説明

水処理システム

【課題】 油分を含む被処理水中から効率よく油分を分離して回収することができる水処理システムを提供する。
【解決手段】 被処理水中に含まれる固形分を重力の作用により分離除去する固形分除去前処理装置3および被処理水中に含まれる固形分を磁場の作用により分離除去する磁気分離前処理装置4,41,42のうちの少なくとも一方を有する前処理装置と、前記前処理装置で処理された被処理水にマグネタイトを含有する油分吸着剤を接触させ、被処理水中に含まれる油分を前記油分吸着剤に吸着させて分離する油分除去装置5と、前記油分除去装置で処理された被処理水から油分を吸着した油分吸着剤を分離して回収する吸着剤回収装置6,61,62,7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水中に含まれる油分を分離して回収する水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に食品工場等の産業社会システムから排出される工場排水に含まれる油分は、鉄やアルミニウム塩を用いる凝集剤処理や、微細な気泡への付着性を利用する加圧浮上処理などによって、油分含有汚泥として産業廃棄物として処分されている。汚泥発生の抑制や油分の選択除去の必要性の観点から、例えば特許文献1〜3などにおいて前記油分除去技術の他に油分含有排水処理方法として油分吸着剤を用いた除去技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、廃水中の油分を選択除去するために、油分と親和性の高い表面特性を有する油分分離剤材(吸着剤)を被処理水と接触させ、排水に含まれる油分を除去する方法と、油分吸着後の分離剤に、気泡を導入することで、吸着油分の脱離を行い、油分を回収する方法とが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、水上に浮遊する油分を吸着する、磁性体を介した油分除去と、磁力を用いた回収方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、磁性体を核とした油分吸着材を使用し、使用済み油分吸着剤の溶媒再生により吸着剤を再利用する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−305927号公報
【特許文献2】特開2000−176306号公報
【特許文献3】特開2005−177532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の油分脱離方法においては、吸着剤(分離剤)の再利用を図ることは可能であるが、脱離油分と水分とが混在する。油分を吸着した吸着剤(分離剤)は、水処理系統にて安定に保持されず、処理水中に流出すると、油分除去・回収能低下を引き起こすばかりではなく、後段に配される水処理系統へ悪影響を及ぼす。
【0008】
また、特許文献2の回収方法は、海洋等の広範囲な処理では油分回収する方法の1つとなり得るが、排水処理では油分は水面に浮上する成分のほかに水中に浮遊する成分もあるため、必ずしも産業社会システムから排出される排水中の油分の回収には適さない。磁性体粒子を用いた油分除去では、例えば、油分は被処理系から排除するのみならば、弊害はないものの、油分をリサイクルすることを考慮した場合、使用済みの当該粒子を選択除去することの他に、被処理水中に含まれる選択除去の弊害となる成分を事前に排除する必要がある。
【0009】
また、特許文献3の再利用方法は、被処理水に事前に凝集剤を添加した後に油分吸着処理をしているため、油分のほかに凝集剤成分や含有する固形分も一緒に除去される可能性があり、溶媒再生によって得られる油分の再利用には適さない。
【0010】
一方、排水中の油分は、鉱物油であれば化石燃料が、植物油であれば穀類が主な原料であり、これらの主原料の大部分は輸入に依存するものである。現状では、この排水中の油分は汚泥として廃棄されているのが主流である。
【0011】
このような背景から、国内や海外における輸入炭素源に対する総利用率を向上させ、二酸化炭素排出量の削減を目的として、排水中の油分のエネルギー利用を進めることにより、環境浄化と併せたメリットが見出せる。このため、排水中に含まれる油分を選択的に除去する方法の必要性が増してきている。