説明

水処理システム

【課題】アンモニア性窒素を含有する原水に酸化剤を過剰に投与されることなくアンモニア性窒素を分解処理することが可能な水処理システム1を提供すること。
【解決手段】有機物やアンモニア性窒素を含有する原水の水処理システムであって、前記原水に酸化剤を薬注する酸化剤薬注手段と、前記酸化剤が薬注された処理水をナノろ過膜でろ過処理するナノろ過手段と、前記ナノろ過膜でろ過処理された処理水に紫外線を照射して酸化処理する紫外線酸化手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関し、特には、熱機器や水処理機器等へ給水される処理水をろ過する水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱機器や水処理機器等への給水を行う水処理システムとして、原水に含まれる不純物、例えば、溶存塩類を除去するろ過膜を有する水処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この水処理システムでは、ろ過膜の一方側から原水を流入させることにより、原水に含まれる不純物等を捕捉しながらろ過膜の他方側に透過させ、透過した処理水を所定の機器へと供給する。
【0004】
水処理システムに用いられるろ過膜としては、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)、ナノろ過膜(NF膜)及び逆浸透膜(RO膜)があり、これらのろ過膜は、処理水の用途、例えば、蒸気ボイラ、温水ボイラ、クーリングタワー、給湯器等の熱機器への給水や、半導体製造、電子部品の洗浄、医療器具の洗浄等、処理水に求められる用途に応じて選択され使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−220480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の水処理システムをはじめとするろ過処理は、ろ過する原水の種類に応じて原水の前ろ過処理を行う必要があるものがある。例えば、アンモニア性窒素を含有した地下水をろ過処理する場合、アンモニア性窒素を除去する不連続点塩素注入法によるろ過処理を行う。
【0007】
しかしながら、不連続点塩素注入法は、通常、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを投与してろ過処理を行う。そのため、次亜塩素酸ナトリウムが過剰投与された場合に、トリハロメタン等の発ガン性物質、或いは塩素酸やシアン化塩素等の有害物質が生成されるおそれがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、アンモニア性窒素を含有する原水に酸化剤が過剰に投与されることなく、アンモニア性窒素を分解処理することが可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機物及びアンモニア性窒素を含有する原水の水処理システムであって、前記原水に酸化剤を薬注する酸化剤薬注手段と、前記酸化剤が薬注された処理水をナノろ過膜でろ過処理するナノろ過手段と、前記ナノろ過膜でろ過処理された処理水に紫外線を照射して酸化処理する紫外線酸化手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記酸化剤薬注手段で薬注される前記酸化剤は、ハロゲン系酸化剤であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の水処理システムは、前記酸化剤薬注手段により前記ハロゲン系酸化剤が薬注された処理水に、還元剤を薬注する還元剤薬注手段と、前記ナノろ過手段の上流側に設けられる遊離残留塩素の濃度を測定可能な遊離塩素測定部と、前記遊離塩素測定部による測定結果に基づき、前記酸化剤薬注手段による前記ハロゲン系酸化剤の薬注量及び前記還元剤薬注手段による前記還元剤の薬注量を設定する薬注制御部と、をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明の水処理システムは、前記ナノろ過手段によりろ過処理が行われる前に、前記酸化剤薬注手段により前記酸化剤が薬注された処理水から鉄分及び/又はマンガン分をろ過処理する除鉄除マンガン手段をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明の水処理システムは、前記原水の硬度成分を除去する軟水処理手段をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンモニア性窒素を含有する原水に酸化剤が過剰に投与されることなく、アンモニア性窒素を分解処理することが可能な水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る水処理装置を示すフローシートである。
