説明

水中油型乳化物の製造法

【課題】消費者の風味への要求が高度化する中にあって、水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を出来る限り防止し、更に水中油型乳化物を食した際に残る渋味を改善する製造法を提供する事にある。
【解決手段】油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、エージング工程において水中油型乳化物を窒素ガス陽圧状態に保つことを特徴とする水中油型乳化物の製造法であり、予備乳化工程がヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化である、水中油型乳化物の製造法であり、水中油型乳化物が起泡性である、水中油型乳化物の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化物の製造法に関し、更に詳しくは水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を出来る限り防止する製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品に対する、品質(物性、生理活性、風味)、安全、安心への要求が高度になって来ている。水中油型乳化物においても例外ではなく、特に洋菓子、デザート類等の嗜好品に使用されているだけに風味への要求は顕著である。
具体的には、水中油型乳化物はプリン、ゼリー等のデザート類の上に添加したり、プリン、ババロア、ゼリー等の練り込み用に使用されたり、更に水中油型乳化物がケーキ等のデコレーションやサンド等に用いられる起泡性水中油型乳化物(ホイップクリーム)として使用されたりしている。
水中油型乳化物には生クリーム、コンパウンドクリーム、植物性クリーム、生乳、濃縮乳、無脂乳固形分含有水中油型乳化物等がある。
これら水中油型乳化物は主として、油脂、乳蛋白質、乳化剤及び水を含む原料を混合して、予備乳化工程、均質化工程、加熱殺菌工程、冷却工程、エージング工程を経て製造されている。
消費者の風味への要求が高度化する中にあって、水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質、糖質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を出来る限り防止する製造方法が望まれている。
特許文献1では牛乳等の溶存酸素を窒素ガスと置換して殺菌する方法において、牛乳等に窒素ガスを直接混合分散する手段と、窒素ガスを混入していない牛乳等を、窒素ガス雰囲気下の窒素ガス置換タンク内に貯留された窒素ガスを混合分散した牛乳等に、上方からノズルで噴霧する手段とを併用して、溶存酸素と窒素ガスとの置換により牛乳等の溶存酸素量を低下させた後、殺菌することを特徴とした牛乳等の溶存酸素と窒素ガスと置換して殺菌する方法が提案されている。これは牛乳等を殺菌するにあたって、殺菌臭の発生を低下させて風味を改善することを目的としたものであって本願発明とは課題が異なる。
又、別途置換処理が必要とするものであって、製造工程が煩雑になるという問題も有している。
特許文献2では原料乳を加熱殺菌処理する工程と、加熱殺菌された牛乳類を、不活性ガスで置換された無菌タンク内に貯留する工程と、前記無菌タンク内に貯留された牛乳類を包装容器に充填する工程を有することを特徴とする牛乳類の製造方法が提案されているが、対象が牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料などであって比較的粘度の低いものであり、また、風味向上効果も満足できるものではなかった。
特許文献3ではクリーム類に、不活性ガスを通気して液中溶存酸素を低下せしめたのちに、脱泡処理を行い、ついで加熱殺菌することを特徴とする、風味が良く、流通・保存時の乳化安定性にすぐれたクリーム類の製造法が提案されているが、別途脱泡処理工程を必要とするものであって、製造工程が煩雑であるという問題を有している。
本出願人が先に出願した特許文献4では、原料混合物の溶存酸素量を、予備乳化工程途中以前に低下せしめ、乳化物を得た後に加熱殺菌及び冷却を行う水中油型乳化物の製造方法が提案されているが、水中油型乳化物を食した際に残る渋味を改善することにおいては、効果は不十分であり、満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−078665号公報
【特許文献2】特開2003−144045号公報
【特許文献3】特開2004−201601号公報
【特許文献4】特開2007−028901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、消費者の風味への要求が高度化する中にあって、水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を出来る限り防止し、更に水中油型乳化物を食した際に残る渋味を改善する製造法を提供する事にある。
