説明

水処理装置、水処理用充填材

【課題】 被処理水の水貯留領域に充填された充填材がエア供給により流動化する構成の水処理装置において、充填材の流動開始時の水なじみ性能を改善して流動化の向上を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる水処理装置100は、処理槽本体100aと、処理槽本体100aに収容され、被処理水の水処理を行なう水処理機構101と、水処理機構101のうち被処理水が貯留される電解槽180と、電解槽180に流動可能に充填される充填材182と、被処理水が貯留された電解槽180において、充填材182に向けてエアを供給することにより当該充填材182を流動化させる散気装置185とを含み、充填材182は、複数の通水路を有する天然木質植物材からなり、複数の通水路がそれぞれ充填材表面にて開口する構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置にかかり、詳しくは被処理水が貯留された水貯留領域に充填材が流動可能に充填される構成の水処理装置の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理水が貯留される水貯留領域に充填材が流動可能に充填される構成の水処理装置として、例えば下記特許文献1に開示された浄化槽が参照される。この浄化槽では、好気処理槽に充填された粒状の充填材が、エア供給装置から供給されたエアによって流動化するように構成されている。
ところで、この種の充填材は、合成樹脂材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ABS、PVCなど)やセラミック材料といった材料によって製造されるのが一般的であった。ところが、被処理水中での流動化を前提とするこの種の充填材を、合成樹脂材料やセラミック材料等によって製造すると、充填材に被処理水が浸透し難いために当該充填材の流動開始時の水なじみが悪く、当該充填材が流動化し難いという問題が生じる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−70977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被処理水の水貯留領域に充填された充填材がエア供給により流動化する構成の水処理装置において、充填材の流動開始時の水なじみ性能を改善して流動化の向上を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、各請求項に記載の発明が構成される。
【0006】
本発明にかかる水処理装置は、処理槽本体、水処理機構、水貯留領域、充填材及びエア供給装置を含む構成とされる。
処理槽本体は、水処理装置の外郭を形成し、水処理機構を収容する。水処理機構は、処理槽本体に収容され、被処理水の水処理を行なう機能を有する。水貯留領域は、水処理機構のうち被処理水が貯留される領域とされる。充填材は、水貯留領域に流動可能に充填される部材として構成される。この充填材として、典型的には球状、円筒状、網状円筒状、円柱状、ヘチマ状等の形状の充填材を用いることができる。エア供給装置は、被処理水が貯留された水貯留領域において、充填材に向けてエアを供給することにより当該充填材を流動化させる機能を有する。このエア供給装置は、水貯留領域に配置される構成であってもよいし、或いは水貯留領域に連通する別領域に配設されて当該別領域から水貯留領域にエアを供給する構成であってもよい。また、水貯留領域に充填された充填材は、エア供給装置から供給されたエアが直に作用することによって流動する構成であってもよいし、或いはエア供給装置から供給されたエアによって生じる水流が作用することによって流動する構成であってもよい。
【0007】
本発明では特に、充填材は、複数の通水路を有する天然木質植物材からなり、複数の通水路がそれぞれ充填材表面にて開口する構成とされる。通水路が充填材表面にて開口する形態としては、充填材に貫通状に形成された通水路が充填材表面の少なくとも二箇所で開口する構成や、充填材に貫通することなく形成された通水路が充填材表面にて開口する構成などを用いることができる。天然木質植物材の通水路は、典型的には、水分や養分を運ぶ維管束(道管や師管)として構成される。ここでいう「天然木質植物材」には、竹や芦(葦)、ヘチマ、サトウキビなどのように内部に複数の通水路を有する天然の木質植物からなる材料が広く包含される。
【0008】
上記構成によれば、水貯留領域に充填された充填材がエア供給装置から供給されたエアによって流動する際、充填材表面にて開口する天然木質植物材の通水路を通じて充填材内部まで水が速やかに浸透することとなり、充填材の水なじみ性能が良く流動性を向上させることが可能となる。これにより、充填材の流動開始時に要する水なじみ操作の時間を短縮することが可能となる。また、天然木質植物材の基本構造をそのまま充填材の構成に利用することができるため、当該充填材の製造コストを抑えるとともに、製造時のCO排出量を削減することが可能となる。また、天然素材である天然木質植物材を利用して充填材を構成することによって、例えばプラスチック材料によって充填材を構成する場合に比して環境ホルモンが溶出する等のおそれがなく、また当該充填材が水処理装置の外部に流出したとしても環境に与える影響が少ない。
【0009】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の充填材が長尺状に延在するとともに、その延在方向に通水路が長尺状に延在し、充填材の延在方向の両側の充填材表面に通水路の両端部が開口する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、水はけが良く、水なじみ性能が更に向上した充填材を提供することが可能となる。
【0010】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置は、更に一対の金属電極と通電装置を備える。一対の金属電極は、水貯留領域に貯留された被処理水に浸漬される金属電極として構成される。通電装置は、一対の金属電極への通電によって、当該金属電極の金属イオンを被処理水に溶出させる装置として構成される。本構成において、金属電極から溶出した金属イオンと被処理水に含まれるリン成分との反応によって当該リン成分が除去されるとともに、水貯留領域で流動化した充填材が金属電極に衝突することによって電極表面が洗浄される。なお、一対の金属電極を用いる場合、平板状に形成されたこれら2片の金属電極を互いに平行に対向させた状態で配置するのが典型的な構成である。なお、金属電極の形状に関しては、四角形、三角形、円形、楕円形等種々の形状を採り得る。
