説明

水力発電用可動羽根車

【課題】 現在の中小河川を利用した水力発電装置においては、送水管による導水型水車発電が主流である。これらに対して、送水路や用水路などを利用した低落差浮上型水力発電装置に適当な発電用羽根車を提供すること。
【解決手段】 本発明の水力発電用可動羽根車(C)は、羽根車が1回転する過程において,流れの進行方向側では,外羽根(5)が外側に,また内羽根(6)が内側に開き水流の抗力により水車を回転させる.その時,羽根車の下側では,内羽根が外側に回転し,外羽根と一体化する.その後さらに水車が回転すると,2枚の羽根は閉じたまま回転し,水車の回転方向の抵抗にならないことを特徴とする.また,該羽根車を応用した垂直軸発電装置であることを特徴とする.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,中小河川における発電用水車の羽根車とその応用に関する.
【背景技術】
【0002】
近年,COの削減のために,太陽光,風力,水力等の自然エネルギーを利用した発電装置による発電の重要性が増している.この中の一つとしてダムによる水力発電には長い歴史があり,現在でもクリーンな発電方法として重要な役目を担っている.しかしながら,ダムの建設には莫大な費用が掛かる事,さらには自然破壊が伴うことなどで,今後のダム建設の増加は見込めない.この中,低コストで発電可能な小水力発電が注目されるようになってきた.日本に限らず,低落差の河川が発電に利用されるようになれば自然エネルギー利用の貢献度は大きい.小水力発電の長所は,一定の水量があれば昼夜発電が可能なため,太陽光などに比較して設備の利用率が高いことである.
【0003】
前述のような理由により,地域に密着した発電設備の拡充が期待されてきているが,発電装置の開発においては今後の発展による所が多い.即ち,小水力発電に利用できる河川の形態においては,一般河川の落差のある所及び送水路や放水路など様々なものがあり,ミニ水力発電(1000kW以下)やマイクロ水力発電(100kW以下)に合う発電装置の開発が必要となるためである.本発明は,これら現状における要求に従い考案されたものである.ここで,マイクロ発電の先行技術文献として以下を挙げる.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−205342
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中小河川の流れを利用した水力発電用の水車においては,風力発電用風車のような研究開発が行われておらず,多くは大型水車の原理に基づく導水管型のものが実用化されている所が多い.また,特許文献1に提案されている水車は,従来からある下掛け水車を浮上型に応用したもので,水車の寸法を増すと伴に高さを増して不安定になりやすい.
【0006】
そこで,本発明は、中小河川における低落差の流れを利用した水力発電に応用できる簡単な構造で高効率かつ低コストである発電用水車の羽根車を提供することを課題とするものである.
【課題を解決すための手段】
【0007】
上記問題を解決するための本発明の発電用水車に応用される可動羽根車は,円板の外周に取り付けた羽根が流れの進行方向側では開き,流れの対向方向側では閉じることを特徴とする.
【0008】
また,水車の回転軸を水面に対し垂直にし,水車は水面下で回転し,発電装置は水面上部に配置することを特徴とする.
【発明の効果】
【0009】
本発明の可動羽根車を利用することにより,中小河川の流れによる小水力発電が簡便な装置で可能になり,COの削減に大きく貢献できる.さらに,送電線の無い山間部,未開発地域などの発電設備として利用することが出来る.また,大形な水車にすれば,低落差の大河川での発電も可能となる.
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明における可動羽根車を,実施の形態に基づき説明する.図1は固定羽根を用いた羽根車の正面図,図2は固定羽根車に導水板を取り付けた水車の正面図,図3は可動羽根車の正面図と側面図,図4は可動羽根車の好適例を示す水車,図5のa,bはその斜視図をそれぞれ示す.また、図6は可動羽根車を川岸設置の水車に適応した場合の正面図である.
【00010】
図1の固定羽根車Aは,可動羽根車と比較のために,L字形の羽根1を用いた羽根車を水中に水平に設置した状態を示している.図の上側が上流側で矢印2は水流を示す.この羽根車を単体で流れの中に置くと,予測されるように,水車左半分は左回転させようとする抗力が加わるが右半分は逆に右回転に作用する抗力が働く,この結果,左右がバランスしてほとんど回転しない.この羽根車を左回転させるためには,流れに対向する右側の抗力(抵抗)を減少させることが必要となる.
【00011】
図2のBは,図1の右半分を、傾斜面を持つ導水板3で覆った水車である.この導水板により,流れに対向する側の抵抗が減少し,上述より良好な回転が得られる。しかしながら,この状態でも,右側の羽根が開いているため,この分の抵抗は回転に対して負の効果を及ぼしている.
