説明

水処理装置

【課題】 ボイラー効率を向上させるための、エマルジョン燃料の製造装置に用いられる水処理装置を提供すること。
【解決手段】
マイクロクラスター化または波動水化した水と油を混合して乳化するエマルジョン燃料の製造設備の一部品であって、板状物で複数に区画されて粒体充填部を構成する粒体保持部材を有し、各区画の高さが粒体相当径の200倍以下、粒体が充填されない空間部の高さが粒体相当径の2倍以上となるように粒体を充填する縦型円筒容器で、水を層流状態で流しマイクロクラスター化する水処理装置により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロクラスター化または波動水化した水と油を混合して乳化するエマルジョン燃料の製造設備のを構成する部品であって、板状物で複数に区画されて粒体充填部を構成する粒体保持部材を有し、各区画の高さが粒体相当径の200倍以下、粒体が充填されない空間部の高さが粒体相当径の2倍以上となるように粒体を充填する縦型円筒容器で、水を層流状態で流しマイクロクラスター化する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、エマルジョン燃料の製造方法や製造装置は多数知られており、例えば、水と界面活性剤の混合流体を作る混合手段と、混合流体に流れを与える送液手段と、混合流体に対して流れ方向と交差する方向の磁場を印加する磁場印加手段とを設けた改質水製造装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、多量の乳化剤を用いず、攪拌翼を不要とし、燃料油中に水を短時間で分散化することのできるエマルジョン燃料の製造方法として、燃料油と添加水を含む混液に二重旋回流を形成することにより攪拌してエマルジョン化を行う方法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、スタティックミキサーで水と燃料油と乳化剤を細かく分断して混合し、この混合エマルジョン燃料をマグネットカスケードポンプに送液するとともに、ポンプの上流と下流を結ぶ戻し配管からエマルジョンの一部をポンプの上流側に戻すことにより微細水滴が均一に分散したエマルジョン燃料を製造する装置が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−263062公報
【特許文献2】特開2006−111666公報
【特許文献3】特開2006−329438公報
【0005】
しかしながら、エマルジョン燃料の製造技術は長い歴史を有し、多数の特許出願がなされているにも拘わらず、実用面での普及が殆ど見られていない。すなわち、このような従来公知のエマルジョン燃料の製造を試験的に実施する場合には問題がないが、操業的に長期間実施する場合には問題が多いと云う状況であった。
【0006】
この大きな理由としては、エマルジョン燃料を使用するボイラーが運転安定性に欠けるということが挙げられる。これを解決すべく、ボイラーの運転条件に左右されずに常に安定運転が出来るような運転安定性改善に向けて、エマルジョン燃料の製造プロセスの検討がなされてはいるが、まだ満足なものが見られないのが現状である。
【0007】
エマルジョン燃料が長期に連続的に使用可能であるためには、操業的にボイラーの運転を安定にさせること、具体的にはボイラーの空気量を絞っても安定に運転ができるようにすることが必要条件である。そのため、古くは乳化剤や乳化機の開発から始まり、近年は種々のマイクロクラスター水や波動性が高められた波動水の開発が進められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、エマルジョン燃料製造の基本プロセスを変更することなく、エマルジョン燃料を安定に連続供給することのできるエマルジョン燃料の製造方法を開発すべく、設備的な観点から工夫を加え、先に特願2007−56040として特許出願した。
【0009】
その概要は、乳化器で連続的に製造したエマルジョン燃料を一旦エマルジョン燃料循環タンクに入れ、エマルジョン燃料を循環しながら、その一部を取り出して燃料として連続的に使用できるようにし、かつそのエマルジョン燃料循環タンクの液面位置によって油供給ポンプ及び水供給ポンプの流量を制御して運転管理を行うものである。そして、水処理装置として、水のマイクロクラスター化に有効とされる粒子径3〜12mmの磁鉄鉱を充填したタンク内に通水して波動水を発生させる水処理装置を用いた。
【0010】
この発明により、エマルジョン燃料を使用してボイラーを安定に運転することが可能になったが、さらに一層ボイラーの安定運転が可能なエマルジョン燃料の製造が望まれる。したがって、本発明の目的は、従来よりもさらにボイラーの長期安定性に優れたエマルジョン燃料の製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記目的を達成すべく、エマルジョン燃料の製造に用いられる水処理装置に着目してさらに詳細に検討した結果、水処理装置において、マイクロクラスター化または波動水化に有効な磁鉄鉱などを用いても、その充填状況によっては得られる波動性などの程度が異なり、エマルジョン燃料製造の安定化に大きく影響することを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、マイクロクラスター化または波動水化した水と油を混合して乳化するエマルジョン燃料製造設備を構成する部品であって、板状物で複数に区画されて粒体充填部を構成する粒体保持部材を有し、各区画の高さが粒体相当径の200倍以下、粒体が充填されない空間部の高さが粒体相当径の2倍以上となるように粒体を充填する縦型円筒容器で、水を層流状態で流してマイクロクラスター化する水処理装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により提供される縦型容器の粒体充填部に粒体が充填された水処理装置を用いると、ボイラーをさらに安定運転可能とするエマルジョン燃料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエマルジョン燃料の製造に用いられる水処理装置は、縦型容器の粒体充填部に粒体が充填されたものである。これを図1に示す。図1において、容器本体1は、板状物2で複数に区画されて粒体充填部3を構成する粒体保持部材を有する。粒体保持部材は具体的には、前述の板状物2を所定の距離で区画するためのスペーサー4で構成され、スペーサーはボルト5及びナット6で緊結される。7はワッシャーである。
【0015】
