説明

水処理装置および水処理方法

【課題】酸素等の泡が被処理水中に発生することを抑制し、被処理水中に含まれる有機物を高い効率で分解することができる水処理装置等を提供する。
【解決手段】被処理水中に含まれる有機物を分解する水処理装置であって、被処理水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させる酸素溶解槽31と、光触媒を備え、酸素溶解槽31により空気または酸素と接触した被処理水に紫外線を照射しつつ、光触媒と被処理水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで有機物を分解する光触媒装置32と、を備えることを特徴とする水処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置等に係り、より詳しくは、例えば、純水を製造するために使用する水処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体の製造を行なうには、半導体の洗浄等のため、純水が使用される。この純水は、被処理水から不純物を除去することで製造される。そして、純水に含まれる不純物の量はできるだけ少ないことが望ましい。近年、純水の製造は、被処理水として、工業用水等だけではなく、半導体の洗浄等に使用した後の排水を処理した水である回収水を併せて使用することが多い。そのため、被処理水中に除去することが困難な不純物が存在すると純水を製造する設備内にこの不純物が蓄積することになる。特に不純物が有機物の場合、除去しにくい種類のものが多く、純水製造設備内に蓄積しやすい。
【0003】
ここで、特許文献1には、被処理水を流通させる円筒形の反応槽と、反応槽内部に設けられ、反応槽内の被処理水にオゾンガスを注入するための散気板と、散気板にオゾンガスを流入するためのオゾンガス流入配管と、オゾンガスを発生させるためのオゾン発生装置と、反応槽の外周部に設けられ、内部に紫外線ランプを収納して、反応槽内の被処理水に紫外線を均一に照射するための円筒形の円筒型光源とを備えている水処理装置が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、被処理水中の微粒子、イオン、有機物、細菌、ガスを除去する多段階精製処理を行って超純水を製造する方法において、被処理水pHが4〜8の条件下で、臭化アルカリと次亜塩素酸塩を添加して被処理水中の尿素を分解する超純水の製造方法が開示されている。
【0005】
更に特許文献3には、前処理装置と、イオン交換装置と、逆浸透装置と、有機物分解装置と、脱気装置と、イオン吸着装置と、限外ろ過装置とを備えた超純水製造装置であって、有機物分解装置は、被処理水を一方向に流動させる流動槽と、表面に酸化チタンを含む光触媒繊維からなる平板状不織布を備える光触媒カートリッジと、180〜190nm間と250〜260nm間にそれぞれピーク波長を有する紫外線を照射可能な、長手方向に延びる形状を有する紫外線ランプとを備え、平板状不織布と紫外線ランプの長手方向とは平行であるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−342582号公報
【特許文献2】特開平9−94585号公報
【特許文献3】特開2010−22936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、臭化アルカリや次亜塩素酸塩等の添加物を添加することで有機物を分解する方法では、添加物と有機物の反応物が処理後において不純物として残存する。また被処理水中に含まれる有機物の量に対し過剰の添加物を添加する必要があるため、添加物自体も処理後において残存する。そのためこれらを更に除去する必要がある。また被処理水と光触媒とを接触させ、紫外線を照射して有機物を分解する方法では、有機物を分解する効率が必ずしも高くならない場合がある。更に、酸素等の泡が被処理水中に発生した場合、光触媒への紫外線の照射を阻害し、有機物を分解する効率が低下することがある。
【0008】
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、酸素等の泡が被処理水中に発生することを抑制し、被処理水中に含まれる有機物を高い効率で分解することができる水処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、被処理水中に含まれる有機物を分解する水処理装置であって、被処理水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させる接触手段と、光触媒を備え、接触手段により空気または酸素と接触した被処理水に紫外線を照射しつつ、光触媒と被処理水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで有機物を分解する分解手段と、を備えることを特徴とする水処理装置が提供される。
【0010】
ここで、有機物は、尿素であることが好ましく、接触手段は、被処理水に空気または酸素を0.2MPa以上の圧力で接触させることが好ましい。また分解手段は、光触媒と被処理水とを接触手段において被処理水に空気または酸素を接触させる圧力以上の圧力で接触させることが好ましく、被処理水は、脱塩水であることが好ましい。
