説明

水処理装置及び方法

【課題】 原水の難分解性の汚染物質及び濁りを低コストで除去することができる水処理装置及び方法を提供する。更に、処理水の溶存オゾン濃度を低く維持することができる水処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】 本発明による水処理装置(1)は、汚染物質及び濁りを含む原水にオゾンを注入するオゾン注入部(6)と、オゾン注入部(6)の下流側に接続された紫外線反応部(8)と、紫外線反応部(8)の下流側に接続された膜分離部(16)とを有する。紫外線反応部(8)では、オゾンを注入した原水に紫外線を照射することにより、汚染物質を分解して、原水を中間処理水にする。膜分離部(16)は、中間処理水を濾過する膜(14)を有し、それにより濁りを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び方法に関し、更に詳細には、上水道、工業用水又は下水二次処理水の処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業排水、生活排水などによる水の汚染が進んでおり、水環境汚染が社会問題になっている。具体的には、上水用の水源である上流河川においては、農薬、ダイオキシン、環境ホルモンなどの難分解性の汚染物質が微量ながら含まれていることが指摘されている。また、河川の下流側においては、水の汚染が更に進んでおり、有機塩素系の洗剤、農薬、合成洗剤、染料など種々の化学物質による水の汚染が広がっている。更に、産業・生活廃棄物埋立地からの浸出水による水の汚染はきわめて深刻な社会問題となっている。
【0003】
この様な背景のもと、水環境保全技術の開発が活発に行われている。例えば、活性炭処理、膜処理、オゾン処理、紫外線処理、生物学的な処理、促進酸化処理などの技術開発が行われている。
【0004】
促進酸化処理(AOP:Advanced Oxidation Process)は、オゾンと紫外線、あるいは、オゾンと過酸化水素を組み合わせた処理である。促進酸化処理装置の一例は、汚染物質を含む原水(非処理水)を受入れて貯蔵する原水槽と、原水槽内の原水を下流側に送出するためのポンプと、ポンプによって送出された原水に、オゾン発生装置により発生させたオゾンを注入するエジェクターと、エジェクターの下流側に接続され且つオゾンが注入された原水に紫外線を照射することにより汚染物質を分解して処理水にする紫外線反応装置と、紫外線反応装置の下流側に配置され且つ余分なオゾンを分離して除去する気液分離槽と、気液分離槽からの処理水を排出する排出部とを有している。
このように構成された促進酸化処理装置では、オゾン発生装置により発生させたオゾンガスを、エジェクターによって原水中に溶解させ、オゾンが溶解した原水に紫外線を照射すると、オゾンよりも酸化力の強いラジカル種(OHラジカル)が生成される。このOHラジカルにより、オゾンで処理できなかった難分解性の汚染物質などが分解される。
【0005】
促進酸化処理は、オゾン処理に比べて、短時間で処理できること、処理水中のオゾン濃度が低いので後工程で活性炭処理を必要としないこと、排オゾン量を低減できること、及びそれらにより処理コストを低減できることにおいて優位性があり、有望視されている。
例えば、紫外線とオゾンによりトリクロロエチレンなどの有機塩素化合物を分解する方法(特許文献1参照)、オゾン、過酸化水素などと組み合わせた処理方法(特許文献2参照)、オゾン処理と過酸化水素水注入(または紫外線照射)とを併用して被処理水中の難分解性物質を分解する水処理方法(特許文献3参照)、被処理水にオゾンを注入しながら、紫外線を用いて被処理水中のオゾンをラジカル種化させ、被処理水中の難分解性物質を分解する水処理方法(特許文献4参照)等が知られている。
【0006】
また、膜処理は、濾過精度に優れた処理である。特に、クリプトスポリジウムの対策に有効であり、上水や下水などの濁り除去に用いられている。膜処理において、濾過を継続して行っていると、膜処理に用いる膜の表面に原水中の有機物などの除去対象物質が付着し、膜孔の閉塞を引き起こすことがある。そのため、膜処理を行う場合、膜孔の閉塞を抑制したり除去したりするための対策が取られている。具体的には、原水にPACなどの凝集剤を加えて原水を前処理しておく対策、膜の濾過方向とは逆方向に濾過水、次亜塩素酸ソーダあるいはオゾン水を流して膜を逆流洗浄する対策(特許文献5参照)、気体状態のオゾンを用いて膜を逆流洗浄する対策(特許文献6参照)等が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−191095号公報