【図2】本実施形態に係る水処理装置における薬注制御部の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る水処理装置1を示すフローシートである。図1に示すように、水処理システムを構成する水処理装置1は、原水ポンプ2と、酸化剤薬注手段としての第1酸化剤添加装置11と、凝集剤添加装置12と、除鉄除マンガン手段としての除鉄除マンガン装置3と、軟水処理手段としての軟水装置4と、還元剤薬注手段としての還元剤添加装置13と、遊離塩素測定部としての遊離塩素測定センサ14と、ナノろ過手段としてのナノろ過装置6と、第2酸化剤添加装置16と、紫外線酸化手段としての紫外線酸化装置7と、貯水タンク8と、薬注制御部15と、を主体に構成されている。
【0017】
原水は、上流側に配置される原水ポンプ2により原水供給源(図示せず)から流通され、上述の順番でそれぞれの装置において所定の処理が行われて下流側に配置される貯水タンク8に貯水される。なお、本実施形態においては、原水として、例えば、アンモニア性窒素を0.3mg/L以上含有する地下水、工業用水、河川水、排水等を使用することができる。
【0018】
原水ポンプ2は、原水供給源に接続されている。原水ポンプ2は、各装置に対して原水の供給を行う。
【0019】
除鉄除マンガン装置3は、第1給水ライン21を介して原水ポンプ2の下流側に接続されている。第1給水ライン21には、第1給水ライン21から分岐するように第1酸化剤添加ライン11aの一方側が接続されている。第1酸化剤添加ライン11aの他方側には、第1酸化剤添加装置11が接続されている。第1酸化剤添加装置11は、第1酸化剤貯溜部(図示せず)と、第1酸化剤供給ポンプ(図示せず)と、を備えている。第1酸化剤貯溜部には、ハロゲン系酸化剤としての次亜鉛塩素酸ナトリウム溶液が貯留されている。次亜塩素酸ナトリウム溶液は、第1酸化剤供給ポンプ(図示せず)によって第1給水ライン21に供給され、原水に添加される。原水に次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加されると、原水に含まれる鉄分が酸化されて不溶性の水酸化第二鉄(Fe(OH))となる。
【0020】
また、第1給水ライン21には、第1給水ライン21から分岐するように、凝集剤添加ライン12aの一方側が接続されている。凝集剤添加ライン12aは、第1給水ライン21における第1酸化剤添加ライン11aの分岐点よりも下流側に接続されている。凝集剤添加ライン12aの他方側には、凝集剤添加装置12が接続されている。凝集剤添加装置12は、凝集剤貯溜部(図示せず)と、凝集剤供給ポンプ(図示せず)とを備えている。凝集剤貯溜部には、凝集剤としてのポリ塩化アルミニウム溶液が貯溜されている。ポリ塩化アルミニウム溶液は、凝集剤供給ポンプ(図示せず)によって第1給水ライン21に供給され、原水に添加される。原水にポリ塩化アルミニウム溶液が添加されると、次亜塩素酸ナトリウム溶液により酸化生成した水酸化第二鉄が電荷中和作用によって凝集物となり、この凝集した水酸化第二鉄が除鉄除マンガン装置3によって除去される。
【0021】
除鉄除マンガン装置3は、次亜塩素酸ナトリウム溶液及びポリ塩化アルミニウム溶液が添加された原水に対して、原水に含まれる水酸化第二鉄及びマンガン分を除去し、原水から第1処理水(水酸化第二鉄及びマンガン分が除去された原水)を生成する。本実施形態に係る除鉄除マンガン装置3は、塔式ろ過装置を構成しており、マンガン砂(マンガンゼオライト)等の濾材が充填されたろ過塔(図示せず)を備えている。除鉄除マンガン装置3は、ろ過塔の内部に次亜塩素酸ナトリウム溶液及びポリ塩化アルミニウム溶液が添加された原水を下向流で通水してろ過処理を行う。
【0022】
除鉄除マンガン装置3の下流側には、第2給水ライン22が接続されている。第2給水ライン22には、軟水装置4が接続されている。軟水装置4は、第1処理水に対して、所定の精製処理を行う。具体的には、軟水装置4は、第1処理水に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を陽イオン交換樹脂によりナトリウムイオンと交換する。つまり、軟水装置4は、第1処理水から硬度成分を除去し、第2処理水(硬度成分が除去された原水)を生成する。
【0023】
