として算出し、R2と表わした。0.05未満のP値を有意とみなした。
【0208】
結果
段階1‐人間シミュレータモデル
図11は、人間シミュレータモデルでPCモニタに表示される気管内チューブカフ圧に応じた呼気PCO2波形の例を示す。3つの解剖学的位置の全部で、気管内チューブカフ圧とカフより上で測定されたPCO2との間に線形相関が観察された。すなわち(i)カフと声帯との間で、R2=0.954、p<0.0001、(ii)喉頭蓋より上の中咽頭で、R2=0.923、p<0.0001、(iii)鼻孔で、R2=0.911、p<0.0001であった。
【0209】
図12は、気管内チューブカフ圧と、カフおよび声帯の間で測定されたCO2レベルとの間の相関を示す。26mmHg以上の気管内チューブカフ圧時に、3つの解剖学的位置全部でPCO2は記録されなかった。25mmHgの気管内チューブカフ圧時に、カフと声帯との間だけでPCO2が検出された。気管内チューブカフ圧が24mmHgに達すると、全ての位置でCO2漏洩レベルが測定された。カフ圧の全レベルで、様々な解剖学的位置の間のPCO2の読みの最大差は2mmHg未満であった。
【0210】
段階2‐ブタモデル
図13a〜bは、2つのブタモデルにおける気管内チューブカフ圧と上気道のCO2レベルとの間の相関を示す。黒の矢印は、ヨード液漏洩レベルが最初に検出された位置を表わす。
【0211】
動物「A」(図13a)で、CO2漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は28mmHgであったが、カフ付近のヨード液漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は、2〜3mmHgのPCO2漏洩レベルがすでに測定された圧力、すなわち24mmHgであった。気管内カフ圧とカフより上のPCO2漏洩レベルとの間には線形相関があった(R2=0.984、p<0.0001)。
【0212】
動物「B」(図13b)で、気管内カフ付近のCO2漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は30mmHgであったが、カフ付近のヨード液漏洩レベルを防止するために必要な最小カフ圧は、3〜4mmHgのPCO2漏洩レベルが測定された圧力、すなわち25mmHgであった。気管内チューブカフ圧とカフより上のPCO2漏洩レベルとの間には線形相関があった(R2=0.988、p<0.0001)。
【0213】
段階3‐ヒト被験者
患者のベースライン特性を下の表1に要約する。
【0214】
患者の平均年齢は58.5±16.2歳であった。平均最大呼気圧は21.2±0.6mmHgであった。重度の肺疾患患者は研究から除外したが(予想の50%未満のFEV1またはVC)、6名の患者(10%)は軽度の閉塞性肺疾患であり、1名の患者は軽度の拘束性肺疾患であった。
【0215】
人間シミュレータおよびブタモデルからの結果は、PCO2漏洩レベルの測定値と気管内チューブカフ圧との間の線形相関を実証した。PCO2漏洩レベルの測定値は、それがHi‐Lo(登録商標)Evac ETTの外部ミニガイドルーメンを介して気管内チューブカフの隣接部で2mmHgより高かった場合、臨床的に有意であるとみなした。PCO2漏洩レベルの読みが2mmHgより高かったときにだけ、ヨード液漏洩レベルが発生したという事実によるものであった。
【0216】
図14は、聴覚的漏洩レベル検査および呼気‐吸気量の差を用いて麻酔医によって臨床的に決定された初期平均気管内チューブカフ圧と、CO2漏洩レベル監視によって決定された平均最適カフ圧との間の比較を示す。麻酔医によって臨床的に決定された研究対象集団の全員の平均初期気管内チューブカフ圧は、気管内チューブカフの近接部の上気道PCO2漏洩レベル監視によって決定された平均最適カフ圧より著しく高く、それぞれ25.2±3.6対18.2±7.8mmHg、p<0.001であった。
【0217】
図15は、初期気管内チューブカフ圧が、PCO2漏洩レベル監視によって決定された最適カフ圧と比較して、著しく高いか、低いか、あるいは正確な患者の百分率を示す(n=60)。
【0218】
43名の患者(72%)では、臨床的に決定された気管内チューブカフ圧が、CO2漏洩によって決定された最適カフ圧より著しく高く、カフ圧の10.2mmHgの平均変化で、25.4±3.9対15.2±4.7mmHg、p<0.0001であった。
【0219】
8名の患者(13%)では、初期気管内チューブカフ圧は最適カフ圧より著しく低かった。9名の患者(15%)は、初期気管内チューブカフ圧が最適カフ圧と同様であった。
【0220】
3名の患者では、最高35mmHgまでの例外的に高いカフ圧にもかかわらず、CO2漏洩レベルが続いた。これらの患者で麻酔医によって決定された圧力は、30、32、および33mmHgであった。気管内チューブの遠位再配置後、CO2漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧は、研究対象集団の残りと同様の30mmHg未満まで低減した。完全な封止のために必要なカフ圧は、遠位再配置の後、劇的に低減したので、当初の不完全な封止はおそらく、非常に高い近位気道位置が気管内チューブカフと患者の気道の解剖学的形態との間の誤接触(例えばカフと声帯との間の直接接触)を引き起こしたためであったと推定された。
【0221】
手術中に、16名の患者(27%)で、腹部ガス膨張を伴う腹腔鏡手術による5mmHgを超える最大呼気圧の増加、軽度麻酔または不適切な神経筋遮断、外科的要求による頭部位置の変化、および手術中のETTの動きなどの様々な原因に帰することができる、CO2の新しい漏洩レベルが気管内チューブカフ付近に発生した。
【0222】
下の表2は、動作中の「新しい」漏洩レベルの原因を要約する。
【0223】
手術中に、3つの解剖学的位置全部でCO2の記録を得、PCO2の読みの差は2mmHg未満であった。気管内チューブに取り付けられた吸引用ミニガイドカテーテルを通して平均9±4回の測定後、分泌物による妨害のため、それ以上読みを得ることができなくなったので、それ以上のPCO2の読みは、プラスチック気道(下咽頭)および鼻孔のみから得た。
【0224】
論考
今日、適切なカフ充填を決定するために使用される方法は不適切であるか、あるいは扱いにくいかのいずれかである[Petring OU、Adelhoj B、Jensen BNら、「Prevention of silent aspiration due to leaks around cuffs of endotracheal tubes」、Anesth Analg 1986;65:777‐780;Young PJ、Basson C、Hamilton D、Ridley SA.「Prevention of tracheal aspiration using the pressure‐limited tracheal tube cuff」、Anaesthesia 1999;54:559‐563]。
【0225】
