説明

水処理装置、水質管理システム

【課題】 被処理水に対し所定の電気的処理を行う処理部を有する水処理装置において、処理部に対する外部電源の安定的な給電を可能とするのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理装置100では、消毒槽118に水質検出センサ120が設置されるとともに、この水質検出センサ120は、電源受給器140とともに防水躯体の内部空間に気密状に収容された構成であり、これによって電源受給器140は、防水状態を維持しつつ水質検出センサ120に対する外部電源の給電を行う構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の水処理を行う水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の汚水などの被処理水を処理する水処理装置において、水質検出センサを用いて処理水質を常時把握する構成が知られている。例えば下記特許文献1に記載の水処理装置では、消毒槽の上流に配置されたばっ気槽にDOセンサが設置されており、当該DOセンサによってばっ気処理後の水の水質が把握されるようになっている。
【特許文献1】特開平3−52696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の水処理装置のように、水質検出センサに対し外部電源を供給する構成において、水質検出センサと外部電源とをコネクタ接点を用いて接続した場合には、水質検出センサと外部電源との接続箇所における防水を維持することができないという問題が生じる。とりわけ、水質検出センサが設置されるような領域は高湿度環境となりこのような問題が顕著となるところ、この種の水処理装置の設計に際しては、高湿度環境下においても処理部に対し外部電源を安定的に供給するのに有効な技術を構築する要請がある。
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、被処理水に対し所定の電気的処理を行う処理部を有する水処理装置において、処理部に対する外部電源の安定的な給電を可能とするのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の被処理水の浄化処理を行う水処理装置に対し好適に用いられる。
【0005】
本発明にかかる水処理装置は、被処理水の水処理を行う複数の水処理領域、第1の防水躯体及び第2の防水躯体を少なくとも備える。
水処理領域は、固液分離処理、嫌気処理、ばっ気処理、好気処理、消毒処理、貯留処理等、各種の水処理を行う領域として構成される。
第1の防水躯体は、複数の水処理領域を収容する躯体状の防水躯体とされる。典型的には、複数の水処理領域を収容した状態で防水状態(気密状態、水密状態、密閉状態、密封状態ともいう)を維持しつつ貯水を行う槽状体によって、この防水躯体が構成される。
第2の防水躯体は、第1の防水躯体に収容された複数の水処理領域のうちの少なくとも1つに設けられる躯体状の防水躯体とされる。
処理部は、第2の防水躯体が設けられた水処理領域の被処理水に対し所定の電気的処理を行う機能を有する。ここでいう処理部の典型例としては、所定の電気的処理として被処理水の水質情報の検出処理を行う水質検出センサや、所定の電気的処理として被処理水の電極処理を行う電極装置などが挙げられる。
電源供給部は、第1の防水躯体外の外部電源に接続された構成とされる。この電源供給部は、外部電源に接続された状態で、第1の防水躯体内或いは第1の防水躯体外に配設され得る。給電部は、この電源供給部からの電源供給にともなって処理部に対する給電を行う機能を有する。
【0006】
特に、第2の防水躯体は、外部に対して閉じた内部空間に処理部及び給電部を気密状に収容した状態で第1の防水躯体内に取付けられる構成であり、これによって給電部は、防水状態を維持しつつ処理部に対する給電を行う構成とされる。具体的には、ハウジングや配線類等の各接続箇所におけるシール構造によって躯体外と内部空間とが隔離されて防水状態が維持される。このような構成によれば、第2の防水躯体が内部空間に処理部及び給電部を防水状態にて収容することで、第1の防水躯体内において給電部から処理部へと至る給電経路の防水状態が第2の防水躯体によって維持されることとなる。これによって、第1の防水躯体内のような高湿度環境下であっても、防水状態とされた第2の防水躯体の内部空間において、給電部から処理部へと支障なく安定的な給電を行うことが可能となる。また、浄化槽のように、洗剤に由来の界面活性剤を含有する水を処理する水処理装置にあっては、第1の防水躯体内の水が発泡し易く、界面活性の高い(表面張力の低い)水や、水面よりも高い位置に達した泡が隙間等に浸入し易い。従って、本発明を浄化槽に適用する場合には、腐食防止の観点から処理部及び給電部の防水構造を強固にする要請があるところ、上記構成の第2の防水躯体は、浄化槽において腐食防止を図る場合に特に有効とされる。
