説明

水の浄化方法及び浄化装置

【課題】光触媒を用いて効率良く水の浄化が行える水の浄化方法及び浄化装置を提供する。
【解決手段】水の浄化装置1には、ハニカム形状に形成される複数の貫通孔を有し、表面に光触媒膜が形成される浄化体8が備えられる。この浄化体8は被処理水に浸漬された状態となっており、浄化体8は、紫外線LEDチップ10から照射される光が光触媒に照射されることにより、水中に溶解する有機物や無機物を分解して浄化する。紫外線LEDチップ10から出射される光は、浄化体8に形成される貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有しているために、貫通孔の下部側に形成される光触媒膜を含めて貫通孔に形成される全ての光触媒膜について光が照射され、光が照射されずに水の浄化に寄与しない光触媒の存在確率を低くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の浄化方法及び浄化装置に関し、詳細には、飲料水、飼育魚用水槽水、風呂水、洗濯水等を、光触媒を用いて浄化する浄化方法及び浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を浄化する手段としては、濾過、吸着剤による吸着除去、オゾン処理、生物処理、光触媒による酸化分解処理等の様々な手段が利用されている。この点、本出願人は、交換作業等の手間がかからないこと、人体に対する安全性、その分解能力等を考慮して、例えば特許文献1や特許文献2において、光触媒を用いた水の浄化方法や浄水装置を提案している。
【0003】
特許文献1の水の浄化方法においては、水の中に光触媒を表面に形成した金属電極を設置し、前記電極に電圧を印加すると同時に光照射を行い、前記水の中のイオン化した物質を分解することを特徴としている。そして、これによれば、イオン化した状態で水中に溶解している物質を、電解により引寄せて濃縮し、光触媒で効率良く処理できるとされている。また、この場合において、前記金属電極を、表面に光触媒膜を形成したハニカム状の金属電極とすると、高効率で水の浄化を行うことができるとされている。
【0004】
また、特許文献2においては、濾過フィルター上面に粒状の光触媒を散在し、紫外線ランプで光触媒を照射することで水の浄化を行う構成の浄水装置が紹介されているが、この特許文献2では、光触媒に紫外線ランプから紫外線を照射する場合と照射しない場合で、光触媒によるカルキの分解能力に大きな差が出る結果が示されており、光触媒を用いた浄水装置において紫外線ランプが必要であることがわかる。
【特許文献1】特開2001−149935号公報
【特許文献2】特許3751147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示されるような構成で、光触媒を用いて水を浄化する方式を採用する場合には、次のような問題点があることがわかった。
【0006】
すなわち、特許文献1に示されるように、高効率で水の浄化を行うために、金属電極を、表面に光触媒膜を形成したハニカム状の金属電極とする場合、光触媒に光を照射する高圧水銀ランプやブラックライトといった光源100からの光は、図6に示されるように拡散しながら光触媒膜が形成された金属電極101に到達するために、光源100から離れた位置に形成される光触媒(詳細には、ハニカムのスリット102内部等の下部側に形成される光触媒膜)には光が届き難くなる。このため、金属電極101上に設けられる光触媒膜の中には、水の浄化に有効に作用していない部分があることがわかった。
【0007】
なお、図6は、紫外線照射用のランプ(光源100(高圧水銀ランプ等))からの光が、ハニカム状に形成される金属電極101の各スリット102に届く様子を模式的に示した図である。
【0008】
上述の問題について、高圧水銀ランプやブラックライトから離れた位置にある光触媒に光が届き易いように、高圧水銀ランプ等の数を増やすことや、高圧水銀ランプ等と光触媒膜が形成された金属電極との距離を長くすることも考えられるが、この場合には水を浄化するための浄化装置が大型化する等の問題が発生する。
【0009】
また、高圧水銀ランプやブラックライトからの光が、高圧水銀ランプ等から離れた位置にある光触媒にも届き易いように、図7に示す如く、ハニカム状の金属電極101について、ハニカムのスリット幅を広くすることも考えられるが、この場合には、装置が大型化したり、光触媒膜が形成される面積が減少して必ずしも効率良く水を浄化できなかったりするといった問題が発生する。
【0010】
