説明

水処理装置及び水処理方法

【課題】処理水中に溶存する酸素の除去効率を向上できる水処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】バラストタンク3と、バラストタンク3に貯留されたバラスト水に窒素ガスのマイクロバブルを供給するマイクロバブル供給手段18と、を備えるバラスト水処理装置1Aにする。この装置1Aでは、バラストタンク3内のバラスト水に窒素ガスのマイクロバブルが供給される。マイクロバブルは非常に細かな超微細気泡であり、バラスト水との接触面積は非常に大きくなる。さらに、マイクロバブルは気泡径が非常に小さいため、互いの結びつきによる気泡径の成長は抑制され、また、浮上速度が小さく、滞留時間が長い。その結果として、バラスト水中に溶存する酸素を効果的に除去でき、酸素除去効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関し、特に、バラスト水として利用される海水や淡水などの溶存酸素を除去する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などでは、目的地となる港に到着して積荷や原油などを降ろすと、出港する前にバラスト水を積み込んで浮力を調整する必要がある。バラスト水は、帰港地に戻って積荷や原油などを積み込む際に不要になり、帰港地に到着すると放出される。バラスト水中には、水生生物や微生物さらには細菌などが棲息しており、バラスト水を帰港地で安易に放出すると、帰港地での生態系を崩し、環境破壊を招く虞がある。このような問題を解消するため、例えば、特許文献1には、バラスト水中の溶存酸素を除去し、バラスト水中に棲息する生物を死滅させる水処理用システムが開示されている。
【0003】
この水処理用システムでは、ベンチュリインジェクタによって処理水中に酸素ストリッピングガスの細かな気泡を生成する。酸素ストリッピングガスは、窒素ガスまたは低酸素濃度の混合ガスからなる。バラスト水中の溶存酸素は、酸素ストリッピングガスの気泡に接触すると、ヘンリーの法則にしたがって気泡に取り込まれ、気泡と一緒にバラスト水から除去される。その結果としてバラスト水中の溶存酸素が減少し、水生生物などが死滅する。
【特許文献1】特表2005−525226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベンチュリインジェクタを利用した上記の水処理用システムでは、バラスト水の酸素除去効率が十分でなかった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、処理水中に溶存する酸素の除去効率を向上できる水処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、ベンチュリインジェクタで生成される気泡は、気泡径が100μmよりも大きな気泡が中心であり、気泡径が比較的大きいため、発生する気泡全体の表面積が小さくなり、処理水との接触面積が小さくなって、酸素除去効率が不十分となることが分かった。特に、処理水中に導入された気泡は、径が大きいほど互いに結びついて大きな気泡に成長しやすいため問題であった。そこで、気泡の径が100μm以下であるマイクロバブルを処理水に導入したところ、酸素除去効率の向上が図れることを見出した。本発明は、上記した知見に基づいて為されたものである。
【0007】
本発明に係る水処理装置は、処理水の貯留槽と、貯留槽に貯留された処理水に不活性ガスのマイクロバブルを供給するマイクロバブル供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、マイクロバブル供給手段によって貯留槽内の処理水に不活性ガスのマイクロバブルが供給される。マイクロバブルは非常に細かな超微細気泡であり、処理水との接触面積は非常に大きくなる。さらに、マイクロバブルは気泡径が非常に小さいため、互いの結びつきによる気泡径の成長は抑制され、また、浮上速度が小さく、滞留時間が長い。その結果として、処理水中に溶存する酸素を効果的に除去でき、酸素除去効率が向上する。
【0009】
さらに、マイクロバブル供給手段は、貯留槽に接続されると共に、処理水を貯留槽に導入する処理水導入ラインと、処理水導入ライン上で処理水に不活性ガスを導入するガス導入ラインと、処理水導入ライン上で処理水中に不活性ガスを加圧状態で溶存させるために加圧する加圧手段と、を有すると好適である。ガス導入ラインによって処理水導入ラインに導入された不活性ガスは、加圧手段での加圧によって処理水中に加圧状態で溶け込む。その処理水が貯留槽内に導入されると、処理水中に溶存する不活性ガスは減圧開放され、マイクロバブルとなって生じる。その結果として、貯留槽内に多量のマイクロバブルを供給でき、マイクロバブルと処理水との接触面積が大きくなって処理水中の酸素除去効率が向上する。