【0007】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置は、外部に対して閉じた内部空間に前記の電源供給部を収容した状態で第1の防水躯体内に取付けられる躯体状の第3の防水躯体を備え、また前記の給電部は、第2の防水躯体によって電源供給部と隔絶された状態で電源供給部に近接して取付けられる構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第1の防水躯体内において給電部から処理部へと至る給電経路の防水状態を第2の防水躯体によって維持するとともに、更に第1の防水躯体内において電源供給部の防水状態を第3の防水躯体によって維持することが可能となる。
【0008】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の電源供給部は、第3の防水躯体内に前記外部電源に接続された電源供給側コイルを備え、前記の給電部は、電源供給側コイルに対向してこの電源供給側コイルと非接触状態で配設される電源受給側コイルを有し、これによって電源受給側コイルが電源供給側コイルとの間の電磁誘導作用によって外部電源を電源供給部から無接点にて受給する無接点式電源受給構造をなす構成であるのが好ましい。この場合、電源供給側コイルにおいて1次電圧が生じた際、電磁誘導作用によって電源受給側コイルにおいて2次電圧が誘起されて処理部に対し給電され、これによって処理部の駆動用の電力が得られる。このような構成によれば、給電部の構成としてコネクタ接点等を用いることのない無接点式電源受給構造を採用しているため、給電部や処理部の点検や補修の際、これら給電部及び処理部を第2の防水躯体ごと容易に取り外して、第1の防水躯体外へ持ち出すことができる。これにより、給電部や処理部の点検や補修の際の作業性向上を図ることが可能となる。
【0009】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置は、第1の防水躯体の上部を開放可能なマンホールを有する構成とされ、このマンホールの近傍領域に第2の防水躯体が配設された構成であるのが好ましい。ここでいうマンホールの近傍領域は、マンホール自体、或いはマンホールに近接してマンホール下方ないしマンホール斜め下方に形成される領域とされ、典型的にはマンホールを通じてアクセスする作業者の手や腕が届く範囲の領域とされるのが好ましい。このような構成によれば、作業者は、マンホールを通じて第2の防水躯体にアクセスし易くなり、処理部や給電部における点検や補修の際の作業性向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の第2の防水躯体は、当該第2の防水躯体が設けられた水処理領域、すなわち第1の防水躯体の複数の水処理領域のうち、第2の防水躯体が設けられた水処理領域に関し、この水処理領域の水位よりも高所に給電部を配設した構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第2の防水躯体のうち給電部は、水処理領域における浸水状態が回避されることとなるため、給電部の周辺領域が浸水により劣化し難い。
【0011】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の処理部は、被処理水の水質情報を電気的処理によって検出する水質検出センサとして構成され、前記の第2の防水躯体は、水質検出センサによって検出された水質情報を第1の防水躯体外へと無線送信するデータ送信部を含み、このデータ送信部を気密状に収容した構成であり、これによってデータ送信部は、防水状態を維持しつつ第1の防水躯体外へと無線送信を行う構成であるのが好ましい。ここでいう「被処理水の水質情報」には、pH、DO(溶存酸素)、濁度、透視度、SS(浮遊懸濁物質量)、BOD(生物化学的酸素要求量)、紫外線(UV)吸光度等、所定の水質の値自体のみならず、水質の値として導出される前の電流値や電圧値等のデータなどが広く包含される。このような構成によれば、第2の防水躯体がデータ送信部を防水状態にて収容する構成であるため、データ送信部は無線送信に際し防水状態が維持されることとなる。これによって、第1の防水躯体内のような高湿度環境下においても、データ送信部から第1の防水躯体外へと支障なく安定的な無線送信を行うことが可能となる。
【0012】