このような構成によれば、金属電極として鉄材料を使用した場合には、水貯留領域で生成する汚泥はリン酸鉄を多く含有しており、肥料としての再利用価値が高い。この場合、天然素材である天然木質植物材によって充填材を構成することで、当該充填材と汚泥との分離処理が必要なく、しかも金属電極の洗浄に用いた当該充填材が肥料製造時の副資材となるため合理的である。
【0011】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の充填材は、通水路を形成する繊維を有し、当該繊維の端部が充填材表面に臨む構成であるのが好ましい。本構成では、繊維の両端部のうちの一方が充填材表面に臨む構成であってもよいし、或いは繊維の両端部のうちの両方が充填材表面に臨む構成であってもよい。このような構成によれば、充填材の繊維部分が露出して洗浄用ブラシとしての機能を果たすこととなり、金属電極の洗浄効果を高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の充填材が長尺状に延在するとともに、その延在方向に繊維が長尺状に延在し、充填材の延在方向の両側の充填材表面に繊維の両端部が臨む構成であるのが好ましい。このような構成によれば、充填材あたりの繊維露出部分を増やすことによって、金属電極の洗浄効果向上を図ることが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の充填材が円筒形状の円筒状担体として構成され、円筒状担体は、当該円筒状担体の筒径方向に関し、筒壁の内表面から外表面に向かうにつれて通水路の径が細かくなり且つ密に配設されるように構成されるのが好ましい。これにより、特に充填材の外表面に関する機械的強度を確保することが可能となる。
【0014】
本発明にかかる水処理用充填材は、被処理水が貯留される水貯留領域に流動可能に充填される水処理用充填材であり、前述の各水処理装置の構成要素である充填材と同様の構成とされる。
従って、このような水処理用充填材によれば、水貯留領域に充填された水処理用充填材が流動する際、充填材表面にて開口する天然木質植物材の通水路を通じて充填材内部まで水が速やかに浸透することとなり、充填材の水なじみ性能が良く流動性を向上させることが可能となる。また、水はけが良く、水なじみ性能が更に向上した水処理用充填材を提供することが可能となる。また、金属電極の洗浄に用いた水処理用充填材が肥料製造時の副資材となるため合理的である。また、このとき天然素材である天然木質植物材によって水処理用充填材を構成することで、当該水処理用充填材と汚泥との分離処理が必要ない。また、水処理用充填材の繊維部分が露出して洗浄用ブラシとしての機能を果たすこととなり、金属電極の洗浄効果を高めることが可能となる。また、水処理用充填材あたりの繊維露出部分を増やすことによって、金属電極の洗浄効果向上を図ることが可能となる。特に水処理用充填材の外表面に関する機械的強度を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、被処理水の水貯留領域に充填された充填材がエア供給により流動化する構成の水処理装置において、特に充填材として複数の通水路を有する天然木質植物材を用いるとともに、複数の通水路がそれぞれ充填材表面にて開口する構成を採用することによって、充填材の流動開始時の水なじみ性能を改善して流動化の向上を図ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出された水を受け入れてリン除去処理を行うリン除去装置を備えた水処理装置について説明するものである。
【0017】
本発明の「水処理装置」の一実施の形態の水処理装置100の構成に関しては、図1及び図2が参照される。図1には、本実施の形態の水処理装置100の処理フローが示されており、また図2には、図1中の水処理装置100の内部構造が模式的に示されている。
【0018】
図1に示すように、水処理装置100は、処理槽本体100a及び水処理機構101を含む構成とされる。処理槽本体100aは、水処理装置100の外郭を形成し、上槽及び下槽がフランジ部において互いに接合されることによって、処理機構110を収容する内部空間を形成する。また、この処理槽本体100aは、流入管100bおよび流出管100cを備えており、流入管100bから処理槽本体100a内へ流入した流入水は、水処理機構101で連続的に浄化処理されたのち、流出管100cを通じて処理槽本体100a外へと放流される。
【0019】
水処理機構101は、被処理水の水処理を行なう水処理機構であり、処理槽本体100a内での処理工程の順に対応して上流(図1中の左側)から一次処理部102及び二次処理部103を含む。一次処理部102は、第1嫌気濾床槽110及び第2嫌気濾床槽130によって構成される。一方、二次処理部103は、生物濾過槽150、処理水槽170、電解槽180及び消毒槽190によって構成される。ここでいう処理槽本体100aが本発明における「処理槽本体」に相当し、また処理槽本体100aに収容される水処理機構101によって、本発明における「水処理機構」が構成される。
【0020】
第1嫌気濾床槽110は、本実施の形態においては水処理機構101の最上流部に配置されており、流入管100bを通じて当該第1嫌気濾床槽110に原水が流入する構成になっている。第1嫌気濾床槽110へのこの原水の流れが図1中の矢印F1によって示される。この第1嫌気濾床槽110で嫌気処理された後の水は、その下流に配置された第2嫌気濾床槽130へと移流する。第1嫌気濾床槽110から第2嫌気濾床槽130へのこの水の流れが図1中の矢印F2によって示される。この第2嫌気濾床槽130で嫌気処理された後の水は、その下流に配置された生物濾過槽150へと移流する。第2嫌気濾床槽130から生物濾過槽150へのこの水の流れが図1中の矢印F3によって示される。
【0021】