そして、水中油型乳化物の製造法において、外部からの菌汚染を防止することが出来る製造法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、水中油型乳化物の製造において、水中油型乳化物の原料である、油脂、乳蛋白質等が長時間、空気に晒されることによって起こるこれらの原料成分の酸化が風味劣化の要因であり、水中油型乳化物中の溶存酸素量を低下させることが有効であるという知見に基づいて本発明を完成するに至った。
更に、水中油型乳化物を食した際に残る渋味を改善する方法として、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む水中油型乳化物の製造法において、エージング工程で水中油型乳化物を窒素ガス陽圧状態に保つことが有効であるという知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち本発明の第1は、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、エージング工程において水中油型乳化物を窒素ガス陽圧状態に保つことを特徴とする水中油型乳化物の製造法である。第2は、窒素ガス陽圧状態が0.01〜0.5MPaの範囲である、第1に記載の水中油型乳化物の製造法である。第3は、予備乳化工程がヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化である、第1に記載の水中油型乳化物の製造法である。第4は、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む未乳化乃至乳化途中の原料混合物の溶存酸素量を、予備乳化工程途中以前に3.5ppm以下に低下せしめる、第3に記載の水中油型乳化物の製造法である。第5は、加熱殺菌工程での水中油型乳化物の品温が90〜150℃の範囲で加熱殺菌される、第1に記載の水中油型乳化物の製造法である。第6は、冷却工程が間接冷却及び/又は蒸発冷却である、第1に記載の水中油型乳化物の製造法である。第7は、第1〜第6何れか1に記載の水中油型乳化物が起泡性である、水中油型乳化物の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
消費者の風味への要求が高度化する中にあって、水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を出来る限り防止し、更に水中油型乳化物を食した際に残る渋味を改善する製造法を提供する事が可能になった。
そして、水中油型乳化物の製造法において、外部からの菌汚染を防止することが出来る製造法を提供する事が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】水中油型乳化物の製造工程の概略を示す図
【図2】実施例1、実施例2、比較例1及び参考例1の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした図
【図3】実施例3及び比較例2の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした図
【図4】実施例4、実施例5及び比較例3の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水中油型乳化物の製造法としては、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、エージング工程において水中油型乳化物を窒素ガス陽圧状態に保つことが必要である。
陽圧状態に保てない場合は水中油型乳化物を食した際に残る渋味の改善が難しくなる。
好ましくは窒素ガス陽圧状態が0.01〜0.5MPaの範囲であり、より好ましくは0.02〜0.4MPaの範囲であり、さらに好ましくは0.05〜0.3MPaの範囲である。
窒素ガス陽圧状態を示す数値はゲージ圧である。
窒素ガス陽圧が低すぎると外部からの菌等の汚染を受け易くなる。窒素ガス陽圧が高すぎると加圧下でも耐ええる装置が必要となりコストが高くなる。
【0009】
エージング工程において水中油型乳化物を窒素ガス陽圧状態に保つ方法としては、窒素ガスを窒素ガス発生装置又は窒素ガスボンベより、配管を経由して、除菌フィルター、自動弁を通りエージングタンクへ入れる。エージングタンクには、自動弁と連動している圧力計があり、常時窒素ガスで陽圧状態になるように制御されている。
無菌性を保つために、タンク内を空にした状態で蒸気を満たし0.3MPa〜0.5MPaの圧力下で装置殺菌後、窒素ガスを導入しながら陽圧状態で冷却してタンク内の凝縮水を排出した後、水中油型乳化物を入れる。
【0010】
エージング工程では、殺菌処理された充填前の水中油型乳化物を安定化させる工程であって、粘度、ホイップタイム、オーバーラン等の物性を安定化させる。
エージングタンク内で実施することが出来る。エージングタンク内では撹拌機が備えられており、撹拌機としてはタンクの形状、大きさ、水中油型乳化物の粘度等を考慮して選択されるが、プロペラ型、櫂型何れの撹拌羽根も使用可能である。
回転数についても適宜調整することができる。
