説明

水処理システム及び水処理システムの洗浄制御方法

【課題】繊維ろ過プロセスにおけるろ過水への濁質の漏洩を抑制するとともに、浄水回収率の低下を抑制する。
【解決手段】繊維ろ過手段2と、繊維ろ過手段2と連結され、繊維ろ過手段2で処理された一次処理水中の懸濁物を除去する膜ろ過手段3と、を備える水処理システム1において、繊維ろ過手段2に移送される原水濁度に基づいて繊維ろ過手段2の洗浄周期を決定する。そして、繊維ろ過手段2の処理中に、繊維ろ過手段2に移送される原水の圧力と、繊維ろ過手段2で処理された一次処理水の圧力との差に基づいて、繊維ろ過手段2の洗浄を行う。さらに、繊維ろ過手段2に移送される原水量に対する、繊維ろ過手段2及び膜ろ過手段3の洗浄で消費される二次処理水を除く、膜ろ過手段3で処理された二次処理水量の割合が、所定の値より下回った場合には、洗浄周期にかかわらず、所定の洗浄周期を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水の濁度や色度を低減させるための浄水処理及び用水処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過は、高品質で信頼性の高い水を供給できる優れた処理であり、耐塩素性原虫対策を含む水質管理要求の高まりにより、水処理システムへの膜ろ過の導入が進んでいる。膜ろ過システムは、原水の除濁を主目的としたプロセスである。水源が河川の場合、降雨等の影響により原水の濁質成分や有機物が増加することで、膜ろ過システムの膜閉塞が促進される。そのため、膜ろ過の前処理として砂ろ過や繊維ろ過プロセスが付加される場合がある(例えば、特許文献1,2)。砂ろ過は、想定される濁度に応じて上向流方式や下降流方式がある。また、繊維ろ過方式は、下降流方式が多く、小さい動力で高速ろ過が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−346347号公報
【特許文献2】特開2006−175342号公報
【特許文献3】特開2003−265907号公報
【特許文献4】特開2008−142597号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】中村浩、外2名、“繊維ろ過とMF膜ろ過の組み合わせによる浄水処理システム”、明電時報、株式会社明電舎、2010年、No.4(通巻329号)、p.13−18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、繊維ろ過方式は、高濁度の処理水が流入した時には、塔内の濁質が平常時より早期に漏洩するおそれがある。そのため、高濁度の処理水が流入した時には、繊維ろ過手段の洗浄周期を短縮化する等の対策を行い、繊維ろ過手段のろ液に濁質が漏洩しないようにしている。一方、洗浄周期を短縮化すると、繊維ろ過手段を洗浄するために処理水が消費されるので、浄水回収率が低下する。水処理プロセスでは、取水量の上限が制約されていることが多いため、安易に洗浄時間を短縮すると、必要な浄水量を確保できない可能性があり、安易に洗浄周期の短縮を行うことはできないことがある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、繊維ろ過プロセスにおけるろ過水への濁質の漏洩を抑制するとともに、浄水回収率の低下の抑制に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の水処理システム及び水処理システムの洗浄制御方法は、繊維ろ過手段と、膜ろ過手段とを備えた水処理システムにおいて、繊維ろ過手段に移送される原水の濁度に応じて、繊維ろ過手段の洗浄周期を設定することを特徴としている。また、繊維ろ過手段の繊維ろ過差圧に基づいて、上記の洗浄周期にかかわらず繊維ろ過手段の洗浄を行うことを特徴としている。また、繊維ろ過手段に移送される原水量に対する、膜ろ過手段から外部のシステムに供給される処理水(二次処理水)量の割合に予めしきい値を設定し、このしきい値を下回った場合には、上記の洗浄周期にかかわらず、所定の洗浄周期で水処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上の発明によれば、繊維ろ過プロセスにおけるろ過水への濁質の漏洩を抑制するとともに、浄水回収率の低下の抑制に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る浄水処理システムの概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る浄水処理システムに備えられる繊維ろ過手段(繊維状体)の特性を示す図である。