図2に示すように、嫌気濾床槽110,130には各々嫌気濾床112,132が形成され、これらの嫌気濾床112,132には、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気分解する嫌気性微生物が付着する所定量の濾材C1,C2が充填されている。濾材C1と濾材C2とは、互いに同一或いは同種の濾材として構成されてもよいし、或いは互いに異なる種類の濾材として構成されてもよい。
【0022】
第1嫌気濾床槽110では、流入バッフル111に流入した被処理水が嫌気濾床112(濾材C1)を図2中の矢印方向へと下向きに流れることによって被処理水中の有機汚濁物質が嫌気処理されるように構成されている。流入バッフル111は、第1嫌気濾床槽110及び第2嫌気濾床槽130における水位を上側基準水位HWLと下側基準水位LWLとの間で調節する機能を果たす。第1嫌気濾床槽110で嫌気処理された水は、仕切壁114の上部に形成された開口部116を通じて、いわゆる押し出し流れの原理によって第2嫌気濾床槽130へと移流する。
【0023】
第2嫌気濾床槽130では、被処理水が嫌気濾床132(濾材C2)を図2中の矢印方向へと上向きに流れることによって、第1嫌気濾床槽110で嫌気処理された被処理水中の有機汚濁物質が更に嫌気処理されるように構成されている。この第2嫌気濾床槽130で処理された水は、移送ポンプ140のポンプ作用によって生物濾過槽150へと移送される。なお、第2嫌気濾床槽130で処理された水が、移送ポンプ140を用いることなく、押し出し流れの原理によって生物濾過槽150へと移流する構成を採用することもできる。
【0024】
移送ポンプ140の移送経路は、第2嫌気濾床槽130側に設けられた吸入部と、生物濾過槽150側に設けられた吐出部とを含み、当該移送経路が仕切壁134を越えて延在している。この移送ポンプ140は、エアリフト式の流体移送構造(ポンプ構造)を有し、後述するブロワ200から供給されたエアによって駆動されポンプ作用を発揮するエアリフトポンプとして構成される。この移送ポンプ140を水中ポンプによって構成することもできる。なお、第1嫌気濾床槽110を、第1室目の濾床槽として「濾床槽第1室」と称呼し、また第2嫌気濾床槽130を、第2室目の濾床槽として「濾床槽第2室」と称呼することもできる。
【0025】
生物濾過槽150は、第2嫌気濾床槽130で処理された水を、酸素が存在する好気条件下で生物処理を行なうとともに、生物処理で生じた固形物を固液分離処理する機能を果たす。この生物濾過槽150は、図2に示すように、担体充填領域151、散気装置155及び逆洗装置156を少なくとも備える。
【0026】
担体充填領域151は、槽上部に設けられた担体移動防止板153と槽下部に設けられた担体移動防止板154とによって区画された領域とされ、当該領域に所定量の担体152が、生物濾過槽150内を流動できる程度に充填されている。この担体152に、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理する好気性微生物が付着する。この担体152としては、粒状で中空円筒形に形成された粒状担体を好適に用いることができる。このような中空円筒形の担体152は、好気処理用の担体において特にその比表面積を増大させるのに好適に用いられる。担体移動防止板153及び担体移動防止板154は、いずれも被処理水の通過は許容するが担体152の通過は防止する板状ないしネット状の多孔部材によって構成されている。
【0027】
散気装置155は、ブロワ200の吐出部に接続されたエア供給配管210に接続されており、散気運転(定常時に運転される「定常運転」或いは「通常運転」ともいう)において、担体充填領域151のうち散気装置155よりも上方領域に充填されている担体152に対し好気処理に用いる酸素(エア)を供給する構成を有する。エア供給配管210を通じて散気装置155に送られた所定量のエアが槽内に供給されると、当該散気装置155よりも上方に生物処理部(「好気処理部」ともいう)151aが形成され、散気装置155よりも下方に濾過処理部151bが形成される。すなわち、散気装置155よりも上方に充填されている担体152は、散気装置155から供給されたエアによる水流によって、好気条件下で担体充填領域151の上部領域を流動した状態を形成し、当該担体152に付着している好気性微生物によって好気処理が行なわれる。このように担体充填領域151は、生物処理部151aの下方に濾過処理部151bが配設された上下2段構造とされる。
一方、散気装置155よりも下方に充填されている担体152は、槽内の水の下向きの流れによって殆ど流動化することなく固定化された状態を形成し、当該担体152によって被処理水中の固形物を固液分離する濾過処理が行なわれる。この濾過処理によって固液分離された固形物は、担体152の表面ないし内部空間にて捕捉される。
【0028】
逆洗装置156は、散気装置155よりも下方に配設されている。この逆洗装置156は、ブロワ200の吐出部に接続されたエア供給配管220に接続されており、逆洗運転(非定常時に運転される「非定常運転」ともいう)において、担体充填領域151のうち逆洗装置156よりも上方領域に充填されている担体152、すなわち担体152全体に対し逆洗処理に用いるエアを供給する構成を有する。エア供給配管220を通じて逆洗装置156に送られた所定量のエアが槽内に供給されると、当該逆洗装置156よりも上方に逆洗処理領域が形成される。すなわち、逆洗装置156よりも上方の生物処理部151a及び濾過処理部151bに充填されている担体152全体は、逆洗装置156から供給されたエアにより担体充填領域151全体を流動し互いに衝突した状態を形成し、これにより前述の濾過処理で担体152に捕捉した固形物が剥離する。なお、逆洗装置156から供給されるエア量は、典型的には通常運転時に散気装置155から供給されるエア量よりも多くなるように設定されるのが好ましい。
【0029】
本実施の形態では、担体充填領域151は、生物処理部151aの下方に濾過処理部151bが配設された上下2段構造を採用しているが、生物処理部151a及び濾過処理部151bの配置態様は、設計仕様等の必要に応じて適宜変更することもできる。例えば、流入管100bと流出管100cとを結ぶ方向を長軸方向とした場合、当該長軸方向の前後に生物処理部151a及び濾過処理部151bを配置する構成や、当該長軸方向と交差する左右に生物処理部151a及び濾過処理部151bを配置する構成を採用することもできる。このとき、生物処理部151aに充填される担体は、濾過処理部151bに充填される担体と同一或いは同種の担体であってもよいし、或いは濾過処理部151bに充填される担体とは異なる種類の担体であってもよい。