【0011】
また本発明によれば、被処理水中に含まれる有機物を分解する水処理方法であって、被処理水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させることで酸素を被処理水中に溶解させる酸素溶解工程と、酸素溶解工程により酸素が溶解した被処理水に紫外線を照射しつつ、光触媒と被処理水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで有機物を分解する有機物分解工程と、を備えることを特徴とする水処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸素等の泡が被処理水中に発生することを抑制し、被処理水中に含まれる有機物を高い効率で分解することができる水処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】本実施の形態の水処理装置について説明した図である。
【図1−2】本実施の形態の水処理装置について説明した図である。
【図2】本実施の形態の酸素溶解槽と光触媒装置についてより詳しく説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0015】
図1−1および図1−2は、本実施の形態の水処理装置について説明した図である。
本実施の形態において、水処理装置1は、純水を製造するための装置である。そして原水を前処理し濾過水とする前処理ユニット10、前処理ユニット10で製造された濾過水を脱塩し脱塩水とする一次処理ユニット20、および一次処理ユニット20で製造された脱塩水を更に精製し純水とする二次処理ユニット30とから主要部が構成されている。
【0016】
前処理ユニット10は、原水から濁質を除去する前処理を行なうために設けられる。
前処理ユニット10は、原水を貯留する原水槽11と、原水に含まれる濁質を凝集させ除去し濾過水とする凝集濾過塔12と、濾過水を貯留する濾過水槽13とを備える。
【0017】
本実施の形態において、原水は、工業用水を用いる。ただし特に限定されることはなく、例えば、井水、上水なども使用することができる。原水は、いったん原水槽11に貯留される。本実施の形態では、この際に、原水に例えば、NaClO(次亜塩素酸ナトリウム)を添加し、原水に含まれる細菌類を殺菌することが好ましい。
【0018】
凝集濾過塔12では、原水に凝集剤を添加することで濁質を凝集させて凝集物とし、濾過により凝集物を除去する。ここで、濁質は、原水に含まれる汚れであり、泥、シルト等の夾雑物やプランクトン等の水生生物などの微粒子から構成される。そしてこれらの微粒子は、凝集剤により凝集させることができ、凝集物であるフロックにすることができる。
【0019】
本実施の形態で使用する凝集剤は特に限定されるものではなく、例えば無機凝集剤を使用することができる。具体的には、ポリ塩化アルミニウム(PAC:Poly Aluminum Chloride);硫酸アルミニウム(硫酸バンド);硫酸第一鉄(FeSO)、硫酸第二鉄(Fe(SO)、塩化第二鉄(FeCl)、ポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化第二鉄等の鉄系凝集剤、などである。この無機凝集剤は、被処理水に添加することで、被処理水中に分散している粒子表面の電荷を中和し、ファンデルワールス力(分子間引力)により粒子を集合させる凝結作用により凝集を生じさせる。
【0020】
そして凝集濾過塔12には、濾過材が備えられており、凝集剤により生成されたフロックを同じ装置内で濾過をすることができる。これによりフロックが除去され、濾過水となる。
【0021】
凝集濾過塔12で生成された濾過水は、いったん濾過水槽13に貯留される。なおこの際に原水の殺菌を行なうために使用されたNaClO(次亜塩素酸ナトリウム)を中和する処理を行なうことが好ましい。具体的には、チオ硫酸ナトリウム(Na)を適量添加することにより中和を行なうことができる。
【0022】
一次処理ユニット20は、濾過水に含まれるイオンなどの塩類を除去するために設けられる。
一次処理ユニット20は、濾過水に含まれる塩類を除去し脱塩水とする2床3塔式純水製造装置(2B3T)21と、2床3塔式純水製造装置21により生成された脱塩水を貯留する脱塩水槽22とを備える。
2床3塔式純水製造装置(2B3T)21は、陽イオン交換樹脂が充填された陽イオン交換塔、脱炭酸塔、および陰イオン交換樹脂が充填された陰イオン交換塔の2床(2B:2Bed)3塔(3T:3Tower)から構成される。濾過水13から送られた濾過水は、2床3塔式純水製造装置21の陽イオン交換塔にまず入る。そして陽イオン交換塔において、濾過水中の陽イオン成分が除去される。陽イオン成分は、例えば、金属イオンである。次に陽イオン交換塔を通った濾過水は、脱炭酸塔に送られる。即ち、陽イオン交換塔では、濾過水中に含まれる陽イオンはHイオンに交換されるため、pHは、酸性となっている。この状態では、水に含まれる炭酸成分(CO)がガス化するため脱炭酸塔で空気を送り込むことで炭酸成分を除去する。これにより次の陰イオン交換塔において陰イオン交換樹脂の負担を減らし、陰イオン交換樹脂量の低減を図ることができる。そして濾過水は、最後に陰イオン交換塔に入り、陰イオン交換塔において、濾過水中の陰イオン成分が除去される。これにより脱塩水を製造することができる。
