説明

水処理システム

【課題】膜濾過装置を備えた水処理システムにおいて、前記膜濾過装置への補給水流量に応じた量の薬剤を添加する。
【解決手段】給水ライン3に設けられた濾過膜モジュール4,給水ポンプ5および処理水流量センサ6と、前記濾過膜モジュール4と接続された濃縮水ライン7とを有する構成の膜濾過装置2を備えた水処理システム1であって、補給水へ薬剤を添加する薬剤添加装置18を備え、この薬剤添加装置18は、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量と前記濃縮水ライン7を構成する排水ライン9に設けられた排水流量調節装置8によって調節された排水流量とを足し合わせて算出される補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量を調節する添加量調節部として薬注ポンプ21を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水ラインに設けられた濾過膜モジュールにより給水を濾過する膜濾過装置を備えた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,温水ボイラ,クーリングタワー,給湯器等の熱機器や、洗浄装置等の水使用機器などの機器への給水の水処理システムとして、膜濾過装置を備えた水処理システムが知られている。前記膜濾過装置としては、前記機器への給水ラインに設けられた濾過膜モジュールと、この濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプと、前記濾過膜モジュールと接続された濃縮水ラインとを備えた膜濾過装置がある。このような構成の膜濾過装置においては、前記濾過膜モジュールの一側から給水が流入し、他方から処理水と濃縮水とが流出する。処理水は、前記給水ラインを流れて前記機器へ供給される。一方、濃縮水は前記濃縮水ラインへ流出する。そして、クロスフロー型の膜濾過装置においては、前記濃縮水ラインは、排水ラインと還流ラインとに分岐しており、前記濾過膜モジュールから流出した濃縮水は、一部が前記排水ラインを介して系外へ排水されるとともに、残部が前記還流ラインを介して前記濾過膜モジュールの上流側へ還流される。
【0003】
ここで、前記濾過膜モジュールからの処理水流量は、水温による水の粘性や膜特性の変化によって大きく変動する。処理水流量は、水温が低くなるほど少なくなり、一方で水温が高くなるほど多くなる。したがって、水温変動の影響を受けずに常に一定の処理水流量を確保するために、前記給水ラインに定流量弁を設け、低温時においても一定の処理水流量を確保することができるように前記給水ポンプの運転圧力を予め高く設定する運転を行うことが考えられる。しかし、このような運転を行うと、高温時には過剰な運転圧力になるため、前記給水ポンプにおいて無駄な電力が消費されていることになる。そこで、本願出願人は、前記膜濾過装置において、前記給水ポンプの消費電力を抑制するため、前記濾過膜モジュールの下流側の前記給水ラインに処理水流量センサを設け、この処理水流量センサの検出値に基づいて、前記濾過膜モジュールからの処理水流量が一定流量になるように、前記給水ポンプの回転数を制御する膜濾過装置を特許文献1において提案している。
【特許文献1】特開2005−296944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記濾過膜モジュールを構成する濾過膜は、給水中に溶存する次亜塩素酸ナトリウムなどに由来する酸化剤によって劣化する。この酸化剤を除去する方法としては、前記濾過膜モジュールへ供給される給水に、酸化剤除去剤を添加する方法が考えられる。
【0005】
酸化剤除去剤の添加方法としては、前記膜濾過装置の運転時に、補給水,すなわち前記給水ラインにおける前記還流ラインが接続された部分よりも上流側を流れる給水に、一定量の酸化剤除去剤を添加する方法が考えられる。
【0006】
ここで、本願出願人は、特許文献1に記載の前記膜濾過装置において、処理水流量の低下や処理水の水質悪化を防止するとともに、必要量以上の濃縮水の排水を防止するために、前記濾過膜モジュールへの給水等の水温または前記濾過膜モジュールへの給水の水質等に基づいて、濃縮水の排水流量を調節する膜濾過装置の運転方法を提案している(特開2006−305499号)。この運転方法では、前記濾過膜モジュールへの給水等の水温または前記濾過膜モジュールへの給水の水質等に応じて、濃縮水の排水流量が変化することになる。また、本願出願人は、前記濾過膜の目詰まりを防止するために、所定間隔ごとに前記濾過膜モジュールからの濃縮水をブローする膜濾過装置の運転方法を提案している(特開2005−279460号)。この運転方法では、濃縮水の排水流量は、ブロー時に増えることになる。
【0007】