この研究では、本発明の教示に従って、上気道の連続的CO2圧力(PCO2)監視により、適切な気管内チューブカフ充填の決定を実行した。気管内チューブカフ圧とカフより上のCO2漏洩レベルとの間で見られる線形相関は、PCO2を空気漏洩の量的標識として使用できることを示している。気管内チューブカフ圧と上気道のPCO2との間に全体的な線形相関があった(3つの解剖学的位置全部で、R2>0.91、p<0.0001)が、曲線の最初および最後では、カフ圧の増加と比較してPCO2の変化が予想より小さく、相関の線形性が小さくなるようである。観察された非線形性は、カプノグラフの広いダイナミックレンジ(0〜40mmHg)および比較的低い感度(+1mmHg)によって説明することができる。この非線形性は、低いダイナミックレンジ(例えば0〜10mmHg)および高い感度(例えば0〜1mmHg)を有するカプノグラフを使用して回避または低減することができる。
【0226】
この観察の合理的説明は、非常に低いカフ圧時に、連続CO2漏洩を可能にするかなりの容量が依然として存在し、高いカフ圧時に、最小CO2漏洩で、カフによる気管の完全な封止を達成するためには、カフ圧のより高い変化が必要であるとすることができる。
【0227】
本研究の段階2で、ブタモデルを使用して、カフ付近のヨード漏洩レベルを評価した。ヨードは咽頭の分泌物より粘度が低いので、ヨード漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧は、気管内チューブカフ付近の分泌物漏洩レベルを防止するのに充分であると想定した。このモデルで、カフ圧の2mmHgの順次増加を使用し、PCO2の読みが2mmHgより高い場合にだけ、ヨード漏洩レベルが発生し、PCO2漏洩レベル検査は2mmHgの安全域を有することが示唆された。これらの結果に基づき、かつ3つの位置の間のPCO2測定位置の最大変化が2mmHg未満であったことを考慮して、中咽頭または鼻孔におけるPCO2の臨床実践的測定値が、カフの真上の遠位測定値と同等であると結論付けた。研究の第2段階は、米国国立衛生研究所の実験動物の管理および使用のための指針による制限および制約のため、2頭のブタだけで実施した。CO2漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧と、ヨード漏洩レベルを防止するために必要なカフ圧との間の差は、両方のブタでほぼ同一であり、このモデルのためにより多くの動物を犠牲にすることは不適切と思われた。
【0228】
研究の第3段階では、全身麻酔をかけて待機的手術を受ける患者で当該方法を評価した。麻酔医によって臨床的に決定された平均初期気管内チューブカフ圧は、CO2漏洩レベルの監視によって評価された最適カフ圧より著しく高かった。全ての患者で、25.2±3.6対18.2±7.8mmHg、p<0.001であり、72%の患者で、初期気管内チューブカフ圧は、10.2mmHgの平均変化で、PCO2の読みによって決定された最適カフ圧より著しく高かった。
【0229】
麻酔医の一般的傾向として初期カフ圧は「オーバシュート」したが、事例の13%では、最適初期カフ圧より低いカフ圧が見られた。さらに、手術中に27%の患者で「新しい」漏洩レベルが発生し、潜在的に彼らを吸引リスクにさらした。安定した待機的手術患者でさえも観察されたこのカフ圧の変動性は、適切なカフ圧を決定する正確な連続的臨床方法の必要性を際立たせる。
【0230】
研究中に遭遇した重要な問題は、上気道の吸引にもかかわらず、PCO2測定のために数回吸い込んだ後のHi‐Lo(登録商標)Evac ETTのミニガイドルーメンの分泌物による閉塞であった。対照的に、鼻カニューレを通して、またはプラスチック気道を通しての中咽頭からのPCO2の読みは、経口吸引によって分泌物を除去した後、容易に得られた。
【0231】
別の重要な問題は、気管内チューブの位置に関係する。気管内チューブの誤配置は、挿管患者にとって危険である。気管内チューブの挿入が遠位すぎると、気管支内挿管を導き、それは反対側の肺の圧壊を引き起こすおそれがある一方、近位挿入は偶発的な抜管または声帯外傷を導くかもしれない[Streitz JM Jr、Shapshay SM、「Airway injury after tracheotomy and endotracheal intubation」、Surg Clin North Am 1991;71:1211‐1230]。気管内チューブ挿入の最適な長さを概算するための幾つかの公式および他の方法が提案されている[Owen RL、Cheney FW、「Endobronchial intubation:a preventable complication」、Anesthesiology 1987;67:255‐257、Mehta S、「Intubation guide marks for correct tube placement.A clinical study」、Anaesthesia 199;46:306‐308、Patel N、Mahajan RP、Ellis FR、「Estimation of the correct length of tracheal tubes in adults」、Anaesthesia 1993;48:74‐75、Cherng CH、Wong CS、Hsu CH、Ho ST、「Airway length in adults:estimation of the optimal endotracheal tube length for orotracheal intubation」、J Clin Anesth.2002;14:271‐274]。しかし、いずれも必ずしも満足できるものではない。
【0232】
現在の研究では、3名の患者は、例外的に高い(>35mmHg)カフ圧にもかかわらず、CO2漏洩レベルがあった。しかし、気管内チューブの遠位再配置の後、(研究対象集団の残りと同様に)圧力は30mmHgまで減少した。それは研究の目的ではなかったが、適切に膨張させたカフ付近の連続的なCO2漏洩レベルを、誤配置された気管内チューブの標識として使用することができる。気管内チューブカフ付近の絶え間の無いCO2漏洩レベルは、声帯との誤接触、気管支内挿管(反対側の肺からのCO2)、または声帯上挿管(above vocal cord inturbation)による不完全な封止がある場合に発生し得る。
【0233】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0234】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】先行技術の挿管システムの概略図である。
【図2】吸気および呼気中の気管内チューブカフの概略図である。
【図3a】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【図3b−c】本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した方法のフローチャートである。
【図4】本発明の様々な例示的実施形態に係る、様々な測定位置におけるCO2分圧を示す。
【図5a−b】本発明の様々な例示的実施形態に係る、音響測定装置の位置の概略図である。
