説明

水中衝撃波による材料接合方法

【課題】水中衝撃波を利用して材料の接合、圧着、被覆、固化、合成を行う方法において、接合力が均一に得られる方法を提供すること。
【解決手段】
底板3の上に試料容器2を配置し、反射板1を試料容器2に対して鋭角の角度(α)を持った形でセットし、底板3と反射板1の開口部近くに爆薬5をもつ台座4を置き、爆薬5に雷管6を配置して、雷管5によって爆薬5を起爆させ、発生した衝撃波を水中衝撃波として直接的に試料容器2および反射板1に作用させると共に反射板1によって反射した反射衝撃波を更に試料容器に作用させて材料の接合、圧着、被覆、固化、合成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中衝撃波を利用した材料の接合、圧着、被覆、固化、合成を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中衝撃波を利用した各種材料を接合、圧着、被覆、固化、合成させる方法は広く知られている。通常は目的とする材料を試料容器に封入後、水中内に配置し衝撃波を直接的に試料面に作用させて目的を達成させている。例えば非特許文献1には水中衝撃波により箔材を被覆する方法が開示されている。また、非特許文献2、3では、水中衝撃波により薄板を接合させる方法が開示されている。また非特許文献4では、水中衝撃波によって粉末材料を被覆、合成する方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、非特許文献1および2記載の方法では、衝撃波発生源から最も近い部分に衝撃波が強く作用し均一な接合体が得られないといった問題が解決されていない。非特許文献3記載の方法は均一な接合体を製作するために爆薬量を変化させるというものである。また、非特許文献4記載の方法は、粉末の被覆、合成を行なったものであるが均一な反応ができていない。
【0004】
【非特許文献1】藤田、「水中衝撃波を利用した爆発圧着法」、2001年 春季火薬学会講演集、2001年5月17日
【非特許文献2】白本、「爆薬を試料の一方の側に配置した爆発圧着法」、第12回機械材料・材料加工技術講演会研究論文、2004、p177,178
【非特許文献3】森、「水中衝撃波の制御法の提案とそれによる爆発圧接条件の均一化」、第12回機械材料・材料加工技術講演会研究論文、2004、p175,176
【非特許文献4】外本、「衝撃成形・反応合成による粉末のバルク化および材料面高機能化」、第12回機械材料・材料加工技術講演会研究論文、2004、p165,166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水中衝撃波を利用した材料の接合、圧着、被覆、固化、合成において接合力が均一に得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、試料面上に設置された反射板と衝撃波発生源を固定あるいは衝撃波に方向性を与える台座とを鋭角に配置することで均一な接合条件できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の構成は以下に記載するとおりである。
【0007】
(1)爆薬若しくは電気エネルギーによって発生した水中衝撃波を利用して、材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法において、試料載置面に対して角度(α)をなすように配置された反射板と、該試料載置面と該反射板とが形成する開口部に配置され、該反射板と角度(β)をなすように配置された台座とからなる装置を用い、該角度(β)を鋭角とし、該試料載置面上に試料を載置すると共に、該台座の試料側に面した表面に衝撃波発生源を固定し、衝撃波を発生させ、台座によって衝撃波に方向性を与えて材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
(2)爆薬若しくは電気エネルギーによって発生した水中衝撃波を利用して、材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法において、試料載置面に対して角度(α)をなすように配置された底板と、該試料載置面と該底板とが形成する開口部に配置され、試料側に面する表面が180°以内のV字形の面を有し、該V字形の面が試料載置面及び底板のそれぞれと角度(β、β’)をなす台座とからなる装置を用い、該試料載置面と該底板のそれぞれの面に試料を載置すると共に、該角度(β、β’)を鈍角とし、該台座の試料側に面した表面に衝撃波発生源を固定し、衝撃波を発生させ、台座によって衝撃波に方向性を与えて材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
(3)前記台座のV字形の面に帯状爆薬を180°以内の角度になるように組み合わせることを特徴とする上記(2)に記載の材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
(4)試料を底板に載置することを特徴とする上記(1)〜(3)に記載の材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
(5)衝撃波発生源として爆薬を使用することを特徴とする上記(1)〜(4)に記載の材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、台座の角度を調整することで試料面に作用する衝撃波を制御し、かつ反射衝撃波を利用する事で、衝撃波発生源から接合させたい材料までの距離に関わらず、材料を均一に接合させる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。本発明で用いられる爆薬とは爆轟波を発生する火薬のことであり、具体的にはPETN(ペンタエリスリトールテトラナイトレート)、TNT(トリニトロトルエン)、シクロトリメチレントリニトラミン、シクロテトラメチレンテトラニトラミンなどが挙げられる。爆薬はこれらの単独を用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0010】
また電気エネルギーを利用した衝撃波とは、金属細線に瞬間的に電流を流す事で細線を爆発させる方法等で発生させたものである。また台座とは衝撃波発生源である爆薬または金属細線を固定しかつ衝撃波を効果的に収束させるためのものであり、金属製が好ましく、更に爆発時に変形を生じない厚みのあるものが好ましい。
【0011】
また反射波とは、衝撃波発生源から生じた直接的な衝撃波ではなく、反射板または衝撃波の衝突によって反射した2次的な衝撃波のことである。また反射板とは、衝撃波を反射させるための金属板であり、単体または2種以上の複合体でもかまわない。好ましくは衝撃波作用時に変形の無いものであり、更に好ましくは比重が7.0g/cm以上の鋼製、銅製等である。
α:試料載置面と反射板とがなす角度 又は 試料載置面と底板とがなす角度
β:台座と反射板とがなす角度 又は 台座と試料載置面とがなす角度
【0012】
本発明の方法を実施すための装置の一例を図1で説明する。図1は、爆薬を用いた水中衝撃圧接装置の概要図で、反射板と爆薬をセットした台座をある角度(β)で配置した方法の概略図である。図1において、容器7は爆薬5の爆発にも損傷しない非常に堅強な構造とした。この容器7には、予め水が充填されており、その中に装置全体を投入する。投入した装置は、底板3の上に試料容器2を配置し、反射板1を試料容器2に対してある角度(α)を持った形でセットする。底板3と反射板1の開口部近くに爆薬5をもつ台座4を置き、爆薬5に雷管6を配置する。雷管5によって爆薬5を起爆させると、発生した衝撃波が水中衝撃波として直接的に試料容器および反射板に作用し、かつ反射板によって反射した反射衝撃波が更に試料容器に作用する。
これを図2で示すと、実線矢印が1次的な衝撃波(直接波)であり、点線矢印が1次的衝撃波が反射板1に衝突して反射した2次的な衝撃波(間接/反射波)である。
上記の例では試料を載置するための底板3を用いたが、底板3を用いることは必ずしも必要ではなく、試料を容器7の底面に直接載置しても良い。
【0013】
図3は試料容器2の構造の一例を示す模式図である。図2は衝撃波によって母材11に合せ材8を接合する場合を示したものである。母材11にスペーサー10を介して飛翔板9に設置した合せ材8を対向して配置し、衝撃波を作用させることによって母材11に合せ材8を接合させることができる。
【0014】
図4に示したものは、図1の変形例である。
この装置は、底板3と該底板3に対して角度(α)をなすように配置された底板3’と、該底板3と底板3’とが形成する開口部に配置され、試料側に面する表面が180°以内のV字形の面12を有し、該V字形の面12が底板3及び反射板1のそれぞれと角度(β、β’)をなす台座4とからなる装置を用い、該底板3と底板3’のそれぞれの面に試料を載置すると共に、該角度(β、β’)を鈍角とし、該V字形の面に爆薬5を配置して、爆薬5を起爆させることによって衝撃波を発生させる。この場合、爆薬としては帯状爆薬を用いることが好ましい。本例では図5に示すように、実線矢印が1次的な衝撃波(直接波)であり、点線矢印が1次的な衝撃波同士が衝突し反射した2次的な衝撃波(間接/反射波)である。図の点線は仮想的な反射面を示している。
上記の例では試料を載置するための底板3を用いたが、底板3を用いることは必ずしも必要ではなく、試料を容器7の底面に直接載置しても良い。
また、反射板、底板、台座はそれぞれを溶接又はボルト等で固定しても良いし、固定しなくても良い。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に示されたものに限定されるものではない。
【0016】
[実施例1]
図1に示した装置を用いて表1に示す母材と合せ材とを接合させた。母材は1として炭素鋼を、合せ材として銅箔を用いた。爆薬としては硝酸アンモニウム系爆薬(商品名:PAVEX、製造元:旭化成ケミカルズ株式会社、爆速約6900m/sec)を20g使用した。台座は鋼製で50mm厚みの材料を用い、反射板との角度(β)は50°、試料面との角度は110°とした。また反射板角度(α)は20°とした。結果、起爆から終爆まで波形が観察され、衝撃圧力が均等に作用していることが確認できた。
【0017】
【表1】