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、油分を含む被処理水中から効率よく油分を分離して回収することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る水処理システムは、被処理水中に含まれる固形分を重力の作用により分離除去する固形分除去前処理装置および被処理水中に含まれる固形分を磁場の作用により分離除去する磁気分離前処理装置のうちの少なくとも一方を有する前処理装置と、前記前処理装置で処理された被処理水にマグネタイトを含有する油分吸着剤を接触させ、被処理水中に含まれる油分を前記油分吸着剤に吸着させて分離する油分除去装置と、前記油分除去装置で処理された被処理水から油分を吸着した油分吸着剤を分離して回収する吸着剤回収装置と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水処理システムによれば、被処理水を油分除去装置に供給する前に、前処理装置により被処理水から固形分の一部を除去するようにしているため、油分除去装置よりも後段に配置される吸着剤回収装置などの水処理系統に対して悪影響を及ぼすことなく、被処理水中から効率よく油分を分離・回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水処理システムを示す構成ブロック図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る水処理システムを示す構成ブロック図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る水処理システムを示す構成ブロック図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る水処理システムを示す構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための好ましい形態を以下に説明する。
【0017】
(1)本発明の水処理システムは、被処理水中に含まれる固形分を重力の作用により分離除去する固形分除去前処理装置および被処理水中に含まれる固形分を磁場の作用により分離除去する磁気分離前処理装置のうちの少なくとも一方を有する前処理装置と、前記前処理装置で処理された被処理水にマグネタイトを含有する油分吸着剤を接触させ、被処理水中に含まれる油分を前記油分吸着剤に吸着させて分離する油分除去装置と、前記油分除去装置で処理された被処理水から油分を吸着した油分吸着剤を分離して回収する吸着剤回収装置とを有する。
【0018】
本発明では、被処理水を油分除去装置で処理する前に、前処理装置により被処理水からある程度の量の固形分をあらかじめ分離除去し、被処理水の固形分濃度を低下させているため、油分分離装置より後段に配置される吸着剤回収装置にかかる負荷が軽減され、油分を吸着した油分吸着剤の回収率が向上する。ここで、被処理水に含まれる固形分には、水より比重が大きい固体粒子、例えば金属粒子、金属酸化物粒子、砂粒のようなセラミック粒子など各種の粒子がある。これらの固形分は、吸着剤回収装置にて油分を吸着した油分吸着剤を回収する際に、被処理水からの油分吸着剤の分離作用を阻害し、吸着剤の回収率を低下させる。そのため本発明では、前処理装置を用いて被処理水の固形分濃度を低下させ、後段の吸着剤回収装置における負荷軽減を図っている。なお、本発明では油分吸着剤がマグネタイト(Fe3O4)を含有しているため、水との比重差を利用する遠心分離法ばかりでなく磁場の作用を利用する磁気分離法を用いて油分吸着剤を分離することができる。
【0019】
(2)上記(1)において、前記吸着剤回収装置から排出される油分を吸着した油分吸着剤を受け入れ、該油分吸着剤から油分を分離抽出する油分回収装置をさらに有することが好ましい(図2)。油分回収装置では、油分を吸着した油分吸着剤から油分を抽出するための媒体として、例えば各種のアルコール、飽和炭化水素、超臨界二酸化炭素、水蒸気などを用いることができる。これらの媒体は、抽出した油分との分離が容易であること、および精製して再利用することが容易であることなどの性質を備えている。
【0020】
(3)上記(2)において、前記油分回収装置から前記油分除去装置までの間に設けられ、前記油分除去装置から排出される油分吸着剤を前記油分除去装置において被処理水の油分除去に再度利用するために、前記油分回収装置から排出される油分吸着剤を前記油分除去装置に返戻するリターン経路をさらに有することが好ましい(図2)。回収した油分吸着剤をリターン経路により油分除去装置に戻して吸着剤を再利用することで、さらに処理コストが低減される。
【0021】
(4)上記(1)〜(3)において、前記吸着剤回収装置は、遠心力により被処理水から油分吸着剤を分離する液体サイクロンであることが好ましい(図1〜図4)。液体サイクロンは、被処理水を容器上部の内周壁の接線に沿って導入する上部入口と、上部から下部に移行するに従って漸次縮径する逆円錐状の容器本体と、容器本体の下部中央に開口し、比重の小さい成分を容器上部に案内して外部へ排出する排出管と、比重の大きい成分を容器下部に集めて沈降させる沈殿室と、を備えている。このような液体サイクロンを用いると、油分吸着剤を適切に回収することができる。
【0022】
(5)上記(1)〜(4)において、前記吸着剤回収装置は、磁場の作用により被処理水から油分吸着剤を分離する磁気分離装置であることが好ましい(図1〜図4)。磁気分離装置は、被処理水が流れる流路内に配置される非磁性の網状構造体と、この網状構造体が配置された流路の周囲を取り囲むように配置される磁気コイルと、を備えている。このような磁気分離装置を用いると、マグネタイトを含む油分吸着剤を適切に回収することができる。