なお、図7は、紫外線照射用のランプ(光源100(高圧水銀ランプ等))からの光が、ハニカム状に形成される金属電極101の各スリット102に届く様子を模式的に示した図で、図6の場合に比べてスリット102の幅が拡げられている。図6との比較により、光の届く位置が異なることがわかる。
【0011】
また、例えば、飼育魚用の水槽水の浄化においては、水の浄化処理によって水の温度が上昇すると、魚の生活環境として適さなかったり、藻の発生量が増加したりする等の問題が発生するために、水の温度上昇は好ましくない。この点、特許文献1や特許文献2に示される構成の水の浄化方式を採用すると、高圧水銀ランプやブラックライト等の紫外線ランプを用いる構成であるために、紫外線ランプからの熱によって、浄水中に水の温度が上昇し、問題となる。
【0012】
これについて、水の温度上昇を避けるために紫外線ランプを水面から離すと装置が大型化するという問題が発生する。また、水の温度上昇を抑制するために冷却用の機器を導入した場合には、コストの上昇やそのためのスペースが別途必要となるために、これまた問題となる。
【0013】
以上の問題点を鑑みて、本発明の目的は、光触媒を用いて効率良く水の浄化が行える水の浄化方法及び浄化装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、水の浄化処理時に水の温度上昇を抑制できる水の浄化方法及び浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、水を浄化する方法であって、前記水の中に全体又は一部が浸漬されて、光触媒の層を有することにより前記水の浄化が可能な浄化体に、指向性を有する光を照射しながら水の浄化を行うことを特徴としている。
【0015】
これによれば、光触媒の層を有する浄化体に指向性を有する光を照射することとしているために、従来用いていた、例えば高圧水銀ランプから出射される光のように、光が拡散してしまう場合には、浄化体が有する光触媒について、光が届き難く、水の浄化作用に寄与しない部分が生じて、水の浄化効率の低下を招いていたが、これを解消して、光触媒の層を効率良く活用できるようになり、水の浄化を効率良く行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明は、上記構成の水の浄化方法において、前記浄化体には、貫通孔が複数並べられており、前記貫通孔の内表面には、前記光触媒の層が形成されていることとしても良い。
【0017】
これによれば、水の浄化効率を挙げるために貫通孔の内表面に光触媒の層を設ける構成とした場合に、貫通孔内に存在する光触媒には、光が照射され難い部分が生じ易いが、指向性を有する光を照射することとしているために、前述の光が照射され難い部分にも光を照射することが可能となり、水の浄化を効率良く行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明は、上記構成の水の浄化方法において、前記浄化体はハニカム状に形成されることとしても良い。
【0019】
これによれば、水の浄化体に設けられる貫通孔がハニカム状であるために、光触媒が設けられる表面積を大きくすることができ、更に効率を高めて水の浄化を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記構成の水の浄化方法において、前記指向性を有する光は、前記貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有するのが好ましい。
【0021】
これによれば、水の浄化体に照射される光が、光触媒の層が形成される貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有するために、各貫通孔が有する光触媒の層全体に光を照射することが可能となる。そして、この場合、貫通孔の孔のサイズを小さくして、水の浄化体が有する貫通孔の数を増やしても、各貫通孔が有する光触媒の層全体に光を照射することが可能であるために、更に水の浄化効率を高めることが可能となる。
【0022】
また、本発明は、上記構成の水の浄化方法において、前記指向性を有する光は、複数の位置から出射されることとしても良い。
【0023】
これによれば、指向性を有する光が複数の位置から出射される構成であるために、浄化体に設けられる複数の貫通孔に設けられる光触媒の層の全てに確実に光を照射することが可能となり、水の浄化効率を高めることが可能となる。
【0024】
また、本発明は、上記構成の水の浄化方法において、前記指向性を有する光は、紫外線LEDから出射される光であることが好ましい。なお、LEDは発光ダイオードのことであり、以下においても同一の意味で使用する。
【0025】