【0030】
生物濾過槽150で処理された後の水の殆どは、その下流に配置された処理水槽170へと移流する一方、残りの水は第1嫌気濾床槽110へと返送される。生物濾過槽150から処理水槽170への水の流れが図1中の矢印F4によって示され、また生物濾過槽150から第1嫌気濾床槽110への水の流れが図1中の矢印F5によって示される。処理水槽170は、生物濾過槽150で処理された水を一時的に貯留する機能を有する。図2に示すように、この処理水槽170は、いずれもエアリフト式の流体移送構造(ポンプ構造)を有する第1エアリフトポンプ171及び第2エアリフトポンプ172を備える。
【0031】
第1エアリフトポンプ171は、その吸入部が生物濾過槽150の底部に配置され、その吐出部が第1嫌気濾床槽110に配置されており、またこの第1エアリフトポンプ171にはブロワ200の吐出部に接続されたエア供給配管220が接続されている。前述の逆洗運転時に、この第1エアリフトポンプ171にエア供給配管220を通じて所定量のエアが供給されると、生物濾過槽150の底部から抜き出された逆洗水が第1嫌気濾床槽110の流入バッフル111へと移送されるようになっている(図1中の矢印F5参照)。この逆洗水には、逆洗運転時に生物濾過槽150の担体152から剥離した固形物が含まれる。
【0032】
一方、第2エアリフトポンプ172は、その吸入部が処理水槽170の底部に配置され、その吐出部が第1嫌気濾床槽110に配置されており、またこの第2エアリフトポンプ172にはブロワ200の吐出部に接続されたエア供給配管210が接続されている。前述の散気運転時に、この第2エアリフトポンプ172にエア供給配管210を通じて所定量のエアが供給されると、処理水槽170の底部から抜き出された水が循環水として第1嫌気濾床槽110の流入バッフル111へと移送されるようになっている(図1中の矢印F6参照)。
【0033】
この第2エアリフトポンプ172は、更なる別の吐出部を有し、前述の散気運転時に処理水槽170の底部から抜き出された水が電解槽180へと移送されるようになっている。処理水槽170から電解槽180へのこの水の流れが図1中の矢印F7によって示される。なお、専用のエアリフトポンプを用いて処理水槽170のから電解槽180へと水を移送するようにしてもよい。電解槽180で後述する電解処理がなされた水は、生物濾過槽150へと返送されるようになっている。電解槽180から生物濾過槽150へのこの水の流れが図1中の矢印F8によって示される。
【0034】
なお、本実施の形態では、第2エアリフトポンプ172により処理水槽170の底部から吸入した水は、公知の計量装置(図示省略)によって流量調整がなされた後に、第1嫌気濾床槽110側と電解槽180側とに配分される構成であるのが好ましい。これにより、第1嫌気濾床槽110へ循環される水の流量、電解槽180へ移送される水の流量、更には消毒槽190へと移流する水の移流量を適正に調整することが可能となる。
【0035】
処理水槽170で貯留処理された水であって、第1嫌気濾床槽110及び電解槽180へと流れる水以外は、その下流に配置された消毒槽190へと移流する。処理水槽170から消毒槽190へのこの水の流れが図1中の矢印F9によって示される。この消毒槽190は、処理水槽170で貯留処理された水を放流する前に消毒処理する機能を有する。図2に示すように、この消毒槽190は、流出管100cを通じて処理槽本体100a外へと放流する前の水を消毒処理するための消毒剤注入装置(「薬筒」ともいう)191を備えている。この消毒剤注入装置191に予め充填されている消毒剤が溶出することによって、所定の消毒処理がなされる。消毒槽190で消毒処理された後の水は、図1中の矢印F10によって示されるように、流出管100cを通じて処理槽本体100a外へと放流される。
【0036】
電解槽180は、電解によって水のリン除去処理を行なう機能を果たす。この電解槽180は、図2に示すように、充填領域181、散気装置185及びリン除去装置160を少なくとも備える。
【0037】
充填領域181は、槽上部に設けられた充填材移動防止板183と槽下部に設けられた充填材移動防止板184とによって区画された領域とされ、所定量の充填材182が当該領域内を流動できる程度に充填されている。この充填材182は、リン除去装置160の後述する金属電極162,162の洗浄用として設けられる。この充填材182としては、粒状担体を好適に用いることができる。このとき、充填材182は、前述の生物濾過槽150で用いる担体152と同一或いは同種の担体として構成されてもよいし、或いは担体152とは異なる種類の担体として構成されてもよい。充填材移動防止板183及び充填材移動防止板184は、いずれも被処理水の通過は許容するが充填材182の通過は防止する板状ないしネット状の多孔部材によって構成されている。
【0038】
散気装置185は、充填領域181よりも下方に配置され、ブロワ200の吐出部に接続されたエア供給配管210に接続されている。エア供給配管210を通じて散気装置185に送られた所定量のエアが槽内に供給されると、充填材182に向けてエアが供給され充填材182が充填領域181内を流動化する。そして、流動化した充填材182が、電解槽180の被処理水に浸漬された金属電極162,162の金属電極表面に衝突する。これにより、金属電極表面に既に付着している不動態皮膜や生物膜を除去し、或いは不動態皮膜や生物膜が金属電極表面に付着するのを防止することができ、当該金属電極の洗浄が可能となるため、脱リン性能を維持するのに有効とされる。ここでいう散気装置185によって、本発明における「エア供給装置」が構成される。
【0039】