タンク内の温度制御は二重ジャケット式、スプレー式、圧力型ジャケット式の何れの方法でも良い。
この際のタンク内の媒体としては水が使用されており、その温度が0℃以上であるのが好ましい。
【0011】
本発明の水中油型乳化物の製造法としては、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、予備乳化工程がヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化であるのが好ましい。
具体的には、予備乳化タンク上部を窒素ガスで満たし、タンク上部の空隙に注入された窒素ガスは空隙の酸素を置換し、次に高速攪拌により渦を巻き混合物中に分散されて、やがて混合物中の溶存酸素を低下させることができる。
予備乳化工程において、55℃超過後30分以内に原料混合物の溶存酸素量を3.5ppm以下で行うのが好ましい。溶存酸素量は混合物の温度60℃で通常5ppm程度であるが、上記の方法により、混合物の溶存酸素量を温度60℃で3.5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下、最も好ましくは2ppm以下に低下させるのが好ましい。
【0012】
本発明の予備乳化工程では、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む未乳化乃至乳化途中の原料混合物の溶存酸素量を、予備乳化工程途中以前に3.5ppm以下に低下させるのであるが、本発明において予備乳化工程とは、油脂、乳蛋白質及び水を含む原料混合物が放置しても直ぐに分離しない程度攪拌乃至均一化を行う工程であって、「予備乳化工程途中以前」とは、上記攪拌乃至均一化の終了以前である。本発明の水中油型乳化物の製造工程は、主にこの予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程を経て水中油型乳化物を得ることが出来、脱泡工程を必要としない。
予備乳化の温度が55℃以上が好ましく、より好ましくは55℃〜80℃の範囲であり、更に好ましくは60℃〜75℃の範囲である。
【0013】
本発明の水中油型乳化物の製造法としては、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、加熱殺菌工程での水中油型乳化物の品温が90〜150℃の範囲で加熱殺菌されるのが好ましく、より好ましくは110℃〜150℃の範囲であり、更に好ましくは120℃〜150℃の範囲である。
加熱殺菌方式には間接加熱方式と直接加熱方式の主に2種類があって、間接加熱処理する装置としてはAPVプレート式UHT処理装置(APV株式会社製)、CP-UHT滅菌装置(クリマティー・パッケージ株式会社製)、ストルク・チューブラー型滅菌装置(ストルク株式会社製)、コンサーム掻取式UHT滅菌装置(テトラパック・アルファラベル株式会社製)等が例示できるが、特にこれらにこだわるものではない。また、直接加熱式滅菌装置としては、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)、ユーペリゼーション滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、VTIS滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、ラギアーUHT滅菌装置(ラギアー株式会社製)、パラリゼーター(パッシュ・アンド・シルケーボーグ株式会社製)等のUHT滅菌装置が例示でき、これらの何れの装置を使用してもよい。
【0014】
本発明においては、直接加熱方式の直接蒸気吹き込み方式が好ましい。直接加熱で蒸気を吹き込む方が加熱時間が短く、水中油型乳化物中の油脂、乳蛋白質等の成分の劣化が抑えられるので好ましい。
逆に加熱時間が長くなると、熱変性がおこり易くなり、風味劣化する可能性が高くなり、風味劣化を防ぎ殺菌効果を得るためには殺菌温度までの昇温時間が短いのが好ましい。
【0015】
本発明の水中油型乳化物の製造法としては、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、冷却工程が間接冷却及び/又は蒸発冷却であるのが好ましい。
加熱殺菌後の冷却では、間接冷却方式と蒸発冷却方式の主に2種類があって、間接冷却方式としては、APVプレート式UHT処理装置(APV株式会社製)、CP-UHT滅菌装置(クリマティー・パッケージ株式会社製)、ストルク・チューブラー型滅菌装置(ストルク株式会社製)、コンサーム掻取式UHT滅菌装置(テトラパック・アルファラベル株式会社製)等が例示できる。
そして、蒸発冷却方式としては、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)、ユーペリゼーション滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、VTIS滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、ラギアーUHT滅菌装置(ラギアー株式会社製)、パラリゼーター(パッシュ・アンド・シルケーボーグ株式会社製)等のUHT滅菌装置等が例示できる。
