説明

水分散性磁性粒子

【課題】分析診断用プローブとして使用する場合の条件下(高イオン強度、高温)で凝集体形成を起こさない水分散性磁性粒子を製造し、さらに、これを用いて新規な分析診断ツールを提供すること。
【解決手段】磁性粒子と配位結合又は多点の静電的相互作用により結合できる構造を有し、かつ、他の物質と化学結合可能な官能基を有する分散剤で被覆された磁性粒子であって、上記分散剤に、核酸、タンパク質、ポリペプチド又はそのオリゴマー、糖類、又は糖タンパク質が固定されている、水分散性磁性粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性磁性粒子に関する。より詳細には、本発明はターゲット核酸と相補的な配列を有する核酸を固定した水分散性磁性粒子、及びそれを用いた核酸検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超常磁性酸化鉄ナノ粒子(Superparamagnetic iron oxide nanoparticles: SPION)は、分析診断用プローブ、MRIプローブ、ドラッグデリバリー、ハイパーサーミアなどのバイオメディカルへの応用が期待されている。しかし、超常磁性酸化鉄ナノ粒子は粒子同士の付着、凝集体形成が顕著であり、これを防ぐために適当な分散剤を選定する必要がある。さらに、分析診断用プローブとして使用する場合は、全血中、血漿中、血清中での凝集体形成を抑えることが重要である。
【0003】
分析診断用プローブの中でも、核酸のハイブリダイゼーションにより核酸を配列特異的に検出することを考える場合、少なくともイオン強度にして0.1M以上、温度にして50℃以上の環境が必要になると考えられる。
【0004】
超常磁性酸化鉄ナノ粒子の分散剤としては、例えば非特許文献1に記載の低分子分散剤がある。しかし、分散剤と粒子界面との相互作用にカルボン酸を利用しているため、イオン強度が大きく、たんぱく質などの不純物が存在する条件下では分散安定性を保つことができない。
【0005】
また、特許文献1では、モノまたはポリヒドロキシル基またはその双方の基を有する芳香族物質、ケイ酸基を含有する物質、リン酸基を有する物質を分散剤として用いることを報告している。しかし、分散剤と粒子界面との相互作用に注目した設計は行われておらず、分析診断用プローブとして使用する条件下で凝集体形成を防ぐことが可能であるかは不明である。
【0006】
また、特許文献2には、オリゴヌクレオチドを付着した金ナノ粒子を用いた核酸検出方法が開示されている。しかし、この方法では色による検出をおこなっているため、検出前に煩雑な前処理が必要であり、分析診断用プローブとしては不適であった。
【0007】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 127, 5732 (2005)
【特許文献1】特許第3436760号
【特許文献2】特表2004−525607号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、分析診断用プローブとして使用する場合の条件下(高イオン強度、高温)で凝集体形成を起こさない水分散性磁性粒子を製造し、さらに、これを用いて新規な分析診断ツールを提供することを解決すべき課題とした。
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行い、分散剤と粒子界面が配位結合により相互作用している水分散性磁性粒子、及び、分散剤と粒子界面が多点の静電的相互作用により相互作用している水分散性磁性粒子が分析診断用プローブとして使用する条件下(高イオン強度、高温)でも凝集体を形成しないことを発見した。さらに、上記条件を満たす分散剤の中でも化学結合が可能な官能基を有する分散剤を使用し、分析診断のターゲットである核酸の一部と相補的な配列を有する核酸を固定することに成功して、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、磁性粒子と配位結合又は多点の静電的相互作用により結合できる構造を有し、かつ、他の物質と化学結合可能な官能基を有する分散剤で被覆された磁性粒子であって、上記分散剤に、核酸、タンパク質、ポリペプチド又はそのオリゴマー、糖類、又は糖タンパク質が固定されている、水分散性磁性粒子が提供される。
【0011】
好ましくは、本発明の水分散性磁性粒子は、平均粒径1〜70nmのナノ粒子である。
好ましくは、磁性粒子は金属酸化物である。
好ましくは、分散剤は、カテコール骨格を有する化合物である。
好ましくは、分散剤は、他の物質と化学結合可能な官能基としてカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物である。
【0012】
好ましくは、分散剤は、下記式(1)で示される化合物である。
【化1】

