説明

水中浮遊物質の回収方法及び回収装置

【課題】各種の環境水や排水等から水中浮遊物質を迅速、簡便かつ高い回収率で回収し得る水中浮遊物質の回収方法を提供する。
【解決手段】一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした、2層以上の珪藻土充填層を有する濾過器を使用し、該濾過器の一方の最外層側から他方の最外層側へ通水する。好適には、2層以上の珪藻土充填層を、上層、下層の2層、若しくは、上層、中層、下層の3層とし、上層、下層の順、若しくは、上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填して、上層側から下層側へ通水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中浮遊物質の回収方法および回収装置に関し、詳しくは、水中浮遊物質を迅速、簡便かつ高い回収率で回収し得る水中浮遊物質の回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川水、海水、湖沼水等の日常生活に身近な水の安全性の評価が問われ、各方面でその測定・分析が行われている。そしてこれら水中に含まれる有害物質であるダイオキシン類およびコプラナPCBは、一般に環境中で希釈され、濃度が極めて低いことから、分析値の定量下限を確保するため、多量な試料水を採取する必要がある。
【0003】
特に、ダイオキシン類の場合は、非常に低濃度(0.01〜1pgTEQ(毒性当量)/リットル)であるため、有効な測定を行うためには、数十リットルにもおよぶ多量の試料水が必要となる。例えば、厚生省「水道原水及び浄水中のダイオキシン類調査マニュアル」(非特許文献1)には、水道原水では約200リットル、水道浄水では約2000リットルもの試料を抽出する必要があると記載されている。
【0004】
ところで、ダイオキシン類やコプラナPCB等の汚染物質は、水中において、水中の浮遊物質に吸着して存在するか或いは水に溶存した状態で存在する。従って、水中のダイオキシン類等の汚染物質を分析するためには、水中の浮遊物質を回収して浮遊物質に吸着した汚染物質を分析し、また、水に溶存した汚染物質を抽出して分析することが必要になる。例えば、「工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定法」(JISK0312:平成17年6月20日改正)(非特許文献2)では、水中浮遊物質の捕捉、回収を、孔径0.5μm程度のガラス繊維濾紙で行う方法が記載されており、特に、水中浮遊物質を含む試料の濾過に関しては、孔径が0.5μmより大きなプレフィルターを使用しても良いとなっている。
【0005】
このような公的基準に従い、例えば、アドバンテック東洋(株)が開発した「水中ダイオキシン類サンプリング装置 FS-90-KF型」では、ステンレス繊維濾紙(1μm)とガラス繊維濾紙2枚(孔径1.0μmおよび0.5μm)の3層構造が用いられている。しかし、本発明者等の検討では、かかる装置では、試料によっては、すぐに目詰まりを起こし、濾紙の交換を頻繁に行う必要があり、濾過効率、作業性等の点で満足できるものではなかった。
【0006】
一方、「濾過技術の基礎と濾過プロセスの設計」情報機構(非特許文献3)によれば、河川水等の濾過に用いられている急速濾過には、1)単層濾過(砂濾過)、2)複層濾過があると記載され、複層濾過の2層濾過では砂とアンスラサイトが、また3層濾過では砂、アンスラサイト、ガーネットが多く用いられ、複層濾過では粒子径の大きい濾剤を上層に、小さい濾剤を下層に利用することにより、河川水は大きい懸濁物から小さい懸濁物へと理想的な形で濾過されること、さらに、このような濾過を深層濾過といい、濾層内部が有効に利用されるため水中浮遊物質の捕捉量が大きく、濾過時間が長くなり、効率の良い濾過が可能である、と記載されている。
【0007】
特開2003−247919号公報(特許文献1)には、水中の汚染物質が吸着する懸濁物質(浮遊物質)の濾過手段として、上記の複層濾過を適用した水中汚染物質の採取装置が提案されている。当該文献によれば、かかる採取装置を使用することで、大量の環境水又は排水から微量の汚染物質を長時間捕集して、高濃度倍率で回収できると謳われている。しかし、当該装置では、汚染物質を高濃度倍率で回収するには、懸濁物質(浮遊物質)を含む被処理水の濾過手段への通水速度(流速)を低く設定することが必要であり、処理効率が低く、迅速処理を行えないという問題がある。
【非特許文献1】厚生省「水道原水及び浄水中のダイオキシン類調査マニュアル」
【非特許文献2】「工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定法」(JISK0312:平成17年6月20日改正)