【0016】
本発明においては、冷却工程が間接冷却及び/又は蒸発冷却であり、何れの方式も採用できるが、間接冷却が好ましい。
蒸発冷却では、水とともに水中油型乳化物中の香気成分などの風味成分も飛散し風味が薄くなる可能性が高い。
間接冷却ではこの危険性がなくなるので好ましい。
本発明においては、加熱殺菌工程が直接加熱の蒸気吹き込む方式であり、冷却工程が間接冷却であり、これらの殺菌・冷却工程を組合わせることによって、水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質、糖質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を防止することが可能である。
【0017】
本発明の水中油型乳化物の製造法としては、油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、水中油型乳化物の油脂分としては、10〜50重量%であり、好ましくは15〜48重量%であり、更に好ましくは20〜48重量%である。油脂分が多すぎると水中油型乳化物又は起泡性水中油型乳化物がボテ(可塑化状態)易くなり、少なすぎると、液状の水中油型乳化物の場合は油脂分に由来する濃厚な口あたり、風味が得にくくなり、起泡性水中油型乳化物の場合は起泡性、保形性が悪化する傾向になる。
水中油型乳化物に使用する油脂としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂(融点15〜40℃程度のもの)が例示できる。
【0018】
本発明の水中油型乳化物に使用する乳蛋白質としては、生乳、牛乳、脱脂乳、生クリーム、濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエー蛋白、酸カゼイン、レンネットカゼイン、若しくはカゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム等のカゼイン類、またはトータルミルクプロテイン乳由来の蛋白質が例示できる。
無脂乳固形分由来の乳蛋白質が使用のし易さと風味の点で好ましい。
無脂乳固形分由来の乳蛋白質としては生乳、牛乳、脱脂乳、生クリーム、濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエー蛋白が例示できる。 乳蛋白質の使用量は0.3〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜8重量%であり、更に好ましくは0.3〜5重量%である。乳蛋白質が少なすぎると水中油型乳化物の乳化安定性が悪くなる。乳蛋白質が多すぎると殺菌工程で風味劣化が起こりやすくなる。
【0019】
本発明の水中油型乳化物に使用する糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、転化糖、トレハロース、糖アルコール、コーンシロップ、水あめ、デキストリンが例示できる。糖アルコールとしてはエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の単糖アルコール、イソマルチトール、マルチトール、ラクチトール等の2糖アルコール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の3糖アルコール、オリゴ糖アルコール等の4糖以上の糖アルコール、還元澱粉糖化物、還元澱粉分解物が例示できる。
そして、乳蛋白質と共存している乳糖は本発明の糖類に含まれる。
【0020】
本発明の水中油型乳化物に使用する乳化剤としては、水中油型乳化物を調製する際に通常使用する乳化剤を適宜選択使用することが出来る。例えば、レシチン、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤が例示でき、これらの乳化剤の中から1種又は2種以上を選択して適宜使用することが出来る。
【0021】
本発明の水中油型乳化物については、各種増粘多糖類を使用するのが好ましく、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、グァーガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、カラギーナン、タマリンド種子ガム及びタラガムから選択される1種又は2種以上の増粘多糖類が好ましく、更にジェランガム、キサンタンガム、プルラン、グァーガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、カラギーナン及びタマリンド種子ガムから選択される1種又は2種以上の増粘多糖類が好ましい。
【0022】
本発明の水中油型乳化物については、各種塩類を使用するのが好ましく、ヘキサメタリン酸塩、第2リン酸塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸塩、重曹等を1種又は2種以上混合使用することが望ましい。