【図3】実施形態1に係る浄水処理システムの水処理工程を示すフロー図である。
【図4】実施形態1に係る繊維ろ過手段及び膜ろ過手段の運転タイムチャートである。
【図5】実施形態2に係る浄水処理システムの概略構成図である。
【図6】実施形態2に係る浄水処理システムの水処理工程を示すフロー図である。
【図7】実施形態2に係る繊維ろ過手段及び膜ろ過手段の運転タイムチャートである。
【図8】実施形態3に係る浄水処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る浄水処理システム及び浄水処理システムの洗浄制御方法について、図を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態1に係る浄水処理システム1の概略構成図である。実施形態1に係る浄水処理システム1は、繊維ろ過手段2と、膜ろ過手段3と、第1洗浄手段4と、第2洗浄手段5及び、制御手段6を備える。
【0012】
繊維ろ過手段2は、ろ過槽7と、ろ過槽7内に設けられる繊維状体8とから構成される。ろ過槽7には、原水槽9からろ過槽7に原水を移送する配管10が接続される。この配管10には、ろ過槽7に原水を移送する繊維ろ過ポンプ27と、ろ過槽7に移送される原水の圧力を計測する一次側圧力計11が設けられる。また、ろ過槽7には、繊維ろ過手段2でろ過された一次処理水を膜ろ過手段3に移送する配管12が接続される。この配管12には、配管12を流通する一次処理水の圧力を計測する二次側圧力計13及び、配管12を流通する一次処理水の濁度を計測する繊維ろ過水濁度計14が設けられる。
【0013】
繊維状体8としては、例えば、繊維を束ねた構造を有するろ材を用いる。繊維状体8の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスルホン、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0014】
原水槽9には、河川水、湖沼水、ダム水、工業用水、下水処理水等の被処理水が原水として導入される。原水槽9に原水を移送する配管15には、原水槽9に流入する原水の流量を計測する原水流量計16が設けられる。また、原水槽9には、原水濁度計17が設けられ、繊維ろ過手段2に移送される原水の濁度が計測される。原水濁度計17の計測値は、制御手段6に送信される。なお、原水槽9から繊維ろ過手段2に移送される原水に、凝集剤を添加する凝集剤添加手段(図示省略)を設けてもよい。凝集剤は原水の水質に応じて適宜選択すればよく、例えば、塩化第二鉄等の鉄系凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系凝集剤等の凝集剤を用いる。これらの凝集剤の原水への注入量は、原水の濁度や色度に応じて適宜設定される。
【0015】
膜ろ過手段3は、繊維ろ過手段2で処理された一次処理水に残留する比較的小さい懸濁物を除去する。膜ろ過手段3に備えられるろ過膜の材質や形状、孔径は、浄水処理システム1から処理水が供給されるシステム(図示省略)が必要とする水質に応じて適宜選択される。例えば、セラミック製無機膜や、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、酢酸セルロース等の有機膜を、平板状、チューブ状、中空糸状とした精密ろ過膜(MF)、限外ろ過膜(UF)、逆浸透膜(RO)等が目的に応じて適宜選択される。そして、膜ろ過手段3には、膜ろ過手段3で処理された二次処理水を浄水槽18に移送する配管19が接続される。
【0016】
