説明

水処理装置

【課題】 微生物で廃水を処理する装置の中、気液2相流旋回法によるマイクロバブル等発生装置によって作成されたマイクロバブル等含有水を用いた従来の水処理装置では、汚水や汚泥装置の目詰まりが頻発するために、メンテナンスに多大な時間と費用を要していた。
【解決手段】 上流から順に、流量調整槽、生物反応槽、沈殿槽(又は膜分離槽)、及び処理水槽を具備する装置であって、該処理水槽内に、或いは、処理水槽の水を一部取り出して一旦保留するマイクロバブル等反応槽が付設されておりこのマイクロバブル等反応槽内に、気液2相流旋回法によるマイクロバブル等発生装置が配置されていて、ここで作成されたマイクロバブル等は該流量調整槽に還流されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブル或いはマイクロナノバブルを用いた水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃水(家庭から排出される生活廃水、酪農において排出される糞尿廃水、水産加工施設から排出される加工廃水、湖沼底のヘドロ、等々)を微生物を用いて処理することは広く実施されているところである。また、生物分解では分解されにくい難分解性有機物を処理するために、マイクロバブルやマイクロナノバブルと呼ばれる極小の気泡を併用する技術も既に存在している。
【0003】
マイクロバブルやマイクロナノバブルと呼ばれる極小の気泡(以下マイクロバブル等という)は、上昇速度が非常に小さいので水中に長時間留まる、帯電しているので気泡同士が合体することがなく安定性がある、収縮運動を繰り返しいずれは水に溶解し消滅する、といった特性がある。そして、この特性を利用して様々な分野に応用されており、廃水処理効率を向上させることも知られている。
【0004】
例えば特開2007−222809号公報(特許文献1)に記載された発明もそうであり、ここには、液体が導入された微生物処理槽内へマイクロナノバブルを導入する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−222809号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マイクロバブル等の作成方法は大きく分けて3つの方式がある。
一つは薬品を用いた方法で、結晶ガラクトースを水に溶解した時に結晶の隙間から気泡が析出する現象を利用するものである。パルチミ酸等を安定剤として用い、現在は医療分野において、超音波診断の際のエコー源として利用されている。しかし、薬剤を用いるため広い分野で用いられている方法とはなっていない。
次に、溶解過飽和を用いる方法がある。これは高圧下充分な量の気体(例えば酸素)を溶解させておき、その後圧力を解放してやる時に水から飛び出そうとする過飽和分の気体をノズルから放出してやる方法である。微小気泡として放出するために発生器には微妙な調整若しくはノウハウが求められる。従って作成方法の主流となっていない。
【0007】
主流となっているのは、気液2相流旋回法である。水と気体とを高速で撹拌することでマイクロバブル等を作成するという方法であり、様々な手法が提案実施されているが、原理として共通するのは、まず水に渦流を発生させここに気体を巻き込ませてからその渦流を止めるという過程があることである。この時渦流に巻き込まれていた気体が、ばらけて微小化されることになる。渦流を止める方法としては、障害物を利用する方法もあるが、相対的に停止しているバルク水中に吐き出す方法が簡便である。
【0008】
この旋回する気液を停止水中に吐き出す方法においては、ノズルが必須であるがそのメンテナンスは容易でない。旋回の回転数が非常に高いこと、導入される水として浄水が用いられる例は特に水処理装置においては殆どなくどうしても夾雑物が混入しがちであること、吐出圧が高いこと、等々が理由だと思われるが、清掃や交換を余程頻繁にしなければすぐに故障してしまうというのが実情であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、この点に鑑み鋭意研究の結果遂に本発明を成したものでありその特徴とするところは、上流から順に、流量調整槽、生物反応槽、沈殿槽(又は膜分離槽)、及び処理水槽を具備する装置であって、該処理水槽内に、或いは、処理水槽の水を一部取り出して一旦保留するマイクロバブル等反応槽が付設されておりこのマイクロバブル等反応槽内に、気液2相流旋回法によるマイクロバブル等発生装置が配置されていて、ここで作成されたマイクロバブル等は該流量調整槽に還流されるものである点にある。