その他所望により香料、着色剤、保存料等を使用することができる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。また、結果については以下の方法で評価した。
【0024】
A.水中油型乳化物の評価方法
プリンやコーヒーゼリー、果汁ゼリー、ムース等のデザート類の上に添加して使用する水中油型乳化物(クリーム)を想定して水中油型乳化物を直接食して美味しさを評価した。風味は主に乳味と渋みの2項目を5段階で評価した。
5段階評価 5;乳味非常に良好 4;乳味良好 3;通常の風味 2;やや悪い風味 1;悪い風味
上記乳味評価の5段階は、本出願人が先に出願した特許文献4に記載された評価方法であり、本発明では、水中油型乳化物を食した際に残る渋味にも着目し評価した。
5段階評価 5;渋み無し 4;渋み少し残っている 3;渋み残っている 2;渋みがやや多く残っている 1;渋みが沢山残っている
乳味の評価と渋みの評価を合算することで、10点満点の評価系とした。
【0025】
B.水中油型乳化物を起泡させた場合の評価方法
(1)ホイップタイム:水中油型乳化物1Kgにグラニュー糖80g加えてホバートミキサー(HOBART CORPORATION製 MODEL N−5)3速(300rpm)にてホイップし、最適起泡状態に達するまでの時間
(2)オーバーラン:[(一定容積の水中油型乳化物重量)ー(一定容積の起泡後の起泡物重量)]÷(一定容積の起泡後の起泡物重量)×100
(3)ホイップした水中油型乳化物の美味しさを評価した。風味は主に乳味と渋みの2項目を5段階で評価した。
5段階評価 5;乳味非常に良好 4;乳味良好 3;通常の風味 2;やや悪い風味 1;悪い風味
上記乳味評価の5段階は、本出願人が先に出願した特許文献4に記載された評価方法であり、本発明では、起泡した水中油型乳化物を食した際に残る渋味にも着目し評価した。
5段階評価 5;渋み無し 4;渋み少し残っている 3;渋み残っている 2;渋みがやや多く残っている 1;渋みが沢山残っている
乳味の評価と渋みの評価を合算することで、10点満点の評価系とした。
そして、各実施例、比較例、参考例について乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージとして図化した。
起泡した水中油型乳化物を食した際にまず乳味が感じられ10秒ほどで乳味が消えるが乳味の感じられる途中から渋みが感じられ食した際からすると30秒ほどで渋みが消える。
【0026】
実施例1
「図1」に示す製造工程(予備乳化タンク、加熱殺菌装置、均質化装置、冷却装置、エージングタンク)の予備乳化タンクaは窒素ガス雰囲気下で行い、実生産のエージングタンクeを模した5L加圧容器を窒素ガス陽圧状態にして以下の要領で実施した。
仕込み量は40Kgで行った。
パーム核油21.0部、パーム硬化油6部、パーム中融点油6部にレシチン0.25部を添加混合溶解し油相とした。
これとは別に、水62.21部に、脱脂粉乳(乳蛋白質:34.0重量%)4.0部、乳化剤0.16部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.2部、重曹0.02部、増粘多糖類(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.06部、クリーム香料0.1部を溶解・分散し水相を調製した。上記油相と水相を60℃で30分間窒素ガスを満たした予備乳化タンクで高速攪拌(1000から1800rpm)し予備乳化を行った。
予備乳化に際しては、予備乳化タンク上部を窒素ガスで満たし、混合物中の溶存酸素量を低下せしめた状態で予備乳化を行った。タンク上部の空隙の酸素を置換し、高速攪拌により、渦を巻き混合物中に分散されやがて、混合物中の溶存酸素量を低下させた。
予備乳化後に溶存酸素量を測定すると共に攪拌を低速にし、タンク下部より水中油型乳化物を抜き出した。攪拌は、液面が下がって泡立つ手前で停止する。その後プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)(直接蒸気吹き込み方式)によって、144℃まで加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて144℃で4秒間保持し、蒸発冷却し78℃まで冷却した。その後、4MPa の均質化圧力で均質化して、再びプレート冷却装置にて7℃に冷却した。冷却した水中油型乳化物を別途分取し溶存酸素量を測定した。得られた水中油型乳化物は冷却後窒素ガス置換された、5L加圧容器(内径227mmの直胴部の高さ105mm加圧タンクで上下が皿型鏡板になっているもの)に張込み、中に長さ70mm、太さ19mmのラグビーボール状攪拌子を入れて0.1MPaの窒素ガス陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間撹拌し、その後撹拌を停止し22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。この際にも水中油型乳化物の溶存酸素量を測定した。