本発明にかかる水質管理システムは、前記の水処理装置と、この水処理装置から離間して配設される水質監視装置を備え、この水質監視装置は、データ送信部から無線送信される水質情報を受信するデータ受信部を含み、これによって水質検出センサから水質監視装置へと至る水質情報の送信経路が確立される。このような構成によれば、水処理装置における水質情報を水質監視装置にて遠隔監視するシステムを構築することが可能となる。なお、この水質監視装置は、典型的には複数の水処理装置に関する水質情報を集中して監視する集中監視装置とされるのが好ましい。このような構成によれば、家庭用の水処理装置のように普及数が多い水処理装置における水質情報を集中して監視するのに有効である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、被処理水に対し所定の電気的処理を行う処理部を有する水処理装置において、特に第1の防水躯体に収容された全数の水処理領域のうちの少なくとも1つに第2の防水躯体を設け、この第2の防水躯体の内部空間に、被処理水に対し所定の電気的処理を行う処理部と、この処理部に第1の防水躯体外の外部電源を給電する給電部を気密状に収容した構成を採用することによって、第1の防水躯体内において給電部から処理部へと至る給電経路の防水状態を維持しつつ給電部が処理部に対する給電を行うことができ、以って処理部に対する外部電源の安定的な給電が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明における一実施の形態の水処理装置の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される排水(被処理水)の処理を行う水処理装置について説明するものである。
【0015】
本発明における「水処理装置」の一実施の形態の水処理装置100の概要が図1に示される。図1に示すように、本実施の形態の水処理装置100は、槽状に成形された水処理槽101を有し、この水処理槽101は、複数の水処理領域(水処理機構ともいう)を防水状態(気密状態、水密状態、密閉状態、密封状態ともいう)で収容する躯体状の防水躯体S1を構成する。ここでいう水処理槽101によって構成される防水躯体S1が、本発明における「第1の防水躯体」に相当する。
【0016】
水処理槽101には、典型的には処理工程の順に対応して上流(図1中の左側)から夾雑物除去槽110、嫌気濾床槽112、接触ばっ気槽114、沈澱槽116、消毒槽118の各水処理領域が収容される。このような構成の水処理槽101の内部に流入した排水は、夾雑物除去槽110、嫌気濾床槽112、接触ばっ気槽114、沈澱槽116、消毒槽118で順次水処理されたのち、水処理槽101の外部へ放流される。なお、本実施の形態では、各槽において処理される排水および当該排水を処理する処理過程において流れる水を「被処理水」ないし「水」と記載する。
【0017】
夾雑物除去槽110は、水処理槽101の最上流部に配置されており、流入口102を通じて当該夾雑物除去槽110に被処理水が流入する構成になっている。この夾雑物除去槽110は、被処理水中に含まれる夾雑物を、流入バッフル(図示省略)などの固液分離手段を用いて被処理水から分離する処理を行う槽であり、被処理水の固液分離機能を果たす。この夾雑物除去槽110において夾雑物の除去処理がなされたあとの水は、その下流に配置された嫌気濾床槽112へと移流する。
【0018】
嫌気濾床槽112は、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する機能を有する処理槽として構成される。典型的には、有機汚濁物質を嫌気処理する嫌気性微生物が付着する所定量の濾材が嫌気濾床に充填された構成を有する。この嫌気処理によってBODの低減と汚泥物の減量化が図られる。この嫌気濾床槽112で処理されたあとの水は、その下流に配置された接触ばっ気槽114へと移流する。
【0019】
接触ばっ気槽114は、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理(酸化)する機能を有する処理槽として構成される。典型的には、有機汚濁物質を好気処理する好気性微生物が付着する所定量の接触材が充填されるとともに、接触材にブロワ(送風機)から送り込まれる空気が供給される構成を有する。本構成において、接触材に付着した好気性微生物は、ブロワ(送風機)から送り込まれる空気中の酸素の助けによって、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理する。この接触ばっ気槽114で処理された水は、その一部が移送ポンプなどの移送手段によって夾雑物除去槽110に循環水として循環される一方、残りが下流に配置された沈殿槽116へと移流する。なお、夾雑物除去槽110へと循環される循環水は、典型的には汚泥等の固形分を含む水とされる。
【0020】
沈殿槽116は、接触ばっ気槽114から移流した水を一時的に滞留させて、水中の浮遊物質を沈殿・除去する機能を有する処理槽として構成される。この沈殿槽116で処理されたあとの水は、その下流に配置された消毒槽118へと移流する。
【0021】
消毒槽118は、沈殿槽116から流入した水を消毒処理する機能を有する処理槽であり、典型的には、消毒処理を行うための消毒剤(固形塩素剤)が充填された薬剤筒(図示省略)を備えている。この消毒槽118で処理されたあとの水は、流出口103を通じて水処理槽101外へと放流される構成になっている。
【0022】