【非特許文献3】「濾過技術の基礎と濾過プロセスの設計」情報機構
【特許文献1】特開2003−247919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、各種の環境水や排水等から水中浮遊物質を迅速、簡便かつ高い回収率で回収し得る水中浮遊物質の回収方法及び回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために、濾過助剤と処理効率について検討したところ、濾過助剤として珪藻土を使用して、2層以上の珪藻土充填層を形成し、一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした多層構成とすることで、従来では、達成困難であった、高い通水速度でも、目詰まりを起さずに、高い回収率で水中浮遊物質を回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした、2層以上の珪藻土充填層を有する濾過器を使用し、前記一方の最外層側から他方の最外層側へ通水することを特徴とする水中浮遊物質の回収方法。
(2)上層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用し、該濾過器の上層側から下層側へ通水することを特徴とする水中浮遊物質の回収方法。
(3)上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用し、該濾過器の上層側から下層側へ通水することを特徴とする水中浮遊物質の回収方法。
(4)上層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器と、該濾過器の上層側から下層側へと被処理水を連続通水させるポンプとを有する水中浮遊物質の回収装置。
(5)上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器と、該濾過器の上層側から下層側へと被処理水を連続通水させるポンプとを有する水中浮遊物質の回収装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中浮遊物質の回収方法によれば、高流速で通水しても、濾過器が目詰まりせず、水中浮遊物質を高い回収率で回収することができる。従って、例えば、水中浮遊物質の濃度が40mg/Lである水80Lを、60g以下の濾過助剤(珪藻土)の使用により(珪藻土による濾過面積を64cmにして)、2〜3時間で濾過処理して、水中浮遊物質を95%以上の回収率で回収するというような、従来では困難であった、多量の水からの迅速かつ高い回収率での水中浮遊物質の回収が可能となり、その結果、短時間に多量の試料水から分析に必要な汚染物質を採集することができる。
また、本発明の水中浮遊物質の回収装置によれば、多量の試料水(被処理水)を連続的に採取しながら濾過器に通水させて、水中浮遊物質を高い回収率で回収することができるので、所望の採取場所にて簡便かつ短時間に多量の試料水から分析に必要な汚染物質を採集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、望ましい実施の形態とともに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0013】
本発明の水中浮遊物質(以下、「SS」とも略称する。)の回収方法は、一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした、2層以上の珪藻土充填層を有する濾過器を使用し、試料水(被処理水)を該濾過器の一方の最外層側から他方の最外層側へ通水することが主たる特徴である。
【0014】
本発明で使用する「珪藻土」とは、所謂、「珪藻土粉末製品」と呼ばれるものである。該珪藻土粉末製品には、一般に、(1)採掘した天然の原鉱を粉砕、乾燥、分級した乾燥した製品(乾燥品:未焼成品)、(2)乾燥品を焼成し、解砕、分級した焼成品、(3)乾燥品に融剤を加えて焼成し、解砕、分級した融剤焼成品の3つのタイプがあるが、本発明では、いずれのタイプの珪藻土粉末製品も使用できるが、迅速及び高回収率という観点から、焼成品若しくは融剤焼成品が好ましく、融剤焼成品が特に好ましい。珪藻土粉末製品は上市されており、市販品を使用することができる。
また、本発明で使用する珪藻土は平均粒子径が20〜1000μmの範囲内であるのが好ましい。
【0015】
本発明において、2層以上の珪藻土充填層は、2層(上層と下層)、若しくは、3層(上層、中層、下層)とし、上層、下層の順、若しくは、上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用して、試料水(被処理水)を該濾過器の上層側から下層側へ通水するのが好ましい。
【0016】