軟水装置4の下流側には第3給水ライン23が接続されている。第3給水ライン23には、プレフィルタ5が接続されている。プレフィルタ5は、第2処理水を通水させることにより主に懸濁物質を除去する。また、第3給水ライン23には、第3給水ライン23から分岐するように還元剤添加ライン13aの一方側が接続されている。還元剤添加ライン13aは、第3給水ライン23におけるプレフィルタ5の下流側に接続されている。還元剤添加ライン13aの他方側には、還元剤添加装置13が接続されている。
【0024】
還元剤添加装置13は、還元剤貯溜部(図示せず)と、還元剤供給ポンプ(図示せず)とを備えている。還元剤貯溜部には還元剤としての重亜硫酸ナトリウム溶液が貯留されている。重亜硫酸ナトリウム溶液は、還元剤供給ポンプ(図示せず)によって第3給水ライン23に供給され、第2処理水に添加される。第2処理水に重亜硫酸ナトリウム溶液が添加されると、第2処理水中に残留する次亜塩素酸が塩化物イオンに還元される。
【0025】
遊離塩素測定センサ14は、第3給水ライン23に接続されている。本実施形態では、遊離塩素測定センサ14は2基からなり、第1遊離塩素測定センサ14aは、還元剤添加ライン13aの分岐点よりも上流側に接続される一方で、第2遊離塩素測定センサ14bは、還元剤添加ライン13aの分岐点よりも下流側に接続されている。遊離塩素測定センサ14は、第3給水ライン23を流通する第2処理水に含まれる遊離残留塩素の濃度を測定する。
【0026】
ナノろ過装置6は、第3給水ライン23を介してプレフィルタ5の下流側に接続されている。ナノろ過装置6は、軟水装置4により硬度成分が除去され、重亜硫酸ナトリウム溶液が添加された第2処理水に対して、第2処理水に含まれるアンモニア性窒素及び溶存塩類を除去して、第2処理水から第3処理水を生成する。
【0027】
ナノろ過装置6は、上流側に設けられる加圧ポンプ(図示せず)と、下流側に設けられるナノろ過モジュール(図示せず)と、を備えている。加圧ポンプは、第2処理水をナノろ過モジュール側へ加圧する。ナノろ過モジュールは、多数のナノろ過膜(図示せず)を備え、ナノろ過膜によりアンモニア窒素及び溶存塩類を除去する。
【0028】
ナノろ過膜は、ポリアミド系、ポリエーテル系等の合成高分子膜であり、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度の物質)の透過を阻止可能な液体分離膜である。ナノろ過膜は、ろ過機能の点において、分子量が数十程度のものを濾別可能な逆浸透膜(RO膜)と分子量が1000〜300000程度の物質を濾別可能な限外ろ過膜(UF膜)との中間に位置する機能を有する。ナノろ過膜は、例えば、蒸気ボイラの伝熱管における腐食を抑制する成分(例えば、二酸化ケイ素、ケイ酸及びケイ酸塩等のシリカ成分)を透過し、腐食を促進する成分(例えば、硫酸イオンや塩化物イオン等)を捕捉するようになっている。
【0029】
ナノろ過装置6の下流側には、第4給水ライン24が接続されている。第4給水ライン24には、第4給水ライン24から分岐するように第2酸化剤添加ライン16aの一方側が接続されている。第2酸化剤添加ライン16aの他方側には、第2酸化剤添加装置16が接続されている。第2酸化剤添加装置16は、第2酸化剤貯溜部(図示せず)と、第2酸化剤供給ポンプ(図示せず)とを備えている。第2酸化剤貯溜部には、ハロゲン系酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウム溶液が貯留されている。次亜塩素酸ナトリウム溶液は、第2酸化剤供給ポンプ(図示せず)によって第4給水ライン24に供給され、第3処理水に添加される。第3処理水に次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加することにより、後述する紫外線酸化装置7において促進酸化処理が行われる。
【0030】
紫外線酸化装置7は、第4給水ライン24を介して、ナノろ過装置6の下流側に接続されている。紫外線酸化装置7は、ナノろ過装置6によりアンモニア性窒素及び溶存塩類が除去され、次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加された第3処理水にオゾン化空気を導入しながら紫外線を照射し、第3処理水から第4処理水を生成する。
【0031】
