説明

水冷アダプタ

【課題】アダプタ本体を固定するための固定部を設けることに伴う大型化を抑制することのできる水冷アダプタを提供する。
【解決手段】水冷アダプタ1においては、アダプタ本体5をシリンダヘッドに固定するために用いられる固定部11が、アダプタ本体5に水平方向について並列となるよう複数形成された排気通路4間であってアダプタ本体5の上部に設けられる。また、水冷アダプタ1のウォータジャケット6においては、その上部が固定部11の周囲を囲むように形成される。これにより、固定部11とウォータジャケット6とが重なることを抑制しつつ、固定部11をより排気通路4側に近づけることが可能になる。言い換えれば、固定部11がウォータジャケット6と重ならないよう、固定部11をウォータジャケット6における上記排気通路4間の部分に対しウォータジャケット6の上方(排気通路4から離間する方向)にはみ出して設ける必要はなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関においては、その排気系に設けられた触媒の過昇温抑制を目的として、同機関の排気を冷却水によって冷却することが考えられている。こうした排気の冷却を実現するため、内燃機関のシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとの間に、同機関の排気と冷却水との間での熱交換を行うための水冷アダプタを設けることが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この水冷アダプタは、内燃機関のシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとの間にそれらを繋ぐように設けられるアダプタ本体を備えている。また、水冷アダプタは、アダプタ本体に形成されてシリンダヘッドから出た排気をエキゾーストマニホールドに流す排気通路と、その排気通路の周囲を囲むようにアダプタ本体に形成されて同排気通路を流れる排気との間で熱交換を行う冷却水が流れるウォータジャケットとを備えている。更に、水冷アダプタは、ウォータジャケットに冷却水を流入させる入口部と、ウォータジャケットの上部に設けられて同ウォータジャケットの冷却水を外部に流出させる出口部とを備えている。
【0004】
上記水冷アダプタにおいては、上記入口部からウォータジャケットに冷却水を流入させるとともに、同ウォータジャケット内の冷却水を出口部から外部に流出させることにより、ウォータジャケット内を冷却水が流れるようになる。内燃機関の排気がシリンダヘッドから水冷アダプタの排気通路を介してエキゾーストマニホールドに流れる際、水冷アダプタのウォータジャケット内に冷却水が流されると、その冷却水と上記排気通路を流れる排気との間で熱交換が行われる。そして、上記熱交換を通じて冷却された排気はエキゾーストマニホールドに流されるようになる。従って、こうした水冷アダプタを設けることにより、内燃機関の排気系に設けられた触媒に対し、同水冷アダプタにて冷却された後の排気を送ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−15718公報(第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水冷アダプタ(アダプタ本体)は、内燃機関のシリンダヘッドに対し、ボルトの締結により固定される。このため、アダプタ本体には上記ボルトの締結を行うための締結穴の形成された固定部が設けられる。こうした固定部に関して、アダプタ本体のウォータジャケットと重ならないよう、そのウォータジャケットに対し排気通路から離間する方向にはみ出した状態でアダプタ本体に設けることが考えられる。しかし、このように固定部をアダプタ本体に設けると、ウォータジャケットに対し上記固定部が排気通路から離間する方向にはみ出す分だけアダプタ本体が大型化する。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、アダプタ本体を固定するための固定部を設けることに伴う大型化を抑制することのできる水冷アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明によれば、内燃機関のシリンダヘッドから出た排気は、水冷アダプタのアダプタ本体に設けられた排気通路を介して排気管に流される。一方、各排気通路の周囲を囲むようにアダプタ本体に形成されたウォータジャケットには冷却水が流れる。その結果、ウォータジャケットを流れる冷却水と上記排気通路を通過する排気との間で熱交換が行われ、こうした熱交換を通じて冷却された上記排気が排気通路から排気管に流されるようになる。
【0009】