珪藻土は、上層、下層の順、若しくは、上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きいものを適用して、充填すればよいが、目的の良好な通水性(例えば、60g以下の珪藻土の使用で、2L/minの流速で通水しても目詰まりを起さない通水性)の観点から、下層において、平均粒子径が1μm以上、好ましくは20μm以上の珪藻土を充填することが重要である。また、SSを高濃度(具体的にはSS濃度が10mg/L以上)で含む試料については、上層に平均粒子径が10μm以上、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上の珪藻土を充填することが有効であり、また、中層を用いる場合は、中層に平均粒子径が10μm以上(好ましくは平均粒子径60μm以上)、上層に平均粒子径が80μm以上の珪藻土を用いることが有効である。
なお、上層に充填する珪藻土の平均粒子径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは400μm以下、とりわけ好ましくは200μm以下である。
【0017】
上層に充填する珪藻土の具体例としては、例えば、ジーエルサイエンス社製のCelite560(平均粒子径:95.7μm)が挙げられ、中層に充填する珪藻土の具体例としては、例えば、昭和化学工業社製のラヂオライト♯3000(平均粒子径:74.9μm)が挙げられる。
【0018】
下層に充填する平均粒子径が最小の珪藻土は、高いSS回収率(95%以上)を達成するために重要であり、中層に充填する珪藻土よりも平均粒子径が小さい珪藻土であれば使用できるが、好ましくは平均粒子径が60μm未満、特に好ましくは50μm以下である。下層に充填する珪藻土の具体例としては、例えば、ジーエルサイエンス社製のCelite545(平均粒子径:46.5μm)が挙げられる。
【0019】
本発明において、上層、中層、下層における珪藻土の充填量比は、特に限定はされないが、より大きな流速および高い回収率を得るために、上層/中層/下層=5〜9/4〜0/1(重量比)であるのが好ましい。
【0020】
また、濾過器全体における珪藻土の充填量は、特に限定はされないが、浮遊物質の回収後、浮遊物質に吸着した化学物質をソックスレー抽出する際に1回の抽出操作で終了させることが可能な、一般的なソックスレー抽出に供せる最大量である60g以下であることが好ましい。
【0021】
なお、珪藻土充填層を4層以上にする場合、通常、上記3層(上層、中層、下層)を基本層として、その他の層をさらに追加する。
【0022】
本発明において、濾過器は、例えば、ステンレス製、ガラス製、樹脂製(ポリスチレン、ポリプロピレン)等からなる、例えば、円筒状の筒状部材の内部に、2層以上の珪藻土充填層を形成することで作製される。すなわち、筒状体の軸線方向の一方の端部側の開口が被処理水の流入口であり、他方の端部側の開口が被処理水の排出口であり、他方の端部側の開口(水排出口)を塞ぐように濾紙を装着し、該濾紙の上に、例えば、下層、上層もしくは下層、中層、上層の順に各層を構成する珪藻土を充填する。なお、後述の実施例1、2から分かるように、本発明においては、珪藻土の充填は乾式充填で行うのが好ましい。珪藻土を乾式充填で充填することで、湿式充填で珪藻土を充填した場合に比べて、濾過器の通水性がより一層向上し、また、通水の際の編流が生じにくく、SSの濾過(回収)がより安定に行われる。
【0023】
濾紙としては、定性濾紙やガラス繊維濾紙等が使用できるが、ダイオキシンフリーとする必要がある試験では、450℃で4時間加熱できるガラス繊維濾紙(保留粒子径1μm)の使用が適している。特に、好ましいものとして、アドバンテック東洋(株)製のGA-100が挙げられる。
【0024】
本発明の水中浮遊物質の回収方法は、試料水(被処理水)を濾過器の流入口へ導いて、濾過器内を一方の最外層(上層)側から他方の最外層(下層)側へ通水させ、濾過器の排出口から水を排出することで実施される。ポンプに真空系のものを用いるときは、濾過器を吸引ビンに接続し、吸引ビンとポンプをチューブにて接続する。一方、ポンプに圧送系のものを用いるときは排出口とポンプとの間を完全に水で満たしておく。これらを接続したのち、ポンプを駆動して連続通水させる装置(すなわち、本発明の水中浮遊物質の回収装置)を構成する。当該装置にて水中浮遊物質の回収を行うことで、多量の試料水(被処理水)を連続的に採取しながら濾過器に通水させて、水中浮遊物質を高い回収率で回収することができるので、所望の採取場所にて簡便かつ短時間に多量の試料水から分析に必要な汚染物質を採集することができる。
【0025】
