説明

水処理担体

【課題】処理水への浸漬時におけるCOD値が低い水処理担体を提供する。
【解決手段】本発明の水処理担体は、ポリエーテルポリオール、イソシアネート、触媒、整泡剤及び発泡剤を含有する発泡原料を用いて製造されたポリウレタン発泡体からなる水処理担体において、上記ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドが付加されて得られたものであり、該アルキレンオキサイドは、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)の少なくとも一つと、エチレンオキサイド(EO)とを含み、該プロピレンオキサイド及び該ブチレンオキサイドの合計モル数と該エチレンオキサイドのモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(90/10)〜(100/0)であり、上記整泡剤は反応型整泡剤であり、上記イソシアネートのイソシアネートインデックスが105以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理担体に関する。更に詳しくは、ポリエーテルポリオール、イソシアネート、触媒、整泡剤及び発泡剤を含有する発泡原料を用いて製造したポリウレタン発泡体からなり、排水処理に利用される水処理担体に関する。特に、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイド由来の構成単位の含有量が90モル%以上のポリエーテルポリオール及び反応型整泡剤を用い、更に、イソシアネートインデックスが105以上であることにより、処理水への浸漬時におけるCOD値が低い水処理担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水処理に利用される微生物担体には、表面積を増大させて、微生物の処理効率を高めるために、連続気泡構造(多孔質構造)を持つ発泡体が利用されている。そして、その微生物担体には、ポリエチレン発泡体が利用されることがあるが、ポリエチレン発泡体の場合、通気性が低く、表面積の増大が望めないなどの問題がある。そこで、耐久性や耐磨耗性があり、またその化学結合から親水性を持つポリウレタン発泡体が利用されている(特許文献1参照)。
また、そのような水処理担体として用いられるポリウレタン発泡体としては、発泡体のセルを粗くすると共に、セル膜を除去して発泡体内部への処理水の侵入性を高めたポリウレタン発泡体(特許文献2参照)等が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−250593号公報
【特許文献2】特開2007−111583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、親水性を持ち、耐久性や磨耗性が高いポリウレタン発泡体を水処理担体として利用した場合、上記のようなポリウレタン発泡体は処理水への浸漬時に、ポリウレタン発泡体に含まれる未反応原料成分が水中に流出する恐れがある。そして、その未反応原料成分が水に流出した場合、処理水での化学的酸素要求量(COD値)が高くなる。排水処理に利用される水処理担体として、担体自らが水を汚すことは好ましくない。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、ポリウレタン発泡体の原料としてプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイド由来の構成単位の含有量が90モル%以上のポリエーテルポリオールを用いると共に、反応型整泡剤を用い、イソシアネートインデックスが105以上であることにより、未反応原料の流出を防ぎ、排水処理に利用する担体として、水への浸漬時にCOD値を低く抑えるポリウレタン発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.ポリエーテルポリオール、イソシアネート、触媒、整泡剤及び発泡剤を含有する発泡原料を用いて製造されたポリウレタン発泡体からなる水処理担体において、上記ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドが付加されて得られたものであり、該アルキレンオキサイドは、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)の少なくとも一つと、エチレンオキサイド(EO)とを含み、該プロピレンオキサイド及び該ブチレンオキサイドの合計モル数と該エチレンオキサイドのモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(90/10)〜(100/0)であり、上記整泡剤は反応型整泡剤であり、上記イソシアネートのイソシアネートインデックスが105以上であることを特徴とする水処理担体。
2.上記ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とからなり、該プロピレンオキサイドのモル数と該エチレンオキサイドのモル数との比(PO/EO)が、(90/10)〜(100/0)である上記1.に記載の水処理担体。
3.上記触媒が反応型触媒である上記1.又は上記2.に記載の水処理担体。
4.上記反応型整泡剤が水酸基を有するポリエーテル変性シリコーン化合物である上記1.乃至上記3.のいずれかに記載の水処理担体。