【0010】
また、マイクロバブル供給手段は、貯留槽に接続されると共に、処理水を貯留槽に導入する処理水導入ラインと、処理水導入ライン上で処理水に不活性ガスを導入するガス導入ラインと、不活性ガスが導入された処理水の流動を処理水導入ライン上で妨げる抵抗体と抵抗体を挟むようにして処理水導入ラインの上流側と下流側とを連通する隙間とを有するせん断破砕部と、を有すると好適である。処理水導入ライン上を流動する処理水は、抵抗体に衝突することによって攪拌される。処理水には、不活性ガスが導入されており、処理水が攪拌されると、処理水中に不活性ガスの気泡が生成される。抵抗体によって流動を妨げられた処理水は、隙間を通過する際に流速が増して下流側に噴射される。処理水中に混在する不活性ガスの気泡は、隙間を通過する際にせん断作用を受けて破砕され、マイクロバブルとなって下流側に放出される。その結果として、貯留槽内に多量のマイクロバブルを供給でき、マイクロバブルと処理水との接触面積が大きくなって処理水中の酸素除去効率が向上する。
【0011】
さらに、ガス導入ラインよりも上流側の処理水導入ラインと貯留槽とに接続されると共に、貯留槽内の処理水を処理水導入ラインに返送する処理水返送ラインを更に備えると好適である。処理水は、貯留槽内に一時的に滞留すると、不活性ガスのマイクロバブルの発生によって溶存酸素濃度が低下する。この処理水を処理水導入ラインへ戻して循環させるようにすると、溶存酸素濃度が低下した処理水を利用してマイクロバブルを生成でき、処理時間の経過に伴って溶存酸素を確実に減少させることができる。
【0012】
さらに、上記加圧手段を有するマイクロバブル発生出段を備えた水処理装置では、貯留槽内の液相部の溶存酸素濃度値及び貯留槽内の気相部の酸素濃度値の少なくとも一方を測定する測定手段と、測定手段から出力される測定値に基づいて、加圧手段によってかけられる圧力を制御する圧力制御手段と、を更に備えると好適である。加圧手段によってかけられる圧力が高くなるほど、処理水中に加圧状態で溶存する不活性ガスの量が増え、貯留槽内で大気圧開放されて生成されるマイクロバブルの量は増える。マイクロバブルの生成量を増やすことで、より多くの溶存酸素を除去できる。従って、液相部の溶存酸素濃度値に応じて加圧手段によってかけられる圧力を制御することで、処理水中の溶存酸素濃度に応じた適量のマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。また、気相部の酸素濃度値も処理水中の溶存酸素濃度の変化に応じて変化する。従って、気相部の酸素濃度値に応じて加圧手段によってかけられる圧力を制御することで、処理水中の溶存酸素濃度に応じたマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。
【0013】
さらに、上記せん断破砕部を有するマイクロバブル発生出段を備えた水処理装置では、貯留槽内の液相部の溶存酸素濃度値及び貯留槽内の気相部の酸素濃度値の少なくとも一方を測定する測定手段と、測定手段から出力される測定値に基づいて、処理水の流量を制御する流量制御手段と、を更に備えると好適である。処理水の流量が増えるほど、せん断破砕部によって破砕される不活性ガスの気泡量が増え、貯留槽内に生成されるマイクロバブルの量は増える。マイクロバブルの生成量を増やすことで、より多くの溶存酸素を除去できる。従って、液相部の溶存酸素濃度値に応じて処理水の流量を制御することで、処理水中の溶存酸素濃度に応じた適量のマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。また、気相部の酸素濃度値も処理水中の溶存酸素濃度の変化に応じて変化する。従って、気相部の酸素濃度値に応じて処理水の流量を制御することで、処理水中の溶存酸素濃度に応じたマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。
【0014】
さらに、流量制御手段を備えた水処理装置では、ガス導入ラインよりも上流側の処理水導入ラインと貯留槽とに接続されると共に、貯留槽内の処理水を処理水導入ラインに返送する処理水返送ラインを更に備え、流量制御手段は、処理水返送ライン及び前記処理水導入ラインを通って循環する処理水の循環流量を制御すると好適である。処理水を循環させると、溶存酸素濃度が低下した処理水を利用してマイクロバブルを生成でき、処理時間の経過に伴って溶存酸素は確実に減少する。その結果として、液相部の溶存酸素濃度値及び気相部の酸素濃度値の少なくとも一方の測定値に応じて循環流量を制御することで、処理時間の経過に伴って減少する溶存酸素濃度に応じた適量のマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。