浄水槽18は、膜ろ過手段3でろ過された二次処理水を貯留し、この二次処理水を外部のシステムに供給する。浄水槽18には、繊維ろ過手段2の繊維状体8を洗浄する第1洗浄手段4と、膜ろ過手段3のろ過膜を洗浄する第2洗浄手段5及び、浄水槽18に貯留された二次処理水を外部のシステムに供給する配管20が設けられる。この配管20には、浄水槽18から外部のシステムに供給される浄水の流量を計測する浄水流量計21が設けられる。
【0017】
第1洗浄手段4は、浄水槽18に貯留された二次処理水の一部を繊維ろ過手段2に返送する配管22と、この配管22に設けられる繊維ろ過逆洗ポンプ23及び繊維状体8をスクラビングするブロア24より構成される。第1洗浄手段4の洗浄制御は、後述の制御手段6により行われる。なお、配管22または繊維ろ過手段2に、返送される二次処理水に洗浄液(例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を供給する洗浄液供給手段を設けてもよい。
【0018】
第2洗浄手段5は、浄水槽18に貯留された二次処理水を膜ろ過手段3に返送する配管25と、この配管25に設けられる膜ろ過逆洗ポンプ26より構成される。第2洗浄手段5の洗浄は、膜ろ過手段3に移送される一次処理水の濁度や膜ろ過流束(単位時間・単位膜面積あたりの膜ろ過水量m3/m2・日=m/日)に応じて所定の期間経過時毎に実施される。つまり、膜ろ過手段3に移送される一次処理水の濁度や膜ろ過手段3に設けられるろ過膜の特性によって、安定して運転できるろ過流束及び洗浄周期等の条件を予め求めておき、周期的にろ過膜の洗浄を実行することで、安定的に膜ろ過手段3におけるろ過処理を行う。なお、第2洗浄手段5も、第1洗浄手段4と同様に、膜ろ過手段3の前後の配管部12,19にて差圧を測定し、その値に基づいてろ過膜の洗浄を行ってもよい。また、返送される二次処理水に洗浄液(例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を供給する洗浄液供給手段を配管25または膜ろ過手段3に設けてもよい。
【0019】
制御手段6は、第1洗浄手段4による繊維状体8の洗浄を行うタイミング制御する。本発明において、洗浄周期とは、繊維ろ過手段2によってろ過を開始してから終了するまでの期間と、繊維ろ過終了後に所定の期間行われる繊維ろ過手段2の洗浄を行う期間と、を加算した期間とする。つまり、制御手段6は、繊維ろ過手段2のろ過時間と、ろ過時間経過後の繊維ろ過手段2の洗浄時間とを決定する。
【0020】
制御手段6は、浄水処理システム1の運転開始時に、原水濁度計17の計測値に基づいて、第1洗浄手段4の洗浄周期を決定する。原水濁度は、原水濁度計17により常時監視されており、原水濁度に変動があった場合、最も高い濁度に基づいて洗浄周期が決定される。すなわち、予め原水濁度に対応した、洗浄周期を定めておき、原水濁度計17の計測値に応じて、制御手段6が、洗浄周期を決定する。なお、洗浄周期に対応させる原水濁度は、最も高い濁度に限定されるものではなく、例えば、一定期間における原水濁度の平均値や一定期間における濁度の積算値に対応させてもよい。
【0021】
また、制御手段6は、浄水処理システム1の運転時に、一次側圧力計11と二次側圧力計13の計測値の差(繊維ろ過差圧)が予め定められたしきい値より大きくなった場合、上記の洗浄周期にかかわらず、繊維ろ過手段2の洗浄を行う。繊維ろ過差圧のしきい値は、繊維ろ過手段2に設けられる繊維状体8の特性や繊維ろ過手段2の処理量に応じて適宜設定される。例えば、繊維ろ過差圧のしきい値を、50〜100kPaの範囲に設定すると、繊維ろ過手段2において濁質漏洩を抑制して、ろ過処理を行うことができる。そして、繊維ろ過手段2の洗浄後は、再度原水槽9の濁度に基づいて洗浄周期が決定される。
【0022】
また、制御手段6は、原水流量計16と浄水流量計21の計測値に基づいて、浄水回収率を算出する(浄水回収率=浄水流量計21の積算値/原水流量計16の積算値)。制御手段6は、予め浄水回収率にしきい値を設定し、しきい値を下回らない固定洗浄周期を定める。浄水回収率のしきい値は、水処理システム1で処理される二次処理水量や洗浄時に消費される二次処理水量に応じて適宜設定される。例えば、浄水回収率のしきい値を0.80〜0.99(80%〜99%)の範囲で設定すると、繊維ろ過手段2における濁質漏洩を抑制し、かつ十分な浄水回収率でろ過処理を行うことができる。
【0023】