【0023】
(6)上記(1)〜(5)において、前記吸着剤回収装置は、遠心力により被処理水から油分吸着剤を分離する液体サイクロンと、前記液体サイクロンの下流側に配置され、前記液体サイクロンで処理された被処理水から磁場の作用により油分吸着剤を分離する磁気分離装置と、を有することが好ましい(図1〜図4)。先ず液体サイクロンを用いて油分を吸着した油分吸着剤を粗く分離除去した後に、これに引き続き磁気分離装置を用いて残りの油分吸着剤を精密に分離除去するので、油分吸着剤をさらに高効率で回収することができる。
【0024】
(7)上記(1)〜(6)において、前記前処理装置は、遠心力により被処理水から油分吸着剤を分離する液体サイクロンであることが好ましい(図1〜図4)。前処理装置にも液体サイクロンを用いることができる。液体サイクロンにより固形分を効率よく分離除去し、固形分濃度の低い被処理水を後段の吸着剤回収装置に供給することができるので、吸着剤回収装置にかかる負荷が軽減される。
【0025】
(8)上記(1)〜(7)において、前記前処理装置を複数配することができる(図4)。複数の前処理装置により多量の被処理水を同時並行処理することができるばかりでなく、運転と休止を交互に繰り返すローテーション稼動を実施することが可能になり、水処理システム全体を停止させることなく、部分的に休止した前処理装置のメンテナンス作業を行うことができる。
【0026】
(9)上記(1)〜(8)において、前記吸着剤回収装置を複数配することができる(図4)。複数の吸着剤回収装置により多量の被処理水を同時並行処理することができるばかりでなく、運転と休止を交互に繰り返すローテーション稼動を実施することが可能になり、水処理システム全体を停止させることなく、部分的に休止した吸着剤回収装置のメンテナンス作業を行うことができる。
【0027】
(10)上記(1)〜(9)において、前記吸着剤回収装置から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽と、前記処理水貯槽から前記前処理装置までの間に設けられ、前記処理水貯槽の処理水を逆洗浄水として前記前処理装置に供給するための経路と、をさらに有することが好ましい(図3)。
【0028】
上記(8)のように複数の前処理装置を配置した場合にとくに有効であり、運転と休止を交互に繰り返すローテーション稼動を実施することが可能になり、水処理システム全体を停止させることなく、一部の前処理装置のみを部分的に休止させて逆洗浄することができる。
【0029】
(11)上記(1)〜(10)において、前記吸着剤回収装置から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽と、前記処理水貯槽から前記吸着剤回収装置までの間に設けられ、前記処理水貯槽の処理水を逆洗浄水として前記吸着剤回収装置に供給するための経路と、をさらに有することが好ましい(図3)。
【0030】
上記(9)のように複数の吸着剤回収装置を配置した場合にとくに有効であり、運転と休止を交互に繰り返すローテーション稼動を実施することが可能になり、水処理システム全体を停止させることなく、一部の吸着剤回収装置のみを部分的に休止させて逆洗浄することができる。
【0031】
(12)上記(1)〜(11)において、前記油分除去装置に前記油分吸着剤を供給する吸着剤供給装置と、前記吸着剤回収装置から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽と、前記処理水貯槽から前記吸着剤供給装置までの間に設けられ、前記処理水貯槽の処理水を前記油分吸着剤に添加混合して混合スラリーを生成するための経路と、をさらに有することが好ましい(図3)。
【0032】
このような経路を介して油分除去後の処理水を吸着剤供給装置へ供給することで、粉体状の油分吸着剤に処理水を添加し、さらに混合して所望の粘性を有する混合スラリーを生成することができる。
【0033】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の好ましい形態を説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0035】
本実施形態の水処理システム1は、原水槽2、固形分除去前処理装置3、磁気分離前処理装置4、吸着剤供給装置8を備えた油分除去装置5、吸着剤回収装置6および処理水磁気分離装置7を有している。これらの装置および槽がポンプP1〜P6を備えたラインL1〜L6によりほぼ直列に接続され、上流側の原水槽2から下流側の磁気分離装置7に向けて被処理水が通流するように図示しない制御器によりポンプP1〜P6や図示しないバルブ等の動作がコントロールされるようになっている。
【0036】