本明細書でいう、珪藻土(濾過助剤)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法に基づき測定した。CeliteはX100 Microtrac Particle Size Analyzer (日機装取り扱い)により、ラヂオライトはPro-7000S(セイヒン企業社製)により測定した。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例と比較例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0027】
先ず、濾過助剤(珪藻土)による通水性改善効果を測るため以下の予備試験を行った。
【0028】
予備試験1(水道水を用いた濾過助剤の選出)
3種のブフナー形のガラス濾過器(PYREX(登録商標)、25G3(濾過面積:64cm2)、26G3(濾過面積:95cm2)、151G3(濾過面積:133cm2))に、表1に示した5種の濾過助剤(珪藻土)を0〜120gの範囲で充填した濾過器に、水道水を通水し、濾過助剤(珪藻土)の種類、充填量および濾過面積を変えたときに得られる流速を測定した。なお、充填時には濾過面積と同じ面積に切り抜いた濾紙(ADVANTEC、Filter Paper 101)の上に、蒸留水でスラリー状とした濾過助剤を真空ポンプ(日立、PX51N型)で引きながら添加後、上面を押さえ均一にし、助剤上部にも助剤下部と同様の濾紙を敷いた(湿式充填)。その結果、用いた3種の濾過面積において、一般的な大きさのソックスレーに供せる最大量である60g充填下で目標とする流速2L/minを維持できた濾過助剤(珪藻土)はCelite560とラヂオライト#3000であった(図1(A)〜(C))。よって、濾過助剤(珪藻土)には、Celite560とラヂオライト#3000を選出した。
【0029】
【表1】

【0030】
予備試験2(模擬試料水1Lを用いた濾過助剤の組合せと充填量の検討)
上記の予備試験1の結果を踏まえ、Celite560とラヂオライト#3000およびこれら両者より平均粒子径が小さいCelite545(平均粒子径:46.5μm)を予備試験1と同様の方法(湿式充填)により、粒子径の大きいものから上層に置いてガラス濾過器(PYREX(登録商標)、25G3)に充填し、各濾過助剤の組合せと充填量についての最適化の検討を行った。試料水は、都市域沿岸の海洋表層底質6.94gを水道水5Lに縣濁後、10分攪拌、20分超音波、10分攪拌し、SS濃度が478mg/Lの模擬試料水を調製した。
【0031】
水中浮遊物質の測定は、水中試験法第12節浮遊物質(SS)に従い、回収率は、処理後濾液中浮遊物質濃度を処理前濾液中浮遊物質濃度で除することにより算出した。測定結果として、濾過助剤無添加(濾紙のみ)の場合、濾紙上で水中浮遊物質が堆積し、流速は0.099L/minと非常に遅かったが、濾過助剤を添加することにより流速は徐々に改善され、特にCelite560を5g添加することにより流速が3倍以上向上した(表2)。また、水中浮遊物質の回収率については、濾過助剤を添加することによりいずれも95%を上回った。
【0032】
【表2】

【0033】
上記予備試験2の結果から、下層にCelite560を充填し、中層にラヂオライト#3000を充填し、上層にCelite545を充填した構成、すなわち、上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用することで、十分に高い通水性(流速)を示し、かつ、95%を超えるSS回収率を達成できることがわかったので、次に模擬実試料を用いて、濾過器の好ましい構成ついて検討した。
【0034】
実施例1
処理目標を「80L(SS濃度40mg/L)の模擬実試料を60g以下のろ過助剤(ろ過面積64cm2)を用いて2〜3時間以内に処理し、SS回収率95%以上を得る」ことに設定した。なお、実際の操作は簡易化のために、1/5スケール(試料の量16L、濾過助剤量12g以下、濾過面積11.6cm2)で行った。
先の予備試験2で定めたCelite560/ラヂオライト#3000/Celite545=10g/10g/5gの1/5スケール(試料量16L、濾過助剤量12g以下、濾過面積11.6cm)にあたるCelite560/ラヂオライト#3000/Celite545=2g/2g/1gをコントロールとして、Celite560を増量したCelite560/ラヂオライト#3000/Celite545=7g/2g/1gと比較検討した。
なお、濾過助剤(珪藻土)上部及び下部の濾紙について、下部の濾紙にアドバンテック東洋(株)製の、ADVANTEC GA-100を使用し、上部の濾紙はグラスウール0.5gを使用した。また、試料は予備試験2に従いSS濃度が40mg/Lとなるように調製した。
【0035】