リン除去装置160は、被処理水に含まれるリン成分を除去するための装置として構成される。図1に示すように、このリン除去装置160は、給電用ケーブル163、処理槽本体100a内に配置される中継ボックス164、処理槽本体100a外に配置される制御ボックス165を介して電源プラグ166に接続されている。本実施の形態では、電源プラグ166から供給された直流電流が、給電用ケーブル163、制御ボックス165及び中継ボックス164からなる通電装置を通じて、リン除去装置160の後述する金属電極162,162に供給されるようになっている。これにより、金属電極162,162の通電処理がなされる。ここでいう通電装置が、本発明における「通電装置」に対応している。なお、本実施の形態では、リン除去装置160と、当該リン除去装置160に接続された要素をあわせて、「リン除去装置」ということもできる。
【0040】
上記リン除去装置160の具体的な構成に関しては、図3〜図5が参照される。図3には、図2中のリン除去装置160の着脱構造(装着および脱着を可能とする構造)をあらわす斜視図が示されている。また、図4には、図2中のリン除去装置160の正面図が示され、図5には、図2中のリン除去装置160の側面図が示されている。
【0041】
図3に示すように、本実施の形態のリン除去装置160は、セルベースとしての電極保持部161と、この電極保持部161に取り付け固定された一対の金属電極162,162とを含む構成とされる。ここでいう一対の金属電極162,162が、本発明における「一対の金属電極」に相当する。電極保持部161は、一対の金属電極162,162の上部を上方から支持ないし保持する機能を有する。この電極保持部161は、更に、作業者は把持するための取っ手161cを有する保持部本体161a、この保持部本体161aに内蔵される端子類(図示省略)を密閉するための密閉蓋161b等によって構成されている。保持部本体161a及び密閉蓋161bはともに合成樹脂材料、例えば塩化ビニル樹脂などの電気絶縁性材料によって作製されており、取っ手161cへの漏電が遮断されている。
【0042】
リン除去装置160は、充填材移動防止板183に設けられた支持部材186に対し装着される構成になっている。支持部材186は、充填材移動防止板183に取り付けられる平板状の平板部186aを有し、この平板部186aに一対のスリット部187,187が形成されている。各スリット部187のスリット幅は、各金属電極162の挿入を許容するように当該金属電極162の厚みと同一、或いは当該厚みよりも若干広く、しかも充填材182の流出を阻止するように、当該充填材182の大きさよりも狭くなるように構成されている。
【0043】
このリン除去装置160では、装着時に一対の金属電極162,162を、支持部材186のスリット部187,187に対し図3中の矢印10方向に挿入する操作が行なわれる。この装着操作により、一対の金属電極162,162は、スリット部187,187間を跨ぐように支持部材186に装着されて、当該支持部材186によって下方から支持されることとなる。リン除去装置160のこの装着状態では、一対の金属電極162,162は、いずれもその延在面が処理槽本体100aの槽上下方向に延在した状態で、電解槽180に滞留する被処理水に浸漬される。また、このリン除去装置160では、脱着時に一対の金属電極162,162を図3中の矢印12方向へと引き抜く操作が行なわれる。この脱着操作により、既にスリット部187,187に一旦挿入されている一対の金属電極162,162は、スリット部187,187から引き抜かれて脱着される。
上記のようなリン除去装置160の装着操作及び脱着操作はいずれも、作業者が取っ手161cを手で把持して容易に行うことができる。当該操作は、典型的には処理槽本体100a内やリン除去装置160に関する種々の点検(定期点検など)を行う際に遂行される。
【0044】
図4及び図5に示すように、リン除去装置160においては、各金属電極162は側面視が略四角形(略長方形)の平板状に形成され、給電用ケーブル163側の基端部162aにおいて固定ボルト等によって電極保持具161に固定され、基端部162aからその反対側の先端部162bに向けて長尺状に延在する構成になっている。一対の金属電極162,162は、互いに概ね平行に配置された構成であり、一方の金属電極162と他方の金属電極162との間の離間距離、すなわち電極間距離(図5中の間隔d1)が両金属電極の延在方向に関しほぼ一定となるように構成されている。また、この電極間距離d1は、支持部材186に設けられた一対のスリット部187,187が離間する間隔に対応している。各金属電極162は、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄−アルミニウム合金等によって適宜作製され得る。
【0045】
リン除去装置160の通電時には、一対の金属電極162,162のうちの一方の金属電極が陽極を形成し、他方の金属電極が陰極を形成する。これにより、陽極側の金属電極162から被処理水中へ金属イオン(鉄イオン、アルミニウムイオン等)が供給される。すなわち、各金属電極162は、被排水中へ金属イオンを供給する金属イオン供給源となる。被処理水中へ供給されるこの金属イオンは、後述するようにリン酸イオンと反応することでリン成分の除去に用いられる。なお本実施の形態では、制御ボックス165に、一対の金属電極162,162の極性を所定時間毎、例えば24時間毎に切り換えることが可能な極性反転回路を設けるのが好ましい。この極性反転回路を用いることにより、各金属電極162を陽極あるいは陰極として使用することができるため、各金属電極162をバランス良く均一に消費することが可能となる。なお、水処理装置100における一対の金属電極162,162の設置数、大きさ等は、処理する被処理水の量や性状などに応じて種々変更可能である。例えば、生物濾過槽150において、一対の金属電極162,162を必要に応じて複数組設置することもできる。
【0046】