【0015】
また、本発明は、貯留槽に蓄えられた処理水中の溶存酸素を除去する水処理方法において、貯留槽に貯留された処理水に不活性ガスのマイクロバブルを供給することを特徴とする。
【0016】
この水処理方法によれば、不活性ガスをマイクロバブルとして処理水中に供給するので、処理水との接触面積を非常に大きくできる。さらに、マイクロバブルは気泡径が非常に小さいために、互いの結びつきによる気泡径の成長は抑制される。その結果として、処理水中に溶存する酸素を効果的に除去でき、酸素除去効率が向上する。
【0017】
さらに、上記水処理方法では、貯留槽に導入される処理水中に加圧処理により不活性ガスを加圧状態で溶存させると共に、不活性ガスが加圧状態で溶存する処理水を貯留槽内で減圧開放すると好適である。この方法によれば、貯留槽内に多量のマイクロバブルを発生させることが可能になり、マイクロバブルと処理水との接触面積を大きくできて、処理水中の酸素除去効率が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水処理装置及び水処理方法によれば、処理水中に溶存する酸素の除去効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る水処理装置及び水処理方法の好適な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0020】
図1は、第1実施形態に係るバラスト水処理装置を示すブロック図である。バラスト水処理装置1Aは原油タンカーなどの船舶に搭載され、海水をバラスト水(処理水)として貯留するためのバラストタンク3を備えている。バラストタンク3は、タンカーの長さ方向に仕切られて多数の空間を形成しており、図1では、その一つを示している。バラストタンク3には、バラスト水の導入ライン(処理水導入ライン)5と、バラストタンク3内のバラスト水を導入ライン5に返送するための循環ライン7(処理水返送ライン)とが接続されている。
【0021】
導入ライン5は、バラスト水として用いる海水を汲み上げて移送するための配管及び管路を開閉する導入水制御弁9などを備えている。また、循環ライン7は、バラストタンク3の底部と導入ライン5とを連通するように接続された配管及び管路を開閉する循環水制御弁11などを備えている。
【0022】
導入ライン5の下流端部には、バラスト水を一時的に滞留させるための加圧タンク13が設けられており、加圧タンク13には窒素ガス(不活性ガス)が導入されるガス導入ライン15が接続されている。ガス導入ライン15には図示しない逆止弁が設けられており、加圧タンク13内の気相部は閉鎖空間内に閉じこめられた状態になる。
【0023】
導入ライン5上には、加圧タンク13内にバラスト水を送り込む加圧ポンプ(加圧手段)17が設けられている。加圧ポンプ17は、渦巻きポンプ、ディフューザポンプ、カスケードポンプなどのポンプであり、加圧タンク13内が大気圧に比べて高圧状態になるようになるように加圧する。加圧ポンプ17による加圧処理により、加圧タンク13内に供給された窒素ガスは、加圧状態でバラスト水中に溶け込むようになる。
【0024】
加圧タンク13には、バラストタンク3に接続された放出管19が設けられている。放出管19の下流端にはノズルが設けられている。バラストタンク3内は大気圧程度の圧力に維持されている。バラスト水は、ノズルからの放出によってバラストタンク3内で減圧開放され、バラスト水中に溶存する窒素はマイクロバブルとなって発生する。マイクロバブルとは、ミリバブル(直径がミリメートルレベルの気泡)に比して、より微細な気泡であり、具体的には、気泡径が0.1μm〜100μm(より好ましくは1μm〜50μm)である超微細気泡である。
【0025】
導入ライン5、ガス導入ライン15、加圧タンク13及び加圧ポンプ17によってマイクロバブル供給手段18が構成される。窒素ガスからなるマイクロバブルは、バラスト水中の溶存酸素(「DO」ともいう。)を取り込みながら浮上し、バラストタンク3内の気相部に放出され、その結果、溶存酸素が除去される。バラストタンク3の天井部には、バラストタンク3内を大気圧状態に維持するために脱気部23が設けられている。気相部に放出された酸素を含むガスは、脱気部23から適宜に排出される。
【0026】