【特許文献2】特開平11−33570号公報
【特許文献3】特開2001−149964号公報
【特許文献4】特開2001−96284号公報
【特許文献5】特開平4−310220号公報
【特許文献6】特開昭60−58222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
促進酸化処理は、溶解性の物質の分解・除去は可能であるが、比較的粒径の大きな物質の分離機能を有していないので、濁りを除去することはできない。特に、濁りの程度の大きい原水を飲料水などの用途に供するためには、促進酸化処理だけでは不十分である。
また、促進酸化処理装置において、紫外線強度が低下すると、処理水中の溶存オゾン濃度が大きくなり、処理水は飲料水に適さない。
一方、膜処理は、濁りを除去することは可能であるが、色素や、農薬、ダイオキシン、環境ホルモンなどの難分解性の汚染物質を除去することはできない。
また、膜処理装置に用いられる精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)は、上述したように、ファウリング(閉塞)を引き起こすことがある。ファウリングが起こると、差圧を上昇させなければならないので、差圧の上昇を防止するために、定期的な薬液洗浄等を行うことが必要である。特に有機物の多い液は、ファウリングを起こしやすく、メンテナンスコスト及び膜交換コストの上昇を招いていた。
【0009】
そこで、本発明は、原水の難分解性の汚染物質及び濁りを低コストで除去することができる水処理装置及び方法を提供することにある。
また、本発明は、原水の難分解性の汚染物質及び濁りを低コストで除去することができると共に、処理水の溶存オゾン濃度を低く維持することができる水処理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による水処理装置は、汚染物質及び濁りを含む原水にオゾンを注入するオゾン注入部と、オゾン注入部の下流側に接続され、且つ、オゾンを注入した原水に紫外線を照射することにより汚染物質を分解して、原水を中間処理水にする紫外線反応部と、紫外線反応部の下流側に接続され、中間処理水を濾過する膜を有する膜分離部と、を有することを特徴としている。
このように構成された水処理装置では、オゾン注入部によって原水に注入されたオゾンは、紫外線反応部において紫外線で照射されることによって、強い酸化力を有するOHラジカルに変換される。このOHラジカルにより、原水中の難分解性汚染物質を分解し、原水を中間処理水にする。中間処理水の濁りは、膜分離部の膜を通過する際に除去される。また、原水中に含まれる金属イオン、たとえばFe、Mn、Caイオンが、OHラジカルの強い酸化力によって不溶性の酸化物となるので、かかる金属イオンを不溶性酸化物として膜分離部によって除去することができる。かくして、本発明による水処理装置は、上水・排水等の処理において、オゾン処理に比べ短時間で、色度・臭気・溶存微量有機成分を分解できるだけでなく、濁り成分も除去することができる。
【0011】
また、本実施形態による水処理装置では、原水中にオゾンを一定濃度で溶解させた後すぐに紫外線照射することによってOHラジカルに変換しているので、中間処理水のオゾン濃度が低くなる。それにより、膜分離部の膜に、耐オゾン膜を使用する必要が無く、安価な膜を使用することができる。また、膜分離部へのオゾンの流入を著しく低減できるので、耐オゾン膜と同等のファウリング物質の除去を確保しつつ、膜のファウリング物質による差圧上昇を抑制すると共に、膜の劣化を抑制することが可能である。更に、排オゾンがきわめて少なくなるため、処理水の活性炭による後処理が不要になる。かくして、低コストで水処理を達成することができる。
【0012】
本発明の実施形態において、好ましくは、紫外線反応部の上流側における原水中の溶存オゾン濃度が0.05〜100mg/literの範囲にあり、膜分離部の上流側における中間処理水中の溶存オゾン濃度が0.05mg/liter未満である。
原水中の溶存オゾン濃度が0.05mg/literよりも低いと、有機成分の分解性が低くなる。また、原水中の溶存オゾン濃度が100mg/literよりも高いと、オゾン発生コストが高く不経済である。また、処理水のオゾン濃度を0.05mg/liter未満に維持することにより、処理水を飲料水に使用することも可能である。
【0013】
本発明の実施形態において、好ましくは、紫外線反応部と前記膜分離部との間に追加の処理部が接続される。
