説明

水の濁度の連続観測装置

【課題】 河川の濁度を精度よく自動的に観測できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 音響ドップラー流速計から発射した超音波の水中の懸濁物により反射し、距離減衰、ビームの広がりによる減衰、吸収により減衰した反射波の強度から水の濁度を求めるようにし、前記観測データをテレメータでデータ転送するようにした水の濁度の連続観測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の濁度の連続観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川の流速計測は、これまでプロペラ流速計等を用いて、人が実際に川の中に入って必要の都度実施していた。
【0003】
また、河川の水の濁度観測は、これまで人あるいは自動観測機器により、河川際の一点のみの観測を必要に応じて実施していた。
【特許文献1】特開2000−111375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
河川の流速計測はこれまでプロペラ流速計等を用いて、人が実際に川の中に入って必要の都度実施していたため、流速が早い時ならびに人が入れない水深の深い所では観測できないことはもちろん、連続的な観測が不可能であり、また、人が行うため高コストであった。
【0005】
また、河川の水の濁度観測は、これまで人あるいは自動観測機器により、河川際の一点のみの観測を必要に応じて実施していたため、河川全幅に亘る面的な観測は不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、河川の濁度を精度よく自動的に観測できるようにすべく、音響ドップラー流速計から発射し、距離減衰、ビームの広がりによる減衰、吸収により減衰した超音波の水中の懸濁物により反射した反射波の強度から水の濁度を求めるようにし、前記観測データをテレメータでデータ転送するようにした水の濁度の連続観測装置とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、音響ドップラー流速計から発射した超音波の水中の懸濁物により反射し、距離減衰、ビームの広がりによる減衰、吸収により減衰した反射波の強度から水の濁度を求めるようにし、前記観測データをテレメータでデータ送信するようにした水の濁度の連続観測装置であるので、河川の濁度を精度よく自動的に観測できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を、添付する図面に示す実施例に基づいて、以下詳細に説明する。
【0009】
流速の計測
音響ドップラー流速計 ADCP(acoustic Doppler current profiler)は、水中の懸濁物からの反射波の周波数が、移動速度に応じて発射音波の周波数とのずれが生ずる(ドップラー効果)原理を応用した流速計で、連続した多層の流況が観測できる。
【0010】
ADCPの測定原理を図1に示す。
【0011】
図1で水中の懸濁物からの反射波が、ドップラーシフトに示すように、移動速度に応じて周波数が変化する。流れの上流側の第1Beamと流れの下流側の第2 Beamとを、ADCPのそれぞれのTransducer (送受波器)により流れのそれぞれのBeam方向の流速 (Beam velocity component)を検知して、流速を測定する。
Beamの各観測層ごとの流速も観測できる。
【0012】
図2は、平面図で、ADCPの流れに対する上流側の第1Beamと、流れの下流側の第2Beamとの関係を示す。
【0013】
図3は、垂直方向で、ADCPは水平方向に向けて配置し、水位変動に合わせて上下に可動に設けられ、各水平方向の流速分布の観測ができる。
【0014】
また、河岸にADCPを水平方向に配置すると、洪水時でも機器流出のリスクを回避した流速観測が可能となる。
【0015】
さらに、ADCPを水平方向に配置し、且つ、垂直方向に可動可能とすることで、複数測線の計測が可能となり、水位変動にも対応した、より詳細な断面流速分布の観測が可能となる。
【0016】
水位、河床形状の計測による断面積の算出
音響測深器1より超音波ビームを発射して河床形状を計測し、河床形状と水位のデータから断面積を求める。
【0017】
この音響測深器1による河床形状の計測には、図4(A)に示す、音響測深器1を可動して計測する可動タイプと、図4(B)に示す、音響測深器1を固定して計測する固定タイプとがある。
【0018】
可動タイプでは河岸に音響測深器1を斜下方に向けて配置し、等速で音響測深器1を移動させ、音響測深器1から発射する超音波ビームにより河床形状を計測する。
【0019】
固定タイプでは、河岸に音響測深器1を斜下方に向けて固定して配置し、音響測深器1から発射する超音波ビームにより河床形状を計測する。
【0020】
また、対象となる断面の形状に応じて、図4(B)に示すように、両岸に同様のタイプを設置することがある。
【0021】
洪水時には河床変動を計測することにより、断面積が変化しても、上記の計測により、精度の良い流量観測が可能となる。
【0022】
流量の算出
断面の面積と流速分布から、流量を算出する。
【0023】