上記水冷アダプタには、シリンダヘッドに対するアダプタ本体のボルトの締結による固定を行うための締結穴の形成された固定部が設けられる。仮に、こうした固定部がアダプタ本体のウォータジャケットと重ならないよう同ウォータジャケットに対し排気通路から離間する方向にはみ出した状態でアダプタ本体に設けられたとすると、そのはみ出しの分だけアダプタ本体が大型化する。
【0010】
この点、請求項1記載の発明では、ウォータジャケットの一部が上記固定部における締結穴の周囲を囲むように形成されるため、言い換えればウォータジャケットが上記固定部を避けて迂回するように形成されるため、その固定部とウォータジャケットとが重なることを抑制しつつ、同固定部をアダプタ本体の排気通路側に近づけることが可能になる。このため、固定部がアダプタ本体のウォータジャケットと重ならないよう、同固定部をウォータジャケットに対し排気通路から離間する方向にはみ出して設ける必要はなくなり、そのはみ出しの分だけ水冷アダプタが大型化することは抑制される。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記固定部がアダプタ本体に水平方向について並列となるよう複数形成された排気通路間に設けられており、その固定部における締結穴の周囲を囲むようにウォータジャケットが形成される。この場合、締結穴の形成される固定部とウォータジャケットとが重ならないよう、同固定部をウォータジャケットにおける上記排気通路間の部分に対し同ウォータジャケットの上方など排気通路から離間する方向にはみ出して設ける必要はなくなり、そのはみ出しの分だけ水冷アダプタが大型化することは抑制される。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記固定部は、複数の排気通路の間であってアダプタ本体の上部に設けられる。また、ウォータジャケットに対する冷却水の流入は入口部を通じて行われる。一方、ウォータジャケットからの冷却水の流出は、アダプタ本体の上部に設けられた出口部を通じて行われる。ウォータジャケットに関しては、その上部が上記固定部における締結穴の周囲を囲むように、かつウォータジャケットの最上部が水平方向に延びて同ウォータジャケットにおける締結穴の周囲を囲む部分の最頂点と出口部とを繋ぐように形成される。このため、ウォータジャケットに入り込んだエアが同ウォータジャケットの最上部に到達すると、そのエアは冷却水の流れによりウォータジャケットの上記水平方向に伸びる部分を通って円滑に出口部に向けて押し流される。従って、ウォータジャケット内にエアが入り込んだとしても、そのエアをウォータジャケットの上部において効率よく出口部から外部に排出することができ、そのエアがウォータジャケットの上部に溜まることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の水冷アダプタを示す側面図。
【図2】(a)は水冷アダプタをエキゾーストマニホールド側から見た状態を示す正面図であり、(b)は水冷アダプタの内部に形成されたウォータジャケットの形状を示す正面図。
【図3】(a)はウォータジャケットを排気通路の中心線方向の下流側から見た正面図であり、(b)はウォータジャケットを上方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示されるように、水冷アダプタ1は、内燃機関のシリンダヘッド2とエキゾーストマニホールド3との間にそれらを繋ぐように設けられている。この水冷アダプタ1は、単一の物体であるアダプタ本体5等によって形成されている。そして、アダプタ本体5には、シリンダヘッド2から出る内燃機関の排気を上記エキゾーストマニホールド3に流す排気通路4が形成されている。
【0015】
図2において、(a)は水冷アダプタ1を図1のエキゾーストマニホールド3側から見た状態を示す図であり、(b)は水冷アダプタ1の内部に形成されたウォータジャケット6の形状を示す図である。水冷アダプタ1の排気通路4は、図2(a)に示されるように、内燃機関の気筒数に合わせて、水平方向について並列に複数(この例では四つ)設けられている。また、図2(b)に示されるウォータジャケット6は、上記複数の排気通路4を流れる排気との間で熱交換を行う冷却水を流すためのものであって、各排気通路4全体の周囲及び各排気通路4の間に亘って形成されている。アダプタ本体5(図2(a))の下部には、ウォータジャケット6(図2(b))に対し冷却水を流入させる入口部8が形成されている。一方、アダプタ本体5の上部にはウォータジャケット6内の冷却水を外部に流出させる出口部9が形成されている。
【0016】
上記水冷アダプタ1においては、入口部8からウォータジャケット6に冷却水を流入させるとともに、同ウォータジャケット6内の冷却水を出口部9から外部に流出させることにより、ウォータジャケット6内を冷却水が流れる。そして、内燃機関の排気が水冷アダプタ1の排気通路4を流れる際、ウォータジャケット6内に冷却水が流されると、その冷却水と上記排気通路4を流れる排気との間で熱交換が行われる。従って、内燃機関のシリンダヘッド2(図1)から水冷アダプタ1の排気通路4を介してエキゾーストマニホールド3に送られる排気は、その排気通路4を通過する際に上記熱交換を通じて冷却され、その冷却後にエキゾーストマニホールド3に流れることとなる。
