説明

水処理装置

【課題】 排水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水を移送する浄化槽用水中ポンプを備えた水処理装置のコスト低減を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 排水処理装置100の放流ポンプ槽200において、単一の水中ポンプを設けるとともに、当該水中ポンプの作動が異常であることを報知する警報装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理技術に係り、詳しくは排水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水を移送する浄化槽用水中ポンプを備えた水処理装置の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水貯留領域に貯留された水を水中ポンプを用いて移送する水処理技術が種々知られている。例えば、下記特許文献1に記載の水処理装置では、互いに直列接続された複数の水中ポンプを用いて水貯留領域の水の排出処理を行う構成が開示されている。
【特許文献1】特開2004−156559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の水処理装置では、複数台の水中ポンプを用いることによって、いずれかのポンプが故障し停止した場合でも排水を継続する可能性が提示されているが、複数の水中ポンプを用いる構成ゆえ、水処理装置のコストを抑えるのに限界がある。かといって、水処理装置のコストを抑えるべく水中ポンプの台数を減らすと、確かにコストを抑えることが可能となるが、その反面、ポンプ故障の際の対応が遅れることとなり、水処理装置の運転を円滑に行うという本来の目的を全うできない。とりわけ、排水の浄化処理を行う浄化槽、具体的には消毒槽の下流に放流ポンプ槽が配置された構成の浄化槽においては、放流ポンプ故障の際に放流ポンプ槽の水位が上昇し、これによって消毒槽の水位も上昇すると、当該消毒槽の水が上流側の処理領域へ逆流することが懸念される。従って、消毒槽の水が上流側の処理領域へ逆流するのを防止するべく、放流ポンプ故障時の迅速な対応が要請される。また、浄化槽への流入水量が一時的に増加したピーク流入時に複数台の水中ポンプを運転して浄化槽内の水位上昇を防止する構成に対し、コストを抑えるべくこれら水中ポンプの台数を単に減らす場合には、ピーク流入時の流入水量に見合ったポンプ能力の高い大型の水中ポンプにする必要があり、コスト低減効果が小さくなることも考えられる。
そこで本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、排水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水を移送する浄化槽用水中ポンプを備えた水処理装置のコスト低減を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水の浄化処理を行う浄化槽をはじめ、各種の水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水を移送する浄化槽用水中ポンプを備えた水処理装置の構築技術として好適に用いられる。
【0005】
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項1に記載のこの水処理装置は、排水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水を移送する浄化槽用水中ポンプを備えた装置として構成される。本発明の水処理装置は、単一の浄化槽用水中ポンプ、水位検出手段及び警報装置を少なくとも備える。その他、浄化処理等の水処理機能が、本発明の水処理装置に適宜付与される。ここでいう「排水」には、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ各種の設備から排出される排水が含まれる。この「排水」は、浄化処理等の所定の処理がなされた処理後の水を含んでもよいし、処理前の排水そのものであってもよい。
【0006】
本発明の水処理装置では、浄化槽内の所定の水貯留領域に設置される浄化槽用水中ポンプが単一化されている。この単一の浄化槽用水中ポンプは、浄化槽内の水貯留領域を流れる水を移送する水中ポンプとして構成され、当該水貯留領域の水位変動に応じて作動するフロートを有する。このフロートが上側基準位置に達するとポンプ運転状態とされ、当該フロートが下側基準位置に達するとポンプ停止状態とされる。すなわち、このフロートは浄化槽用水中ポンプのオン動作(運転動作)及びオフ動作(停止動作)を切り換える機能を有する。これら上側基準位置及び下側基準位置は、水貯留領域の水位とフロートの位置との相対的な関係において予め適宜に設定される。