この消毒槽118には、水質検出センサ120が設置されている。この水質検出センサ120は、水処理槽101外へと放流される前の水の水質を検出する機能を有し、典型的には、pH、DO(溶存酸素)、濁度、透視度、SS(浮遊懸濁物質量)、BOD(生物化学的酸素要求量)、紫外線(UV)吸光度等のうちの1または複数を検出する水質検出センサとして構成される。この水質検出センサ120が、本発明における「処理部」及び「水質検出センサ」に相当する。この水質検出センサ120を、消毒槽118にかえて或いは加えて、別の処理槽に設置してもよい。また、この水質検出センサ120の設置数は1個でも複数個でもよく、またセンサの種類も一つに限定されない。この消毒槽118において消毒処理された水は、水処理槽101の外部へと放流される。
【0023】
この消毒槽118の具体的な構成に関しては、図2が参照される。この図2には、図1中の消毒槽118の槽内構成が示されている。図2に示すように、消毒槽118と上流側の他の処理領域との間を仕切る仕切り板121には、センサホルダ122が設置されており、このセンサホルダ122によって水質検出センサ120が消毒槽118内の所定箇所に浸水状態で取付けられている。水質検出センサ120は、接続コード140aを介して電源受給器140に接続される一方、接続コード130aを介して水処理槽101外の外部電源(例えば交流100ボルト)に接続された電源供給器130が、電源受給器140に対向状に近接して配設されている。これら電源供給器130及び電源受給器140は、所定の離間距離で離間した状態で消毒槽118の水面よりも高所に配設され、所定の拘束手段によって拘束される。これら電源供給器130及び電源受給器140は、いずれも消毒槽118の水面よりも高所に配設されることで浸水状態が回避されるため、外郭を形成するハウジングが浸水により劣化し難い構成とされる。
【0024】
ここで、消毒槽118上部のマンホール105の近傍領域に水質検出センサ120、電源供給器130及び電源受給器140が配設されるのが好ましい。マンホール105は、マンホール蓋104の着脱操作によって開閉可能とされており、このマンホール105の近傍領域は、マンホール105自体、或いはマンホール105に近接してマンホール下方ないしマンホール斜め下方に形成される領域とされ、典型的にはマンホール105を通じてアクセスする作業者の手や腕が届く範囲の領域とされるのが好ましい。
このような構成によれば、作業者は、マンホール105を通じて水質検出センサ120、電源供給器130及び電源受給器140にアクセスし易くなり、これら水質検出センサ120、電源供給器130及び電源受給器140における点検や補修の際の作業性向上を図ることが可能となる。ここでいうマンホール105が本発明における「マンホール」に相当し、このマンホール105の近傍領域が、本発明における「マンホールの近傍領域」に相当する。
【0025】
上記の電源供給器130及び電源受給器140の具体的な構成に関しては図3が参照される。この図3には、図2中の電源供給器130及び電源受給器140の概略構成が示されている。
【0026】
図3に示すように、電源供給器130は、防水躯体S1としての水処理槽101に収容されるとともに、水処理槽101外に配設されたコンセント等の外部電源に接続コード130aを介して接続されている。ここでいう電源供給器130が、本発明における「電源供給部」に相当する。この電源供給器130は、ハウジング内に電源供給側回路(1次側回路)131を収容する。この電源供給側回路131は、典型的には整流回路133、発振回路135、1次側コイル137及びコンデンサ139を備える。コンセント等の外部電源から得られる交流は、整流回路133において整流されて直流に変換され、発振回路135、1次側コイル137及びコンデンサ139に供給される。発振回路135は、所定の周波数で発振した信号を出力し、これによって1次側コイル137及びコンデンサ139は、所定の共振状態で1次電圧を生じる。ここでいう1次側コイル137が、本発明における「電源供給側コイル」に相当する。
【0027】
一方、電源受給器140は、防水躯体S1としての水処理槽101に収容されるとともに、ハウジング内に電源受給側回路(2次側回路)141及びデータ発信器149を収容する。電源受給側回路141は、典型的には2次側コイル143、コンデンサ145及び整流回路147備える。電源供給側回路131に1次電圧が生じることによって、2次側コイル143及びコンデンサ145では、電磁誘導作用によって2次電圧が誘起される。この2次電圧は、整流回路147において整流されて直流に変換され、水質検出センサ120及びデータ発信器149に供給される。これにより、水質検出センサ120及びデータ発信器149の駆動用の電力が得られることとなる。すなわち、電源受給側回路141は、外部電源に接続された1次側コイル137に対向して非接触状態で配設される2次側コイル143を有し、この2次側コイル143は、1次側コイル137との間の電磁誘導作用によって、外部電源を1次側コイル137から無接点にて受給する無接点式電源受給構造をなす構成とされる。ここでいう2次側コイル143が、本発明における「電源受給側コイル」に相当し、またここでいう電源受給側回路141(電源受給器140)が本発明における「給電部」を構成する。