これによれば、指向性を有する光を、紫外線LEDを用いて出射する構成であるために、水の浄化を効率良く行える構成を簡易な構成とできる。また、紫外線LEDは、発熱量が少ないために、水の浄化時における水温の上昇を抑制でき、更には、光源を水面に近づけてもことも可能で、水を浄化するための装置を小型化することもできる。
【0026】
また、本発明は、上記構成の水の浄化方法において、前記浄化体は金属電極と成っており、前記電極に所定の電圧を印加することにより、水中にイオン化した物質を前記電極の周囲に濃縮し、前記光触媒によって前記濃縮された物質を分解することとしても良い。
【0027】
これによれば、水中にイオン状態で溶解している物質を電極に引寄せることができるために、電極に形成される光触媒層の周りの被分解物濃度を高めることができるために、効率的に水の浄化を行うことが可能となる。
【0028】
また、本発明は上記目的を達成するために、内表面に光触媒の層を有する貫通孔が複数並べられて、水の中にその全体又は一部を浸漬することにより、前記水の浄化が可能な浄化体と、前記浄化体に光を照射する光源と、を備える水の浄化装置であって、前記光源から出射されて前記浄化体に照射される光は、指向性を有することを特徴としている。
【0029】
これによれば、水の浄化体の貫通孔の内表面に設けられる光触媒の層に対して、全体的に光を照射することが可能となるために、光が十分に届かない部分がある従来の構成に比べて、高効率で水の浄化を行うことが可能な水の浄化装置の提供が可能となる。
【0030】
また、本発明は、上記構成の水の浄化装置において、前記浄化体をハニカム状に形成しても良い。
【0031】
これによれば、水の浄化体に設けられる貫通孔がハニカム状であるために、光触媒が設けられる表面積を大きくすることができ、更に高効率で水の浄化を行うことが可能な水の浄化装置を提供できる。
【0032】
また、本発明は、上記構成の水の浄化装置において、前記浄化体に照射される光は、前記貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有するのが好ましい。
【0033】
これによれば、水の浄化体に照射される光が、光触媒の層が形成される貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有するために、各貫通孔が有する光触媒の層全体に光を照射することが可能となる。そして、この場合、貫通孔の孔のサイズを小さくして、水の浄化体が有する貫通孔の数を増やしても、各貫通孔が有する光触媒の層全体に光を照射することが可能であるために、更に水の浄化効率を高めた水の浄化装置の提供も可能となる。
【0034】
また、本発明は、上記構成の水の浄化装置において、前記光源は、複数の紫外線LEDから成ることとするのが好ましい。
【0035】
これによれば、指向性を有する光を、紫外線LEDを用いて出射する構成であるために、簡易な構成で水を高効率で浄化する浄化装置を提供可能となる。また、紫外線LEDは低消費電力であるために、発熱量が小さく、浄化装置によって水の浄化中に水温が上昇するのを抑制することが可能である。更に、紫外線LEDは小型であるために、水の浄化体が有する各貫通孔が有する光触媒に光が届くように複数配置することも可能であり、高効率で浄化する浄化装置を提供しやすい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の水の浄化方法及び浄化装置によれば、水の浄化を行うために用いる光触媒の働きを効率良く利用できるために、水の浄化効率がアップする。また、本発明の水の浄化方法及び浄化装置によれば、水の浄化時における水温の上昇を抑制することも可能となるために、水温制御のために別途冷却装置等を用意する必要がないという利点を有し、例えば魚の飼育に用いる浄化装置としても適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に本発明の水の浄化方法及び浄化装置について、実施形態を示して図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。また、図面中の各部材の大きさや厚みは理解を容易にする目的のためのものであり、実際の寸法と異なる。
【0038】
図1は、本発明の水の浄化方法を用いて水槽の水を浄化する(又は本発明に係る)浄化装置の実施形態の構成を示す概略側面図である。この水の浄化装置1においては、水槽2の中に貯められた水槽水3は、ポンプ4によって汲み上げられて、入水パイプ5を通って貯水容器6に流入する。なお、貯水容器6には、側面に入水孔6aが設けられており、入水パイプ5は入水孔6aを貫通した状態で貯水容器6と接続されて、水槽水3の貯水容器6への流入を可能としている。
【0039】