(式中、Lは単結合または連結基を示し、ここで、連結基は、炭素数1から6のアルキレン基、-NH-、-CO-、-O-、-S-、又はこれらの組み合わせを示し、XはH、ハロゲン、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0013】
より好ましくは、分散剤は、下記式(2)で示される化合物である。
【化2】

【0014】
好ましくは、分散剤は、カルボン酸、リン酸又はスルホン酸のいずれか一つ以上を有するポリマーである。
好ましくは、ポリマーは多糖類である。
好ましくは、ポリマーはデキストラン誘導体である。
好ましくは、ポリマーはカルボキシメチルデキストランである。
【0015】
好ましくは、分散剤に核酸が固定されている。
好ましくは、分散剤に、検出ターゲットである核酸の一部と相補的な配列を有する核酸が固定されている。
好ましくは、核酸は、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、PNA(ペプチド核酸)、又はLNA(Locked核酸)である。
【0016】
なお、ここで言う「固定」とは、共有結合、イオン結合、水素結合、van der Waals力などにより、対象とする2つの物質(本発明においては、一方は分散剤であり、もう一方は核酸、タンパク質、ポリペプチド又はそのオリゴマー、糖類、又は糖タンパク質である。)が近い位置に繋ぎとめられている状態を意味する。
【0017】
好ましくは、分散剤と核酸は共有結合により固定されている。
【0018】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の水分散性磁性粒子を含む、分析診断用プローブが提供される。
【0019】
本発明の別の側面によれば、(a)検出ターゲットである核酸を含む試料と、分散剤に核酸が固定されている本発明の水分散性磁性粒子とを接触させて、検出ターゲットである核酸と、分散剤に固定されている核酸とをハイブリダイゼーションさせる工程;及び(b)上記工程(a)において形成される水分散性磁性粒子の凝集体を検出する工程を含む、検出ターゲットである核酸を検出する方法が提供される。
【0020】
好ましくは、水分散性磁性粒子の凝集体を、磁気応答性の変化によって検出する。
好ましくは、水分散性磁性粒子の凝集体を、濁度の変化で検出する。
【0021】
なお、ここで言う磁気応答性とは、磁気が水分散性磁性粒子に及ぼす影響の全てを指す。例えば、永久磁石や電磁石へ引き付けられるか否か、永久磁石や電磁石へ引き付けられるときの速度、残留磁化の緩和速度などを指す。
【発明の効果】
【0022】
従来、水分散性磁性粒子は、高イオン強度かつ高温の条件下で分散安定性が十分でなかった。このため、水分散性磁性粒子を分析診断プローブとして用いるには煩雑な前処理により不純物を除去することが必要であった。さらに、核酸をハイブリダイゼーションにより検出するような分析診断においては、高イオン強度かつ高温の条件が不可欠であるため、この条件で分散安定性を保つ水分散性磁性粒子が渇望された。
【0023】
本発明により、配位結合もしくは多点の静電的相互作用で磁性粒子と結合する分散剤を用いた場合には、高イオン強度かつ高温の条件下でも分散状態が保たれることが発見された。このような分散剤の中で化学結合が可能な官能基を有する化合物を選定し、さらに、分析診断のターゲットとなる核酸と相補的な配列を有する核酸を水分散性磁性粒子に固定することで、水分散性磁性粒子を用いた新規な分析診断プローブが提供されることとなった。
【0024】
水分散性磁性粒子を分析診断プローブとして用いることで、磁気応答性をシグナルとする分析診断技術が提供される。従来、分析診断技術は蛍光や化学発光などの光学的なシグナルを利用していたが、この場合、測定されるサンプルは透明である必要があった。また、検出に関わらなかった分析診断プローブは除去することが必要であった。このため、煩雑な前処理や後処理が必要であった。
【0025】
磁気応答性をシグナルとする場合、サンプルが透明である必要は無く、検出に関わらない磁性粒子の除去も必要ない(検出に関わらない磁性粒子は磁気応答性を示さないため)。このため、本発明により、煩雑な前処理や後処理が不要の新規な分析診断技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明で用いる磁性粒子としては、磁性粒子と配位結合、または多点の相互作用(静電的相互作用、水素結合など)により結合することが可能な分散剤(例えば、式(1)に記載の化合物)で被覆することにより、水性媒体に分散又は懸濁することができ、分散液又は懸濁液から磁場の適用により分離することができる粒子であれば任意の粒子を使用することができる。本発明で用いる磁性粒子としては、例えば、鉄、コバルト又はニッケルの塩、酸化物、ホウ化物又は硫化物;高い磁化率を有する稀土類元素(例えば、ヘマタイト又はフェライト)などが挙げられる。磁性ナノ粒子の具体例としては、例えば、マグネタイト(Fe3O4)があり、FePd、FePt、CoPtなどの強磁性規則合金を使用することもできる。