リン除去装置160に通電され一対の金属電極162,162に直流電流が供給されると、電気分解によって陽極側の金属電極162から生物濾過槽150の被処理水へ金属イオンが溶出する。鉄製の金属電極を用いる場合には2価の鉄イオン(Fe2+)が溶出する。溶出したこの金属イオンは、被処理水中のリン成分と反応する。リン成分は一般にリン酸イオンとして水中に溶解しているので、被処理水中に溶出した金属イオンはリン酸イオンと反応して水に難溶性の金属リン酸塩が生成される。鉄製の金属電極を用いる場合には、2価の鉄イオン(Fe2+)が溶出し、溶出したこの2価の鉄イオン(Fe2+)が水中の溶存酸素によって酸化されて3価の鉄イオン(Fe3+)となる。そして、この3価の鉄イオン(Fe3+)がリン酸イオン(PO3−)と反応して、水に難溶性のリン酸鉄(FePOなど)が生成される。また、アルミニウム製の金属電極を用いる場合には、溶出したアルミニウムイオンがリン酸イオンと反応して水に難溶性のリン酸アルミニウムが生成される。このように、リン除去装置160を用いてリン成分を含む被処理水を電気分解することによって、被処理水中のリン成分は、水に難溶性の金属リン酸塩として析出し除去されることとなる。本実施の形態では、特に浮遊物の少ない処理水槽170の水をリン除去装置160によって処理して、生物濾過槽150へと返送する構成を採用しているため、金属電極表面に汚泥などが付着しにくく脱リン性能の維持が図られる。
【0047】
ところで、上記の担体152や充填材182のように、好気処理や濾過処理、更には金属電極の洗浄に用いる充填材は、合成樹脂材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ABS、PVCなど)やセラミック材料等によって製造されるのが一般的であった。ところが、充填領域での流動化を前提として充填されたこの種の充填材を、合成樹脂材料やセラミック材料等によって製造すると、当該充填材の流動開始時の水なじみが悪く流動化し難いという問題を抱えている。
【0048】
そこで本発明者は、充填材の流動開始時の水なじみ性能を改善して流動化の向上を図るべく、この種の充填材の構成について鋭意検討した。その検討の結果、竹や芦(葦)、ヘチマ、サトウキビなどのように内部に複数の維管束(「通水路」ともいう)を有する天然木質植物材を充填材の素材として用いる技術を開発した。
天然木質植物材の維管束は、水分や養分を運ぶ道管や師管として構成されるため、この天然木質植物材からなる充填材は、維管束を通じて充填材内部まで水が速やかに浸透することとなり、充填材の水なじみ性能が良く流動性を向上させることが可能となる。これにより、充填材の流動開始時に要する水なじみ操作の時間を短縮することが可能となる。
【0049】
ここで、上記充填材182を構成する天然木質植物材として竹を用いる場合については図6及び図7が参照される。図6には、本実施の形態の充填材182の斜視図が示されており、また図7には、図6中の充填材182の一部分であるA領域の構造が模式的に示されている。
【0050】
図6に示すように、本実施の形態の充填材182は、中空部182aと、この中空部182aを区画する円筒状の筒壁182bとを有し、所定方向に長尺状に延在する円筒形状の円筒状担体とされる。この充填材182では、竹の竹稈部(肉部)を利用して筒壁182bが形成されており、また竹稈部によって区画される中空部によって中空部182aが形成されている。すなわち、本実施の形態では、充填材182の外径が当該充填材182の素材である竹自体の外径にほぼ合致するようになっている。また、竹の表皮によって筒壁182bの外表面182cが形成され、また竹の内皮によって筒壁182bの内表面182dが形成されている。ここでいう充填材182が、本発明における「充填材ないし水処理用充填材」及び「円筒状担体」に相当する。また、この充填材182が流動可能に充填されている電解槽180の充填領域181は、被処理水が貯留される水貯留領域であり、ここでいう充填領域181が、本発明における「水貯留領域」に相当する。
【0051】
なお、上記構成の充填材182は、軸方向に関し所定の長さ成分を有する長尺状であればよく、当該充填材の軸方向の長さや、軸方向と交差する方向の径は、必要に応じて適宜設定が可能とされる。具体的には、上記構成の充填材182において、充填材182の軸方向に関する筒壁182bの長さをLとし筒壁182bの径をdとした場合(図6参照)、L>dの関係が成り立つ第1の構成や、L<dの関係が成り立つ第2の構成、更にはL=dの関係が成り立つ第3の構成を適宜に用いることができる。これら第1〜第3の構成によって特定される充填材はいずれも、軸方向に関し所定の長さ成分を有する長尺状であり、本発明でいう「充填材が長尺状に延在する」との範疇に包含される。
【0052】
上記構成によれば、竹の基本構造をそのまま充填材182の構成に利用することができ、当該充填材182の製造コストを抑えるとともに、製造時のCO排出量を削減することが可能となる。また、天然素材である竹を利用して充填材を構成することによって、例えばプラスチック材料によって充填材を構成する場合に比して環境ホルモンが溶出する等のおそれがなく、また当該充填材182が水処理装置100の外部に流出したとしても環境に与える影響が少ない。また、国内外を問わず素材の入手が容易である。
【0053】
更に、金属電極162,162として鉄材料を使用した場合には、電解槽180で生成する汚泥はリン酸鉄を多く含有しており、肥料としての再利用価値が高い。この場合、例えばプラスチック材料によって充填材を構成すると当該充填材の分離処理が必要となるが、本実施の形態のように天然素材である竹によって充填材を構成することで、当該充填材と汚泥との分離処理が必要なく、しかも当該充填材が肥料製造時の副資材となるため合理的である。
【0054】
本実施の形態の充填材182では、図7に示すように、筒壁182bの外表面(竹の表皮)182cと内表面182d(竹の内皮)との間に、当該筒壁182bの両端面(充填材表表面)のうちの少なくとも一方の端面にてそれぞれ開口する複数の維管束182eが形成されている。これら複数の維管束182eは、水分や養分を運ぶ道管或いは師管からなる維管束として構成され、いずれも充填材182の長軸方向(長尺状の長さ方向)ないし筒軸方向(図6中の上下方向)に長尺状に延在する構成とされる。ここでいう維管束182eによって、本発明における「通水路」が構成される。このような構成によれば、充填材表面にて開口する維管束182eを通じて充填材内部まで水が速やかに浸透することとなり、充填材182の水なじみ性能が良く流動性を向上させることが可能となる。
【0055】
なお、本実施の形態では、充填材182の延在方向に維管束182eの構成に関しては、特に充填材182の延在方向に維管束182eが長尺状に延在し、充填材182の延在方向の両側の充填材表面に維管束182eの両端部が開口する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、水はけが良く、水なじみ性能が更に向上した充填材を提供することが可能となる。