ところで、補給水の流量は、処理水流量と濃縮水の排水流量とを足した流量である。したがって、特許文献1に記載の前記膜濾過装置では、処理水流量が一定になるような運転が行われているが、前記のように濃縮水の排水流量が変化することになると、補給水流量が変化する。補給水流量が変化した場合、補給水への酸化剤除去剤の添加量が一定になっていると、過剰に酸化剤除去剤が添加されることになって無駄になったり、その逆に添加量が不足して十分に酸化剤が除去しきれなくなったりする。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、膜濾過装置を備えた水処理システムにおいて、前記膜濾過装置への補給水流量に応じた量の薬剤を添加することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、給水ラインに設けられた濾過膜モジュールと、この濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプと、前記濾過膜モジュールの下流側の前記給水ラインに設けられた処理水流量センサと、前記濾過膜モジュールと接続された濃縮水ラインとを有し、前記濃縮水ラインは、排水流量調節装置が設けられた排水ラインと還流ラインとに分岐し、この還流ラインは、前記濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインと接続された構成の膜濾過装置を備えた水処理システムであって、前記給水ラインにおける前記還流ラインが接続された部分よりも上流側を流れる補給水へ薬剤を添加する薬剤添加装置を備え、この薬剤添加装置は、前記処理水流量センサによって検出された処理水流量と前記排水流量調節装置によって調節された排水流量とを足し合わせて算出される補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量を調節する添加量調節部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、給水ラインに設けられた濾過膜モジュールと、この濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプと、前記濾過膜モジュールの下流側の前記給水ラインに設けられた処理水流量センサと、前記濾過膜モジュールと接続された濃縮水ラインとを有し、前記濃縮水ラインは、排水流量調節装置が設けられた排水ラインと還流ラインとに分岐し、この還流ラインは、前記濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインと接続された構成の膜濾過装置を備えた水処理システムであって、前記給水ラインにおける前記還流ラインが接続された部分よりも上流側を流れる補給水へ薬剤を添加する薬剤添加装置を備え、また前記膜濾過装置は、前記排水ラインに設けられた排水流量センサを有し、さらに前記薬剤添加装置は、前記処理水流量センサによって検出された処理水流量と前記排水流量センサによって検出された排水流量とを足し合わせて算出される補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量を調節する添加量調節部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、前記処理水流量センサによって検出された処理水流量と前記排水流量調節装置によって調節された排水流量とを足し合わせることにより算出された補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量が前記添加量調節部によって調節される。したがって、前記薬剤添加装置により、補給水流量に応じた量の薬剤を添加することができる。また、補給水流量を検出するために新たに流量センサを設けることなく、既存の設備である前記処理水流量センサと前記排水流量調節装置とから補給水流量を算出することができる。これにより、低コストで補給水流量に応じた量の薬剤を添加することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記処理水流量センサによって検出された処理水流量と前記排水流量センサによって検出された排水流量とを足し合わせることにより算出された補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量が前記添加量調節部によって調節される。したがって、前記薬剤添加装置により、補給水流量に応じた量の薬剤を添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、この発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
まず、この発明に係る水処理システムの第一実施形態について説明する。図1は、この発明に係る水処理システムの第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【0014】