本発明では、好ましい磁性粒子は、金属酸化物、特に酸化鉄およびフェライト(Fe, M)3O4からなる群から選択されるものである。ここで酸化鉄には、とりわけマグネタイト、マグヘマイト、またはそれらの混合物が含まれる。前記式中、Mは、該鉄イオンと共に用いて磁性金属酸化物を形成することのできる金属イオンであり、典型的には遷移金属の中から選択され、最も好ましくはFe2+、Zn2+、Co2+、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+などであり、M/Feのモル比は選択されるフェライトの化学量論的な組成に従って決定される。金属塩は固形でまたは溶液状で供給されるが、塩化物塩、臭化物塩、または硫酸塩であることが好ましい。このうち、安全性の観点から酸化鉄、フェライトが好ましい。特に好ましくは、マグネタイト(Fe3O4)である。
【0027】
本発明の水分散性磁性粒子のサイズは特には限定されず、ナノ粒子、マイクロ粒子、又はミリ粒子の何れでもよいが、好ましくはナノ粒子である。ナノ粒子のサイズは1〜1000nmであるが、特に好ましくは平均粒径1〜70nmのナノ粒子である。
【0028】
本発明で用いる磁性粒子と配位結合により結合できる構造を有する分散剤の種類は、磁性粒子と配位結合できるものである限り、特に限定されないが、好ましくは、磁性粒子と配位結合できる構造として、カテコール骨格を有する化合物(特に好ましくは、上記式(1)で示される化合物)である。また、本発明で用いる磁性粒子と多点の静電的相互作用により結合できる構造を有する分散剤の種類は、磁性粒子と多点の静電的相互作用を行うことができるものである限り、特に限定されないが、好ましくは、カルボン酸、リン酸又はスルホン酸のいずれか一つ以上を有するポリマーであり、さらに好ましくはカルボキシメチルデキストランなどの多糖類である。
【0029】
本発明で用いる分散剤は、磁性粒子と配位結合又は多点の静電的相互作用により結合できる構造を有すると同時に、他の物質と化学結合可能な官能基を有する。他の物質と化学結合可能な官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、マレイミド基、アルデヒド基、ケトン基、ヒドラジド期、チオール基などを挙げることができるが、好ましくはカルボキシル基又はアミノ基であり、さらに好ましくはカルボキシル基である。
【0030】
上記したような分散剤で磁性粒子を被覆する方法は特に限定されず、当業者に公知の方法で行うことができる。例えば、粒子の形成中または形成後に、上記分散剤を、当該粒子を含む液体に添加して混合することにより、当該粒子を上記分散剤で被覆することができる。また、粒子は遠心分離や濾過などの常法により洗浄、精製後、上記分散剤を含有する溶媒(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-エトキシエタノールなどの親水性有機溶媒)に分散させて、粒子を上記分散剤で被覆してもよい。
【0031】
上記のようにして得られる磁性粒子と配位結合もしくは多点の相互作用で結合できる構造を有する分散剤で被覆された水分散性磁性粒子に対して、さらに、核酸、タンパク質、ポリペプチド又はそのオリゴマー、糖類、又は糖タンパク質を、上記水分散性磁性粒子中の分散剤に固定する。本発明では好ましくは、分散剤に、検出ターゲットである核酸の一部と相補的な配列を有する核酸を固定することができる。また、核酸を分散剤に固定する場合、核酸の種類は特に限定されないが、好ましくは、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、PNA(ペプチド核酸)、又はLNA(Locked核酸)などを挙げることができる。
【0032】
核酸、タンパク質、ポリペプチド又はそのオリゴマー、糖類、又は糖タンパク質の分散剤への固定は、当業者に公知の方法で行うことができる。例えば、化学結合可能な官能基としてカルボキシル基を有する分散剤と、アミノ基を有する核酸をアミノカップリング反応により固定することができる。
【0033】
磁性粒子と配位結合もしくは多点の相互作用で結合できる構造を有する分散剤で被覆された水分散性磁性粒子にターゲット核酸と相補的な配列を有する核酸を固定することで、分析診断プローブとして利用することができる。
【0034】
ターゲット核酸が存在すると、適当な条件下でハイブリダイゼーションを行うことで、ターゲット核酸が磁性粒子の間を架橋し、磁性粒子は凝集体を形成する。水分散性磁性粒子は、分散状態では磁気応答性を示さないが、凝集体を形成すると磁気応答性を示すようになる。一方、ターゲットでない核酸が存在する条件下では、配列が異なるためにハイブリダイゼーションは起こらず、従って磁性粒子は凝集体を形成しない。凝集体の形成の検出は、磁気応答性の変化、濁度の変化、光散乱の変化、沈降の有無などを検出することによって行うことができる。このように、本発明の水分散性磁性粒子は、分析診断プローブとして有用である。