【0007】
本発明の水位検出手段は、単一の浄化槽用水中ポンプが設置された水貯留領域の水位を検出する機能を有する。この水位検出手段として、水貯留領域の水位変動に応じて作動するフロートや、水位検出センサ等を適宜用いることができる。
【0008】
本発明の警報装置は、水位検出手段の検出により水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったとき、当該高水位状態に関連する報知情報を報知する機能を有する。
ここでいう「報知情報」は、水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったことに関連する報知情報を広く含むものであり、水貯留領域の水位が規定水位を上回る状態となったこと自体を示す第1の情報はもちろん、当該第1の情報から導くことができる情報、例えば単一の浄化槽用水中ポンプの作動が異常であることを示す第2の情報、また第1の情報と第2の情報をあわせた第3の情報などが含まれる。第1の情報からは、水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったことで水貯留領域内の運転状態(浄化槽用水中ポンプや水位検出手段の運転状態)が正常でないと認識される。第2の情報からは、浄化槽用水中ポンプが正常に作動していないことから水貯留領域内の水の移送機能が低下し、これにより水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったと認識される。このときの規定水位は、予め適宜に設定され、典型的には、浄化槽用水中ポンプがオン動作に切り換る水位(フロートが上側基準位置に達したときの水位)よりも高所に規定水位を設置することができる。この場合、浄化槽用水中ポンプが正常な状態であれば、浄化槽用水中ポンプが運転状態に切り換った後には規定水位よりも低所に水位が形成されるが、当該運転状態に切り換ったにも関わらず規定水位を上回ることから、正常な状態ではないと判定することができる。
なお、本発明では、水位検出手段が規定水位を検出した時点で、水貯留領域の水位が規定水位を上回ったと判定する構成が可能であるが、水位検出手段によるチャタリングや水位変動などを勘案すると、水貯留領域の水位が規定水位を上回る状態が予め設定された所定時間以上維持された場合に、当該規定水位を上回ったと判定するのが好ましい。
また、本発明における警報装置の構成に関しては、ランプ、LED、液晶等の表示装置を用いる構成、音(ブザー等)や音声などを出力するスピーカ等の音出力装置を用いる構成、またこれら表示装置と音出力装置を組み合わせた構成を採り得る。
【0009】
本発明の水処理装置の上記構成によれば、浄化槽用水中ポンプを複数台から単一化した場合であっても、警報装置を設けることにより、作業者は、警報装置の報知動作によって、水貯留領域内の運転状態が正常でないということ、例えば浄化槽用水中ポンプが正常に作動していないことを認識することができ、これによりポンプ故障に迅速に対応することが可能となる。とりわけ、排水の浄化処理を行う浄化槽、具体的には消毒槽の下流に放流ポンプ槽が配置された構成の浄化槽においては、放流ポンプ故障の際に放流ポンプ槽の水位が上昇し、これによって消毒槽の水位も上昇すると、当該消毒槽の水が上流側の処理領域へ逆流することが懸念されるため、放流ポンプ故障時の迅速な対応が要請されるところ、本発明によれば警報装置を用いたポンプ故障時の速やかな対応が有効とされる。また、本発明において、フロートが水中ポンプとユニット化された浄化槽用水中ポンプを用いることによって、水中ポンプ構造が簡素化される。
以上のように、請求項1に記載の水処理装置のこのような構成によれば、水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったとき、当該高水位状態に関連する報知情報を報知する警報装置を設けたうえで、水貯留領域の水の移送を行う浄化槽用水中ポンプを単一化することで、水処理装置のコスト低減を図ることが可能となる。
【0010】
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項2に記載のこの水処理装置では、請求項1に記載の警報装置が、水貯留領域の水位変動に応じて作動する、水位検出手段としての第2のフロートを有する。この警報装置は、第2のフロートが規定水位に対応した位置に達したとき、高水位状態に関連する報知情報を報知するように構成される。このような構成によれば、警報装置側に設けた第2のフロートの動作に応じて当該警報装置が直接的に作動するため、水中ポンプ側に警報装置用の制御回路などを組み込む必要がなく、水中ポンプの汎用性が高まる。これにより、水処理装置の初期コストの低減のみならず、水中ポンプの故障時の交換を含めたランニングコストの低減をも図ることが可能となる。また、本発明において、第2のフロートがユニット化された警報装置を用いることによって、警報装置構造を簡素化することが可能となる。