浄水回収率がしきい値より低くなった場合、制御手段6は、繊維ろ過手段2の洗浄周期を固定洗浄周期として繊維ろ過手段2によるろ過処理を行う。例えば、洗浄周期が2時間で、ろ過処理を行っている場合に、浄水回収率がしきい値を下回ったとすると、繊維ろ過手段2でのろ過処理を30分延長した場合に洗浄回収率がしきい値以上となる場合には、制御手段6は、繊維ろ過手段2のろ過処理時間を30分延長し、2.5時間の固定洗浄周期を設定する。
【0024】
浄水回収率は、繊維ろ過手段2(及び膜ろ過手段3)の洗浄に用いられ洗浄排水として系外へ排出される浄水量と、洗浄周期中に浄水処理システム1で処理される二次処理水量に基づいて算出される。すなわち、浄水回収率の低下は、浄水槽18に貯留された浄水を繊維ろ過手段2(及び膜ろ過手段3)の洗浄に用いることに起因する。よって、洗浄排水として系外に排出される浄水量を低減する(洗浄回数または洗浄時間を短くする)若しくは、浄水処理システム1が処理する二次処理水量を増加(ろ過処理時間を延長)させることで、浄水回収率をしきい値より高くすることができる。
【0025】
洗浄回収率にしきい値を設定した場合、制御手段6によって設定される繊維ろ過手段2の固定洗浄周期は、原水濁度によらず特定の洗浄周期となる。そして、繊維ろ過手段2の洗浄周期を固定洗浄周期とした場合でも、一次処理水に濁質漏洩が発生しないように、繊維ろ過手段2のろ過流束を低減する等の方法で繊維ろ過手段2の単位時間あたりの処理量を低下させる対処や、繊維ろ過手段2の繊維状体8の閉塞時に警報を出力する等の対処が必要となる。なお、繊維ろ過手段2に設けられる繊維状体8の閉塞は、繊維ろ過手段2で処理された一次処理水が流出する繊維ろ過手段2の流出部に流量計を設置し、ろ過時に一次処理水の流量が、一定流量以下であることを「閉塞」と判断することで検出することができる。すなわち、一次処理水の流量に基づいて、繊維状体8の閉塞を検出することで、繊維状体8が閉塞したことを警告する警報を出力することができる。
【0026】
図2に、繊維ろ過手段2の処理特性を示す。図2に示すように、繊維ろ過手段2に移送される原水濁度が上昇すると、繊維ろ過手段2の繊維ろ過差圧(繊維ろ過手段2に移送される原水の圧力と、繊維ろ過手段2で処理された処理水の圧力との差)が上昇する。この時、原水濁度の上昇とともに、繊維ろ過手段2の繊維ろ過水(一次処理水)の濁度が上昇し始める。一次処理水の濁度の上昇は、繊維ろ過差圧の上昇より早い時間に起こるので、一次処理水の濁度をモニタすることで、繊維状体8の閉塞による繊維ろ過差圧の上昇が起こる前に、繊維状体8の洗浄を行うことができる。よって、繊維ろ過手段2の繊維ろ過差圧にしきい値を設定する代わりに、一次処理水の濁度にしきい値を設定し、一次処理水の濁度に基づいて、繊維状体8(繊維ろ過手段2)の洗浄を行うと、繊維状体8の閉塞による繊維ろ過差圧の上昇が起こる前に、繊維状体8を洗浄することができる。なお、一次処理水の濁度のしきい値は、繊維ろ過手段2の繊維状体8の特性や原水の水質等により適宜設定される。例えば、一次処理水の濁度のしきい値を1〜3の範囲で設定すると、繊維ろ過差圧の上昇が起こる前に繊維状体8の洗浄を行うことができる。
【0027】
次に、浄水処理システム1の繊維ろ過手段2の洗浄制御方法について説明する。図3に示す実施形態の説明では、繊維ろ過手段2(または、膜ろ過手段3)の洗浄時間は、予め定められた一定期間とした(図6に示すフローについても同様である)。また、ステップS5では、繊維ろ過差圧のしきい値に基づいて、繊維ろ過手段2の洗浄制御を行っているが、一次処理水の濁度に基づいて繊維ろ過手段2の洗浄制御を行っても繊維ろ過手段2の閉塞を抑制してろ過処理を行うことができる。
【0028】
以下に、実施形態1に係る浄水処理システム1の運転条件の一例を示す。なお、浄水処理システム1の運転条件は、プラントによって異なるものであり、運転条件は、この実施例に限定されるものではなく、処理する原水の水質や、必要とされる浄水量に応じて運転条件(ろ過流束や逆洗間隔等)が適宜設定される。
(繊維ろ過手段2の運転条件)
原水:河川水
繊維ろ過ろ材(繊維状体8):ポリプロピレン製繊維
繊維ろ過流量:5.0m3/時
凝集剤:PAC
逆洗時間:30分
(膜ろ過手段3の運転条件)