また、バラスト水処理装置1Aは、導入ライン5上の導入水制御弁9と循環ライン7上の循環水制御弁11とを開閉制御する制御手段24を備えている。制御手段24は、図示しないセンサを介してバラストタンク3内の水位を監視している。制御手段24は、バラストタンク3内の水位が所定の高さに達すると、導入水制御弁9を閉じる。
【0027】
制御手段24は、酸素濃度測定手段25及び溶存酸素測定手段27に無線または有線によって接続されている。酸素濃度測定手段25は、バラストタンク3の天井付近に設けられ、溶存酸素測定手段27は、バラストタンク3に設けられている。
【0028】
酸素濃度測定手段25は、バラストタンク3内の気相部の酸素濃度を測定し、測定値を示す信号を制御手段24に向けて出力する。溶存酸素測定手段27は、バラストタンク3内に蓄えられたバラスト水中の溶存酸素を測定し、測定値を示す信号を制御手段24に向けて出力する。
【0029】
制御手段24は、加圧ポンプ17に有線または無線によって接続されている。制御手段24は、圧力制御手段24aとして機能し、溶存酸素測定手段27から出力された測定値に基づいて、加圧ポンプ17の駆動を制御し、加圧タンク13内にかけられる圧力を制御する。
【0030】
例えば、海から汲み上げられたバラスト水をバラストタンク3に導入している場合には、圧力制御手段24aは、加圧タンク13内の圧力が初期設定圧(例えば、0.45MPa)に維持されるように加圧ポンプ17を制御している。しかしながら、圧力制御手段24aは、溶存酸素測定手段27からの測定値が基準となる溶存酸素濃度値よりも大きい場合には、加圧タンク13内の圧力が初期設定圧よりも高圧(例えば、0.6Mpa)になるように加圧ポンプ17の駆動を制御する。すると、バラスト水中に加圧状態で溶存する窒素ガスの量が増え、バラスト水を減圧開放した際に生成されるマイクロバブルの量が増える。その結果として、単位時間当りに生成されるマイクロバブルとバラスト水との接触面積が拡大して酸素除去効率が向上し、バラストタンク3内の溶存酸素濃度を短時間で低下させる。
【0031】
また、制御手段29は、溶存酸素測定手段27から出力された測定値が所定値よりも高いと判断した場合には、循環水制御弁11を開いてバラスト水を船体内で循環させる。循環ライン7は、加圧ポンプ17よりも上流側の導入ライン5に接続されている。循環ライン7を通って導入ライン5に返送されたバラスト水は、マイクロバブルの生成に利用される。バラスト水導入時の溶存酸素の除去が不十分な場合や、溶存酸素濃度が何らかの要因によって上昇した場合などであっても、バラスト水を循環させることでバラスト水中の溶存酸素濃度を効果的に低減できる。
【0032】
さらに、バラスト水が船体内で循環している場合には、制御手段29の圧力制御手段24aは、溶存酸素測定手段27からの測定値が、所定値、すなわち、生物が死滅する環境であると判断できる溶存酸素濃度値よりも低くなると、加圧ポンプ17の駆動を停止する。その結果として、加圧ポンプ17の無駄な駆動を防止でき、効率的な処理が可能になる。
【0033】
また、圧力制御手段24aは、溶存酸素濃度値に加えて、酸素濃度測定手段25から出力された測定値も監視しており、酸素濃度測定手段25及び溶存酸素測定手段27の各測定値を複合させて加圧ポンプ17の駆動を制御している。バラスト水中の溶存酸素濃度が増えると、マイクロバブルと一緒にバラストタンク3の気相部に放出される酸素の量も増えて気相部の酸素濃度が高くなる。逆に、バラスト水中の溶存酸素濃度が減少すると、気相部の酸素濃度は低下する。このように、バラストタンク3内の気相部の酸素濃度は、バラスト水中の溶存酸素濃度の変化に応じて変化する。圧力制御手段24aは、溶存酸素濃度値と酸素濃度値との両方の測定値に基づいて加圧ポンプ17の駆動を制御することにより、溶存酸素測定手段27に何らかの不具合が生じた場合でもバラスト水中の溶存酸素を確実に低減させることができる。なお、圧力制御手段24aによる加圧ポンプ17の駆動制御は、溶存酸素測定手段27及び酸素濃度測定手段25のどちらか一方のみから出力された測定値に基づいて行ってもよい。
【0034】
バラストタンク3の天井部には、脱酸素剤を収容するケースを有する脱酸素手段31が固定されている。脱酸素剤は、酸化作用を利用して気相部の酸素を除去する物質からなる。脱酸素剤を収容するケースは、脱酸素手段31から取り外して交換できるように構成されている。脱酸素手段31を設けることにより、気相部における酸素ガスの分圧を予め低く抑えておくことができ、酸素ガスがバラスト水中に溶解してしまうことを防止できる。なお、脱酸素手段31に代えて、窒素ガスや二酸化炭素ガスなどをバラストタンク3の気相部に送り込み、気相部の酸素ガスの分圧を低下させるようにした脱酸素手段を設けてもよい。