【図5c−d】本発明の様々な例示的実施形態に係る、ドップラ効果によって漏洩を識別するための手順の代表的実施例(図5c)および呼吸周期中の肺の圧力および漏洩ダクトの圧力の関数依存性の間の相違(図5d)を示す。
【図6】気管内チューブの外側の気管内の空気の流れ(図6a)および圧力(図6b)の概略図である。
【図7a】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した別の方法のフローチャートである。
【図7b−c】本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するのに適した別の方法のフローチャートである。
【図8】本発明の様々な例示的実施形態に係る、被験者に挿管するためのシステムの簡略図である。
【図9a】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するための別のシステムの簡略図である。
【図9b】本発明の例示的実施形態に係る、被験者に挿管するための別のシステムの簡略図である。
【図10】人間シミュレータおよび全身麻酔下にある患者で本発明の教示に従って実行されるCO2サンプリングの解剖学的位置を示す。
【図11】本発明の教示に従って実行した実験中に表示される、気管内チューブカフの圧力に従う呼気CO2圧力波形を示す。
【図12】本発明の教示に従って実行した実験中の気管内チューブカフの圧力と、カフおよび声帯の間で測定されたCO2レベルとの間の相関関係を示す。
【図13a】ブタモデルにおける気管内チューブカフの圧力と上気道のCO2レベルとの間の相関関係を示す。
【図13b】ブタモデルにおける気管内チューブカフの圧力と上気道のCO2レベルとの間の相関関係を示す。
【図14】聴覚的漏洩試験および呼気‐吸気量差を使用して麻酔医によって臨床的に決定された気管内チューブカフの初期平均圧力と、CO2漏洩監視(n=60)によって決定された平均最適カフ圧との間の比較を示す。
【図15】気管内チューブカフの初期圧力が。PCO2漏洩監視(n=60)によって決定された最適カフ圧と比較して著しく高いか、低いか、あるいは正確である患者の百分率を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管内チューブを気道内に挿入すること;
前記気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;
前記カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること、ただし前記少なくとも1つの尺度は前記カフと前記声帯との間の二酸化炭素濃度以外である;
前記少なくとも1つの尺度のレベルを前記少なくとも1つの尺度の最適レベルと比較すること;および、
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記比較に基づいて前記カフの膨張を調整すること
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法。
【請求項2】
気管内チューブを気道内に挿入すること;
前記気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;
前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること;
前記少なくとも1つの尺度のレベルを前記少なくとも1つの尺度の最適レベルと比較すること、ただし、前記最適レベルは約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する;および、
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記比較に基づいて前記カフの膨張を調整すること
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法。
【請求項3】
周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行し、前記最適レベルの値を設定するために前記周囲二酸化炭素分圧を利用することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記周囲二酸化炭素分圧の一連の実時間値を提供するように、前記周囲二酸化炭素分圧の測定を連続的に実行する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周囲二酸化炭素分圧は基準分圧として使用され、前記最適レベルは前記基準分圧より約4mmHg大きい二酸化炭素分圧に相当する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
気管内チューブを気道内に挿入すること;
前記気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;
前記気管内チューブを通して呼吸用ガスおよび少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達すること;
被験者の体内の監視位置で前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを監視すること;および
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記監視に基づき前記カフの膨張を調整すること
を含む、声帯および肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カフより上の気道の吸引位置で分泌物を吸引することをさらに含む、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項9】
前記気管内チューブの挿入は、測定用導管および吸引用導管の少なくとも一方を挿入することを含む、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項10】
前記監視位置は被験者の鼻孔である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記監視位置は被験者の中咽頭である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記監視位置は前記気管内チューブと気道壁との間の前記カフの上である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記監視位置は前記カフの下およびその隣接部である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記カフ膨張の調整を手動で実行する、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項15】
前記カフ膨張の調整を自動的に実行する、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項16】