ろ過膜:ポリフッ化ビニリデン(膜面積50m2
膜ろ過流束:1.8〜2.6m/日
逆洗間隔(膜ろ過時間):30分
逆洗時間:1分
この運転条件において、以下に説明する洗浄制御方法により、浄水処理システム1の洗浄を制御することで、繊維ろ過手段2の一次処理水の濁質漏洩を抑制し、且つ十分な浄水回収率で浄水処理システム1を自動運転することができた。
【0029】
図3に、実施形態1に係る浄水処理システム1の繊維ろ過手段2の洗浄制御方法を示すフロー図を示す。
【0030】
まず、浄水処理システム1の運転時に、原水槽9の濁度に応じて、制御手段6が繊維ろ過手段2の洗浄周期を決定する(ステップS1)。表1に、原水濁度計17の濁度の値(原水濁度)と、その濁度に対応して決定される洗浄周期との関係を例示する。なお、原水濁度と洗浄周期の関係は、表1に示した関係に限定されるものでなく、原水濁度が高くなるにしたがって、繊維ろ過手段2を洗浄する洗浄周期が短くなる(ろ過処理時間が短くなる)ように適宜洗浄周期を決定することで、一次処理水の濁質漏洩を抑制することができる。
【0031】
【表1】

【0032】
洗浄周期が決定されると、その洗浄周期に基づいて、繊維ろ過手段2が、ろ過処理を行う(ステップS2)。なお、膜ろ過手段3においても、一次処理水の水質や膜ろ過手段3の処理条件等に基づいて、膜ろ過手段3の洗浄周期が定められ(ステップT1)、定められた洗浄周期に基づいて、膜ろ過手段3が、繊維ろ過手段2で処理された繊維ろ過水(一次処理水)のろ過処理を行う(ステップT2)。なお、膜ろ過手段3の洗浄周期は、繊維ろ過手段2のろ過処理が待機状態とならないように、繊維ろ過手段2のろ過処理時間と、膜ろ過手段3のろ過処理時間とを同じ時間とした。
【0033】
繊維ろ過手段2によるろ過処理が開始された後、洗浄周期で定められた繊維ろ過終了時間に達した場合(ステップS3でYesの場合)、制御手段6は、第1洗浄手段4に繊維ろ過手段2(繊維状体8)を洗浄させる(ステップS4)。ステップS4では、繊維ろ過ポンプ27を停止し、繊維ろ過逆洗ポンプ23及びブロア24を駆動して、繊維ろ過手段2の逆洗を行う。そして、繊維ろ過手段2を逆洗した排水は排出配管28より排出される。繊維ろ過手段2の洗浄後、原水濁度(原水濁度計17の計測値)に基づいて洗浄周期が決められ(ステップS1)、再び繊維ろ過手段2によるろ過処理が開始される(ステップS2)。
【0034】
繊維ろ過手段2によるろ過処理が開始された後、洗浄周期で定められた繊維ろ過終了時間に達していない場合(ステップS3でNoの場合)、制御手段6は、繊維ろ過手段2の繊維ろ過差圧(一次側圧力計11と二次側圧力計13との差)がしきい値を超えていないか判断し、繊維ろ過差圧がしきい値を超えている場合(ステップS5でYesの場合)、決定された洗浄周期にかかわらず、第1洗浄手段4に繊維ろ過手段2を洗浄させる(ステップS4)。
【0035】
繊維ろ過差圧がしきい値を超えていない場合(ステップS5でNoの場合)、制御手段6は、さらに、浄水回収率を算出し、浄水回収率が予め定められたしきい値を下回っていないか判断する(ステップS6)。そして、浄水回収率が予め定められたしきい値を下回った場合(ステップS6でYesの場合)、制御手段6は、原水濁度によらない洗浄周期を新たに設定し、この設定された洗浄周期(固定洗浄周期)に基づいて、繊維ろ過手段2がろ過処理を行う(ステップS7)。
【0036】
なお、膜ろ過手段3のろ過膜が洗浄中である場合(ステップS8でYesの場合)、制御手段6は、繊維ろ過手段2のろ過処理を停止させ、繊維ろ過手段2は、ろ過待機状態となる(ステップS9)。同様に、繊維ろ過手段2が洗浄中である場合(ステップT5でYesの場合)、制御手段6は、膜ろ過手段3のろ過処理を停止させ、膜ろ過手段3は、ろ過待機状態となる。
【0037】
図4に、繊維ろ過手段2と膜ろ過手段3の運転タイムチャートを示す。図4に示すように、浄水処理システム1において、ろ過処理が開始されてから、それぞれのろ過手段で決定された洗浄周期に基づいて、ろ過処理と洗浄処理が行われる。このとき、一方のろ過手段が洗浄状態である場合、他方のろ過手段は、ろ過待機状態となる。例えば、繊維ろ過手段2と膜ろ過手段3の洗浄周期が同じ場合、繊維ろ過手段2と膜ろ過手段3の洗浄開始時間は同時となるが、繊維ろ過手段2の洗浄時間が30分程度なのに対して、膜ろ過手段2の洗浄時間は1分程度と短いので、膜ろ過手段3の洗浄が終了した後、繊維ろ過手段2のろ過が開始されるまでの間、膜ろ過手段3はろ過待機状態となる。