追加の処理部は、例えば、中間処理水と気体とを分離する気液分離槽、溶解性の物質を分解するための反応槽、紫外線照射後にOHラジカルに変換されなかったオゾンの滞留時間を長くして汚染物質の分解を促進させる反応槽等である。
【0014】
本発明の実施形態において、好ましくは、更に、紫外線の照射が停止したこと、又は、紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出可能なコントローラを有し、コントローラが、紫外線の照射が停止したこと、又は、紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出したとき、膜への流入を閉鎖して膜による固液分離を停止させる。
本発明の実施形態において、好ましくは、更に、紫外線の照射が停止したこと、又は、紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出可能であるコントローラと、コントローラに接続され且つ膜分離部の上流側直前における中間処理水の溶存オゾン濃度を検出するオゾン濃度センサと、を有し、オゾン注入部は、コントローラに接続されたオゾン発生装置を有し、コントローラは、紫外線の照射が停止したこと、又は、紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出したとき、膜分離部の上流側直前における中間処理水の溶存オゾン濃度が0.05mg/liter未満に維持されるようにオゾン発生装置を制御する。
本発明の実施形態において、好ましくは、更に、紫外線の照射が停止したこと、又は、紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出可能であるコントローラを有し、オゾン注入部は、コントローラに接続されたオゾン発生装置を有し、コントローラは、紫外線の照射が停止したこと、又は、紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出したとき、オゾン発生装置を停止させる。
このように構成された水処理装置では、OHラジカルの生成に影響を与えるスケーリング等が早期に検出されるので、スケーリングへの対処を迅速に行うことができ、その結果、処理水の水質、特に、溶存オゾン濃度を安定的に維持することができる。
【0015】
本発明の実施形態において、好ましくは、膜分離部の膜の材質がポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、又はセルロースである。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明による水処理方法は、汚染物質及び濁りを有する原水にオゾンを注入する工程と、オゾンが注入された原水に紫外線を照射して、オゾンをラジカル種に変換し、ラジカル種によって汚染物質を分解して、原水を中間処理水にする工程と、中間処理水を膜によって濾過して、濁りを除去する工程と、を有することを特徴としている。
通常、オゾン処理の場合には、原水とオゾンとの接触時間を適宜とるケースがほとんどであるが、本発明の場合、オゾンを溶解させる、即ち、注入するのに要する時間は必要であるが、照射される紫外線によりオゾンから強い酸化力を有するOHラジカルを生じさせるので、原水とOHラジカルとの接触時間をオゾン処理に比べ短くできる。また、OHラジカルが強い酸化力を有しているため、必要とされるオゾン量を削減することができると共に、処理後の溶存オゾン濃度を低減させることもできる。それと同時に、排オゾン量も削減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水処理装置及び方法によれば、原水の難分解性の汚染物質及び濁りを低コストで除去することができる。
また、本発明の水処理装置及び方法によれば、原水の難分解性の汚染物質及び濁りを低コストで除去することができると共に、処理水の溶存オゾン濃度を低く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の水処理装置の実施形態を説明する。図1は、本発明による水処理装置のシステム概略図である。