紫外線酸化装置7は、紫外線を照射する紫外線ランプ(図示せず)と、紫外線ランプが収容される処理槽(図示せず)と、処理槽に設けられるオゾン生成部(図示せず)と、を備える。処理槽は、円筒状に形成されており、その内部に紫外線ランプが収容される。また、処理槽の内部には、酸化対象物である第3処理水が流通する。オゾン生成部は、処理槽内部に流通された第3処理水にオゾン化空気を導入する空気導入部を備える。オゾン生成部は、外部より導入した空気に紫外線を照射することにより、処理槽に導入される空気をオゾン化する。紫外線酸化装置7は、オゾン化空気を導入させた処理槽の内部に次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加された第3処理水を流通させながら、第3処理水に紫外線を照射することにより第4処理水を生成する。すなわち、紫外線酸化装置6では、第3処理水の促進酸化処理が行われるように構成されており、第3処理水に含まれる残留有機物を分解すると共に、微生物を殺菌する。
【0032】
貯水タンク8は、第5給水ライン25を介して紫外線酸化装置7の下流側に接続されている。貯水タンク8は、紫外線酸化装置7により生成された第4処理水を貯水する。
【0033】
薬注制御部15は、第1酸化剤添加装置11、凝集剤添加装置12、還元剤添加装置13及び遊離塩素測定センサ14(第1遊離塩素測定センサ14a,第2遊離塩素測定センサ14b)と電気的に接続されている。具体的には、薬注制御部15は、第1酸化剤添加装置11が備える第1酸化剤供給ポンプと、還元剤添加装置13が備える還元剤供給ポンプと、第1遊離塩素測定センサ14a及び第2遊離塩素測定センサ14bとに電気的に接続されている。そして、第1遊離塩素測定センサ14aにより測定された第3給水ライン23を通水する第2処理水の遊離塩素の濃度に基づいて、次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量の制御を行う。また、第2遊離塩素測定センサ14bにより測定された第3給水ライン23を通水する第2処理水の遊離塩素の濃度に基づいて、重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量の制御を行う。次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量の制御は、第1酸化剤供給ポンプの起動を制御することにより行われる。一方重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量の制御は、還元剤供給ポンプの起動を制御することにより行われる。
【0034】
また、薬注制御部15は、図2に示すように、メモリ15aと、演算部15bとを備えている。メモリ15aは、第2処理水の遊離塩素の濃度に係る複数のテーブル(図示せず)を有している。テーブルには、遊離塩素の濃度に基づく次亜塩素酸ナトリウム溶液(酸化剤)及び重亜硫酸ナトリウム溶液(還元剤)の添加量データが複数記憶されている。
【0035】
演算部15bは、第1遊離塩素測定センサ14aにより測定された第2処理水の遊離塩素の濃度から第1処理水に添加する次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量を算出すると共に、第2遊離塩素測定センサ14bにより測定された第2処理水の遊離塩素の濃度から第2処理水に添加する重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量を算出する。添加量の算出は、メモリ15aに記憶されるデータに基づいて行われ、メモリに記憶されたテーブルから適当な添加量を判定し、選択することにより行われる。また、薬注制御部は、表示部(図示せず)と、操作部(図示せず)とを備えている。表示部は、第1処理水に添加する次亜塩素酸ナトリウム溶液及び第2処理水に添加する重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量等が表示される。操作部は、例えば、各種設定や第1処理水に添加する次亜塩素酸ナトリウム溶液及び第2処理水に添加する重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量等の変更をしたい場合等に用いられる。
【0036】
次に、水処理装置1の動作について説明する。貯水タンク8に貯水された第4処理水は、適宜、不図示の外部機器へ供給される。そのため、外部機器への供給量に応じて貯水タンク8の貯水量は減少する。そして、貯水タンク8の貯水量が所定の水量(所定レベル)以下になると、水処理装置1に運転要求がなされる。
【0037】
水処理装置1に運転要求がなされると、不図示の制御部により、原水ポンプ2が起動され、第1給水ライン3に原水が通水される。第1給水ライン21には、第1酸化剤添加装置11及び凝集剤添加装置12が接続されており、第1酸化剤添加装置11から次亜塩素酸ナトリウム溶液が原水に添加されると共に、凝集剤添加装置12からポリ塩化アルミニウム溶液が原水に添加される。