【0035】
以上のバラスト水処理装置1Aによって実行されるバラスト水処理方法について説明する。バラスト水処理装置1Aの圧力制御手段24aは、加圧ポンプ17を駆動制御し、マイクロバブルをバラストタンク3内に供給するために加圧処理を施す。加圧タンク13内の圧力は、この加圧処理によって、所定の圧力まで高められる。所定の圧力とは、バラスト水中に窒素ガスが加圧状態で溶存し、そのバラスト水が大気圧下で減圧開放された際に窒素ガスのマイクロバブルが発生する圧力である。具体的には、所定の圧力は、0.2MPa〜0.8MPaの範囲に含まれる圧力であるが、加圧ポンプ17の駆動に要するエネルギーとマイクロバブルの生成量とを考慮すると、0.45MPa〜0.6MPaの範囲に含まれる圧力とするのが好ましい。
【0036】
窒素ガスを加圧状態で溶存するバラスト水は、ノズルを介してバラストタンク3内に減圧開放され、バラストタンク3内には窒素ガスのマイクロバブルが生成される。マイクロバブルにはバラスト水中の溶存酸素が取り込まれ、マイクロバブルと一緒にバラスト水中の溶存酸素が除去される。バラスト水中の溶存酸素を除去することにより、バラスト水中に棲息する生物を死滅させることが可能になる。
【0037】
以上のバラスト水処理装置1A及びバラスト水処理方法によれば、マイクロバブル供給手段18によってマイクロバブルをバラストタンク3内のバラスト水に供給できる。マイクロバブルは超微細な気泡であり、従来の水処理用システムで生成されていたミリバブルに比べてバラスト水との接触面積は非常に大きくなる。さらに、マイクロバブルは気泡径が非常に小さいため、互いの結びつきによる気泡径の成長は抑制される。また、マイクロバブルは浮上速度が小さいので滞留時間が長くなる。その結果として、単位時間当りの溶存酸素の除去効率は高まり、処理時間の短縮につながる。さらに、処理時間の短縮によって窒素ガスなどの不活性ガスの使用量の低減、バラスト水の処理に伴う各装置の駆動時間の短縮、電力費の削減及び維持管理コストの削減などが可能になる。
【0038】
さらに、バラスト水処理装置1Aでは、バラスト水に導入された窒素ガスは、加圧ポンプ17での加圧によってバラスト水中に加圧状態で溶け込む。そのバラスト水は、バラストタンク3内で減圧開放され、マイクロバブルとなって発生する。その結果として、バラストタンク3内に多量のマイクロバブルを供給でき、マイクロバブルと処理水との接触面積が大きくなって処理水中の酸素除去効率が向上する。
【0039】
さらに、バラスト水処理装置1Aの圧力制御手段24aは、バラストタンク3内の液相部の溶存酸素濃度値及び気相部の酸素濃度値を監視しており、各測定値に基づいて加圧タンク13内の圧力を制御している。その結果として、バラスト水中の溶存酸素濃度及び気相部の酸素濃度に応じたマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。特に、本実施形態では、液相部の溶存酸素濃度値及び気相部の酸素濃度値の両方を複合して監視するため、酸素濃度測定手段25または溶存酸素測定手段27のいずれか一方に不具合が生じた場合であっても、バラスト水中の溶存酸素濃度に応じたマイクロバブルの生成が可能であり、バラスト水中の溶存酸素を確実に除去できる。
【0040】
さらに、バラスト水処理装置1Aでは、バラストタンク3内に蓄えられているバラスト水中の溶存酸素濃度に応じてバラスト水を船体内で循環させ、循環するバラスト水を利用してマイクロバブルをバラストタンク3内に供給している。その結果として、例えば、バラスト水導入時の溶存酸素の除去が不十分な場合や、航海中に何らかの要因によってバラスト水中の溶存酸素濃度が上昇した場合などであっても、バラスト水中の溶存酸素濃度を効果的に低減できる。特に、バラスト水を循環させる場合には、新たな海水を導入する場合に比べて、処理時間の経過に伴う溶存酸素濃度の低下効率は高くなる。その結果として、バラスト水処理装置1Aでは、短時間で溶存酸素濃度を低下させることができる。
(第2実施形態)
【0041】
次に、第2実施形態に係るバラスト水処理装置について説明する。図2は、第2実施形態に係るバラスト水処理装置を示すブロック図である。なお、第2実施形態に係るバラスト水処理装置1Bは、第1実施形態に係るバラスト水処理装置1Aと同様の構成を備えており、同様の構成については、バラスト水処理装置1Aと同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0042】