【0011】
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項3に記載のこの水処理装置では、請求項1または請求項2に記載の警報装置が、報知情報として単一の浄化槽用水中ポンプの作動が異常であることを報知するように構成されている。すなわち、本発明では、水位検出手段の検出により水貯留領域の水位が規定水位を上回る状態となったことを条件に、単一の浄化槽用水中ポンプの作動が異常であることを報知する。このような構成によれば、単一の浄化槽用水中ポンプの作動が異常であることを直接的に報知する警報装置が提供される。
【0012】
(本発明の第4発明)
前記課題を解決する本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項4に記載のこの水処理装置では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の構成において、単一の浄化槽用水中ポンプと警報装置が、電源に接続された一方から他方へと給電を行う給電用ケーブルを介して互いに接続されている。典型的には、電源に接続された警報装置が、更に給電用ケーブルによって単一の浄化槽用水中ポンプに接続され、当該給電用ケーブルを通じて単一の浄化槽用水中ポンプに電源が供給される形態を用いる。また、本発明では、単一の浄化槽用水中ポンプと警報装置が、給電用ケーブルにおいて互いに着脱自在に構成されている。一例として、単一の浄化槽用水中ポンプや警報装置と給電用ケーブルとの接続部分をプラグ差込み式とすることによって、単一の浄化槽用水中ポンプと警報装置とが互いに着脱自在とされる。このような構成によれば、ポンプ故障時にポンプユニットごと警報装置側から取り外し、汎用のポンプに交換することができるためポンプ交換作業が容易になる。
【0013】
(本発明の第5発明)
前記課題を解決する本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項5に記載のこの水処理装置は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の構成において、更に流入水量調整手段を備える。この流入水量調整手段は、水貯留領域に流入する流入水量を、単一の浄化槽用水中ポンプの移送能力に対して概ね合致するように調整する手段として構成される。このような構成によれば、水貯留領域に流入する流入水量が単一の浄化槽用水中ポンプの移送能力を大幅に上回るのを流入水量調整手段によって制限することで、水貯留領域に流入する流入水量が増えて当該水貯留領域が上昇するのを防止することが可能となる。一般家庭などの設置される浄化槽のように、排水の流入量が変動するような浄化槽においては、水貯留領域への流入水量の変動を見込んで水中ポンプの移送能力を高く設定するのが一般的であるが、本発明のような構成によれば、水中ポンプの移送能力を低く抑えることができ、水中ポンプを小型化することで水処理装置の更なるコスト低減を図ることが可能となる。例えば、水貯留領域への流入水量が一時的に増加したピーク流入時に複数台の水中ポンプを運転して水貯留領域の水位上昇を防止する構成に対し、コストを抑えるべくこれら水中ポンプの台数を単に減らす場合には、ピーク流入時の流入水量に見合ったポンプ能力の高い大型の水中ポンプにする必要があり、コスト低減効果が小さくなることも考えられる。そこで、本発明の如く流入水量調整手段を設けることによって、水中ポンプを単一化した場合であっても当該水中ポンプのポンプ能力を抑え小型化することができ、コスト低減効果を高めることが可能となるのである。
【0014】
(本発明の第6発明)