5.上記反応型触媒が水酸基及びアミノ基のうちの少なくとも一種を有するアミン触媒である上記1.乃至上記4.のいずれかに記載の水処理担体。
6.水温25℃の水に試験片を10分間浸漬した後、該試験片を該水から取り出し、取り出した直後に測定した該試験片の体積を測定し、上記水への浸漬前後の該試験片の体積より、下記式で表される膨潤率が100〜150%である上記1.乃至上記5.のいずれかに記載の水処理担体。
膨潤率(%)=浸漬後の試験片の体積/浸漬前の試験片の体積×100
7.JIS K−0102に準拠し、過マンガン酸カリウムを用いて測定したCODの値が、20mg/l以下である上記1.乃至上記6.のいずれかに記載の水処理担体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリウレタン発泡体からなる水処理担体は、アルキレンオキサイドにおけるプロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)の合計モル数とエチレンオキサイド(EO)のモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(90/10)〜(100/0)であるポリエーテルポリオールと、反応型整泡剤とを含有する発泡原料を用いて製造され、イソシアネートインデックスが105以上であることにより、処理水へ浸漬した際の未反応成分の流出が抑制され、COD値が低減された水処理担体とすることができる。
また、ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とからなり、プロピレンオキサイドのモル数とエチレンオキサイドのモル数との比(PO/EO)が、(90/10)〜(100/0)である場合は、処理水へ浸漬した際の未反応成分の流出が更に抑制され、COD値が低減された水処理担体とすることができる。
また、発泡原料に用いる触媒が反応型触媒である場合は、COD値がより低減された水処理担体とすることができる。
更に、反応型整泡剤が水酸基を有するポリエーテル変性シリコーン化合物である場合は、COD値がより低減された水処理担体とすることができる。
また、反応型触媒が水酸基及びアミノ基のうちの少なくとも一種を有するアミン触媒である場合は、COD値がより低減された水処理担体とすることができる。
更に、ポリウレタン発泡体の膨潤率が100〜150%である場合は、発泡体は処理水中で膨潤し難く、ポリウレタン発泡体を処理水へ浸漬した場合に、未反応成分や低分子オリゴマーの流出が抑制され、COD値がより低減された水処理担体とすることができる。
また、過マンガン酸カリウムを用いて測定したCODの値が、20mg/l以下である場合は、水処理担体として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「COD値」は「化学的酸素要求量」を意味する。
本発明の水処理担体は、ポリエーテルポリオール、イソシアネート、触媒、整泡剤及び発泡剤を含有する発泡原料を用いて製造されたポリウレタン発泡体からなる水処理担体において、上記ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドが付加されて得られたものであり、該アルキレンオキサイドは、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)の少なくとも一つと、エチレンオキサイド(EO)とを含み、該プロピレンオキサイド及び該ブチレンオキサイドの合計モル数と該エチレンオキサイドのモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(90/10)〜(100/0)であり、上記整泡剤は反応型整泡剤であり、上記イソシアネートのイソシアネートインデックスが105以上であることを特徴とする。
【0009】
上記ポリエーテルポリオールは、開始剤にアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオールである。このアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(以下、「EO」という。)、プロピレンオキサイド(以下、「PO」という。)及びブチレンオキサイド(以下、「BO」という。)が用いられる。そのアルキレンオキサイドとしては、少なくともPO及びBOのうちの少なくとも1種が用いられ、その中でもPOが特に好ましい。
そして、上記ポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド由来の全構成単位を100モル%とした場合、PO及び/又はBO由来の構成単位の含有量は90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上であり。特に好ましくは100モル%である。ポリエーテルポリオールにおけるEO由来の構成単位が10モル%以上の場合、ポリウレタン発泡体の親水性が高まり、ポリウレタン発泡体の膨潤率が高くなる。そして、ポリウレタン発泡体が膨潤することにより、未反応成分が処理水に流出しやすくなる。