バラスト水処理装置1Bは、海水を汲み上げてバラスト水(処理水)としてバラストタンク3内に導入する導入ライン(処理水導入ライン)41と、バラストタンク3内のバラスト水を導入ライン41に返送する循環ライン(処理水返送ライン)43とを備えている。導入ライン41には導入水制御弁45が設けられ、循環ライン43には循環水制御弁47が設けられている。
【0043】
導入ライン41には、窒素ガス(不活性ガス)が導入されるガス導入ライン49が接続されている。ガス導入ライン49よりも下流側の導入ライン41上には、バラスト水と窒素ガスとを混ぜ合わせながら高速で吐出する気液混合ポンプ50が設けられている。
【0044】
導入ライン41の下流端部には、バラストタンク3内に連通している移送管51が設けられている。移送管51には、図3に示すように、管路を塞ぐ板状の抵抗体53A,53B,53Cが、管軸線を直交するように設けられている。上流側の先頭の抵抗体53Aには、弓状の隙間55Aが上部に形成され、2列目の抵抗体53Bには隙間55Bが下部に形成され、3列目の抵抗体53Cには隙間55Cが上部に形成されている。先頭の抵抗体53Aに形成された隙間55Aは、抵抗体53Aを挟むようにして導入ライン41の上流側と下流側とを連通している。同様に、2列目、3列目の抵抗体53B,55Cに形成された隙間55B,55Cも、それぞれ抵抗体53B,55Cを挟むようにして導入ライン41の上流側と下流側とを連通している。気液混合ポンプ50から吐出されたバラスト水は、先頭の抵抗体53Aに衝突した後、各抵抗体53A,53B,53Cの隙間55A,55B,55Cを通って蛇行しながら流動する。抵抗体53A,53B,53C及び隙間55A,55B,55Cによってせん断破砕部57が構成される。
【0045】
図2に示すように、導入ライン41、ガス導入ライン49、気液混合ポンプ50及びせん断破砕部57によってマイクロバブル供給手段58が構成される。導入ライン41を流動するバラスト水は、気液混合ポンプ50の駆動によって高速でせん断破砕部57の抵抗体53A(図3参照)に衝突し、攪拌される。バラスト水には、窒素ガスが導入されており、バラスト水が攪拌されると、バラスト水中に窒素ガスの微細気泡が生成される。抵抗体53Aによって流動を妨げられたバラスト水は、隙間55Aを通過する際に流速が増して下流側に噴射され、さらに、蛇行しながら2列目、3列目の抵抗体53B,53Cの各隙間55B,55Cを通過する。バラスト水中に混在する窒素ガスの微細気泡は、各隙間55A,55B,55Cを通過する際にせん断作用を受けて破砕され、マイクロバブルとなって下流側に放出される。その結果として、バラストタンク3内に多量のマイクロバブルが供給され、単位時間当りに生成されるマイクロバブルとバラスト水との接触面積が大きくなってバラスト水中の酸素除去効率が向上する。
【0046】
また、バラスト水処理装置1Aは、導入ライン41上の導入水制御弁45と循環ライン43上の循環水制御弁47とを開閉制御する制御手段59を備えている。制御手段59は、図示しないセンサを介してバラストタンク3内の水位を監視している。制御手段59は、バラストタンク3内の水位が所定の高さに達すると、導入水制御弁45を閉じる。
【0047】
制御手段59は、第1実施形態に係るバラスト水処理装置1Aと同様に、酸素濃度測定手段25及び溶存酸素測定手段27に無線または有線によって接続されている。さらに、制御手段59は、気液混合ポンプ50に有線または無線によって接続されている。
【0048】
制御手段59は、流量制御手段59aとして機能し、溶存酸素測定手段27から出力された測定値に基づいて、気液混合ポンプ50の駆動を制御し、導入ライン41を流動するバラスト水の流量を制御する。例えば、気液混合ポンプ50から吐出されるバラスト水の管内流速が上昇すると、せん断破砕部57に送り込まれるバラスト水の流量が増え、せん断破砕部57で生成されるマイクロバブルの量は増える。流量制御手段59aは、溶存酸素測定手段27から出力された測定値及び酸素濃度測定手段25によって測定された測定値を複合して監視し、溶存酸素濃度に応じた適量のマイクロバブルを生成できるように気液混合ポンプ50の駆動を制御している。
【0049】
また、制御手段59は、溶存酸素測定手段27から出力された測定値が所定値よりも高いと判断した場合には、循環水制御弁47を開いてバラスト水を船体内で循環させる。循環ライン43は、気液混合ポンプ50よりも上流側の導入ライン41に接続されている。循環ライン43を通って導入ライン41に返送されたバラスト水は、マイクロバブルの生成に利用される。バラスト水導入時の溶存酸素の除去が不十分な場合や、溶存酸素濃度が何らかの要因によって上昇した場合などであっても、バラスト水を循環させることでバラスト水中の溶存酸素濃度を効果的に低減できる。