【0028】
上記電源供給器130及び電源受給器140の構成によれば、1次側コイル137と2次側コイル143との間の電磁誘導作用を用いることによって、電源受給器140は、コネクタ接点等を用いることなく電源供給器130からの外部電源を無接点にて受給して、水質検出センサ120に給電することが可能であり、また電源供給器130は、コネクタ接点等を用いることなく外部電源を無接点にて電源受給器140へと供給することが可能である。電源受給器140におけるこのような無接点式の電源受給構造を用いることによって、電源供給器130から受給した外部電源を水質検出センサ120へと給電する電源受給器140側の一連の給電経路(接続コード140a等を含む経路)を、給電に関する防水処置がなされた気密状の防水躯体S2として構成することができる。
【0029】
この防水躯体S2は、外部に対して閉じた内部空間に水質検出センサ120及び電源受給器140を気密状に収容した状態で防水躯体S1内に取付けられる構成とされ、これによって電源受給器140は、防水状態を維持しつつ水質検出センサ120に対する給電を行う。この防水躯体S2では、水質検出センサ120及び電源受給器140の各ハウジングや配線類等の各接続箇所におけるシール構造によって、或いは水質検出センサ120及び電源受給器140の全体を配線類とともにハウジング内に気密状に収容する構造によって、防水状態の維持が可能とされる。この場合、電源受給器140は、防水躯体S2によって電源供給器130と隔絶された状態で電源供給器130に近接して取付けられる。ここでいう電源受給器140と水質検出センサ120との間の給電経路を防水状態にて収容する防水躯体S2が、本発明における「第2の防水躯体」に相当する。この防水躯体S2は、消毒槽118にかえて或いは加えて、別の処理槽にも設置され得る。
【0030】
また、電源供給器130における無接点式の電源供給構造を用いることによって、外部電源を電源受給器140へと供給する電源供給器130側の一連の電源供給経路(接続コード130a等を含む経路)を、電源供給に関する防水処置がなされた防水躯体S3として構成することができる。この防水躯体S3は、外部に対して閉じた内部空間に電源供給器130を気密状に収容した状態で防水躯体S1内に取付けられる構成とされ、これによって電源供給器130は、防水状態を維持しつつ電源受給器140側へと電源供給を行う。この防水躯体S3では、電源供給器130のハウジングにおけるシール構造によって、或いはこのハウジングを更に気密状に収容する構造によって、防水状態の維持が可能とされる。ここでいう防水躯体S3が、本発明における「第3の防水躯体」に相当する。
【0031】
電源受給器140のデータ発信器149は、水質検出センサ120に接続されている。このデータ発信器149は、水質検出センサ120において検出された水質検出データを、水処理槽101外に離間して設置された集中監視装置(「データ管理装置」或いは「データサーバ」ともいう)150側のデータ受信器151へと無線送信する機能を有する。すなわち、このデータ発信器149は、集中監視装置150側のデータ受信器151との間で無線通信を行う通信端末として構成される。これによって水質検出センサ120から集中監視装置150へと至る水質検出データのデータ送信経路が確立される。この場合、防水躯体S2がデータ発信器149を防水状態にて収容する構成であるため、データ発信器149は無線送信に際し防水状態が維持されることとなり、水処理槽101(防水躯体S1)内のような高湿度環境下においても、データ発信器149から水処理槽101外へと支障なく安定的な無線送信を行うことが可能となる。
【0032】
なお、集中監視装置150は、データ受信器151のほか、データ演算処理、データ記憶処理、データ表示処理、データ印字処理などの種々の処理機能を搭載しており、水処理装置100をはじめとする複数の水処理装置の水質管理(水質監視)を継続して集中的に行う。集中監視装置150におけるこの集中的な水質管理は、家庭用の水処理装置のように普及数が多い水処理装置の水質管理(水質監視)に特に有効である。この集中監視装置150が、本発明における「水処理装置から離間して配設される水質監視装置」に相当し、データ受信器151が、本発明における「データ受信部」に相当する。また、この集中監視装置150と水処理装置100とによって構成される水質管理システムが、本発明における「水質管理システム」に相当する。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、電源供給器130及び電源受給器140は、いずれも防水躯体によって防水状態が維持される構造を採用しているため、これら電源供給器130及び電源受給器140を水処理槽101(防水躯体S1)内のような高湿度環境下においても支障なく配置して、水質検出センサ120による水質検出を適正に行うことが可能となる。