【0010】
ここで流量調整槽とは、被処理水を貯留する槽であり、通常は浮遊物等を濾し取って導入される。導入する水量を計測しておき適切な浄化ができるよう調整される。なお流量調整槽は、原水槽とも呼ばれる。そして従来の水処理装置にあっては、この流量調整槽において積極的に水処理がなされるということはなかった。
【0011】
生物反応槽は、微生物によって廃水を処理するための水槽であり、空気を送り込むものであるので曝気槽とも呼ばれる。処理能力を高めるために微生物濃度の調整、或いは汚泥の引き抜き、栄養剤の添加等はこの生物反応槽において行なわれる。
【0012】
沈殿槽は、微生物処理がある程度進んだ段階の被処理水を貯留しておく水槽であり、固形物を沈殿させ抜き取る機能を備えている。なお、沈殿槽の代わりに、膜分離槽が配置されていても良い。即ち本発明においては、沈殿方式のみならず膜分離活性汚泥方式(膜分離法)による水処理装置にも適用可能である。
膜分離法は、沈殿地に代えて精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)を使って活性汚泥と処理水を分離する方法で、処理水にはSS分が極めて少ない処理方式であり、その処理水を利用してマイクロバブル等を発生させれば、目詰まりは起こらない。その意味で言えば本発明に適しているが、本発明は沈殿法・膜分離法のいずれかに限定するものではない。
【0013】
処理水槽は、沈殿槽の液体成分のみを取り出し貯留しておく水槽である。基本的には、沈殿槽の上澄みをオーバーフローさせたものを取り出すことになるが、表面に浮遊物が存在する場合には中間水ということになる。即ちここで言う上澄みは、沈殿する汚泥、或いは浮遊物をできるだけ含まない「比較的清浄な液部分」を意味する。
【0014】
本発明においては、この処理水槽内の水にマイクロバブル等を発生させ活用する。
方策としては大きく2つあり、一つは処理水槽内に直接マイクロバブル等発生装置を配置する形態であり、もう一つは、処理水槽の水を一部取り出して一旦保留するマイクロバブル等反応槽を付設し、この反応槽にマイクロバブル等発生装置を配置するという形態である。
【0015】
前者の形態の場合には、処理水槽内全体がマイクロバブル等含有水となる。そしてその一部を例えばポンプで引き上げ、流量調整槽に還流させるようにする。
後者の場合には、マイクロバブル等反応槽に導入された水のみがマイクロバブル等含有水となり、その全量が流量調整槽に導入される。
両者は、比較的清浄な水でマイクロバブル等含有水を作成するという点、作成されたマイクロバブル等含有水が導入されるのは流量調整槽であるという点で共通するわけであるが、清浄な水でマイクロバブル等含有水を作成するのは、マイクロバブル等発生装置吐出ノズルの目詰まりの頻度を低減することでメンテナンスを容易にするのが目的であり、作成されたマイクロバブル等含有水を、生物反応槽ではなく流量調整槽に送り込むのは、空気過多の状態を作らないためであり、また、流量調整槽自体に処理機能を与えることで、後段の生物反応槽の負荷を軽減し全体としての処理機能の安定を図るためである。
【0016】
マイクロバブル等発生装置の構造については、気液2相流旋回法による発生原理を利用したという点以外に特に限定するものではなく、処理施設の規模や被処理水の種類その他によって適宜採用すれば良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る水処理装置は次に述べるような効果を有する極めて高度な発明である。
(1) マイクロバブル等は、処理水槽にある浄化された水を用いて作成されるので、マイクロバブル等発生装置が汚水や汚泥に接することがない。よって異物による装置の目詰まりが激減する。