【0023】
2床3塔式純水製造装置21により製造された脱塩水は、脱塩水槽22に貯留される。脱塩水槽22では、後述するユースポイントで使用された後の排水を予め定められた手順で処理した水である回収水を混合してもよい。
【0024】
二次処理ユニット30は、被処理水の一例である脱塩水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させる接触手段としての酸素溶解槽31と、光触媒を備え、酸素溶解槽31により空気または酸素と接触した脱塩水に紫外線を照射しつつ、光触媒と脱塩水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで有機物を分解する分解手段としての光触媒装置32と、脱塩水から塩類、有機物等を更に除去するための混床式純水製造装置(MBP)33、活性炭濾過装置(CF)35、および逆浸透膜装置(RO)36と、混床式純水製造装置33と活性炭濾過装置35の間に設けられ、脱塩水に溶解した気体成分を除去するための真空脱気塔34と、製造された純水を貯留する二次純水槽37とを備える。また二次純水槽37の後段には、ユースポイントで使用するために純水の最終的なポリッシングを行なう紫外線酸化装置(TOC−UV)41、非再生型イオン交換装置(UP)42、および限界濾過装置(UF)43とを備える。
【0025】
図2は、本実施の形態の酸素溶解槽31と光触媒装置32についてより詳しく説明した図である。
図2に示した酸素溶解槽31は、脱塩水に酸素を溶解させるための槽である。そして酸素溶解槽31は、内部に脱塩水を貯えるための空間を有し予め定められた圧力に耐えることができる圧力容器311と、予め定められた圧力の圧縮空気を圧力容器311の下部から排出するエアレーション球312と、エアレーション球312に圧縮空気を供給するための空気配管313と、圧力容器311の上部に圧縮空気を供給するための空気配管314と、圧力容器311内部の圧力を測定するための圧力計315と、水処理装置1の停止時などに圧力容器311内部の圧力を抜くための空気ドレン配管316とを備える。
【0026】
脱塩水は、図示しない配管より圧力容器311の上部から圧力容器311内部に導入される。そして空気配管313,314により、圧縮空気がエアレーション球312および圧力容器311の上部に供給される。エアレーション球312には、微細な孔が形成されており、この孔を通し圧縮空気を排出することで、空気が脱塩水にバブリング状態で供給され、脱塩水と空気とが接触する。これにより脱塩水に、酸素を溶解させることができる。そしてこの際に圧力容器311内部を大気圧より大きい圧力とすることで、大気圧で空気を供給するよりも多くの酸素を脱塩水に溶解させることができる。本実施の形態では、後述する光触媒装置32内部での光触媒反応をより効率よく生じさせるという観点から、圧力容器311内部の圧力は、0.2MPa以上の圧力であることが好ましい。なおここで圧力は、大気圧を基準値とし、大気圧に対し加圧する圧力を意味する。
【0027】
光触媒装置32は、内部に光触媒および脱塩水を貯えるための空間を有し予め定められた圧力に耐えることができる圧力容器321と、圧力容器321の内部に配され光触媒に紫外線を照射するための紫外線ランプ322と、紫外線ランプ322を脱塩水と非接触とし保護するための石英管323と、圧力容器321内部の圧力を測定するための圧力計324とを備える。この紫外線は、例えば、185nmや254nmの波長を有する。また光触媒装置32は、酸素溶解槽31と配管317により接続され、配管317の途中に設けられたポンプ318により脱塩水が酸素溶解槽31から光触媒装置32に移送される。
【0028】
脱塩水は、酸素溶解槽31の下部から抜き取られ、配管317およびポンプ318を通過して光触媒装置32の下部から光触媒装置32内部に導入される。そして脱塩水は、光触媒装置32内部に設けられた光触媒と接触する。光触媒には紫外線ランプ322により紫外線が照射されている。そのため脱塩水に含まれる有機物は、光触媒反応により分解され、除去される。この際、脱塩水には酸素溶解槽31によって酸素が豊富に溶解しているため、光触媒反応が高い効率で行なわれる。
【0029】
更に本実施の形態では、圧力容器321内部を大気圧より大きい圧力とする。好ましくは、酸素溶解槽31において脱塩水に空気を接触させる圧力以上の圧力とする。これにより、酸素溶解槽31において溶解した酸素が、光触媒装置32の内部で、泡として析出することを抑制することができる。そして酸素が泡として析出することが抑制できると、この泡により光触媒への紫外線の照射を阻害することが生じにくくなる。
【0030】
また本実施の形態では、有機物を分解するために添加物を脱塩水中に添加する必要がない。そのため添加物と有機物の反応物が不純物として生じることがなく、この反応物を除去する機器を設けなくてよい。更に反応を起こさず残存した添加物を除去する機器を設けなくてもよい。つまり例えば、オゾン(O)を添加して、光触媒装置32により紫外線を照射しつつ有機物を分解する方法では、添加したオゾンを分解するための活性炭塔(AC)等を設ける必要がある。対して、本実施の形態では、活性炭塔(AC)は不要である。