前記課題を解決する本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項6に記載のこの水処理装置は、請求項5に記載の構成において、水貯留領域よりも上流に移流水量調整装置と濾材充填領域の少なくとも一方を備える。移流水量調整装置は、移流水の一部を上流側へ返送することで下流への移流水量を調整する機能を有する。これにより、水貯留領域への流入水量が調整される。また、濾材充填領域は、嫌気処理や好気処理などの生物処理に用いられる生物処理用濾材や担体などが充填された領域として構成される。この濾材充填領域を通過する水は、生物処理用濾材や担体による流通抵抗により移流水量が抑えられ、水貯留領域への流入水量が調整される。本発明では、これら移流水量調整装置と濾材充填領域の少なくとも一方を用いて流入水量調整手段が構成される。このような構成によれば、移流水量調整装置や濾材充填領域を用いて流入水量調整手段を構築した水処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、特に、排水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったとき、当該高水位状態に関連する報知情報を報知する警報装置を設けたうえで、水貯留領域の水の移送を行う浄化槽用水中ポンプを単一化することによって、水処理装置のコスト低減を図ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の「水処理装置」の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される排水(被処理水)の処理を行う水処理装置100について説明するものである。ここで、本発明における水処理装置の一実施の形態の排水処理装置100の処理フローが図1に示され、本実施の形態の排水処理槽100の浄化槽101の内部構成が図2に示される。また、図3には、本実施の形態の放流ポンプ槽200の内部構成が模式的に示される。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施の形態の排水処理槽100は、浄化槽101の内部に各種の浄化処理機構を収容している。この浄化処理機構は、処理工程の順に対応して上流(図1中の左側)から第1嫌気濾床槽110、第2嫌気濾床槽130、担体流動生物濾過槽150、処理水槽180、消毒槽190、放流ポンプ槽200を備える。浄化槽101は、流入管102および流出管103を備えており、流入管102から流入した汚水(被処理排水)は、槽内で連続的に浄化処理されたのち、流出管103に設置された、後述する放流管214を通じて槽外へ放流されるようになっている。なお、本実施の形態では、各槽において処理される汚水(被処理排水)および当該汚水を処理する処理過程において流れる水を「被処理水」ないし「水」と記載する。
【0018】
図2に示すように、第1嫌気濾床槽110及び第2嫌気濾床槽130には、各々濾床112,132が形成され、これらの濾床112,132には、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気分解する嫌気性微生物が付着する所定量の濾材C1,C2が充填されている。本実施の形態では、被処理水が濾床112,132を図2中の矢印方向へ降流することによって被処理水中の有機汚濁物質が嫌気分解されるように構成されている。第1嫌気濾床槽110で処理された水は、いわゆる押し出し流れの原理によって仕切壁の上部に形成された開口114を通じて第2嫌気濾床槽130へ移流する。同様に、第2嫌気濾床槽130で処理された水は、押し出し流れの原理によって仕切壁の上部に形成された開口134を通じて担体流動生物濾過槽150へ移流する。
なお、濾床112,132を通過する水は、濾材C1,C2による流通抵抗により移流水量が抑えられるため、結果としてその下流の放流ポンプ槽200への流入水量が調整されることとなる。この濾床112,132が、本発明における「生物処理用濾材が充填された濾材充填領域」及び「流入水量調整手段」を構成する。
【0019】
担体流動生物濾過槽150には、担体充填領域152が形成されており、この担体充填領域152には有機汚濁物質を好気分解(好気処理)する好気性微生物が付着する所定量の担体170が、槽内を流動できる程度に充填されている。この担体170としては、粒状の中空円筒形に形成された担体を好適に用いる。担体170の流動領域の上下には、担体充填領域152を規定する上部担体移動防止用部材154および下部担体移動防止用部材156が設けられている。これら上部担体移動防止用部材154および下部担体移動防止用部材156は、被処理水の通過は許容するが担体170の通過は防止する多孔板によって構成されている。
【0020】