【0038】
なお、膜ろ過手段3の洗浄時期を繊維ろ過手段2の洗浄時期に合わせると、繊維ろ過手段3が待機状態となることが回避されるので、浄水処理システム1の浄水回収率が向上する。
【0039】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る浄水処理システム及び水処理システムの洗浄制御方法について、図5〜7を参照して詳細に説明する。図5に示す実施形態2に係る浄水処理システム30は、実施形態1に係る浄水処理システム1において、繊維ろ過手段2と膜ろ過手段3との間に、一次処理水を貯留した後、貯留した一次処理水を膜ろ過手段3に移送する前処理槽31を設けたことを特徴としている。よって、実施形態2に係る浄水処理システム30の説明において、図1に示した実施形態1に係る浄水処理システム1と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、図6に示す実施形態2に係る浄水処理システム30の洗浄制御方法を示すフロー図において、図3に示した実施形態1に係る浄水処理システム1の洗浄制御方法と同様のステップには、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
図5に示すように、本発明の実施形態2に係る浄水処理システム30は、繊維ろ過手段2と、膜ろ過手段3と、第1洗浄手段4と、第2洗浄手段5と、前処理槽31及び、制御手段6を備える。
【0041】
前処理槽31は、繊維ろ過手段2で処理された一次処理水が移送される配管32と、前処理槽31に貯留された一次処理水を膜ろ過手段3に移送する配管33が設けられる。前処理槽31には、配管32を介して一次処理水が移送され、一次処理水が貯留される。前処理槽31に貯留された一次処理水は、配管33に設けられた膜ろ過ポンプ34により配管33を介して膜ろ過手段3に移送される。前処理槽31には、図示省略の水位計が設けられ、前処理槽31に貯留された一次処理水の水位が計測される。この水位計の計測値は、制御手段6に送信される。
【0042】
実施形態2に係る浄水処理システム30は、前処理槽31を設けることにより、繊維ろ過手段2(若しくは、膜ろ過手段3)が洗浄中であっても、膜ろ過手段3(若しくは、繊維ろ過手段2)のろ過処理を実行することができる。
【0043】
図6は、実施形態2に係る浄水処理システム30の洗浄制御方法を示すフロー図である。この図を参照して、実施形態2に係る浄水処理システム30の繊維ろ過手段2の洗浄制御方法について詳細に説明する。
【0044】
まず、浄水処理システム30の運転時に、原水槽9の濁度に応じて、制御手段6が繊維ろ過手段2の洗浄周期を決定する(ステップS1)。
【0045】
洗浄周期が決定されると、洗浄周期に基づいて、繊維ろ過手段2がろ過処理を行う(ステップS2)。なお、膜ろ過手段3においても、一次処理水の水質や膜ろ過手段3の処理条件等に基づいて、膜ろ過手段3の洗浄周期が定められ(ステップT1)、この洗浄周期に基づいて、膜ろ過手段3が繊維ろ過水(一次処理水)のろ過を行う(ステップT2)。
【0046】
繊維ろ過手段2によるろ過が開始された後、洗浄周期で定められた繊維ろ過終了時間に達した場合(ステップS3でYesの場合)、制御手段6は、繊維ろ過手段2のろ過処理を停止させ、第1洗浄手段4に、繊維ろ過手段2(繊維状体8)を洗浄させる(ステップS4)。ステップS4では、繊維ろ過ポンプ27を停止し、繊維ろ過逆洗ポンプ23及びブロア24を駆動して、繊維ろ過手段2の逆洗を行う。そして、繊維ろ過手段2を洗浄した排水は排出配管28より排出される。繊維ろ過手段2の洗浄後、原水濁度(原水濁度計17の計測値)に基づいて洗浄周期が決められ(ステップS1)、再び繊維ろ過手段2によるろ過処理が開始される(ステップS2)。
【0047】
