説明

水処理システムおよびこれを用いた燃料電池発電システム

【課題】水処理システムのイオン交換能を向上させる。
【解決手段】水処理システム70は、貯水タンク42、イオン交換樹脂72が収納された容器74、容器74の上端に接続された供給路76、容器74の下端に接続された主排出路78、容器74の上端に接続された副排出路80、および、第1ポンプ82を備えている。第1ポンプ82が作動すると、貯水タンク42内の水40aは、供給路76を通って容器74内に供給され、容器74内をイオン交換樹脂72の上方から下方に流れ、主排出路78を通って貯水タンク42に回収される。容器74内の空気は、副排出路80から排気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理システムおよびこれを用いた燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水を浄化(純水化)する方法として、イオン交換樹脂が収納された容器内を通水させる方法が広く用いられている。例えば、特許文献1には、燃料電池発電スタックを冷却するために循環される冷却水を、イオン交換樹脂を用いて浄化する水処理システムが開示されている。
【0003】
このような水処理システムは、図4に示したように、イオン交換樹脂172が収納された容器174、容器174の上端に接続された第1配管176、および、容器174の下端に接続された第2配管178を備えている。水処理システムは、水を一方の配管から容器174内に供給し、容器174内を通水させ、他方の配管から排出させて、水を浄化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−87609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、イオン交換効率を上げるために、水を第2配管178から容器174内に供給し、容器174内を水で満たし、第1配管176を通して排出する。しかし、容器174内において水を下方から上方に流すと、イオン交換樹脂172の粒子が浮遊・流動しやすい。そうすると、イオン交換能が発揮されにくい。また、特開2010−113885号公報に記載されたように、容器174内での細菌の繁殖を抑制するために、容器174内の通水量を増加させる手段が用いられるが、通水量を増加させると、給水の停止時に空気が容器174内にインリークするおそれがある。
【0006】
一方、特許文献1には、水を第1配管176から容器174内に供給し、第2配管178を通して排出する水処理システムが開示されている。しかし、容器174内において水を上方から下方に流すと、空気が容器174内に残ったり、容器174内に供給された水の中に気泡が生じやすい。そうすると、イオン交換効率が低下してしまう。特許文献1には、容器174内に気液分離装置を設けている旨が開示されているが、気液分離装置を設けると、水処理システムが大型化・高コスト化してしまう。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、イオン交換能・交換効率を向上させる水処理システムおよびこれを用いた燃料電池発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明の実施形態に係る水処理システムは、容器と、前記容器内に収納されたイオン交換樹脂と、前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内に水を供給する供給路と、前記イオン交換樹脂の下方から前記容器内の水を排出させる主排出路と、前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内の空気および水を排出させる前記副排出路とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記の課題を達成するために、本発明の実施形態に係る燃料電池発電システムは、容器と、前記容器内に収納されたイオン交換樹脂と、前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内に水を供給する供給路と、前記イオン交換樹脂の下方から前記容器内の水を排出させる主排出路と、前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内の空気および水を排出させる前記副排出路とを備えた水処理システムを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水処理システムのイオン交換能・交換効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池発電システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【図4】従来の水処理システムの部分概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る水処理システムおよび燃料電池発電システムについて、図1ないし図3を用いて説明する。