貯水容器6には、貯水容器6に流入した水の浄化を可能に設けられる浄化体8が、図示しない支持部材で支持されることによって、浄化体8の底面と貯水容器6の底面との間に空間が形成された状態で配置されている。また、貯水容器6には、その底面に排水孔6bが設けられており、この排水孔6bには排水パイプ7が接続されて、貯水容器6で浄化した水を水槽2に排水するように構成されている。なお、水槽水3が貯水容器6汲み上げられて浄化された後、水槽2に排水される様子は図1中に実線矢印で示している。
【0040】
貯水容器6に流入する水の量と、貯水容器6から排水される水の量は、同一の量となるように調整(例えば、排水パイプ7の途中に設けられる排水弁(図示せず)を調整する)されており、浄化体8は、貯水容器6に流入する水を効率良く浄化できるように、その全体が貯水容器6に貯水される水に、常に浸漬された状態となっている。
【0041】
図2は、浄化体8の構成を示す概略斜視図であり、図3は、図2に示す浄化体8の一部分を上面から見た場合の拡大図である。図2、図3に示されるように、浄化体8は、平板型金属板8aと波型金属板8bとを交互に並べて一体化した構成となっており、浄化体8の形状は、ハニカム(正確には、コルゲートハニカム)形状となっている。すなわち、浄化体8は、その上下方向に延びる複数の貫通孔11が形成されており、この複数存在する貫通孔11を、被処理水が通過するようになっている。
【0042】
なお、浄化体8に形成される貫通孔11は本実施形態のようなハニカム構造でなくても構わず、貫通孔11を、間隔を隔てて疎らに設けるような構成としても構わないが、本実施形態のようにハニカム形状とした方が、後述するように浄化体8の表面に設けられる光触媒膜と被処理水の接触面積を大きくすることが可能なために好ましい。
【0043】
また、浄化体8の配置の仕方は、本実施形態の構成に限らず、種々の変更が可能であり、例えば、貫通孔11の貫通方向が図1の左右方向となるように配置する構成とし、浄化体8が、貯水容器6の底面に取り付けられ、全体が浸漬せずに上部が水面から出ているような構成等しても良い。なお、この場合は、後述する紫外線LEDモジュール9の配置も変更する必要がある。
【0044】
浄化体8を構成する平板型金属板8a及び波型金属板8bは、いずれも金属チタンから成っており、その表面は熱処理をすることで酸化されて、酸化チタン(TiO2)の膜が形成されている。すなわち、平板型金属板8a及び波型金属板8bの表面には光触媒膜が形成された構成となっている。なお、光触媒膜の形成方法は、本実施形態の方法に限らず、その他の公知の方法で形成しても構わず、例えば、ゾルゲル法で形成する構成等としても構わない。ただし、耐水性の優れた光触媒膜を容易に形成することができる点で、本実施形態の方法が好ましい。
【0045】
また、金属板8a、8bに酸化チタンの膜を形成する前に、例えばサンドブラスタやエッチングの手法を用いて金属チタンの表面を粗面化した後に、酸化チタンの膜を形成するようにしても構わない。このように形成した光触媒膜形成多孔質板は、水との接触面積が増加して、水の浄化効率を高めることができる点で好ましい。
【0046】
上述のように浄化体8には光触媒膜が形成されており、本実施形態の水の浄化装置1は、光触媒膜によって水中に溶存する無機物や有機物を分解除去する構成となっている。そして、光触媒膜を用いて浄化を行う場合、紫外線を光触媒に照射しながら水の浄化を行うと効果的に水の除去ができることがわかっている。このため、本実施形態の水の浄化装置1においては、図1に示すように、貯水容器6上面に紫外線を照射できるように、紫外線を発光する発光素子を有する紫外線LEDモジュール9が装着されている。
【0047】
この紫外線LEDモジュール9においては、複数の紫外線LEDチップ10が図1の左右方向にライン状に並べられた構成となっている。また、図示しないが、図1の紙面方向にも紫外線LEDチップ10が並べられた状態となっており、紫外線LEDモジュール9は、面光源として機能する。
【0048】
浄化体8に光を照射する光源として本実施形態のように、紫外線LEDを用いると、従来用いられていた高圧水銀ランプ等の場合に比べて、消費電力が少ないために省エネルギー効果を期待できる。また、高圧水銀ランプ等の場合には、ランプからの発熱によって水温が上昇し、このように水槽水の温度が上昇した場合には、例えば、藻が大量発生したり、熱帯魚のように環境変化に弱い魚に重大な影響を及ぼしたりといった問題があったが、紫外線LEDを用いた場合には、紫外線LEDの発熱による水温の上昇を抑制できる。このために、前述の問題点を、例えば温度調整用の機器を導入する等しなくても解決可能であるといった利点を有している。更には、高圧水銀ランプ等に比べて、紫外線LEDは寿命が長いので、寿命による取り替え作業の負担を軽減できる。
