説明

水処理方法および水処理装置

【課題】微生物による処理能力を格段に向上できる水処理方法および水処理装置を提供する。
【解決手段】この水処理装置によれば、磁気活水ナノバブル発生槽40から栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水が曝気槽6に導入される。これにより、例えば、液中膜32の目詰まり等によって曝気槽6の処理能力が低下しても、上記栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水によって、曝気槽6の処理能力を正常に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気を作用させたナノバブル含有水に栄養剤を含有させて、被処理水の水処理に役立てる水処理方法および水処理装置に関する。例えば、この発明は、より具体的一例では、ナノバブル発生機でナノバブルを発生させ、かつ、磁力線を作用させて磁気活水を生成し、この磁気活水にミネラルをバランスよく含有した栄養剤としてのとうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)を含有させ、各種水処理における微生物の状態を最高レベルまで引き上げた水処理方法および水処理装置に関する。また、この発明は、別の一例では、栄養剤とナノバブルを含有した磁気活水を充填材としての活性炭の細孔から取り入れて、活性炭の細孔に繁殖する極小のバクテリアすなわち微生物の内で極小のバクテリアを活性化して、活性炭が吸着した有機物を微生物分解することができる水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロナノバブル発生機で発生させたマイクロナノバブルを利用して水処理を行う方法が提案されている。
【0003】
例えば、従来技術としてのナノバブルの利用方法および装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)で提案されている。この従来技術は、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用している。より具体的には、それらが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能を発揮して、各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることを開示している。
【0004】
また、もう一つの従来技術としてのナノ気泡の生成方法が、特許文献2(特開2003−334548号公報)に示されている。この従来技術は、液体中において、(1)液体の一部を分解ガス化する工程、(2)液体中で超音波を印加する工程、または、(3)液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程から構成されている。
【0005】
さらに、別の従来技術としてのオゾンマイクロバブルを利用する廃液の処理装置が、特許文献3(特開2004−321959号公報)に示されている。この従来技術では、オゾン発生装置より生成されたオゾンガスと処理槽の下部から抜き出された廃液を加圧ポンプを介してマイクロバブル発生装置に供給している。また、生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気することを開示している。
【0006】
一方で、微生物を利用した従来の排水処理においては、次の(1)〜(7)のような問題があった。
【0007】
(1) 季節による水温の変動などにより、微生物処理における処理が不安定になる。
【0008】
(2) 特に半導体工場の有機物排水では、各種微生物が必要なミネラルが含有されていないので、微生物の安定した繁殖が困難であり、微生物処理が安定しない。
【0009】
(3) 液中膜を利用した排水処理システムでは、微生物の状態が悪化すると、液中膜が閉塞して透過水量が減少し、処理能力が低下する。
【0010】
(4) 微生物の状態が悪化すると、液中膜が閉塞するため、液中膜の薬品洗浄の必要性が増し、その結果、管理費用が増加する。
【0011】
(5) 液中膜を利用した微生物処理システムにおいて、処理水質に関する品質の向上や排水処理装置における処理能力向上が難しい。
【0012】
(6) 有機フッ素化合物含有水を簡単な方法で処理することができない。
【0013】
(7) 液晶工場から多量に発生する有機物排水をコンパクトな設備でランニングコストを低減して合理的に処理できない。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明の課題は、微生物による処理能力を格段に向上できる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明の水処理方法は、磁気を作用させたナノバブル含有水に栄養剤を含有させ、
この栄養剤を含有させたと共に磁気を作用させたナノバブル含有水を被処理水に添加して水処理することを特徴としている。
【0016】
この発明の水処理方法によれば、磁気活水とナノバブルと栄養剤の効果が水処理に発揮され、特に、水処理として微生物処理が行われる場合、上記磁気活水とナノバブルおよび栄養剤によって、微生物が活性化され、従来に比べて処理能力を格段に向上できる。
【0017】
また、一実施形態の水処理方法では、上記栄養剤は、農業産物浸漬液である。
【0018】
この実施形態の水処理方法によれば、上記栄養剤が農業産物浸漬液であるので、各種のミネラルを含有しており、水処理として微生物処理が行われる場合、微生物の必須のミネラルとなり、微生物処理における正常なる機能を維持することができる。なお、上記農業産物浸漬液とは例えば農産物を水に浸漬させた液である。
【0019】
また、一実施形態の水処理方法では、上記農業産物浸漬液は、とうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)である。
【0020】
この実施形態の水処理方法によれば、上記栄養剤がとうもろこし浸漬液であることで、特にバランスのとれたミネラルを供給できる。
【0021】
また、一実施形態の水処理方法では、上記栄養剤が、薬用植物浸漬液である。なお、上記薬用植物浸漬液とは例えば薬用植物を水に浸漬させた液である。
【0022】
この実施形態の水処理方法によれば、上記薬用植物が含有する各種のミネラルと薬用植物由来の薬用成分を栄養剤として活用できる。
【0023】
また、一実施形態の水処理装置では、液中ろ過膜が設置されていると共に被処理水が導入される曝気槽と、
磁気を作用させたナノバブル含有水を生成すると共にこの磁気を作用させたナノバブル含有水に栄養剤を含有させて、上記栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水を上記曝気槽に導入する磁気活水ナノバブル発生槽と、
上記磁気活水ナノバブル発生槽に栄養剤を供給する栄養剤槽とを備える。
【0024】
この実施形態の水処理装置によれば、上記磁気活水ナノバブル発生槽から上記栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水が上記曝気槽に導入される。これにより、例えば、上記液中ろ過膜の目詰まり等によって上記曝気槽の状態が悪化しても、上記栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水によって、上記曝気槽の状態を正常に戻すことができる。なお、上記液中ろ過膜とは、液中に配置されるろ過膜であり、一例として、液中膜(登録商標)がある。
【0025】
また、一実施形態の水処理装置では、上記被処理水が、排水、再利用水、湖沼河川水および有機フッ素化合物含有水のうちのいずれかである。
【0026】
この実施形態の水処理装置によれば、上記被処理水としての、排水、再利用水、湖沼河川水および有機フッ素化合物含有水のうちのいずれかを、効率よく、また合理的に処理できる。なお、湖沼河川水とは、湖沼水または河川水の少なくとも一方を表している。
【0027】
また、一実施形態の水処理装置では、上記曝気槽に充填材を設置した。
【0028】
この実施形態によれば、上記曝気槽に設置した上記充填材に、上記栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水によるナノバブルを長く付着させて、微生物のうちで処理に役立つバクテリアを上記充填材に付着させ、このバクテリアの活性を高めて、水処理の能力を高めることができる。
【0029】
また、一実施形態の水処理装置では、上記磁気活水ナノバブル発生槽は、導入された水に磁気を作用させる磁気活水器と、上記導入された水にナノバブルを発生させるナノバブル発生機とを有する。
【0030】
この実施形態によれば、上記磁気活水ナノバブル発生槽で、上記磁気活水器からの磁力線と上記ナノバブル発生機からのナノバブルとが合わさって、磁気を作用させたナノバブル含有水を生成できる。また、上記栄養剤に含まれる塩類や有機物によって、ナノバブルが効率的に発生する。
【0031】
また、一実施形態の水処理装置では、上記磁気活水ナノバブル発生槽が有しているナノバブル発生機が、2つ以上の気体せん断部を有している。
【0032】
この実施形態の水処理装置によれば、上記ナノバブル発生機は、2つ以上の気体せん断部によって、多量のナノバブルを作製できると同時に、ナノバブルに付随するフリーラジカルによる酸化作用を高めることができる。
【0033】
また、一実施形態の水処理装置では、上記栄養剤槽に、とうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)を上記栄養剤として添加する。
【0034】
この実施形態の水処理装置によれば、上記とうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)によって、バランスのよいミネラルを容易に、水処理装置に添加することができる。すなわち、一方では、とうもろこし浸漬液の有効利用先とすることができ、資源の有効利用を可能とすることができる。
【0035】
また、一実施形態の水処理装置では、上記曝気槽において上記液中ろ過膜でろ過した処理水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に導入する処理水導入部を有する。
【0036】
この実施形態の水処理装置によれば、上記液中ろ過膜でろ過した後の処理水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に導入するから、ナノバブル発生機の弱点である浮遊物質によるナノバブル発生機自身の閉塞現象を防止できる。
【0037】
また、一実施形態の水処理装置では、上記液中ろ過膜からろ過水を導出する液中ろ過膜ポンプと、
上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力を検出する操作圧力計と、
上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記磁気活水ナノバブル発生槽が有する上記ナノバブル発生機の運転を制御する運転制御部とを有する。
【0038】
この実施形態の水処理装置によれば、上記操作圧力計が検出した上記操作圧力でもって、上記曝気槽の異常を自動的に感知でき、上記運転制御部による上記ナノバブル発生機の運転制御によって、上記曝気槽の異常に対処可能となる。例えば、上記曝気槽における微生物の状態が悪化すると微生物の固まりによる微生物汚泥によって上記曝気槽の液中ろ過膜が閉塞する現象が発生する。そして、この液中ろ過膜が閉塞すると、上記操作圧力が上昇するので、上記操作圧力を検出することで、上記液中ろ過膜の閉塞現象を検出でき、この閉塞現象を検出したときに、上記運転制御部で上記ナノバブル発生機を稼動させるように制御することで、曝気槽での微生物状態の改善を図れる。
【0039】
また、一実施形態の水処理装置では、被処理水が導入される調整槽と、
上記調整槽から上記曝気槽に上記被処理水を導入する調整槽ポンプと、
上記液中ろ過膜からろ過水を導出する液中ろ過膜ポンプと、
上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力を検出する操作圧力計と、
上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記調整槽ポンプの運転を制御する運転制御部とを有する。
【0040】
この実施形態の水処理装置によれば、上記運転制御部は、上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記調整槽ポンプの運転を制御するので、上記操作圧力が上昇した場合に、上記調整槽ポンプの吐出量を制御して、上記曝気槽への流入水量と上記曝気槽からの流出水量とがバランスするように自動的にコントロールできる。
【0041】
また、一実施形態の水処理装置では、上記液中ろ過膜からろ過水を導出する液中ろ過膜ポンプと、
上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を処理水として流出させる第1動作と上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に返送する第2動作とが可能な流出返送部と、
上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力を検出する操作圧力計と、
上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記第1動作と上記第2動作のうちのいずれかの動作を行うように上記流出返送部を制御する動作制御部とを有する。
【0042】
この実施形態の水処理装置によれば、上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力のレベルにより、上記流出返送部を制御して、上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を処理水として流出させるのか、上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に返送するのかを選択できる。例えば、上記曝気槽で微生物の状態が急に悪化したことに起因して、上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力が急に上昇した場合は、処理水質も悪化している。このため、上記動作制御部は、上記流出返送部を制御して、上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に返送する。一方、上記操作圧力が、設定値よりも低く、液中ろ過膜が殆ど閉塞していない場合は、処理水質も良好であるので、上記動作制御部は、上記流出返送部を制御して、上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を処理水として流出させる。これにより、上記曝気槽を含めた水処理装置全体を処理水の水質に合わせて、合理的に運用,維持,管理できる。
【0043】
また、一実施形態の水処理装置では、上記曝気槽の後段に、活性炭が槽内に充填された接触曝気槽と、活性炭が塔内に部分的に充填された急速ろ過塔と、活性炭吸着塔とが、順に設置されている。
【0044】
この実施形態によれば、上記曝気槽から、栄養剤を含むと共に磁気を作用させたナノバブル含有処理水が、順次、上記接触曝気槽、急速ろ過塔、活性炭吸着塔に導入され、ナノバブルが上記接触曝気槽、急速ろ過塔、活性炭吸着塔の活性炭にまで持続させて導入できる。よって、上記ナノバブルが上記活性炭に繁殖した微生物の活性を高めるので、処理効率を高めることができる。また、活性炭に繁殖した微生物が活性化して、活性炭に吸着して有機物を微生物学的に分解処理できる。また、それぞれの活性炭が吸着した有機物を、ナノバブルに付随するフリーラジカルによる酸化作用で、分解処理することができる。
【0045】
また、一実施形態の水処理装置では、上記曝気槽に設置している上記充填材が、ポリ塩化ビニリデン充填物または活性炭である。
【0046】
この実施形態の水処理装置によれば、上記ポリ塩化ビニリデン充填物または活性炭に、栄養剤を含むと共に磁気を作用させたナノバブル含有処理水のナノバブルが付着する。これにより、上記ポリ塩化ビニリデン充填物または活性炭に繁殖した微生物を活性化することができると同時に、水処理能力を向上できる。
【0047】
また、一実施形態の水処理装置では、上記磁気活水器が、永久磁石または交流磁気発生部を有する。
【0048】
この実施形態の水処理装置によれば、上記永久磁石を有する場合は、電源が必要でなく極が変化しない磁気を導入水に作用させることができる。一方、上記交流磁気発生部を有する場合は、電源が必要だが極(S極とN極)が変化する磁気を導入水に作用させることができる。
【発明の効果】
【0049】
この発明の水処理方法は、磁気を作用させたナノバブル含有水に栄養剤を含有させ、この栄養剤を含有させたと共に磁気を作用させたナノバブル含有水を被処理水に添加して水処理するので、磁気活水とナノバブルと栄養剤の効果が水処理に発揮され、特に、水処理として微生物処理が行われる場合、上記磁気活水とナノバブルおよび栄養剤によって、微生物が活性化され、従来に比べて処理能力を格段に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0051】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の水処理装置の第1実施形態としての栄養剤含有磁気ナノバブル水処理装置49を模式的に示す図である。
【0052】
この栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置49は、大きくは、調整槽1と磁気活水ナノバブル発生機48を有する栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40、栄養剤槽24、曝気槽6等から構成されている。
【0053】
最初に、被処理水としての排水は、流入配管2から調整槽1に導入される。この排水の種類は多種多様であるが、特に、半導体工場や液晶工場での有機物含有排水は、微生物処理するに際して、微生物にとって必要なミネラルを殆ど含有していないので、適合する排水の一つである。
【0054】
いずれにしても、この実施形態は、排水を微生物処理する場合に、上記排水中の成分にミネラルが含有されていないか、含有されていても含有量が少ない場合に適合する。
【0055】
調整槽1で、水量と水質を調整された被処理水は、調整槽ポンプ3によって、吐出配管4を経て曝気槽6に導入される。
【0056】
曝気槽6は、通常の排水処理装置に使用されている曝気槽が該当し、この第1実施形態では、曝気槽6の水槽内部に、微生物と処理水を分離すなわち固液分離するための液中膜32、液中膜(登録商標)32を空気洗浄するための散気管34、曝気槽6内を空気撹拌するための散気管37、および、散気管34とブロワー36を接続するための空気配管35、散気管37とブロワー36を接続するための空気配管39から構成されている。なお、液中膜32に替えて、タイプの異なる他のろ過膜(例えば、限外ろ過膜,精密ろ過膜等)を採用することもできる。
【0057】
そして、通常は、曝気槽6内の微生物の状態が良いと、微生物の固まりである微生物汚泥は液中膜32を閉塞させないで運用されている。すなわち、液中膜32は水配管で液中膜ポンプ29と連結され、かつ、操作圧力計28が検出する液中膜ポンプ29の操作圧力も所定値よりも低い状態で運用されている。
【0058】
通常は、操作圧力計28が検出する操作圧力が所定値よりも低い状態で運用されている。この場合は、操作圧力計28が検出する操作圧力を表す圧力信号が制御部をなす操作圧力調節計27に入力されることで、操作圧力調節計27が出力する制御信号でもって、電動バルブ30が閉、電動バルブ31が開の状態で、処理水を外部に排出している。この電動バルブ30,31が流出返送部を構成している。
【0059】
一方、曝気槽6内の微生物の状態が悪いと、微生物の固まりである微生物汚泥が液中膜32を閉塞させる傾向となり、処理水の確保が困難となる。この場合には、操作圧力計28で検出した液中膜ポンプ29の操作圧力が所定値よりも高い状態となり、排水処理装置としての能力が低下する。
【0060】
この操作圧力計28が検出する液中膜ポンプ29の操作圧力が所定値よりも高い場合、曝気槽6での微生物の状態が悪化したことが考えられる。微生物の状態が悪化する原因は、主に、排水中のミネラルが不足したこと、または、排水中にミネラルが存在していないことである。そこで、不足したミネラルを追加する必要がある。半導体工場や液晶工場での有機物排水には、ミネラルがバランスよく含有されていないので、この実施形態では、微生物の状態を改善するために、栄養剤を添加する。
【0061】
例えば、経済的に低コストで、微生物が必要とするミネラルを殆ど含有している栄養剤として、とうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)がある。上記とうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)の原液の一例(株式会社 王子コーンスターチの製品)の組成は、一例として、TOC(全有機炭素)が160000、T-P(全リン)が23000、T-N(全窒素)が42000、K(カリウム)が18000、Mg(マグネシウム)が11000、Na(ナトリウム)が2600、Ca(カルシウム)が400、Si(シリカ)が200、Fe(鉄)が320である。上記各数値の単位は、mg/リットルである。
【0062】
なお、上記栄養剤としての、とうもろこし浸漬液(コーンスティープリカー)は、あくまでも一例であり、他の農業産物浸漬液や薬用植物浸漬液でもよい。例えば、上記栄養剤としては、液体状であって、野菜や果物等の農産物であって、廃棄するようなものであっても良い。例えば、野菜のカス、廃棄すべき生ごみ等でも構わない。この場合には資源の有効使用になり、廃棄資源の望ましい使用方法になる。また、上記栄養剤としては、植物由来の材料であれば基本的には何でも良い。
【0063】
元に戻るが、操作圧力計28が検出した上記液中膜ポンプ29の操作圧力が、所定値よりも高い場合、電動バルブ31が閉、電動バルブ30が開となり、液中膜32でろ過された処理水は、液中膜水配管22を通って栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40に導入(返送)される。このことに伴って、上記操作圧力計28は、栄養剤槽24に付属して設置している栄養剤槽ポンプ25を稼動させて、栄養剤槽24に貯留してあったとうもろこし浸漬液が、水配管26を通って栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40に添加される。なお、栄養剤槽24では、撹拌機23により上記とうもろこし浸漬液が希釈,撹拌されて貯留されている。さらに、上記操作圧力計28は、栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40の外部に付属して設置されている磁気活水ナノバブル発生機48を稼動させる。これにより、この栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40では、曝気槽6から導入された液中膜処理水に栄養剤を含有させ、磁気を作用させると共にナノバブルを含有させて、ナノバブル含有磁気活水を発生させている。
【0064】
この栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40で発生させたナノバブル含有磁気活水は、オーバーフロー配管21を通って、曝気槽6に導入される。
【0065】
ここで、磁気活水のナノバブルや磁気活水のナノバブルの発生メカニズムについて説明する。上記ナノバブル含有磁気活水は、磁気活水器47を有した磁気活水ナノバブル発生機48によって作製できる。上記栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40の外部に付属して設置された磁気活水ナノバブル発生機48は、第1気体せん断部8を有する気液混合循環ポンプ7、第2気体せん断部9、磁気活水器47、第3気体せん断部20、空気を導入するための電動ニードルバルブ17とそれらを連結する配管16,19,39から構成されている。
【0066】
また、磁気活水器47は、フランジ10とフランジ15の間に設置されており、その磁気活水器47の内部に厚み30mm以下の液体通過部14が、厚み30mm以下の平板状に形成されている。また、平板状の液体通過部14を挟んで磁石のS極12とN極11が、3つずつ設置され、S極12とN極11との間に磁力線13が出ている。この磁力線の強さは、液体通過部14の中心部で約1000ガウスである。なお、ここでは、上記磁石を永久磁石としたが電磁石としてもよい。また、上記磁石に替えて、上記液体通過部14に交流磁気を発生する交流磁気発生部としてもよい。
【0067】
そして、第1気体せん断部8を有する気液混合循環ポンプ7が運転されることにより、液中膜32からの処理水は、第1気体せん断部8から第2気体せん断部9に導入されて、気体がせん断すなわち、マイクロバブルがせん断されて一部でナノバブルが製造される。なお、ここで、電動ニードルバルブ17が開の条件で、第1気体せん断部8に空気が導入されるが、この空気の導入は、気液混合循環ポンプ7が運転されてから60秒以上後のことである。その理由は、気液混合循環ポンプ7の運転の最初から電動ニードルバルブ17が開の条件で空気が導入されると、気液混合循環ポンプ7がキャビテーション現象を起こして、気液混合循環ポンプ7が損傷するからである。この気液混合循環ポンプ7を出た液体としての処理水は、第2気体せん断部9に導入されて、気体がせん断され、すなわち、マイクロバブルがせん断されて一部ナノバブルが製造される。
【0068】
次に、磁気活水ナノバブル発生機48のメカニズムを詳細に説明する。上述のように、磁気活水ナノバブル発生機48は、気液混合循環ポンプ7、第1気体せん断部8、第2気体せん断部9、磁気活水器47、第3気体せん断部20、電動ニードルバルブ17とそれらを連結する配管から構成されている。この磁気活水ナノバブル発生機48において、ナノバブルは、大きくは、第1段階と第2段階を経て製造される。
【0069】
まず、第1段階について簡単に説明する。第1気体せん断部8において、流体力学的に圧力を制御し、負圧形成部分から気体を吸入し、高速流体運動させて、負圧部を形成し、マイクロバブルを発生させる。より分かり易く簡単に説明すると、水と空気を効果的に自給,混合,溶解し、圧送することにより、有用物質含有マイクロバブル白濁水を製造することが、第1段階である。
【0070】
続いて、第2段階について簡単に説明する。第2気体せん断部9と第3気体せん断部20に水配管39,19を通じて上記有用物質含有マイクロバブルを導入し、第2気体せん断部9と第3気体せん断部20において高速流体運動させて、負圧部を形成し、流体運動としてせん断することによって、マイクロバブルからナノバブルを発生させることになる。
【0071】
次に、上記磁気活水ナノバブル発生機48での第1段階と第2段階をさらにより詳細に説明する。
【0072】
(第1段階)
磁気活水ナノバブル発生機48に使用している気液混合循環ポンプ7は、揚程40m以上(つまり、4kg/cmの高圧)の高揚程のポンプである。すなわち、第1気体せん断部8を有する気液混合循環ポンプ7は、高揚程のポンプであり、かつトルクが安定している2ポールのものを選定することが好ましい。ポンプには、2ポールと4ポールのものがあり、4ポールのポンプよりも2ポールのポンプの方が、トルクが安定している。
【0073】
また、気液混合循環ポンプ7は圧力の制御が必要で、この高揚程のポンプの回転数を一般的にはインバーターと呼ばれている回転数制御機でもって目的にあった圧力に制御している。この目的にあった圧力で、バブルサイズが纏まったマイクロバブルを製造可能になる。ここで、第1気体せん断部8を有する気液混合循環ポンプ7でのマイクロバブル発生のメカニズムを説明する。第1気体せん断部8において、マイクロバブルを発生させるために、液体および気体の混相旋回流を発生させ、第1気体せん断部8の中心部に高速旋回する気体空洞部を形成する。次に、この気体空洞部を圧力で竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。この空洞部に気体としての空気を、マイナス圧(負圧)を利用して、自動的に供給させ、さらに、切断,粉砕しながら混相流を回転する。この切断,粉砕は、装置出口付近における内外の気液2相流体の旋回速度差により起きる。その時の回転速度は、500〜600回転/秒である。なお、上記気体は、本実施形態では単に空気としたが、目的によって、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、オゾンガスも選定でき、その他の気体も選定可能である。
【0074】
このように、第1気体せん断部8において、流体力学的に圧力を制御することで、負圧形成部分から気体を吸入し、高揚程ポンプで高速流体運動させて、負圧部を形成し、マイクロバブルを発生させる。より解り易く簡単に説明すると、高揚程ポンプで水と空気を効果的に自給,混合,溶解し、圧送することにより、マイクロバブル白濁水を製造することが、第1段階である。
【0075】
なお、上記気液混合循環ポンプ7の運転は、シーケンサー(図示せず)から入力される制御信号により制御している。また、第1気体せん断部35の内部形状は、一例として楕円形であるが、最大の効果を発揮できる形状としては真円形である。さらに、第1気体せん断部35は内部摩擦を小さくするために鏡面仕上げとしている。また、この実施形態では、第1気体せん断部35の内部に流体の旋回乱流を制御するために溝深さ0.3mm〜0.6mm、溝幅0.8mm以内の溝を設けている。
【0076】
(磁気活水ナノバブル発生機での第2段階)
上記第1気体せん断部8を有する気液混合循環ポンプ7で発生させたマイクロバブルを、第2気体せん断部9に水配管39を通じて圧送する。前述の第1段階の後の第2気体せん断部9と第3気体せん断部20においては、さらに配管サイズを細くして、かつ、高速流体運動させて、気体空洞部を竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。これによって、マイクロバブルからナノバブルが発生すると同時に、超高温の極限反応場が形成される。この第2気体せん断部9と第3気体せん断部20を構築している理由は、気体せん断部を1段階で構築する場合よりも、気体せん断部を2段階で構築する方が、ナノバブルを多量に発生できるからである。すなわち、超高温の極限反応場が形成されると、局部的に高温高圧状態となり、不安定なフリーラジカルができ、同時に熱を発生することとなる。
【0077】
なお、第2気体せん断部9と第3気体せん断部20はステンレス製とするのが一般であり、その形状は、楕円形、好ましくは真円形である。また、第2気体せん断部9と第3気体せん断部20には、小孔が開いているが、その吐出口径は、4mm〜9mmが最適である。
【0078】
次に、上述した第1段階での高速流体運動について説明する。第1気体せん断部8において、マイクロバブルを発生させるために、まず「高速流体運動」として、ポンプのインペラと呼ばれている羽を超高速で回転させて、液体および気体の混相旋回流を発生させ、第1気体せん断部8の中心部に高速旋回する気体空洞部を形成する。次に、この気体空洞部を圧力で竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。この気体空洞部に気体としての空気を自給させる。上記気体を、酸素ガスとする場合もある。さらに、この気体空洞部を切断,粉砕しながら混相流を回転させる。この切断,粉砕は、装置出口付近における内外の気液2相流体の旋回速度差により起きる。回転速度は、500〜600回転/秒であることが判明している。なお、第1気体せん断部8を構成する金属の厚みが薄いと、気液混合循環ポンプ7が運転されることにより、振動が発生し、流体運動エネルギーが、振動として外部に伝播して逃げ、そのことが、必要な高速流動運動すなわち、高速旋回とせん断エネルギーを低下させる。よって、第1気体せん断部8を構成する金属の厚みは、6mm〜12mmの範囲が好ましい。
【0079】
次に、「流体運動としてせん断すること」について説明する。第1気体せん断部8を有する気液混合循環ポンプ7で発生させたマイクロバブルを、第2気体せん断部9と第3気体せん断部20に水配管39,19を通じて圧送する。上記第1段階後の第2気体せん断部9と第3気体せん断部20においては、配管サイズを細くしており、かつ高速流体運動させて、気体空洞部を竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。
【0080】
次に、「負圧形成部分」について説明する。「負圧形成部分」とは、装置出口付近における内外の気液2相流体の旋回速度差により発生する。上述したように、回転速度は500〜600回転/秒である。また、次に「負圧部」について説明する。この「負圧部」とは、気体液体混合物中で周りと比較して圧力が小さな領域を意味する。以上が、磁気活水ナノバブル発生機48のメカニズムである。
【0081】
また、この第1実施形態では、上記操作圧力計28が検出した上記液中膜32の操作圧力に基づいて、信号線5を介して調整槽ポンプ3に制御信号を出力して上記調整槽ポンプ3の吐出量を制御することにより、調整槽1から曝気槽6への流入水量と曝気槽6からの流出水量とをバランスさせるように自動制御している。
【0082】
また、磁気活水ナノバブル発生機48としては、市販されているものを採用できるがメーカーを限定するものではなく、具体的一例としては、磁気活水器47は株式会社ビー・シー・オーのBKタイプBK−50を採用できる。また、ナノバブル発生機としては、株式会社 協和機設の商品であるバビタスHYK―32を採用できる。
【0083】
ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0084】
(1) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0085】
(2) マイクロバブルは、その発生時において、10〜数10μmの気泡径を有する微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。マイクロバブルは、発生後に収縮運動により『マイクロナノバブル』に変化する。
【0086】
(3) ナノバブルは、マイクロバブルよりさらに小さいバブル(直径が数100nm以下)でいつまでも水の中に存在することが可能なバブル。と言われている。
【0087】
マイクロナノバブルとは、マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明でき、10μmから数100nm前後の直径を有する気泡である。
【0088】
(第2の実施の形態)
次に、図2にこの発明の水処理装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、前述の第1実施形態の栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置49の曝気槽6の後段に、順に、接触曝気槽50、急速ろ過塔51、活性炭吸着塔52を設置した点だけが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0089】
この第2実施形態では、上記曝気槽6からの処理水を、順に、接触曝気槽50、急速ろ過塔51、活性炭吸着塔52に導入して、処理水をさらに高度処理している。したがって、この第2実施形態によれば、放流規制が相当厳しい地域での排水処理装置を構築することができる。
【0090】
すなわち、この実施形態によれば、上記曝気槽6から、栄養剤を含むと共に磁気を作用させたナノバブル含有処理水が、順次、上記接触曝気槽50、急速ろ過塔51、活性炭吸着塔52に導入され、ナノバブルが上記接触曝気槽50、急速ろ過塔51、活性炭吸着塔52の活性炭にまで持続させて導入できる。
【0091】
例えば、活性炭が接触曝気槽50、急速ろ過塔51、活性炭吸着塔52のそれぞれに充填されておれば、従来の接触曝気槽、急速ろ過塔、活性炭吸着塔と比較して、処理性能が向上する。その理由は、活性炭に繁殖した微生物が活性化して、活性炭に吸着して有機物を微生物学的に分解処理できるからである。一例として、活性炭の細孔と処理に寄与する微生物とはサイズが、ほぼ同じ大きさである。このように、上記ナノバブルが上記活性炭に繁殖した微生物の活性を高めるので、処理効率を高めることができる。また、活性炭の細孔に磁気活水ナノバブルが入り込んで、活性炭が吸着した有機物をナノバブルに付随するフリーラジカルによる酸化作用で分解できる。
【0092】
また、この第2実施形態では、被処理水を高度に処理しているので、別の用途に再利用することもできる。特に、この第2実施形態では、処理水中には、磁気活水ナノバブル(磁気を作用させた水中に存在するナノバブル)が残存しており、この磁気活水ナノバブルは、水中に4週間以上継続して存在するので、後段の処理設備にも影響を与えることができる。
【0093】
(第3の実施の形態)
次に、図3にこの発明の水処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態では、前述の第1実施形態における流入水である排水が、再利用水に置き換えられている点だけが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第3実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0094】
この第3実施形態では、流入水が再利用水であるので、再利用水中の有機物濃度が急激に上昇した場合や、微生物にとって有害な物質が流入して、曝気槽6内の微生物の状況が悪化した場合に対応できる対応水処理装置となる。この第3実施形態では、このような対応水処理装置となることができるので、流入再利用水の水質が変化しても、処理水の水質を安定化でき、処理水を再利用可能となる。この再利用水の具体的一例としては、再利用水が多量に存在する半導体工場や液晶工場での有機物含有再利用水が該当する。
【0095】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の水処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、前述の第1実施形態における流入水である排水が、湖沼河川水に置き換えられている点だけが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第4実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0096】
この第4実施形態では、流入水が湖沼河川水であるので、湖沼河川水中の有機物濃度が何らかの理由で急激に上昇した場合や、微生物にとって有害が物質が流入して、曝気槽6内の微生物の状況が悪化した場合に対応できる対応水処理装置となる。この第4実施形態は、このような対応水処理装置となることができるので、流入湖沼河川水の水質が変化しても、処理水の水質を安定化でき、処理水を利用可能となる。すなわち、この第4実施形態によれば、具体的一例として、浄水場での水処理装置を実現できる。
【0097】
(比較例)
次に、図5にこの発明の水処理装置の比較例を示す。この比較例では、前述の第1実施形態における磁気活水器47が削除されている点が先述の第1実施形態と異なる。よって、この比較例では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0098】
この比較例では、前述の第1実施形態における磁気活水器47が削除されているので、磁気活水器47の効果が期待できない。しかし、この比較例によれば、イニシャルコストがかなり低減できる効果がある。
【0099】
磁気活水器47の効果としては、磁気活水器47の液体通過部14の内部に磁力線13が出ているが、この磁力線の中を液体が流れると、微弱な電流が発生する。そして、この微弱電流を含む水などの液体を曝気槽6に導入して、微生物を磁力線の力で活性化させる内容である。
【0100】
この比較例では、この磁気活水器47の効果が期待できない。よって、この比較例では、ナノバブル発生機による栄養剤含有ナノバブルによる作用のみが発揮されるが、排水の水質内容によっては、充分な水処理装置となる場合もある。
【0101】
(第5の実施の形態)
次に、図6にこの発明の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、前述の第1実施形態における曝気槽6の水槽内部に充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物41が充填されている点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第5実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0102】
この第5実施形態では、曝気槽6の水槽内部に充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物41が取付金具43に取付けられて充填されている。これにより、栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水によるナノバブル(栄養剤含有磁気活水ナノバブル)がひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物41に付着して、固定化され長く持続することになる。また、処理に有効な微生物としてのバクテリアもひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物41に付着繁殖することになる。
【0103】
これらのことにより、バクテリアと栄養剤含有磁気ナノバブルの両方が、ひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物41に付着し、処理に有効なバクテリアの活性が増加するので、曝気槽6の処理能力が向上することになる。
【0104】
(第6の実施の形態)
次に、図7にこの発明の水処理装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、前述の第5実施形態における流入水である排水が、再利用水に置き換えられている点のみが、前述の第5実施形態と異なっている。よって、この第6実施形態では、前述の第5実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第5実施形態と異なる部分を説明する。
【0105】
この第6実施形態では、流入水が再利用水であるので、再利用水中の有機物濃度が急激に上昇した場合や、微生物にとって有害な物質が流入して、曝気槽6内の微生物の状況が悪化した場合に対応可能な対応水処理装置となる。この第6実施形態では、このような対応水処理装置となることができるので、流入再利用水の水質が変化しても、処理水の水質を安定化できて、処理水を再利用可能となる。上記再利用水の具体的一例としては、多量に再利用水が存在する半導体工場や液晶工場での有機物含有再利用水が該当する。
【0106】
(第7の実施の形態)
次に、図8にこの発明の第7実施形態を示す。この第8実施形態は、前述の第4実施形態における曝気槽6の水槽内部に充填材としてのリング型ポリ塩化ビニリデン充填物42を網目状容器44の中に充填した点のみが、前述の第7実施形態と異なっている。よって、この第7実施形態では、前述の第4実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第4実施形態と異なる部分を説明する。
【0107】
この第7実施形態は、曝気槽6の水槽内部に充填材としてのリング型ポリ塩化ビニリデン充填物42が充填されている。したがって、この第7実施形態では、上記栄養剤含有磁気活水ナノバブルがリング型ポリ塩化ビニリデン充填物42に付着して、固定化され長く持続することになる。また、処理に有効な微生物としてのバクテリアも、リング型ポリ塩化ビニリデン充填物42に付着繁殖することになる。これらのことにより、バクテリアと栄養剤含有磁気ナノバブルの両方が、リング型ポリ塩化ビニリデン充填物42に付着し、処理に有効なバクテリアの活性が増加するので、曝気槽6の処理能力が向上することになる。
【0108】
(第8の実施の形態)
次に、図9にこの発明の水処理装置の第8実施形態を示す。この第8実施形態では、前述の第7実施形態における流入水としての湖沼河川水を、有機フッ素化合物含有水に置き換えた点が前述の第7実施形態と異なる。また、前述の第7実施形態では曝気槽6内に網目状容器44に充填されたリング型ポリ塩化ビニリデン充填材42が配置されていたのに対し、この第8実施形態では、網袋45に収容された活性炭46が曝気槽6内に充填されている点が、前述の第7実施形態と異なる。よって、この第8実施形態では、前述の第7実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略して、前述の第7実施形態と異なる部分を説明する。
【0109】
この第8実施形態では、活性炭46を網袋45に収容して、曝気槽6内に設置している。この第8実施形態では、流入水としての有機フッ素化合物含有水中の有機フッ素化合物が、上記活性炭46に吸着されることが実験により判明した。
【0110】
したがって、この第8実施形態では、有機フッ素化合物含有水中の有機フッ素化合物が活性炭46に吸着され、また、磁気活水ナノバブル中のナノバブルが活性炭に繁殖した微生物を活性化して、活性炭が吸着した有機フッ素化合物を分解処理できる。また、磁気を作用させた水中に存在するナノバブル(磁気活水ナノバブル)に付随して発生するフリーラジカルによる酸化作用で、活性炭が吸着した有機フッ素化合物を分解処理できる。
【0111】
よって、この第8実施形態によれば、有機フッ素化合物含有水を処理することができる。
【0112】
(実験例)
図1に示した第1実施形態の水処理装置に対応して、調整槽1の容量が2mであり、曝気槽6の容量が4mであり、栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40の容量が1mであり、栄養剤槽24の容量が0.8mであり、気液混合循環ポンプ7の電動機を2.2kwの仕様として、栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置49を製作した。そして、この栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置49に、半導体工場から排出される現像液含有排水を導入して処理実験を実施した。なお、この半導体工場から排出される現像液含有排水は、微生物が必要とする各種ミネラルは含有していない。
【0113】
そして、栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40を稼動させない場合、上記栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置49の試運転を開始して、約4ヶ月後、液中膜32の処理能力が、試運転開始当初の処理能力の約50%(0.6m/日)まで低下し、かつ液中膜ポンプ29の操作圧力が開始当初の圧力と比較して、160%まで上昇した。この時の曝気槽6の微生物汚泥をサンプルAとしてサンプリングした。
【0114】
そして、次に、この栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置49において、栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40を稼動させて、液中膜ポンプ29の操作圧力が、開始当初の圧力と比較して、150%(30キロパスカル・30kPa)を越えた場合は、栄養剤含有磁気活水ナノバブルが、栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽40から曝気槽6に自動的に添加されるようにシステムを構成した。このため、運転後、数日で、操作圧力(20キロパスカル・20kPa)と処理能力の回復(1.2m/日)の傾向が現れ、12日目からは、略正常の操作圧力と処理能力が復帰した。この時の曝気槽6の微生物汚泥をサンプルBとしてサンプリングした。
【0115】
そして、微生物汚泥サンプルAと微生物汚泥サンプルBのろ過性能を比較するため、一定時間(5分間)当りのろ紙での微生物汚泥のろ過量とろ液の水質を測定して比較した。その結果、曝気槽6の異常時の微生物汚泥サンプルAは、5分間でのろ紙によるろ過量が8ml、ろ液の水質としての全有機炭素(TOC)が96ppmであった。一方、正常時の微生物汚泥サンプルBは、5分間でのろ紙によるろ過量が16ml、ろ液の水質としての全有機炭素(TOC)が42ppmであった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の水処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の水処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の水処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5】この発明の水処理装置の比較例を模式的に示す図である。
【図6】この発明の水処理装置の第5実施形態を模式的に示す図である。
【図7】この発明の水処理装置の第6実施形態を模式的に示す図である。
【図8】この発明の水処理装置の第7実施形態を模式的に示す図である。
【図9】この発明の水処理装置の第8実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0117】
1 調整槽
2 流入配管
3 調整槽ポンプ
4 吐出配管
5 信号線
6 曝気槽
7 気液混合循環ポンプ
8 第1気体せん断部
9 第2気体せん断部
10 フランジ
11 N極
12 S極
13 磁力線
14 液体通過部
15 フランジ
16 空気配管
17 電動ニードルバルブ
18 吸込み配管
19 水配管
20 第3気体せん断部
21 オーバーフロー配管
22 液中膜水配管
23 撹拌機
24 栄養剤槽
25 栄養剤槽ポンプ
26 水配管
27 操作圧力調節計
28 操作圧力計
29 液中膜ポンプ
30 電動バルブ
31 電動バルブ
32 液中膜
33 気泡
34 散気管
35 空気配管
36 ブロワー
37 散気管
38 水流
39 空気配管
40 栄養剤含有磁気活水ナノバブル発生槽
41 ひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物
42 リング型ポリ塩化ビニリデン充填物
43 取付金具
44 網目状容器
45 網袋
46 活性炭
47 磁気活水器
48 磁気活水ナノバブル発生機
49 栄養剤含有磁気活水ナノバブル水処理装置
50 接触曝気槽
51 急速ろ過塔
52 活性炭吸着塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気を作用させたナノバブル含有水に栄養剤を含有させ、
この栄養剤を含有させたと共に磁気を作用させたナノバブル含有水を被処理水に添加して水処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法において、
上記栄養剤は、農業産物浸漬液であることを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理方法において、
上記農業産物浸漬液は、とうもろこし浸漬液であることを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の水処理方法において、
上記栄養剤が、薬用植物浸漬液であることを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
液中ろ過膜が設置されていると共に被処理水が導入される曝気槽と、
磁気を作用させたナノバブル含有水を生成すると共にこの磁気を作用させたナノバブル含有水に栄養剤を含有させて、上記栄養剤を含有していると共に磁気を作用させたナノバブル含有水を上記曝気槽に導入する磁気活水ナノバブル発生槽と、
上記磁気活水ナノバブル発生槽に栄養剤を供給する栄養剤槽とを備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水処理装置において、
上記被処理水が、排水、再利用水、湖沼河川水および有機フッ素化合物含有水のうちのいずれかであることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の水処理装置において、
上記曝気槽に充填材を設置したことを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記磁気活水ナノバブル発生槽は、
導入された水に磁気を作用させる磁気活水器と、
上記導入された水にナノバブルを発生させるナノバブル発生機とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の水処理装置において、
上記磁気活水ナノバブル発生槽が有しているナノバブル発生機が、2つ以上の気体せん断部を有していることを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記栄養剤槽に、とうもろこし浸漬液を上記栄養剤として添加することを特徴とする水処理装置。
【請求項11】
請求項5から10のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記曝気槽において上記液中ろ過膜でろ過した処理水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に導入する処理水導入部を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記液中ろ過膜からろ過水を導出する液中ろ過膜ポンプと、
上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力を検出する操作圧力計と、
上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記磁気活水ナノバブル発生槽が有する上記ナノバブル発生機の運転を制御する運転制御部とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1つに記載の水処理装置において、
被処理水が導入される調整槽と、
上記調整槽から上記曝気槽に上記被処理水を導入する調整槽ポンプと、
上記液中ろ過膜からろ過水を導出する液中ろ過膜ポンプと、
上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力を検出する操作圧力計と、
上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記調整槽ポンプの運転を制御する運転制御部とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項14】
請求項5から13のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記液中ろ過膜からろ過水を導出する液中ろ過膜ポンプと、
上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を処理水として流出させる第1動作と上記液中ろ過膜ポンプで導出したろ過水を上記磁気活水ナノバブル発生槽に返送する第2動作とが可能な流出返送部と、
上記液中ろ過膜ポンプの操作圧力を検出する操作圧力計と、
上記操作圧力計が検出した上記操作圧力に基づいて、上記第1動作と上記第2動作のうちのいずれかの動作を行うように上記流出返送部を制御する動作制御部とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項15】
請求項5から14のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記曝気槽の後段に、活性炭が槽内に充填された接触曝気槽と、活性炭が塔内に部分的に充填された急速ろ過塔と、活性炭吸着塔とが、順に設置されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項16】
請求項7から15のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記曝気槽に設置している上記充填材が、ポリ塩化ビニリデン充填物または活性炭であることを特徴とする水処理装置。
【請求項17】
請求項8から16のいずれか1つに記載の水処理装置において、
上記磁気活水器が、永久磁石または交流磁気発生部を有することを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82813(P2009−82813A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255064(P2007−255064)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】