水処理装置1は、汚染物質及び濁りを含む原水を受入れて貯蔵する原水槽2と、原水槽2内の原水を下流側に送出する原水送出装置4である原水用ポンプと、送出された原水にオゾンを注入するオゾン注入部6と、オゾン注入部6の下流側に接続され且つオゾンが注入された原水に紫外線を照射することにより汚染物質を分解して、原水を中間処理水にする紫外線反応装置8と、紫外線反応装置8の下流側に配置され且つ紫外線反応装置8によって処理された中間処理水と気体とを分離する気液分離槽10と、気液分離槽10の下流側に配置され且つ気液分離槽10からの中間処理水を下流側に送出する中間処理水送出装置12である中間処理水用ポンプと、送出された中間処理水を濾過する膜14を有する膜分離装置16と、膜分離装置16によって濾過された処理水を排出する排出部18とを有している。
【0019】
オゾン注入部6は、オゾンを発生させるオゾン発生装置20と、オゾン発生装置20により発生させたオゾンを、原水用ポンプ4により送出された原水に溶解させるオゾン溶解装置22とを有している。オゾン発生装置20は、本実施形態に適当なオゾン濃度を発生させることができるものであれば、高電圧あるいは二次電圧を用いるオゾン発生装置であってもよいし、水からオゾン水を作り出す電解式オゾン発生装置であってもよい。オゾン溶解装置22は、ディフューザー、スタティクミキサー、エジェクター等の任意形式の気液溶解装置であるのがよく、オゾンを溶解するオゾン注入領域を構成する。
【0020】
紫外線反応装置8は、AOP反応槽の一種であり、例えば、紫外線反応塔である。紫外線反応装置8は、オゾン溶解装置22で溶解されたオゾンを紫外線照射によってOHラジカルに変換する反応領域を構成する。なお、オゾンは、過酸化水素水との反応によってもOHラジカルに変換されるが、上水又は再生水の製造において、過酸化水素水の注入量の制御が難しく、過酸化水素水の管理が困難であり、未反応の過酸化水素水が残った処理水は飲料水として適さないので、本実施形態では、紫外線照射によるOHラジカルへの変換を採用する。
紫外線反応装置8は、石英ガラス又は透明フッ素で形成された内管24及び外管26を有する2重管構造になっている。内管24の内側には、紫外線ランプ又は紫外線発光素子(LED)等の紫外線源28が配置され、オゾンを溶解させた原水が、内管24と外管26との間を下方から上方に流れるように構成されている。紫外線の波長は、OHラジカルへの変換効率が高い250nm前後であることが好ましい。紫外線の出力は、流入する原水の流量及び有機成分(TOC)濃度により適宜設定される。
【0021】
図2は、紫外線反応装置の第1の変形例の概略図である。第1の変形例の紫外線反応装置8’は、原水への紫外線透過量の低下を検出するために、紫外線反応装置8’の上部において、発光剤30を塗布した領域が内管24の外面24aに設けられ、紫外線により発光した発光剤30の照度を検出するための光センサ32が外管26の内面26aに設けられている。光センサ32は、例えば、三洋電機製のアモルファス光センサ又はそれと同等の機能を有する光センサであるのがよい。
【0022】
図3は、紫外線反応装置の第2の変形例の概略図である。第2の変形例の紫外線反応装置8''は、発光剤30及び光センサ32の代わりに紫外線センサ34を採用したこと以外、第1の変形例の紫外線反応装置8’と同様の構造を有している。従って、同様の構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。原水への紫外線透過量の低下を検出するために、紫外線反応装置8''の上部において、紫外線センサ34が外管26の内面26aに内管24に向けられるように設けられている。紫外線センサ34は、例えば、浜松ホトニクス社製の紫外線トロン又はそれと同等の機能を有する紫外線センサであるのがよい。
【0023】
オゾン発生装置20によって発生された余分なオゾン及び気液分離槽10によって分離されたオゾンを処理する排オゾン処理装置36が、オゾン発生装置20とオゾン溶解装置22との間の箇所、及び気液分離槽10に接続されている。
【0024】
膜分離装置16の膜14は、UF膜またはMF膜等である。膜の形状は、平膜、中空糸膜、管状膜、スパイラル等のいずれでもよい。図1に示す膜分離装置16は、膜14に中間処理水を加圧供給して濾過する加圧型であり、この場合、中間処理水に溶解している気体を除去(脱気)するための曝気装置38が、膜分離装置16の上流側、例えば、気液分離槽10に設けられるのがよい。加圧型の膜分離装置16の作動及び停止は、中間水処理水用ポンプ12(加圧ポンプ)の作動及び停止によって行われる。なお、膜分離装置16は、膜14を水槽内に浸漬させ、中間処理水を吸引透過させる浸漬吸引型であってもよく、その場合、膜14の洗浄のための曝気装置(図示せず)が、膜分離装置16内に設けられ、中間処理水を吸引する吸引ポンプ(図示せず)が膜分離装置16の下流側に設けられる。