特に、電源受給器140から水質検出センサ120へと至る給電経路を防水躯体S2によって防水することで、高湿度環境下においても電源受給器140から水質検出センサ120へと支障なく安定的な給電を行うことが可能となる。また、水処理槽101(浄化槽)では、洗剤に由来の界面活性剤を含有する水が容易に発泡して、界面活性の高い(表面張力の低い)水や、水面よりも高い位置に達した泡が隙間等に浸入し易いため、電源供給器130や電源受給器140の防水構造を強固にする要請があるところ、本実施の形態の防水躯体S2や防水躯体S3は、水処理槽101において腐食防止を図る場合に特に有効とされる。
【0034】
また、本実施の形態によれば、電源供給器130及び電源受給器140は、コネクタ接点等を用いることのない無接点式の電源受給構造及び電源受給構造を採用しているため、外部電源が電源供給器130まで供給されているか否かに関する点検や、水質検出センサ120が正常であるか否かに関する点検を簡便に行うことが可能となる。具体的には、水質検出センサ120による水質検出が正常に行われないような場合に、電源供給器130と電源受給器140の拘束を解除したのち、近接動作や離間動作を繰り返すことで水質検出センサ120の作動を簡便に確認することができる。また、電源供給器130と電源受給器140の拘束を解除したのち、電気が適正に供給されていることを検出可能な既知の点検装置をこの電源供給器130に近接させて点検することができる。この点検の結果、外部電源が電源供給器130まで適正に供給されている場合には、電源受給器140及び水質検出センサ120を重点的に点検すればよく、また外部電源が電源供給器130まで適正に供給されていない場合には、まず最初に電源供給器130から点検すればよく合理的である。
【0035】
また、本実施の形態によれば、電源受給器140の構成としてコネクタ接点等を用いることのない無接点式の電源受給構造を採用しているため、水質検出センサ120や電源受給器140の点検や補修の際、水質検出センサ120を電源受給器140とともに防水躯体S2ごと容易に取り外して、水処理槽101外へ持ち出すことができる。具体的には、水質検出センサ120をセンサホルダ122から取り外すとともに、電源受給器140の拘束を解除することで、コネクタ接点のような接続を一切気にすることなく、水質検出センサ120を容易に持ち出すことが可能となる。また、取り外した水質検出センサ120を持ち帰る際に、電源供給器130側や電源受給器140側に防水用カバーのような保護部材を設置する必要がない。これにより、水質検出センサ120や電源受給器140の点検や補修の際の作業性向上を図ることが可能となる。
【0036】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0037】
上記実施の形態では、電源受給器140は、水質検出センサ120に外部電源を供給する電源受給側回路141に加え、水質検出センサ120において検出した水質情報を集中監視装置150側のデータ受信器151へと無線送信するデータ発信器149を収容する場合について記載したが、本発明ではデータ発信器149に相当する機能を省略することもできる。また、本発明では、水質検出センサ120にかえて或いは加えて、被処理水の電極処理を行う電極装置や、電極装置以外の装置であって電気を使用する水処理装置、例えば水中ポンプ等を設置することもできる。
【0038】
また、上記実施の形態では、防水躯体S2において、マンホール105の近傍領域に水質検出センサ120、電源供給器130及び電源受給器140を配設する構成について記載したが、必要に応じてはマンホール105から離間した領域に、これら水質検出センサ120、電源供給器130及び電源受給器140が配設されても良い。また、上記実施の形態では、電源供給器130及び電源受給器140は、いずれも水面よりも高所に配設されている場合について記載したが、本発明では、電源供給器130や電源受給器140は、必要に応じては水面よりも低所に配設されてもよい。また、電源受給器140を水処理槽101(防水躯体S1)内に配設するとともに、電源供給器130を水処理槽101外に配設することもできる。電源供給器130を水処理槽101外に配設する場合には、電源供給器130の防水躯体S3は省略することもできる。
【0039】
また、上記実施の形態では、水処理槽101内に夾雑物除去槽110、嫌気濾床槽112、接触ばっ気槽114、沈澱槽116、消毒槽118を備える水処理装置100に対し本発明を適用する場合について記載したが、本発明では、本構成の各処理槽にかえて或いは加えて、別の構成の処理槽、例えば嫌気濾床槽、接触濾床槽、担体流動生物濾過槽、処理水槽、貯留槽、放流ポンプ槽などを設けてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、家庭用の水処理装置について記載したが、本発明は、家庭用の水処理装置のみならず、工場などに設置される各種の水処理装置に対しても同様に適用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における「水処理装置」の一実施の形態の水処理装置100の概要を示す図である。