気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブ;および
前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置、ただし前記少なくとも1つの尺度は前記カフと前記声帯との間の二酸化炭素濃度以外である、
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステム。
【請求項17】
前記測定装置は、前記少なくとも1つの尺度のレベルが前記少なくとも1つの尺度の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブ;および
前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置、ただし前記測定装置は、前記少なくとも1つの尺度のレベルが約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する前記少なくとも1つの尺度の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される、
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステム。
【請求項19】
前記測定装置は周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行するように設計かつ構成され、周囲二酸化炭素分圧は前記最適レベルの値を設定するために利用される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブ;
前記気管内チューブと作動的に関連付けられ、前記気管内チューブを通して少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達ユニット;および
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを測定するための測定装置
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステム。
【請求項21】
前記測定装置は、前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記気管内チューブは、前記少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達用導管を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記添加剤送達用導管は前記気管内チューブのルーメン内に配置される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記添加剤送達用導管は前記気管内チューブの外部に結合されるか、あるいは前記気管内チューブの壁に埋め込まれる、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記測定装置から受け取った信号に基づいて前記カフの膨張を調整するための膨張装置をさらに含む、請求項17、18または20に記載のシステム。
【請求項26】
前記測定装置は、前記少なくとも1つの尺度のレベルを表示するためのディスプレイ装置を含む、請求項17、18または20に記載のシステム。
【請求項27】
前記測定装置と連絡状態にあって、前記少なくとも1つの尺度のレベルが前記最適レベルを超えているときに警報を発生するための警報ユニットをさらに含む、請求項17、18または20に記載のシステム。
【請求項28】
前記膨張装置は前記測定装置と連絡状態にあり、それによって共に閉ループ制御を形成する、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記測定装置から気道のカフの上まで延びる測定用導管をさらに含む、請求項16、18または20に記載のシステム。
【請求項30】
気道内のカフより上の吸引位置で分泌物を吸引するために動作する吸引装置をさらに含む、請求項16、18または20に記載のシステム。
【請求項31】
前記吸引装置は前記測定装置と断続的に動作するように同期される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記吸引装置から前記吸引位置まで延びる吸引用導管をさらに含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記吸引位置まで延びる測定および吸引用導管をさらに含み、前記位置における前記測定および前記吸引を促進するように、前記測定および吸引用導管が前記測定装置および前記吸引装置に結合されている、請求項16、18または20に記載のシステム。
【請求項34】
前記測定および吸引用導管は前記気管内チューブ内に内部配置される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記測定および吸引用導管は前記気管内チューブの外部に配置される、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記測定および吸引用導管は前記気管内チューブの壁に埋め込まれる、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記最適レベルは予め定められた最適レベルである、請求項1、2、7、8、10または21に記載の方法またはシステム。
【請求項38】
前記少なくとも1つの尺度の測定は被験者の鼻孔で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項39】
前記少なくとも1つの尺度の測定は被験者の中咽頭で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項40】
前記少なくとも1つの尺度の測定は被験者の声帯より下、前記カフより上で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項41】
前記少なくとも1つの尺度の測定は前記カフより下およびその隣接部で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項42】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフと前記声帯との間の二酸化炭素濃度を含む、請求項2または18に記載の方法またはシステム。
【請求項43】
前記少なくとも1つの尺度は、前記声帯より上の二酸化炭素濃度を含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項44】
前記少なくとも1つの尺度は、被験者の鼻孔における二酸化炭素濃度を含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項45】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の漏洩を示す音響データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項46】