図1に示す水処理システム1は、ボイラ等の熱機器や、洗浄装置等の水使用機器などの機器(図示省略)への給水を濾過する膜濾過装置2を備えている。この膜濾過装置2は、特開2005−296944号公報に記載された後述する定流量制御を行う膜濾過装置である。また、この膜濾過装置2は、特開2006−305499号に記載された後述する濃縮水の排水流量の調節を行い、さらに特開2005−279460号公報に記載された後述する濃縮水のブローを行う膜濾過装置である。具体的な構成を説明すると、この膜濾過装置2は、給水ライン3に設けられ給水を濾過処理する濾過膜モジュール4と、この濾過膜モジュール4の上流側の前記給水ライン3に設けられた給水ポンプ5と、前記濾過膜モジュール4の下流側の前記給水ライン3に設けられた処理水流量センサ6と、前記濾過膜モジュール4と接続された濃縮水ライン7とを有している。
【0015】
前記濾過膜モジュール4は、濾過膜として、具体的には逆浸透膜(RO膜)やナノ濾過膜(NF膜)などを使用して形成されている。前記逆浸透膜および前記ナノ濾過膜は、ポリアミド系,ポリエーテル系などの合成高分子膜である。そして、前記逆浸透膜は、分子量が数十程度の物質の透過を阻止できる液体分離膜である。また、前記ナノ濾過膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度の物質)の透過を阻止できる液体分離膜である。前記ナノ濾過膜は、濾過機能の点において、前記逆浸透膜と、分子量が1,000〜300,000程度の物質を濾別可能な限外濾過膜(UF膜)との中間に位置する機能を有する。前記濾過膜は、前記機器への給水が、所望の水質になるように選択される。
【0016】
前記濾過膜モジュール4では、一側から流入した給水が、前記濾過膜で濾過され、他側から透過水と濃縮水とが分離されて流出するようになっている。透過水は、前記給水ライン3を流れ、前記機器へ供給されるようになっている。
【0017】
一方で、濃縮水は、前記濃縮水ライン7へ流出するようになっている。ここで、この濃縮水ライン7は、特開2006−305499号に記載の膜濾過装置と同様に、排水流量調節装置8が設けられた排水ライン9と、還流ライン10とに分岐しており、この還流ライン10は、前記給水ポンプ5の上流側の前記給水ライン3と接続されている。前記濾過膜モジュール4から流出した濃縮水は、一部が前記排水ライン9から排水されるとともに、残部が前記還流ライン10を介して前記給水ポンプ5の上流側に還流されるようになっている。
【0018】
ちなみに、前記膜濾過装置2では、前記濾過膜モジュール4からの処理水流量と、濃縮水の排水流量とを合わせた流量の給水が、原水側から補給され、この補給水と前記還流ライン10を介して還流された濃縮水とが、前記濾過膜モジュール4へ供給されるようになっている。
【0019】
前記排水流量調節装置8は、前記排水ライン9を第一排水ライン11,第二排水ライン12および第三排水ライン13に分岐し、これら各排水ライン11,12,13に、それぞれ第一排水バルブ14,第二排水バルブ15および第三排水バルブ16を設けることにより構成されている。
【0020】
前記各排水バルブ14,15,16は、所望の濃縮水の排水流量になるように、第一制御部17により開閉制御されるようになっている。たとえば、前記第一制御部17は、処理水流量の低下や処理水の水質悪化を防止するとともに、必要量以上の濃縮水の排水を防止できる濃縮水の排水流量になるように、前記濾過膜モジュール4への給水等の水温または前記濾過膜モジュール4への給水の水質等に基づいて、前記各排水バルブ14,15,16を開閉制御する(特開2006−305499号参照)。また、前記第一制御部17は、前記濾過膜の目詰まりを防止するために、所定間隔ごとに前記各排水バルブ14,15,16を全て開状態にし、濃縮水をブローするようになっている(特開2005−279460号参照)。ちなみに、これらの制御に必要となる温度センサや水質センサ等については図示省略されている。
【0021】
前記のようにして前記各排水バルブ14,15,16を開閉制御する前記制御部17には、前記各排水バルブ14,15,16の開閉状態と、濃縮水の排水流量との関係が記憶されており、前記各排水バルブ14,15,16によって調節された濃縮水の排水流量が、前記制御部17によって把握されるようになっている。
【0022】
また、前記第一制御部17には、前記処理水流量センサ6の検出値が入力されるようになっている。そして、前記第一制御部17は、前記処理水流量センサ6の検出値に基づいて、前記濾過膜モジュール4からの処理水流量が一定になるように、前記給水ポンプ5の回転数を制御する定流量制御を行うようになっている(特開2005−296944号公報参照)。
【0023】
さて、前記水処理システム1は、ここまで説明した前記膜濾過装置2の他に、薬剤添加装置18を備えている。この薬剤添加装置18は、前記濾過膜を劣化させる次亜塩素酸ナトリウムなどに由来する酸化剤を除去するための薬剤,すなわち酸化剤除去剤を前記給水ライン3へ添加する装置である。酸化剤除去剤としては、たとえば重亜硫酸ナトリウムが用いられる。そして、この薬剤添加装置18は、前記給水ライン3における前記還流ライン10が接続された部分よりも上流側を流れる補給水へ酸化剤除去剤を添加するようになっている。
【0024】
前記薬剤添加装置18は、薬剤添加ライン19を介して前記還流ライン10の上流側の前記給水ライン3と接続された薬剤貯留部20を備えている。この薬剤貯留部20には、酸化剤除去剤が貯留されている。
【0025】