【図2】図1中の消毒槽118の槽内構成を示す図である。
【図3】図2中の電源供給器130及び電源受給器140の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
100…水処理装置
101…水処理槽
102…流入部
103…放流部
104…マンホール
105…マンホール蓋
110…夾雑物除去槽
112…嫌気濾床槽
114…接触ばっ気槽
116…沈澱槽
118…消毒槽
120…水質検出センサ
121…仕切り板
122…センサホルダ
130…電源供給器
130a…接続コード
131…電源供給側回路
133…整流回路
135…発振回路
137…1次側コイル
139…コンデンサ
140…電源受給器
140a…接続コード
141…電源受給側回路
143…2次側コイル
145…コンデンサ
147…整流回路
149…データ発信器
150…集中監視装置
151…データ受信器
S1,S2,S3…防水躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の水処理を行う複数の水処理領域と、
前記複数の水処理領域を収容する躯体状の第1の防水躯体と、
前記第1の防水躯体に収容された前記複数の水処理領域のうちの少なくとも1つに設けられる躯体状の第2の防水躯体と、
前記第2の防水躯体が設けられた水処理領域の被処理水に対し所定の電気的処理を行う処理部と、
前記第1の防水躯体外の外部電源に接続された電源供給部と、
前記電源供給部からの電源供給にともなって前記処理部に対する給電を行う給電部と、
を備え、
前記第2の防水躯体は、外部に対して閉じた内部空間に前記処理部及び給電部を気密状に収容した状態で前記第1の防水躯体内に取付けられる構成であり、これによって前記給電部は、防水状態を維持しつつ前記処理部に対する給電を行う構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
外部に対して閉じた内部空間に前記電源供給部を収容した状態で前記第1の防水躯体内に取付けられる躯体状の第3の防水躯体を備え、
前記給電部は、前記第2の防水躯体によって前記電源供給部と隔絶された状態で前記電源供給部に近接して取付けられる構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理装置であって、
前記電源供給部は、前記第3の防水躯体内に前記外部電源に接続された電源供給側コイルを備え、
前記給電部は、前記電源供給側コイルに対向してこの電源供給側コイルと非接触状態で配設される電源受給側コイルを有し、これによって前記電源受給側コイルが前記電源供給側コイルとの間の電磁誘導作用によって前記外部電源を前記電源供給部から無接点にて受給する無接点式電源受給構造をなす構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記第1の防水躯体の上部を開放可能なマンホールを有し、このマンホールの近傍領域に前記第2の防水躯体が配設された構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記第2の防水躯体は、当該第2の防水躯体が設けられた水処理領域の水位よりも高所に前記給電部を配設した構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記処理部は、被処理水の水質情報を電気的処理によって検出する水質検出センサとして構成され、
前記第2の防水躯体は、前記水質検出センサによって検出された水質情報を前記第1の防水躯体外へと無線送信するデータ送信部を含み、このデータ送信部を気密状に収容した構成であり、これによって前記データ送信部は、防水状態を維持しつつ前記第1の防水躯体外へと無線送信を行う構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置と、
前記水処理装置から離間して配設される水質監視装置と、
を備え、
前記水質監視装置は、前記データ送信部から無線送信される水質情報を受信するデータ受信部を含み、これによって前記水質検出センサから当該水質監視装置へと至る前記水質情報の送信経路が確立される構成であることを特徴とする水質管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253907(P2008−253907A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97552(P2007−97552)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】