前記測定は前記音響データから背景データを取り除くことを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記背景データは約1200Hz未満の周波数によって特徴付けられる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記測定は、前記音響データを特徴付ける、ドップラ効果によって誘発される周波数差を算出することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記測定は、音響信号の伝搬時間を算出し、かつ前記カフ付近の流体流れを決定するために前記伝搬時間を利用することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の流体流れを示す圧力データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項51】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の流体流れを示す流量データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項52】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の分泌物の存在を示す光学データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項53】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフより上の前記気管内チューブの外側の流体の電気的特性を含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項54】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の測定は、被験者の声帯より下、前記カフより上で行なう、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項55】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルの監視は、質量分析を実行することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項56】
前記測定装置は質量分析計を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項57】
前記測定装置はガス分析装置を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項58】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な電気的特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項59】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記電気的特性を測定することによる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記測定装置は前記電気的特性を測定することができる、請求項58に記載のシステム。
【請求項61】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な磁気的特性を測定することによって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項62】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記磁気的特性を測定することによる、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記測定装置は前記磁気的特性を測定することができる、請求項61に記載のシステム。
【請求項64】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な光学的特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項65】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記光学的特性を測定することによる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記測定装置は前記光学的特性を測定することができる、請求項64に記載のシステム。
【請求項67】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な放射特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項68】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記放射特性を測定することによる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記測定装置は前記放射特性を測定することができる、請求項67に記載のシステム。
【請求項70】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な蛍光特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項71】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記蛍光特性を測定することによる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記測定装置は前記蛍光特性を測定することができる、請求項70に記載のシステム。
【請求項73】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの不活性ガスを含む、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項74】
前記少なくとも1つの不活性ガスはヘリウムおよびクリプトンから成る群から選択される、請求項73に記載の方法またはシステム。
【請求項75】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は少なくとも1つの有色ガスを含む、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項76】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの放射性同位体を含む、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項77】