前記薬剤添加ライン19には薬注ポンプ21が設けられており、この薬注ポンプ21により、前記薬剤貯留部20に貯留された酸化剤除去剤が、前記給水ライン3へ添加されるようになっている。前記薬注ポンプ21は、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量と前記排水流量調節装置8によって調節された排水流量とを足し合わせて算出される補給水流量に基づいて、補給水への酸化剤除去剤の添加量を調節する添加量調節部になっている。
【0026】
前記薬注ポンプ21による酸化剤除去剤の添加量の調節について具体的に説明する。前記薬注ポンプ21は第二制御部22によって制御され、これにより酸化剤除去剤の添加量が調節されるようになっている。前記第二制御部22には、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量および前記排水流量調節装置8によって調節された排水流量が、前記第一制御部17から入力されるようになっている。前記第二制御部22は、前記第一制御部17から入力された処理水流量および排水流量とを足し合わせ、補給水流量を算出するようになっている。そして、前記第二制御部22が、この補給水流量に基づいて前記薬注ポンプ21を制御することにより、補給水流量に応じた量の酸化剤除去剤が添加されるようになっている。
【0027】
さて、前記水処理システム1の作用について説明する。前記水処理システム1における前記膜濾過装置2においては、前記第一制御部17が、前記処理水流量センサ6の検出値に基づいて、前記濾過膜モジュール4からの処理水流量が一定になるように、前記給水ポンプ5を制御する(定流量制御)。
【0028】
また、前記第一制御部17は、前記排水流量調節装置8を制御して濃縮水の排水流量を調節する。具体的には、前記第一制御部17は、処理水流量の低下や処理水の水質悪化を防止するとともに、必要量以上の濃縮水の排水を防止できる濃縮水の排水流量になるように、前記濾過膜モジュール4への給水等の水温または前記濾過膜モジュール4への給水の水質等に基づいて、前記各排水バルブ14,15,16を開閉制御する。また、前記第一制御部17は、前記濾過膜の目詰まりを防止するために、所定間隔ごとに前記各排水バルブ14,15,16を全て開状態にし、濃縮水をブローする。
【0029】
前記第一制御部17は、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量および前記排水流量調節装置8によって調節された濃縮水の排水流量を、前記第二制御部22へ出力する。前記第二制御部22は、前記第一制御部17から入力された処理水流量と排水流量とを足し合わせて補給水流量を算出する。そして、前記第二制御部22は、算出された補給水流量に応じた酸化剤除去剤の添加量になるように、前記薬注ポンプ21を制御する。
【0030】
以上説明した前記水処理システム1によれば、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量と前記排水流量調節装置8によって調節された排水流量とを足し合わせることにより算出された補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量が前記薬注ポンプ21によって調節される。したがって、前記薬剤添加装置18により、補給水流量に応じた量の薬剤を添加することができる。
【0031】
また、前記処理水流量センサ6および前記排水流量調節装置8は、前記膜濾過装置2に備わった既存の設備である。したがって、前記水処理システム1によれば、補給水流量を検出するために新たに流量センサを設ける必要はなく、既存の設備である前記処理水流量センサ6と前記排水流量調節装置8とから補給水流量を算出することができる。これにより、低コストで補給水流量に応じた量の酸化剤除去剤を添加することができる。
【0032】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理システムの第二実施形態について説明する。図2は、この発明に係る水処理システムの第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。図2において、前記第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0033】
この第二実施形態の水処理システム30においては、前記薬剤添加ライン19の接続箇所よりも下流側の前記給水ライン3が、第一給水ライン31,第二給水ライン32および第三給水ライン33に分岐しており、各給水ライン31,32,33に、それぞれ第一膜濾過装置34,第二膜濾過装置35および第三膜濾過装置36が設けられている。
【0034】
前記各膜濾過装置34,35,36は、前記第一実施形態における前記膜濾過装置2と同一の構成になっている(図2においては、前記各膜濾過装置34,35,36における前記各第一制御部17と、前記各給水ポンプ5,前記各処理水流量センサ6および前記各排水バルブ14,15,16とを接続する破線は省略されている)。
【0035】