即ち、上記ポリエーテルポリオールが形成されるアルキレンオキサイドにおけるPO及びBOのモル数とEOのモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(PO+BO)/EO=(90/10)〜(100/0)であり、好ましくは(95/5)〜(100/0)である。PO及びBOのモル数とEOのモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(90/10)〜(100/0)とすることで、COD値を低減させることができる。尚、ポリエーテルポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークロース、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等が用いられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
尚、上記ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドが縮合して得られたものであっても構わない。その縮合に用いられるアルキレンオキサイドの種類、及び構成単位の含有量等は上記の場合と同様である。
【0010】
更に、ポリエーテルポリオールの官能基数(OH基の数)は2〜4が好ましく、より好ましくは2又は3、更に好ましくは3である。この範囲であれば、ポリウレタン発泡体の製造を良好、且つ安定して行うことができる。
【0011】
上記ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、発泡体を形成できる限り、特に限定されないが、1000〜8000であることが好ましく、より好ましくは1500〜5000、更に好ましくは2500〜3500である。この重量平均分子量が1000〜8000の範囲であれば、良好な密度及び硬さを有するポリウレタン発泡体とすることができる。
【0012】
上記イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDIの他、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、粗HDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート等、芳香族系並びに脂肪族系の各種のものを用いることができる。なかでも、TDIを用いることが好ましい。また、これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
また、イソシアネートの配合量は、所定のイソシアネートインデックスにより適宜調整される。本発明におけるポリウレタン発泡体のイソシアネートインデックスは、105以上であり、通常150以下である。更に、好ましくは110以上であり、より好ましくは120以上である。
イソシアネートインデックスが105未満の場合、ポリエーテルポリオール等の未反応成分が発泡体に残留されることとなり、その未反応成分がCOD値を高める要因になる。一方、イソシアネートインデックスが高い場合、イソシアネートが過剰となるが、イソシアネートは、反応性が高く、更に架橋反応を形成する。
即ち、ポリウレタンの生成反応において、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応によりウレタン結合が生成する。また、水とイソシアネートとの反応によって、尿素結合が生成する。
そして、イソシアネートが過剰の場合、ウレタン結合にイソシアネート基が更に反応し、アルファネート結合が生成し、架橋が行われる。また、尿素結合にイソシアネート基が更に反応し、ビューレット結合が生成し、架橋が行われる。これにより、イソシアネートが過剰である場合も、イソシアネートが未反応成分としてCOD値を高める要因にはならないと考えられる。
【0014】
上記触媒としては、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、ポリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類等のアミン系触媒;有機錫化合物、有機水銀化合物、有機鉛化合物等の有機金属化合物系触媒が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの触媒のうち、アミン系触媒が好ましく、更に、反応性アミン触媒がより好ましい。この反応性アミン触媒としては、ポリイソシアネートと反応する活性水素基、例えば、水酸基(−OH基)及びアミノ基(−NH基)から選ばれる少なくとも一種を少なくとも1つ以上有するものが挙げられる。具体的には、−OH基を有する反応性アミン触媒としては、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、−NH基を有する反応性アミン触媒としては、N,N,N",N"−テトラメチルジエチレントリアミンが挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記アミン触媒と共に、有機金属化合物系触媒を併用することが好ましい。この有機金属化合物系触媒としては、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫メルカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等の有機錫化合物;オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等の有機鉛化合物;オクチル酸カリウム、ネオデカン酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