まず、本実施形態に係る燃料電池発電システムの概要について、図1を用いて説明する。図1は、家庭用の燃料電池発電システムの概略構成図である。
【0013】
本実施形態に係る燃料電池発電システム1は、例えば、住宅の屋外に設置され、都市ガスやLPガスを用いて発電を行い、家庭用の電力を供給する発電システムである。家庭用の燃料電池発電システムは、発電で生じた排熱を用いて給湯を行うコジェネレーションシステムの役割も果たす。このような燃料電池発電システムを利用する家庭では、商用電力系統からの電力のみを使用し、かつ、給湯ボイラからの給湯のみを使用する家庭に比べ、省エネ効果が大きい。
【0014】
燃料電池発電システム1は、燃料電池発電スタック(以下、単に「スタック」と省略する。)10、燃料供給路20、改質器22、空気供給路30、空気加湿器32、冷却水循環路40、熱交換器50、排熱回収水路60、水処理システム70、および、制御装置(図示省略)などを備えている。燃料電池発電システム1は、スタック10において、燃料供給路20から供給される燃料中の水素と空気供給路30から供給される空気中の酸素とを反応させて発電を行う。
【0015】
都市ガスやLPガスなどの原燃料20aは、制御装置およびブロア24により流量が制御されて燃料電池発電システム1内に取り入れられる。原燃料20aは、改質器22により水素リッチな改質ガス20bに改質された後、スタック10に供給される。
【0016】
大気中の空気30aは、制御装置およびブロア34により流量が制御されて燃料電池発電システム1内に取り入れられる。空気30aは、空気加湿器32により加熱・加湿された後、スタック10に供給される。
【0017】
家庭用のスタック10には、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)が採用されている。スタック10は、セパレータに狭持された膜電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)(図示省略)が複数積層されてなる。膜電極複合体は、アノードとカソードとで狭持された一価の陽イオン交換型の電解質膜からなる。
【0018】
セパレータ(図示省略)には、改質ガス20bをアノードに供給するためのガス供給溝、および、湿潤空気30bをカソードに供給するための空気供給溝が形成されている。また、セパレータには、スタック10を冷却する冷却水が流れる冷却水供給溝が形成されている。
【0019】
スタック10は、アノードに供給された改質ガス20b中の水素とカソードに供給された空気30b中の酸素とを反応させて発電を行う。スタック10で発電された直流電気は、インバータ90により交流電気に変換され、商用電力系統100と合わせて家庭での電力負荷102に供給される。
【0020】
燃料電池発電システム1は、上述したとおり、冷却水循環路40、熱交換器50、および、排熱回収水路60を備えている。冷却水循環路40には、燃料電池発電スタック10を冷却する冷却水40aが流れる。排熱回収水路60には、冷却水40aを介してスタック10の排熱を回収する排熱回収水60aが流れる。
【0021】
貯水タンク42に蓄えられた冷却水40aは、ポンプ44によりスタック10に供給され、冷却水供給溝を通過することによりスタック10を冷却する。スタック10を冷却した冷却水40aは、熱交換器50において排熱回収水60aに冷却された後、貯水タンク42に回収される。貯水タンク42は、水と空気を分離して冷却水40a中の気泡を除去する気抜き機能(図示省略)を備えている。また、貯水タンク42の上面には、貫通孔42aが形成されている。
【0022】
排熱回収水路60は、燃料電池発電システム1の外部に設置された貯湯槽(図示省略)まで延びている。熱交換器50において冷却水40aを介してスタック10の排熱を回収した排熱回収水60aは、貯湯槽に蓄えられ、家庭での給湯として利用される。
【0023】
スタック10内での電流リークを防ぐために、冷却水40aには、通常、純水が用いられるが、冷却水40aが長期間使用されると、不純物がスタック10などから冷却水40aに溶出したり、貫通孔42aから冷却水40aに混入して、冷却水40aが徐々に汚染されてしまう。そのため、燃料電池発電システム1は、上述したとおり、水処理システム70を備えている。水処理システム70は、冷却水循環路40を循環する冷却水40aを浄化(純水化)する役割を果たす。
【0024】
本実施形態に係る水処理システム70の構成について、図2を用いて説明する。図2は、水処理システムの概略構成図である。
【0025】
水処理システム70は、貯水タンク42、イオン交換樹脂72が収納された容器74、供給路76、主排出路78、副排出路80、および、第1ポンプ82などを備えている。水処理システム70は、貯水タンク42に蓄えられた冷却水40aを、供給路76を通して容器74内に送り、イオン交換樹脂72により浄化した後、主排出路78および副排出路80を通して貯水タンク42に回収する。
【0026】