また、この担体流動生物濾過槽150には、リン成分除去処理用の一対の金属電極302,302を備えたリン除去装置300が設けられている。リン除去装置300の通電時において、一対の金属電極302,302によって陽極および陰極が形成され、陽極側の金属電極302から被排水中へ金属イオン(鉄イオン、アルミニウムイオン等)が供給される。すなわち、各金属電極302は、被排水中へ金属イオンを供給する供給源となる。被排水中へ供給されるこの金属イオンは、リン酸イオンと反応することでリン成分の除去に用いられる。なお本実施の形態では、特に図示しないものの、極性反転回路を有する制御ボックスが設けられており、一対の金属電極302,302の極性を所定時間毎、例えば24時間毎に切り換えることが可能となっている。これにより、各金属電極302が陽極あるいは陰極となり得る。各金属電極302は、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄−アルミニウム合金等によって作製される。
【0021】
更に、この担体流動生物濾過槽150には、担体充填領域152内に散気装置160が設けられており、また担体充填領域152の下方、すなわち散気装置160よりも下方に逆洗装置162が設けられている。
散気装置160は、ブロワ182の吐出部に接続されたエア供給配管184に接続されており、散気運転において担体充填領域152の担体170に好気処理に用いるエア(空気)を供給する構成を有する。散気運転時にエア供給配管184を通じて散気装置160から所定量のエアが供給されると、散気装置160よりも上方に好気処理領域が形成され、散気装置160よりも下方に濾過処理領域が形成される。
一方、逆洗装置162は、ブロワ182の吐出部に接続されたエア供給配管186に接続されており、逆洗運転において担体充填領域152の担体170に逆洗処理を行う際に用いるエア(空気)を供給する構成を有する。逆洗運転時にエア供給配管186を通じて逆洗装置162から所定量のエアが供給されると、担体充填領域152の担体170全体が流動化し、散気運転において被濾過物を濾過した担体170の洗浄処理が行われる。なお、この逆洗装置162から供給されるエア量は、典型的には通常運転時に散気装置160から供給されるエア量よりも多くなるように設定される。
【0022】
担体流動生物濾過槽150において好気分解(好気処理)された水は、一旦処理水槽180に貯留される。この処理水槽180には、エアリフト式の流体移送構造(ポンプ構造)を有する第1エアリフト164および第2エアリフト166が設置されている。
第1エアリフト164は、その吸入部が担体流動生物濾過槽150の底部に配置され、その吐出部が第1嫌気濾床槽110に配置されており、またこの第1エアリフト164にはブロワ182の吐出部に接続されたエア供給配管186が接続されている。逆洗運転時にエア供給配管186を通じて第1エアリフト164に所定量のエアが供給されると、担体流動生物濾過槽150の底部から抜き出された逆洗水が第1嫌気濾床槽110へと移送されるようになっている。
一方、第2エアリフト166は、その吸入部が処理水槽180の底部に配置され、その吐出部が第1嫌気濾床槽110に配置されており、またこの第2エアリフト166にはブロワ182の吐出部に接続されたエア供給配管184が接続されている。散気運転時にエア供給配管184を通じて第2エアリフト166に所定量のエアが供給されると、処理水槽180の底部から抜き出された水が循環水として第1嫌気濾床槽110へと移送されるようになっている。
【0023】
処理水槽180に貯留された水は、流量調整堰188において流量調整がなされたのち消毒槽190へと移流するようになっている。この流量調整堰188は、下流へと移流する移流水の一部を処理水槽180へ戻すことが可能となっており、これにより消毒槽190へ移流する移流水量がコンスタントになるように適宜流量調整(計量)を行う機能を有する。具体的には、図3に示すように、この流量調整堰188は、移流水の一部をV字状堰188aを通じて処理水槽180へ戻すことによって流量調整を行い、流量調整がなされた移流水が、移流管188bを通じて消毒槽190へ移流するように構成されている。この流量調整堰188は、移流水の一部を上流側へ返送することで移流水量を調整する機能を有し、本発明における「移流水量調整装置」及び「流入水量調整手段」を構成する。これにより、処理水槽180よりも下流への供給過剰状態が未然に防止されることとなる。
【0024】
図3に示すように、消毒槽190は消毒剤注入装置192を備えており、当該消毒剤注入装置192から注入される消毒剤によって消毒処理を行う。消毒処理がなされた水は移流管194を通じて放流ポンプ槽200へ移流し、槽外へ放流する前の水として貯留される。
【0025】
図3に示すように、放流ポンプ槽200には、放流用のポンプとしての水中ポンプ210、警報装置220が装着されている。
水中ポンプ210は、水貯留領域である放流ポンプ槽200内の水を移送するべく水中に設置された水中ポンプである。この水中ポンプ210は、本実施の形態では単一の浄化槽用水中ポンプとして構成さる。この水中ポンプ210は、放流ポンプ槽200内の水位変動に応じて作動するポンプ用フロート212(本発明における「フロート」に対応)がユニット化された構成を有し、このポンプ用フロート212の作動に基づいてポンプ起動及びポンプ停止を切り換えるように構成される。この水中ポンプ210が本発明における「単一の浄化槽用水中ポンプ」に相当する。