上記触媒の配合量は、使用する触媒により、泡化と樹脂化のバランスで適宜調整されるが、アミン系触媒の配合量は、上記ポリエーテルポリオールの合計量を100質量部とした場合に、0.05〜2質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1質量部、更に好ましくは、0.25〜0.7質量部である。有機金属化合物系触媒の使用量は、上記ポリエーテルポリオールの合計量を100質量部とした場合に、0.05〜1質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。
また、上記触媒は、アミン系触媒単独の使用でもよく、泡化と樹脂化のバランスから、アミン系触媒と有機金属化合物触媒との併用がより好ましい。アミン系触媒と有機金属化合物系触媒を併用する場合その割合は、アミン系触媒と、有機金属化合物系触媒との質量比(アミン触媒/有機金属化合物系触媒)で、(1〜8)/1が好ましく、より好ましくは(2〜5)/1である。
この範囲であれば、ポリウレタン発泡体の製造を良好、且つ安定して行うことができる。
【0016】
上記整泡剤としては、反応型整泡剤が用いられる。この反応型整泡剤としては、ポリイソシアネートと反応する活性水素基、例えば、水酸基(−OH基)を少なくとも1つ以上有するものが挙げられる。本発明の発泡体においては、特に反応型のシリコーン整泡剤が好ましい。この反応型のシリコーン整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンを、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のポリエーテル化合物により変性させたポリエーテル変性シリコーン化合物に、更に、そのポリエーテル鎖の末端を反応性活性水素基(−OH基)で置換したものが好ましく用いられる。
また、ポリエーテル化合物による変性されたポリエーテル変性シリコーン化合物としては、ポリジメチルシロキサンとポリエーテル化合物を直鎖状にブロック変性させたものや、ポリジメチルシロキサンのメチル基に側鎖状にポリエーテル化合物を変性させたもの等が用いられる。
これらは、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
上記整泡剤の配合量は、上記ポリエーテルポリオールの合計量を100質量部とした場合に、0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜3質量部、更に好ましくは0.5〜1.5質量部である。
この範囲であれば、ポリウレタン発泡体の製造を良好、且つ安定して行うことができる。
【0018】
上記発泡剤としては、水が使用されることが多い。その他としては、例えば、ハロゲン置換された脂肪族炭化水素(トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、メチレンジクロライド等)を使用することができる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して配合してもよい。
また、上記「水」は特に限定されず、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等の各種の水を用いることができる。
【0019】
尚、本発明において原料中に、更に必要に応じて、有機及び無機充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、ウレタン配合に一般に使用される原料を適宜配合することもできる。
【0020】
また、上記ポリウレタン発泡体は、ポリエーテルポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤及び適宜の添加剤からなる発泡原料を攪拌混合して上記ポリエーテルポリオールとイソシアネートとを反応させる、所謂、ワンショット法により製造される。
【0021】
上記ポリウレタン発泡体の密度、セル数等は、特に限定されない。密度は、通常、30〜80kg/m、好ましくは40〜60kg/mである。密度が30〜80kg/mである場合、水処理担体として処理水中で流動し易く、微生物による水処理効率に優れる。
また、セル数は、通常、30〜70個/25mm、好ましくは40〜60個/25mmに設計される。セル数が30〜70個/25mmである場合、ポリウレタン発泡体は機械的強度を備え、対磨耗性及び耐久性に優れると共に、微生物がポリウレタン発泡体で効率よく繁殖できる水処理担体となる。
【0022】
上記ポリウレタン発泡体のCOD値は、JIS K−0102に準拠し、過マンガン酸カリウムを用いて測定したCOD値で、20mg/l以下が好ましく、より好ましくは0〜18mg/lであり、更に好ましくは0〜15mg/lであり、特に好ましくは0〜10mg/lである。COD値が20mg/l以下である場合、処理水へのポリウレタン発泡体浸漬時における水への汚染が低減され、ポリウレタン発泡体を水処理担体として良好に使用することができる。
【0023】
上記ポリウレタン発泡体の体積膨潤率は、下記方法により測定した値で、100〜150%が好ましく、より好ましくは100〜120%であり、更に好ましくは100〜110%である。体積膨潤率が、100〜150%である場合、ポリウレタン発泡体の未反応成分が処理水に流出しやすくなる。