容器74は、例えば円柱状に形成されていて、起立して設置されている。容器74内には、例えば粒子状のイオン交換樹脂72が収納されている。通常、製造時には、容器74内の全てにイオン交換樹脂72が充填されるが、使用により、容器74内に流水されると、イオン交換樹脂72がより充填され、図2に示したように、容器74内の上方に空きができる。
【0027】
供給路76を構成する配管は、貯水タンク42の下面から容器74の上面まで延びている。本実施形態では、第1ポンプ82は、供給路76に設けられていて、第1ポンプ82が作動すると、貯水タンク42に蓄えられた冷却水40aは、イオン交換樹脂72の上方から容器74内に供給される。
【0028】
イオン交換樹脂72は、高温に弱いため、供給路76の第1ポンプ82と容器74との間には、容器74内に供給される冷却水40aを冷却する熱交換器84が設けられている。
【0029】
主排出路78を構成する配管は、容器74の下面から貯水タンク42の下面まで延びている。第1ポンプ82が作動すると、イオン交換樹脂72により浄化された冷却水40aは、容器74内から排出され、貯水タンク42に回収される。
【0030】
主排出路78には、主排出路78の通水量を制限する主排出流量制限手段78aが設けられている。本実施形態では、主排出流量制限手段78aは、例えばオリフィスである。
【0031】
さらに、水処理システム70は、副排出路80を備えている。副排出路80を構成する配管は、容器74の上面から貯水タンク42の下面まで延びている。第1ポンプ82が作動すると、容器74内の空気および冷却水40aは、容器74内から排出され、貯水タンク42に回収される。
【0032】
副排出路80には、副排出路80の通水量を制限する副排出流量制限手段80aが設けられている。本実施形態では、副排出流量制限手段80aは、例えばオリフィスである。
【0033】
本実施形態に係る水処理システムの作用・効果について、図2を用いて説明する。
【0034】
第1ポンプ82を作動させると、貯水タンク42内の冷却水40aが供給路76を通って容器74内に供給される。容器74内に供給された冷却水40aは、容器74内を上方から下方に流れ、イオン交換樹脂72により浄化される。浄化された冷却水40aは、主排出路78を通って貯水タンク42に回収される。
【0035】
主排出路78の通水量は、容器74内が冷却水40aで満たされるように、主排出流量制限手段78aにより制限されている。水処理システム70の初動時には、容器74内は空気で満たされているが、第1ポンプ82を作動させると、容器74内に冷却水40aが供給され、容器74内の水位が徐々に上昇する。これに伴って、容器74内の空気は、副排出路80を通って貯水タンク42に排出される。容器74内が冷却水40aで満たされると、容器74内の冷却水40aは、主排出路78および副排出路80を通って貯水タンク42に排出される。
【0036】
ここで、容器74内の冷却水40aが主排出路78を優先的に通水されるように、副排出流量制限手段80aは、主排出流量制限手段78aに比べて、通水量を制限する。例えば、副排出流量制限手段80aは、主排出流量制限手段78aに比べて、オリフィスの孔径が小さく設計されている。
【0037】
本実施形態に係る水処理システム70によれば、冷却水40aがイオン交換樹脂72の上方から供給されるため、イオン交換樹脂の粒子が浮遊・流動しにくい。その結果、イオン交換樹脂72のイオン交換能が発揮されやすい。
【0038】
また、本実施形態によれば、主排出流量制限手段78aおよび副排出路80が設けられている。主排出流量制限手段78aが主排出路78の通水量を制限することにより、冷却水40aが容器74内に貯まる。加えて、容器74内の空気が副排出路80を通って排気される。そのため、容器74内が冷却水40aで満たされる。その結果、空気が容器74内に残らず、容器74内の冷却水40a中に気泡が生じにくいため、イオン交換効率が向上する。
【0039】
さらに、何かの原因により、容器74内に空気が入ったとしても、その空気は、水処理システム70の初動時と同様に、副排出路80を通って排気される。そのため、本実施形態によれば、上述した従来の水処理システム(特許文献1参照)のように、容器74内に気液分離装置を設けなくても、良好なイオン交換能を得られ、水処理システム70を小型化・低コスト化できる。
【0040】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る水処理システムおよび燃料電池発電システムについて、図3を用いて説明する。図3は、水処理システムの概略構成図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複部分には同一符号を付して、その部分の構成の説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、副排出路80の一端は、第1の実施形態と同様に、容器74の上端に接続されている。一方、副排出路80の一端は、主排出路78に連結されている。主排出流量制限手段78aは、容器74と連結点86との間に設けられている。
【0042】