【0038】
原水に次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加されと、原水に含まれる鉄分が酸化されて不溶性の水酸化第二鉄(Fe(OH))となる。さらに、ポリ塩化アルミニウム溶液が添加されると、次亜塩素酸ナトリウム溶液により酸化生成した水酸化第二鉄が電荷中和作用によって凝集物となる。
【0039】
次いで、原水は、除鉄除マンガン装置3に通水される。除鉄除マンガン装置3には、第原水が下向流で通水される。原水は、除鉄除マンガン装置4に通水されることによって、凝集した水酸化第二鉄及びマンガン分が除去され、第1処理水となる。
【0040】
第1処理水は、除鉄除マンガン装置3の下流側に接続された第2給水ライン22に通水され、第2給水ライン22に設けられる軟水装置4により硬度成分が除去されて第2処理水となる。
【0041】
第2処理水は、さらに軟水装置4の下流側に接続された第3給水ライン23に通水され、第3給水ライン23に設けられるプレフィルタ5により、懸濁物質が除去される。また、第3給水ライン23には、還元剤添加装置13が接続されており、第2処理水には重亜硫酸ナトリウム溶液(還元剤)が添加される。
【0042】
ここで、第3給水ライン23には、遊離塩素測定センサ14が設けられている。遊離塩素測定センサ14は、第3給水ライン23を通水する第2処理水の遊離塩素の濃度を測定する。遊離塩素測定センサ14により測定された遊離塩素の濃度は、薬注制御部15に送信される。薬注制御部15は、この遊離塩素の濃度に基づき、第1酸化剤供給ポンプ及び還元剤供給ポンプの起動を制御する。つまり、第1処理水に添加される次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量、及び第2処理水に添加される重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量を制御する。
【0043】
薬注制御部15は、例えば、第1遊離塩素測定センサ14aにより測定される遊離塩素の濃度が0.1ppm以下又は結合塩素の割合が90%以上となるように次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量を制御する。このように制御することにより、除鉄除マンガン装置3において原水に含有されるアンモニア性窒素を分解除去することなく、鉄分及びマンガン分の酸化除去のみを行うことができる。
【0044】
また、薬注制御部15は、例えば、第2遊離塩素測定センサ14bにより測定されるナノろ過膜装置6に供給前の第2処理水から遊離塩素が実質的に検出されないように、重亜硫酸ナトリウム溶液の添加量を制御する。このように制御することにより、ナノろ過膜を酸化劣化から守ることが可能になり、当初のろ過性能を維持することができる。
【0045】
次いで、第2処理水は、ナノろ過装置6に通水される。ナノろ過装置6においては、アンモニア性窒素及び溶存塩類が除去される。ナノろ過装置6でろ過処理されることにより、第2処理水から第3処理水が生成される。なお、ナノろ過装置6の加圧ポンプは、原水ポンプ2と同様に不図示の制御部により制御されており、例えば、ナノろ過装置6への通水に基づいて起動するように構成されている。
【0046】
第3処理水は、さらにナノろ過装置6の下流側に接続された第4給水ライン24に通水される。第4給水ライン24には、第2酸化剤添加装置16が接続されている。第3処理水には、紫外線酸化装置7の上流側で次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加される。
【0047】
次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加された第3処理水は、次いで、紫外線酸化装置7により、促進酸化処理が行われる。第3処理水の促進酸化処理により、残留有機物の分解、色度成分の分解、微生物の殺菌が行われ、第4処理水が生成される。
【0048】
紫外線酸化装置7により生成された第4処理水は、紫外線酸化装置7の下流側に接続された貯水タンク8に貯水され、不図示の外部機器へ給水される。
【0049】