体積膨潤率の測定方法は、所定の大きさに加工した試験片の体積を測定し、水温25℃の水に試験片を10分間浸漬した後、その試験片を水から取り出し、水から取り出した直後に試験片の体積を測定する。そして、体積膨潤率は、水への浸漬による試験片の体積増加の割合を示し、下記式より算出される。
膨潤率(%)=浸漬後の試験片の体積/浸漬前の試験片の体積×100
【0024】
上記ポリウレタン発泡体は連続気泡を有する多孔質の発泡体であることから、ポリウレタン発泡体の表面のセル膜は、除膜処理されていてもよいし、除膜処理されていなくてもよい。この除膜処理とは、セル膜のほとんどが除去され、実質的に三次元網目骨格のみとする処理をいう。尚、除膜処理されている場合には、除膜処理されていない場合に比べて、ポリウレタン発泡体内部への処理水の侵入性が高くなる傾向にある。
尚、除膜処理の方法としては、例えば、爆破処理、燃焼処理及び溶解処理等が挙げられる。
【0025】
本発明の水処理担体は、上述のようにして製造されるポリウレタン発泡体よりなるものである。
【0026】
本発明の水処理担体は、流動床、固定床のいずれにも採用することができる。流動床として使用する場合の形状は特に限定されないが、一辺の長さが2〜50mmのキューブ状(立方体、直方体)に形成することが好ましく、より好ましくは2〜20mmのキューブ状、更に好ましくは3〜10mmのキューブ状である。一辺の長さが2〜50mmのキューブ状である場合、排水時に槽外へ流出し難く、更に、担体内部にまで好気性菌を付着させることができる。
また、固定床として使用する場合の形状は特に限定されないが、例えば、格子状、パイプ状、パイプの集合体状、波板状、ハニカム状及び棒状等が挙げられる。
【0027】
本発明の水処理担体は、通常の水処理担体と同様にして曝気槽内で使用することができる。また、微生物を付着させる方法も従来と同様の方法である。この場合、本発明の水処理担体は、COD値が低く、効率良く浄化処理を行うことができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。また、「Mw」は、重量平均分子量を意味する。
【0029】
(1)使用原料
〔実施例1〜7及び比較例1〜6〕
実施例及び比較例において、表1及び表2に示す配合の発泡原料を用いた。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
ここで、表1及び表2における発泡原料の詳細を説明する。
ポリオール1:ポリエーテルポリオール(アルキレンオキサイド付加物、以下同様)、三洋化成工業(株)製、品名;GP3000、Mw;3000、3官能、水酸基価;56.1(mgKOH/g)、PO由来の構成単位含有率;100モル%(ポリエーテルポリオール形成する全アルキレンオキサイド由来の全構成単位を100モル%とした場合の含有率、以下同様。)
ポリオール2:ポリエーテルポリオール、三洋化成工業(株)製、品名;GP3050、Mw;3000、3官能、水酸基価56.1(mgKOH/g)、PO由来の構成単位含有率:90モル%、EO由来の構成単位含有率;10モル%
ポリオール3:ポリエーテルポリオール、三洋化成工業(株)製、品名;GP2800、Mw;2800、3官能、水酸基価;60.1(mgKOH/g)、PO由来の構成単位含有率:50モル%、EO由来の構成単位含有率;50モル%
ポリオール4:ポリエーテルポリオール、三洋化成工業(株)製、品名;FA−103A、Mw;3366、3官能、水酸基価;50.0(mgKOH/g)、PO由来の構成単位含有率;20モル%、EO由来の構成単位含有率;80モル%
イソシアネート:2,4−トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとが質量比で80:20であるトリレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業(株)製、品名;T−80
オクチル酸第1スズ:城北化学工業(株)製、品名;MRH110、NCO%;48.2%
反応型触媒:N,N−ジメチルアミノヘキサノール(分子内に反応性の水酸基を有するアミン触媒)、花王(株)製、品名;カオライザーNo.25
非反応型触媒:トリエチレンジアミンとジプロピレングリコールとが質量比で33:67である触媒、エアープロダクツジャパン(株)製、品名;DABCO 33−LV
反応型整泡剤:水酸基末端有するポリアルキレンオキシド−ジメチルシロキサンコポリマー(分子内に反応性水酸基を有するシリコーン化合物)、GE東芝シリコーン(株)製、品名;L−626
非反応型整泡剤:ポリアルキレンオキシド−ジメチルシロキサンコポリマー(分子内に反応性水酸基を有しないシリコーン化合物)、信越化学工業(株)製、品名;F−650
【0033】
(2)ポリウレタン発泡体の製造
〔実施例1〜7及び比較例1〜6〕
イソシアネート以外の各成分を表1に示す所定の配合でハンドミキサーを用いて攪拌した後、所定の配合量のイソシアネートと混合し、混合物を発泡箱に投入して発泡、硬化させた。このようにして得られた各ポリウレタン発泡体を室温で1日静置した。
【0034】
(3)性能試験
上記(2)で得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の発泡体において、以下の方法により性能試験を行った。尚、それぞれの結果を表1及び表2に併記する。
(a)密度