前記少なくとも1つの放射性同位体は、テクネチウム放射性同位体、キセノン放射性同位体、およびクリプトン放射性同位体から成る群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項1】
気管内チューブを気道内に挿入すること;
前記気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;
前記カフを通過して肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること、ただし前記少なくとも1つの尺度は前記カフと前記声帯との間の二酸化炭素濃度以外である;
前記少なくとも1つの尺度のレベルを前記少なくとも1つの尺度の最適レベルと比較すること;および、
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記比較に基づいて前記カフの膨張を調整すること
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法。
【請求項2】
気管内チューブを気道内に挿入すること;
前記気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;
前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度のレベルを測定すること;
前記少なくとも1つの尺度のレベルを前記少なくとも1つの尺度の最適レベルと比較すること、ただし、前記最適レベルは約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する;および、
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記比較に基づいて前記カフの膨張を調整すること
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法。
【請求項3】
周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行し、前記最適レベルの値を設定するために前記周囲二酸化炭素分圧を利用することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記周囲二酸化炭素分圧の一連の実時間値を提供するように、前記周囲二酸化炭素分圧の測定を連続的に実行する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周囲二酸化炭素分圧は基準分圧として使用され、前記最適レベルは前記基準分圧より約4mmHg大きい二酸化炭素分圧に相当する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
気管内チューブを気道内に挿入すること;
前記気管内チューブに関連付けられたカフを声帯の下の気道内で膨張させること;
前記気管内チューブを通して呼吸用ガスおよび少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達すること;
被験者の体内の監視位置で前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを監視すること;および
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記監視に基づき前記カフの膨張を調整すること
を含む、声帯および肺で終端する気道を有する被験者に挿管する方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カフより上の気道の吸引位置で分泌物を吸引することをさらに含む、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項9】
前記気管内チューブの挿入は、測定用導管および吸引用導管の少なくとも一方を挿入することを含む、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項10】
前記監視位置は被験者の鼻孔である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記監視位置は被験者の中咽頭である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記監視位置は前記気管内チューブと気道壁との間の前記カフの上である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記監視位置は前記カフの下およびその隣接部である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記カフ膨張の調整を手動で実行する、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項15】
前記カフ膨張の調整を自動的に実行する、請求項1、2または6に記載の方法。
【請求項16】
気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブ;および
前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置、ただし前記少なくとも1つの尺度は前記カフと前記声帯との間の二酸化炭素濃度以外である、
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステム。
【請求項17】
前記測定装置は、前記少なくとも1つの尺度のレベルが前記少なくとも1つの尺度の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブ;および
前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を示す少なくとも1つの尺度を測定するための測定装置、ただし前記測定装置は、前記少なくとも1つの尺度のレベルが約0.32mmHgから約4mmHgまでの二酸化炭素分圧に相当する前記少なくとも1つの尺度の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される、
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステム。
【請求項19】
前記測定装置は周囲二酸化炭素分圧の少なくとも1回の測定を実行するように設計かつ構成され、周囲二酸化炭素分圧は前記最適レベルの値を設定するために利用される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
気道に挿入するように適応され、声帯の下で膨張させることができるカフに関連付けられた気管内チューブ;
前記気管内チューブと作動的に関連付けられ、前記気管内チューブを通して少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達ユニット;および
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルを測定するための測定装置