(2) マイクロバブル等含有水を、生物反応槽ではなく、これより上段の流量調整槽に導入するものであるので、流量調整槽が水処理機能の一部を担当することになる。よってこれまで通年的安定処理が損なわれる要因となっていた後段の生物反応槽は必然的にその負荷が軽減されることになり、装置全体としての処理機能が安定しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る水処理装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る水処理装置の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る水処理装置1(以下「本発明装置1」という)の一例の模式図である。本発明装置1は、上流から順に、流量調整槽2、生物反応槽3、沈殿槽4、及び処理水槽5を具備する装置である。そして、気液2相流旋回法によるマイクロバブル等発生装置6が設けられておりその吐出ノズル61が処理水槽5内に配備されている。なお、本発明装置1は従来の水処理装置と同様、沈殿槽4に沈殿した沈殿物を引き抜き生物反応槽3に戻してやるためのポンプや移送パイプ、流量や汚泥量を計量する機器類、計量したデータに基づいて移送量を調整するための機構、等を具備するものでありこれらは水処理装置には必要不可欠のものであるが、本発明を説明する上では不要なものであるので、図面においては一部描出しているものの説明・採番を省略している。またこれらの省略は後述する実施例2においても同様である。更に、水処理装置1が沈殿槽4を持たず、代わりに膜分離槽が配置されたものも本発明に属するものとする(図示せず)。
【0020】
マイクロバブル等発生装置6で作成されるマイクロバブル等含有水は、流量調整槽2に還流される。本例の場合は、ポンプ62で吸い上げた後還流パイプ63を通過して流量調整槽2に至るものであり、その水量は図には描出していない揚水量制御機構によって、流量調整槽2に最適な量が導入されるよう制御・調整される。
【0021】
また本例の場合、処理水槽5内には流量調整槽2に還流されなかったマイクロバブル等含有水が常時大量に存在することになるが、これは処理水としてそのまま放流される。従って再利用水として、植物への散水、便器水洗水に用いるとマイクロバブル等含有水ならではの生育効果・洗浄効果等々が期待できる。
【実施例2】
【0022】
次に図2は、本発明装置1の他の例を示す模式図であり、処理水槽5内の処理水全量をマイクロバブル等含有水とするのではなく、その一部を一旦マイクロバブル等反応槽7に導入し、ここに設けられたマイクロバブル等発生装置6でマイクロバブル等含有水を作成するというものである。実施例1の場合と比較すると、マイクロバブル等反応槽7という設備を別途付帯させる必要があるものの、作成するマイクロバブル等含有水が少量で済むため、能力の小さいマイクロバブル等発生装置を用いても高濃度のマイクロバブル等含有水が作成でき、ランニングコストを抑えやすいといった効果がある。
【符号の説明】
【0023】
1 本発明に係る水処理装置
2 流量調整槽
3 生物反応槽
4 沈殿槽
5 処理水槽
6 マイクロバブル等発生装置
61 吐出ノズル
62 ポンプ
63 還流パイプ
7 マイクロバブル等反応槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から順に、流量調整槽、生物反応槽、沈殿槽(又は膜分離槽)、及び処理水槽を具備する装置であって、該処理水槽内に気液2相流旋回法によるマイクロバブル等発生装置が配置されていて、ここで作成されたマイクロバブル等の一部は該流量調整槽に還流されるものであることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
上流から順に、流量調整槽、生物反応槽、沈殿槽(又は膜分離槽)、及び処理水槽を具備する装置であって、処理水槽の水を一部取り出して一旦保留するマイクロバブル等反応槽が付設されており、また該マイクロバブル等反応槽内には気液2相流旋回法によるマイクロバブル等発生装置が配置されていて、ここで作成されたマイクロバブル等は該処理水槽から取り出された水と共に該流量調整槽に還流されるものであることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107045(P2013−107045A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254612(P2011−254612)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(511283837)ウォーターナビ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】