【0050】
さらに、バラスト水が船体内で循環している場合には、制御手段59の流量制御手段59aは、溶存酸素測定手段27や酸素濃度測定手段25からの測定値に応じて気液混合ポンプ50の駆動を制御する。すなわち、流量制御手段59aは、溶存酸素濃度が何らかの要因によって上昇した場合などには、バラスト水の循環流量を増加させ、バラストタンク3内に供給されるマイクロバブルの量を増やす。逆に、流量制御手段59aは、溶存酸素濃度が、所定値、すなわち、生物が死滅する環境であると判断できる溶存酸素濃度値よりも低くなると、バラスト水の循環を停止させる。このように、バラストタンク3の液相部の溶存酸素濃度値及び気相部の酸素濃度値の各測定値に応じてバラスト水の循環流量を制御することにより、処理時間の経過に伴って減少する溶存酸素濃度に応じたマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。
【0051】
なお、本実施形態に係る流量制御手段59aは、溶存酸素測定手段27及び酸素濃度測定手段25から出力された各測定値を複合的に関して、気液混合ポンプ50の駆動制御を行ってバラスト水の流量、特に循環流量を制御している。しかしながら、流量制御手段59aは、溶存酸素測定手段27及び酸素濃度測定手段25のどちらか一方のみから出力された測定値に基づいて、気液混合ポンプ50の駆動制御を行うようにしてもよい。
【0052】
バラスト水処理装置1Bによれば、バラスト水処理装置1Aと同様に、単位時間当りの溶存酸素の除去効率は高まり、処理時間の短縮につながる。さらに、処理時間の短縮によって窒素ガスなどの不活性ガスの使用量の低減、バラスト水の処理に伴う各装置の駆動時間の短縮、電力費の削減及び維持管理コストの削減などが可能になる。さらに、バラスト水処理装置1Bでは、せん断破砕部57を備えたマイクロバブル供給手段58により、バラストタンク3内に多量のマイクロバブルを発生させることが可能になり、マイクロバブルと処理水との接触面積が大きくなって処理水中の酸素除去効率が向上する。
【0053】
さらに、バラスト水処理装置1Bの流量制御手段59aは、バラストタンク3内の液相部の溶存酸素濃度値または気相部の酸素濃度値を監視しており、各測定値に基づいてバラスト水の流量、特に循環流量を制御している。その結果として、バラスト水中の溶存酸素濃度及び気相部に残存する酸素ガスに応じたマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。
【0054】
さらに、バラスト水処理装置1Bでは、バラストタンク3内に蓄えられているバラスト水中の溶存酸素濃度に応じてバラスト水を船体内で循環させ、循環するバラスト水を利用してマイクロバブルをバラストタンク3内に供給している。特に、バラスト水処理装置1Bでは、バラスト水中の溶存酸素濃度に応じて循環流量を制御している。その結果として、バラスト水処理装置1Bでは、処理時間の経過に伴って減少する溶存酸素濃度に応じたマイクロバブルの生成が可能になり、酸素除去効率が向上する。
【0055】
以上、本発明に係る水処理装置に関して、船舶に搭載されるバラスト水処理装置を例にして説明した。しかしながら、本発明は上記各実施形態に限定されない。例えば、バラスト水用の海水などを汲み上げて貯留するタンク(貯留槽)を港に設置し、このタンク内の処理水にマイクロバブルを供給するマイクロバブル供給手段を設けた水処理装置にしてもよい。
【0056】
また、せん断破砕部を構成する抵抗体及び隙間に関しては、上記の実施形態に限定されず、管路を塞ぐ抵抗体の中央に円形のオリフィス(隙間)を設けたり、単数または複数のスリット(隙間)を抵抗体に設けるようにしてもよい。
【0057】
また、不活性ガスは、窒素ガスの他に、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどであってもよい。不活性ガスは、経済性や取り扱いの容易生などを勘案して適宜に選択できる。なお、水に対する溶解度が大きいほど処理効率が向上する。