吸引型の膜分離装置16の作動及び停止は、上記吸引ポンプの作動及び停止によって行われる。膜14の材質は、通常の水処理に使用される材質であれば特に限定されず、セラミックス、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化エチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルフォン、ポリアミド、セルロース等の任意の材質が使用可能である。本実施形態では、膜分離装置16に流入する中間処理水のオゾン濃度が低いため、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、セルロース等の、オゾン耐性は低いが比較的廉価な材質を使用してもよい。膜14の孔径は、UF膜単位からMF膜単位の孔径域であることが好ましい。膜14の濾過流量を大きくするときには、MF膜を用いることが好ましい。膜14の孔径は0.001〜2μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。
【0025】
原水用ポンプ4とオゾン注入部6との間には、流量計40が設けられている。また、中間処理水用ポンプ12と膜分離装置16との間、及び膜分離装置16と排出部18との間にはそれぞれ、圧力計42、44が設けられている。また、気液分離槽10と膜分離装置16ととの間には、オゾン濃度検出器であるオゾン濃度モニター46が接続されている。オゾン濃度モニター46は、例えば、本実施形態に適当な範囲のオゾン濃度が計測できるものであれば特に限定されず、例えば、荏原実業(株)製のEL−600Q又はEL−600Sである。
【0026】
また、水処理装置1は、コントローラ48を有している。コントローラ48は、紫外線源28が通電状態にあるかないかを監視することができるように、紫外線源28に接続されている。また、コントローラ48は、原水用ポンプ4、オゾン発生装置20、光センサ32、紫外線センサ34、中間処理水用ポンプ12、オゾン濃度モニター46、気液処理槽10内の曝気装置38等に接続されている。
紫外線反応塔8、気液分離槽10及び膜分離装置16には、ドレン50が設けられている。
【0027】
次に、本発明による水処理装置の動作を説明する。
汚染物質及び濁りを含み且つ原水槽2に貯蔵された原水を、原水用ポンプ4によってオゾン注入部6に送出する。オゾン発生装置20によって発生させたオゾンを、オゾン溶解装置22によって原水に溶解させる。原水に溶解されるオゾン濃度は、原水中に含有する有機成分濃度(TOC濃度)により異なるが、好ましくは、0.05〜100mg/liter、更に好ましくは、0.1〜10mg/literである。
オゾンが溶解された原水は、紫外線反応装置8に流入し、紫外線の照射を受ける。それにより、原水中のオゾンが、OHラジカルに変換される。このOHラジカルにより、原水中の溶解物質が分解・除去され、中間処理水になる。OHラジカルは、オゾンよりも酸化力が強いので、従来のオゾン処理で分解できなかった難分解性汚染物質も分解される。
中間処理水は、気液分離槽10に送られ、OHラジカルに変換されなかったオゾンが、排オゾン処理装置36に送られ処理される。オゾンが除去された中間処理水のオゾン濃度は、0.05mg/literであることが好ましい。
中間処理水は、中間処理水用ポンプ12によって、膜分離装置16に送られる。膜分離装置16によって、比較的粒径の大きな物質が濾過され、即ち、固液分離され、濁りが除去される。
【0028】
また、紫外線源28が通電状態にないこと、例えば、紫外線ランプが切れたことを、コントローラ48が検出したとき、コントローラ48は、例えば、原水用ポンプ4、中間処理水用ポンプ12、及び/又はオゾン発生装置20を停止させる。原水用ポンプ4を停止させた場合には、水処理装置1全体への給水が停止し、その結果、紫外線反応塔8への給水も停止する。中間処理水用ポンプ12を停止させた場合には、膜分離装置16への中間処理水の供給が停止する。再立ち上げ時にオゾン濃度の高い処理水が膜分離装置16に流入することを防止するために、ドレン50に付属する弁を開放して、オゾン濃度の高い処理水をドレン50から排水するのがよい。また、給水が停止したとき、オゾン発生装置20からのオゾンが上流側に向かって逆流することを防止するために、オゾン発生装置20を停止させることが好ましい。また、膜分離装置16が加圧型である本実施形態の場合、中間処理水用ポンプ12を停止させることによって中間処理水の供給を停止したが、膜分離装置が吸引型であれば、膜分離装置16の下流側に配置された吸引ポンプ(図示せず)を停止させればよい。それにより、オゾン濃度の高い処理水が排出されることを防止し、システムの安全と飲料水に適した水質を確保する。