【0049】
また、本実施形態においては、紫外線LEDチップ10から出射される光は、ハニカム形状に形成される浄化体8の貫通孔11の貫通方向(本実施形態においては上下方向が該当する)と略平行な方向に指向性が高くなるように構成されている(図1の点線矢印参照)。通常、LEDから出射される光は指向性が高いために、紫外線LEDモジュール9を紫外線LEDチップ10と浄化体8とが対向するように配置することにより、紫外線LEDから出射される光は、浄化体8の貫通孔11の貫通方向に高い指向性を有することとなる。
【0050】
なお、紫外線LEDを、紫外線LEDチップ10から出射される光を所定の形状を有するミラーで反射させることにより、略平行な光として外部へ放射する構成とすれば、紫外線LEDチップ10から出射される光を、所望の方向に指向性がより高くなるように制御できるために、紫外線LEDの構成をそのような構成としても構わない。
【0051】
ここで、紫外線LEDチップ10から出射される光について、浄化体8の貫通孔11の貫通方向と略平行な方向に指向性を有するように構成して、紫外線LEDチップ10からの光を浄化体8に照射して水を浄化する方法の利点について説明する。
【0052】
従来のように、高圧水銀ランプやブラックライトを用いた場合には、上述したように光源から出射される光が拡散しながら浄化体8に照射されるために、高圧水銀ランプ等から離れるにつれて浄化体8の下部側(貫通孔11内及び外周面)に形成される光触媒膜に光が届き難くなる。このため、浄化体8に形成される光触媒膜の全てが、水の浄化作用を十分に果たしていない状況にある。
【0053】
この点、本実施形態のように、浄化体8の各貫通孔11に対して、貫通孔11の貫通方向と略平行な方向に指向性を有する光を照射すれば、浄化体8の下部側に形成される光触媒膜にも光が届くようになるために、浄化体8に形成される光触媒膜を浄化作用に効率良く活用できるようになる。
【0054】
図4は、紫外線LEDモジュール9と浄化体8に形成される貫通孔11との関係を模式的に示した模式図で、図4(a)と図4(b)とでは貫通孔11の幅を変更している。従来においては、高圧水銀ランプ等から出射される拡散光を貫通孔11になるべく届き易くするために、浄化体8の貫通孔11の孔の幅を広げるようにしていたが、この点、本実施形態の構成では、図4に示すように、紫外線LEDチップ10から出射される光は、貫通孔11の貫通方向に略平行な方向に指向性が高いために、貫通孔11の幅を狭くしても貫通孔11の下部側まで光を届かせることができる。
【0055】
このため、貫通孔11の数を従来と同一とする場合には、浄化体8の大きさを小さくでき、水の浄化装置1の小型化に寄与する。また、浄化体8の大きさを同一とする場合には、貫通孔11の数を増やせるために浄化体8に形成される光触媒膜の面積を増やして、水の浄化を高効率で行うことができるという利点も有する。
【0056】
また、従来の高圧水銀ランプ等の場合には、浄化体8の貫通孔11の下部側にまで光を届かせる必要があったために、浄化体8と高圧水銀ランプ等の距離を離す構成としていたが、紫外線LEDチップ10から出射される光は、貫通孔11の貫通方向に略平行な方向に指向性が高いために、距離を離さなくても貫通孔11の下部側まで光を届かせることができる。このため、光源と浄化体8との距離を縮めることが可能で、水の浄化装置1の小型化ができ、更に、本実施形態のように紫外線LEDを用いた場合には、その発熱量の少なさから、光源と浄化体8との距離を縮めたことによって被処理水の温度が上昇するという問題もない。
【0057】
なお、本実施形態においては、指向性を有する光を、紫外線LEDを用いて得る構成としているが、これに限らず本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。すなわち、例えば、高圧水銀ランプ等の光源と浄化体8との間に、例えばコリメートレンズ等の平行光変換手段を配置して、指向性を有する光を得る構成等としても構わない。ただし、浄化処理中の温度上昇を抑制できる点、装置の小型化できる点、省エネルギー化、光源の寿命等の利点を考慮して、紫外線LEDを用いるのが好ましい。
【0058】
また、図5に示すように、金属で形成される浄化体8を直流電源12と電気的に接続し、浄化体8に紫外線LEDから光を照射しながら水の浄化を行う際に、浄化体8に一定の電圧を印加しながら水を浄化する構成としても構わない。このようにすることにより、浄化体8が金属水中のイオン化した溶解物を集め易くなるために、光触媒による分解、浄化の速度を高めることが可能となる。なお、図5は、浄化体8を金属電極として機能させる構成を模式的に示した模式図である。