【0026】
具体的には、このポンプ用フロート212により、水中ポンプ210のオン/オフ作動が制御される。すなわち、放流ポンプ槽200内の水位が高水位側基準水位を上回ると、ポンプ用フロート212が上側基準位置に達して「オン信号」が出力され、水中ポンプ210が起動されてポンプ運転状態とされる。この水中ポンプ210のポンプ運転状態では、放流ポンプ槽200内の水は放流管214を通じて放流されることとなる。そののち、放流ポンプ槽200内の水位が低水位側基準水位を下回ると、ポンプ用フロート212が下側基準位置に達して「オン信号」の出力が停止され、水中ポンプ210が停止されポンプ停止状態とされる。これにより、放流ポンプ槽200内の水位が概ね低水位側基準水位と高水位側基準水位との間となるように調整される。
【0027】
警報装置220は、水貯留領域である放流ポンプ槽200内の水位変動に応じて作動する警報用フロート222を有する。この警報用フロート222は、放流ポンプ槽200内の水位を検出する機能を有し、本発明における「水位検出手段」及び「第2のフロート」を構成する。放流ポンプ槽200内の水位が規定水位を上回ると、警報用フロート222による「オン信号」が出力され、放流ポンプ槽200内の水位が規定水位を下回ると、警報用フロート222による「オン信号」の出力が停止される。なお、放流ポンプ槽200内の水位を検出するこの警報用フロート222にかえて、水位検出センサを用いることもできる。
【0028】
本実施の形態の警報装置220は、この警報用フロート222の作動に基づいて水中ポンプ210の作動が正常か異常かを判定して報知するように構成される。この警報装置220への電源供給は、電源に直接的に接続されたコンセントケーブル224を通じて行われる。この警報装置220が、本発明における「警報装置」に対応している。
【0029】
具体的には、放流ポンプ槽200内の水位が、予め設定された規定水位を上回る高水位状態が所定時間維持されたことを条件に、水中ポンプ210の作動が異常であることを示す報知情報を警報装置220が報知する。この報知情報は、放流ポンプ槽200内の水位が規定水位を上回る高水位状態に関連する報知情報であり、本発明における「報知情報」に対応している。この警報装置220は、特に図示しないものの、判定手段及び報知手段を少なくとも備える構成とされる。判定手段は、放流ポンプ槽200内の水位が規定水位を上回り警報用フロート222による「オン信号」が所定時間以上継続して検出されると、水中ポンプ210の作動が正常でない(異常である)と判定し、それ以外では水中ポンプ210の作動が正常であると判定する。このとき規定水位及び所定時間は、予め適宜に設定される。典型的には、水中ポンプ210がオン動作に切り換る水位(高水位側基準水位)よりも高所に規定水位を設置することができる。「オン信号」の継続性に関しては、警報用フロート222によるチャタリングや水位変動などを勘案すると、「オン信号」がある程度の長さの所定時間継続されたことを判定条件とするのが好ましいが、当該所定時間を微小な値に設定することもでき、このような場合には、警報用フロート222が規定水位を検出した時点で高水位状態が形成されたと瞬時に判定される。
【0030】
警報装置220の上記構成において、水中ポンプ210の作動が正常でないと判定手段が判定した場合に、報知手段がランプ出力及びブザー出力を行う。これにより、水中ポンプ210の作動が正常でないことが作業者に報知される。一旦出力されたランプ及びブザーの停止は、コンセントケーブル224を電源から抜くことによって行うか、あるいは特に図示しないものの、専用の停止ボタンや停止スイッチを用いて行うことができる。この警報装置220の構成に関しては、ランプ、LED、液晶等の表示装置を用いる構成、音(ブザー等)や音声などを出力するスピーカ等の音出力装置を用いる構成、またこれら表示装置と音出力装置を組み合わせた構成を必要に応じて適宜用いることができる。
【0031】
なお、本実施の形態において、警報装置220による報知情報(警報情報)は、少なくとも排水処理装置100の設置場所及びその周辺において出力されればよく、加えて排水処理装置100の運転管理を行う別の場所において更に出力されるようにしてもよい。すなわち、水中ポンプ210故障時の迅速な対応が要請される浄化槽にあっては、当該要請に応えるべく速やかな報知態様が実現されるように報知情報(警報情報)の出力場所を設定するのが好ましい。
【0032】