【0035】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:磁性粒子の製造
酢酸鉄(II)15.66gをエタノール600ml、水9mlの混合液に溶解し、75℃に加熱した。得られた溶液に、300mlのエタノールに溶解した水酸化カリウム6.9gを混合し、さらに75℃で2時間加熱した。その後、100℃に加熱し、300mlになるまで溶液を濃縮した(約2時間)。75℃で5時間置いた後、室温へ冷却した。本操作により、エタノール中に分散した酸化鉄粒子が得られた。
【0037】
実施例2:分散剤の被覆
実施例1で得られたエタノール分散酸化鉄粒子30mlに水70mlを加え、酸化鉄粒子を沈殿させた。その後、上澄みの除去及び洗浄を行った。その後、酸化鉄の重量に対して20%となるように下記式(2):
【化3】

を有する化合物(分散剤)を60mlの水に溶解し、洗浄後の酸化鉄粒子に加えた。超音波処理を一時間行った後、室温で一晩攪拌することで、水分散性磁性粒子が得られた。下記式(3)、(4)に示される分散剤で被覆した水分散性磁性粒子についても、同様の手法で得た。
【0038】
実施例3:分散安定性の評価
以下の実験により、核酸のハイブリダイゼーション条件での分散安定性(凝集体を形成しない性質)を評価した。なお、核酸のハイブリダイゼーション条件の例として、0.1MのNaClが存在し、50℃の条件を用いた。本条件で一時間インキュベーションし、沈殿が生じるかを目視により確認した。
【0039】
カルボキシメチルデキストランで被覆した粒子(表1の(1)、ナカライテスク社より購入)は、分散剤が多点の静電的相互作用により磁性粒子へ固定されたサンプルであり、ハイブリダイゼーション条件では沈殿を生じなかった。上記式(2)に記載の化合物で被覆した粒子(表1の(2))は、分散剤が配位結合により固定されたサンプルであり、ハイブリダイゼーション条件では沈殿を生じなかった。下記式(3)で示される化合物で被覆した粒子(表1の(3))は、分散剤が1点の静電的相互作用により固定されたサンプルであり、ハイブリダイゼーション条件で沈殿を生じた。下記式(4)で示される化合物で被覆した粒子(表1の(4))は、分散剤が1点の静電的相互作用により固定されたサンプルであり、ハイブリダイゼーション条件で沈殿を生じた。結果を表1に示す。表1に示す結果より、分散剤がカルボキシメチルデキストラン又は式(2)で示される化合物である本発明の磁性粒子は、ハイブリダイゼーション条件で分散安定性を保つことがわかった。
【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【表1】

【0043】
実施例4:水分散性磁性粒子への核酸固定
実施例2で得た水分散性磁性粒子(濃度は1g/Lに調製)50μlにWSC(6mg/ml)、NHS(12mg/ml)を5μlずつ加え、さらに0.1M MESバッファーによりpH=6.0となるように調製した。この溶液を室温で1時間攪拌した後、50μMの末端アミノ化核酸50μlを加え、さらに室温で3時間攪拌した。最後に、遠心分離により未反応のWSC、NHS、核酸を除去し、核酸を固定した水分散性磁性粒子を得た。なお今回固定した核酸の配列は以下の2種類である。これは、ターゲットDNA(今回は112塩基対のDNAを使用)の一部と相補的な配列である。
NH2-(5’)-GGGCATGGGTCAGAAGGATT-(3’)(配列番号1)
(5’)-TCACCAACTGGGACGACATG-(3’)-NH2 (配列番号2)
【0044】
実施例5:核酸固定化量の評価
核酸が固定されることを確かめるため、蛍光色素(Cy5)が結合した核酸を実施例4で示した手法で固定した。
【0045】
未固定の核酸を遠心分離で除去した後に、核酸固定化水分散性磁性粒子を再分散し、蛍光(励起:640nm、検出:680nm)を測定した。結果としては、酸化鉄に対して0.1%(モル比)の核酸が固定された。光散乱による測定では今回使用した水分散性磁性粒子は約50nmの凝集体を形成していることがわかっている。50nmの粒子は105〜106個のFe3O4単位から成るため、1粒子当たり102〜103個の核酸が固定されたことになる。
【0046】
なお、使用した核酸の詳細は以下に示す。
NH2-(5' )-GGGCATGGGTCAGAAGGATT-(3' )-Cy5 (配列番号1)
【0047】
実施例6:ターゲットDNAの検出実験
実施例4で得られた、核酸を固定した水分散性磁性粒子2種類を50μlずつ混合し、さらに最終濃度が0.1MとなるようにNaClを加えた。ターゲットDNA水溶液、偽ターゲット(配列が異なるDNA)水溶液、水、ターゲットDNAと偽ターゲットDNAの混合物を25μl加えた。
【0048】