さて、前記水処理システム30の作用について説明する。ここでは、前記第一実施形態の水処理システム1の作用と異なるもののみについて説明する。前記水処理システム30においては、前記各膜濾過装置34,35,36における前記各第一制御部17が、前記各膜濾過装置34,35,36における前記各処理水流量センサ6によって検出された前記各濾過膜モジュール4からの各処理水流量および前記各排水流量調節装置8によって調節された濃縮水の各排水流量を、前記第二制御部22へ出力する。前記第二制御部22は、まず前記第一制御部17から入力された前記各膜濾過装置34,35,36における各処理水流量と各排水流量とを足し合わせ、前記各膜濾過装置34,35,36への各補給水流量,すなわち前記各給水ライン31,32,33を流れる各補給水流量を算出する。つぎに、前記第二制御部22は、前記各膜濾過装置34,35,36への各補給水流量を足し合わせ、前記各給水ライン31,32,33へ分岐する前の前記給水ライン3を流れる補給水流量,すなわち前記薬剤添加ライン19が接続された部分の前記給水ライン3を流れる補給水流量を算出する。そして、前記第一実施形態と同様に、前記第二制御部22は、算出された補給水流量に応じた酸化剤除去剤の添加量になるように、前記薬注ポンプ21を制御する。
【0036】
ちなみに、前記第二制御部22は、前記各膜濾過装置34,35,36における各処理水流量および各排水流量を初めから全て足し合わせることにより、前記薬剤添加ライン19が接続された部分の前記給水ライン3を流れる補給水流量を算出してもよい。
【0037】
以上説明した前記水処理システム30によっても、前記第一実施形態の水処理システム1と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(第三実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理システムの第三実施形態について説明する。図3は、この発明に係る水処理システムの第三実施形態の構成を示す概略的な説明図である。図3において、前記第一,第二実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0039】
第三実施形態の水処理システム40は、第一実施形態の水処理システム1と基本構成を同じくしているが、この水処理システム1には無い構成として、前記排水流量調節装置8の上流側の前記排水ライン9に、排水流量センサ41が設けられている。この排水流量センサ41の検出値は、前記第一制御部17へ入力されるようになっている。ここで、前記第一制御部17では、前記排水流量調節装置8によって調節された濃縮水の排水流量が把握されるようになっているが、濃縮水の排水流量は、設定流量に対して水温変動の影響による若干の変動がある。そこで、前記排水流量センサ41において、より正確な排水流量を検出し、この正確な濃縮水の排水流量を前記第一制御部17で把握して、前記第二制御部22における補給水流量の算出に用いるようになっている。これにより、より正確な補給水流量を算出することができる。
【0040】
さて、前記水処理システム40の作用について説明する。ここでは、前記第一,第二実施形態の水処理システム1,30と異なるもののみについて説明する。前記第一制御部17は、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量および前記排水流量センサ41によって検出された濃縮水の排水流量を、前記第二制御部22へ出力する。この第二制御部22は、前記第一制御部17から入力された処理水流量と排水流量とを足し合わせて補給水流量を算出する。そして、前記第二制御部22は、算出された補給水流量に応じた酸化剤除去剤の添加量になるように、前記薬注ポンプ21を制御する。
【0041】
以上説明した前記水処理システム40によれば、前記処理水流量センサ6によって検出された処理水流量と前記排水流量センサ41によって調節された排水流量とを足し合わせることにより算出された補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量が前記薬注ポンプ21によって調節される。したがって、前記第一,第二実施形態と同様に、前記薬剤添加装置18により、補給水流量に応じた量の薬剤を添加することができる。また、より正確な補給水流量を算出することができるので、添加される薬剤をより適量にすることができる。
【0042】
つぎに、第三実施形態の変形例について説明する。具体的な図示は省略するが、前記第二実施形態の水処理システム30において、前記各膜濾過装置34,35,36の前記各排水ライン9に、それぞれ前記排水流量センサ41を設けてもよい。この場合、補給水流量を算出するとき、前記各膜濾過装置34,35,36における濃縮水の各排水流量として、前記各排水流量センサ41の検出値を用いる。これにより、より正確な補給水流量を算出することができる。
【0043】
以上、この発明を前記各実施形態により説明したが、この発明はその要旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。たとえば、前記還流ライン10の接続箇所よりも上流側の前記給水ライン3に、補給水の酸化剤濃度検出センサを設け、この酸化剤濃度検出センサの検出値と補給水流量とに基づいて、前記薬注ポンプ18による酸化剤除去剤の添加量を調節してもよい。このようにすることで、より適切な酸化剤除去剤の添加量にすることができる。