この5L加圧容器は実生産のエージングタンクを想定したものである。
各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)を表1に纏めた。測定は、ポータブルDOメーター(東亜ディーケイケイ株式会社製 DO−24P、)の電極を浸漬して行った。 水中油型乳化物の風味評価を行った。又、起泡性水中油型乳化物の評価として、水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記の方法に従いオーバーラン、風味の評価を行った。
水中油型乳化物の風味評価、起泡性水中油型乳化物のホイップタイム、オーバーラン、風味の評価は表1に纏めた。
そして、実施例1の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図2に示した。
【0027】
実施例2
予備乳化タンクaには窒素ガスを満たさないで空気雰囲気下で行なった以外は実施例1と同配合で同様な処理を行ない水中油型乳化物を得た。
評価は実施例1と同様に行った。
各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)を表1に纏めた。風味も同様な評価をおこない、結果を表1に纏めた。
そして、実施例2の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図2に示した。
【0028】
比較例1
予備乳化タンクaには窒素ガスを満たさないで空気雰囲気で実施例1と同配合で殺菌冷却まで同様の操作後、冷却後冷蔵庫内で空気で満たされた、5L加圧容器に水中油型乳化物を張込み、攪拌子を入れて0.1MPaの空気陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間攪拌し、その後攪拌停止状態で22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)を測定し表1に纏めた。風味も同様な評価をおこない、結果を表1に纏めた。
そして、比較例1の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図2に示した。
【0029】
参考例1
本出願人が先に出願した特許文献4の実施例2の追試を以下の要領で実施した。
予備乳化タンクaには窒素ガスを満たし実施例1と同配合で殺菌冷却まで同様の操作後、冷却後冷蔵庫内で空気で満たされた、5L加圧容器に水中油型乳化物を張込み、攪拌子を入れて0.1MPaの空気陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間攪拌し、その後攪拌停止状態で22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)を測定し表1に纏めた。風味も同様な評価をおこない結果を表1に纏めた。
そして、参考例1の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図2に示した。
【0030】
実施例1、実施例2、比較例1及び参考例1の各工程での主な液の溶存酸素量(mg/L)並びに実施例1、実施例2、比較例1及び参考例1の水中油型乳化物の風味評価、起泡性水中油型乳化物の評価
【表1】

【0031】
実施例3
予備乳化タンクaは、窒素ガス雰囲気下で行い、実生産のエージングタンクeを想定した5L加圧容器を窒素ガス陽圧状態にして実施した。そして、均質前の冷却は、実施例1で行った蒸発冷却に代えてプレートで間接冷却を行った。詳しくは以下の要領で実施した。
仕込み量は40Kgで行った。
実施例3は、間接冷却であり、実施例1のような蒸発冷却での減水が無いため78℃から144℃の昇温時に吹き込まれる蒸気が水中油型乳化物に残るため配合量は、吹込み蒸気を差し引いた比率で行った。パーム核油24.14部、パーム核硬化油6.9部、パーム中融点油6.9部にレシチン0.29部を添加混合溶解し油相とし、これとは別に、水56.56部に、脱脂粉乳(乳蛋白質:34.0重量%)4.6部、乳化剤0.18部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.23部、重曹0.02部、増粘多糖類(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.07部、クリーム香料0.11部を溶解し水相を調製した。上記油相と水相を60℃で30分間、窒素ガスを通気した予備乳化タンクで高速攪拌(1000から1800rpm)し予備乳化を行った。
予備乳化に際しては、予備乳化タンク上部を窒素ガスで満たし、混合物中の溶存酸素量を低下せしめた状態で予備乳化を行った。タンク上部の空隙の酸素を置換し、高速攪拌により、渦を巻き混合物中に分散されやがて、混合物中の溶存酸素量を低下させた。