繊維ろ過手段2によるろ過が開始された後、洗浄周期で定められた繊維ろ過終了時間に達しない場合(ステップS3でNoの場合)、制御手段6は、繊維ろ過手段2の繊維ろ過差圧がしきい値を超えていないか判断する(ステップS5)。そして、繊維ろ過差圧がしきい値を超えている場合(ステップS5でYesの場合)、決定された洗浄周期にかかわらず、第1洗浄手段4に繊維ろ過手段2を洗浄させる(ステップS4)。
【0048】
繊維ろ過差圧がしきい値を超えていない場合(ステップS5でNoの場合)、制御手段6は、さらに、浄水回収率を算出し、浄水回収率が予め定められたしきい値を下回っていないか判断する(ステップS6)。そして、浄水回収率が予め定められたしきい値を下回った場合(ステップS6でYesの場合)、制御手段6は、原水濁度によらない洗浄周期を新たに設定し、この設定された洗浄周期に基づいて、繊維ろ過手段2がろ過処理を行う(ステップS7)。
【0049】
なお、前処理槽31に貯留された一次処理水の水位が予め定められた水位を超えている場合、(ステップS10でYesの場合)、制御手段6は、繊維ろ過手段2のろ過処理を停止させ、繊維ろ過手段2は、ろ過待機状態となる(ステップS9)。同様に、前処理槽31に貯留された一次処理水の水位が予め定められた水位より低い場合(ステップT7でNoの場合)、制御手段6は、膜ろ過手段3のろ過処理を停止させ、膜ろ過手段3は、ろ過待機状態となる。
【0050】
図7に、実施形態2に係る浄水処理システム30の繊維ろ過手段2と膜ろ過手段3の運転タイムチャートを示す。図7に示すように、実施形態2に係る水処理システム30において、ろ過処理が開始されてから、繊維ろ過手段2及び膜ろ過手段3は、それぞれ決定された洗浄周期に基づいて、ろ過処理と洗浄処理が行われる。このとき、前処理槽31に貯留された一次処理水の水位が予め定められた水位を超えている間は、繊維ろ過手段2の洗浄を行っている間も膜ろ過手段3でのろ過処理を継続することができる。同様に、前処理槽31に貯留された一次処理水の水位が予め定められた水位以下である場合は、膜ろ過手段3の洗浄を行っている間も繊維ろ過手段2のろ過処理を行うことができる。
【0051】
なお、図8に示すように、実施形態3に係る浄水処理システム38として、実施形態2に係る浄水処理システム30において、前処理槽31に、繊維ろ過手段2を洗浄する第1洗浄手段35を設ける形態としてもよい。この場合、第1洗浄手段35は、前処理槽31に貯留された一次処理水を繊維ろ過手段2に返送する配管36と、この配管36に設けられる繊維ろ過逆洗ポンプ37と、ブロア24から構成される。そして、前処理槽31に貯留された一次処理水が繊維ろ過手段2の洗浄に用いられる。そして、実施形態3に係る浄水処理システム38においても、実施形態2に係る浄水処理システム30と同様に、繊維ろ過手段2及び膜ろ過手段3の洗浄制御を行うことができる。
【0052】
以上のように、本発明の水処理システムによれば、繊維ろ過手段で処理された一次処理水の濁度がしきい値を超えないように繊維ろ過手段の洗浄を制御することができる。さらに、浄水回収率が予め定められたしきい値を超えないように、繊維ろ過手段の洗浄周期を決定するので、繊維ろ過手段の洗浄を頻繁に行うことによる浄水回収率の低下を防止することができる。
【0053】
本発明の水処理システムによれば、浄水回収率の低下を抑制し、且つ原水の水質に応じて、繊維ろ過手段の洗浄を行うことができるので、水処理システムに導入される原水の水質の変化に応じて、繊維ろ過手段の水処理を制御することができる。よって、水処理システムの制御を自動化することができる。
【0054】
また、膜ろ過手段の洗浄時間に対して、繊維ろ過手段の洗浄時間は長いので、浄水回収率が所定の値を下回らないように繊維ろ過手段の洗浄周期を決定することで、水処理システムの浄水回収率の低下を抑制し、且つ一次処理水の濁質漏洩を抑制することができる。
【0055】
なお、繊維ろ過手段及び膜ろ過手段で逆洗を行うにあたっては、浄水槽の水位レベルが逆洗用の水量を確保できる水位以上にあることが逆洗の実施条件となる。
【符号の説明】
【0056】
1,30,38…浄水処理システム
2…繊維ろ過手段
3…膜ろ過手段
4,35…第1洗浄手段
5…第2洗浄手段
6…制御手段
7…ろ過槽
8…繊維状体
11…一次側圧力計(第1圧力計)
13…二次側圧力計(第2圧力計)
14…繊維ろ過水濁度計
17…原水濁度計
16…原水流量計(第1流量計)