原水槽2は、例えば製油、製鉄、機械、金属、繊維、食品のような油脂類を取り扱う工場から排出された含油廃水を被処理水として貯留している。このような含油廃水は、エマルジョン化した油分を水中に多量に含み、単に静置しておいただけでは油分が水から分離しにくいものもある。さらに、含油廃水は、無視できない量の固形分も含んでいる。固形分には、水より比重が大きい固体粒子、例えば金属粒子、金属酸化物粒子、砂粒のようなセラミック粒子など各種の粒子がある。これらの固形分は、後段の吸着剤回収装置6や処理水磁気分離装置7において油分を吸着した油分吸着剤を回収する際に、被処理水からの油分吸着剤の分離作用を阻害し、吸着剤の回収率を低下させる。このため本実施形態のシステム1においては、固形分除去前処理装置3および磁気分離前処理装置4を用いて固形分を予め除去した後に、後段の油分除去装置5や吸着剤回収装置6に供給するようにしている。
【0037】
固形分除去前処理装置3は、ポンプP1の駆動によりラインL1を介して原水槽2から被処理水を受け入れ、被処理水中に含まれる固形分を重力の作用により固液分離し、上部排出ラインL21を介して比重の小さい成分を排出し、下部排出ライン22を介して固形分などの比重の大きい成分を排出するものである。固形分除去前処理装置3として、重力の作用により固形分を沈降させる沈殿槽、あるいは固形分を遠心力分離する液体サイクロンなどを用いることができる。固形分除去前処理装置3に液体サイクロンを用いた場合、沈殿槽よりも省スペース化が図られるが、固形分除去前処理装置3へ供給される液流量変動を抑制できるように、前段に貯槽を設けるなど規定流量以下での被処理水の供給を抑制する制御装置などを設けることがより望ましい。
【0038】
磁気分離前処理装置4は、入口側が固形分除去前処理装置3の上部排出ラインL21に接続され、固形分除去前処理装置3により固形分を粗く除去した被処理水(一次除去処理水)が導入され、この一次除去処理水から固形分をさらに精密に除去するものである。磁気分離前処理装置4は、流路の内部に多段に配置された非磁性の網状構造体4aと、一次除去処理水の通流方向に対して直交する鉛直磁場を与える磁気コイル4bとを備えている。網状構造体4aとして樹脂メッシュまたは非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼メッシュを用いることができる。また、磁場生成手段は、本実施形態の磁気コイルのみに限定されるものではなく、電磁石や永久磁石を用いてもよい。
【0039】
さらに、磁気分離前処理装置4の内部流路には逆洗浄ラインL31,L32が接続され、運転を休止するメンテナンス時においてラインL31を通って逆洗浄水が内部流路に供給され、ラインL32を介して逆洗浄水を排出することにより、網状構造体4aが逆洗浄されるようになっている。なお、磁気分離前処理装置4の前後に圧力計(図示せず)を設け、両者の差圧を計測監視し、その差圧が一定値以上に上昇したときに、一次除去処理水の供給を停止し、磁気分離前処理装置4の内部流路にラインL31から逆洗浄水を供給するようにしてもよい。メンテナンス中は、磁気分離前処理装置4により一次除去処理水を処理できなくなるため、磁気分離前処理装置4を並列多段に配し、常に一次除去処理水を処理できるようにすることがより好適である。
【0040】
油分除去装置5は、入口側が磁気分離前処理装置4の排出ラインL3に接続され、磁気分離前処理装置4で固形分を精密に除去した被処理水(二次除去処理水)が導入され、この二次除去処理水から油分を分離するものである。油分除去装置5は、油分吸着剤供給器8を有し、油分吸着剤供給器8から所望の油分吸着剤が供給されるようになっている。油分吸着剤は、90質量%以上のマグネタイト(Fe3O4)を含有している。
【0041】
油分吸着剤は、スラリー状、粒子状、粉体状のいずれの形態であっても被処理水に添加することができるが、とくにスラリー状の形態で添加することが望ましい。油分吸着剤が被処理水中に最も迅速かつ均一に混合・分散するからである。
【0042】
吸着剤回収装置6は、入口側が油分除去装置5の排出ラインL4に接続され、油分を吸着した使用済み油分吸着剤を伴う被処理水が導入され、この油分を吸着した使用済み油分吸着剤を分離・回収するものである。本実施形態では吸着剤回収装置6として液体サイクロンを用いた。液体サイクロン6は、ラインL4からの被処理水を容器上部の内周壁の接線に沿って導入する上部入口と、上部から下部に移行するに従って漸次縮径する逆円錐状の容器本体と、容器本体の下部中央に開口し、比重の小さい成分を容器上部に案内してラインL51を介して外部へ排出する排出管と、比重の大きい成分を容器下部に集めて沈降させ、ラインL52を介して沈殿物(固形分)を外部に排出する沈殿室と、を備えている。このような液体サイクロン6を用いると、油分吸着剤を効率よく回収することができる。
【0043】