予備乳化後に溶存酸素量を測定すると共に攪拌を低速にし、タンク下部より水中油型乳化物を抜き出した。攪拌は、液面が下がって泡立つ手前で停止する。その後プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃まで蒸気を吹き込み加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて144℃で4秒間保持し、プレート冷却機を用いて78℃まで冷却した(蒸気吹込みによる加熱後プレート冷却で間接冷却する方法)。その後、4MPa の均質化圧力で均質化して、再びプレート冷却装置にて7℃に冷却した。冷却後窒素ガス置換された、5L加圧容器(内径227mmの直胴部の高さ105mm加圧タンクで上下が皿型鏡板になっているもの)に水中油型乳化物を張込み、中に長さ70mm、太さ19mmのラグビーボール状攪拌子を入れて0.1MPaの窒素ガス陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間撹拌し、その後撹拌を停止し22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
この5L加圧容器は実生産のエージングタンクを想定したものである。
各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)の測定は実施例1に準じて行い表2に纏めた。風味も同様な評価をおこない、結果を表2に纏めた。
そして、実施例3の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図3に示した。
【0032】
比較例2
予備乳化タンクaには窒素ガスを満たさないで空気雰囲気で実施例3と同配合で殺菌冷却まで同様の操作後、冷却後冷蔵庫内で空気で満たされた、5L加圧容器に水中油型乳化物を張込み、攪拌子を入れて0.1MPaの空気陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間攪拌し、その後攪拌停止状態で22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)の測定は実施例1に準じて行い表2に纏めた。風味も同様な評価をおこない、結果を表2に纏めた。
そして、比較例2の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図3に示した。
【0033】
実施例3及び比較例2の各工程での主な液の溶存酸素量(mg/L)並びに実施例3及び比較例2の水中油型乳化物の風味評価、起泡性水中油型乳化物の評価
【表2】

【0034】
実施例4
基本的には実施例1の要領で実施、評価を行った。
均質前の冷却は、実施例1の蒸発冷却ではなく実施例3のようなプレートで間接冷却を行った。この実施例4では、実施例1に比較して油脂分の高い水中油型乳化物でも同じ傾向であることが確認できた。詳しくは以下の要領で実施した。
仕込み量は40Kgで行った。
実施例4は、間接冷却であり蒸発冷却での減水が無いため78℃から144℃に昇温時に吹き込まれる蒸気が水中油型乳化物に残るため配合量は、吹込み蒸気を差し引いた比率で行う。大豆パーム硬化油34.48部、ヤシ油9.2部、バターオイル8.05部にレシチン0.34部を添加混合溶解し油相とした。
これとは別に、水27.62部に、脱脂濃縮乳(乳蛋白質:11.7重量%)19.77部、乳化剤0.16部、クエン酸ナトリウム0.11部、重曹0.02部、クリーム香料0.25部を溶解し水相を調製した。上記油相と水相を60℃で30分間窒素ガス通気した予備乳化タンクで高速攪拌(1000から1800rpm)し予備乳化を行った。その後プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃まで加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて144℃で4秒間保持し、プレート冷却機を用いて冷媒(20℃水)の流量を調整し78℃まで冷却した。その後、4MPa の均質化圧力で均質化して、再びプレート冷却装置にて7℃に冷却した。冷却後窒素ガス置換された、5L加圧容器(内径227mmの直胴部の高さ105mm加圧タンクで上下が皿型鏡板になっているもの)に水中油型乳化物を張込み、中に長さ70mm、太さ19mmのラグビーボール状攪拌子を入れて0.1MPaの窒素ガス陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間撹拌し、その後撹拌を停止し22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
この5L加圧容器は実生産のエージングタンクを想定したものである。
工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)を測定し表3に纏めた。 水中油型乳化物の風味評価、起泡性水中油型乳化物のホイップタイム、オーバーラン、風味の評価は表3に纏めた。
そして、実施例4の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図4に示した。
【0035】
実施例5
基本的には実施例1の要領で実施、評価を行った。
均質前の冷却は、実施例1と同じ蒸発冷却で行った。詳しくは以下の要領で実施した。 仕込み量は40Kgで行った。