水入口部8及び水出口部9の形状は限定されるものではないが、通常円錐状に形成され、ボルト10及びナット11で容器本体に緊結される。12はブラケットであり、矢印は水の流れ方向を示すが、上下逆方向に流してもよい。各区画の高さは粒体相当径の200倍以下、好ましくは20倍以下、粒体が充填されない空間部の高さは粒体相当径の2倍以上、好ましくは10倍以上となるように構成される。粒体相当径とは、球体の場合はその平均径、円筒状の場合は概ね長さと径の算術平均の平均値である。図1における仮想線の下側は粒体の充填部を示しており、仮想線と板状物との間は粒体が存在しない部分を示している。13は粒体である。
【0016】
縦型容器は、本質的に、円筒状の容器本体と、板状物で複数に区画されて粒体充填部を構成する粒体保持部材から構成されるが、粒体は脆弱なものが多いので、取り替え作業時の衝撃を少なくする観点から、容器は縦型であることが必要である。粒体保持部材は容器本体から着脱可能に構成しておくと、粒体の交換作業や洗浄を効率よく行うことができる。
【0017】
粒体保持部材の板状物は、上側にメッシュ、下側にメッシュを補強するための多孔板を2枚重ねにして用いるのがよいが、これに限定されるものではない。メッシュの開き目は、概ね粒体の相当径の1/10程度とするのがよい。粒体の比重が大きい場合は、板状物の撓みを防止するために、周囲や下部に補強材を追加してもよい。粒体保持部には、持上げるための治具を取付けてもよい。また、種々の長さのスペーサーを準備しておくことで、粒体の充填比率を変更する場合にも簡単に対処することができる。
【0018】
縦型容器の粒体充填部には粒体が充填されて水処理装置として使用される。粒体としては、各種天然または人工の無機質粒状体、例えば、遠赤外線の放射性多孔質セラミック体や光触媒となるアナターゼ型酸化チタン、磁鉄鉱粒子、活性炭、各種樹脂などを挙げることができる。これらは混合使用しても、各区画ごとに異なる粒体を充填使用してもよく、粒径の異なる粒体を使用してもよい。マイクロクラスター化に有効で高い波動性を得ることができる点で直径4mm〜10mmの球状または円筒状の磁鉄鉱または酸化チタンが好ましい。
【0019】
縦型容器の形状は円筒状が実用的で好ましく、円筒の高さをL、直径をDとしたとき、その比L/Dは2/1〜10/1とするのが好ましい。粒体保持部は容器本体から着脱可能に構成するのが好ましい。本発明の水処理装置は、油を通液することによって油を改質して燃料とする油改質用としても好ましく用いられる。
【0020】
粒体を充填するには、先ず容器内にある取り付けブラケットにボルト、最下段の板状物、スペーサー、ワッシャーを取り付け、所定の粒体を充填する。この作業を繰り返して最上段まで充填し、最上段の板状物、ワッシャー、ナットを取り付けることで、充填作業が終了する。粒体の取替え時はこの逆の作業を行い、粒体を取り出せばよい。
【0021】
本発明の水処理装置において、水を層流で流すとエマルジョン燃料の燃焼効率が上がる。また、ショートパスを防ぎ波動性の高い水が得られる点でも、本発明の水装置装置は有効である。
【0022】
実施例1
内径200mm、各段の高さが100mmの図1に示すような、縦型容器を作製し、粒体として磁鉄鉱を主体とする7mmの球状のものを3段、酸化チタンを主体とする7mmの球状のものを3段交互に充填した。非充填空間は各段約30mmとした。一般の水道水を4〜8L/分の供給量で層流状態で循環し、マイクロクラスター化した。
【0023】
実施例2
油としてA重油を1000L/hrで用いるエマルジョン燃料製造装置において、水を300L/hr、乳化剤を2L/hrで供給し、エマルジョンを製造した。このとき、水処理装置として、内径200mm、各段の高さが100mmの縦型容器に、粒体として磁鉄鉱を主体とする7mmの球状のものを3段、酸化チタンを主体とする7mmの球状のものを3段交互に充填した。非充填空間を各段30mmとして運転したところ、燃焼効率83%で6ケ月以上の長期運転が可能であった。
【0024】
比較例1
非充填空間を各段0mm、すなわち充填高さを600mmとして、水流量300L/hrの層流運転したところ、長期間の運転は可能であったが、エマルジョン燃料による燃焼効率の改善がほとんど見られなかった。
【0025】
比較例2
非充填空間を各段0mm、すなわち充填高さを600mmとして、水流量2000L/hrの乱流運転したところ、短時間の運転は可能であったが、粒体の微紛化などに因りエマルジョン燃料による燃焼効率の改善がほとんど見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により提供される縦型容器の粒体充填部に粒体が充填された水処理装置を用いると、ボイラーの安定運転を確保し、燃焼効率を向上させるエマルジョン燃料を製造することができ、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の水処理装置に用いる縦型容器の概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 容器本体
2 板状物
3 粒体充填部
4 スペーサー
5 ボルト
6 ナット
7 ワッシャー
8 水入口部
9 水出口部
10 ボルト
11 ナット
12 ブラケット
13 粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロクラスター化または波動水化した水と油を混合して乳化するエマルジョン燃料製造設備を構成する部品であって、板状物で複数に区画されて粒体充填部を構成する粒体保持部材を有し、各区画の高さが粒体相当径の200倍以下、粒体が充填されない空間部の高さが粒体相当径の2倍以上となるように粒体を充填する縦型円筒容器で、水を層流状態で流してマイクロクラスター化する水処理装置。
【請求項2】
該縦型円筒容器が、高さ(L)と直径(D)の比L/Dが2/1〜10/1である請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
該粒体が磁鉄鉱または酸化チタンである請求項1記載の水処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−25365(P2010−25365A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183837(P2008−183837)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(305039909)クラレ機工株式会社 (23)
【Fターム(参考)】