を含む、肺で終端する気道を有する被験者に挿管するためのシステム。
【請求項21】
前記測定装置は、前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルが前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の最適レベルを超えているときに、信号を発生するように設計かつ構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記気管内チューブは、前記少なくとも1つの識別可能な添加剤を送達するように構成された添加剤送達用導管を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記添加剤送達用導管は前記気管内チューブのルーメン内に配置される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記添加剤送達用導管は前記気管内チューブの外部に結合されるか、あるいは前記気管内チューブの壁に埋め込まれる、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
圧力に関連する気道の損傷を最小化しながら、前記カフの上から肺への分泌物の漏洩を実質的に最小化するように、前記測定装置から受け取った信号に基づいて前記カフの膨張を調整するための膨張装置をさらに含む、請求項17、18または20に記載のシステム。
【請求項26】
前記測定装置は、前記少なくとも1つの尺度のレベルを表示するためのディスプレイ装置を含む、請求項17、18または20に記載のシステム。
【請求項27】
前記測定装置と連絡状態にあって、前記少なくとも1つの尺度のレベルが前記最適レベルを超えているときに警報を発生するための警報ユニットをさらに含む、請求項17、18または20に記載のシステム。
【請求項28】
前記膨張装置は前記測定装置と連絡状態にあり、それによって共に閉ループ制御を形成する、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記測定装置から気道のカフの上まで延びる測定用導管をさらに含む、請求項16、18または20に記載のシステム。
【請求項30】
気道内のカフより上の吸引位置で分泌物を吸引するために動作する吸引装置をさらに含む、請求項16、18または20に記載のシステム。
【請求項31】
前記吸引装置は前記測定装置と断続的に動作するように同期される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記吸引装置から前記吸引位置まで延びる吸引用導管をさらに含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記吸引位置まで延びる測定および吸引用導管をさらに含み、前記位置における前記測定および前記吸引を促進するように、前記測定および吸引用導管が前記測定装置および前記吸引装置に結合されている、請求項16、18または20に記載のシステム。
【請求項34】
前記測定および吸引用導管は前記気管内チューブ内に内部配置される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記測定および吸引用導管は前記気管内チューブの外部に配置される、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記測定および吸引用導管は前記気管内チューブの壁に埋め込まれる、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記最適レベルは予め定められた最適レベルである、請求項1、2、7、8、10または21に記載の方法またはシステム。
【請求項38】
前記少なくとも1つの尺度の測定は被験者の鼻孔で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項39】
前記少なくとも1つの尺度の測定は被験者の中咽頭で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項40】
前記少なくとも1つの尺度の測定は被験者の声帯より下、前記カフより上で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項41】
前記少なくとも1つの尺度の測定は前記カフより下およびその隣接部で行なう、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項42】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフと前記声帯との間の二酸化炭素濃度を含む、請求項2または18に記載の方法またはシステム。
【請求項43】
前記少なくとも1つの尺度は、前記声帯より上の二酸化炭素濃度を含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項44】
前記少なくとも1つの尺度は、被験者の鼻孔における二酸化炭素濃度を含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項45】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の漏洩を示す音響データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項46】
前記測定は前記音響データから背景データを取り除くことを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記背景データは約1200Hz未満の周波数によって特徴付けられる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記測定は、前記音響データを特徴付ける、ドップラ効果によって誘発される周波数差を算出することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記測定は、音響信号の伝搬時間を算出し、かつ前記カフ付近の流体流れを決定するために前記伝搬時間を利用することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の流体流れを示す圧力データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項51】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の流体流れを示す流量データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項52】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフ付近の前記気管内チューブの外側の分泌物の存在を示す光学データを含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項53】