【0029】
水処理装置1の実際の稼動中、カルシウムなどの金属成分の析出(スケーリング)などにより、内管24が汚れ、紫外線反応装置8内における紫外線透過率又は紫外線透過量が低下することがある。この場合、紫外線反応装置内の紫外線源が通常通り作動していても、紫外線反応装置8から出てきた中間処理水のオゾン濃度が上昇する。内管24等の紫外線反応装置8内の汚れは、酸などで定期的に洗浄する必要がある。
コントローラ48が、紫外線反応装置8’、8''内の光センサ32又は紫外センサ34により、紫外線透過率の所定の低下を検出したら、上述した紫外線源28が通電状態にないときと同様、原水用ポンプ4、中間処理水用ポンプ12、及び/又はオゾン発生装置20を停止させるのがよい。水処理装置1を停止させた後、紫外線反応装置8’、8''内を洗浄する。また、多くの場合、紫外線反応装置8’、8''においてスケーリングが生じている場合、その後段に位置する膜分離装置16でもスケーリングが生じているおそれがある。そのため、紫外線反応装置8’、8''の薬液洗浄と同時に、膜分離装置16の薬液洗浄を行うことが好ましい。
スケーリングなどによる紫外線透過率の低下の時期を検出することができるので、薬液による洗浄のタイミングの決定を適切に行うことができ、原水への紫外線照射強度を適切に維持することができる。その結果、水処理装置1全体の運転を安定化させることができる。
【0030】
コントローラ48は、オゾン濃度モニター46によって膜分離装置16の上流側直前の溶存オゾン濃度が所定濃度(例えば、0.05mg/liter)以上になったことを検出したとき、オゾン発生装置20を制御して、上記溶存オゾン濃度が所定濃度以下になるようにオゾン発生装置20からの吹き込みオゾン量を低減させるのがよい。変形例として、膜分離装置16が加圧型の場合、気液分離層10の内部に設けられた曝気装置38を作動させることによって、溶解しているオゾンを曝気させてもよいし、膜分離装置16が浸漬型の場合、その内部に設けられた曝気装置(図示せず)を作動させることによって溶解しているオゾンを曝気させてもよい。
【0031】
また、紫外線反応装置での紫外線照射により、原水が殺菌されるので、膜分離部の膜上における微生物による汚染が低減される。
【0032】
〔実施例1〕
色度26units(APHA法準拠)及び有機成分(TOC)濃度2.4mg/literの生物処理水(原水)を、図1に示す本発明による水処理装置1で処理した。オゾン発生装置20で発生させたオゾンを、原水用ポンプ4の圧力により作動するエジェクター22によって原水に溶解し、紫外線反応塔8に2.6liter/minで流入させた。この時、オゾン発生装置20(住友精密工業(株)製)で発生させたオゾンガスの濃度は10g/m3であり、オゾンガスの吹き込み量は0.5liter/minであった。また、紫外線反応塔8の上流側直前の原水中のオゾン濃度は0.25mg/literであった。紫外線反応塔は約5literの容積を有し、その処理時間は、約2minであった。
紫外線反応塔8によって処理された中間処理水を気液分離槽10に流入させ、気液分離後、中間処理水用ポンプ12によって膜分離装置16に送出して濾過した。膜分離装置16の膜モジュール14(三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社製の10インチモジュール)は、孔径0.1μmのPE製であり、膜面積は3.74m2であった。濾過方法は、デッドエンド濾過法を採用した。膜分離装置16の上流側と下流側との差圧は、13kPaであった。
得られた処理水の水質は、色度3units(APHA法準拠)であり、有機成分濃度(TOC濃度)1.8mg/literであった。100時間連続運転したあとにおいても、上記差圧は13kPaであり、特に差圧の上昇は見られなかった。また膜分離装置16に流入する中間処理水のオゾン濃度を0.05mg/liter未満に抑えることができた。それにより、使用した膜モジュールの強度は、初期値(400g/fil)を維持したままであった。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1の装置の紫外線反応塔8の代わりに、図2に示す変形例の紫外線反応塔8’を用いて水処理を行った。紫外線反応塔8'は、紫外線ランプ28より発せられた紫外線で発光する発光剤30と、発光剤30によって発光した光を検出する光センサ32とを有している。