【0018】
[比較例1]
用いた試料、爆薬、反射板および反射板角度は実施例1と同様とした。また台座と反射板の角度(β)は100°、台座と底板の角度を60°とした。結果、試料面の起爆部周辺では合せ材および母材が大きく損傷しており、また試料の終爆周辺では波形が見られず、接合不良になっていた。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の水中衝撃圧接方法によれば、均一に各種材料の接合、圧着、被覆、固化、合成が可能となる。特に箔のような薄い材料の接合に適用する事ができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の方法における衝撃波の作用を示す図である。
【図3】本発明の方法を実施するための試料容器の構成を示す図である。
【図4】本発明の方法を実施するための装置の他の例を示す図である。
【図5】本発明の方法における衝撃波の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 反射板
2 試料容器
3 底板
4 台座
5 爆薬
6 雷管
7 容器
8 合せ材
9 飛翔板
10 スペーサー
11 母材
12 V字形の面
13 仮想反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆薬若しくは電気エネルギーによって発生した水中衝撃波を利用して、材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法において、試料載置面に対して角度(α)をなすように配置された反射板と、該試料載置面と該反射板とが形成する開口部に配置され、該反射板と角度(β)をなすように配置された台座とからなる装置を用い、該角度(β)を鋭角とし、該試料載置面上に試料を載置すると共に、該台座の試料側に面した表面に衝撃波発生源を固定し、衝撃波を発生させ、台座によって衝撃波に方向性を与えて材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
【請求項2】
爆薬若しくは電気エネルギーによって発生した水中衝撃波を利用して、材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法において、試料載置面に対して角度(α)をなすように配置された底板と、該試料載置面と該底板とが形成する開口部に配置され、試料側に面する表面が180°以内のV字形の面を有し、該V字形の面が試料載置面及び底板のそれぞれと角度(β、β’)をなす台座とからなる装置を用い、該試料載置面と該底板のそれぞれの面に試料を載置すると共に、該角度(β、β’)を鈍角とし、該台座の試料側に面した表面に衝撃波発生源を固定し、衝撃波を発生させ、台座によって衝撃波に方向性を与えて材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
【請求項3】
前記台座のV字形の面に帯状爆薬を180°以内の角度になるように組み合わせることを特徴とする請求項2記載の材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
【請求項4】
試料を底板に載置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。
【請求項5】
衝撃波発生源として爆薬を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の材料を接合、圧着、被覆、固化または合成する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate