説明

水処理用ゼオライト触媒

【課題】 担持金属成分量が少なくても高い活性を発現すると共に、触媒寿命が長い。
【解決手段】 硝酸性窒素含有水処理用の金属担持希土類交換ゼオライト触媒であって、希土類交換率が50〜95%の範囲にあり、担持金属がPt、Pd、Au、Ru、Cu、Ag、Sn、Ni、Fe から選ばれる1種または2種以上の金属である。金属含有量はゼオライト触媒中に、金属に換算して0.3〜10重量%の範囲にあり、ゼオライトはフォージャサイト型ゼオライトある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸性窒素含有水の処理に用いられるゼオライト触媒であって、希土類交換率の高い金属担持ゼオライト触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水等の中に含まれる硝酸性窒素を除去する処理方法としては、微生物による生物学的処理方法、吸着法、イオン交換法、逆浸透膜法、電気透析法などの物理化学的処理方法および水素などの還元剤の存在下に硝酸性窒素を触媒と接触させて還元分解する化学的処理方法などが知られている。特に、硝酸性窒素を還元剤の存在下に触媒と接触させて還元分解する化学的処理方法は低濃度の硝酸性窒素を含む飲料水の原水や高濃度の硝酸性窒素を含む工業排水など、大量の硝酸性窒素含有水から硝酸性窒素を除去するのに適しており、種々の処理方法が提案されている。
【0003】
本願発明者らは特開2004−97893号公報(特許文献1)において、無機酸化物担体および/またはカーボン担体に、Pt、Au、Ag、Pd、Ru、Cu、Ni、W、V、Mo、Feから選ばれる1種または2種以上の金属微粒子および/または合金微粒子が担持されてなる、平均粒子径が5nm〜20μmの範囲にある硝酸性窒素含有水処理用触媒を開示し、更に、硝酸性窒素含有水処理方法として、
(a)前述の水処理用触媒と硝酸性窒素含有水とを、還元剤の存在下で接触させる工程、
(b)前記接触済の硝酸性窒素含有水から水処理用触媒を分離する工程、および
(c)必要に応じて前記分離した水処理用触媒を再生し、工程(a)に戻す工程、
からなる硝酸性窒素含有水処理方法を開示している。
【0004】
また、本願発明者らは、特願2003−370871号(本願の出願時に未公開)において、高活性でアンモニアの生成を抑制するために、金属イオン交換したゼオライトを高温で焼成して用いることを提案している。しかしながら、これらの触媒は触媒使用量または触媒寿命の点において未だ改善の余地が残されている。
【特許文献1】特開2004−97893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、担持金属成分量が少なくても高い活性を発現すると共に、触媒寿命の長い硝酸性窒素含有水処理用のゼオライト触媒を提供することを発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒は、金属担持希土類交換ゼオライトであって、希土類交換率が50〜95%の範囲にあり、前記金属がPt、Pd、Au、Ru、Cu、Ag、Sn、Ni、Fe から選ばれる1種または2種以上の金属であることを特徴とするものである。
前記金属の含有量は、ゼオライト触媒中に、金属に換算して0.3〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
前記金属は、少なくともPtまたはPdのいずれかとCu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属とからなることが好ましい。
前記ゼオライトはフォージャサイト型ゼオライトあることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水処理用ゼオライト触媒は、希土類交換率の高いゼオライトに金属が担持されているために、被処理水中の硝酸性窒素に対し高い還元活性を有し、金属の含有量が低い場合においても高い活性を示す。更に、本発明の水処理用ゼオライト触媒はこのような高い活性を長期にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
水処理用ゼオライト触媒
本発明のゼオライト触媒に用いるゼオライトとしては、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、L型ゼオライト、ZSM型ゼオライト、β型ゼオライトのいずれか1種または2種以上が用いられる。このようなゼオライトは比表面積が高く、後述する金属イオンを効率的にイオン交換することができ、この金属イオンを還元により金属微粒子に転換でき、この結果、金属微粒子が高分散した状態で担持されたゼオライト触媒を得ることができ、硝酸性窒素含有水の処理に好適に用いることができる。
なかでもフォージャサイト型ゼオライトは、後述する希土類金属イオンの交換容量が高く、これに金属微粒子を担持した触媒は金属成分の含有量が少なくても硝酸性窒素の還元活性が高く、特に触媒寿命の長いゼオライト触媒が得られる。
【0009】
このようなゼオライト触媒は、希土類金属イオンの交換率が50〜95%、好ましくは60〜90%の範囲にある。交換率が50%未満の場合は、希土類をイオン交換した効果が不充分となり、金属成分の含有量を増加させる必要が生じたり、触媒寿命を長くする効果が得られない場合がある。交換率が95%を超える場合は、多量の希土類塩を用い、且つ、イオン交換を繰りし行う必要があり、経済性が問題となる。また、後続する金属イオンのイオン交換が不十分となり、所定の金属成分を担持することができない場合があり、硝酸性窒素の還元分解活性が不十分となることがある。
【0010】
なお、本発明でいう希土類のイオン交換率とは下記式(1)のとおり、ゼオライト結晶構造を構成するAl23とSiO2のうち、Al231モルに対して希土類酸化物がRE2/3OとしてXモルイオン交換されて含まれる場合のXを百分率で表したもの、即ち、希土類イオン交換率=100×X(%)をいう。
X(RE2/3O)・(1−X)(M2/nO)・Al23・YSiO2 ・・・(1)
(X:Al23を1モルとしたときのRE2/3Oのモル数、0.5≦X≦0.95、M:希土類以外の金属イオン、n:金属イオンの価数、Y:Al23を1モルとしたときのSiO2のモル数)
【0011】
本発明に用いる金属としては、Pt、Pd、Au、Ru、Cu、Ag、Sn、Ni、Feから選ばれる1種または2種以上の金属が好ましい。これらの金属は、硝酸性窒素の還元活性が高く、好適に用いることができるが、なかでも、金属が少なくとも、PtまたはPdのいずれかと、Cu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属であることが好ましい。
このような、2種以上の金属の組み合わせとしては、Pd-Cu、Pd-Sn、Pd-Ag、Pd-Cu-Sn、Pd-Cu-Ag、Pd-Sn-Ag、Pt-Cu、Pt-Sn、Pt-Ag、Pt-Cu-Sn、Pt-Cu-Ag、Pt-Sn-Ag、Pd-Pt-Cu、Pd-Pt-Sn、Pd-Pt-Ag等が挙げられる。
このとき、Cu、Ag、Snの金属イオンを用いると硝酸性イオンに対し高い還元活性を示し、Pt、Pdの金属イオンを用いた場合はN2への還元選択制が高く、NH3の生成が抑制される。従って、硝酸性窒素の還元分解活性に優れるとともに、過還元によるNH3の生成が抑制されたゼオライト触媒を得ることができる。
【0012】
このような金属の含有量は、ゼオライト触媒中に金属に換算して0.3〜10重量%、さらには0.5〜8重量%の範囲にあることが好ましい。金属の含有量が0.3重量%未満の場合は活性が不十分であり、10重量%を超える場合には、前記範囲で希土類金属イオン交換した後は多量の金属成分をイオン交換により担持することが困難であり、還元活性が不充分となることがある。
なお、金属が少なくともPtまたはPdのいずれかとCu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属とからなる場合、合計の金属の含有量が前記範囲にあり、Cu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属の含有量が0.05〜6重量%、好ましくは0.07〜4重量%の範囲にあることが好ましい。
【0013】
水処理用ゼオライト触媒の製造
本発明に係る水処理用ゼオライト触媒には、前記した金属担持希土類交換ゼオライト触媒が得られれば特に制限はないが、以下に例示する製造方法が好適である。
先ず、NaY型ゼオライト等の合成して得られたゼオライトを公知の方法で希土類イオンとイオン交換する。交換する希土類としては、周期律表ランタノイド族元素から、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Pm等およびこれらの混合物が挙げられる。特にLa、Ceを主成分とする混合希土類は入手し易く、安価であるので好適である。
【0014】
具体的には、NaY型ゼオライトの水分散液を調製し、これに希土類塩を加え、必要に応じてpHを約4〜8の範囲に調整し、通常、室温〜150℃の温度範囲で10分〜3時間程度処理する。NaY型ゼオライトの水分散液の濃度は固形分として、通常2〜20重量%の範囲である。
希土類塩としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm等および混合希土類の硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が用いられる。このときの、希土類塩の使用量は、NaY型ゼオライトのAl231モルに対して希土類塩をRE2/3Oに換算して0.5〜5モル、好ましくは0.7〜2モルの範囲である。希土類塩の使用量が0.5モル未満の場合は、希土類イオンの交換率が50%未満となり、最終的に得られる金属担持希土類交換ゼオライト触媒の硝酸性窒素の還元分解活性が不十分となる。希土類塩の使用量が5モルを超えても、希土類イオンの交換率をさらに高める効果は無く、希土類の利用率が低下するので好ましくない。
NaY型ゼオライトを前記イオン交換処理した後、濾過し、洗浄した後、前記と同様のイオン交換を所望の希土類交換率になるまで繰り返し行うことができる。別の方法としては、洗浄した後、乾燥し、約400〜700℃の範囲で焼成し、前記と同様にイオン交換を行ってもよい。
【0015】
上記希土類交換した後、金属イオン交換を行う。
即ち、希土類交換したゼオライトの水分散液に所望の金属イオンを含む金属塩を所望量添加し、必要に応じてpH調製し、さらに必要に応じて加温し、撹拌することによって金属イオンでイオン交換したゼオライトを得ることができる。なお、金属イオンは1種であってもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、金属イオン交換を繰り返し行ってもよい。
金属塩としては、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラアンミン塩化パラジウム、塩化白金、硝酸銀、塩化銅、硝酸ニッケル、塩化スズ、酢酸ルテニウムなど前記した金属の塩で水に可溶な塩を用いることができる。
【0016】
このときの金属塩の使用量は、金属の種類によっても異なるが、最終的に得られる金属担持希土類交換ゼオライト触媒中の金属の含有量が0.3〜10重量%、さらには0.5〜8重量%の範囲となるように用いる。
なお、金属が少なくともPtまたはPdのいずれかとCu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属とからなる金属担持ゼオライト触媒を調製する場合、金属塩の使用量は、合計の金属の含有量が前記範囲にあり、Cu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属の含有量が0.05〜6重量%、好ましくは0.07〜4重量%の範囲となるように用いることが好ましい。
前記金属塩を加え、必要に応じてpHを約4〜8の範囲に調整し、通常室温〜150℃の温度範囲で10分〜3時間程度処理する。このときの希土類交換ゼオライトの水分散液の濃度は固形分として、通常2〜20重量%の範囲である。
金属イオン交換した後、常法によって濾過、洗浄し、ついで、乾燥、焼成を行う。
【0017】
金属が少なくともPtまたはPdのいずれかとCu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属とからなる金属担持ゼオライト触媒を調製する場合は、先ず、少なくともパラジウム塩または白金塩でイオン交換した後、濾過、洗浄し、ついで、空気中、300〜800℃、好ましくは400〜750℃の温度範囲で焼成することが好ましい。焼成温度が300℃未満の場合は、過還元によるNH3の副生を抑制する効果が不充分となり、800℃を越えると硝酸イオンの還元活性が低下する傾向がある。
なお、金属イオン交換したゼオライトの焼成温度が前記範囲にあると硝酸イオンの還元活性が高く、かつNH3の副生(N2の過還元)を抑制でき、かつ触媒寿命の長い金属担持ゼオライト触媒を得ることができる。
この理由については明らかではないが、N2の過還元を支配する活性金属成分の粒子径が好適範囲に調整されるために、活性が高く、NH3の副生を抑制でき、また、ゼオライト担体と金属成分の相互作用が調整されるために、金属成分の溶解が抑制され、触媒寿命が長くなるものと考えられる。
【0018】
ついで、焼成したゼオライトの水分散液を調製し、Cu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属の塩を添加し、必要に応じてpHを約4〜8の範囲に調整し、通常室温〜150℃の温度範囲で10分〜3時間程度イオン交換処理する。このときの焼成したゼオライトの水分散液の濃度は固形分として、通常2〜20重量%の範囲である。イオン交換処理した後、濾過、洗浄し、概ね60〜200℃で乾燥し、ついで焼成する。焼成温度は250℃〜600℃、特に300〜550℃の範囲にあることが好ましい。焼成時間は概ね0.5〜10時間が好ましい。
【0019】
前記金属担持希土類交換ゼオライト触媒は、最後の乾燥、焼成した後、そのまま触媒として用いることができる。また、焼成した後、さらに還元処理して用いることもできる。具体的には、前記焼成後、概ね200〜600℃、好ましくは300〜500℃の温度で、還元ガス、例えばH2、NH3等の雰囲気下で通常0.5〜6時間程度還元処理する。
【0020】
上記のようにして得られた金属担持希土類交換ゼオライト触媒は、常法によってペレット、ビード等に成形して用いることが可能である。また、希土類イオン交換前あるいは、金属イオン交換前のゼオライトを常法によってペレット、ビード等に成形した後希土類イオン交換、金属イオン交換した後、前記した焼成、還元処理等をして用いることも可能である。
【0021】
硝酸性窒素含有水の処理
上記のようにして得られた金属担持希土類交換ゼオライト触媒を用いた硝酸性窒素を含む水の処理方法は、処理する硝酸性窒素の濃度、処理量等によって異なるが、触媒として本発明に係る金属担持希土類交換ゼオライト触媒を用いる以外は従来公知の方法を採用することができる。
例えば、前記した特許文献1に開示した硝酸性窒素を含む水の処理方法に準じて、下記の工程(a)〜(c)からなる方法を採用しても良い。
(a)還元剤の存在下、金属担持希土類交換ゼオライト触媒と硝酸性窒素を含む水とを接触させる工程、
(b)金属担持希土類交換ゼオライト触媒および処理水を抜き出しながら硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒を分離・濃縮する工程、および
(c)必要に応じて分離・濃縮した硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒を再生し、工程(a)に戻す工程
【0022】
当該水処理方法において、用いられる処理設備の方式には特に制限はなく、工程(a)では完全混合槽型、流通型、多段型、バッチ型等、固定床以外の種々の方式が採用可能である。
硝酸性窒素を含む水中の硝酸性窒素化合物の濃度は、Nとして50〜10,000ppm、さらには、100〜5000ppmの範囲にあることが好ましい。濃度がNとして50ppm未満の場合は、還元分解処理することは可能であるが経済性が問題となることがある。一方、濃度がNとして10,000ppmを越えると、還元剤の種類によっては必要量を共存させることができないために硝酸性窒素の還元分解が不充分となることがあり、処理時間を長くするか、触媒の濃度を高める必要があり、ゼオライト触媒濃度を高めるとゼオライト触媒の分散安定性が低下して凝集することがあり、濾過分離が困難となったり、水中硝酸性窒素との接触効率が低下する問題がある。
【0023】
硝酸性窒素含有水中の硝酸性窒素Nの量をWNとし、金属担持希土類交換ゼオライト触媒中の金属の量をWMで表した場合、硝酸性窒素含有水とゼオライト触媒との混合比(WN/WM)は、0.1〜50、さらには0.2〜10の範囲にあることが好ましい。前記比WN/WMが0.1未満の場合は、触媒の使用比率が高すぎて経済性が悪く、WN/WMが50を越えると、還元分解速度が不充分で、硝酸性窒素を所望の濃度以下に低減することが困難となる。
【0024】
ゼオライト触媒と共に供給される還元剤としては、水素、ヒドラジン、水素化硼素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、キノン、ヒドロキノン等を挙げることができ、特に、水素は電気分解等により容易に製造することができ、必要に応じて回収したり、再利用できるので好適である。
水素を用いる場合、ゼオライト触媒を分散させた硝酸性窒素含有水に水素ガスを供給する形で用いるが、水素の溶解速度を速める方法が好ましく、例えば、多数の細管を使用したり、先端または側面部に微細孔を多数有する管を使用することが好ましい。また、触媒を分散させた硝酸性窒素含有水は系内が均一になるように、定法によって撹拌および/または循環を行うことが望ましい。
【実施例1】
【0025】
ゼオライト触媒(Z1)の調製
フォージャサイト型ゼオライト(触媒化成工業(株)製:Na-Y、SiO2/Al23=5.0、平均粒子径1.9μm)を固形分として100g、純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH5.0に調整した。別に塩化レアアース水溶液(RECl3としての濃度30.27%)61.0gを計量し、Na-Y分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで空気中で400℃で4時間焼成してRE−Na−Y(Z1-1)を調製した。このゼオライトの分析値およびイオン交換率を表1に示す。
このRE−Na−Y(Z1-1)100gをとり、純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、1%苛性ソーダによりpH7.5に調整した。別にテトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)52.3gをPdとしての濃度が1重量%になるよう純水500gにより希釈してテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶液を調製した。
【0026】
このテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶解液をRE−Na−Y(Z1-1)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで、空気中で400℃4時間焼成してPd−RE−Na−Y(Z1-2)を調製した。
ついで、Pd−RE−Na−Y(Z1-2)を純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH4.5に調整した。別に硝酸銅3水和物(関東化学(株)製:特級)2.04gをCuとしての濃度が1重量%になるよう純水180gにより希釈して硝酸銅水溶液を調製した。この硝酸銅水溶解液をPd−RE−Na−Y(Z1-2)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、充分洗浄した後、130℃で24時間乾燥してPd−Cu−RE−Y(Z1-3)を調製した。
ついで、水素−窒素混合ガス(H2:4VOL%)雰囲気下、300℃で2時間還元処理し、ゼオライト触媒(Z1)を調製した。ゼオライト触媒(Z1)中の金属の含有量を表2に示した。
【0027】
硝酸性窒素含有水の処理
硝酸性窒素含有水としての硝酸ナトリウム水溶液(N濃度400ppm)500mlにゼオライト触媒(Z1)15gを分散させ、640rpmで攪拌しながら希塩酸でpH7〜8に調整すると同時に、容器の底部より水素ガスを20ml/minの流量で供給しながら、常温(約25℃)で硝酸性窒素含有水の処理を行った。このときの混合比(WN/WM)は表2に示す。この処理を5時間行った後に処理を停止した。この間15分に1回の頻度で処理水中のNO3濃度およびNH3濃度を測定した。その結果210分でNO3が0ppmとなった。結果を表2に示した。なお、NO3濃度は窒素分析計(ブラン・ルーベ社製:AAS-III)を用いて測定した。
【実施例2】
【0028】
ゼオライト触媒(Z2)の調製
フォージャサイト型ゼオライト(触媒化成工業(株)製:Na-Y、SiO2/Al23=5.0、平均粒子径1.9μm)を固形分として100g、純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH5.0に調整した。別に塩化レアアース水溶液(RECl3としての濃度30.27%)117.1gを計量し、Na-Y分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで空気中で400℃で4時間焼成してRE−Na−Y(Z2-1)を調製した。RE−Na−Y(Z2-1)を純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH5.0に調整した。別に塩化レアアース水溶液117.1gを計量し、RE−Na−Y分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した。このゼオライトの分析値を表1に示す。
このRE−Na−Y(Z2-1)100gをとり、純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、1%苛性ソーダによりpH7.5に調整した。別にテトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)54.9gをPdとしての濃度が1重量%になるよう純水500gにより希釈してテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶液を調製した。
【0029】
このテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶解液をRE−Na−Y(Z2-1)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで、空気中で400℃4時間焼成してPd−RE−Na−Y(Z2-1)を調製した。
ついで、Pd−RE−Na−Y(Z2-2)を純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH4.5に調整した。別に硝酸銅3水和物(関東化学(株)製:特級)2.16gをCuとしての濃度が1重量%になるよう純水180gにより希釈して硝酸銅水溶液を調製した。この硝酸銅水溶解液をPd−RE−Na−Y(Z2-2)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、充分洗浄した後、130℃で24時間乾燥してPd−Cu−RE−Na−Y(Z2-3)を調製した。
ついで、水素−窒素混合ガス(H2:4VOL%)雰囲気下、300℃で2時間還元処理し、ゼオライト触媒(Z2)を調製した。ゼオライト触媒(Z2)中の金属の含有量を表2に示した。
【0030】
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z2)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【実施例3】
【0031】
ゼオライト触媒(Z3)の調製
フォージャサイト型ゼオライト(触媒化成工業(株)製:Na-Y、SiO2/Al23=5.0、平均粒子径1.9μm)を固形分として400g、純水4000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH5.0に調整した。別に塩化レアアース水溶液(RECl3としての濃度30.27%)468gを計量し、Na-Y分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで空気中で400℃で4時間焼成してRE−Na−Y(Z3-1)を調製した。RE−Na−Y(Z3-1)を純水4000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH5.0に調整した。別に塩化レアアース水溶液468gを計量し、RE−Na−Y分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄してRE−Y(Z3-2)を調整した。このRE−Y(Z3-2)の分析値は表1に示す。このRE−Y(Z3-2)100gをとり、純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、1%苛性ソーダによりpH7.5に調整した。別にテトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)166.6gをPdとしての濃度が1重量%になるよう純水約500gにより希釈してテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶液を調製した。
【0032】
このテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶解液をRE−Y(Z3-2)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで、空気中で400℃4時間焼成してPd−RE−Y(Z3-3)を調製した。
ついで、Pd−RE−Y(Z3-3)を純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH4.5に調整した。別に硝酸銅3水和物(関東化学(株)製:特級)5.17gをCuとしての濃度が1重量%になるよう純水180gにより希釈して硝酸銅水溶液を調製した。この硝酸銅水溶解液をPd−RE−Y(Z3-3)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、充分洗浄した後、130℃で24時間乾燥してPd−Cu−RE−Y(Z3-4)を調製した。
ついで、水素−窒素混合ガス(H2:4VOL%)雰囲気下、300℃で2時間還元処理し、ゼオライト触媒(Z3)を調製した。ゼオライト触媒(Z3)中の金属の含有量を表2に示した。
【0033】
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z3)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【実施例4】
【0034】
ゼオライト触媒(Z4)の調製
実施例3と同様にして調製したRE−Y(Z3-2)を100gとり、実施例3において、テトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)を78.0gを用い、硝酸銅3水和物2.90gを用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(Z4)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z4)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【実施例5】
【0035】
ゼオライト触媒(Z5)の調製
実施例3と同様にして調製したRE−Y(Z3-2)を100gとり、実施例3において、テトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)を25.3g用い、硝酸銅3水和物0.88gを用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(Z5)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z5)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【実施例6】
【0036】
ゼオライト触媒(Z6)の調製
実施例3において、フォージャサイト型ゼオライト(触媒化成工業(株)製:Na-Y、SiO2/Al23=8.8、平均粒子径1.9μm)を用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(Z6)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z6)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【実施例7】
【0037】
ゼオライト触媒(Z7)の調製
実施例3において、モルデナイト型ゼオライト(東ソー(株)製:NaM、SiO2/Al23=13、平均粒子径3μm)を用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(Z7)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z7)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【実施例8】
【0038】
ゼオライト触媒(Z8)の調製
実施例3と同様にしてPd−Cu−RE−Y(Z3-4)を調製した。ついで、空気中、300℃で2時間焼成してゼオライト触媒(Z8)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(Z8)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【比較例1】
【0039】
ゼオライト触媒(HZ1)の調製
フォージャサイト型ゼオライト(触媒化成工業(株)製:Na-Y、SiO2/Al23=5.0、平均粒子径1.9μm)を固形分として100gをとり、純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、1%苛性ソーダによりpH7.5に調整した。別にテトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)146.8gをPdとしての濃度が1重量%になるよう純水500gにより希釈してテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶液を調製した。
このテトラアンミンパラジウムジクロライド水溶解液をNa−Y(HZ1-1)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、十分洗浄した後、130℃で24時間乾燥し、ついで、空気中で400℃4時間焼成してPd−Na−Y(HZ1-2)を調製した。
【0040】
ついで、Pd−Na−Y(HZ1-2)を純水1000gに分散させ、攪拌しながら60℃まで加温し、希塩酸によりpH4.5に調整した。別に硝酸銅3水和物(関東化学(株)製:特級)5.4gをCuとしての濃度が1重量%になるよう純水180gにより希釈して硝酸銅水溶液を調製した。この硝酸銅水溶解液をPd−Na−Y(HZ1-2)分散液に徐々に添加した後、1時間攪拌し、濾過し、充分洗浄した後、130℃で24時間乾燥してPd−Cu−Na−Y(HZ1-3)を調製した。
これを水素−窒素混合ガス(H2:4VOL%)雰囲気下、300℃で2時間還元処理し、ゼオライト触媒(HZ1)を調製した。ゼオライト触媒(HZ1)中の金属の含有量を表2に示した。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(HZ1)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【比較例2】
【0041】
ゼオライト触媒(HZ2)の調製
比較例1において、テトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)85.0gを用い、硝酸銅3水和物を3.1g用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(HZ2)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(HZ2)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。その結果、300分後も23ppmの硝酸性窒素が残っていた。
【比較例3】
【0042】
ゼオライト触媒(HZ3)の調製
比較例1において、テトラアンミンパラジウムジクロライド(田中貴金属(株)製:Pdとしての濃度8.95重量%)28.3gを用い、硝酸銅3水和物を1.1g用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(HZ3)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(HZ3)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。その結果、420分後も硝酸性窒素の濃度低下が認められなかった。
【比較例4】
【0043】
ゼオライト触媒(HZ4)の調製
実施例1において、塩化レアアース水溶液(RECl3としての濃度30.27%)48.2gを用いた以外は同様にしてゼオライト触媒(HZ4)を調製した。この触媒の金属の含有量を表2に示す。
硝酸性窒素含有水の処理
ゼオライト触媒(HZ4)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【比較例5】
【0044】
活性炭触媒(C1)の調製
活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製:白鷺P、平均粒径50μm、平均表面積1200m3/g)を固形分100.0g計量し、純水1000.0gに分散させ、1時間攪拌した。別に35%塩酸38.5g、純水961.5gを混合して希塩酸を調製し、さらに塩化パラジウム(田中貴金属(株)製)19.2g、硝酸銅3水和物(関東化学(株)製:特級)14.6gを添加し、完全に溶解するまで攪拌した。活性炭を分散させた水溶液に、塩化パラジウム水溶液を30分間かけて添加し、さらに1時間攪拌し、水酸化ナトリウム(関東化学(株)製:特級)の5%水溶液を調製し、30分かけpH9.0となるまで添加し、1時間攪拌した。その後、濾過し、十分洗浄して、60℃で24時間乾燥させPd−Cu−C(C1-1)を得た。
ついで、水素-窒素混合ガス(H2:4VOL%)雰囲気下、300℃で2時間還元処理し、活性炭触媒(C1)を調製した。活性炭触媒(C1)中の金属の含有量を表2に示した。
【0045】
硝酸性窒素含有水の処理
活性炭触媒(C1)15gを用いた以外は実施例1と同様にして硝酸性窒素含有水の処理を行った。結果を表2に示した。
【0046】
寿命テスト
ゼオライト触媒(HZ3)を除き、全触媒について以下の通り寿命テストを行った。1000ccのフラスコ中に触媒1.5gと水500ccを懸濁し、これを600rpmの速度で撹拌しながら、硝酸ナトリウム水溶液(N濃度400ppm)を20cc/minの速度で添加した。フラスコには底部より水素を供給できる細管を設け、これより供給した。また上部より濃度5重量%の硫酸を添加し、pHを6〜8に維持した。また、液面を一定に保つために反応液の流出口を設けた。
流出液をとり、窒素分析計(ブラン・ルーベ社製:AAS-III)を用いてNO3濃度を測定した。還元活性が60%に低下するまでの日数を測定し、結果を表2に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属担持希土類交換ゼオライトであって、希土類交換率が50〜95%の範囲にあり、前記金属がPt、Pd、Au、Ru、Cu、Ag、Sn、Ni、Fe から選ばれる1種または2種以上の金属であることを特徴とする硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒。
【請求項2】
前記金属の含有量がゼオライト触媒中に、金属に換算して0.3〜10重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒。
【請求項3】
前記金属が少なくともPtまたはPdのいずれかとCu、Sn、Agから選ばれる1種以上の金属とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライトあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硝酸性窒素含有水処理用ゼオライト触媒。


【公開番号】特開2006−159044(P2006−159044A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352064(P2004−352064)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】