21…浄水流量計(第2流量計)
31…前処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が移送されるろ過槽と、当該ろ過槽内に配置され前記原水中の懸濁物を除去する繊維状体とからなる繊維ろ過手段と、
前記繊維ろ過手段と連結され、前記繊維ろ過手段で処理された一次処理水中の懸濁物を除去する膜ろ過手段と、
前記一次処理水の一部または、前記膜ろ過手段で処理された二次処理水の一部で前記繊維状体を洗浄する第1洗浄手段と、
前記二次処理水の一部で膜ろ過手段を洗浄する第2洗浄手段と、
前記ろ過槽に移送される原水の濁度に基づいて、前記繊維ろ過手段の洗浄周期を設定する制御手段と、を備える
ことを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記ろ過槽に移送される原水の圧力を計測する第1圧力計と、
前記ろ過槽から排出される一次処理水の圧力を計測する第2圧力計と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1圧力計と前記第2圧力計の計測値の差に予めしきい値を設定し、前記第1圧力計と前記第2圧力計の計測値の差が、当該しきい値を超えた場合に、前記第1洗浄手段に前記繊維状体を洗浄させる
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記一次処理水の濁度を計測する濁度計をさらに備え、
前記制御手段は、前記一次処理水の濁度が予め定められたしきい値を超えた場合に、前記第1洗浄手段に前記繊維状体を洗浄させる
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記繊維ろ過手段に移送される原水の流量を計測する第1流量計と、
前記膜ろ過手段から系外に供給される二次処理水の流量を計測する第2流量計と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1流量計の計測値の積算値と、前記第2流量計の計測値の積算値の比を算出し、この比が予め定められたしきい値以上となるように、前記繊維ろ過手段の洗浄周期を設定する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記繊維ろ過手段と前記膜ろ過手段との間に、前記一次処理水を貯留した後に、当該一次処理水を前記膜ろ過手段に移送する前処理槽を設ける
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
原水が移送されるろ過槽と、当該ろ過槽内に配置され前記原水中の懸濁物を除去する繊維状体とからなる繊維ろ過手段と、
前記繊維ろ過手段と連結され、前記繊維ろ過手段で処理された一次処理水中の懸濁物を除去する膜ろ過手段と、
前記一次処理水の一部または前記膜ろ過手段で処理された二次処理水の一部で前記繊維状体を洗浄する第1洗浄手段と、
前記二次処理水の一部で膜ろ過手段を洗浄する第2洗浄手段と、を備える水処理システムの繊維状体の洗浄制御方法であって、
前記ろ過槽に移送される原水の濁度に基づいて前記繊維ろ過手段の洗浄周期を決定するとともに、前記繊維ろ過手段のろ過処理中に、前記繊維ろ過手段に移送される原水の圧力と前記繊維ろ過手段で処理された一次処理水の圧力との差が、予め定められたしきい値を超えた場合には、前記洗浄周期にかかわらず、前記繊維状体を洗浄し、
前記繊維ろ過手段に移送される原水量に対する、前記ろ過手段で処理された二次処理水から、前記第1洗浄手段及び前記第2洗浄手段で消費された二次処理水を引いた二次処理水量の割合が所定の値より下回った場合、前記洗浄周期にかかわらず、前記割合が所定の値以上となるように、前記繊維ろ過手段の洗浄周期を設定する
ことを特徴とする水処理システムの洗浄制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−254389(P2012−254389A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127245(P2011−127245)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】