処理水磁気分離装置7は、吸着剤回収装置6から排出される吸着剤回収処理水と回収吸着剤のうち吸着剤回収装置6に含まれる油分吸着剤の残分を除去するものである。この処理水磁気分離装置7は、上述した磁気分離前処理装置4と実質的に同じ構造をもつものであり、流路の内部に多段に配置された非磁性の網状構造体7aと、被処理水の通流方向に対して直交する鉛直磁場を与える磁気コイル7bとを備えている。また、処理水磁気分離装置7の内部流路には逆洗浄ラインL61,L62が接続され、運転を休止するメンテナンス時においてラインL61を通って逆洗浄水が内部流路に供給され、ラインL62を介して逆洗浄水を排出することにより、網状構造体7aが逆洗浄されるようになっている。さらに、処理水磁気分離装置7の排出口は、ラインL6を介して図示しない後工程の装置(例えば処理水貯槽など)に連通している。
【0044】
次に本実施形態の水処理システムの作用を説明する。
【0045】
油分と固形分を含有する被処理水は、原水槽2から固形分除去前処理装置3に所定の流量で供給され、固形分除去前処理装置3により固形分が一次除去される。固形分前処理装置3から排出される一次除去処理水は、磁性固形分を除去する磁気分離前処理装置4へ供給され、磁気分離前処理装置4により磁性固形分が二次除去される。
【0046】
次いで、二次除去処理水は、油分除去装置5に導入され、これに吸着剤供給装置8からマグネタイトを含有する油分吸着剤が添加される。添加された油分吸着剤と二次除去処理水中の油分とが接触し、油分が油分吸着剤に吸着し、これにより被処理水から油分が除去される。ここに用いる油分吸着剤とは、マグネタイト等の磁性体を核に使用し、表面や構造が油分吸着できるよう処理された形態など、公知の技術を用いればよく、磁性体の樹脂被覆処理や、微細粒子の造粒化物による細孔浸透作用を利用するものなどを用いればよい。
【0047】
また、油分除去装置5は、油分吸着剤が油分を吸着するために十分な処理時間と接触混合が図れる構成とすればよく、たとえば攪拌混合槽や、ラインミキサー形状など、処理形態に併せた構成とすればよいが、油分除去装置5の内部で油分吸着剤が蓄積などにより、該油分除去装置5からの排出が抑制されないよう構成することがより望ましい。油分が吸着した使用済み油分吸着剤は、ラインL4を通って吸着剤回収装置6に送られ、吸着剤回収装置6へと供給される。
【0048】
ここで、吸着剤回収装置6には、重力の作用を利用して固形分を分離除去する沈殿槽、または比重差を利用して固形分を遠心分離する液体サイクロンを用いることができる。液体サイクロンを用いると、より省スペース化が図られるが、吸着剤回収装置6へ供給される液流量変動を抑制できるよう、前段に貯槽を設けるなど規定流量以下での油分吸着処理水の供給を抑制する制御装置などを設けることがより望ましい。また、吸着剤回収装置6から排出される回収吸着剤を間欠排出するプロセスを採用する場合は、固形分除去前処理装置3を並列配置し、連続処理が可能な構成をとることができる。吸着剤回収装置6から排出される被処理水は、処理水磁気分離装置7に供給され、処理水磁気分離装置7により被処理水中に残存する吸着剤が除去される。
【0049】
本実施形態によれば、被処理水中の固形分や磁性固形分を固形分除去前処理装置3および磁気分離前処理装置4によって除去した後に、マグネタイトを含有する油分吸着剤による被処理水中の油分を吸着除去するため、油分吸着済みの油分吸着剤を吸着剤回収装置6および処理水磁気分離装置7により回収する際に、被処理水中の固形分や磁性固形分が混在して回収することを抑制できるため、不純物を抑制して油分回収体として処理システムから分離できるため、効率よく水質浄化し、回収油分を再利用できる。
【0050】
(第2の実施形態)
図2を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0051】
本実施形態の水処理システム1Aは、油分を吸着した使用済み油分吸着剤から油分を分離抽出する油分回収装置9および油分を分離した油分吸着剤を油分回収装置9から吸着剤供給装置8を経由して油分除去装置5へ戻すリターンラインL71をさらに備えている。
【0052】
油分回収装置9は、入口側が吸着剤回収装置6の下部排出ラインL52に接続され、第1の排出口が下部ドレインラインL72に接続され、第2の排出口が上記リターンラインL71に接続されている。
【0053】
次に本実施形態の水処理システムの作用を説明する。
【0054】
本実施形態において、油分吸着剤は、吸着剤回収装置6→ラインL52→油分回収装置9→リターンラインL71→吸着剤供給装置8→油分除去装置5→ラインL4→吸着剤回収装置6からなる循環回路を通って利用、回収、再利用される。
【0055】