大豆パーム硬化油30.00部、ヤシ油8.0部、バターオイル7.00部にレシチン0.30部を添加混合溶解し油相とした。
これとは別に、水37.03部に、脱脂濃縮乳(乳蛋白質:11.7重量%)17.20部、乳化剤0.13部、クエン酸ナトリウム0.10部、重曹0.02部、クリーム香料0.22部を溶解し水相を調製した。上記油相と水相を60℃で30分間窒素ガス通気した予備乳化タンクで高速攪拌(1000から1800rpm)し予備乳化を行った。
その後プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃まで加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて144℃で4秒間保持し、蒸発冷却し78℃まで冷却した。その後、4MPa の均質化圧力で均質化して、再びプレート冷却装置にて7℃に冷却した。冷却後冷蔵庫内で窒素で満たされた、5L加圧容器に水中油型乳化物を張込み、ラグビーボール状攪拌子を入れて0.1MPaの窒素ガス陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間撹拌し、その後撹拌を停止し22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
各工程の混合物の溶存酸素量(mg/l)を測定し表3に纏めた。風味も同様な評価をおこなった。結果を表3に纏めた。
そして、実施例5の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図4に示した。
【0036】
比較例3
配合は、実施例5と同じで油相と水相を60℃で30分間空気雰囲気下の予備乳化タンクで高速攪拌(1000から1800rpm)し予備乳化を行った。その後プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃まで加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて144℃で4秒間保持し、蒸発冷却機を用いて78℃まで冷却した。その後、4MPa の均質化圧力で均質化して、プレート冷却装置にて7℃に冷却した。冷却後冷蔵庫内で空気で満たされた、5L加圧容器に水中油型乳化物を張込み、攪拌子を入れて0.1MPaの空気陽圧状態でラグビーボール状攪拌子を使い2時間攪拌し、その後攪拌停止状態で22時間エージングし、水中油型乳化物を得た。各工程の混合物の溶存酸素量(mg/L)を測定し表3に纏めた。風味は同様な評価をおこなった。結果を表3に纏めた。
そして、比較例3の乳味及び渋みの口中での発現と広がりをイメージした表現を図4に示した。
【0037】
実施例4、実施例5及び比較例3の各工程での主な液の溶存酸素量(mg/L)並びに実施例4、実施例5及び比較例3の水中油型乳化物の風味評価、起泡性水中油型乳化物の評価
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、消費者の風味への要求が高度化する中にあって、水中油型乳化物の原料である油脂、乳蛋白質等の製造工程中での変質に起因する風味劣化を出来る限り防止し、更に水中油型乳化物を食した際に残る渋味を改善する製造法に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む水中油型乳化物であり、予備乳化工程、加熱殺菌工程、冷却工程及びエージング工程を含む当該乳化物の製造法であって、エージング工程において水中油型乳化物を窒素ガス陽圧状態に保つことを特徴とする水中油型乳化物の製造法。
【請求項2】
窒素ガス陽圧状態が0.01〜0.5MPaの範囲である、請求項1に記載の水中油型乳化物の製造法。
【請求項3】
予備乳化工程がヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化である、請求項1に記載の水中油型乳化物の製造法。
【請求項4】
油脂分10〜50重量%及び乳蛋白質を含む未乳化乃至乳化途中の原料混合物の溶存酸素量を、予備乳化工程途中以前に3.5ppm以下に低下せしめる、請求項3に記載の水中油型乳化物の製造法。
【請求項5】
加熱殺菌工程での水中油型乳化物の品温が90〜150℃の範囲で加熱殺菌される、請求項1に記載の水中油型乳化物の製造法。
【請求項6】
冷却工程が間接冷却及び/又は蒸発冷却である、請求項1に記載の水中油型乳化物の製造法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6何れか1項に記載の水中油型乳化物が起泡性である、水中油型乳化物の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−205997(P2011−205997A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78553(P2010−78553)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】