前記少なくとも1つの尺度は、前記カフより上の前記気管内チューブの外側の流体の電気的特性を含む、請求項1、2、16または18に記載の方法またはシステム。
【請求項54】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の測定は、被験者の声帯より下、前記カフより上で行なう、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項55】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤のレベルの監視は、質量分析を実行することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項56】
前記測定装置は質量分析計を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項57】
前記測定装置はガス分析装置を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項58】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な電気的特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項59】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記電気的特性を測定することによる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記測定装置は前記電気的特性を測定することができる、請求項58に記載のシステム。
【請求項61】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な磁気的特性を測定することによって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項62】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記磁気的特性を測定することによる、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記測定装置は前記磁気的特性を測定することができる、請求項61に記載のシステム。
【請求項64】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な光学的特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項65】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記光学的特性を測定することによる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記測定装置は前記光学的特性を測定することができる、請求項64に記載のシステム。
【請求項67】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な放射特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項68】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記放射特性を測定することによる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記測定装置は前記放射特性を測定することができる、請求項67に記載のシステム。
【請求項70】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、測定可能な蛍光特性によって特徴付けられる、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項71】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤の監視は、前記蛍光特性を測定することによる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記測定装置は前記蛍光特性を測定することができる、請求項70に記載のシステム。
【請求項73】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの不活性ガスを含む、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項74】
前記少なくとも1つの不活性ガスはヘリウムおよびクリプトンから成る群から選択される、請求項73に記載の方法またはシステム。
【請求項75】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は少なくとも1つの有色ガスを含む、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項76】
前記少なくとも1つの識別可能な添加剤は、少なくとも1つの放射性同位体を含む、請求項6または20に記載の方法またはシステム。
【請求項77】
前記少なくとも1つの放射性同位体は、テクネチウム放射性同位体、キセノン放射性同位体、およびクリプトン放射性同位体から成る群から選択される、請求項76に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b−c】
【図4】
【図5a−b】
【図5c−d】
【図6】
【図7a】
【図7b−c】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3a】
【図3b−c】
【図4】
【図5a−b】
【図5c−d】
【図6】
【図7a】
【図7b−c】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−505715(P2009−505715A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527592(P2008−527592)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000974
【国際公開番号】WO2007/023492
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508057933)ホスピテック レスピレーション リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000974
【国際公開番号】WO2007/023492
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508057933)ホスピテック レスピレーション リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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