【0031】
なお上述した例では、酸素溶解槽31には空気を供給したが、これに限られるものではなく、酸素を供給してもよい。
また光触媒装置32で分解を行なうことができる有機物は、特に限定されるものではない。ただし、有機物が尿素である場合に本実施の形態の手法は特に有効である。即ち、尿素は、イオン交換樹脂や活性炭を使用しての除去は困難である。また低分子であり、かつ電荷を持たないため限界濾過によっても除去が困難である。更に、光触媒を使用せず単に紫外線を照射する方法でも分解しにくい性質を有する。そのため本実施の形態のように、酸素溶解槽31により十分な酸素を脱塩水に溶解させ、そして光触媒装置32において光触媒反応を生じさせることで、尿素のように除去が困難な有機物でも除去を行なうことをより容易とすることができる。
【0032】
混床式純水製造装置(MBP)33には、内部に陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が混合して充填されている。そして装置内に脱塩水を流通させることで、脱塩水中に含まれる微量の陽イオンおよび陰イオンを更に除去することができる。混床式純水製造装置33では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が混合した状態で、反応を生じさせる。そのため陽イオン交換樹脂により遊離したHイオンは、陰イオン交換樹脂により速やかに捕捉される。また陰イオン交換樹脂により遊離したOHイオンは、陽イオン交換樹脂により速やかに捕捉される。そのため交換平衡が成立しないで反応を進行させることができるので、より効率的に陽イオンおよび陰イオンを除去することができる。
【0033】
真空脱気塔34は、脱塩水中に含まれる酸素等の気体成分を除去するために設けられる。即ち、本実施の形態では、酸素溶解槽31において酸素を溶解させるため、脱塩水は、酸素で飽和している。そのため真空脱気塔34で溶解している過剰の酸素を脱気する必要がある。真空脱気塔34の内部は、ほぼ真空である減圧状態とされている。そのためここに脱塩水を流通させることで、脱塩水中に溶解した酸素を析出させ、脱塩水から分離することができる。なおこの工程までに除去できなかった揮発性の物質、例えば揮発性の有機物も、この真空脱気塔34で除去することができる。
【0034】
活性炭濾過装置(CF)35は、内部に活性炭を備える装置である。そして、脱塩水中に含まれる塩類や有機物をこの活性炭に吸着させることで更に除去することができる。本実施の形態では、ヤシガラ活性炭等の活性炭が含まれるフィルタをカートリッジ式にしたものが装置内に配されており、このフィルタに脱塩水を通過させることで、脱塩水の濾過を行なう。
【0035】
逆浸透膜装置(RO)36は、内部に逆浸透膜(RO膜)を備える装置である。逆浸透膜は、例えば、大きさが1nm〜2nmの孔を多数設けたポリアミド膜であり、この膜を通過させることで、脱塩水中に含まれる塩類を更に除去することができる。
【0036】
本実施の形態では、以上の処理により純水を製造することができ、製造された純水は、二次純水槽37に貯えられる。本実施の形態では、二次純水槽37には、窒素ガスが導入され、この窒素ガスにより二次純水槽37内部をパージする。これにより二次純水槽37に貯えられる純水を劣化しにくくすることができる。
【0037】
紫外線酸化装置(TOC−UV)41は、内部に低圧紫外線ランプを備え、この紫外線ランプにより照射される紫外線により純水中の有機物を分解し除去する。この紫外線は、例えば185nmの波長を有する。そしてこの紫外線の照射により生成するヒドロキシルラジカル(OH・)により純水中の微量有機物を酸化分解する。
なおこの紫外線酸化装置41に代わり、図2で説明をした酸素溶解槽31および光触媒装置32を用いてもよい。この場合、紫外線酸化装置41によりヒドロキシルラジカルの他に発生することがある過酸化水素(H)の発生がなくなるという点で、有効である。
【0038】
非再生型イオン交換装置(UP)42は、イオン交換装置の一種である。本実施の形態では、装置内に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合して充填した混床式イオン交換塔、または陽イオン交換樹脂を備えた陽イオン交換塔と陰イオン交換樹脂を備えた陰イオン交換塔とからなる複床式イオン交換装置などが使用できる。この非再生型イオン交換装置42により陽イオン、陰イオン等の塩類が除去できるが、更に紫外線酸化装置41により発生することがある過酸化水素(H)も共に除去することができる。
【0039】
限界濾過装置(UF)43は、純水に含まれる微細な固形物を除去するために設けられる。このために限界濾過装置(UF)43内部には、限外濾過膜(UF膜)が備えられている。限外濾過膜は、例えば、大きさが2nm〜200nmの孔を多数設けたポリアミドやポリスルホンからなる膜であり、この膜を通過させることで、微粒子等の固形物を除去することができる。
【0040】
このようにして製造された純水は、ユースポイントに送られ、予め定められた工程中で洗浄等の用途に使用される。
【0041】