【0056】
また、特に図示しないものの、本実施の形態の充填材182では、筒壁182bは竹稈部を縦に長尺状に延在する繊維182f(「維管束鞘」ともいう)を含む構成とされる。この繊維182fは、維管束182eを区画形成する繊維部分とされ、本実施の形態ではその端部が充填材表面に臨む構成になっている。ここでいう繊維182fが、本発明における「繊維」を構成する。このような構成によれば、充填材182が金属電極162,162に衝突する際に、当該充填材182の端面が擦れて繊維182fが露出して洗浄用ブラシとしての機能を果たすこととなり、金属電極162,162の洗浄効果を高めるのに有効とされる。
【0057】
なお、本実施の形態では、繊維182fの構成に関しては、特に充填材182の延在方向の両側の充填材表面に繊維182fの両端部が臨む構成であるのが好ましい。このような構成によれば、充填材あたりの繊維露出部分を増やすことによって、金属電極の洗浄効果向上を図ることが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態の充填材182では、竹本来の構成上、筒壁182bの内表面182dから外表面182cに向かうにつれて維管束182eの径が細かくなり且つ密に配設されている。このとき、筒壁182bの外表面182c側の第1の維管束領域182gは、内表面182d側の第2の維管束領域182hよりも維管束182eの径が細かく且つ密になっており、相対的に剛性の高い高剛性領域として構成される。また、第1の維管束領域182gの表面側には、更に剛性の高い竹の表皮によって形成された外表面182cが設けられている。これにより、特に充填材182の外表面182cに関する機械的強度を確保することが可能となる。
【0059】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0060】
上記実施の形態では、生物濾過槽150とは別に設けられた電解槽180にリン除去装置160を設ける場合について記載したが、本発明では、生物濾過槽150にリン除去装置160を組み込んで、当該生物濾過槽150によって電解槽180を兼務することもできる。本構成を示す別実施の形態の水処理装置300の内部構造に関しては、図8が参照される。
【0061】
図8に示す水処理装置300は、電解槽180とその関連要素が省略され、生物濾過槽150にリン除去装置160が直に組み込まれている点以外は、図1に示す水処理装置100と概ね同様の構成とされる。この水処理装置300では、生物濾過槽150においてリン除去処理がなされ、また金属電極162,162の洗浄用の充填材として、生物濾過槽150の担体152を用いる。ここでいう水処理装置300が、本発明における「水処理装置」に相当し、この水処理装置300で用いる担体152が、本発明における「充填材」に相当する。また、この担体152が流動可能に充填されている生物濾過槽150の担体充填領域151は、被処理水が貯留される水貯留領域であり、ここでいう担体充填領域151が、本発明における「水貯留領域」に相当する。
このような構成によれば、被処理水の好気処理及び濾過処理に用いる担体152を、金属電極162,162の洗浄用として兼務させることができ合理的である。
【0062】
また、上記実施の形態では、処理水槽170と生物濾過槽150との間にリン除去装置160を設置する場合について記載したが、本発明では、リン除去装置160の設置箇所はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定することが可能である。このリン除去装置160を、生物濾過槽150に設置したり、或いは接触曝気槽、活性汚泥法における曝気槽、また好気処理等の生物処理を行わない嫌気処理槽や溶出槽などに設置することもできる。
【0063】
また、上記実施の形態では、電解槽180に用いる充填材182を竹によって図6及び図7に示すように構成する場合について記載したが、本発明では、当該構成を生物濾過槽150に用いる担体152の構成として採用することもできる。この場合、リン除去装置160及び電解槽180の双方を省略することもできる。本構成を示す別実施の形態の水処理装置400の内部構造に関しては、図9が参照される。
【0064】
図9に示す水処理装置400は、リン除去装置160及び電解槽180と、その関連要素が省略される点以外は、図1に示す水処理装置100と概ね同様の構成とされる。この水処理装置400では、生物濾過槽150の担体充填領域151で流動化する担体152を竹等の天然木質植物材を用いて構成する。ここでいう水処理装置400が、本発明における「水処理装置」に相当し、この水処理装置400で用いる担体152が、本発明における「充填材」に相当する。また、この担体152が流動可能に充填されている生物濾過槽150の担体充填領域151は、被処理水が貯留される水貯留領域であり、ここでいう担体充填領域151が、本発明における「水貯留領域」に相当する。
このような構成によれば、充填材182の場合と同様に、担体152が流動化する際、天然木質植物材の維管束を通じて担体内部まで水が速やかに浸透することとなり、担体152の水なじみ性能が良く流動性を向上させることが可能となる。本構成では、充填材表面に繊維の端部が臨まない(露出しない)構成を採用することもできる。
【0065】
また上記実施の形態では、充填材182或いは担体152を構成する天然木質植物材として竹を用いる場合について記載したが、本発明では、竹や芦(葦)、ヘチマ、サトウキビなどのように、内部に複数の維管束を有する天然木質植物材を適宜使用することができる。また、この場合、天然木質植物材を球状、円筒状、網状円筒状、円柱状、ヘチマ状等、種々の形状に加工して充填材182或いは担体152として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態の水処理装置100の処理フローを示す図である。
【図2】図1中の水処理装置100の内部構造を模式的に示す図である。
【図3】図2中のリン除去装置160の着脱構造をあらわす斜視図である。
【図4】図2中のリン除去装置160の正面図である。
【図5】図2中のリン除去装置160の側面図である。