実施例1と同様に連続運転したところ、半年程度で光センサ32の値が低下し、紫外線反応塔8’内での紫外線透過量が低下したので、紫外線反応塔8’への給水及び膜分離装置16への中間処理水の供給を自動で停止させた。その際、膜分離装置16へ流入する中間処理水の溶存オゾン濃度をオゾン濃度センサ44で計測した。連続運転初期において0.03mg/literであったオゾン濃度が0.10mg/literを示していた。すぐに、紫外線反応塔8’及び膜分離装置16をクエン酸で薬液洗浄し、その廃液を紫外線反応塔8’及び膜分離装置16のドレンより排出した。紫外線透過量が連続運転初期の量に戻ったことを確認した上で、水処理装置1を再運転した。膜分離装置16に流入する中間処理水中の溶存オゾン濃度が0.05mg/liter未満となった。この結果、膜14の2次側の処理水にオゾンの流出などを起こすことなく、目標レベルの処理水質にすることができた。
【0034】
〔実施例3〕
実施例1の装置の紫外線反応塔8の代わりに、図3に示す変形例の紫外線反応塔8''を用いて水処理を行った。紫外線反応塔8''は、紫外線センサ34を有している。
実施例1と同様に連続運転したところ、紫外線反応塔8''内の紫外線透過量が徐々に低下した。その際のオゾン濃度モニター14による中間処理水内の溶存オゾン濃度は、0.3mg/literを示した。原水中に含まれるリン酸カルシウムが原因で、紫外線反応塔8''でスケーリングを起こしていると考えられたので、水処理装置1を停止させ、紫外線反応塔8''及び膜分離装置16を、実施例2と同様、薬液洗浄した。それにより、初期の紫外線透過量に戻すことができた。薬液洗浄後、再運転を行い、膜14の2次側の処理水にオゾンの流出などを起こすことなく、目標レベルの処理水質にすることができた。
【0035】
〔実施例4〕
実施例1と同様に連続運転したところ、紫外線反応塔8から排出された中間処理水の溶存オゾン濃度が0.25mg/literとなった。排水部18へのオゾンの流出を防ぐために、紫外線反応塔8から排出された中間処理水の溶存オゾン濃度が0.05mg/liter未満となるように、オゾン発生装置20のオゾン吹き込み量をコントローラ48により自動で調整した。紫外線ランプ28に異常が見られず、原水中のリン酸カルシウムなどでスケーリングを引き起こしたと考えられたので、水処理装置1を停止させ、紫外線反応塔8及び膜分離装置16を、実施例2と同様、薬液洗浄した。それにより、初期の紫外線透過量に戻すことができた。運転を再開し、所定のオゾン量を吹き込むことによって原水を紫外線で処理し、目標レベルの処理水質にすることができた。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
上述した実施形態では、紫外線反応装置だけによって溶解性の物質を分解したが、紫外線反応装置8と気液分離槽10との間に、溶解性の物質を分解するための反応槽を追加の処理部として設けてもよい。反応槽は、例えば、紫外線反応塔で分解できない又は残留した溶解性の物質(分解の過程で生じた比較的低分子量の炭化水素、アルデヒド類、ケトン類、あるいはOHラジカルの生成過程でわずかに生じた過酸化水素等)を除去する触媒、イオン交換樹脂、活性炭等を含むことができる。
また、分解性能を高めるために、紫外線反応装置8でOHラジカルに変換できるオゾンの量よりも過剰なオゾンをオゾン注入装置によって注入して反応を促進させ、膜分離装置16の手前に、オゾンを除去する曝気装置を設けて、過剰なオゾンを除去してもよい。
また、紫外線反応装置8の出口における水質等に応じて適宜反応槽を追加してもよい。
【0037】
また、紫外線の照射が停止したり、紫外線反応装置8内の紫外線透過量が低下したりするなどの状態になると、0.05mg/liter以上の溶存オゾン濃度を有する処理水が排出部18に流出することになり、処理水は飲料水として適さない。必要に応じて、紫外線照射後にOHラジカルに変換されなかったオゾンの滞留時間を長くして汚染物質の分解を促進させる追加の処理部として反応槽を設けると共に、中間処理水の溶存オゾン濃度を0.05mg/liter未満にするようにオゾンを反応槽内で曝気してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による水処理装置のシステム概略図である。
【図2】紫外線反応装置の第1の変形例の概略図である。