【0044】
また、この発明に係る前記薬剤添加装置18は、酸化剤除去剤に限らず、スケール分散剤などの薬剤添加量の調節に利用してもよい。また、前記水処理システム1において、前記濾過膜モジュール4の前段に除鉄装置が接続される構成の場合には、前記薬剤添加装置18は、前記除鉄装置の上流側に添加される酸化剤や凝集剤などの薬剤の添加に利用してもよい。
【0045】
さらに、前記第一制御部17は、前記処理水流量センサ6に異常が生じ、この処理水流量センサ6の検出値に基づいて定流量制御を行うことができなくなった場合、バックアップ制御を行ってもよい。このバックアップ制御では、たとえば前記給水ライン3に温度センサ(図示省略)を設け、この温度センサの検出値に基づいて処理水流量が一定になるように前記給水ポンプ5を制御する(詳細については、特開2005−296944号公報参照)。このバックアップ制御のときには、前記第二制御部22は、定流量制御における目標処理水流量と、前記排水流量調節装置8によって調節された排水流量または前記排水流量センサ41によって検出された排水流量とに基づいて、補給水流量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に係る水処理システムの第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】この発明に係る水処理システムの第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図3】この発明に係る水処理システムの第三実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1,30,40 水処理システム
2 膜濾過装置
3 給水ライン
4 濾過膜モジュール
5 給水ポンプ
6 処理水流量センサ
7 濃縮水ライン
8 排水流量調節装置
9 排水ライン
10 還流ライン
18 薬剤添加装置
21 薬注ポンプ(添加量調節部)
34 第一膜濾過装置
35 第二膜濾過装置
35 第三膜濾過装置
41 排水流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ラインに設けられた濾過膜モジュールと、この濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプと、前記濾過膜モジュールの下流側の前記給水ラインに設けられた処理水流量センサと、前記濾過膜モジュールと接続された濃縮水ラインとを有し、前記濃縮水ラインは、排水流量調節装置が設けられた排水ラインと還流ラインとに分岐し、この還流ラインは、前記濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインと接続された構成の膜濾過装置を備えた水処理システムであって、
前記給水ラインにおける前記還流ラインが接続された部分よりも上流側を流れる補給水へ薬剤を添加する薬剤添加装置を備え、この薬剤添加装置は、前記処理水流量センサによって検出された処理水流量と前記排水流量調節装置によって調節された排水流量とを足し合わせて算出される補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量を調節する添加量調節部を有することを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
給水ラインに設けられた濾過膜モジュールと、この濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプと、前記濾過膜モジュールの下流側の前記給水ラインに設けられた処理水流量センサと、前記濾過膜モジュールと接続された濃縮水ラインとを有し、前記濃縮水ラインは、排水流量調節装置が設けられた排水ラインと還流ラインとに分岐し、この還流ラインは、前記濾過膜モジュールの上流側の前記給水ラインと接続された構成の膜濾過装置を備えた水処理システムであって、
前記給水ラインにおける前記還流ラインが接続された部分よりも上流側を流れる補給水へ薬剤を添加する薬剤添加装置を備え、また前記膜濾過装置は、前記排水ラインに設けられた排水流量センサを有し、さらに前記薬剤添加装置は、前記処理水流量センサによって検出された処理水流量と前記排水流量センサによって検出された排水流量とを足し合わせて算出される補給水流量に基づいて、補給水への薬剤添加量を調節する添加量調節部を有することを特徴とする水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−136974(P2008−136974A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327712(P2006−327712)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】