油分を吸着した回収吸着剤は、油分回収装置9にて、吸着した油分と、使用した吸着剤に分離される。ここで油分回収装置9とは、例えばアルコールや、飽和炭化水素、超臨界二酸化炭素、水蒸気などで回収吸着剤からの油分除去処理や、吸着剤から除去した油分と、除去処理に使用する媒体と除去油分の分離処理などが行われるが、ここで使用する媒体とは、回収油分との分離が容易であることや、精製再利用できる媒体を使用することが望ましい。油分回収装置9から排出される再生油分吸着剤は、再び油分吸着剤供給装置8に供給され、被処理水中の油分除去に利用される。また、回収油分は、被処理水1の発生源(図示なし)での再利用や、熱エネルギー媒体等に利用されることが望ましい。
【0056】
本実施の形態によれば、被処理水1中の固形分や磁性固形分を排して油分を吸着除去するため、固形分や磁性固形分等の不純物を含まない状態で被処理水中の油分と油分吸着剤を選択的に分別して、効率よく油分や油分吸着剤を再利用できる。
【0057】
(第3の実施形態)
図3を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0058】
本実施形態の水処理システム1Bは、吸着剤回収装置7から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽10と、処理水貯槽10から磁気分離前処理装置4までの間に設けられ、処理水貯槽10の処理水を逆洗浄水として磁気分離前処理装置に供給するためのラインL31と、処理水貯槽10から吸着剤回収装置7までの間に設けられ、処理水貯槽の処理水を逆洗浄水として吸着剤回収装置7に供給するためのラインL61と、処理水貯槽10から吸着剤供給装置8を経由して油分除去装置5までの間に設けられ、処理水貯槽10の処理水を油分吸着剤に添加混合して混合スラリーを生成するためのラインL9と、をさらに備えている。
【0059】
次に本実施形態の水処理システムの作用を説明する。
【0060】
油分を含有する被処理水では、原水槽2にて、その排除のため、界面活性剤等を利用し、その油分を洗浄するなどの措置が施され、すなわち被処理水中にはその成分を含有する。このため処理水中には、この成分が含まれる。また、水処理システム運用時の水資源有効活用の観点から、より再利用に適した系内の水循環利用することが望ましい。処理水貯槽10に保持される水は、油分や固形分を排した処理水に由来するため、本実施形態の水処理システム1Bで利用する洗浄等に運用する水としては、十分な性状まで処理される。
【0061】
本実施形態によれば、処理水に由来する処理水貯槽10の水を、ラインL31を介して磁気分離前処理装置4に逆洗浄水として利用することにより、系内の水をリサイクルし、水処理システム形内での水を有効活用することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、被処理水に界面活性剤等が含まれる場合、疎水性成分である油分や、疎水性機能を有する油分吸着剤が部分保持される磁気分離前処理装置4や処理水磁気分離装置7の洗浄に利用することで、新たな薬品成分等を添加することなく効果的に洗浄できるため、既存技術からなる、本水処理システム後段(図示なし)に配される水処理システムへの新たな環境負荷を与えずに、運用することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、処理水貯槽10からラインL9を通って吸着剤供給装置8に処理水を供給することにより、吸着剤供給装置8から供給される油分吸着剤に処理水を混合し、混合スラリーの形態で油分除去装置5に供給することで、粉体である油分吸着剤が気体を包含し浮遊することを抑制し、被処理水との接触が促進されるとともに、系内の水をリサイクルし有効活用することができる。
【0064】
本実施形態によれば、被処理水を処理した処理水を系内で再利用することにより、油分回収による水利用量の増大を抑制し、環境負荷の小さい水質浄化と油分回収ができる。
【0065】
(第4の実施形態)
図4を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0066】
本実施形態の水処理システム1Cは、切替弁V1,V2を有するラインL23,L24,L33,L34で接続された2つの磁気分離前処理装置41,42および2つの吸着剤回収装置61,62を備えている。ラインL31,L32は第1の磁気分離前処理装置41の逆洗浄ラインであり、ラインL35,L36は第2の磁気分離前処理装置42の逆洗浄ラインである。
【0067】
本実施形態によれば、運転と休止を交互に繰り返すローテーション稼動を実施することが可能になり、水処理システム全体を停止させることなく、一部の前処理装置41(又は42)のみを部分的に休止させて逆洗浄することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、運転と休止を交互に繰り返すローテーション稼動を実施することが可能になり、水処理システム全体を停止させることなく、一部の吸着剤回収装置のみを部分的に休止させて逆洗浄することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B,1C…水処理システム、
2…原水槽、