【00012】
この問題を解決するのが本発明の可動羽根車である.図3に示す可動羽根車Cは、円板4の周囲12等分に、2枚組の羽根5,6を有し,その羽根が円板の回転に伴い水流2に対する向きを変える事を特徴とする。ここで,羽根の取り付け数は円板の直径と羽根の寸法により異なり,12に限定するものではない.
【00013】
図3の可動羽根は,軸ピッチ円の接線に対して外側に開く外羽根5と内側に開く内羽根6からなることを特徴とする.
【00014】
次に,図3に基づき,本発明の可動羽根車Cの羽根の動きを説明する.図は紙面上が上流で羽根車が左回りする状態を示している.羽根車が1回転する過程において,流れの進行方向(左側)では,外羽根5は外側に,また内羽根6は内側に開き水流の抗力により羽根車を左向きに回転させる.その時,羽根車の下側では,内羽根6が外側に回転し,外羽根5と一体化する.その後さらに羽根車が回転すると,2枚の羽根は閉じたまま回転し,羽根車の回転方向の抵抗にならない.羽根が図の最上部付近に位置すると内羽根6が下側に回転し,その後の外羽根6の開きを容易にする.即ち,羽根車の回転方向に沿う左側で回転の抗力を受け,右側で抵抗が最小となるよう開閉する.
【00015】
円板4の外周に取り付けられた羽根5,6は,ストッパーにより一定以上は開かないと共に,ストッパーの位置により開き角度を調節できる.
【実施例】
【00016】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが,本発明はこれに限定されるものではない.
【00017】
実施例を示す図4は,本発明の羽根車を浮上型の発電装置Dに応用したものである.2つの羽根車を,対向する導水板3を組み込んだフロート7との間に設置し,導水板によって絞られた水流により回転させて発電するものである.導水板は,羽根車の半面を流れから遮断することと,流れを水車の可動羽根に導く働きを持つ.二つの羽根車の回転で羽根が上流側に向かう側(左羽根車の左側,右羽根車の右側)は,導水板の効果により回転方向に対向する抵抗はより小さくなる.
【00018】
図5は図4の浮上型水車Dの斜視図である.発電機8は水車の垂直軸に直接または変速機を通して取り付き,羽根車部分は水面下に,発電機は水上部に設置される.本発明のこの可動羽根浮上型水車により,低落差の水流であっても十分発電可能であることが確認された.
【00019】
図6は、本発明の羽根車を川岸に設置した水車に応用した場合を示すものである.図6では,浮上型のフロート部と同形状のフレームを川岸9設置し,ここに可動羽根車Cを固定したものを示している.一方,浮きまたは水位検出器を応用することにより,羽根車を軸方向に移動可能なようにし,水位に合わせるようにした水車とすることも可能である.
【00020】
本発明による可動羽根車の応用としては,本実施例に示されるように,中小河川での発電装置はもとより,大河川や海における潮流発電にも応用可能である.さらに,材質寸法等を検討すれば垂直軸型風車の回転羽根にも適応可能である.
【図面の簡単な説明】
【00021】
【図1】固定羽根車の正面図である.
【図2】導水板で覆った固定羽根水車の正面図である.
【図3】可動羽根車の正面図と側面図である.
【図4】可動羽根車の好適例を示す浮上型水車の正面図と側面図である.
【図5】浮上型水車の斜視図である.
【図6】川岸設置の可動羽根水車の正面図と側面図である.
【符号の説明】
【00022】
1 固定羽根
2 水流
3 導水板
4 円板
5 外羽根
6 内羽根
7 フロート
8 発電機
9 川岸
A 固定羽根車
B 導水板付固定羽根水車
C 可動羽根車
D 浮上型可動羽根水車
E 川岸型可動羽根水車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流れの進行方向側で開き,流れの対向方向側で閉じることを特徴とする水車用可動羽根車.
【請求項2】
前記可動羽根車の流れの対向方向側を導水板で覆い,回転方向の抵抗を減じた発電用水車.
【請求項3】
請求項1の可動羽根車を1対にした発電用水車.
【請求項4】
請求項3の1対の発電用水車にフロートを取り付け,浮上型にした発電用水車.
【請求項5】
請求項1の可動羽根車を川岸に設置し,羽根車の軸心方向に水位に合わせて移動可能とした発電用水車.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−92817(P2012−92817A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255342(P2010−255342)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(300010936)
【Fターム(参考)】