この溶解度は、気温25°C、気圧1atmの状態において、高い方から順に示せば、二酸化炭素は1.05(ml/水−ml)、アルゴンは0.031(ml/水−ml)、窒素は0.015(ml/水−ml)、ヘリウムは0.009(ml/水−ml)であり、酸素は0.029(ml/水−ml)である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバラスト水処理装置のブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るバラスト水処理装置のブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るせん断破砕部を示し、(a)はせん断破砕部の側断面図、(b)は(a)のb−b線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B,1C…バラスト水処理装置、3…バラストタンク、5,41…導入ライン(処理水導入ライン)、7,43…循環ライン(処理水返送ライン)、15,49…ガス導入ライン、17…加圧ポンプ(加圧手段)、18,58…マイクロバブル供給手段、25…酸素濃度測定手段(測定手段)、27…溶存酸素測定手段(測定手段)、24,59…制御手段、24a…圧力制御手段、59a…流量制御手段、53A,53B,53C…抵抗体、55A,55B,55C…隙間、57…せん断破砕部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水の貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された前記処理水に不活性ガスのマイクロバブルを供給するマイクロバブル供給手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記マイクロバブル供給手段は、
前記貯留槽に接続されると共に、前記処理水を前記貯留槽に導入する処理水導入ラインと、
前記処理水導入ライン上で前記処理水に前記不活性ガスを導入するガス導入ラインと、
前記処理水導入ライン上で前記処理水中に前記不活性ガスを加圧状態で溶存させるために加圧する加圧手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記マイクロバブル供給手段は、
前記貯留槽に接続されると共に、前記処理水を前記貯留槽に導入する処理水導入ラインと、
前記処理水導入ライン上で前記処理水に前記不活性ガスを導入するガス導入ラインと、
前記不活性ガスが導入された前記処理水の流動を前記処理水導入ライン上で妨げる抵抗体と前記抵抗体を挟むようにして前記処理水導入ラインの上流側と下流側とを連通する隙間とを有するせん断破砕部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項4】
前記ガス導入ラインよりも上流側の前記処理水導入ラインと前記貯留槽とに接続されると共に、前記貯留槽内の前記処理水を前記処理水導入ラインに返送する処理水返送ラインを更に備えたことを特徴とする請求項2または3記載の水処理装置。
【請求項5】
前記貯留槽内の液相部の溶存酸素濃度値及び前記貯留槽内の気相部の酸素濃度値の少なくとも一方を測定する測定手段と、前記測定手段から出力される測定値に基づいて、前記加圧手段によってかけられる圧力を制御する圧力制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項6】
前記貯留槽内の液相部の溶存酸素濃度値及び前記貯留槽内の気相部の酸素濃度値の少なくとも一方を測定する測定手段と、前記測定手段から出力される測定値に基づいて、前記処理水の流量を制御する流量制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項3記載の水処理装置。
【請求項7】
前記ガス導入ラインよりも上流側の前記処理水導入ラインと前記貯留槽とに接続されると共に、前記貯留槽内の前記処理水を前記処理水導入ラインに返送する処理水返送ラインを更に備え、
前記流量制御手段は、前記処理水返送ライン及び前記処理水導入ラインを通って循環する前記処理水の循環流量を制御することを特徴とする請求項6記載の水処理装置。
【請求項8】
貯留槽に蓄えられた処理水中の溶存酸素を除去する水処理方法において、
前記貯留槽に貯留された前記処理水に不活性ガスのマイクロバブルを供給することを特徴とする水処理方法。
【請求項9】
前記貯留槽に導入される前記処理水中に加圧処理により不活性ガスを加圧状態で溶存させると共に、前記不活性ガスが加圧状態で溶存する前記処理水を前記貯留槽内で減圧開放することを特徴とする請求項8記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−188502(P2008−188502A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23268(P2007−23268)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】