密度(kg/m)は、JIS K−6401に準じて測定した。
(b)セル数
セル数は、マイクロスコープ(キーエンス社製、型式「VH−50」)により、長さ25mm当たりのセル数(個/25mm)を測定した。
(c)COD値
上記ポリウレタン発泡体を各辺5mmのキュービックに加工し試験片を作成した。その試験片13.5gを蒸留水1lに沈め、室温下にて24時間保持した後、蒸留水から、試験片を取り出した。そして、その蒸留水のCOD値をJIS K−0102準じて測定した。COD値測定の酸価剤は過マンガン酸カリウムを使用した。
(d)体積膨潤率
上記ポリウレタン発泡体を各辺100×100×10mmの直方体に加工し水への浸漬前の試験片の体積を測定した。この試験片1個を室温25℃、水温25℃の蒸留水1lに10分間沈めた後、蒸留水から、試験片を取り出し、水から取り出した直後の試験片の体積を測定した。そして、体積膨潤率を下記式より算出した。
体積膨潤率(%)=浸漬後の試験片の体積/浸漬前の体積
【0035】
表1及び2によれば、PO由来の構成単位含有率が90〜100モル%のポリエーテルポリオールポリオールと、反応型整泡法剤とを用い、更にイソシアネートインデックスが105以上である実施例1〜7のポリウレタン発泡体からなる水処理担体はCOD値が19以下の低い値であることが分かる。一方、PO由来の構成単位含有率が50モル%のポリエーテルポリオールポリオールを用いた比較例1、及びPO由来の構成単位含有率が20モル%のポリエーテルポリオールポリオールを用いた比較例2では、COD値は共に202の高い値であった。
【0036】
また、PO由来の構成単位含有率が90〜100モル%のポリエーテルポリオールを用いる一方で、整泡剤として、非反応型整泡剤を用いた場合の比較例3〜5では、膨潤率は150以下であっても、COD値が21以上であった。これは、非反応型整泡剤を用いたため、未反応成分がポリウレタン発泡体に含まれており、その未反応成分がCOD値を高めたものと考えられる。
【0037】
更に、PO由来の構成単位含有率が100モル%のポリエーテルポリオールと、非反応型整泡剤とを用いた場合であっても、イソシアネートインデックスが100の比較例6では、COD値が24であった。これは、イソシアネートインデックスが100では、ポリエーテルポリオールに対するイソシアネートの量が足りず、実質的に全てのポリエーテルポリオールとのウレタン結合が生成されず、未反応原料のポリエーテルポリオール等がポリウレタン発泡体に含まれることとなり、その未反応原料成分がCOD値を高めたものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオール、イソシアネート、触媒、整泡剤及び発泡剤を含有する発泡原料を用いて製造されたポリウレタン発泡体からなる水処理担体において、
上記ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドが付加されて得られたものであり、該アルキレンオキサイドは、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)の少なくとも一つと、エチレンオキサイド(EO)とを含み、該プロピレンオキサイド及び該ブチレンオキサイドの合計モル数と該エチレンオキサイドのモル数との比{(PO+BO)/EO}が、(90/10)〜(100/0)であり、
上記整泡剤は反応型整泡剤であり、
上記イソシアネートのイソシアネートインデックスが105以上であることを特徴とする水処理担体。
【請求項2】
上記ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とからなり、該プロピレンオキサイドのモル数と該エチレンオキサイドのモル数との比(PO/EO)が、(90/10)〜(100/0)である請求項1に記載の水処理担体。
【請求項3】
上記触媒が反応型触媒である請求項1又は2に記載の水処理担体。
【請求項4】
上記反応型整泡剤が水酸基を有するポリエーテル変性シリコーン化合物である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水処理担体。
【請求項5】
上記反応型触媒が水酸基及びアミノ基のうちの少なくとも一種を有するアミン触媒である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水処理担体。
【請求項6】
水温25℃の水に試験片を10分間浸漬した後、該試験片を該水から取り出し、取り出した直後に測定した該試験片の体積を測定し、上記水への浸漬前後の該試験片の体積より、下記式で表される膨潤率が100〜150%である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水処理担体。
膨潤率(%)=浸漬後の試験片の体積/浸漬前の試験片の体積×100
【請求項7】
JIS K−0102に準拠し、過マンガン酸カリウムを用いて測定したCODの値が、20mg/l以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水処理担体。

【公開番号】特開2009−220079(P2009−220079A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70318(P2008−70318)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】