【図6】本実施の形態の充填材182の斜視図である。
【図7】図6中の充填材182の一部分であるA領域の構造を模式的に示す図である。
【図8】別実施の形態の水処理装置300の内部構造を模式的に示す図である。
【図9】別実施の形態の水処理装置400の内部構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0067】
100…水処理装置
100a…処理槽本体
100b…流入管
100c…流出管
101…水処理機構
102…一次処理部
103…二次処理部
110…第1嫌気濾床槽
111…流入バッフル
112…嫌気濾床
114…仕切壁
116…開口部
130…第2嫌気濾床槽
132…嫌気濾床
134…仕切壁
140…移送ポンプ
150…生物濾過槽
151…担体充填領域
151a…生物処理部
151b…濾過処理部
152…担体
153…担体移動防止板
154…担体移動防止板
155…散気装置
156…逆洗装置
160…リン除去装置
161…電極保持部
161a…保持部本体
161b…密閉蓋
161c…取っ手
162…金属電極
162a…基端部
162b…先端部
163…給電用ケーブル
164…中継ボックス
165…制御ボックス
166…電源プラグ
170…処理水槽
171…第1エアリフトポンプ
172…第2エアリフトポンプ
180…電解槽
181…充填領域
182…充填材
182a…中空部
182b…筒壁
182c…外表面
182d…内表面
182e…維管束
182f…繊維
182g…第1の維管束領域
182h…第2の維管束領域
183…充填材移動防止板
184…充填材移動防止板
185…散気装置
186…支持部材
186a…平板部
187…スリット部
190…消毒槽
191…消毒剤注入装置
200…ブロワ
210,220…エア供給配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽本体と、
前記処理槽本体に収容され、被処理水の水処理を行なう水処理機構と、
前記水処理機構のうち被処理水が貯留される水貯留領域と、
前記水貯留領域に流動可能に充填される充填材と、
被処理水が貯留された前記水貯留領域において、前記充填材に向けてエアを供給することにより当該充填材を流動化させるエア供給装置と、を含み、
前記充填材は、複数の通水路を有する天然木質植物材からなり、前記複数の通水路がそれぞれ充填材表面にて開口する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記充填材が長尺状に延在するとともに、その延在方向に前記通水路が長尺状に延在し、前記充填材の延在方向の両側の充填材表面にて前記通水路の両端部が開口する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、
前記水貯留領域に貯留された被処理水に浸漬される一対の金属電極と、
前記一対の金属電極への通電によって、当該金属電極の金属イオンを被処理水に溶出させる通電装置と、を含み、
前記金属電極から溶出した金属イオンと被処理水に含まれるリン成分との反応によって当該リン成分が除去されるとともに、前記水貯留領域で流動化した前記充填材が前記金属電極に衝突することによって電極表面が洗浄される構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理装置であって、
前記充填材は、前記通水路を形成する繊維を有し、当該繊維の端部が充填材表面に臨む構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理装置であって、
前記充填材が長尺状に延在するとともに、その延在方向に前記繊維が長尺状に延在し、前記充填材の延在方向の両側の充填材表面に前記繊維の両端部が臨む構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の水処理装置であって、
前記充填材が円筒形状の円筒状担体として構成され、
前記円筒状担体は、当該円筒状担体の筒径方向に関し、前記筒壁の内表面から外表面に向かうにつれて前記通水路の径が細かくなり且つ密に配設されるように構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
被処理水が貯留される水貯留領域に流動可能に充填される水処理用充填材であって、
複数の通水路を有する天然木質植物材からなり、前記複数の通水路がそれぞれ充填材表面にて開口する構成であることを特徴とする水処理用充填材。
【請求項8】
請求項7に記載の水処理用充填材であって、
長尺状に延在するとともに、その延在方向に前記通水路が長尺状に延在し、当該水処理用充填材の延在方向の両側の充填材表面にて前記通水路の両端部が開口する構成であることを特徴とする水処理用充填材。
【請求項9】
請求項7または8に記載の水処理用充填材であって、
前記水貯留領域の被処理水に浸漬されるリン除去用の一対の金属電極に衝突することによって、電極表面を洗浄する構成であることを特徴とする水処理用充填材。
【請求項10】
請求項9に記載の水処理用充填材であって、
前記通水路を形成する繊維を有し、当該繊維の端部が充填材表面に臨む構成であることを特徴とする水処理用充填材。
【請求項11】
請求項10に記載の水処理用充填材であって、
長尺状に延在するとともに、その延在方向に前記繊維が長尺状に延在し、当該水処理用充填材の延在方向の両側の充填材表面に前記繊維の両端部が臨む構成であることを特徴とする水処理用充填材。
【請求項12】
請求項7から11のうちのいずれか一項に記載の水処理用充填材であって、
円筒形状の円筒状担体として構成され、
前記円筒状担体は、当該円筒状担体の筒径方向に関し、前記筒壁の内表面から外表面に向かうにつれて前記通水路の径が細かくなり且つ密に配設されるように構成されていることを特徴とする水処理用充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56477(P2011−56477A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212009(P2009−212009)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】