なお以上、水処理装置1について説明を行なったが、本実施の形態は、水処理方法としても捉えることができる。即ち、被処理水中に含まれる有機物を分解する水処理方法であって、被処理水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させることで酸素を被処理水中に溶解させる酸素溶解工程と、酸素溶解工程により酸素が溶解した被処理水に紫外線を照射しつつ、光触媒と被処理水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで有機物を分解する有機物分解工程と、を備えることを特徴とする水処理方法である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
図2で説明した酸素溶解槽31および光触媒装置32を使用し、有機物の分解率を測定した。
ここで、酸素溶解槽31には、9Lの容量を有するステンレス製のタンクを用いた。また光触媒装置32は、圧力容器321として、内径50mm×長さ200mmのステンレス管を用い、石英管323として、内径20mm×長さ240mmのものを用いてこれにより二重管の構成となるようにした。そして圧力容器321と石英管323の間に、光触媒として粒径3mmのシリカゲルビーズにTiOを含浸したものを充填した。また石英管323には、出力波長254nm、出力5.3Wの紫外線ランプ322を挿入した。
そして、酸素溶解槽31に有機物として尿素をTOC換算で200μg/L含有させた脱塩水を25℃にて充填した。そして圧力計315による計測で、酸素溶解槽31内部が0.2MPaになるように加圧し、その圧力を保ったまま、0.2MPaの圧力を有する圧縮空気をエアレーション球312から排出してバブリングを30分間行なった。そしてバブリング後、光触媒装置32に尿素が溶解した脱塩水を1.2L/hの速度で送出しつつ紫外線を照射し、光触媒反応を生じさせた。光触媒装置32から排出された後の脱塩水に含まれる尿素の量を測定したところ、尿素の分解率は、9%であった。
【0044】
(比較例1)
実施例1に対し、酸素溶解槽31における空気によるバブリングを行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして、脱塩水の処理を行なった。なおこの際の脱塩水は、予め真空脱気装置で脱気処理されたものを用い、溶存酸素は、0.01ppm未満だった。このときの尿素の分解率は、2%であり、実施例1の1/4以下に留まった。
【0045】
(比較例2)
実施例1に対し、酸素溶解槽31における空気によるバブリングを行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして、脱塩水の処理を行なった。なおこの際の脱塩水は、大気圧下で飽和しており、溶存酸素は、8ppmであった。このときの尿素の分解率は、4%であり、実施例1の1/2以下に留まった。
【符号の説明】
【0046】
1…水処理装置、10…前処理ユニット、20…一次処理ユニット、30…二次処理ユニット、31…酸素溶解槽、32…光触媒装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に含まれる有機物を分解する水処理装置であって、
前記被処理水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させる接触手段と、
光触媒を備え、前記接触手段により空気または酸素と接触した被処理水に紫外線を照射しつつ、当該光触媒と当該被処理水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで前記有機物を分解する分解手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記有機物は、尿素であることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記接触手段は、前記被処理水に空気または酸素を0.2MPa以上の圧力で接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記分解手段は、前記光触媒と前記被処理水とを前記接触手段において当該被処理水に空気または酸素を接触させる圧力以上の圧力で接触させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記被処理水は、脱塩水であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
被処理水中に含まれる有機物を分解する水処理方法であって、
前記被処理水に空気または酸素を大気圧より大きい圧力で接触させることで酸素を当該被処理水中に溶解させる酸素溶解工程と、
前記酸素溶解工程により酸素が溶解した被処理水に紫外線を照射しつつ、光触媒と当該被処理水とを大気圧より大きい圧力で接触させることで前記有機物を分解する有機物分解工程と、
を備えることを特徴とする水処理方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−245422(P2011−245422A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121214(P2010−121214)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】