第1の実施形態では、第1ポンプ82は、供給路76に設けられている。一方、本実施形態では、第1ポンプ82に代わって、第2ポンプ88が、主排出路78の連結点86と貯水タンク42との間に設けられている。
【0043】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
[他の実施形態]
上記の実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、本発明に係る水処理システム70は、燃料電池発電システム1に適用されるものに限られない。
【0045】
また、上記の実施形態では、主排出流量制限手段78aおよび副排出流量制限手段80aを設けることにより、主排出路78と副排出路80との通水量を調節しているが、主排出路78および副排出路80に互いに径の異なる配管を用いることにより、主排出路78と副排出路80との通水量を調節しても良い。
【0046】
また、上記の実施形態では、主排出流量制限手段78aおよび副排出流量制限手段80aは、オリフィスであるが、流量を調節可能な弁でも良い。
【0047】
さらに、第2の実施形態では、第2ポンプ88が、主排出路78の連結点86と貯水タンク42との間に設けられているが、主排出路78と副排出路80とに別個のポンプを設けても良い。
【符号の説明】
【0048】
1…燃料電池発電システム、10…燃料電池発電スタック、20…燃料供給路、20a…原燃料、20b…改質ガス、22…改質器、24…ブロア、30…空気供給路、30a…空気、30b…湿潤空気、32…空気加湿器、34…ブロア、40…冷却水循環路、40a…冷却水、50…熱交換器、60…排熱回収水路、60a…排熱回収水、70…水処理システム、72…イオン交換樹脂、74…容器、76…供給路、78…主排出路、78a…主排出流量制限手段、80…副排出路、80a…副排出流量制限手段、82…第1ポンプ、84…熱交換器、86…主排出路と副排出路との連結点、88…第2ポンプ、90…インバータ、100…商用電力系統、102…電力負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に収納されたイオン交換樹脂と、
前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内に水を供給する供給路と、
前記イオン交換樹脂の下方から前記容器内の水を排出させる主排出路と、
前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内の空気および水を排出させる前記副排出路と、
を備えた水処理システム。
【請求項2】
前記主排出路に前記主排出路の通水量を制限する主排出流量制限手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記主排出流量制限手段はオリフィスであることを特徴とする請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記副排出路に前記副排出路の通水量を制限する副排出流量制限手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記副排出流量制限手段はオリフィスであることを特徴とする請求項4に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記主排出路の通水量が前記副排出路の通水量に比べて大きいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記供給路を介して前記容器内に供給する水を貯める貯水タンクを備え、前記容器内から排出された水が前記主排出路および前記副排出路を介して前記貯水タンクに回収されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記供給路に第1のポンプが設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記副排出路が前記主排出路に連結されていて、前記主排出路の当該連結部分の下流側に第2のポンプが設けられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項10】
容器と、
前記容器内に収納されたイオン交換樹脂と、
前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内に水を供給する供給路と、
前記イオン交換樹脂の下方から前記容器内の水を排出させる主排出路と、
前記イオン交換樹脂の上方から前記容器内の空気および水を排出させる前記副排出路と、
を備えた水処理システムを具備したことを特徴とする燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−115784(P2012−115784A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269103(P2010−269103)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】