【0017】
また、水冷アダプタ1(アダプタ本体5)は、内燃機関のシリンダヘッド2に対し、ボルトの締結により固定される。このため、図2(a)に示されるように、アダプタ本体5においては、その水平方向両端部及び中央部に上記ボルトの締結を行うための締結穴10aの形成された固定部10が設けられるとともに、アダプタ本体5の上部にも上記ボルトの締結を行うための締結穴11aの形成された固定部11が設けられる。そして、固定部10,11に形成された締結穴10a,11aにそれぞれボルトを挿入するとともにシリンダヘッド2(図1)に対し締結することにより、水冷アダプタ1のシリンダヘッド2に対する固定が行われる。
【0018】
次に、水冷アダプタ1におけるウォータジャケット6の形状について、図2及び図3を参照して詳しく説明する。なお、図3において、(a)は図2(b)に示されるウォータジャケット6を排気通路4の中心線方向の下流側から見た正面図であり、(b)は上記ウォータジャケット6を上方から見た平面図である。
【0019】
図2(a)に示されるように、固定用のボルトの締結を行うための締結穴11aの形成された固定部11は、アダプタ本体5に水平方向について並列となるよう複数形成された排気通路4間であってアダプタ本体5の上部に設けられている。また、図2(b)に示されるように、ウォータジャケット6に関しては、その一部(図中上部)が固定部11における締結穴11aの周囲を囲むように形成されている。言い換えれば、ウォータジャケット6の上部が固定部11を避けて迂回するように形成されている。このようにウォータジャケット6を形成することにより、固定部11とウォータジャケット6とが重なることを抑制しつつ、同固定部11をより図中の下側(排気通路4側)に近づけることが可能になる。
【0020】
なお、固定部11がウォータジャケット6と重ならないようにするためには、固定部11をウォータジャケット6における排気通路4間の部分に対し同ウォータジャケット6の上方など排気通路4から離間する方向にはみ出した状態でアダプタ本体5(図2(a))に設けるという構造を採用することも考えられる。この場合、固定部11がウォータジャケット6と重ならないようにすることはできるものの、固定部11の上記はみ出しの分だけアダプタ本体5が例えば図2(a)に二点鎖線で示されるように大型化するという問題がある。しかし、こうした問題が生じることは、上述したようにウォータジャケット6を形成して固定部11を排気通路4に近づけることによって、言い換えれば固定部11がウォータジャケット6における上記排気通路4間の部分に対し同ウォータジャケット6の上方にはみ出して設けられることがないようにすることによって抑制される。
【0021】
また、ウォータジャケット6の上部に関しては、図3(b)に示されるように上記固定部11の周囲を囲むように形成されることは上述したとおりであるが、そのほかに図3(a)に示されるように水平方向について平坦となるようにも形成されている。ウォータジャケット6の上部における水平方向に平坦な部分の一部であって締結穴11aの周囲を囲む部分の最頂点から上記出口部9までを繋ぐ部分は、ウォータジャケット6に入り込んだエアを冷却水により出口部9に向けて流すためのエア抜き通路12とされている。このエア抜き通路12は、ウォータジャケット6の最上部に位置した状態で、上述したように水平方向に延びて同ウォータジャケット6における固定部11の周囲を囲む部分の最頂点と出口部9とを繋いでいる。このため、ウォータジャケット6に入り込んだエアが同ウォータジャケット6の最上部に到達すると、そのエアは冷却水の流れにより水平方向について平坦な上記エア抜き通路12を通って円滑に出口部9に向けて押し流される。従って、ウォータジャケット6内にエアが入り込んだとしても、そのエアをウォータジャケット6の上部において効率よくエア抜き通路12及び出口部9から排出することができ、そのエアがウォータジャケット6の上部に溜まることを抑制できる。
【0022】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)水冷アダプタ1のアダプタ本体5をシリンダヘッドに固定するためのボルトの締結に用いられる固定部11(締結穴11a)は、アダプタ本体5に水平方向について並列となるよう複数形成された排気通路4間であってアダプタ本体5の上部に設けられる。また、水冷アダプタ1のウォータジャケット6に関しては、その上部が締結穴11aの周囲を囲むように形成されている。これにより、固定部11とウォータジャケット6とが重なることを抑制しつつ、同固定部11をより排気通路4側(図2(b)の下側)に近づけることが可能になる。従って、固定部11がウォータジャケット6と重ならないよう、同固定部11をウォータジャケット6における上記排気通路4間の部分に対し同ウォータジャケット6の上方(排気通路4から離間する方向)にはみ出して設ける必要はなくなり、そのはみ出しの分だけ水冷アダプタ1が大型化することを抑制できる。