【0059】
その他、本発明の水の浄化方法は、水槽水の浄化に限らず、飲料水、洗濯水、風呂水等の浄化に使用でき、例えば、洗濯機、食器洗浄機等の電気機器等に応用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、水の浄化を効率良く行うことが可能となる。また、水の浄化処理にあたって、省エネルギー、被処理水の温度上昇の抑制も達成可能となる。このため、水の浄化方法及び浄化装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】は、本発明の水の浄化方法を用いて水槽の水を浄化する浄化装置の実施形態の構成を示す概略側面図である。
【図2】は、本実施形態の浄化体の構成を示す概略斜視図である。
【図3】は、図2に示す浄化体の一部を上面から見た場合の拡大図である。
【図4】は、紫外線LEDモジュールと浄化体に形成される貫通孔との関係を模式的に示した模式図である。
【図5】は、浄化体を金属電極として機能させる構成を模式的に示した模式図で、本発明の変形例である。
【図6】は、従来例で用いられる紫外線照射用のランプからの光が、ハニカム状に形成される金属電極の各スリットに届く様子を模式的に示した図である。
【図7】は、従来例で用いられる紫外線照射用のランプからの光が、ハニカム状に形成される金属電極の各スリットに届く様子を模式的に示した図で、図6との比較により、光の届く位置が異なることがわかるように示している。
【符号の説明】
【0062】
1 水の浄化装置
8 浄化体
9 紫外線LEDモジュール(光源)
11 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を浄化する方法であって、
前記水の中に全体又は一部が浸漬されて、光触媒の層を有することにより前記水の浄化が可能な浄化体に、指向性を有する光を照射しながら水の浄化を行うことを特徴とする水の浄化方法。
【請求項2】
前記浄化体には、貫通孔が複数並べられており、
前記貫通孔の内表面には、前記光触媒の層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水の浄化方法。
【請求項3】
前記浄化体は、ハニカム状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の水の浄化方法。
【請求項4】
前記指向性を有する光は、前記貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水の浄化方法。
【請求項5】
前記指向性を有する光は、複数の位置から出射されることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の水の浄化方法。
【請求項6】
前記指向性を有する光は、紫外線LEDから出射される光であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれかに1項に記載の水の浄化方法。
【請求項7】
前記浄化体は金属電極と成っており、
前記電極に所定の電圧を印加することにより、水中にイオン化した物質を前記電極の周囲に濃縮し、前記光触媒によって前記濃縮された物質を分解することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の水の浄化方法。
【請求項8】
内表面に光触媒の層を有する貫通孔が複数並べられて、水の中にその全体又は一部を浸漬することにより、前記水の浄化が可能な浄化体と、
前記浄化体に光を照射する光源と、
を備える水の浄化装置であって、
前記光源から出射されて前記浄化体に照射される光は、指向性を有することを特徴とする水の浄化装置。
【請求項9】
前記浄化体は、ハニカム状に形成されることを特徴とする請求項8に記載の水の浄化装置。
【請求項10】
前記浄化体に照射される光は、前記貫通孔の貫通方向と略平行な方向に指向性を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の水の浄化装置。
【請求項11】
前記光源は、複数の紫外線LEDから成ることを特徴とする請求項8から請求項10のうちのいずれか1項に記載の水の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−319812(P2007−319812A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154256(P2006−154256)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】