以上の構成を有する本実施形態に係る水処理装置1によれば、以下の効果を奏する。本実施形態に係る水処理装置1は、ナノろ過装置6及び紫外線酸化装置7を備えると共に、薬注制御部15により、遊離塩素の濃度に基づいて、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ハロゲン系酸化剤)の添加量を制御するように構成されている。そのため、原水中のアンモニア性窒素を分解除去するのではなく、ナノろ過膜で実質的に除去することが可能になる。これにより、例えば、ナノろ過装置6の前段において除鉄除マンガン装置3で処理を行うような場合であっても、必要最低限の次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加で済むので、次亜塩素酸ナトリウム溶液の過剰投入により生じるトリハロメタン等の発ガン性物質、塩素酸の発生、シアン化塩素等の有害物質の発生を抑制させることが可能になる。つまり、安全性を向上させることが可能になる。
【0050】
また、紫外線酸化装置7では、ナノろ過装置6で有機物等を除去できなかった場合でも、確実な分解除去が可能であり、より高度に浄化された処理水を得ることが可能になる。さらには、ナノろ過装置6で有機物が十分に低減されている場合には、紫外線ランプを収容する保護管の表面が汚れにくくなる。
【0051】
また、本実施形態に係る水処理装置1は、重亜硫酸ナトリウム溶液(還元剤)の添加量を、薬注制御部15により制御するように構成されている。そのため、ナノろ過膜を酸化劣化から保護することが可能になり、当初のろ過性能を維持することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。本実施形態においては、紫外線酸化手段として促進酸化処理を行う紫外線酸化装置7を用いて説明したが本発明においてはこれに限定されない。例えば、紫外線酸化手段は、次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加やオゾン化空気の導入を行わない紫外線照射装置を用いてもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、原水から鉄分(例えば、水酸化第2鉄)及びマンガン分を同時に除去する除鉄除マンガン装置4を用いて説明したが本発明においてはこれに限定されない。例えば、除鉄除マンガン装置は、鉄分を除去する除鉄装置又はマンガン分を除去する除マンガン装置のいずれかであってもよい。除鉄装置、除マンガン装置又は除鉄除マンガン装置は、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 水処理装置(水処理システム)
2 原水ポンプ
3 除鉄除マンガン装置(除鉄除マンガン手段)
4 軟水装置(軟水処理手段)
6 ナノろ過装置(ナノろ過手段)
7 紫外線酸化装置(紫外線照射手段)
11 第1酸化剤添加装置(酸化剤薬注手段)
13 還元剤添加装置(還元剤薬注手段)
14 遊離塩素測定センサ(遊離塩素測定部)
15 薬注制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物及びアンモニア性窒素を含有する原水の水処理システムであって、
前記原水に酸化剤を薬注する酸化剤薬注手段と、
前記酸化剤が薬注された処理水をナノろ過膜でろ過処理するナノろ過手段と、
前記ナノろ過膜でろ過処理された処理水に紫外線を照射して酸化処理する紫外線酸化手段と、を備えることを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記酸化剤薬注手段で薬注される前記酸化剤は、ハロゲン系酸化剤であることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記酸化剤薬注手段により前記ハロゲン系酸化剤が薬注された処理水に、還元剤を薬注する還元剤薬注手段と、
前記ナノろ過手段の上流側に設けられる遊離残留塩素の濃度を測定可能な遊離塩素測定部と、
前記遊離塩素測定部による測定結果に基づき、前記酸化剤薬注手段による前記ハロゲン系酸化剤の薬注量及び前記還元剤薬注手段による前記還元剤の薬注量を設定する薬注制御部と、をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記ナノろ過手段によりろ過処理が行われる前に、前記酸化剤薬注手段により前記酸化剤が薬注された処理水から鉄分及び/又はマンガン分をろ過処理する除鉄除マンガン手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記原水の硬度成分を除去する軟水処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234240(P2010−234240A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84223(P2009−84223)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】