【0023】
(2)ウォータジャケット6においては、その上部が水平方向について平坦となるように形成されており、その水平方向に平坦な部分の一部であって締結穴11aの周囲を囲む部分の最頂点から出口部9までを繋ぐ部分がエア抜き通路12とされている。このエア抜き通路12は、ウォータジャケット6の最上部に位置した状態で、上述したように水平方向に延びて同ウォータジャケット6における固定部11の周囲を囲む部分の最頂点と出口部9とを繋いでいる。このようにウォータジャケット6を形成することにより、同ウォータジャケット6にエアが入り込んだとしても、そのエアをウォータジャケット6の上部において効率よくエア抜き通路12及び出口部9から排出することができ、そのエアがウォータジャケット6の上部に溜まることを抑制できる。
【0024】
(3)エア抜き通路12をウォータジャケット6と一体形成することが可能であり、それによってエア抜き通路12の形成が容易になる。
(4)固定部11(締結穴11a)の大きさを適宜変更することで、ウォータジャケット6の上部における冷却水の流通面積を調整し、それによってウォータジャケット6の上部における冷却水の流速を調整することができる。従って、固定部11の大きさの設定を通じて、例えばウォータジャケット6の上部において冷却水の流速の変化が生じないように、言い換えれば同冷却水の流速が一定となるようにすることができる。
【0025】
(5)ウォータジャケット6の上部は固定部11における締結穴11aの周囲を囲むように設けられているため、その締結穴11aに挿入されてシリンダヘッド2に締結されるボルトの周囲全体を、上記ウォータジャケット6の上部に流れる冷却水によって効果的に冷却することができる。
【0026】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・水冷アダプタ1の排気通路4の数を、内燃機関の気筒数や気筒配置等に合わせて、例えば1、2、3、4、5、6・・・といった任意の数に適宜変更してもよい。
【0027】
・ウォータジャケット6の上部は必ずしも平坦である必要はない。
【符号の説明】
【0028】
1…水冷アダプタ、2…シリンダヘッド、3…エキゾーストマニホールド、4…排気通路、5…アダプタ本体、6…ウォータジャケット、8…入口部、9…出口部、10…固定部、10a…締結穴、11…固定部、11a…締結穴、12…エア抜き通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドと排気管との間にそれらを繋ぐように設けられるアダプタ本体と、
前記アダプタ本体に形成されて前記シリンダヘッドから出た排気を前記排気管に流す排気通路と、
前記排気通路の周囲を囲むように前記アダプタ本体に形成されて同排気通路を流れる排気との間で熱交換を行う冷却水が流れるウォータジャケットと、
前記アダプタ本体に設けられて同アダプタ本体を前記シリンダヘッドに固定するための締結穴が形成される固定部と、
を備える水冷アダプタにおいて、
前記ウォータジャケットに関しては、その一部が前記固定部における締結穴の周囲を囲むように形成されている
ことを特徴とする水冷アダプタ。
【請求項2】
前記排気通路は、前記アダプタ本体に水平方向について並列となるよう複数形成されており、前記固定部は、前記アダプタ本体の前記排気通路間に設けられており、前記ウォータジャケットは、複数の前記排気通路の周囲を囲むとともに前記固定部の周囲を囲むように形成されている請求項1記載の水冷アダプタ。
【請求項3】
請求項2記載の水冷アダプタにおいて、
前記ウォータジャケットに冷却水を流入させる入口部と、前記アダプタ本体の上部に設けられて前記ウォータジャケットから冷却水を流出させる出口部とを備え、
前記固定部は、複数の前記排気通路の間であって前記アダプタ本体の上部に設けられており、前記ウォータジャケットに関しては、その上部が前記固定部における締結穴の周囲を囲むように、かつ前記ウォータジャケットの最上部が水平方向に延びて同ウォータジャケットにおける前記締結穴の周囲を囲む部分の最頂点と前記出口部とを繋ぐように形成されている
ことを特徴とする水冷アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−196349(P2011−196349A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66972(P2010−66972)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】