本実施の形態では、水中ポンプ210の給電用ケーブル(ポンプケーブル)216は、コネクタ230を介して警報装置220に接続されている。従って、水中ポンプ210への電源供給は、警報装置220の上流側のコンセントケーブル224に加え、警報装置220の下流側の給電用ケーブル216を通じて行われる。この給電用ケーブル216が、本発明における「給電用ケーブル」に相当する。
また、本実施の形態では、水中ポンプ210は、給電用ケーブル216のコネクタ230において警報装置220に対し着脱自在とされている。このコネクタ230は、典型的にはプラグ差込み式の構成を有し、作業者によりワンタッチで水中ポンプ210と警報装置220とを分離させることができる。このような構成によれば、水中ポンプの故障時において、故障した水中ポンプを警報装置220から容易に切り離して新しい水中ポンプに交換することで対応可能であるため、ポンプ故障時の対応を速やかに行うことができる。
なお、水中ポンプ210への電源供給を警報装置220側から行う図3に示す形態にかえて、電源に直接的に接続されたコンセントケーブルを通じて行い、警報装置220への電源供給を、水中ポンプ210からの給電用ケーブルを通じて行うように構成することもできる。
【0033】
以上のように、本実施の形態の排水処理装置100によれば、浄化槽用水中ポンプを複数台から単一化した場合であっても、警報装置220を設けることにより、作業者は、警報装置220の報知動作によって、水中ポンプ210が正常に作動していないことを認識することができ、ポンプ故障に迅速に対応することが可能となる。とりわけ、浄化槽101においては、水中ポンプ210故障の際に放流ポンプ槽200の水位が上昇し、これによって消毒槽190の水位も上昇すると、当該消毒槽190の水が上流側の処理領域へ逆流することが懸念される。従って、消毒槽190の水が上流側の処理領域へ逆流するのを防止するべく、水中ポンプ210故障時の迅速な対応が要請される。そこで、本実施の形態によれば、警報装置220を用いた水中ポンプ210故障時の迅速な対応が有効とされる。また、本実施の形態によれば、ポンプ用フロート212が水中ポンプとユニット化された水中ポンプ210を用いることによって、構造が簡素化される。
【0034】
また、本実施の形態によれば、警報装置220側に設けた警報用フロート222の動作に応じて当該警報装置220が直接的に作動するため、水中ポンプ210側に警報装置220用の制御回路などを組み込む必要がなく、水中ポンプ210の汎用性が高まる。これにより、排水処理装置100の初期コストの低減のみならず、水中ポンプ210の故障時の交換を含めたランニングコストの低減をも図ることが可能となる。また、本実施の形態によれば、警報用フロート222がユニット化された警報装置を用いることによって、警報装置構造を簡素化することが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、水中ポンプ210と警報装置220が、給電用ケーブル216において互いに着脱自在に構成されているため、ポンプ故障時に給電用ケーブル216からポンプユニットごと警報装置側から取り外し、汎用のポンプに交換することができるためポンプ交換作業が容易になる。この際、水中ポンプ210及び給電用ケーブル216を交換品と交換することで対応可能であるため、汎用性が高い。
【0036】
また、一般家庭などの設置される浄化槽のように、排水の流入量が変動するような浄化槽101においては、放流ポンプ槽200への流入水量の変動を見込んで水中ポンプ210の移送能力を高く設定するのが一般的であるが、本実施の形態によれば、流量調整堰188や、濾材C1,C2が充填された濾床112,132などの流入量調整手段を用いることによって、水中ポンプ210の移送能力を低く抑えることができ、水中ポンプ210を小型化することで排水処理装置100の更なるコスト低減を図ることが可能となる。例えば、放流ポンプ槽200への流入水量が一時的に増加したピーク流入時に複数台の水中ポンプを運転して水貯留領域の水位上昇を防止する構成に対し、コストを抑えるべくこれら水中ポンプの台数を単に減らす場合には、ピーク流入時の流入水量に見合ったポンプ能力の高い大型の水中ポンプにする必要があり、コスト低減効果が小さくなることも考えられる。そこで、本実施の形態の如く、流量調整堰188や濾床112,132などの流入量調整手段を設けることによって、水中ポンプを単一化した場合であっても当該水中ポンプのポンプ能力を抑え小型化することができ、コスト低減効果を高めることが可能となるのである。
【0037】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0038】