通水実験の結果、Celite560の充填量が2gの濾過器に比べ、Celite560の充填量を7gに増量した濾過器では、流速の改善が得られたが、同様の条件で行った2回の結果(Run−1、Run−2)で、その再現性が不充分であった。また、Run−1では一部偏流が生じ、またRun−2では通水量が目標の16Lまで到達しない等の問題点が見られた(図2)。回収率については、いずれの濾過器を使用した場合も95%以上と良好であった(表3)。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例2
濾過器に隙間ができないように同じ寸法に切り抜いたガラス繊維濾紙(GA-100)をガラス濾過器に敷いたのち、Celite545を2g、ラヂオライト#3000、Celite560をそれぞれ7gとり、吸引(差圧:−20KPa、調圧器で調整)しながら順に添加した。濾過助剤添加時には、各層とも吸引(差圧:−20KPa)しながら、濾過助剤表面をスパーテルとバイブレーターで平坦にし、最後にグラスウール0.5gを濾過助剤上に広げた(乾式充填)。通水実験については、実施例1に従った。その結果、湿式充填を乾式充填へと変更することにより、同様の条件で行った2回の実験の再現性および濾過速度に改善が見られ(表4)、湿式充填時に確認された偏流も見られなかった。回収率についてもほぼ95%を達成した(図3)。
【0038】
【表4】

【0039】
実施例3
表5に示す実験条件でフルスケールでの実験を行った。
用いた試料およびその他の実験条件は実施例2に従った。測定結果として、図4(A)〜(C)に示されるように、流速については線速度(LV)、空間速度(SV)ともに、1/5スケールにおける結果とほぼ一致した。回収率については97%であり、1/5スケールにおける結果よりも若干良好であった。
【0040】
【表5】

【0041】
実施例4
中層(ラヂオライト♯3000)の濾過助剤量の増減可否について検討した。
実施例2では上層/中層/下層の比率を7g/2g/1gとしたが、ここでは表6に示す割合で上層と中層の割合を変え、SS回収率と濾過速度を確認した。その結果、表7に示すように中層なしの条件(条件C)(上層/中層/下層=9/0/1)におけるSS回収率の低下、あるいは中層の比率増加(条件B)(上層/中層/下層=5/4/1)における濾過速度の低下は見られず、この範囲であれば試料性状に合わせて上層と中層の比率を変更しても問題ないことを確認した。
【0042】
【表6】

【0043】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】予備試験1(通水試験)での濾過面積毎の試験結果(濾過助剤添加量と流速との関係)を示す図である。
【図2】予備試験2(通水試験)での試験結果であり、Celite560の充填量の影響(濾過速度と処理量との関係)を示す図である。
【図3】実施例1の濾過器における濾過速度と処理液量との関係を示す図である。
【図4】実施例2の濾過器における濾過速度と処理液量との関係(図(A))、線速度と処理液量との関係(図(B))、及び空間速度と処理液量との関係(図(C))を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした、2層以上の珪藻土充填層を有する濾過器を使用し、前記一方の最外層側から他方の最外層側へ通水することを特徴とする水中浮遊物質の回収方法。
【請求項2】
上層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用し、該濾過器の上層側から下層側へ通水することを特徴とする水中浮遊物質の回収方法。
【請求項3】
上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用し、該濾過器の上層側から下層側へ通水することを特徴とする水中浮遊物質の回収方法。
【請求項4】
上層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器と、該濾過器の上層側から下層側へと被処理水を連続通水させるポンプとを有する水中浮遊物質の回収装置。
【請求項5】
上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器と、該濾過器の上層側から下層側へと被処理水を連続通水させるポンプとを有する水中浮遊物質の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−256212(P2007−256212A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84238(P2006−84238)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(591288355)財団法人国際環境技術移転研究センター (53)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】