【図3】紫外線反応装置の第2の変形例の概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 水処理装置
6 オゾン注入装置
8 紫外線反応装置
10 気液分離槽
14 膜
16 膜分離装置
20 オゾン発生装置
30 発光剤
32 光センサ
34 紫外線センサ
46 オゾン濃度モニター
48 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質及び濁りを含む原水にオゾンを注入するオゾン注入部と、
前記オゾン注入部の下流側に接続され、且つ、オゾンを注入した原水に紫外線を照射することにより汚染物質を分解して、原水を中間処理水にする紫外線反応部と、
前記紫外線反応部の下流側に接続され、中間処理水を濾過する膜を有する膜分離部と、を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記紫外線反応部の上流側における原水中の溶存オゾン濃度が0.05〜100mg/literの範囲にあり、前記膜分離部の上流側における中間処理水中の溶存オゾン濃度が0.05mg/liter未満である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記紫外線反応部と前記膜分離部との間に追加の処理部が接続される、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
更に、紫外線の照射が停止したこと、又は、前記紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出可能なコントローラを有し、
前記コントローラは、紫外線の照射が停止したこと、又は、前記紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出したとき、前記膜への流入を閉鎖して前記膜による固液分離を停止させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
更に、紫外線の照射が停止したこと、又は、前記紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出可能であるコントローラと、
前記コントローラに接続され且つ前記膜分離部の上流側直前における中間処理水の溶存オゾン濃度を検出するオゾン濃度検出器と、を有し、
前記オゾン注入部は、前記コントローラに接続されたオゾン発生装置を有し、
前記コントローラは、紫外線の照射が停止したこと、又は、前記紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出したとき、前記膜分離部の上流側直前における中間処理水の溶存オゾン濃度が0.05mg/liter未満に維持されるように前記オゾン発生装置を制御する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
更に、紫外線の照射が停止したこと、又は、前記紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出可能であるコントローラを有し、
前記オゾン注入部は、前記コントローラに接続されたオゾン発生装置を有し、
前記コントローラは、紫外線の照射が停止したこと、又は、前記紫外線反応部内の紫外線透過量が減少したことを検出したとき、前記オゾン発生装置を停止させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記膜分離部の膜の材質がポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、又はセルロースである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
汚染物質及び濁りを有する原水にオゾンを注入する工程と、
オゾンが注入された原水に紫外線を照射して、オゾンをラジカル種に変換し、ラジカル種によって汚染物質を分解して、原水を中間処理水にする工程と、
中間処理水を膜によって濾過して、濁りを除去する工程と、を有することを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−21408(P2007−21408A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208695(P2005−208695)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】