60℃で30分静置後、磁石を30秒間近づけて、沈降状態を観察した。観察結果を図1に示す。ターゲットDNAが存在する系では水分散性磁性粒子が磁気応答性を示し、水または偽ターゲットを加えた系では磁気応答性を示さなかった。また、偽ターゲットDNAが共存する系においてもターゲットDNAの存在する系では磁気応答性を示した。以上の結果より、本発明で得られえた水分散性磁性粒子を用いてDNAの配列特異的な検出が可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、ターゲットDNAの検出実験の結果を示す。(1)はターゲットDNAを加えた溶液を示し、(2)は水を加えた溶液を示し、(3)は偽ターゲットDNAを加えた溶液を示し、(4)はターゲットDNAと偽ターゲットDNAを加えた溶液を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子と配位結合又は多点の静電的相互作用により結合できる構造を有し、かつ、他の物質と化学結合可能な官能基を有する分散剤で被覆された磁性粒子であって、上記分散剤に、核酸、タンパク質、ポリペプチド又はそのオリゴマー、糖類、又は糖タンパク質が固定されている、水分散性磁性粒子。
【請求項2】
平均粒径1〜70nmのナノ粒子である、請求項1に記載の水分散性磁性粒子。
【請求項3】
磁性粒子が金属酸化物である、請求項1又は2に記載の水分散性磁性粒子。
【請求項4】
分散剤が、カテコール骨格を有する化合物である、請求項1から3の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【請求項5】
分散剤が、他の物質と化学結合可能な官能基としてカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物である、請求項1から4の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【請求項6】
分散剤が、下記式(1)で示される化合物である、請求項1から5の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【化1】

(式中、Lは単結合または連結基を示し、ここで、連結基は、炭素数1から6のアルキレン基、-NH-、-CO-、-O-、-S-、又はこれらの組み合わせを示し、XはH、ハロゲン、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【請求項7】
分散剤が、下記式(2)で示される化合物である、請求項1から5の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【化2】

【請求項8】
分散剤が、カルボン酸、リン酸又はスルホン酸のいずれか一つ以上を有するポリマーである、請求項1から3の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【請求項9】
ポリマーが多糖類である、請求項8に記載の水分散性磁性粒子。
【請求項10】
ポリマーがデキストラン誘導体である、請求項8に記載の水分散性磁性粒子。
【請求項11】
ポリマーがカルボキシメチルデキストランである、請求項8に記載の水分散性磁性粒子
【請求項12】
分散剤に核酸が固定されている、請求項1から11の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【請求項13】
分散剤に、検出ターゲットである核酸の一部と相補的な配列を有する核酸が固定されている、請求項1から12の何れかに記載の水分散性磁性粒子。
【請求項14】
核酸が、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、PNA(ペプチド核酸)、又はLNA(Locked核酸)である、請求項12又は13に記載の水分散性磁性粒子。
【請求項15】
請求項1から14の何れかに記載の水分散性磁性粒子を含む、分析診断用プローブ。
【請求項16】
(a)検出ターゲットである核酸を含む試料と、分散剤に核酸が固定されている請求項1から13の何れかの水分散性磁性粒子とを接触させて、検出ターゲットである核酸と、分散剤に固定されている核酸とをハイブリダイゼーションさせる工程;及び(b)上記工程(a)において形成される水分散性磁性粒子の凝集体を検出する工程を含む、検出ターゲットである核酸を検出する方法。
【請求項17】
水分散性磁性粒子の凝集体を、磁気応答性の変化によって検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水分散性磁性粒子の凝集体を、濁度の変化で検出する、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−111703(P2008−111703A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293782(P2006−293782)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】