上記実施の形態では、放流ポンプ槽200内の水位が、予め設定された規定水位を上回る状態が所定時間維持されたことを条件に、水中ポンプ210の作動が異常であることを警報装置220が報知する場合について記載したが、本発明では、水貯留領域の水位が規定水位を上回る状態が所定時間維持されたことに関連する種々の報知情報が、警報装置によって報知され得る。当該報知情報としては、本実施の形態の如く単一の浄化槽用水中ポンプの作動が異常であることを示す情報のみならず、水貯留領域の水位が規定水位を上回る状態が所定時間維持されたこと自体を示す情報、またこれらの情報をあわせた情報を用いることができる。
【0039】
また、上記実施の形態では、放流ポンプ槽200に水中ポンプ210及び警報装置220を備えた排水処理装置100について記載したが、水中ポンプ210及び警報装置220の構成は、各種の浄化槽につき、放流ポンプ槽200以外の箇所においても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明における水処理装置の一実施の形態の排水処理装置100の処理フローを示す図である。
【図2】本実施の形態の排水処理槽100の浄化槽101の内部構成を示す図である。
【図3】本実施の形態の放流ポンプ槽200の内部構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0041】
100…排水処理装置
101…浄化槽
102…流入管
103…流出管
110…第1嫌気濾床槽
112,132…濾床
130…第2嫌気濾床槽
150…担体流動生物濾過槽
180…処理水槽
188…流量調整堰
190…消毒室
200…放流ポンプ槽
210…水中ポンプ
212…ポンプ用フロート
214…放流管
216…給電用ケーブル
220…警報装置
222…警報用フロート
224…コンセントケーブル
230…コネクタ
300…リン除去装置
C1,C2…濾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の浄化処理を行う浄化槽において、水貯留領域の水を移送する浄化槽用水中ポンプを備えた水処理装置であって、
前記水貯留領域の水位変動に応じて作動するフロートを有するとともに、当該フロートが上側基準位置に達するとポンプ運転状態とされ、当該フロートが下側基準位置に達するとポンプ停止状態とされる単一の浄化槽用水中ポンプと、
前記水貯留領域の水位を検出する水位検出手段と、
前記水位検出手段の検出により前記水貯留領域の水位が規定水位を上回る高水位状態となったとき、当該高水位状態に関連する報知情報を報知する警報装置と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記警報装置は、前記水貯留領域の水位変動に応じて作動する、前記水位検出手段としての第2のフロートを有し、当該第2のフロートが前記規定水位に対応した位置に達したとき、前記報知情報を報知するように構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、
前記警報装置は、前記報知情報として前記単一の浄化槽用水中ポンプの作動が異常であることを報知するように構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水処理装置であって、
前記単一の浄化槽用水中ポンプと前記警報装置は、電源に接続された一方から他方へと給電を行う給電用ケーブルを介して互いに接続されており、当該給電用ケーブルにおいて互いに着脱自在に構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理装置であって、
前記水貯留領域に流入する流入水量を、前記単一の浄化槽用水中ポンプの移送能力に対して概ね合致するように調整する流入水量調整手段を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水処理装置であって、
前記水貯留領域よりも上流において、移流水の一部を上流側へ返送することで移流水量を調整する移流水量調整装置と、生物処理用濾材が充填された濾材充填領域の少なくとも一方を備え、これら移流水量調整装置と濾材充填領域の少なくとも一方を用いて前記流入水量調整手段を構成することを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−150227(P2006−150227A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344559(P2004−344559)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】