図5(A)に示すように、ADCPを水位変動に合わせて上下に可動し、各高さでの横断方向流速布を計測する。そこで、各分割断面の面積Sixと、Sixでの流速Vixとの積Six×Vixが、各分割断面での流量となる。この際、河床形状に応じた断面積が決定される。図5(B)には各分割断面Sixと流速Vixが示されている。
【0024】
濁度の計測
ADCPによって得られた反射波の強さ(反射強度)は、濁りの強さと相関がある。但し、距離減衰の問題や濁度との数値的な相関関係が現在までは明確にされておらず、濁度計測としての実績はほとんどない。
【0025】
図6(A)に示すように、ADCPを水位変動に合わせて上下に可動させ、各高さでの横断方向の濁度分布を測定する。濁度は反射波の強さ(Echo intensity) より求める。
【0026】
Echo intensityは、図6(B)に示すように、超音波出力、距離減衰、ビームの広がりによる減衰、吸収による減衰(水温、伝導度)、濁りの特性に関係する。
【0027】
図7にさらに詳しく示す。
【0028】
ADCPが発射した超音波は、懸濁物質により反射され、反射波は、距離減衰、ビームの広がりによる減衰、吸収による減衰(水温、伝導度)があって、ADCPにより Echo intensity として計測される。懸濁物質による後方散乱(Back scatter)があり、懸濁物質の量に応じた強さで、超音波が反射される。そのEcho intensityのEI(実測値)は、次の関係がある。
【0029】
EI=SL+SV(濁りの強さ)+定数−20 log(R)−2αR
ここで、EI= Echo intensity (実測値)
SL=超音波出力
SV=後方散乱強度(濁りの強さ)
α=吸収係数(dB/meter)
R=トランデューサーからの距離(meter)
上記の関係式から濁度を求め、ADCPによる濁度の計測を行うことで濁水のモニタリングが可能となる。
【0030】
テレメータシステム
流向、流速、流量、濁度、水位、河床位の測定項目を、ADCP、水位計などで計測し、図8に示すように、得られたデータを、中継ホスト局、モニタ局などのテレメータシステムによってデータ転送することで、リアルタイム計測が可能となり、洪水時でも安全で高精度な水理情報の計測が可能となる。 以上の事項を、図9に示すように、システム構成を行い、ADCPによる断面流速分布の計測、水位、河床形状による、断面積の算出、反射強度の数値解析による濁度の計測を、テレメータでデータ転送し、洪水時でも安全で高精度な水理情報の観測を可能とする。
【0031】
また、上記と同様の機能を有する水理情報観測機器を自動運航船に搭載すると、大河川での水理情報の取得が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明は、音響ドップラー流速計を用いて水の濁度を求めるようにした連続観測装置であるが、音響ドップラー流速計を用いて化学装置内の流体の濁度の連続観測装置としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】音響ドップラー流速計(ADCP)の測定原理を示す図である。
【図2】音響ドップラー流速計(ADCP)の測定原理を示す平面図である。
【図3】音響ドップラー流速計(ADCP)の測定原理を示す正面図である。
【図4】(A)水位、河床形状を計測する音響測深器で、可動して断面積を計測する可動タイプの正面図である。(B)水位、河床形状を計測する音響測深器で、固定して断面積を計測する固定タイプの正面図である。
【図5】(A)ADCPを水位変動に合わせて上下に可動し、各高さでの断面流速分布を計測する正面図である。(B)各分割断面Sixと流速Vixが示されている正面図である。
【図6】(A)ADCPにより濁度を測定する正面図である。(B)Echo intensityを説明する図である。
【図7】Echo intensityから濁度を求める関係を示す図である。
【図8】水理情報のテレメータシステムを説明する図である。
【図9】水理情報連続観測装置のシステム構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
1…音響測深器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響ドップラー流速計から発射した超音波の水中の懸濁物により反射し、距離減衰、ビームの広がりによる減衰、吸収により減衰した反射波の強度から水の濁度を求めるようにし、前記観測データをテレメータでデータ転送するようにした水の濁度の連続観測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−261873(P2008−261873A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144174(P2008−144174)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願平10−283708の分割
【原出願日】平成10年10月6日(1998.10.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(592102537)株式会社ニュージエック (6)
【Fターム(参考)】