3…固形分除去前処理装置、
4,41,42…磁気分離前処理装置、
4a,7a…網状構造体(メッシュ)、4b,7b…磁気コイル、
5…油分除去装置、
6,61,62…液体サイクロン(吸着剤回収装置)、
7…処理水磁気分離装置(吸着剤回収装置)、
8…吸着剤供給装置、9…油分回収装置、10…処理水貯槽、
L1〜L9…ライン(経路)、L31,L32,L35,L36,L61,L62…逆洗浄ライン、P1〜P9…ポンプ、V1,V2…切替弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に含まれる固形分を重力の作用により分離除去する固形分除去前処理装置および被処理水中に含まれる固形分を磁場の作用により分離除去する磁気分離前処理装置のうちの少なくとも一方を有する前処理装置と、
前記前処理装置で処理された被処理水にマグネタイトを含有する油分吸着剤を接触させ、被処理水中に含まれる油分を前記油分吸着剤に吸着させて分離する油分除去装置と、
前記油分除去装置で処理された被処理水から油分を吸着した油分吸着剤を分離して回収する吸着剤回収装置と、
を具備することを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記吸着剤回収装置から排出される油分を吸着した油分吸着剤を受け入れ、該油分吸着剤から油分を分離抽出する油分回収装置をさらに有することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記油分回収装置から前記油分除去装置までの間に設けられ、前記油分除去装置から排出される油分吸着剤を前記油分除去装置において被処理水の油分除去に再度利用するために、前記油分回収装置から排出される油分吸着剤を前記油分除去装置に返戻するリターン経路をさらに有することを特徴とする請求項2記載の水処理システム。
【請求項4】
前記吸着剤回収装置は、遠心力により被処理水から油分吸着剤を分離する液体サイクロンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項5】
前記吸着剤回収装置は、磁場の作用により被処理水から油分吸着剤を分離する磁気分離装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項6】
前記吸着剤回収装置は、遠心力により被処理水から油分吸着剤を分離する液体サイクロンと、前記液体サイクロンの下流側に配置され、前記液体サイクロンで処理された被処理水から磁場の作用により油分吸着剤を分離する磁気分離装置と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項7】
前記前処理装置は、遠心力により被処理水から油分吸着剤を分離する液体サイクロンであること特徴とする請求項1乃至6のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項8】
前記前処理装置を複数配することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項9】
前記吸着剤回収装置を複数配することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項10】
前記吸着剤回収装置から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽と、
前記処理水貯槽から前記前処理装置までの間に設けられ、前記処理水貯槽の処理水を逆洗浄水として前記前処理装置に供給するための経路と、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項11】
前記吸着剤回収装置から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽と、
前記処理水貯槽から前記吸着剤回収装置までの間に設けられ、前記処理水貯槽の処理水を逆洗浄水として前記吸着剤回収装置に供給するための経路と、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1記載の水処理システム。
【請求項12】
前記油分除去装置に前記油分吸着剤を供給する吸着剤供給装置と、
前記吸着剤回収装置から排出される油分除去後の処理水を貯留する処理水貯槽と、
前記処理水貯槽から前記吸着剤供給装置までの間に設けられ、前記処理水貯槽の処理水を前記油分吸着剤に添加混合して混合スラリーを生成するための経路と、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189257(P2011−189257A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56632(P2010−56632)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】